説明

神経変性障害を治療するための方法、核酸構築物および細胞

神経変性障害を治癒する方法が提供される。その方法は神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であり、それにより神経変性障害を治療することができる細胞を、その必要性のある個体に投与することによって実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経伝達物質の制御が可能な合成を行うことができるニューロン様細胞、および、パーキンソン病などの神経変性障害を治療するために細胞を使用する細胞置換治療に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、震せん、固縮および運動失調などの症状を介して現れる運動機能の進行性消失がやがてはもたらされる中脳の黒質におけるドーパミン産生ニューロンの進行性消失によって特徴づけられる加齢に関連した障害である。パーキンソン病は、薬理学的用量のドーパミン前駆体L−DOPAを投与することによって治療することができる(Marsden、Trends Neurosci.、9:512、1986;Vinken他、Handbook of Clinical Neurology、185頁、Elsevier、Amrsterdam、1986)。そのような治療は初期段階のパーキンソン病患者では効果的であるが、黒質細胞の進行性消失は、最終的には、残存細胞が、投与された前駆体から十分なドーパミンを合成することができないこと、および、薬効の低下をもたらす。
【0003】
神経変性疾患の研究では、病気に苦しむ人々において生じる症状は、局所的な神経回路における不具合に対して二次的であり、全身的な薬物送達を用いて効果的に治療することができないことが示唆される。その結果、神経変性疾患を治療するための代わりの方法、例えば、損傷したニューロンの機能を置換または補充することができる細胞の移植などの方法が出現している。そのような細胞置換治療が機能するためには、移植された細胞が、損傷した組織の中で生存し、かつ、機能的および構造的にその両方で一体化しなければならない。
【0004】
パーキンソン病は、大脳内細胞置換治療がヒトにおいて使用された脳の最初の疾患である。いくつかの試みが、副腎髄質細胞を患者の脳に同種移植することによって、神経伝達物質のドーパミンをパーキンソン病患者の病変した脳幹神経節に提供するために行われている(Backlund他、J.Neurosurg.、62:169〜173、1985;Madrazo他、New Eng.J.Med.、316:831〜836、1987)。黒質(これは、ドーパミンを含有する細胞体が多い脳の領域であり、また、パーキンソン病において最も冒される脳の領域でもある)由来の胎児脳細胞などの他のドナー細胞の移植は、選択的なドーパミン作動性神経毒によって誘導される行動的欠損を逆行させることにおいて部分的に効果的であることが示されている(Bjorklund他、Ann.N.Y.Acad.Sci.、457:53〜81、1986;Dunnett他、Trends Nuerosci.、6:266〜270、1983)。
【0005】
異なる供給源に由来する様々な非ニューロン細胞タイプを利用したいくつかの細胞置換研究もまたこの数年間にわたって行われている。パーキンソン病の動物モデルにおいて、研究者は、単球、骨髄幹細胞、筋芽細胞、繊維芽細胞、星状膠細胞およびセルトリ細胞などの細胞を移植している(Costantini他、2000;Hwan−Wun他、1999;Linder他、1995;Patridge&Davies、1995;Perry&Gordon、1998;Yadid他、1999)。他の研究では、細胞が、生存率を高めるために増殖因子遺伝子(例えば、グリア由来増殖因子および脳由来増殖因子)で遺伝子操作された後で移植され、あるいは、チロシンヒドロキシラーゼ、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼまたはGTPシクロヒドロラーゼI(これらは、形質転換された細胞におけるドーパミン合成を増大させることができる)などの遺伝子で遺伝子操作された後で移植された(Choi−Lundberg他、1998;Yoshimoto他、1995;Schwarz他、1999)。しかしながら、これらの細胞は、損傷したニューロン細胞の構造的および機能的な特徴を完全に獲得することができず、従って、治療的に効果的でないことが判明した(Brundin他、2000)。
【0006】
パーキンソン病患者のための臨床的細胞置換試験が、ドーパミン作動性ニューロンを1〜2%のみ含む胎児細胞を使用して行われている(Freed他、1992;Freed他、2001;Freeman他、1995;Kordower他、1995;Kordower他、1998;Lindvall O.、1991;Wenning他、1997)。Freed他(2001)は、パーキンソン病患者に対する胎児細胞の移植が若い患者(60歳未満)に対してのみ有益であったことを見出した。さらに、幾人かの患者は、移植された細胞によるドーパミンの過度かつ制御されない産生および放出のために、レボドパ治療がない場合、重篤なジスキネジー(「遁走(runaway)ジスキネジー」)に悩まされた(Freed他、2001;Olanow他、2003)。また、ヒト胎児組織の入手性が低いことにより、胎児細胞の移植から利益を受け得る患者の数が実質的に制限されている。
【0007】
成人骨髄間質細胞(BMSc)は非造血系の細胞であり、様々なニューロンマーカー(Azizi他、1998;Deng他、2001;Kopen他、1999;Sanchez−Ramos他、2000;Schwarz他、1999;Woodbury他、2000)、電気生理学的機能(Kohyama他、2001)、および、チロシンヒドロキシラーゼのインビボ発現(Schwarz他、1999)を示すニューロン様細胞に分化することができる。そのうえ、パーキンソン病のマウスモデルおよびラットモデルにおけるBMScの移植は有益な効果をもたらした(Li他、2001;Schwarz他、1999)。
【0008】
成人BMScは、移植に構造的に適合し得るニューロン様細胞に分化することができるが、生着したBMScはドーパミンなどの神経伝達物質を制御不能に放出するかもしれず、このことは、「遁走遁走ジスキネジー」などの重篤な副作用をやがて引き起こす可能性があり、従って、BMScの使用を神経変性障害の治療のために不適にしている。
【0009】
従って、損傷したニューロン組織への一体化が可能であり、また、ドーパミンなどの神経伝達物質を制御可能に合成することがさらに可能であり、従って、神経変性障害を効果的かつ安全に治療するために利用することができるニューロン様細胞が必要であることが広く認識されており、そのようなニューロン様細胞を有することは非常に好都合であると考えられる。
【発明の開示】
【0010】
本発明の1つの態様によれば、神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であり、それにより神経変性障害を治療することができる細胞を、その必要性のある個体に投与することを含む、神経変性障害を治療する方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、(a)神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能である細胞を、その必要性のある個体に投与する工程、および(b)細胞における神経伝達物質の合成を調節することができる作用物または条件に個体を定期的にさらし、それにより神経変性障害を治療する工程を含む、神経変性障害を治療する方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、哺乳動物細胞におけるその酵素の発現を調節することができる調節配列の制御下に配置されて含む核酸構築物が提供される。
【0013】
