説明

神経変性疾患および認知症のためのジヒドロピリジン化合物

本発明は、治療上有効量のAMPA受容体アンタゴニスト(例えば1,2−ジヒドロピリジン化合物)、および治療上有効量の向知性薬(例えばコリンエステラーゼ阻害剤)を患者に投与することによって、患者の認知機能障害、認知症、または神経変性の疾病および障害(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症など)を治療および/または予防する方法を提供する。本発明はまた、治療上有効量のAMPA受容体アンタゴニスト(例えば1,2−ジヒドロピリジン化合物)および治療上有効量の向知性薬(例えばコリンエステラーゼ阻害剤)を含む組合せ、コマーシャル・パッケージ、および医薬組成物を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物は、例えば、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンであってよい。コリンエステラーゼ阻害剤は、例えば、ドネペジルであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第119条(35 U.S.C.)に基づき、2005年6月13日に出願された米国仮出願番号60/689,519および2005年4月4日に出願された米国仮出願番号60/667,665について優先権を主張し、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ジヒドロピリジン化合物を含む医薬組成物、およびジヒドロピリジン化合物を使用して様々な疾病および障害を治療する方法を提供する。ジヒドロピリジン化合物は、様々な疾病および障害を治療するために、コリンエステラーゼ阻害剤などの他の薬物と共に任意に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
興奮性アミノ酸受容体は、2つの一般的なタイプに分類される。ニューロンの細胞膜におけるカチオン・チャンネルの開口部に直接連結される受容体は、「イオンチャンネル型」と呼ばれる。このタイプの受容体は、少なくとも3つのサブタイプに更に分類されており、それらは選択的アゴニストN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソキサゾール−4−プロピオン酸(AMPA)、およびカイニン酸の脱分極作用によって定義される。2つめの一般的なタイプは、G−たんぱく質またはセカンド・メッセンジャーに結合された「代謝調節型」の興奮性アミノ酸受容体である。この2つめのタイプが、キスカル酸アゴニスト、イボテン酸アゴニスト、またはトランス−1−アミノシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸によって活性化されると、シナプス後細胞におけるホスホイノシチドの加水分解が強化される。両タイプの受容体が、発達の間における正常なシナプス結合を媒介するだけでなく、また、一生を通してシナプス伝達の効率において変化すると思われる。Schoeppら、Trends Pharm.Sci.,11:508(1990);McDona1dら、Brain Res.Rev.,15:41(1990)参照。
【0004】
神経伝達物質による過度の興奮は、ニューロンの変性および死を引き起こし得る。こうした変性は、NMDA受容体、AMPA受容体およびカイニン酸受容体における興奮性アミノ酸、グルタメートおよびアスパルテートの興奮毒性作用によって一部媒介されると考えられている。この興奮毒性の作用は、脳血管障害、例えば血栓塞栓性の卒中または出血性脳卒中、脳血管痙攣、低血糖、心停止、てんかん重積症、周産期の仮死、酸素欠乏症(例えば溺水、肺手術、脳外傷およびラチリスムなどにより起こる)などの種々の状態によって生じる脳虚血または脳梗塞、アルツハイマー病、およびハンチントン病におけるニューロンの損失の原因となる。米国特許第6,765,006号および第5,843,945号参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当分野において、NMDA受容体、AMPA受容体、および/またはカイニン酸受容体によって任意の程度まで媒介され得る疾病および障害を治療するための新規化合物および新規方法に対するニーズがある。本発明は、これを目的とし、また、その他の重要な目標をも有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、治療上有効量の(i)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)および(ii)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)を治療を必要とする患者に投与することによって、患者の認知症または認知機能障害を治療および/または予防する方法を提供する。本発明はまた、治療上有効量の(i)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)および(ii)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)を投与することによって、認知症または認知機能障害の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物とコリンエステラーゼ阻害剤との組合せは、認知症または認知機能障害の治療および/または予防において予想外の相乗効果を生み出す。
【0007】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の(i)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)および(ii)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)を治療を必要とする患者に投与することによって、患者の神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症など)を治療および/または予防する方法を提供する。本発明はまた、治療上有効量の(i)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)および(ii)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)を投与することによって、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症など)の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物とコリンエステラーゼ阻害剤との組合せは、神経変性疾患の治療において予想外の相乗効果を生み出す。
【0008】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の(i)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)および(ii)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
その他の実施形態において、本発明は、有効量の(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニストおよび(ii)少なくとも1つの向知性薬を含む組合せを提供する。この組合せは、認知症または認知症によって引き起こされる1つ以上の行動障害を治療するために、患者に別々に投与され得る(例えば同時に、連続して、など)。この組合せはまた、アルツハイマー病を治療するために、患者に別々に投与され得る(例えば同時に、連続して、など)。本発明はまた、有効量の(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト、(ii)少なくとも1つの向知性薬、そして(iii)認知症または認知症と共に観察される行動障害の治療において、それらを同時に、別々に、または連続して使用するための指示書を含むコマーシャル・パッケージまたはキットを提供する。一つの実施形態において、指示書はアルツハイマー病を治療するためのものである。本発明はまた、有効量の(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト、(ii)少なくとも1つの向知性薬、および(iii)薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。用語「患者」は、男性および女性を含み、そして大人、子供および新生児を含む。1つの実施形態において、患者は犬や猫などのコンパニオン・アニマルであり得る。
【0011】
「認知機能障害」とは、患者が独立して機能する能力に影響を及ぼす記憶機能、問題解決、位置確認、および抽象概念のうちの1つ以上における後天的な欠陥を指す。
【0012】
「認知症」とは、はっきりした意識における知的な機能の全体的な劣化を指し、方向感覚の喪失、記憶障害、判断力低下、および知能障害のうちの1つ以上の症状によって特徴づけられる。
【0013】
本明細書に記載された疾病および障害を治療および/または予防するための、2つ以上の化合物の投与に関連して、「別々に投与する」には、例えば、それら化合物の任意の順番での連続投与、または化合物の同時投与が含まれる。化合物の同時投与とは、投与の様式によって、化合物が実質的に同時に患者に投与されること、または厳密に同時に投与されることを意味する。化合物の連続投与は、任意の順番で生じ得るものであり、また、それぞれの化合物を投与する間に任意の時間が経過してもよい。連続投与は、どちらの化合物を最初に投与し、どちらを2番目に投与し、それらの投与の間にどれだけの時間が経過するべきであるか、について影響するであろう要因に基づいて行われる。例えば、2つ以上の化合物が別々におよび連続して投与される場合、化合物がいつ患者に投与されるかに影響を与える要因には、例えば、(a)投与される化合物における最良の効能を提供する時間、(b)投与される化合物における副作用を最小にする時間、(c)化合物の用量、(d)化合物の投与経路、(e)治療する疾病または障害、(f)治療を受ける患者、(g)投与する化合物同士のインビボでの関係、および当技術分野において知られているその他のこのような要因、が含まれる。好ましくは、連続投与の間隔は、有効成分を1つだけ使用して得られるであろう効果と比較して、有効成分を組み合わせて使用する疾病または障害に対する治療効果が、相加的よりも大きくなるように選択される。
【0014】
用語「組合せ」とは、AMPA受容体アンタゴニスト(例えば1,2−ジヒドロピリジン化合物)、および第2の有効成分(例えば、コリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬)が、明確に異なる医薬組成物または処方物として別々に投与される(例えば、AMPA受容体アンタゴニストを含む第1の医薬組成物、および向知性薬を含む第2の医薬組成物)ことを指す。これらの医薬組成物または処方物は、同一の、または異なる投与様式を有し得る。
【0015】
「有効成分」とは、疾病または障害の治療および/または予防に関与する、本明細書に記載された1,2−ジヒドロピリジンおよびコリンエステラーゼ阻害剤を指す。
「単剤療法」とは、疾病または障害の治療および/または予防のために、1つの有効成分のみ使用する療法である。
「併用療法」とは、疾病の治療および/または予防のために、2つ以上の有効成分が別々に投与される、または医薬組成物の形態で投与される療法である。
「治療上有効量」とは、疾病の治療および/または予防に必要な有効成分の量を指す。併用療法のために2つ以上の有効成分が投与される場合は、用語「治療上有効量」とは、疾病の治療および/または予防に必要な有効成分の量を指し、例えば、(a)治療上有効量の第1の有効成分および治療上有効量の第2の有効成分(すなわち、疾病の治療および/または予防のために単剤療法に使用されるであろう各有効成分の量が、併用療法に使用される);(b)疾病の治療および/または予防のために、組み合わせることで効果的に提供される、治療上有効量の第1の有効成分およびサブ治療量の第2の有効成分(例えば、サブ治療量の第2の有効成分は、該第2の有効成分が単剤療法で使用された場合に得られるであろう結果と同等かそれよりも良い結果を得るために、併用療法において使用され得る);(b)疾病の治療および/または予防のために、組み合わせることで効果的に提供される、サブ治療量の第1の有効成分および治療上有効量の第2の有効成分(例えば、サブ治療量の第1の有効成分は、該第1の有効成分が単剤療法で使用された場合に得られるであろう結果と同等かそれよりも良い結果を得るために、併用療法において使用され得る);および(d)疾病または障害の治療および/または予防のために、併用療法において提供される、サブ治療量の第1の有効成分およびサブ治療量の第2の有効成分(例えば、サブ治療量の第1の有効成分は、該第1の有効成分が単剤療法で使用された場合に得られるであろう結果と同等かそれよりも良い結果を得るために、併用療法において使用することができ、そして、サブ治療量の第2の有効成分が、該第2の有効成分が単剤療法で使用された場合に得られるであろう結果と同等かそれよりも良い結果を得るために、併用療法において使用され得る)を含む。
【0016】
「コマーシャル・パッケージ」とは、キットとしても知られるが、体内の薬物のレベルをモニターするために;投薬の用量に関する患者の薬剤服用順守をサポートするために;または疾病の状態をモニターするために、(i)AMPA受容体アンタゴニスト(例えば1,2−ジヒドロピリジン化合物)を含む第1の医薬組成物または処方物;(ii)第2の有効成分(例えばコリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬)を含む第2の医薬組成物または処方物;(iii)当該疾病を治療または予防するための医薬組成物または処方物を使用するためにFDAに認可された指示書;および(iv)必要により、当該医薬組成物または処方物を投与するためのその他の材料(例えば、シリンジ、希釈剤、医療用手袋、手の除菌用ローションなど)、の組合せを含み得る。コマーシャル・パッケージは、数日単位、数週単位、または数ヶ月単位で、十分な投薬および材料を供給し得る。別の実施形態において、「コマーシャル・パッケージ」は、体内の薬物のレベルをモニターするために;投薬の用量に関する患者の薬剤服用順守をサポートするために;または疾病の状態をモニターするために、(i)AMPA受容体アンタゴニスト(例えば1,2−ジヒドロピリジン化合物)および第2の有効成分(例えば、コリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬)の両方を含む医薬組成物または処方物;(ii)当該疾病を治療または予防するための医薬組成物または処方物を使用するためにFDAに認可された指示書;および(iii)必要により、当該医薬組成物または処方物を投与するためのその他の材料(例えば、シリンジ、希釈剤、医療用手袋、手の除菌用ローションなど)、を含み得る。コマーシャル・パッケージは、数日単位、数週単位、または数ヶ月単位で、十分な投薬および材料を供給し得る。
【0017】
「水和物」とは、結晶水の分子を含有する化合物を指す。結晶水の分子は、1以上の整数、例えば1〜10であり得、あるいは、0より大きい任意の分数または1〜10の整数の分数であり得る。例えば、水和物は、化合物・1/4H2O、化合物・1/2H2O、化合物・3/4H2O、化合物・2H2O、化合物・5 1/2H2O、化合物・6H2Oなどに代表され得る。当該「化合物」は、例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンなど、本明細書に記載される任意のものであり得る。
【0018】
「薬学的に許容可能な塩」は、当技術分野において周知であり、塩酸塩、硫酸塩、ヒドロブロミドおよびリン酸塩などの無機酸の塩;およびギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびトルエンスルホン酸などの有機酸の塩を含む。ある置換基が選択される場合、本発明の化合物は、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩などのアルカリ金属塩類;カルシウムまたはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミンまたはN,N’−ジベンジルエチレンジアミンとの塩などの有機アミン塩類などを形成し得る。当業者であれば、本発明の化合物が、任意のいかなる薬学的に許容可能な塩の形態においても作製され得ることを認識するであろう。
【0019】
1つの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物において使用される化合物は、AMPA受容体アンタゴニストである。AMPA受容体アンタゴニストは、当技術分野において知られているいかなるものであってもよい。AMPA受容体アンタゴニストの例としては、1,2−ジヒドロピリジン化合物およびキノキサリン−ジオンアミノアルキルホスホネート類が挙げられる。好ましくは、AMPA受容体アンタゴニストは1,2−ジヒドロピリジン化合物である。本明細書に記載の方法および組成物において使用される1,2−ジヒドロピリジン化合物は、当技術分野において知られているいかなるものであっても良い。用語「1,2−ジヒドロピリジン化合物」には、1,2−ジヒドロピリジン化合物、1,2−ジヒドロピリジン化合物の薬学的に許容可能な塩、1,2−ジヒドロピリジン化合物の立体異性体、1,2−ジヒドロピリジン化合物の立体異性体の薬学的に許容可能な塩、1,2−ジヒドロピリジン化合物の水和物、1,2−ジヒドロピリジン化合物の薬学的に許容可能な塩の水和物、1,2−ジヒドロピリジン化合物の水和物の立体異性体、および1,2−ジヒドロピリジン化合物の薬学的に許容可能な塩の水和物の立体異性体が含まれる。
【0020】
好ましくは、本明細書に記載の方法および組成物において使用される1,2−ジヒドロピリジン化合物は、以下の式(I)の化合物である。
【化5】

