説明

神経変性疾患の治療のための2−アミノアルコール

神経変性病態の治療に使用するための薬剤の製造のための化合物の使用であって、前記化合物は、化学式(I)の化合物:


[式中、R1はCHR4-OR5もしくはCHR4-SR5、または任意選択で1つ以上のR6基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり;R2はアルキルであるか、またはR3とともに環の一部であり; R3はH、アルキル、またはCH2(R2とともに環の一部を形成する場合)であり;R4はHもしくはアルキルであるか、またはR5とともに環の一部であり;R5は任意選択でR7によって置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;それぞれのR6は独立に、アルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、SO2NH2、Sアルキル、CH2S02アルキル、またはOCON(アルキル)2であり;R7はR8または(CH2)nOR8、R9、CF3、OH、OR9、OCOR9、COR9、COOR9、CONH2、CH2CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHCONHR7、NHCON(R9)2、NHCOR9、NHCOアリール、NHSO2Me、CONH2、SMe、SOMe、もしくはSO2NH2であり;R8は(CH2)nOR9、(CH)nOR9、(CH2)nCOOR9、または(CH2)nCOアリールであり;R9はアルキルまたはシクロアルキルであり;nは1〜4である];あるいはその塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、脳または末梢神経の機能に影響を及ぼす病態である。それらはニューロンの損傷によって生じ、進行性の中枢または末梢神経機能障害を特徴とする。それらは2つのグループ、すなわち、運動または知覚に障害を引き起こす病態、および記憶に影響を及ぼす病態または認知症に関連する病態に分類される。神経変性疾患は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レヴィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、脊髄癆、およびギラン・バレー症候群を含む。現在、これらの病態への効果的な治療法はなく、利用可能な治療はほとんどない。
【0003】
発明の概要
意外にも、β-アミノアルコールが神経変性疾患の治療に有用であることが発見された。β-アミノアルコールは、化学式(I)の化合物:
【化1】

【0004】
[式中、R1はCHR4-OR5もしくはCHR4-SR5、または任意選択で1つ以上のR6基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり;
R2はアルキルであるか、またはR3とともに環の一部であり;
R3はH、アルキル、またはCH2(R2とともに環の一部を形成する場合)であり;
R4はHもしくはアルキルであるか、またはR5とともに環の一部であり;
R5は任意選択でR7によって置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
それぞれのR6は独立に、アルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、SO2NH2、Sアルキル、CH2S02アルキル、またはOCON(アルキル)2であり;
R7はR8、または(CH2)nOR8、R9、CF3、OH、OR9、OCOR9、COR9、COOR9、CONH2、CH2CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHCONHR7、NHCON(R9)2、NHCOR9、NHCOアリール、NHSO2Me、CONH2、SMe、SOMe、もしくはSO2NH2であり;
R8は(CH2)nOR9、(CH)nOR9、(CH2)nCOOR9、または(CH2)nCOアリールであり;
R9はアルキルまたはシクロアルキルであり;
nは1〜4である];
あるいはその塩である。
【0005】
発明の説明
本発明は(I)の任意のジアステレオマーおよびエナンチオマーと同様に、その塩、例えば塩酸塩、代謝産物、およびプロドラッグに関することが理解される。
【0006】
化学式(I)の化合物のいくつかは、アルファおよびベータアドレナリン受容体への作動性および拮抗性を介した降圧作用、血管拡張作用、交感神経刺激作用、気管支拡張作用、または心臓刺激作用を有する。これらの薬剤は少なくとも1つのキラル中心を有し、アルファまたはベータアドレナリン受容体へのそれらの活性は、主にまたはもっぱら1つのエナンチオマーに備わる。分子が2つ以上のキラル中心を有する場合、アルファまたはベータアドレナリン受容体への活性は、主に1つのジアステレオマーに備わる。
【0007】
(I)の好ましいジアステレオマーまたはエナンチオマーは、αまたはβアドレナリン受容体への活性をほとんどもしくは全く有さない。この活性は、適切なin vitroアッセイの使用によって測定されうる。
【0008】
本発明の化学式(I)の化合物は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レヴィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、脊髄癆、またはギラン・バレー症候群を含む神経変性疾患の治療に有用である。
【0009】
化学式(I)の化合物は、単独で、別の治療薬と併用して、または別の治療薬をも投与されている患者の治療において、本発明に従って使用されうる。このような他の薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬(例としてガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、タクリンを含む)、ステロイド、インターフェロン、ならびにAMPA、カイニン酸受容体作用薬(kainate agents)およびNMDA拮抗薬(例としてメマンチンを含む)などのグルタミン酸受容体作用薬を含む。
【0010】
任意の適切な投与経路が使用され得る。例えば、経口、局所、非経口、脳室内、脊髄、眼内、直腸、膣内、吸入、口腔、舌下、および鼻腔内送達経路のいずれかが適切でありうる。活性成分の用量は、病態の性質および程度、患者の年齢および状態、ならびに当業者にとって既知の他の要因に依存する。一般的な用量は0.1〜100 mgであり、1日あたり1〜3回投与される。
【0011】
以下の実施例は本発明を説明する。
【実施例】
【0012】
実施例1
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症の多くの特徴に類似した症状を呈する、中枢神経系の自己免疫性脱髄疾患である。マウスEAEの急性モデルはしばしば、治療法の有効性を評価するために利用される。
【0013】
方法
環境に順化させたSJLマウスを、脳炎誘発性の接種材料として作用する完全フロイントアジュバント(CFA)中のプロテオリピドタンパク質(PLP)の皮下注射によって感作した。接種材料は、200μlの容量中125μg PLP/300μg CFAの濃度で皮下投与された。48時間後、20μg/kgの用量で百日咳毒素(PTX)の腹腔内注射を行い、血液脳関門の透過性を増加させた。
【0014】
(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩およびコパクソン(copoxane)を、実験の1日目から最後まで1日1回投与した。(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩は、10 mg/kgの用量で経口投与された。コパクソンは25 mg/kgの用量で腹腔内投与された。実験の間、動物の健康状態を観察するために慎重な臨床検査および体重測定を行った。加えて、下記のような古典的な0〜5等級に対してEAE症状の臨床スコアリングを行った。すなわち、
0 正常な反応
1 尾の脱力
2 後肢の脱力および不全麻痺
3 後肢の麻痺
4 四肢麻痺
5 瀕死/死亡
結果
図1は、((+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩の代わりに)ベヒクルを投与した対照と比較した、経口投与した(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩(10 mg/kg)、および腹腔内投与したコパクソン(25 mg/kg)の、SJLマウスEAE神経学的スコアに対する効果を表す。
【0015】
EAE誘発マウスは、ベヒクル群によって定義されるように顕著な神経障害を示した。後肢の脱力は10日目までに記録され、17日目にピークに達し、最大神経障害スコア2(歩行障害および不安定歩行に関連する)を示した。
【0016】
(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩は最大の神経学的スコアにおいては改善を示さなかったが、症状のより迅速な改善を示し、ベヒクルと比較して疾患の改善を早めることを示した。
【0017】
コパクソンは神経学的症状の発症を2〜3日遅延させたが、症状の改善に効果を有さず、本モデルのこの状態を悪化させるように見えた。
【0018】
これらのデータは、(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩が多発性硬化症のSJL EAEモデルに対して定量化可能な効果を有することを示し、この分子が多発性硬化症のための潜在的な治療法であることを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、モデルにおいて誘導された神経学的スコアに対する、(+)-erythro-2-tert-ブチルアミノ-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール塩酸塩(実施例1)およびコパクソンの効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性病態の治療に使用するための薬剤の製造のための化合物の使用であって、前記化合物が、化学式(I)の化合物:
【化1】