本発明のなお別の態様によれば、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列を第1の調節配列の転写制御下に配置されて含む第1の発現構築物と、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列を第2の調節配列の転写制御下に配置されて含む第2の発現構築物とを含む構築物システムが提供され、この場合、トランス活性化因子は、第1の調節配列を活性化して、第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、細胞におけるその酵素の発現を調節することができる調節配列の制御下に配置されて含む核酸構築物を含む細胞が提供される。
【0015】
本発明のさらにさらなる態様によれば、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列を第1の調節配列の転写制御下に配置されて含む第1の発現構築物と、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列を第2の調節配列の転写制御下に配置されて含む第2の発現構築物とを含む構築物システムを含む細胞が提供される。この場合、トランス活性化因子は、第1の調節配列を活性化して、第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる。
【0016】
本発明のなおさらなる態様によれば、神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する方法が提供される。この方法は、(i)骨髄細胞を単離する工程、(ii)骨髄細胞を維持および/または拡大することができる増殖用培地において骨髄細胞をインキュベーションする工程、(iii)工程(ii)から得られる細胞から骨髄間質細胞を選択する工程、および(iv)少なくとも1つの多不飽和脂肪酸および少なくとも1つの分化用作用物を含む分化用培地において骨髄間質細胞をインキュベーションし、それにより、神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する工程を含む。
【0017】
本発明のさらにさらなる態様によれば、神経伝達物質を合成することができる骨髄由来間質細胞を含む細胞集団が提供される。
【0018】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも2つのタイプの神経伝達物質を合成することができる骨髄由来間質細胞を含む混合細胞集団が提供される。
【0019】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、神経変性障害を治療する方法は、細胞における神経伝達物質の合成を調節することができる作用物または条件に個体をさらすことをさらに含む。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であるように遺伝子改変される。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物で形質転換される。この場合、発現構築物は、ポリヌクレオチドの発現が前記作用物により制御可能であるように設計される。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、作用物は、神経伝達物質の合成に関係する酵素の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、作用物は、神経伝達物質の合成に関係する酵素の発現をアップレギュレーションすることができる。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、第1の調節配列の転写制御下に配置された、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、第2の調節配列の転写制御下に配置された、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む少なくとも1つの発現構築物で形質転換される。この場合、トランス活性化因子は、前記作用物の非存在下で、第1の調節配列を活性化して、第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、作用物はドキシサイクリンである。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、トランス活性化因子はテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1の調節配列はテトラサイクリン応答エレメントを含む。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、酵素は、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼI、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、トリプトファン−5モノオキシゲナーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の調節配列はヒトニューロン特異的エノラーゼのプロモーターを含む。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経変性障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびハンチングトン病からなる群から選択される。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経変性障害はパーキンソン病である。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経伝達物質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、γ−アミノ酪酸、セロトニン、アセチルコリンおよびグルタミン酸からなる群から選択される。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経伝達物質はドーパミンである。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は骨髄細胞である。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、骨髄細胞は骨髄間質細胞である。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞はニューロン様細胞である。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ニューロン様細胞は少なくとも1つのニューロンマーカーを発現する。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ニューロンマーカーは、CD90、ニューロン特異的核タンパク質、ニューロフィラメント重鎖、ニューロン特異的エノラーゼ、β−チューブリン3、チロシンヒドロキシラーゼ、微小管結合タンパク質2(MAP−2)、ネスチンおよびカルビンジンからなる群から選択される。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞を投与することは、細胞を個体の脳組織内に移植することによって達成される。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞を投与することは、細胞を個体の脊髄内に移植することによって達成される。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、個体をさらすことは、作用物を個体に経口投与することによって達成される。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、個体をさらすことは、作用物を個体に注入することによって達成される。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、神経伝達物質の外因性の調節可能な合成が可能であるように遺伝子改変される。