ここで、
QはNH、OまたはSであり;
1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、C1-6アルキル、または−X−Aであり;
Xは単結合、任意に置換されたC1-6アルキレン、任意に置換されたC2-6アルケニレン、任意に置換されたC2-6アルキニレン、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−N(R6)−、−N(R7)−CO−、−CO−N(R8)−、−N(R9)−CH2−、−CH2−N(R10)−、−CH2−CO−、−CO−CH2−、−N(R11)−S(O)m−、−S(O)n−N(R12)−、−CH2−S(O)p−、−S(O)q−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−N(R13)−CO−N(R14)−、または−N(R15)−CS−N(R16)−であり;
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり;
m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0、1または2の整数であり;
Aは、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、任意に置換された5〜14員環の非芳香族複素環、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族複素環であり、ただし、
1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つの基は−X−Aであり、
1、R2、R3、R4およびR5のうちの残り2つの基は独立して水素、ハロゲン、またはC1-6アルキルである。
【0021】
1つの実施形態において、以下の化合物は式(I)の化合物の範囲から除外される:(1)QがOであるとき、R1およびR5が水素であって、R2、R3およびR4がフェニルであるもの;(2)QがOであるとき、R1およびR4が水素であって、R2、R3およびR5がフェニルであるもの;ならびに(3)QがOであるとき、R1およびR2が水素であって、R3、R4およびR5がフェニルであるもの。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において使用される1,2−ジヒドロピリジン化合物は、以下の式(II)の化合物であって、
【化6】

ここで、
QはNH、OまたはSであり;
1,X2およびX3は、それぞれ独立して単結合、任意に置換されたC1-6アルキレン、任意に置換されたC2-6アルケニレン、任意に置換されたC2-6アルキニレン、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−N(R6)−、−N(R7)−CO−、−CO−N(R8)−、−N(R9)−CH2−、−CH2−N(R10)−、−CH2−CO−、−CO−CH2−、−N(R11)−S(O)m−、−S(O)n−N(R12)−、−CH2−S(O)p−、−S(O)q−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−N(R13)−CO−N(R14)−、または−N(R15)−CS−N(R16)−であり、
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、
m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0、1または2の整数であり、
1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、任意に置換された5〜14員環の非芳香族複素環、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族複素環であり、そして
17およびR18はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、またはC1-6アルキルである。
別の実施形態において、本発明は式(II)の化合物を提供し、ここで、
1,X2およびX3は、それぞれ独立して単結合、任意に置換されたC1-6アルキレン、任意に置換されたC2-6アルケニレン、または任意に置換されたC2-6アルキニレンである。置換基は、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−N(R6)−、−N(R7)−CO−、−CO−N(R8)−、−N(R9)−CH2−、−CH2−N(R10)−、−CH2−CO−、−CO−CH2−、−N(R11)−S(O)m−、−S(O)n−N(R12)−、−CH2−S(O)p−、−S(O)q−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−N(R13)−CO−N(R14)−、および−N(R15)−CS−N(R16)−のうちの1つ以上であって、
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、
m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0、1または2の整数であり、
1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、任意に置換された5〜14員環の非芳香族複素環、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族複素環である。
【0023】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物の置換基は、以下のうちの1つ以上であって良い:ヒドロキシ;ハロゲン;ニトリル;ニトロ;C1-6はアルキル;C2-6アルケニル;C2-6アルキニル[ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、ヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、C2-6アルケニルアミノ、ジ(C2-6アルケニル)アミノ、C2-6アルキニルアミノ、ジ(C2-6アルキニル)アミノ、N−C1-6アルキル−N−C2-6アルケニルアミノ、N−C1-6アルキル−N−C2-6アルキニルアミノ、N−C2-6アルケニル−N−C2-6アルキニルアミノ、アラルキルオキシ、TBDMSオキシ、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C1-6アルキルカルボニルオキシ、C2-6アルケニルカルボニルオキシ、C2-6 アルキニルカルボニルオキシ、N−C1-6アルキルカルバモイル、N−C2-6アルケニルカルバモイル、およびN−C1-6アルキニルカルバモイルから選択される1つ以上の基で独立して任意に置換され得る];C1-6アルコキシ;C2-6アルケニルオキシ;C2-6アルキニルオキシ[ここで、アルコキシ、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシは、C1-6アルキルアミノ、アラルキルオキシ、およびヒドロキシから選択される1つ以上の基で独立して任意に置換され得る];C1-6アルキルチオ;C2-6アルケニルチオ;C2-6アルキニルチオ[ここで、アルキルチオ、アルケニルチオおよびアルキニルチオは、ヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1-6アルキルアミノ、アラルキルオキシ、TBDMSオキシ、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C1-6アルキルカルボニルオキシ、およびC1-6アルキルカルバモイルから選択される1つ以上の基で独立して任意に置換され得る];任意に置換されたカルボニル[これは、C1-6アルコキシ、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、C2-6アルケニルアミノ、ジ(C2-6アルケニル)アミノ、C2-6アルキニルアミノ、ジ(C2-6アルキニル)アミノ、N−C1-6アルキル−N−C2-6アルケニルアミノ、N−C1-6アルキル−N−C2-6アルキニルアミノ、およびN−C2-6アルケニル−N−C2-6アルキニルアミノと置換され得る];任意に置換されたアミノ[これは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルキルスルホニル、C2-6アルケニルスルホニル、C2-6アルキニルスルホニル、C1-6アルキルカルボニル、C2-6アルケニルカルボニル、およびC2-6アルキニルカルボニルから選択される1つまたは2つの基で置換され得る];C1-6アルキルスルホニル;C2-6アルケニルスルホニル;C2-6アルキニルスルホニル;C1-6アルキルスルフィニル;C2-6アルケニルスルフィニル;C2-6アルキニルスルフィニル;ホルミル;任意に置換されたC3-8シクロアルキル;任意に置換されたC3-8シクロアルケニル[ここで、シクロアルキル基、および/またはシクロアルケニル基は、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトリル、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、およびアラルキルから選択される1つ以上の基で独立して任意に置換され得る];5〜14員環の非芳香族複素環[これは、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトリル、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、およびアラルキルから選択される1つ以上の基で任意に置換され得る];C6-14芳香族炭化水素環[これは、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトリル、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、およびアラルキルから選択される1つ以上の基で任意に置換され得る];および5〜14員環の芳香族複素環[これは、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトリル、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、およびアラルキルから選択される1つ以上の基で任意に置換され得る]。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、式(II)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、または任意に置換された5〜14員環の非芳香族ヘテロ環である。別の実施形態において、本発明は、式(II)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族ヘテロ環である。別の実施形態において、本発明は、式(II)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立して、フェニル、ピロリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、ナフチル、キノリル、iso−キノリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、イミダゾピリジル、カルバゾリル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、ジオキシニル、アダマンチル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリルであり、これらのうち任意のものが、任意に置換基を有し得る。別の実施形態において、本発明は、式(II)の化合物を提供し、ここでA1、A2およびA3はそれぞれ独立して以下のものから選択され、それらの各々が任意に置換され得る:
【化7】

【0025】
別の実施形態において、本発明は式(II)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立してヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、またはニトリルと置換される。別の実施形態において、本発明は式(II)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立してヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ニトリル、またはニトロである。別の実施形態において、本発明は式(II)の化合物を提供し、ここで、Qは酸素である。
【0026】
別の実施形態において、本発明は式(I)または式(II)の化合物を提供し、ここで、X1,X2およびX3は、それぞれ独立して単結合、−CH2−、−CH(OH)−、−CH2CH2−、−CH=CH、−C≡C−、−O−,または−CO−である。別の実施形態において、本発明は式(I)または式(II)の化合物を提供し、ここで、X1,X2およびX3は、それぞれ単結合である。別の実施形態において、本発明は式(I)または式(II)の化合物を提供し、ここで、R17およびR18は、それぞれ独立して水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n−プロピル、またはiso−プロピルである。別の実施形態において、本発明は式(I)または式(II)の化合物を提供し、ここで、R17およびR18は、それぞれが水素である。
【0027】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを指し、好ましい原子には、フッ素、塩素、および臭素が含まれる。
【0028】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C1-6アルキルとは、1〜6個の炭素を有するアルキルを指し、例として直鎖または分岐鎖のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル(1−メチルプロピル)、tert−ブチル、iso−ペンチル、n−ペンチル、tert−ペンチル(1,1−ジメチルプロピル)、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、1,2−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、1−メチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチルなどが含まれる。
【0029】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C2-6アルケニルとは、2〜6個の炭素を有するアルケニル基を指し、例として、ビニル、1−エチルエテニル(1−ブテン−2−イル)、アリル(2−プロペニル)、1−プロペニル、iso−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−メチル−1−プロペニル(2−ブテン−2−イル)、2−メチル−2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、1−ブテニル(1−ブテン−1−イル)、2−ブテニル(2−ブテン−1−イル)、3−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1,3−ヘキサジエニル、1,6−ヘキサジエニルなどが含まれる。
【0030】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C2-6アルキニルとは、2〜6個の炭素を有するアルキニル基を指し、例として、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−エチル−1−プロピニル、1−エチニル−2−プロピニル、2−メチル−3−ブテニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、1,3−ヘキサジイニル、1,6−ヘキサジイニルなどが含まれる。
【0031】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C1-6アルコキシとは、1〜6個の炭素を有するアルコキシ基を指し、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、iso−ペンチルオキシ、tert−ペンチルオキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、ネオペンチルオキシ、1−エチルプロポキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ヘキシルオキシ、iso−ヘキシルオキシ、1−エチル−1−メチルプロポキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、1,1−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、1−エチルブトキシ、1−メチルブトキシ、1−メチルペンチルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシなどが含まれる。
【0032】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C2-6アルキニルオキシとは、2〜6個の炭素原子を有するアルキニルオキシ基を指し、例として、エチニルオキシ、1−プロピニルオキシ、2−プロピニルオキシ、1−ブチニルオキシ、2−ブチニルオキシ、3−ブチニルオキシ、1−メチル−2−プロピニルオキシ、1−エチル−2−プロピニルオキシ、1−エチニル−2−プロピニルオキシ、1−ペンチニルオキシ、1−ヘキシニルオキシ、1,3−ヘキサジイニルオキシ、1,6−ヘキサジイニルオキシなどが含まれる。
【0033】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C2-6アルケニルオキシとは、2〜6個の炭素を有するアルケニルオキシ基を指し、例として、ビニルオキシ、1−エチルエテニルオキシ(1−ブテン−2−イルオキシ)、アリルオキシ(2−プロペニルオキシ)、1−プロペニルオキシ、iso−プロペニルオキシ、2−メチル−1−プロペニルオキシ、1−メチル−1−プロペニルオキシ(2−ブテン−2−イルオキシ)、2−メチル−2−プロペニルオキシ、1−メチル−2−プロペニルオキシ(1−ブテン−3−イルオキシ)、1−ブテニルオキシ(1−ブテン−1−イルオキシ)、2−ブテニルオキシ(2−ブテン−1−イルオキシ)、3−ブテニルオキシ、1−ペンテニルオキシ、1−ヘキセニルオキシ、1,3−ヘキサジエニルオキシ、1,6−ヘキサジエニルオキシなどが含まれる。
【0034】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C3-8シクロアルキルとは、3〜8個の炭素原子で構成されるシクロアルキル基を指し、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが含まれる。
【0035】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C3-8シクロアルケニルとは、3〜8個の炭素原子で構成されるシクロアルケニル基を指し、例として、シクロプロペン−1−イル、2−シクロプロペン−1−イル、シクロブテン−1−イル、2−シクロブテン−1−イル、1,3−シクロブタジエン−1−イル、シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、1,3−シクロペンタジエン−1−イル、1,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、1,3−シクロヘキサジエン−1−イル、1,4−シクロヘキサジエン−1−イル、1,5−シクロヘキサジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル、シクロヘプテン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、3−シクロヘプテン−1−イル、4−シクロヘプテン−1−イル、1,3−シクロペンタジエン−1−イル、1,4−シクロペンタジエン−1−イル、1,5−シクロヘプタジエン−1−イル、1,6−シクロヘプタジエン−1−イル、2,4−シクロヘプタジエン−1−イル、2,5−シクロヘプタジエン−1−イル、2,6−シクロヘプタジエン−1−イル、3,5−シクロヘプタジエン−1−イル、1,3,5−シクロヘプタトリエン−1−イル、1,3,6−シクロヘプタトリエン−1−イル、1,4,6−シクロヘプタトリエン−1−イル、2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−イル、シクロオクテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、3−シクロオクテン−1−イル、4−シクロオクテン−1−イル、1,3−シクロオクタジエン−1−イル、1,4−シクロオクタジエン−1−イル、1,5−シクロオクタジエン−1−イル、1,6−シクロオクタジエン−1−イル、1,7−シクロオクタジエン−1−イル、2,4−シクロオクタジエン−1−イル、2,5−シクロオクタジエン−1−イル、2,6−シクロオクタジエン−1−イル、2,7−シクロオクタジエン−1−イル、3,5−シクロオクタジエン−1−イル、3,6−シクロオクタジエン−1−イル、1,3,5−シクロオクタトリエン−1−イル、1,3,6−シクロオクタトリエン−1−イル、1,3,7−シクロオクタトリエン−1−イル、1,4,6−シクロオクタトリエン−1−イル、1,4,7−シクロオクタトリエン−1−イル、1,5,7−シクロオクタトリエン−1−イル、2,4,6−シクロオクタトリエン−1−イル、2,4,7−シクロオクタトリエン−1−イルなどが含まれる。
【0036】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、5〜14員環の非芳香族複素環とは、単環式、二環式、または三環式の、5〜14員環の非芳香族複素環であって、窒素、硫黄および酸素から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有するものを意味する。具体例としては、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、イミダゾリニル、オキサゾリニルなどが含まれる。また、ピリドン環および非芳香族縮合環由来の基(例えば、フタルイミド環、スクシンイミド環等由来の基)もまた、非芳香族複素環に含まれる。
【0037】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、C6-14芳香族炭化水素環およびアリールとは、6〜14個の炭素原子、単環、および縮合された二環、三環等で構成される芳香族炭化水素環を意味する。具体例としては、フェニル、インデニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、インダテニル、アセナフチル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントラセニル、シクロペンタシクロオクテニル、ベンゾシクロオクテニルなどが含まれる。
【0038】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物に関し、5〜14員環の芳香族複素環およびヘテロアリール環とは、単環式、二環式、または三環式の、5〜14員環の芳香族複素環であって、窒素、硫黄および酸素から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有するものを意味する。具体例としては、以下のものが含まれる:(1)窒素を含有する芳香族複素環、例えばピロリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、iso−インドリル、インドリジニル、プレニル、インダゾリル、キノリル、iso−キノリル、キノリジイル、フタラジル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、イミダゾトリアジニル、ピラジノピリダジニル、アクリジニル、フェナントリジニル、カルバゾリル、カルバゾリニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イミダゾピリジル、イミダゾピリミジニル、またはピラゾロピリジルなど;(2)硫黄を含有する芳香族複素環、例えばチエニルまたはベンゾチエニルなど;(3)酸素を含有する芳香族複素環、例えばフリル、ピラニル、シクロペンタピラニル、ベンゾフリル、またはiso−ベンゾフリルなど;および(4)2つ以上の異なるヘテロ原子を含有する芳香族複素環、例えばチアゾリル、iso−チアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル、オキサゾリル、イソキサゾイル、ベンゾキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾロキサジアゾリル、イミダゾチアゾリル、チエノフラニル、フロピロリル、またはピリドキサジニルなど。
【0039】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物において使用される1,2−ジヒドロピリジン化合物は、好ましくは以下の式(III)の化合物である。
【化8】