[式中、R1はCHR4-OR5もしくはCHR4-SR5、または任意選択で1つ以上のR6基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり;
R2はアルキルであるか、またはR3とともに環の一部であり;
R3はH、アルキル、またはCH2(R2とともに環の一部を形成する場合)であり;
R4はHもしくはアルキルであるか、またはR5とともに環の一部であり;
R5は任意選択でR7によって置換されたアリールまたはヘテロアリールであり;
それぞれのR6は独立に、アルキル、CF3、OH、Oアルキル、OCOアルキル、CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHSO2アルキル、CONH2、SOMe、SO2NH2、Sアルキル、CH2S02アルキル、またはOCON(アルキル)2であり;
R7はR8、または(CH2)nOR8、R9、CF3、OH、OR9、OCOR9、COR9、COOR9、CONH2、CH2CONH2、CN、ハロゲン、NH2、NO2、NHCHO、NHCONH2、NHCONHR7、NHCON(R9)2、NHCOR9、NHCOアリール、NHSO2Me、CONH2、SMe、SOMe、もしくはSO2NH2であり;
R8は(CH2)nOR9、(CH)nOR9、(CH2)nCOOR9、または(CH2)nCOアリールであり;
R9はアルキルまたはシクロアルキルであり;
nは1〜4である];
あるいはその塩である化合物の使用。
【請求項2】
前記病態が多発性硬化症である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記病態がアルツハイマー病である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記病態がパーキンソン病である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記化合物がキラルであり、αもしくはβアドレナリン受容体での活性を相対的にほとんどまたは全く有さないエナンチオマーあるいはジアステレオマーの形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
患者が、コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド、インターフェロン、ならびにAMPA、κ受容体作用薬(κ agents)およびNMDA拮抗薬などのグルタミン酸受容体作用薬より選択される他の治療薬をもまた投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
化合物(I)および前記他の治療薬が組み合わせて提供される、請求項6に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−508926(P2009−508926A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531785(P2008−531785)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003529
【国際公開番号】WO2007/034200
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(507303376)ソーセイ アールアンドディ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】