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物で形質転換される。この場合、発現構築物は、ポリヌクレオチドの発現が調節作用物により制御可能であるように設計される。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、作用物は、神経伝達物質の合成に関係する酵素の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、作用物は、神経伝達物質の合成に関係する酵素の発現をアップレギュレーションすることができる。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、作用物が存在しないとき、活性化因子分子が応答エレメントと結合し、それによりチロシンヒドロキシラーゼの発現をアップレギュレーションするように作用物の調節可能な制御下でチロシンヒドロキシラーゼを発現させるために遺伝子改変される。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、神経伝達物質の合成に関係する酵素の内因性活性を有しないニューロン様細胞である。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、細胞は、アポトーシス阻害ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、増殖培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、FCS、2−β−メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびEGFを含む。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経変性障害を治療するための細胞を作製する方法は、工程(iv)の前に、工程(iii)から得られた細胞を前分化用培地においてインキュベーションし、それにより細胞をニューロン様細胞に分化させやすくすることを含む。
【0052】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前分化用培地はbFGFを含む。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびFCSをさらに含む。
【0054】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも1つの多不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である。
【0055】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも1つの分化用作用物は、BHA、dbcAMPおよびIBMXからなる群から選択される。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびレチノイン酸をさらに含む。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経変性障害を治療するための細胞を作製する方法はさらに、工程(iv)の前に、工程(iii)から得られた細胞を本発明の核酸構築物で形質転換することによって達成される。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、工程(i)は吸引によって達成される。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、工程(iii)は、表面接着細胞を集めることによって達成される。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、神経伝達物質はドーパミンである。
【0061】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2つのタイプの神経伝達物質には、ドーパミンが含まれる。
【0062】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2つのタイプの神経伝達物質には、セロトニンが含まれる。
【0063】
本発明は、神経伝達物質の制御可能な合成が可能であるニューロン様細胞で、パーキンソン病などの神経変性障害を治療するためにそのような細胞を使用する細胞置換治療が可能であるニューロン様細胞を提供することによって、神経変性疾患を治療する現在知られている方法の欠点を対処することに成功している。
【0064】
別途定義されない場合、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と同様または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0065】
本発明は、例示のみを目的とし、添付されている図面を参照して、本明細書中に記載される。次に図面を詳しく具体的に参照して、示されている項目は、例としてであり、また、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためのものであり、従って、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解された記述であると考えられるものを提供するために示されていることが強調される。これに関して、記述を図面と一緒に理解することにより、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかになるので、発明の構造的詳細を、発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示すことは試みられていない。
図面の簡単な記述
図1A〜Cは非分化のヒト骨髄間質細胞(hBMSc)の光学顕微鏡像を例示する(図1A〜図1C)。hBMScは「増殖培地」(下記の実施例の節の実施例1に記載される)で培養され、約15日の期間にわたって80%〜90%の密集度に成長させられた。プラスチック接着性のhBMScは円形もしくは紡錘体の体形状(図1A)または平坦な体形状(図1B〜図1C)を有した。
図2は非分化hBMScのフローサイトメーター分析を例示する。15日目のhBMS細胞が、表面マーカーのCD45、CD5、CD20、CD11bおよびCD34(これらはリンパ造血系細胞に特徴的である)の存在について染色され、また、CD90(Thy−1;シナプス形成時に発現するタンパク質)に関して染色された。細胞は、アルゴンイオンレーザー(これは488nmの励起波長に調節された)およびCELLQuest(商標)ソフトウエアプログラム(Becton Dickinson)を備えるFACSCalibur(商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析された。分析では、hBMS細胞はリンパ球関連マーカーのいずれも発現しないが、Thy−1タンパク質を明確に発現したことが示される。
図3はニューロンに分化した成人hBMScの光学顕微鏡像を例示する。分化の24時間前に、培養されたhBMScを「増殖用培地」から「前分化培地」(下記の実施例の節の実施例1〜実施例2を参照のこと)に移した。「前分化培地」で24時間インキュベーションした後、hBMScを「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)に移した。プラスチック接着性の細胞を、分化誘導後の3時間もの早期に現れ、分化誘導後の72時間において現れ続ける紡錘体の形状をした細胞体および長い枝分かれプロセスを有するニューロン様細胞に転換させた。
図4は「分化用培地」で培養されたhBMSc、および「前分化用培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で培養されたhBMScにおけるH−チミジン取り込み(これは細胞増殖を示す)を例示する。分化中の細胞へのH−チミジン取り込みは、16時間および39時間のインキュベーション期間の後で、非分化細胞と比較して、約45%および90%それぞれ低下した。