ここで、X1,X2、X3、A1、A2、A3、R17およびR18は、上記式(II)の化合物について定義されたものと同じ意味を有する。
別の実施形態において、本発明は式(III)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3は、それぞれ独立して、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または5〜14員環の芳香族ヘテロ環である。別の実施形態において、本発明は、式(III)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立して、フェニル、ピロリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、ナフチル、キノリル、iso−キノリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、イミダゾピリジル、カルバゾリル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、ジオキシニル、アダマンチル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリルであり;ここで、それぞれが任意に置換され得る。別の実施形態において、本発明は式(III)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3はそれぞれ独立して以下のものから選択され;
【化9】

それぞれが任意に置換され得る。別の実施形態において、本発明は式(III)の化合物を提供し、ここで、A1、A2およびA3における置換基の結合部位は、基X1,X2およびX3それぞれに結合する炭素原子のα位にある。別の実施形態において、本発明は式(III)の化合物を提供し、ここで、X1,X2およびX3は単結合である。別の実施形態において、本発明は式(III)の化合物を提供し、ここで、R7およびR18は水素である。
【0040】
1つの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物において使用される1,2−ジヒドロピリジン化合物は、好ましくは以下の化合物Aである:
【化10】

化合物AのIUPAC名は、2−(2−オキソ−1−フェニル−5−ピリジン−2−イル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)ベンゾニトリルである。化合物Aはまた、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンとも言われる。
【0041】
明細書全体を通じ、用語「化合物A」、「2−(2−オキソ−1−フェニル−5−ピリジン−2−イル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)ベンゾニトリル」および「3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン」には、その薬学的に許容可能な塩、その立体異性体、その立体異性体の薬学的に許容可能な塩、その水和物、その薬学的に許容可能な塩の水和物、その水和物の立体異性体、およびその薬学的に許容可能な塩の水和物の立体異性体が含まれることを意図する。別の実施形態において、用語「化合物A」、「2−(2−オキソ−1−フェニル−5−ピリジン−2−イル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)ベンゾニトリル」および「3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン」は、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、およびその薬学的に許容可能な塩の水和物が含まれることを意図する。
【0042】
その他の実施形態において、本発明の方法および組成物において有用な1,2−ジヒドロピリジン化合物は:3−(2−シアノフェニル)−5−(2−メチルスルホニルアミノフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ニトロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−アミノフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メチルスルホニルアミノフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メチルアミノフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ジメチルアミノフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−[3−(5−メトキシメチル−2−オキサゾリジノン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メトキシカルボニルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メチルアミノカルボニルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ホルミルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ヒドロキシメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−シアノメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−アセチルアミノメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メチルスルホニルアミノメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−アセトキシメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−メチルチオフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−メチルスルホニルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ホルミルチオフェン−3−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ジエチルアミノメチルチオフェン−3−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ヒドロキシメチルチオフェン−3−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−ベンジル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−フェニル−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1,5−ジフェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−メトキシフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(チオフェン−3−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−フルオロフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(チオフェン−2−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(3−フルフリル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−フルフリル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−メトキシカルボニルフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−フェニル−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(4−メトキシ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−メトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メトキシ−フェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−フェニル−5−(2−ピリジル)−1−(3−フルオロフェニル−)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−ホルミルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−ホルミルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−クロロフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−トリル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(チオフェン−3−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−フルフリル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−トリル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−メトキシピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(ピリミジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ベンジルオキシメチルピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−エチルチオピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル−)−1−(4−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−メトキシピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−クロロピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5 −(2−ピリジル)−1−(2−フルオロピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−メトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−フェニル−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(チオフェン−3−イル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2,6−ジメチルフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノチオフェン−3−イル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロ−3−ピリジル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ヒドロキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ジメチルアミノエトキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−クロロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(3−ジメチルアミノプロポキシフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−ヒドロキシメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(4−シアノメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−シアノメチルフェニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(6−ジエチルアミノメチル−2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−フェニル−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−ヒドロキシピリジン−6−イル)−1−フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−(2−アミノベンゾチアゾール−6−イル)−3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(1−ベンジル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−5−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−[2−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]−1−
フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(6−メチルピリジン−2−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(5−メチルピリジン−2−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(3−ヒドロキシピリジン−2−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−フェニル−5−(2−チアゾリル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−メトキシピリジン−6−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−(4−アミノフェニル)−3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−(3−アミノフェニル)−3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−アミノトルエン−4−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(ジメチルアミノエトキシ)フェニル]−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(ピペリジノエトキシ)フェニル]−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(ピロリジノエトキシ)フェニル]−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(ジイソプロイルアミノエトキシ)フェニル]−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(4−ピペリジノブチル−1−オキシ)フェニル]−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−(4−ニトロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−フェニル−5−(2−ピリジル)−3−(2−チアゾリル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−(3−ピリジル)−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−1−フェニル−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノピリジン−3−イル)−1−フェニル−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−(3−ニトロフェニル)−5−(2−ピリミジニル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−ニトロフェニル)−1−フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−ホルミルチオフェン−3−イル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−ナフチル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(1−ナフチル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;5−(2−アミノピリジン−6−イル)−3−(2−シアノフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;5−(2−ブロモピリジン−6−イル)−3−(2−シアノフェニル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−モルフォリノピリジン−6−イル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−(3−ヒドロキシフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−[3−(4−ピペリジルオキシ)]フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−[3−(N−アセチルピペリジン−4−イル−オキシ)フェニル]−3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−1−{3−[1−(メタンスルホニル)ピペリジン−4−イル−オキシ]フェニル}−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;1−[3−(N−メチルピペリジン−4−イル−オキシ)フェニル]−3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(6−クロロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−(2−ニトロトルエン−4−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−(2−シアノチオフェン−3−イル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−[2−(5−オキサゾリル)フェニル]−1−フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;3−[2−(5−オキサゾリル)チオフェン−3−イル]−1−フェニル−5−(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン;および3−(2−エトキシカルボニルビニルチオフェン−3−イル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンである。
【0043】
1,2−ジヒドロピリジン化合物、および1,2−ジヒドロピリジン化合物を作製する方法は、米国特許第6,949,571号、米国特許出願公開第2004/0023973号明細書、ならびに国際公開第WO03/047577号、WO04/009553号、WO06/004100号、およびWO06/004107号に記載されており、それらの開示事項は、その全体を引用することによって本明細書の一部となす。その他のAMPA受容体アンタゴニストを作製する方法は、国際公開第WO2005/094797号に記載されている。
【0044】
1つの実施形態において、本明細書に記載される方法および組成物において使用される化合物は、向知性薬である。向知性薬化合物には、コリンエステラーゼ阻害剤が含まれる。本発明の方法および組成物において使用されるコリンエステラーゼ阻害剤は、当技術分野におけるいかなる公知のものであっても良い。用語「コリンエステラーゼ阻害剤」には、コリンエステラーゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤の薬学的に許容可能な塩、コリンエステラーゼ阻害剤の立体異性体、およびコリンエステラーゼ阻害剤の立体異性体の薬学的に許容可能な塩が含まれる。コリンエステラーゼ阻害剤の具体例として、ドネペジル、タクリン、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、リバスチグミン、ガランタミン、シチコリン、ベルナクリン、ヒューペルジン(例えばヒューペルジンA)、メトリホネート、ヘプタスチグミン、エドロホニウム、フェンセリン、トルセリン、フェネチルノルシムセリン、キノスチグミン、ガンスチグミン、エパスチグミン、アプレアジン、3−[l−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパノン、(2−[2−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−9−メトキシ−1H−ピロロ[3,4−b]キノリン−1−オン)などが含まれる。1つの実施形態において、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、タクリン、ガランタミン、またはリバスチグミンである。
【0045】
1つの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物において使用される好ましいコリンエステラーゼ阻害剤は、以下の式(IV)の化合物である。
【化11】

ここで、Jは(a)(i)フェニル、(ii)ピリジル、(iii)ピラジル、(iv)キノリル、(v)シクロヘキシル、(vi)キノキサリル、および(vii)フリルから選択される、置換された、またはされていない基;(b)一価または二価の基であって、その中においてフェニルが、(i)インダニル、(ii)インダノニル、(iii)インデニル、(iv)インデノニル、(v)インダンジオニル、(vi)テトラロニル、(vii)ベンゾスベロニル、(viii)インダノリル、および(ix)C65−CO−CH(CH3)−から選択される1つ以上の置換基を有し得るもの;(c)環状アミド化合物に由来する一価の基;(d)低級アルキル;または(e)R21−CH=CH−であって、ここで、R21は水素または低級アルコキシカルボニルであり;Bは−(CHR22r−、−CO−(CHR22r−、NR4−(CHR22r−、CO−NR5−(CHR22r−、CH=CH−(CHR22r−、−OCOO−(CHR22r−、−OOC−NH−(CHR22r−、−NH−CO−(CHR22r−、−CH2−CO−NH−(CHR22r−、−(CH22−NH−(CHR22r−、−CH(OH)−(CHR22r−、=(CH−CH=CH)b−、=CH−(CH2c−、=(CH−CH)d=、−CO−CH=CH−CH2−、−CO−CH2−CH(OH)−CH2−、−CH(CH3)−CO−NH−CH2−、−CH=CH=CO−NH−(CH22−、−NH−、−O−、−S−、ジアルキルアミノアルキル−カルボニル、または低級アルコキシカルボニルであり;R4は水素、低級アルキル、アシル、低級アルキルスルホニル、フェニル、置換されたフェニル、ベンジル、または置換されたベンジルであり;R5は水素、低級アルキルまたはフェニルであり;rは0または1〜10の整数であり;R22は、1つのアルキレン基がメチル分枝を有さない、または1つ以上のメチル分枝を有し得るように、水素またはメチルであり;bは1〜3の整数であり;cは0または1〜9の整数であり;dは0または1〜5の整数であり;Tは窒素または炭素であり;Qは窒素、炭素または
【化12】

であり;qは1〜3の整数であり;Kは水素、フェニル、置換されたフェニル、フェニルが置換基を有し得るアリールアルキル、シンナミル、低級アルキル、ピリジルメチル、シクロアルキルアルキル、アダマンタンメチル、フリルメチル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニルまたはアシルであって、そして、
【化13】

は単結合または二重結合である。
【0046】
式(IV)の化合物において、Jは好ましくは(a)または(b)であり、より好ましくは(b)である。(b)の定義において、一価の基(2)、(3)および(5)、ならびに二価の基(2)が好ましい。基(b)には、好ましくは以下に示される式が含まれる:
【化14】

ここで、tは1〜4の整数であり;そしてそれぞれのSは独立して水素、または、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルもしくは1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシなどの置換基である。こうした置換基のうち、メトキシが最も好ましい。フェニルは、1〜3個のメトキシを有することが最も好ましい。(S)tは、フェニルの2つの隣接する炭素原子上にメチレンジオキシまたはエチレンジオキシを形成し得る。上記の基のうち、フェニル上に任意に置換基を有するインダノニル、インダンジオニルおよびインデニルが最も好ましい。
【0047】
Bの定義において、−(CHR22r−、−CO−(CHR22r−、=(CH−CH=CH)b−、=CH−(CH2c−および=(CH−CH)d=(ここで、bは1〜3の整数であり;cは0または1〜9の整数であり;dは0または1〜5の整数である)が好ましい。基−(CHR22r−において、R22が水素であって、rが1〜3の整数であるもの、および基=CH−(CH2c−が最も好ましい。Bにおける好ましい基は、Jの(b)、特に(b)(2)に結合し得る。式(I)においてTおよびQを含有する環は、5、6または7員環であり得る。Qが窒素であり、Tが炭素または窒素であり、そしてqが2であるもの;または、Qが窒素であり、Tが炭素であり、そしてqが1または3であるもの;あるいは、Qが炭素であり、Tが窒素であり、そしてqが2であるものが好ましい。Kは、フェニル、アリールアルキル、シンナミル、フェニルアルキルまたはフェニル上に置換基を有するフェニルアルキルであることが好ましい。
【0048】
1つの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物において使用される好ましいコリンエステラーゼ阻害剤は、以下の式(V)の化合物である:
【化15】

ここで、R1は、(1)置換された、またはされていないフェニル;(2)置換された、またはされていないピリジル;(3)置換された、またはされていないピラジル;(4)置換された、またはされていないキノリル;(5)置換された、またはされていないインダニル;(6)置換された、またはされていないシクロヘキシル;(7)置換された、またはされていないキノキサリル;(8)置換された、またはされていないフリル;(9)置換された、またはされていないフェニルを有するインダノンに由来する一価または二価の基;(10)環状アミド化合物に由来する一価の基;(11)低級アルキル;または(12)R3−CH=C−であって、ここで、R3は水素原子または低級アルコキシカルボニルであり;Xは−(CH2n−、−C(O)−(CH2n−、−N(R4)−(CH2n−、−C(O)−N(R5)−(CH2n−、−CH=CH−(CH2n−、−O−C(O)−O−(CH2n−、−O−C(O)−NH−(CH2n−、−CH=CH−CH=CO−、−NH−C(O)−(CH2n−、−CH2−C(O)−NH−(CH2n−、−(CH22−C(O)−NH−(CH2n−、−CH(OH)−(CH2n−、−C(O)−CH=CH−CH2−、−C(O)−CH2−CH(OH)−CH2−、−CH(CH3)−C(O)−NH−CH2−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH22−、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、低級アルコキシカルボニルであリ;nは0〜6の整数であり;R4は、水素、低級アルキル、アシル、低級アルキルスルホニル、置換された、またはされていないフェニル、または置換された、またはされていないベンジルであり;R5は水素、低級アルキルまたはフェニルであり;R2は、置換された、またはされていないフェニル;置換された、またはされていないアリールアルキル;シンナミル;低級アルキル;ピリジルメチル;シクロアルキルアルキル;アダマンタンメチル;またはフロイルメチルであり;そして、
【化16】