図5A〜Dは非分化のhBMScおよび分化中のhBMScにおけるニューロンマーカーから抽出されたRNAの逆転写酵素RT−PCR分析、リアルタイムPCR分析およびノーザンブロット分析を例示する(図5A〜図5D)。図5Aは、ニューロン転写物を同定するために計画されたRT−PCR分析を例示する。図5Bは、NEGF2の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析およびリアルタイムPCR分析を例示する。図5Cは、ニューロフィラメント200(NF−200)の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析を例示する。図5Dは、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析を例示する。
図6A〜Bは「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で12時間〜5日間培養されたhBMScにおけるニューロンマーカーの蛍光顕微鏡像を例示する(図6A〜図6B)。図6Aは、抗体で標識されたニューロン核特異的マーカー(NeuN;12時間後に発現した)、ニューロフィラメント重鎖(NF−200;24時間後に発現した)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE;48時間後に発現した)およびネスチン(48時間後に発現した)を例示する。図6Bは、抗体で標識されたグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP;48時間後に発現した)およびβ−チューブリンIII(5日後に発現した)を例示する。
図7A〜Cはニューロン特異的エノラーゼ(NSE;図7A)、ニューロン核特異的マーカー(NeuN;図7B)およびネスチン(図7C)の上昇した発現を示す、分化したhBMScのウエスタンブロット分析を例示する。
図8は「長期分化培地」(下記の実施例の実施例5を参照のこと)で28日間インキュベーションした後におけるニューロン様の分化したhBMScの光学顕微鏡像を例示する。
図9A〜Cは「増殖培地」(下記の実施例の実施例1を参照のこと)または「長期分化培地」(下記の実施例の実施例5を参照のこと)でインキュベーションされたhBMScの光学顕微鏡像および蛍光顕微鏡像を例示する( 図9A〜図9C)。図9Aは、分化した細胞におけるニューロンマーカーのβ−チューブリンIIIの抗体標識された発現を例示する。図9Bは、分化した細胞におけるニューロンマーカーのMAP−2の抗体標識された発現を例示する。図9Cは、分化した細胞におけるニューロンマーカーのネスチンの抗体標識された発現を例示する。
図10は「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で12時間〜72時間培養されたhBMScにおけるドーパミン作動性マーカーを同定するために計画されたRT−PCR分析を例示する。
図11A〜Cは分化したhBMScにおけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現を例示する。図11Aは、分化した細胞における上昇したTH転写を示すリアルタイムPCR分析を例示する(図11A〜図11C)。図11Bは、分化した細胞におけるTHの上昇したレベルを示すウエスタンブロット分析を例示する。図11Cは、分化した細胞における抗体標識されたTH発現を強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
図12は分化した細胞における抗体標識された小胞モノアミン輸送体2(VMAT−2)を強調する、「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で5日間インキュベーションされたhBMScの共焦点蛍光顕微鏡像を例示する。
図13は「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で48時間インキュベーションされたhBMScのフローサイトメーター分析を例示する。細胞はD2ドーパミン受容体の存在について染色され、FACSCalibur(商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析された。分析では、D2ドーパミン受容体が、分化した細胞に存在したことが示される。
図14A〜Dは分化中のhBMScのHPLC分析を例示する(図14A〜図14D)。図14Aは、「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で0〜96時間インキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミンのレベルを例示する。図14Bは、「分化培地」で0〜96時間インキュベーションされ、その後、56mMのKCl溶液において10分間さらにインキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミンのレベルを例示する。図14Cは、「分化培地」で0〜72時間インキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミン前駆体DOPAのレベルを例示する。図14Dは、「分化培地」で0〜50時間培養されたhBMScの上清における測定されたドーパミン代謝産物DOPACのレベルを例示する。
図15A〜Dはパーキンソン病についてのラットモデルにおけるアンフェタミン誘導の運動回旋の回復に対するマウス骨髄間質細胞(mBMSc)移植の効果を例示する(図15A〜図15D)。mBMScを、緑色蛍光タンパク質を目印とした遺伝子組換えマウス(GFT−Tg)から単離した。単離されたmBMScは神経分化のために誘導され、6−OHDA障害ラットの黒質に移植された。その後、ラットはアンフェタミンで治療され、移植後45日の期間にわたって回旋応答について調べられた。図15Aは、移植後の経時的な回旋速度の変化を例示し、低下しつつある回旋(これは運動機能の改善を示す)を移植後45日目に示している。図15Bは、移植後の経時的な(非治療マウスと比較したときの)相対的回旋における変化を例示し、相対的回旋の97.9%の減少を移植後45日目に示している。図15Cは、移植後45日目の治療されたマウスの黒質に存在する移植されたmBMScを強調する蛍光顕微鏡像を例示する。図15Dは、黒質移植後45日目の治療されたマウスの線条体に存在する移植されたmBMScを強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
図16A〜Cは分化したヒト骨髄間質細胞(hBMSc)におけるドーパミン作動性活性およびセロトニン作動性活性を例示する(図16A〜図16C)。図16Aは、トリプトファンヒドロキシラーゼの発現を示すウエスタンブロット分析を例示する。図16Bは、トリプトファンヒドロキシラーゼの転写を示すRT−PCR分析を例示する。図16Cは、DOPAC(ドーパミン代謝産物)および5HIAA(セロトニン代謝産物)の合成を示すHPLC分析を例示する。
図17はpcDNA−3.1A(Invitrogene)に挿入されたNurr−1コード配列を含有する発現ベクターの構築物を例示する。
図18はドーパミン作動性細胞の負の選択のために設計された構築物を例示する。この構築物は、「自殺遺伝子」HSV1−tk(毒性のガンシクロビルをコードする1型単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ)の上流側においてpMOD(InvivoGene)に挿入されたヒトTH(チロシンヒドロキシラーゼ)プロモーターを含有する。
図19A〜Bはチロシンヒドロキシラーゼ(TH)のドキシサイクリン制御の発現のためのTet−off/Tet−onシステムを例示する(図19A〜図19B)。図19Aはこのシステムの調節因子構築物および応答構築物を例示する。図19Bは、このシステムの作用様式を記載する概略図を例示する。
図20A〜BはGFP−Tgマウスの分化したBMSc(mBMSc)の蛍光顕微鏡像を例示する(図20A〜図20B)。図20Aは、「分化培地」(実施例1参照)により誘導される形態学的変化の蛍光顕微鏡像を例示する。図20Bは、NT−3誘導のmBMScにおいて発現する抗体標識されたA2B5(稀突起神経膠細胞前駆体のマーカー)を強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
図21はSOD1を発現するマウス(筋萎縮性側索硬化症(ALS)の動物モデル)の回旋成績における経時変化を例示する。SOD1マウスは、野生型マウスと比較して、回旋成績の実質的な低下を受け、4月齢〜5月齢で完全な麻痺になった。
図22は雄由来のmBMScが大槽内に移植された後の1週間目にサンプリングされた雌マウスの種々の組織のPCR分析を例示する。分析では、(移植された細胞であることを示す)Y染色体が雌マウスの脊髄において検出され、他の組織では検出されない。
図23は7週齢のときにその脊髄内へのmBMSc移植を受けた野生型マウスのロータロド(rotarod)成績(回旋行動を示す)を例示する。生理的食塩水の注射で治療されたマウスが対照として使用された。mBMScの移植は野生型マウスの回旋行動に影響を及ぼさなかった。
図24は7週齢のときにその脊髄内へのmBMSc移植を受けたSOD1マウス(筋萎縮性側索硬化症のモデル)のロータロド成績(回旋行動を示す)を例示する。生理的食塩水の注射で治療されたマウスが対照として使用された。mBMScの移植では、生理的食塩水で治療された対照と比較して、SOD1マウスの回旋行動が著しく改善された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明は、神経伝達物質の制御可能な合成が可能な遺伝子改変された細胞、ならびに、そのような細胞を作製する方法、および、神経変性障害の細胞置換治療においてそのような細胞を使用する方法に関する。
【0067】
本発明の原理および操作は、図面および付随する記述を参照してより良好に理解され得る。
【0068】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することが可能であり、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであり、限定であるとして見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0069】
ニューロン機能の消失によって特徴づけられる神経変性障害(例えば、パーキンソン病など)は、従来の薬物治療を使用して効率的に治療することができない。これは、そのような薬物は、ニューロンの変性によって典型的に引き起こされる根本的な疾患プロセスに対して全く効果がないからである。結果として、薬物治療では、ニューロン細胞の増大しつつある消失を完全に補うことができない。
【0070】
先行技術の様々な細胞置換法は、動物モデルにおいて試験されたときには成功している(米国特許第6528245号;Schwartz他、1999;Li他、2001;Costantini他、2000;Hwan−Wun他、1999;Linder他、1995;Patridge&Davies、1995;Perry&Gordon、1998;Yadid他、1999;Choi−Lundberg他、1998;Yoshimoto他、1995)が、これらの方法は、ヒト患者におけるそれらの使用を妨げ得るいくつかの固有的な制限により損なわれている。
【0071】
本発明を考えているとき、本発明者らは、パーキンソン病などの神経変性疾患の安全かつ効果的な細胞置換治療を提供するために、容易に採取および操作され得る細胞で、とりわけ、外部の刺激に応答してドーパミンなどの神経伝達物質を合成することができる細胞が必要であることを実感した。
【0072】
神経伝達物質を合成することができるニューロン様骨髄間質細胞(BMSc)が先行技術の様々な研究(例えば、米国特許第6528245号;Sanchez−Ramos他(2000);Woodburry他(2000);Woodberry他(J.Nerosci.Res.、96:908〜917、2002);Deng他(Biophys.Res.Commun.、282:148〜152、2001)を参照のこと)によって記載されているが、これらの研究は、そのような分化したBMScによる神経伝達物質の産生を明らかにしていなかった。
【0073】
上記からそれにもかかわらず、そのような先行技術の細胞が神経伝達物質を産生したとしても、細胞置換治療におけるその使用は、移植された細胞からの構成的な神経伝達物質の合成が重篤な副作用(例えば、遁走ジスキネジーなど)の形成をもたらし得るので気づいていない。
【0074】
従って、本発明の1つの態様によれば、神経変性障害を治療する方法が提供される。本明細書中で使用される表現「神経変性障害」は、神経組織、神経伝達物質または神経機能の徐々に進行する消失によって特徴づけられる神経系(好ましくはCNS)の任意の障害または疾患または状態を示す。神経変性障害の例には、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびハンチングトン病が含まれる。
【0075】
本明細書中で使用される用語「治療する」は、そのような用語が適用される障害または疾患または状態の進行を逆行させ、または軽減させ、または阻害すること、あるいは、そのような用語が適用される障害または疾患または状態を防止すること、あるいは、そのような障害または状態の1つまたは複数の症状を防止することを示す。本明細書中で使用される用語「治療(treatment)」または用語「治療(therapy)」は、治療するという作用を示す。
【0076】
本発明の方法は、神経伝達物質の外因的に制御可能な合成が可能であり、それにより神経変性障害を治療することができる細胞を、その必要性のある個体に投与することによって達成される。
【0077】
神経伝達物質の外因的に制御可能な合成が可能である細胞(すなわち、要求に応じて神経伝達物質を産生する細胞)、例えば、より詳しくは本明細書中下記において記載される細胞などは、上記で記載された先行技術方法によって利用される細胞に伴う望ましくない副作用が除かれ得るので、細胞置換治療のためにより良好に適する。
【0078】
本発明の教示による神経伝達物質は、中枢神経系または末梢神経系のシナプス前ニューロンの軸索終端から興奮時に放出され、かつ、シナプス間隙を超えて移動し、標的細胞の興奮または阻害のいずれかを生じさせる任意の物質であり得る。神経伝達物質は、例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、γ−アミノ酪酸、セロトニン、アセチルコリンまたはグルタミン酸であり得る。好ましくは、神経伝達物質はドーパミンである。
【0079】
そのような神経伝達物質の細胞合成は、前駆体分子を活性な神経伝達物質に変換することにおいて協力する様々な酵素からなる経路によって導かれる。例えば、ドーパミンは、ドーパミン作動性ニューロンにおいて、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)からDOPAデカルボキシラーゼの作用によって合成され、一方、L−DOPAはチロシンからチロシンヒドロキシラーゼの作用によって産生される。ノルエピネフリンは、ノルエピネフリン作動性ニューロンにおいて、ドーパミンからドーパミンβ−ヒドロキシラーゼの作用によって産生される。エピネフリンは、エピネフリン作動性ニューロンにおいて、ノルエピネフリンからフェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼの作用によって産生される。γ−アミノ酪酸(GABA)は、GABA作動性ニューロンにおいて、グルタミン酸からグルタミン酸デカルボキシラーゼの作用によって産生される。セロトニンは、セロトニン作動性ニューロンにおいて、トリプトファンから、トリプトファン−5−モノオキシゲナーゼ(ヒドロキシル化)および芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(脱カルボキシル化)による二段階プロセスによって産生される。アセチルコリンは、コリン作動性ニューロンにおいて、コリンおよびアセチル−CoAから、コリンアセチルトランスフェラーゼの作用によって産生される(http://www.indstate.edu/theme/mwking/nerves.html)。