は単結合または二重結合である。
【0049】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、用語「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを意味する。「低級アルキル」基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(アミル)、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチル−ペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチル−ブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルなどが含まれる。低級アルキルは、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであり、より好ましくはメチルである。
【0050】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、R1の定義における置換された、またはされていないフェニル、ピリジル、ピラジル、キノリル、インダニル、シクロヘキシル、キノキサリルおよびフリルに対する置換基の具体例としては、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル基など;上記の低級アルキルに対応する低級アルコキシ(メトキシおよびエトキシ基など);ニトロ;ハロゲン(塩素、フッ素および臭素など);カルボキシル;上記の低級アルコキシに対応する低級アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルおよびn−ブチルオキシカルボニル基など);アミノ;低級モノアルキルアミノ;低級ジアルキルアミノ;カルバモイル;1〜6個の炭素原子を有する脂肪族飽和モノカルボン酸に由来するアシルアミノ(アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、イソブチリルアミノ、バレリルアミノおよびピバロイルアミノなど);シクロアルキルオキシカルボニル(シクロヘキシルオキシカルボニルなど);低級アルキルアミノカルボニル、例えばメチルアミノカルボニルおよびエチルアミノカルボニルなど;上記低級アルキルに対応する低級アルキルカルボニルオキシ、例えばメチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシおよびn−プロピルカルボニルオキシなど;ハロゲン化された低級アルキル(トリフルオロメチルなど);ヒドロキシル;ホルミル;および低級アルコキシ低級アルキル(エトキシメチル、メトキシメチルおよびメトキシエチルなど)が含まれる。上記の置換基における「低級アルキル」および「低級アルコキシ」には、上述の基由来の全ての基が含まれる。1個、2個または3個の置換基があってよく、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0051】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、置換基がフェニルである場合、以下の式が置換されたフェニルの範囲に含まれる:
【化17】

ここで、Gは−C(O)−、−O−C(O)、−O−、−CH2−NH−C(O)−、−CH2−O−、−CH2−SO2−、−CH(OH)−、または−CH2−S(→O)−であり;Eは炭素または窒素であり;そしてDは置換基である。
【0052】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、フェニルの置換基(すなわち「D」)の好ましい例として、低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、ハロゲン化された低級アルキル、低級アルコキシカルボニル、ホルミル、ヒドロキシル、および低級アルコキシ低級アルキル、ハロゲン、ならびにベンジル(benzyol)およびベンジルスルホニルが含まれる。2個またはそれ以上の置換基があってよく、それらは同一でも異なっていてもよい。ピリジルの置換基の好ましい例として、低級アルキルおよびアミノならびにハロゲンが含まれる。ピラジルの置換基の好ましい例として、低級アルコキシカルボニル、カルボキシル、アシルアミノ、カルバモイルおよびシクロアルキルオキシカルボニルが含まれる。
【0053】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、R1について、ピリジルは好ましくは2−ピリジル,3−ピリジルまたは4−ピリジルであり;ピラジルは好ましくは2−ピラジニルであり;キノリルは好ましくは2−キノリルまたは3−キノリルであり;キノキサリニルは好ましくは2−キノキサリニルまたは3−キノキサリニルであり;そして、フリルは好ましくは2−フリルである。
【0054】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、以下の(A)または(B)で示される、インダノンに由来する一価または二価の基の例は、置換されていないまたは置換されたフェニルを有する。
【化18】

ここで、mは1〜4の整数であり、各Aは独立して水素、低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、アミノ、低級モノアルキルアミノ、低級ジアルキルアミノ、カルバモイル、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族飽和モノカルボン酸に由来するアシルアミノ、シクロアルキルオキシカルボニル、低級アルキルアミノカルボニル、低級アルキルカルボニルオキシ、ハロゲン化された低級アルキル、ヒドロキシル、ホルミル、または低級アルコキシ低級アルキルであり;好ましくは水素、低級アルキルまたは低級アルコキシであり;最も好ましくは、インダノンは置換されていない、または1〜3個のメトキシで置換されている。
【0055】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、環状アミド化合物に由来する一価の基の例として、キナゾロン、テトラヒドロイソキノリノン、テトラヒドロベンゾジアゼピノンおよびヘキサヒドロベンズアゾシノンが含まれる。一価の基は、その構造式において環状アミドを有するいかなるものでもよく、上記の具体例に限定されない。環状アミドは、単環または縮合複素環に由来のものであり得る。縮合複素環は、好ましくはフェニルとの縮合により形成されたものである。この場合、フェニルは、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基、好ましくはメチル、または1〜6個の炭素原子を有する低級アルコキシ、好ましくはメトキシと置換され得る。
【0056】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、一価の基の例として以下の式に示すものが含まれる。
【化19】

上記式において、Yは水素または低級アルキルであり;VおよびUは各々が水素または低級アルコキシ(好ましくはジメトキシ)であり;W1およびW2は各々が水素、低級アルキルまたは低級アルコキシであり;そしてW3は水素または低級アルキルである。式(j)および(l)における右側の環は7員環であり、一方、式(k)における右側の環は8員環である。
【0057】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、R1の最も好ましい例として、置換されていないまたは置換されたフェニルを有するインダノン由来の一価の基、および環状アミド化合物由来の一価の基が含まれる。本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、Xの最も好ましい例として、−(CH2n−、アミド、または上記式に示される基であってnが2のものが含まれる。このように、
【化20】

に示される基の任意の一部がカルボニルまたはアミドを有することが最も好ましい。
【0058】
本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤に関し、R2の上記定義における「置換されたまたはされていないフェニル」および「置換されたまたはされていないアリールアルキル」という表現に含まれる置換基は、R1の定義におけるフェニル、ピリジル、ピラジル、キノリル、インダニル、シクロヘキシル、キノキサリルまたはフリルに関する上記定義において述べられた置換基と同一のものである。用語「アリールアルキル」は、置換されていないベンジルまたはフェネチルなどを意味することを意図する。ピリジルメチルの具体例として、2−ピリジルメチル、3−ピリジルメチル、および4−ピリジルメチルが含まれる。R2の好ましい具体例として、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。記号
【化21】

は、二重結合または単結合を意味する。結合は、R1が置換されていないまたは置換されたフェニルを有するインダノンに由来する二価の基(B)である場合のみ二重結合であり、その他の場合は単結合である。
【0059】
1つの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物に使用される好ましいコリンエステラーゼ阻害剤は、以下の式(VI)の化合物である。
【化22】

ここで、rは1〜10の整数であり;各R22は、独立して水素またはメチルであり;Kはフェナルキルまたはフェニル上に置換基を有するフェナルキルであり;各Sは独立して水素、C1-6低級アルキル、またはC1-6低級アルコキシであり;tは1〜4の整数であり;qは1〜3の整数であり;但し、(S)tは、フェニルにおける2つの隣接する炭素原子に結合するメチレンジオキシまたはエチレンジオキシであり得る。
【0060】
他の実施形態において、式(VI)の化合物は、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチル−ピペリジン;1−ベンジル−4−((5−メトキシ−(1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−ベンジル−4−((5,6−ジエトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−ベンジル−4−((5,6−メチレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−シクロヘキシルメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−(m−フルオロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピルピペリジン;1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン;1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−オキソインダノン)−2−イル)プロペニルピペリジン;前述のうち1つ以上のものの薬学的に許容可能な塩;前述のうち1つ以上のものの立体異性体;または前述のうち1つ以上のものの立体異性体の薬学的に許容可能な塩である。
【0061】
その他の実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物に使用される式(VI)の化合物は、好ましくは1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−l−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンであって以下の式(B)に示されるものである:
【化23】

【0062】
式(B)の化合物は、ドネペジルとして知られており、多形体または結晶多形の形態であってよい。例えば、ドネペジルは、多形体(II)、(III)、(IV)または(V)の形態であってよく、好ましくは多形体(III)である。ドネペジルは、結晶多形(A)、(B)または(C)の形態であってよい。多形体、結晶多形、および多形体もしくは結晶多形を作製する方法は、米国特許第5,985,864号、第6,140,321号および第6,245,911号に記載されており、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0063】
さらに他の実施形態において、式(III)の化合物は、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン塩酸塩であり、これはドネペジル塩酸塩としても知られており、また、これは以下の式(B1)に示される:
【化24】

【0064】
本発明の化合物は、置換基の種類に応じて不斉炭素原子、および本発明の範囲内である立体異性体を有し得る。例えば、ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩は、特願平4−187674号および特願平4−21670号に記載される形態であり得、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0065】
特願平4−187674号は、以下の式(B2)の化合物を記載しており:
【化25】

これは、塩酸塩などの薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。特願平4−21670号は、以下の式(B3)の化合物を記載しており:
【化26】

これは、塩酸塩などの薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。また、以下の式(B4)の化合物も記載しており:
【化27】

これは、塩酸塩などの薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。また、以下の式(B5)の化合物も記載している。
【化28】