【0080】
本発明によって利用される細胞は、任意の活発に成長する細胞であり得るが、好ましくは骨髄由来の細胞であり、より好ましくは骨髄間質細胞(BMSc)である。BMScは、吸引し、その後、単離された細胞をエクスビボで維持および/または拡大することができる増殖培地で培養することによって個体の腸骨稜から単離することができる。好ましくは、増殖培地は、下記の実施例の節の実施例1に記載されるように、DMEM、SPN、L−グルタミン、FCS、2−β−メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびEGFを含む。
【0081】
増殖中の細胞は、ニューロン様細胞に直接分化させることができ、または、ニューロン様細胞へのその分化に先立って、本明細書中下記に記載される構築物および形質転換方法を使用して形質転換することができる。
【0082】
ニューロン様細胞への分化は、米国特許第6528245号に、また、Sanchez−Ramos他(2000);Woodburry他(2000);Woodberry他(J.Neurisci.Res.、96:908〜917、2001);BlackおよびWoodburry(Blood Cells Mol.Dis.、27:632〜635、2001);Deng他(2001);Kohyama他(2001);ReyesおよびVerfatile(Ann.N.Y.Acad.Sci.、938:231〜235、2001);Jiang他(Nature、418:47〜49、2002)によって記載される培地などの分化用培地で細胞をインキュベーションすることによって達成され得る。
【0083】
好ましくは、分化は少なくとも1つのタイプの長鎖多不飽和脂肪酸の存在下で達成される。ドコサヘキサエン酸(DHA)などの長鎖多不飽和脂肪酸は、ニューロンの適正な発達および機能のために不可欠であることが知られている。そのような多不飽和脂肪酸は、ニューロン膜における主要なアニオン性リン脂質の生合成および蓄積を調節することに関与している[ConnorおよびNeuringer、“Biological Membranes and Aberrations in Membrane Structure and Function”、Karnovsky,M.、Leaf,A.およびBolis,L.編、267頁〜292頁、Alan R.Liss、New York、1988;Alan R.L.、“The Effect of n−3 Fatty Acid Deficiency and Repletion upon the Fatty Acid Composition and Function of the Brain and Retina”、New York、1988;GreenおよびYavin、J.Neurochem.、65:2555〜2560、1995]。ニューロンの細胞培養研究において、DHAはシナプスの周りのホスファチジルエタノールアミンリン脂質およびホスファチジルセリンリン脂質の一部を形成することが明らかにされている(Kim他、J.Biol.Chem.、275:35215〜35223、2000;Kim他、J.Mol.Neurosci.、16:223〜227、2002;AkbarおよびKim、J.Neurochem.、82:655〜665、2002)。
【0084】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、20μM〜100μMのDHA(Sigma)またはエチル−DHA(Nu−Chek−Preo、Elysian、MN)を培養されたBMScに添加することにより、ニューロン様BMScのシナプスにおける神経伝達物質分泌小胞の形成が実質的に促進されたことを発見した(データは示されず)。
【0085】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、ニューロン様細胞へのBMScの分化は、少なくとも1つの多不飽和脂肪酸(例えば、DHAなど)を含む分化用培地で細胞をインキュベーションすることによって達成される。好ましくは、分化用培地はまた、少なくとも1つのニューロン分化用作用物、例えば、BHA、dbcAMPまたはIBMXを含む。より好ましくは、分化培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびレチノイン酸をさらに含む(下記の実施例の節の実施例2を参照のこと)。
【0086】
分化効率をさらに増大させるために、BMScは、好ましくは、上記の分化培地におけるそのインキュベーションの前に「前分化培地」でインキュベーションされる。好適な前分化培地は、細胞にニューロン様分化を受けやすくすることができる任意の成長培地、例えば、マイトジェンの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)が補充された成長培地などであり得る。好ましくは、前分化用培地はさらに、下記の実施例の節の実施例2などに記載されるように、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびFCSを含む。
【0087】
本明細書中上記に記載される手順から得られるニューロン様細胞は典型的には、ニューロン細胞の形態学(これは図3に例示される)を示し、少なくとも1つのニューロンマーカー(例えば、CD90、ニューロン特異的核タンパク質、ニューロフィラメント重鎖、ニューロン特異的エノラーゼ、β−チューブリン3、MAP−2、チロシンヒドロキシラーゼ、微小管結合タンパク質、ネスチンおよびカルビンジンなど)を発現する。ニューロンマーカーの発現は、下記の実施例の節における実施例3〜実施例9および実施例12などに記載される免疫アッセイ、フローサイトメトリー、RT−PCR、リアルタイムPCRおよびHPLC法などの様々な方法を使用して確認される。
【0088】
本発明の分化した細胞は、好ましくは、神経伝達物質を合成することができる。神経伝達物質を合成する細胞は、上記などに記載されるニューロン様分化培地、または、下記の実施例の節の実施例9などに記載される「ドーパミン作動性分化培地」でインキュベーションすることによって作製することができる。
【0089】
ドーパミン作動性の細胞のみを利用するパーキンソン病の置換治療では、長期間の治療において、非ドーパミン作動性伝達物質系の不均衡がもたらされ、その後に、効果の低下およびジスキネジーなどの副作用が生じ得ることが理解される(NicholsonおよびBrotchie、Eur J Neurol.、3:1〜6、2002)。従って、非ドーパミン作動系を標的化し、かつ、パーキンソン病における不随意運動の発現を防止または制限することができる薬剤が、パーキンソン病患者を治療する際の使用のために提案されている(DjaldettiおよびMelamed、J Neurol.、2:30〜5、2002;Muller,T.、Expert Opin.Pharmacother.、2:557〜72、2001;Jenner,P.、J.Neurol.、2:43〜50、2000)。さらに、様々なセロトニン受容体がパーキンソン病における潜在的な治療標的として同定されている(NicholsonおよびBrotchie、Eur J Neurol.、3:1〜6、2002)。
【0090】
従って、本発明の別の実施形態によれば、本発明によって利用される細胞の集団は、バランスの取れた神経伝達物質の産生を提供するために向けられた2つ以上の異なる神経伝達物質産生細胞を含む混合細胞集団である。好ましくは、混合細胞集団は、図16A〜図16Cに例示される細胞などのドーパミン作動性細胞ならびにセロトニン作動性細胞を含む。
【0091】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のこの態様によって利用される細胞は、好ましくは、神経伝達物質の制御可能な合成が可能である。
【0092】
いくつかの方法が、そのような制御された合成が可能である細胞を作製するために利用することができる。
【0093】
好ましくは、ニューロン移植のために好適な細胞は、本明細書中上記で記載されたように採取または作製され、神経伝達物質の制御可能な発現が可能であるように遺伝子改変される。
【0094】
遺伝子改変は、好ましくは、神経伝達物質の合成に関係する酵素の制御可能な発現のために設計される発現構築物でそのような細胞を形質転換することによって達成される。
【0095】
本発明の発現構築物は、好ましくは、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含むが、発現構築物は、ポリヌクレオチドの発現が、特定の作用物または条件にさらされることにより調節されるように設計される。神経伝達物質の合成に関係する酵素の制御可能な発現は、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、「オン」(誘導)または「オフ」(抑制)の切り替えができるプロモーターまたは調節因子の転写制御下に配置させて含む発現構築物を利用することによって達成することができる。
【0096】
発現構築物は、構築物配列のゲノム組込みをもたらす遺伝子ノックイン構築物として設計することができ、または、エピソーム発現ベクターとして設計することができる。
【0097】
どのような場合でも、発現構築物は、この分野で広く知られている標準的な連結技術および制限技術を使用して作製することができる(Maniatis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1982)を参照のこと)。単離されたプラスミド、DNA配列または合成オリゴヌクレオチドは切断され、調整され、所望される形態で再連結される。
【0098】
本発明の発現構築物において利用され得るポリヌクレオチド配列は、国立分子生物学情報資源によって管理されるデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの様々なデータベースに記載されている。例には、GenBankアクセション番号NM_000360(これはチロシンヒドロキシラーゼをコードする)、同NM_000790(これはDOPAデカルボキシラーゼをコードする)、同NM_000161(これはGTPシクロヒドロラーゼIをコードする)、同NM_000787(これはドーパミンβ−ヒドロキシラーゼをコードする)、同NM_002686(これはグルタミン酸デカルボキシラーゼをコードする)、同NM_003450(これはトリプトファン−5モノオキシゲナーゼをコードする)および同NM_020549(これはコリンアセチルトランスフェラーゼをコードする)において示される配列が含まれる。
【0099】
本発明とともに使用される好適なプロモーターは、好ましくは、神経伝達物質の調節可能な発現をもたらすようにポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる応答エレメントである。好適な応答エレメントは、例えば、テトラサイクリン応答エレメント(例えば、GossenおよびBujard(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547〜551、1992)によって記載される応答エレメントなど);エクチゾン誘導可能な応答エレメント(No D他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346〜3351、1996));金属イオン応答エレメント、例えば、Mayo他(Cell、29:99〜108、1982)、Brinster他(Nature、296:39〜42、1982)およびSearle他(Mol.Cell.Biol.、5:1480〜1489、1985)などによって記載される応答エレメント;熱ショック応答エレメント、例えば、Nouer他(Heat Shock Response、Nouer,L.編、CRC、Boca Raton、Fla、167頁〜220頁、1991)などによって記載される応答エレメント;または、ホルモン応答エレメント、例えば、Lee他(Nature、294:228〜232、1981)、Hynes他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:2038〜2042、1981)、Klock他(Nature、329:734〜736、1987)、IsraelおよびKaufman(Nucl.Acids Res.、17:2589〜2604、1989)などによって記載される応答エレメントであり得る。好ましくは、応答エレメントはエクチゾン誘導可能な応答エレメントであり、より好ましくは、応答エレメントはテトラサイクリン応答エレメントである。
【0100】
本発明の発現構築物はまた、1つまたは複数のエレメントを含むことができる。エンハンサーエレメントは、転写を、連結された同種プロモーターまたは異種プロモーターから1000倍にまで刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位の下流側または上流側に置かれたときに活性である。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントは広い宿主範囲を有し、様々な組織において活性である。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは多くの細胞タイプについて好適である。本発明のために好適であるエンハンサー/プロモーターの他の組合せには、ポリオーマウイルス、ヒトまたはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)に由来するもの、様々なレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルスまたはラウス肉腫ウイルスおよびHIVなど)に由来する長末端反復が含まれる。Enhancers and Eukaryotic Expression(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1983)を参照のこと(これは参考として本明細書中に取り込まれる)。
【0101】
ポリアデニル化配列もまた、本発明の発現構築物から発現される酵素の翻訳効率を増大させるために発現構築物に加えることができる。2つの異なった配列エレメントが正確かつ効率的なポリアデニル化のために要求される:ポリアデニル化部位の下流側に存在するGUリッチ配列またはUリッチ配列、および、11ヌクレオチド〜30ヌクレオチド上流に存在する6ヌクレオチドの高度に保存された配列AAUAAA。本発明のために好適である終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルには、SV40に由来するシグナルが含まれる。
【0102】
既に記載されたエレメントに加えて、本発明の発現構築物は、典型的には、クローン化されたポリヌクレオチドの発現レベルを増大させるために、または組換えDNAを保有する細胞の同定を容易にするために意図された他の特殊化されたエレメントを含むことができる。例えば、数多くの動物ウイルスは、許容細胞タイプにおけるウイルスゲノムの染色体外複製を促進させるDNA配列を含有する。これらのウイルスレプリコンを運搬するプラスミドは、適切な因子が、プラスミドで運ばれる遺伝子、または宿主細胞のゲノムとともに運ばれる遺伝子のいずれかによって提供される限り、エピソーム的に複製する。
【0103】
発現構築物は真核生物レプリコンを含んでもよく、または真核生物レプリコンを含まなくてもよい。真核生物レプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核生物細胞において増幅可能である。構築物が真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅を行うことができない。代わりに、組換えDNAは、操作された細胞のゲノムに組み込まれ、細胞において、プロモーターにより、所望されるポリヌクレオチドの発現が行われる。
【0104】