【0066】
明細書全体を通じ、用語「ドネペジル」および「1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン」は、以下のうち1つ以上を含むことを意図する(例えば、それらのうち2つ以上の組合せなど):薬学的に許容可能な塩;立体異性体;多形体;および結晶多形。
【0067】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤は、市販されているか、または、当技術分野において公知の方法、例えば米国特許第4,895,841号、第5,985,864号、第6,140,321号および第6,245,911号、国際公開第WO98/39000号、特願平4−187674号および特願平4−21670号などに記載されている方法で調製することができ、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0068】
本発明は、治療上有効量の:(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト;(ii)少なくとも1つの向知性薬;および(iii)薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。AMPA受容体アンタゴニストは、本明細書に記載の1,2−ジヒドロピリジン化合物などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。向知性薬は、本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。
【0069】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト;および(ii)少なくとも1つの向知性薬を含む組合せを提供する。こうした組合せは、本明細書に記載の疾病または障害(例えば認知機能障害、認知症など)を治療するために、患者に別々に投与されてもよい(例えば同時に、連続して等)。AMPA受容体アンタゴニストは、本明細書に記載の1,2−ジヒドロピリジン化合物などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。向知性薬は、本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。
【0070】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(i)少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト;(ii)少なくとも1つの向知性薬;および(iii)本明細書に記載の疾病および障害の治療においてそれらを同時に、別々に、または連続して使用するための指示書を含むコマーシャル・パッケージ(例えばキット)を提供する。AMPA受容体アンタゴニストは、本明細書に記載の1,2−ジヒドロピリジン化合物などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。向知性薬は、本明細書に記載のコリンエステラーゼ阻害剤などの当技術分野において知られるいかなるものであってもよい。
【0071】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(i)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;(ii)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤;および(iii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、治療上有効量の:(i)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(ii)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を含む組合せを提供し、ここで、こうした化合物は、本明細書に記載の疾病または障害を治療するために、患者に別々に投与されてもよい(例えば同時に、連続して等)。本発明は、治療上有効量の:(i)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;(ii)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤;および(iii)本明細書に記載の疾病および障害の治療において(i)および(ii)を同時に、別々に、または連続して使用するための指示書を含むコマーシャル・パッケージ(例えばキット)を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物は、本明細書に記載の任意のものであり得る。例えば、1,2−ジヒドロピリジン化合物は、式(I)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、または化合物Aであり得る。コリンエステラーゼ阻害剤は、本明細書に記載の任意のものであり得る。例えば、コリンエステラーゼ阻害剤は、式(IV)の化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(B)の化合物、式(B1)の化合物、式(B2)の化合物、式(B3)の化合物、式(B4)の化合物、または式(B5)の化合物であり得る。その他の実施形態において、コリンエステラーゼ阻害剤は、タクリン、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、リバスチグミン、ガランタミン、シチコリン、ベルナクリン、ヒューペルジン(例えばヒューペルジンA)、メトリホネート、ヘプタスチグミン、エドロホニウム、フェンセリン、トルセリン、フェネチルノルシムセリン、キノスチグミン、ガンスチグミン、エパスチグミン、アプレアジン、3−[l−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパノン、または(2−[2−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−9−メトキシ−1H−ピロロ[3,4−b]キノリン−1−オンであり得る。1つの実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(i)ドネペジル;(ii)3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−l −フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オン;および(iii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0072】
本発明は、(i)治療を必要とする患者の1つ以上の認知機能障害を治療する方法;(ii)治療を必要とする患者の認知症を治療する方法;ならびに(iii)治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することによって、患者の認知症または1つ以上の認知機能障害の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与され得る。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。
【0073】
認知症を治療する方法には、認知症に関連する行動障害を治療する方法が含まれる。行動障害の具体例として、性的脱抑制、活動における変化、対人関係の変化、身体的攻撃性、身体的非攻撃性(例えば徘徊)、言葉の攻撃性、および言葉の非攻撃性(例えば発声の反復)が含まれる。
【0074】
認知機能障害または認知症の原因は、知られていても知られてなくともよい。例えば、認知症および認知機能障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、レヴィー小体認知症、血管疾患(例えば脳血管疾患)、HIV、AIDS、癲癇、脳腫瘍、脳障害、多発性硬化症、ダウン症候群、レット症候群、進行性核上麻痺、前頭葉症候群、統合失調症、外傷性脳損傷(例えば閉鎖性頭部外傷)、冠動脈バイパス移植術後、電気ショック療法、化学療法、放射線治療、放射線被曝、脳炎、脳膜炎、胎児期アルコール症候群、コルサコフ症候群、無酸素症の脳外傷、心肺機能蘇生、糖尿病、閉経、卒中、高コレステロール値、または脊髄障害(例えば脊髄損傷、脊髄乏血、脊髄梗塞、脊髄痙攣など)によって引き起こされ得る。1つの実施形態において、認知機能障害は、軽度認知障害または年齢に関連した認知機能障害であってよい。認知機能障害、認知症、および認知機能障害と認知症の原因についての更なる記載として、米国特許第6,458,807号、米国特許出願公開第2006/0018839号明細書、および国際公開第WO2005/074535号の開示内容が、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0075】
本発明の別の実施形態において、認知機能障害は、犬の認知機能障害または機能障害(CCD)であってもよく、これらは、年齢に関連した犬の認知能力の低下であって、一般的な病状に全く起因しない行動の変化によって特徴づけられる。獣医用組成物を調製するとき、当業者であれば、当該組成物が、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン);(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル);および(c)獣医学的に許容可能なキャリアを含有するであろうことを理解するであろう。犬用の用量は、ヒトにおける許容量および犬の大きさと体重に基づいて容易に得ることができる。
【0076】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することにより、患者の:(i)神経変性疾患を治療する方法;および(ii)神経変性疾患の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与することができる。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。神経変性疾患は、当技術分野において知られているいかなるものであってもよい。神経変性疾患の具体例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ピック病、レヴィー小体認知症、プリオン病(例えばクロイツフェルト・ヤコブ病)、多発性硬化症、癲癇、卒中などが含まれる。
【0077】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することにより、患者の(i)アルツハイマー病を治療する方法;および(ii)アルツハイマー病の発病を遅らせる方法を提供する。アルツハイマー病は、軽度、中度、または重度であってよい。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与し得る。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。
【0078】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することにより、患者の(i)パーキンソン病を治療する方法;および(ii)パーキンソン病の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与することができる。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。
【0079】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することにより、患者の(i)ハンチントン病を治療する方法;および(ii)ハンチントン病の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与することができる。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。
【0080】
その他の実施形態において、本発明は、治療上有効量の:(a)少なくとも1つの1,2−ジヒドロピリジン化合物;および(b)少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害剤を治療を必要とする患者に投与することにより、患者の(i)筋萎縮性側索硬化症を治療する方法;および(ii)筋萎縮性側索硬化症の発病を遅らせる方法を提供する。1,2−ジヒドロピリジン化合物およびコリンエステラーゼ阻害剤は、別々に投与することができ、または組成物の形態で投与することができる。1つの実施形態において、1,2−ジヒドロピリジン化合物は3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンであり、コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジルである。
【0081】
1,2−ジヒドロピリジン化合物などのAMPA受容体アンタゴニスト、およびコリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬は、所望の従来型の非毒性の薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルを含有する用量ユニットの処方物に含まれて、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入により(鼻または口からの)、または経直腸で投与することができる。用語「非経口的」には、皮下、静脈、筋肉内、髄腔内、胸骨内への注射もしくは注入の手法が含まれる。
【0082】
本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物などのAMPA受容体アンタゴニスト(例えば3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オン)の1日の用量は、経口投与の場合は、通常約30μg〜10gの範囲であり、好ましくは100μg〜5gの範囲であり、より好ましくは100μg〜100mgの範囲である。注射による投与の場合、1日の用量は、通常約30μg〜1gの範囲であり、好ましくは100μg〜500mgの範囲であり、より好ましくは100μg〜30mgの範囲である。当該化合物は、1日1回、または1日に何回かに分けて投与される。用量の意味で使用される場合、数字による重量は、本発明の1,2−ジヒドロピリジン化合物などのAMPA受容体アンタゴニストの重量を指し、塩、対イオン、水和物などはいずれも除かれる。従って、500mgの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンに相当するものを得るためには、薬学的に許容可能な塩および/または水和物の重量が加わるために、500mgを超える量の当該化合物の薬学的に許容可能な塩および/または水和物を使用する必要がある。
【0083】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬(例えばドネペジル)の1日の用量は、通常約0.1mgから100mgの範囲であり、好ましくは1mgから50mgの範囲であり、より好ましくは5mg〜25mgの範囲である。その他の実施形態において、1日の用量は、10mg〜20mgの範囲、または5mg〜10mgの範囲である。当該化合物は、1日1回、または1日に何回かに分けて投与される。用量の意味で使用される場合、数字による重量は、本発明のコリンエステラーゼ阻害剤などの向知性薬の重量を指し、塩、対イオンなどはいずれも除かれる。従って、10mgのドネペジルに相当するものを得るためには、塩酸塩の重量が加わるために、10mgを超える量のドネペジル塩酸塩を使用する必要がある。
【0084】
1つの実施形態において、投与の様式は、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または動脈内注射などの注射によるものである。注射可能な調製物、例えば無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、懸濁化剤(例えばメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシメチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど)、pH調整剤、緩衝液、可溶化剤(例えばポリオキシエチレン水素化キャスターオイル、ポリソルベート80、ニコチンアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、キャスターオイル脂肪酸のエチルエステルなど)および防腐剤を使用する技術に従って配合し得る。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば1,3−ブタンジオールの溶液などの、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶剤中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液とすることができる。使用し得る許容可能なビヒクルおよび溶剤の中には、水、リンゲル液および等張食塩水がある。加えて、無菌の不揮発性油が、溶剤または懸濁媒として従来より使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含めた任意の無刺激の不揮発性油を使用することができ、加えて、オレイン酸などの脂肪酸を、注射可能な調製物において使用し得る。こうした調製物は、当技術分野において知られている方法によって凍結乾燥することができる。
【0085】
経口投与用の固形剤形は、チューインガム、カプセル、タブレット、舌下錠、粉末、顆粒、およびゲルを含み得る。このような固形剤形において、活性化合物は、ラクトースまたは澱粉などの1つ以上の不活性希釈剤と混合することができる。通常の慣行として、このような剤形は、ステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤を含む他の物質も含み得る。カプセル、タブレットおよび丸剤の場合は、剤形は緩衝剤も含み得る。タブレットは、腸溶コーティングまたはフィルム・コーティング、好ましくはフィルム・コーティングと共に調製し得る。
【0086】
タブレットを作製するために、化合物は、例えば、ビヒクル(例えばラクトース、グラニュー糖、マンニトール、グルコース、澱粉、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ケイ酸など)、結合剤(例えば水、エタノール、ミラノール、グルコース溶液、澱粉溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドンなど)、崩壊剤(例えば乾燥した澱粉、ナトリウム、アルギネート、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、ラクトースなど)、吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、湿潤剤(例えばグリセリン、澱粉など)、滑剤(例えばステアリン酸塩、ポリエチレングリコールなど)、および香料添加剤(例えば甘味料)などの、当技術分野において知られている薬学的に許容可能なキャリアと混合することができる。タブレットは、従来のタブレット、成形タブレット、ウェファーなどの形態をとり得る。
【0087】
舌下投与とは、口内における投与(例えば、舌の下、頬と歯肉の間、舌と口蓋の間など)のことをいう。口内の血管の多い粘膜内層は、化合物を体内に投与するための位置として便利である。
その他の実施形態において、固形剤形は、薬学的に許容可能なキャリア内の顆粒または粉末としてパッケージすることができ、ここで、当該顆粒または粉末はパッケージングから移されて、食物に振りかけられるか、あるいは水またはジュースなどの液体と混合されるか、あるいはここで、顆粒はカプセルに挿入される。この実施形態において、本明細書に記載の化合物は、香料添加剤または甘味剤と混合され得る。パッケージングの材料は、プラスチック、コート紙、あるいは、水分または湿気が顆粒および/または粉末に到達しないようにする任意の材料であり得る。
【0088】
経口投与用の液体の剤形は、水などの当技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤を含有する薬学的に許容可能な乳剤、溶液、舌下用の溶液、懸濁液、およびシロップを含み得る。このような組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤などのアジュバント、ならびに甘味剤、香料添加剤および香料を含み得る。舌下用溶液を作製するために、化合物は、種々のキャリア、賦形剤、pH調整剤など(例えば、水、砂糖、乳酸、酢酸、フルクトース、グルコース、サッカリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アルコール、ベントナイト、トラガカント、ゼラチン、アルギン酸塩、アスパルテーム、ソルビトール、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、人工調味料および着色剤など)と混合することができる。
【0089】
吸入による投与のために、化合物は、吸入器、噴霧器、または加圧型のパックもしくはエアゾールスプレーを送るためのその他の便利な様式から送達することができる。加圧型のパックは、適切な促進剤を含み得る。あるいは、吸入による投与のために、化合物は、乾燥粉末組成物または液体スプレーの形態で投与し得る。
【0090】
直腸投与用坐剤は、活性化合物を、適切な刺激性のない賦形剤、例えば室温で固体であり体温で液体となるカカオ脂およびポリエチレングリコールなどと混合することにより調製することができる。あるいは、浣腸は、直腸投与用に、本明細書に記載の化合物によって調製し得る。
【0091】
表皮への局所投与用に、化合物は、軟膏、クリームまたはローションとして、あるいは経皮パッチの有効成分として配合し得る。化合物はまた、イオントフォレシスまたは浸透圧ポンプを経由して投与することができる。軟膏、クリームおよびローションは、水性または油性のベースに、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を加えることで配合し得る。あるいは、軟膏、クリームおよびローションは、水性または油性のベースで配合することができ、また、1つ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤および/または着色剤を含み得る。クリームまたはローションとして、化合物は、例えば防腐剤(例えばベンジルアルコール1%または2%(wt/wt))、乳化ろう、グリセリン、イソプロピルパルミテート、乳酸、精製水、ソルビトール溶液のうちの1つ以上と混合して、滑らかで均質のクリームまたはローションを形成し得る。このような局所的に投与可能な組成物は、ポリエチレングリコール400を含有し得る。軟膏を形成するために、化合物は、防腐剤(例えばベンジルアルコール2%(wt/wt))、ペトロラタム、乳化ろうおよびテノックス(II)(例えばブチル化されたヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸、プロピレングリコールなど)のうちの1つ以上と混合し得る。局所的な適用のために、織布のパッドまたは包帯用材料のロール、例えばガーゼなどに、経皮投与可能な組成物を染み込ませることができる。
【0092】
化合物はまた、アクリル系のポリマー接着剤の1つと樹脂性の架橋剤とに本明細書に記載の化合物を染み込ませて、不浸透性の裏あてに積層したものなどの経皮システムを使用して、局所的に適用することができる。例えば、化合物は、徐放性の経皮パッチなどの経皮パッチの形態で投与し得る。経皮パッチは、例えば粘着性のマトリックス、ポリマー・マトリックス、貯蔵パッチ、マトリクス型またはモノリシック型の積層構造などの任意の従来型の形態を含めることができ、一般的に裏うち層、接着剤、浸透促進剤、および/または律速膜のうちの1つ以上により構成される。経皮パッチは一般的に、適用前に剥がされて、接着剤/有効成分を露出するはく離牲ライナーを有する。経皮パッチは、例えば米国特許第5,262,165号、第5,948,433号、第6,010,715号および6,071,531号に記載されており、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0093】
本発明は、本明細書に記載の疾病および障害を治療するために患者に経鼻的に投与される化合物を提供する。「経鼻的に投与される」または「経鼻的投与」は、患者の鼻の粘膜を通じての吸収のために、少なくとも1つの化合物が適切な送達システムと組み合わされることを意味することを意図する。一般的に、例えば経口投与に必要な用量と比較すると、経鼻的投与では、より低い化合物の用量を使用し得る。
【0094】
化合物は、例えば、スプレー式点鼻薬、点鼻剤、鼻用懸濁液、鼻用ゲル、鼻用軟膏、鼻用クリームまたは鼻用パウダーとして投与し得る。化合物はまた、鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを使用して投与することができる。化合物は、従来より使用されるシステム、例えば天然のガム、メチルセルロースおよび誘導体、アクリルポリマー(カルボポール)およびビニルポリマー(ポリビニルピロリドン)などによって粘着性のベースに組み込むことができる。組成物において、水、防腐剤、界面活性剤、溶剤、接着剤、抗酸化剤、緩衝液、バイオ接着剤、粘着性増加剤、およびpHと浸透圧モル濃度の調節剤などの、当技術分野において知られる多くのその他の賦形剤が添加され得る。
【0095】
鼻への送達システムは、水溶液、非水溶液、およびそれらの組合せを含む多様な形態をとり得る。水溶液として、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散液、水性乳剤、水性マイクロエマルジョン、およびそれらの組合せが含まれる。非水溶液として、例えば、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散液、非水性乳剤、非水性マイクロエマルジョン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0096】
その他の実施形態において、経鼻的送達システムは、粉末製剤であり得る。粉末製剤として、例えば、粉末の混合物、粉末のミクロスフェア、被覆粉のミクロスフェア、リポソーム分散液、およびこれらの組合せが含まれる。好ましくは、粉末製剤は粉末のミクロスフェアである。粉末のミクロスフェアは、好ましくは、澱粉、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、アルギン酸−ポリビニルアルコール、アラビアゴム、キトサン、およびこれらのうち2つ以上の混合物から選択された種々の多糖およびセルロースから形成される。
【0097】
ある実施形態において、鼻の粘膜に送達される水溶液および/または非水溶液の液滴、あるいは粉末の粒径は、例えば、約0.1ミクロン〜約100ミクロン;約1ミクロン〜約70ミクロン;約5ミクロン〜約50ミクロン;または約10ミクロン〜約20ミクロンであり得る。粒径は、当技術分野において知られる適切な容器または計量装置を使用して得ることができる。装置の具体例として、ピストンの動きによって送達が行われる機械ポンプ;手動のポンプで空気を容器に送り込むことによって送達が行われる圧縮空気機構;密封した容器内への圧縮ガスの制御放出によって送達が行われる圧縮ガス(例えば窒素)の手法;低沸点液化炭化水素(例えばブタン)を蒸発させて圧力を発揮させ、その力で計量バルブに組成物を通す液化促進剤の手法;などが含まれる。粉末は、例えば、カプセル内に入れて、それを吸入装置または吹送装置にセットするような方法で投与してもよい。針をカプセルに貫通させて、カプセルの上部および底部に穴を開け、空気を送って粉末の粒子を吹き出させる。粉末の配合はまた、不活性ガスのジェット噴射により、または有機液体に懸濁させて投与し得る。
【0098】
1つの実施形態において、本発明は、化合物の溶解度を改善する経鼻的送達システムにおいて分散させた少なくとも1つの化合物を含む、経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。溶解度を改善する経鼻的送達システムには、以下のうちの1つまたはそれらの組合せを含み得る:(i)グリコール誘導体(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの混合物など);(ii)糖アルコール(例えばマンニトール、キシリトール、これらの混合物など);(iii)グリセリン;(iv)グリコール誘導体(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはこれらの混合物など)およびグリセリン;(v)アスコルビン酸および水;(vi)アスコルビン酸ナトリウムおよび水;または(vii)メタ重亜硫酸ナトリウムおよび水。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物および経鼻的送達システムを含む経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。ここで、当該経鼻的送達システムは、本明細書に記載の化合物のpHを維持するための少なくとも1つの緩衝液、少なくとも1つの薬学的に許容可能な増粘剤、および少なくとも1つの保湿剤を含む。経鼻的送達システムは、さらに任意に、界面活性剤、防腐剤、抗酸化剤、バイオ接着剤、pH調整剤、等張化剤、可溶化剤および/またはその他の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。本明細書に記載の化合物は、その溶解度を改善する経鼻的送達システムに任意に分散され得る。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物および経鼻的送達システムを含む経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。ここで、経鼻的送達システムは、少なくとも1つの可溶化剤、少なくとも1つの薬学的に許容可能な増粘剤、および少なくとも1つの保湿剤を含む。経鼻的送達システムは、さらに任意に、緩衝液、pH調整剤、等張化剤、界面活性剤、防腐剤、抗酸化剤、バイオ接着剤、および/またはその他の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。本明細書に記載の化合物は、その溶解度を改善する経鼻的送達システムに任意に分散され得る。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物および経鼻的送達システムを含む経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。ここで、経鼻的送達システムは、化合物のpHを維持するための少なくとも1つの緩衝液、少なくとも1つの薬学的に許容可能な増粘剤、少なくとも1つの保湿剤、および少なくとも1つの界面活性剤を含む。経鼻的送達システムは、さらに任意に、pH調整剤、等張化剤、可溶化剤、防腐剤、抗酸化剤、バイオ接着剤、および/またはその他の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。本明細書に記載の化合物は、その溶解度を改善する経鼻的送達システムに任意に分散され得る。
【0102】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物および経鼻的送達システムを含む経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。ここで、経鼻的送達システムは、少なくとも1つの薬学的に許容可能な増粘剤、少なくとも1つの保湿剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの可溶化剤を含む。経鼻的送達システムは、さらに任意に、緩衝液、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、バイオ接着剤、および/またはその他の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。化合物は、その溶解度を改善する経鼻的送達システムに任意に分散され得る。
【0103】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物および経鼻的送達システムを含む経鼻的に投与可能な医薬組成物を提供する。ここで、経鼻的送達システムは、化合物のpHを維持するための少なくとも1つの緩衝液、少なくとも1つの薬学的に許容可能な増粘剤、少なくとも1つの保湿剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの可溶化剤を含む。経鼻的送達システムは、さらに任意に、緩衝液、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、バイオ接着剤、および/またはその他の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。本明細書に記載の化合物は、その溶解度を改善する経鼻的送達システムに任意に分散され得る。
【0104】
緩衝液は、鼻粘膜全域での1,2−ジヒドロピリジン化合物の吸収を最適化するように選択されたpHを有する。緩衝液の特定のpHは、特定の経鼻的送達用配合および選択された特異的な化合物によって異なり得る。本発明における使用に適した緩衝液には、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム二水和物)、フタル酸塩、ホウ酸塩、プロラミン、トロラミン、炭酸塩、リン酸塩(例えば一カリウムリン酸塩、リン酸ナトリウム)、およびこれらのうち2つ以上の混合物が含まれる。
【0105】
組成物のpHは、約3.0〜約10.0の間に維持されるべきである。約3.0よりも小さい、または約10.0よりも大きいpHを有する組成物は、患者の鼻粘膜を刺激する危険を増やす恐れがある。さらに、組成物のpHは、約3.0〜約9.0の間に維持されることが好ましい。非水性の経鼻用配合に関し、緩衝剤の適切な形態は、配合物が哺乳類の鼻腔に送達されたとき、例えば鼻粘膜と接触したときに、選択されたpHの範囲がそこで得られるように選択され得る。
【0106】
本発明の組成物において使用するための可溶化剤は、カルボン酸およびその塩などの当技術分野において知られているいかなるものであってもよい。カルボン酸の塩の具体例として、酢酸塩、グルコネート、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸エステル、スクシネート、またはこれらのうち2つ以上の混合物が含まれる。
【0107】
本発明の組成物の粘度は、薬学的に許容可能な増粘剤を使用して、所望のレベルに維持することができる。例えば、粘度は、少なくとも1000cps;約1000cps〜約10,000cpsの間;約2000cps〜約6500cpsの間;または約2500cps〜約5000cpsの間であってよい。本発明に従って使用され得る増粘剤として、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギネート、アラビアゴム、キトサン、およびそれらのうち2つ以上の混合物などが含まれる。増粘剤の濃度は、選択される薬剤および所望の粘度により異なる。こうした薬剤はまた、粉末の配合物として使用することができる。
【0108】
経鼻的に投与可能な組成物はまた、粘膜の乾燥を減少させるまたは防ぐため、および粘膜への刺激を防ぐために、保湿剤を含み得る。使用可能である適切な保湿剤には、例えば、ソルビトール、鉱油、植物油およびグリセロール;無痛化剤;メンブレン・コンディショナー;甘味料;およびそれらのうち2つ以上の混合物が含まれる。保湿剤の濃度は、選択される薬剤により異なる。1つの実施形態において、保湿剤は、組成物に対して約0.01wt%〜約20wt%の濃度で、経鼻的送達システム内において存在し得る。
【0109】
その他の実施形態において、経鼻的送達システムはさらに、化合物の吸収を高める界面活性剤を含み得る。適切な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、および陽イオン界面活性剤が含まれる。界面活性剤の具体例として、オレイン酸、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、例えばTween(例えばTween80、Tween40、Tween20など)などのソルビトール無水物の部分エステル、Span(例えばSpan40、Span80、Span20など)、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、フュジエート(fusieates)、胆汁酸塩、オクトキシノール、およびそれらのうち2つ以上の混合物などが含まれる。陰イオン界面活性剤の具体例として、以下の官能基うち1つ以上を有する長鎖炭化水素の塩(例えばC6−30あるいはC10−20)が含まれる:カルボン酸塩;スルホン酸塩;および硫酸塩。セトステアリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、およびテトラデシル硫酸ナトリウムなどの、硫酸塩の官能基を有する長鎖炭化水素の塩が好ましい。特に好ましい陰イオン界面活性剤の1つは、ラウリル硫酸ナトリウム(すなわちドデシル硫酸ナトリウム)である。界面活性剤は、約0.001wt%〜約50wt%の間、または約0.001wt%〜約20wt%の間の量で存在し得る。
【0110】
本発明の医薬組成物はさらに、塩化ナトリウム、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウムあるいはその他の無機または有機の溶質などの等張化剤を含んでいても良い。
【0111】
本発明の鼻用医薬組成物は、任意にpH調整剤と組み合わせて使用し得る。pH調整剤の具体例として、硫酸、水酸化ナトリウム、塩酸などが含まれる。
【0112】
貯蔵寿命を延ばすために、経鼻的に投与可能な組成物に防腐剤を添加することができる。使用可能である適切な防腐剤として、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、またはそれらのうち2つ以上の混合物が含まれる。好ましくは、塩化ベンザルコニウムが使用される。一般的に、防腐剤は、最大で約2wt%までの濃度で存在する。しかし、防腐剤の正確な濃度は、使用目的によって異なり、当業者はそれを容易に確認できる。
【0113】
例えば抗酸化剤などの、貯蔵寿命を延ばすその他の成分も添加され得る。抗酸化剤のいくつかの例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、パルミチン酸アスコルビルなどが挙げられる。典型的には、抗酸化剤は組成物全体の約0.001wt%〜約5wt%の濃度で組成物内に存在する。
【0114】
経鼻的送達システムは、例えば米国特許第6,451,848号、第6,436,950号および第5,874,450号、ならびに国際公開第WO00/00199号に記載された方法に従って作製することができ、それらの開示内容は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は、例示するためのみに挙げられており、特許請求の趣旨または範囲を限定することを意図しない。
【0116】
(実施例1)
認知、情緒、および運動能力におけるドーパミンの役割は、これまで研究されてきた。年齢に関連した黒質線条体のドーパミン作用の低下と年齢に関連した認知機能の低下との間に関連があることが報告された。Erixon−Lindrotha ら、Psychiatry Research:Neuroimaging,138:1−12(2005)参照。また、ドーパミンシステムの薬理学的処置がヒトの認知能力を変え得ることも報告された。Lucianaら、Cereb.Cortex.,8:218−226(1998);およびKimbergら、Neuropsychologia,41:1020−1027(2003)参照。ドーパミン作用の促進は、ヒトの認知機能を改善し得るものであった。
【0117】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、認知症の治療のためにしばしば利用される。ドネペジルは、脳におけるドーパミンの放出を増加し得ることが報告された。また、MAO−B阻害剤(セレジリン)と共に投与することで、学習能力が高められたことも報告された。Giacobiniら、Neuropharmacology,35:205−211(1996);およびTakahataら、Eur.J.Pharmacol.,518:140−144(2005)参照。アルツハイマー病用のその他の薬物(例えばメマンチン)は、ドーパミン代謝回転に対していくらかの効果を有し、そしてドネペジルと組み合わせることにより効果的であることが報告された。Bubserら、Eur.J.Pharmacol.,229:75−82(1992);およびTariotら、JAMA,291:317−324(2004)参照。これらの結果は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による認知機能の改善が、ドーパミン作用に対してプラス効果を有する化合物によって増大し得ることを示している。
【0118】
実験には、C57BL/6マウス(SLC、静岡、日本)を使用した。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよびドネペジルを、0.5%メチルセルロース溶液に懸濁または溶解した。この2つの薬物は、サンプリングの1時間前に強制経口投与した。マウスを屠殺した時に、両線条体をすばやく切断し、液体窒素により凍結した。続いてサンプルは、0.1M EDTAを含有する0.5mlの冷却した0.5M過塩素酸内で超音波処理し、4℃で15分間、13000rpmで遠心分離した。次に、モノアミンレベルを電気化学検出を使用してHPLCによって測定した。20μlの上清アリコートを、17%メタノールの移動相、190mg/mlの1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有する83% 0.1M酢酸塩/クエン酸塩緩衝液(pH3.5)、および50mg/ml EDTAを使用して、0.65ml/minの流速で、Eicompak SC5−ODSカラム(3×150mm、Eicom)で分離した。ドーパミン、DOPAC、HVA、5−HTおよび5−HIAAのピークの量は、PowerChrom(eDAQ、オーストラリア)によるエリア統合によって定量化した。濃度は線条体組織1ミリグラム当たりのナノグラムで表した。
【0119】
図1に示されるように、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(すなわち化合物A)は、線条体におけるドーパミンの代謝産物であるHVAの含有量をlmg/kg高めた。
【0120】
(実施例2)
ドネペジルは、ドーパミンの含量を有意に減少させたが、ドーパミンの代謝産物の増加は有意なものではなかった。図2は、ドーパミン代謝回転の増加を示すDPAC/DAおよびHVA/DAが有意に増加したことを示す。実験において、ドネペジルによる行動上の症状が観察された。ドネペジルを処置したマウスは、7.5mg/kg以上で末梢的な副作用を示した。これらの結果は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンによる単剤療法と、ドネペジルによる単剤療法が、両方ともドーパミン代謝回転を調節したが、有意な結果には至らず、ドーパミン代謝回転に対するわずかな効果を示唆していることを示す。しかし、図3は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンとドネペジルの組合せが、個々の化合物による単剤療法と比較して、優れたドーパミン代謝回転をマウスにおいて予想外に促進したことを示す。この実験は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンとドネペジルとの併用療法が(3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンまたはドネペジルによる単剤療法と比較した場合)、アルツハイマー病などの認知機能障害、認知症、および神経変性疾患を治療するために使用できることを実証している。
【0121】
(実施例3)
実施例5は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよびドネペジルの神経保護的効果を示す。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンとドネペジルとの組合せは、興奮毒性に対する明確な神経保護的効果を示す。しかし、この2つの薬物のプロフィールは異なる。従って、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などを含めた神経変性疾患の進行を止めるためには、薬物の組合せによって神経保護的効果を最大にするための補完的なアプローチが必要かも知れない。
【0122】
神経変性疾患は、神経変性の過程において興奮毒性を示すことが述べられてきた。Regoら、Neurochemical Research,28:1563−1574(2003)参照。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンはAMPAアンタゴニストである。AMPAアンタゴニストは、カイニン酸および代謝的負荷によって引き起こされる興奮毒性の状態に対して効果を有する。Ohnoら、JPET,306:66−72(2003);およびMatsuokaら、Neuroreport,6:2205−2208(1995)参照。一方、AMPAアンタゴニストは、NMDAにより誘導された毒性に対して保護作用をまったく示さない、あるいは限られた保護作用しか示さないことが知られている。Kristensen、Brain Res.,917:21−44(2001)参照。
【0123】
ARICEPT(登録商標、エーザイ社、ニュージャージー州ティーネック)として市販されているドネペジルは、アルツハイマー病用に処方される。ドネペジルは、認知症の患者の認知力を改善するが、これはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤によるものである。ドネペジルは、NMDAによって引き起こされる興奮毒性に対しては神経保護的効果を発揮するが、カイニン酸によって引き起こされる興奮毒性に対しては発揮しない。Akasofuら、Eur.J.Pharmacol.,530:215−222(2006)参照。ドネペジルの神経保護的効果は、アルツハイマー病の患者の脳萎縮における臨床所見によって裏付けられる。Hashimotoら、Am J.Psychiatry,162:676−682(2005)参照。ドネペジルは、神経変性疾患用の疾病を改善する薬物になりうるが、ドネペジルの神経保護的効果は、アルツハイマー病の進行を完全に止めるには不十分である。
【0124】
併用療法は時には有益であるが、時には害を及ぼす。したがって、組合せの安全性および有効性を確認することが非常に重要である。培養ニューロンにおける2つの薬物(3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−l,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよびドネペジル)による併用療法は、NMDAおよびカイニン酸により誘導される神経変性に対する有益な効果を高めた。当該薬物の組合せによる神経変性は観察されなかった。したがって、この薬物の組合せは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症などの疾病を引き起こす神経変性の治療における好ましい選択肢であり得る。
【0125】
皮質細胞培養物は、ウィスター系のラットの胎児(在胎期間:17〜19日、日本チャールス・リバー株式会社、神奈川県)から調製した。皮質を切断し、氷冷したNeurobasal培地(2%のB27添加物(Gibco BRL)、0.5mMのL−グルタミン(Gibco BRL)、2%の抗生物質−抗真菌液体(Gibco BRL)、25μMの2−メルカプトエタノールを含有するNeurobasal培地(Gibco BRL))内に維持し、そして、0.25%のトリプシン(Gibco BRL)および0.2 mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含有するCa2+/Mg2+を含まないHBSS中で、37℃で30分間インキュベートした。皮質組織は、適度に粉砕することにより細胞ごとに分離した。細胞懸濁液は、10%の加熱不活性化したウシ胎児血清(Gibco BRL)と共にNeurobasal培地と混合した。細胞懸濁液は、310 x gで3分間遠心分離し、得られたペレットは、上記培地に再懸濁した。
【0126】
細胞は、ポリ−L−リジンでコーティングしたウェルプレートに、初期細胞密度2.0×105個/cm2で平板培養した。細胞は、CO2インキュベータ5%(v/v)内で、2%のB27添加物を含有するNeurobasal培地において37℃で7日間培養した。
【0127】
培養物は、2%のB27添加物(−AO)を含有するNeurobasal培地において、200μMのNMDA(Sigma)または200μMのカイニン酸(kainite)に、37℃で24時間さらした。細胞は、これらのアゴニストにさらす前およびさらす間、ドネペジルおよび3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンで24時間処理した。
【0128】
NMDAまたはカイニン酸による傷害の後に、培地へのLDHの流出を測定した。細胞を、0.5% Triton X−100を含有する0.1M リン酸緩衝液(0.1M Na2HPO4および0.1M KH2PO4:pH 7.4)で溶解後に、細胞内に残るLDHを測定した。培養毎の総LDH活性に関し、ニューロン損傷のインジケータとしてのLDHの放出を、LDHの培地への漏出のパーセンテージとして示した(LDH流出/測定された総LDH)。LDH活性の尺度として、NADHの減少を、340nmにおいて分光光度法でモニタリングした。
【0129】
カイニン酸により誘導された神経毒性において、ドネペジルは、ニューロンの生存に対する中程度の効果を示した。図4は、ドネペジルおよび3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを共に投与することが、ドネペジル単独の場合と比較して、ニューロンの生存を有意にかつ予想外に高めたことを示す。
【0130】
NMDAの実験において、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンは効果を示し、0.3mMからプラトーに達した。図5に示すように、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよびドネペジルを共に投与することは、ニューロンの生存を予想外かつ有意に高めた。
【0131】
(実施例4)
Pringleら、Brain Research,755:36−46(1997)による基本的方法を以下のように改変して使用し、海馬スライスの器官型培養による培養物を調製した。ウィスター系のラットの子供(8〜11日齢)を屠殺し、海馬をすばやく切断し、氷冷した4.5mg/mlグルコース添加Gey平衡塩類溶液に入れた。横断面(400μm)を、McIlwain組織チョッパーで切断し、氷冷したGey平衡塩類溶液中に戻した。スライスは分離し、Millicell CM培養挿入物上に配置し(1ウェル当たり4個)、37℃/5%CO2で14日間維持した。維持培地は、25%の加熱不活性化したウシ血清(bone serum)、25%ハンクス液(HBSS)、および1mMのグルタミンおよび4.5mg/mlのグルコースを添加したアール溶液(MEM)を加えた50%の最小必要培地から成る。培地は3〜4日ごとに交換した。
【0132】
培養物は、蛍光排除色素(fluorescent exclusion dye)であるヨウ化プロピジウム(PI)5μg/mlを含有する無血清培地((SFM−75%MEM、25%HBSS)に1mMグルタミンおよび4.5mg/mlグルコースを添加したもの)に移し、画像化の前に、60分間平衡化した。PIの蛍光を、ローダミンフィルターセットを取り付けたLeica DMIL倒立顕微鏡を使用して検出した。この段階においてPIの蛍光が検出された培養物は全て、その後の研究から除外した。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよび/またはドネペジルHClを、SFMに加え、培養物はインキュベータに24時間戻した。この後、培養物は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよび/またはドネペジルHClを含有するSFMに戻す前に、PIならびに3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよび/またはドネペジルHClの存在下で神経毒性傷害にさらした(プロトコルについては以下を参照)。神経損傷は、神経毒性傷害の開始から24時間後に、PIの蛍光による画像化によって評価した。神経毒性のプロトコルの概略は以下の通りである。
【0133】
(1)AMPA:培養物は、30μM S−AMPAを含有する新しいSFM(+PI)に、通常の培養条件で3時間移した。その終わりに、PIの画像化によって神経細胞死を測定する前に、培養物を新しいSFMに21時間戻した。GYKI52466(30μM)を、神経保護の陽性コントロールとして使用した。
【0134】
(2)酸素−グルコース除去処置(OGD):培養物を既に報告されている酸素−グルコース除去処置(OGD)にさらすことにより、実験的虚血を実施した。Pringleら、Brain Research,755:36−46(1997);Pringleら、Stroke,27:2124−2130(1996);およびMorrisonら、Br.J.Pharmacol,137:1255−1268(2002)参照。OGDは、95%N2/5%CO2で飽和させておいたグルコースを含まないSFM(+PI)に培養物を移すことによって誘導した。そして、培養プレート(蓋なし)を、密閉する前に10L/分の割合で10分間ガスを連続して吹き流すことにより中の雰囲気を95%N2/5%CO2で飽和させた気密室に密閉し、インキュベータの中に50分間置いた(したがって、OGDにさらした時間はトータルで60分であった)。OGDの終わりに、培養物は、PIを含有する酸素正常状態のSFMに戻し、インキュベータに23時間戻した。
【0135】
(3)低酸素状態:培養物を、既に報告されている酸素除去処置にさらすことにより、低酸素状態をおこした。Pringleら、Brain Research、755:36−46(1997);およびPringleら、Stroke、27:2124−2130(1996)参照。低酸素状態は、95%N2/5%CO2で飽和させておいたSFM(+PI)に培養物を移すことによって誘導した。そして、培養プレート(蓋なし)を、密閉する前に10L/分の割合で10分間ガスを連続して吹き流すことにより中の雰囲気を95%N2/5%CO2で飽和させた気密室に密閉し、インキュベータの中に170分間置いた(したがって、低酸素の時間はトータルで180分であった)。低酸素状態の終わりに、培養物は酸素正常状態のSFM(+PI)に戻し、インキュベータに21時間戻した。フリーラジカル捕捉剤MnTBAP(100μM)を、神経保護の陽性コントロールとして使用した。
【0136】
(4)NMDA:培養物を、10μMのNMDAを含有する新しいSFM(+PI)に、通常の培養条件で3時間移した。その終わりに、PIの画像化によって神経細胞死を測定する前に、培養物を、新しいSFMに21時間戻した。MK801(10μM)を、神経保護の陽性コントロールとして使用した。
【0137】
(5)フリーラジカルに媒介される毒性(ジュロキノン):ジュロキノンは、CA1領域において選択的な神経病変を生み出すスーパーオキシドに媒介される神経毒性を生成する。Wildeら、J.Neurochem.、69(2):883−886(1997)参照。培養物を、100μMのジュロキノンを含有する新しいSFM(+PI)に、通常の培養条件で3時間移した。この終わりに、PIの画像化によって神経細胞死を測定する前に、培養物を、新しいSFMに21時間戻した。MnTBAP(100μM)を神経保護の陽性コントロールとして使用した。
【0138】
神経の損傷は、パソコンソフトのImageJを使用して評価した。白黒のCCDカメラを使用して画像をとらえ、外形を分析するために保存した。薬物を加える前に、光透過画像をとらえ、24時間の回復期の終わりに、PIによる蛍光画像を記録した。透過像から、CA1領域の面積を決定した。CA1領域におけるPIによる蛍光の面積を、ImageJの閾値関数を使用して測定し、神経の損傷は、上記バックグラウンドでPIの蛍光が検出されたCA1のパーセンテージとして表わされた。Morrisonら、Br.J.Pharmacol.,137:1255−1268(2002)参照。
【0139】
MnTBAPおよびMK−801は、10mMまで蒸留水に溶解した。NMDAは、100mMまで蒸留水に溶解し、AMPAは3mMまで蒸留水に溶解した。GYKI52466は、3mMまでDMSOに溶解した。ドネペジルの原液(1mM)は、蒸留水で毎日新たに調製し、逐次SFMに希釈した。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの原液(1mM)は、DMSO中で毎日新たに調製し、更にSFMに希釈した。
【0140】
材料は以下の供給業者から入手した:組織培養プレート−Nunc(フィッシャー・サイエンティフィック社、英国ラフバラ);その他すべての組織培養プラスチックは以下から購入した−Bibby Sterilin社(英国ストーン);培地−インビトロジェン社(英国ペーズリー);PI−モレキュラープローブ社(オランダ国レイデン);S−AMPA、GYKI52466、NMDA、MK801およびMnTBAP−Tocris社(英国ブリストル);3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、塩酸ドネペジル(エーザイ社)。
【0141】
GraphPad Prismを使用してデータ分析を行った。データは最初に正常性が評価され、その後に、一元配置分散分析を使用して統計的有意性を決定し、続いてダンネット検定を行った。すべてのデータは平均値±s.e.mで表す。生データおよび個々のデータセットの分析は本明細書には記載しない。
【0142】
AMPAの毒性における3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンのEC50を測定した。SFM内に最大49時間維持した培養物のスライス(シャムコントロール)では、PIの蛍光は観察されなかった。対照的に、30μMのAMPAに3時間さらした培養物のCA1領域において、有意な神経変性が観察された(CA1において65.1±1.7%の損傷、n=104、シャムコントロールに対し、p<0.001)。AMPAに媒介された神経変性は、非競合性のAMPA受容体アンタゴニストGYKI52466によって有意に弱められ、これがPIの蛍光を14.3±2.3%の損傷まで減少させた(n=60、AMPAに対しp<0.001)。AMPAにより誘導された神経変性は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンによって濃度依存的に減少した。0.1μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンでは、神経保護的効果は観察されなかった(63.9±2.6%の損傷、n=36、AMPAに対しp=NS)。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの濃度を0.3μMまで高めたとき、有意な神経保護が観察され、損傷が50.4±2.5%まで減少した(n=60、AMPAに対しp<0.01)。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの濃度が最大では(3μM)、神経保護はほぼ完全であった(0.1±0.1%の損傷、n=36、AMPAに対しp<0.001)。この一連の実験に基づき、このモデルのAMPA毒性における3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンのEC50は0.5μMと測定された。
【0143】
AMPAに媒介される毒性に対するドネペジルの効果を測定した。はじめに、一連の培養物(グループ当たり24個)を、SFMまたはドネペジルのいずれか(0.1〜10μM)に48時間さらし(溶液は、24時間後に、新しいドネペジルを含有するものに交換された)、化合物の潜在的毒性を評価した。この実験においては、どの培養物でもPIの蛍光は観察されず、これは、化合物が、この実例において非毒性であったことを示している(データは示していない)。
【0144】
培養物をAMPAにさらす前のドネペジルのプレインキュベーション時間を増やした場合(4〜48時間)の効果を測定するために、更なる予備実験のセットを実施した。前と同様、実験の間、SFMに維持した培養物において、PIの蛍光は観察されなかったが、その後AMPAにさらされたCA1において、有意な毒性が観察された(46.5±5.0%の損傷、n=24)。これは、30μMのGYK152466によって有意に弱められた(21.7±2.7%の損傷、n=24、AMPAに対しp<0.001)。プレインキュベーションの時間を長くしても、ドネペジルの効果は観察されなかった。それぞれ、CA1のPIは55.51±2.6%であった(24時間のプレインキュベーション、n=24、p=NS)。しかし、プレインキュベーションの時間を4時間に減少すると、AMPAに媒介された毒性の、少なくはあるが有意な増加が観察され、PIの蛍光はCA1の57.4±2.3%において観察された(n=24、AMPAに対しp<0.05)。
【0145】
プレインキュベーションの時間を変えても、生物学的に有意な効果は観察されなかった。したがって、公開された証拠に基づき、残りの実験においては標準的なプレインキュベーションの時間である24時間を選択した。Akasofuら、Eur.J.Pharmacol.,472(l−2):57−63(2003);およびTakadaら、Pharmacol.Exp.Ther.,306(2):772−777(2003)参照。
【0146】
更なる実験のセットにおいて、30μMのAMPAに培養物をさらすと、CA1領域の62.4±2.4%においてPIの蛍光が起こった(n=72)。これは、0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンによって有意に弱められ、PIの蛍光の面積が、CA1の33.6±4.0%まで減少した(n=24、AMPAに対してp<0.001)。試験された濃度のいずれにおいても、ドネペジルの神経保護的効果は観察されなかった(0.1〜10μM)。先に観察された通り(図8および9)、3つの濃度すべての場合におけるドネペジルの存在下、AMPAに媒介される毒性の、少なく、有意ではない増加が観察された(0.1μM:CA1の69.5±2.4%;1μM:CA1の70.7±2.4%;10μM:CA1の70.9%±2.8%;すべてのグループにおいて、n=36、AMPAに対してp=NS)。0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンは、単独で存在する場合は有意に神経保護的であったが、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの有効性は、当該化合物がドネペジルと共にインキュベートされた場合に失われた。この有効性の喪失は、ドネペジルの3つの濃度すべての場合において統計的に有意であった(0.1μMのドネペジル+3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン:CA1の70.2±1.6%;1μM:CA1の62.6±3.6%;10μM:CA1の68.7%±2.4%;すべてのグループにおいて、n=36、AMPAに対してp<0.001)。
【0147】
培養物を、酸素−グルコース除去処置(OGD)に60分間さらすことにより、実験的虚血を誘導した。OGDにより誘導された神経毒性に対する3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの神経保護の有効性を測定するために、最初の実験のセットを行った。培養物をOGDに60分間さらすことにより、CA1領域においてPIの蛍光が広範囲に生成され(50.6±5.2%の損傷、n=24)、これが、フリーラジカル捕捉剤MnTBAP(100μM)によって防がれた(0.1±0.0%の損傷、n=24、OGDに対しp<0.001)。非競合性のAMPA受容体アンタゴニストGYKI52466(30μM)で処理した培養物においては、有意な神経保護は観察されなかった(36.9±3.6%、n=24、p=NS)。3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンのEC50を評価するために、6つのポイントを有する濃度反応曲線を作成した。驚いたことに、一番低い濃度の3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(0.1μM)で処理した培養物において、PIの蛍光の有意な増加が観察された(64.4±3.6%、n=24、OGDに対してp<0.05)。評価されたその他のいかなる濃度においても(最大で3μM)、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの効果は有意なものではなかった。
【0148】
このモデルでは、別個のEC50を確立することはできなかったので、0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを使用して、AMPA毒性を遮断するEC50について更なる実験を行った。
【0149】
第二の実験シリーズにおいて、OGDにより誘導される神経毒性に対するドネペジルの効果、またこれが、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンによってどのように影響されたかを調べた。OGDにのみさらした培養物においては、PIの蛍光は、CA1領域の44.8±3.3%において起こった(n=48)。先の実験と同じように、これは100μMのMnTBAPによって完全に弱められた(0.6±0.2%の損傷、n=48、OGDに対してp<0.001)が、0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンによっては弱められなかった(55.3±3.1%の損傷、n=32、p=NS)。ドネペジルによる前処理(0.1〜10μM)は、神経損傷に対する効果を示さなかった(OGDに対し、0.1μM:49.4±2.7%の損傷;1μM:54.1±4.7%の損傷;10μM:45.3±3.3%;すべてにおいてn=48、p=NS)。OGDにさらした後に、1μMのドネペジルおよび0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを共に適用した培養物において、PIの蛍光において、少なくはあるが有意な増加が観察された(64.3±4.2%の損傷、n=48、OGDに対しp<0.05)。より高い濃度(10μM)またはより低い濃度(0.1μM)のドネペジルでは、効果は観察されず、これは、この効果が生物学的に関連しないかも知れないことを示唆している。
【0150】
ジュロキノンにより誘導された傷害を測定した。フリーラジカルにより誘導される傷害は、培養物を100μMのジュロキノンに3時間さらした後に21時間の回復期を設けることによって生じた。100μMのジュロキノンに3時間さらした培養物では、CA1領域において神経変性が進行し、結果として、広範囲にPIの蛍光が起こった(51.0±3.4%の損傷、n−72)。予期した通り、ジュロキノンにより誘導された傷害は、フリーラジカル捕捉剤MnTBAP(100μM)によって完全に消失した(0.1±0.0%の損傷、n=24、ジュロキノンに対しp<0.001)。このモデルにおいては、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(0.5μM)は神経保護作用を有さなかった(69.1±4.0%の損傷、n=24、p=NS)。ドネペジルは、ジュロキノンにより誘導される神経の損傷を減少させなかった(0.1μM:56.4±4.4%の損傷;1μM:53.2±4.9%の損傷;10μM:56.6±4.4%の損傷、すべてにおいて、n=36、p=NS)。同様に、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンおよびドネペジルを共にインキュベーションしても、神経の損傷に影響はなかった。
【0151】
NMDAにより誘導された神経毒性を調べた。培養物を10μMのNMDAに3時間さらすことにより、CA1領域において神経変性が生じ、PIの蛍光の有意な増加が測定された(35.1±2.2%の損傷、n=72)、これは、非競合性のNMDA受容体アンタゴニストMK−801(10μM)によって完全に弱められた(0.0±0.0%の損傷、n=36、NMDAに対しp<0.001)。対照的に、NMDA毒性は、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(0.5μM)による影響を受けなかった(29.1±2.9%の損傷、n=36、p=NS)。ドネペジルは、試験された3つの濃度すべての場合において、濃度依存的に有意な神経保護作用を有した(0.1μM:23.0±2.4%の損傷、NMDAに対しp<0.01;1μM:25.2±2.3%の損傷、NMDAに対しp<0.05;10μM:14.5±2.2%の損傷、NMDAに対しp<0.001;すべてのグループにおいて、n=36)。低濃度のドネペジルによる神経保護的有効性は、0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを含有させることによって弱められた(0.1μM+3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン:27.9±2.6%の損傷;1μM+3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン:29.5±3.0%の損傷;両グループともn=36)。10μMのドネペジルは、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの存在下で神経保護作用を維持した(24.9±2.4%の損傷、n=36、NMDAに対しp<0.05)。
【0152】
低酸素症により誘導された神経変性を調べた。低酸素症に媒介される神経の損傷は、培養物を3時間酸素除去処置にさらし、続いて21時間の回復期を設けることによって生じた。PIの蛍光によって特定されるとおり、3時間の低酸素状態の結果、CA1内に病変が生じた(45.1±3.5%の損傷、n=96)。これは、フリーラジカル捕捉剤MnTBAP(100μM)によって防がれた(0.2±0.1%の損傷、n−48、低酸素状態に対しp<0.001)。ドネペジル(0.1〜10μM)は、このモデルにおいて高度な神経保護作用を示し、0.1μMで、神経の損傷における有意な減少を生じた(31.7±4.6%の損傷、n=48、低酸素状態に対しp<0.05)。ドネペジルの濃度を1μMに増加すると、神経保護的有効性が高められた(14.9±3.2%の損傷、n=48、低酸素状態に対しp<0.001)。ドネペジルの濃度を10μMに増加しても、有効性の更なる向上は観察されなかった(12.9±2.9%の損傷、n=48、低酸素状態に対しp<0.001)。また、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの濃度依存的な神経保護的効果も観察され、0.1μMで有意な有効性が観察された(24.8±6.3%の損傷、n=24、低酸素状態に対しp<0.001)。試験された最も高い濃度において(5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)、当該化合物はMmTBAPとほぼ同程度に有効であり、損傷を3.9±1.8%に減少させた(n=24、低酸素状態に対しp<0.001)。
【0153】
ドネペジルおよび3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンの神経保護的効果が相乗的なものであるか、あるいは付加的なものであるかを調べるために、第2の実験のセットを実施した。仮説を試験するために、当該2つの化合物のそれぞれについて、最も低い効果を発揮する濃度(すなわち0.1μM)を使用した。低酸素状態のみでは、36.4±3.9%の損傷が生じ(n=48)、これは、MnTBAP(100μM)によって防がれた(0.0±0.0%、n=24、低酸素状態に対してp<0.001)。この一連の実験においては、ドネペジル(0.1μM:30.4±3.9%の損傷、n=48)も、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(0.1μM:36.7±4.2%の損傷、n=48、p=NS)も、神経保護作用を示さなかった。同様に、両化合物と共にインキュベートした培養物において、PIの蛍光の減少は観察されなかった(33.8±4.1%の損傷、n=48、p=NS)。
【0154】
0.1μMは、ドネペジルおよび3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンが神経保護的有効性を発揮するための閾値濃度に非常に近いものと思われる。0.5μMのドネペジルおよび0.5μMの3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを使用した実験を繰り返した。この実験において、培養物を低酸素状態にさらすことにより、36.9±4.4%の損傷(n=48)が生じ、これは、100μMのMnTBAPによって遮断された(0.8±0.4%の損傷、n=24、低酸素状態に対してp<0.001)。ドネペジル(0.5μM)は、神経の損傷を有意に減少し(25.3±3.6%の損傷、n=48、低酸素状態に対してp<0.05)、3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン(0.5μM)によっても類似の効果が示された(27.1±3.5%の損傷、n=48、低酸素状態に対してp<0.05)。ドネペジルおよび3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンを組み合わせて使用した場合、類似のレベルの神経保護作用が観察された(24.7±3.5%の損傷、n=48、低酸素状態に対してp<0.05)。
【0155】
本明細書において引用された特許、特許出願および刊行物の各々は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0156】
添付の請求項の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明の多様な変更が行えることが、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、マウスの線条体中のドーパミン、DOPACおよびHVA含有量に対する化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)の効果を示す。
【図2】図2は、マウスの線条体中のドーパミン代謝回転に対するドネペジルの効果を示す。
【図3】図3A−Eは、マウスの線条体中のドーパミン代謝回転、DOPAC、HVA、DOPAC/DAおよびHVA/DAそれぞれに対する化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)とドネペジルの組合せの効果を示す。
【図4】図4は、皮質ニューロンにおけるカイニン酸により誘導された神経毒性に対する化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)、および化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)とドネペジルとの組合せの効果を示す。*印は、コントロールに対してp<0.05であること、#印は、ドネペジル単独に対してp<0.05であることを示す。
【図5】図5は、皮質ニューロンにおけるNMDAにより誘導された神経毒性に対する化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)の効果、および化合物A(すなわち3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン)とドネペジルとの組合せによる治療の効果を示す。*印は、コントロールに対してp<0.05であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者のアルツハイマー病を治療する方法であって、治療上有効量の
(i)3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および
(ii)ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、
を投与することを含む方法。
【請求項2】
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、および3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物が前記患者に別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、および3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物が、医薬組成物の形態で前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療上有効量の3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンが30μg〜500ミリグラムである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療上有効量のドネペジルが1mg〜50mgである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
治療上有効量の
(i)3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および
(ii)ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、
を治療を必要とする患者に投与することを含む、患者の認知症または1つ以上の認知機能障害を治療する方法。
【請求項7】
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、および3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物が前記患者に別々に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、および3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物が、医薬組成物の形態で前記患者に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記治療上有効量の3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンが30μg〜500ミリグラムである請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記治療上有効量のドネペジルが1mg〜50mgである請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記認知症がアルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病によってひき起こされる請求項6に記載の方法。
【請求項12】
治療上有効量の
(i)ドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
ドネペジルが1ミリグラム〜50ミリグラムの量で存在する請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オンが、30マイクログラム〜1グラムの量で存在する請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
治療上有効量の
(i)式(III)の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および
(ii)式(VI)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩
を治療を必要とする患者に投与することを含む、患者の認知症、1つ以上の認知機能障害、または神経変性疾患を治療する方法であって、ここで、式(III)の化合物が
【化1】

であり、ここで
1,X2およびX3は、それぞれ独立して単結合、任意に置換されたC1-6アルキレン、任意に置換されたC2-6アルケニレン、任意に置換されたC2-6アルキニレン、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−N(R6)−、−N(R7)−CO−、−CO−N(R8)−、−N(R9)−CH2−、−CH2−N(R10)−、−CH2−CO−、−CO−CH2−、−N(R11)−S(O)m−、−S(O)n−N(R12)−、−CH2−S(O)p−、−S(O)q−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−N(R13)−CO−N(R14)−、または−N(R15)−CS−N(R16)−であり、
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、
m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0、1または2の整数であり、
1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、任意に置換された5〜14員環の非芳香族複素環、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族複素環であり、そして
17およびR18はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、またはC1-6アルキルであり、
ここで、式(VI)の化合物が、
【化2】

であって、ここで、
rは1〜10の整数であり、
各R22は独立して水素またはメチルであり、
Kはフェナルキルまたはフェニル上に置換基を有するフェナルキルであり、
各Sは独立して水素、C1-6低級アルキル、またはC1-6低級アルコキシであり、
tは1〜4の整数であり、
qは1〜3の整数であり、
但し、(S)tは、フェニルにおける2つの隣接する炭素原子に結合するメチレンジオキシまたはエチレンジオキシであり得る、方法。
【請求項16】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、または筋萎縮性側索硬化症である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記認知症がアルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病によってひき起こされる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記式(VI)の化合物が1ミリグラム〜50ミリグラムの量で存在する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記式(III)の化合物が30マイクログラム〜1グラムの量で存在する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記式(III)の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および、前記式(VI)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が前記患者に別々に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記式(III)の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および、前記式(VI)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が、医薬組成物の形態で前記患者に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
治療上有効量の
(i)式(III)の化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の水和物、および
(ii)式(VI)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩
を含む医薬組成物であって、
ここで、式(III)の化合物は
【化3】

であり、ここで、
1,X2およびX3は、それぞれ独立して単結合、任意に置換されたC1-6アルキレン、任意に置換されたC2-6アルケニレン、任意に置換されたC2-6アルキニレン、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−、−N(R6)−、−N(R7)−CO−、−CO−N(R8)−、−N(R9)−CH2−、−CH2−N(R10)−、−CH2−CO−、−CO−CH2−、−N(R11)−S(O)m−、−S(O)n−N(R12)−、−CH2−S(O)p−、−S(O)q−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−、−N(R13)−CO−N(R14)−、または−N(R15)−CS−N(R16)−であり、
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して水素、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシであり、
m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0、1または2の整数であり、
1、A2およびA3はそれぞれ独立して、任意に置換されたC3-8シクロアルキル、任意に置換されたC3-8シクロアルケニル、任意に置換された5〜14員環の非芳香族複素環、任意に置換されたC6-14芳香族炭化水素環、または任意に置換された5〜14員環の芳香族複素環であり、そして
17およびR18はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、またはC1-6アルキルであり、
ここで、式(VI)の化合物が、
【化4】

であって、ここで、
rは1〜10の整数であり、
各R22は独立して水素またはメチルであり、
Kはフェナルキルまたはフェニル上に置換基を有するフェナルキルであり、
各Sは独立して水素、C1-6低級アルキル、またはC1-6低級アルコキシであり、
tは1〜4の整数であり、
qは1〜3の整数であり、
但し、(S)tは、フェニルにおける2つの隣接する炭素原子に結合するメチレンジオキシまたはエチレンジオキシであり得る、医薬組成物。
【請求項23】
前記式(III)の化合物が30μg〜10グラムの量で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記式(VI)の化合物が1mg〜50mgの量で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つのAMPA受容体アンタゴニスト、および少なくとも1つの向知性薬を含む組合せであって、ここで有効成分がそれぞれの場合において自由な形態または薬学的に許容可能な塩の形態で存在し、そして任意で、同時に、別々に、または連続して使用するための少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリアを含む、組合せ。
【請求項26】
複合製剤または医薬組成物である請求項25に記載の組合せ。
【請求項27】
前記向知性薬がコリンエステラーゼ阻害剤である請求項25に記載の組合せ。
【請求項28】
前記コリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩;リバスチグミンまたはその薬学的に許容可能な塩;あるいはガランタミンまたはその薬学的に許容可能な塩である請求項27に記載の組合せ。
【請求項29】
前記コリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルまたはその薬学的に許容可能な塩である請求項27に記載の組合せ。
【請求項30】
前記AMPA受容体アンタゴニストが1,2−ジヒドロピリジン化合物である請求項25に記載の組合せ。
【請求項31】
前記1,2−ジヒドロピリジン化合物が3−(2−シアノフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−フェニル−1,2−ジヒドロピリジン−2−オン、またはその薬学的に許容可能な塩である請求項30に記載の組合せ。
【請求項32】
認知症の治療において同時に、別々に、または連続して使用するための請求項25に記載の組合せ。
【請求項33】
認知症と共に観察される行動障害の治療において同時に、別々に、または連続して使用するための請求項25に記載の組合せ。
【請求項34】
認知症または認知症と共に観察される行動障害において合わせて治療上有効量の請求項25に記載の組合せを治療を必要とする患者に投与することを含む、患者の認知症または認知症と共に観察される1つ以上の行動障害を治療する方法であって、ここで前記化合物がそれらの薬学的に許容可能な塩の形態で存在し得る、方法。
【請求項35】
請求項25に記載の組合せを、認知症または認知症と共に観察される行動障害の治療において、それらを同時に、別々に、または連続して使用するための指示書と共に含む、コマーシャル・パッケージ。
【請求項36】
AMPA受容体アンタゴニストおよび向知性薬の両方を、合わせて治療上有効量において含み、そして薬学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−538216(P2008−538216A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505417(P2008−505417)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/012284
【国際公開番号】WO2006/107859
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】