本発明の発現構築物はさらに、例えば、1つのmRNAからの数個のタンパク質の翻訳を可能にするさらなるポリヌクレオチド配列(例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、およびプロモーターがキメラなポリペプチドのゲノム組込みのための配列など)を含むことができる。例えば、1つの発現構築物を設計し、神経伝達物質の合成に関係する2つの異なった酵素(例えば、ドーパミン合成において関係する酵素のチロシンヒドロキシラーゼおよびDOPAデカルボキシラーゼなど)を同時発現させることができる。
【0105】
哺乳動物発現構築物のための例には、pcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pGL3、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手可能である)、pMbac、pPbac、pBK−RSVおよびpBK−CMV(これらはStratageneから入手可能である)、pTRES(これはClonteckから入手可能である)、ならびにそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
真核生物ウイルス(例えば、レトロウイルスなど)に由来する調節エレメントを含有する発現構築物もまた、本発明によって使用することができる。SV40系ベクターには、pSVT7およびpMT2が含まれる。ウシ乳頭腫ウイルスに由来するベクターには、pBV−1MTHAが含まれる。エプスタイン・バールウイルスに由来するベクターには、pHEBOおよびp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMANneo−5、バキュロウイルスpDSVE、および、SV−40初期プロモーター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞における発現のために効果的であることが示されている他のプロモーターの指揮下でのタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0107】
ウイルスは、多くの場合には宿主の防御機構を回避するために進化してきた特殊化された感染性因子である。典型的には、ウイルスは特定の細胞タイプにおいて感染し、伝搬する。ウイルスベクターの標的化特異性では、その天然の特異性が、所定の細胞タイプを特異的に標的化し、それにより組換え遺伝子を感染した細胞に導入するために利用される。従って、本発明によって使用されるベクターのタイプは、形質転換される宿主細胞に依存する。形質転換される細胞タイプに従って好適なベクターを選択する能力は、十分に当業者の能力の範囲内であり、そのため、選択の考慮すべき事項の一般的な記述は本明細書中には示されていない。例えば、骨髄細胞は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)を使用して標的化することができる。
【0108】
組換えウイルスベクターは、側方感染および標的化特異性などの利点を提供するので、遺伝子組換えポリヌクレオチドのインビボ発現のために有用である。側方感染は、例えば、レトロウイルスの生活環において固有的であり、1つだけの感染細胞が、出芽し、隣接する細胞に感染する多くの子孫ビリオンを産生するプロセスである。その結果は、そのほとんどが一番最初のウイルス粒子によって最初に感染しなかった大きな面積が急速に感染するということである。これは、感染性因子が娘子孫を介してのみ広がる垂直型の感染とは対照的である。側方に広がることができないウイルスベクターもまた作製することができる。この特徴は、所望される目的が、局在化した多数の標的化された細胞にだけ指定の遺伝子を導入することであるならば、有用であり得る。
【0109】
下記の実施例の節において記載されるように、本発明の細胞はまた、トランス活性化因子によって調節される第1のポリヌクレオチド配列を第2の調節配列の転写制御下に配置されて含む発現構築物または構築物システムで形質転換することができる。そのような発現スキームにおいて、トランス活性化因子は、作用物の非存在下で、第1の調節配列を活性化して、第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる。
【0110】
好ましくは、発現構築物または構築物システムの第1のポリヌクレオチド配列は、No他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346〜3351、1996)などによって記載されるエクジソン応答性のプロモーターに機能的に連結されている、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする配列を含む。
【0111】
より好ましくは、発現構築物または構築物システムの第1のポリヌクレオチド配列は、GossenおよびBujard(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547〜551、1992)などによって記載されるテトラサイクリン制御エレメントに機能的に連結されている、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする配列を含む。さらなる詳細については、下記の実施例の節の実施例15を参照のこと。
【0112】
トランス活性化因子は、好ましくは、ヒトエノラーゼプロモーターに機能的に連結された、GossenおよびBujard(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547〜551、1992)などによって記載されるテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である。さらなる詳細については、下記の実施例の節の実施例15を参照のこと。
【0113】
様々な方法を、本発明の発現構築物を哺乳動物細胞に導入するために使用することができる。そのような様々な方法が、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Habor Laboratory、New York(1989、1992));Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、Baltimore、Md(1989));Chang他、Somatic Gene Therapy(CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995));Vega他、Gene Targeting(CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995));Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses(Butterworths、Boston、Mass.(1988));Gilboa他[Biotechniques、4(6):504〜512、1986]において一般的に記載されており、そのような方法には、例えば、安定的または一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および、組換えウイルスベクターを用いた感染が含まれる。また、正・負の選択法については、米国特許第5464764号および同第5487992号を参照のこと。
【0114】
形質転換された細胞が作製されると、形質転換された細胞は、外部のシグナル(例えば、作用物の存在または非存在)に応答して機能的な神経伝達物質を合成するその能力について(培養において)調べられる。好ましくは、神経伝達物質の濃度が、例えば、HPLCまたはGC−MSなどの標準的な化学分析法を使用して(作用物の非存在に対してその存在において)比較分析される。あるいは、培養液が、下記の実施例の節の実施例7などに記載される手順を使用して、免疫アッセイ、ウエスタンブロットおよびリアルタイムPCRなどの生化学分析法を使用して、または、酵素活性のバイオアッセイによって、組換え酵素(例えば、チロシンヒドロキシラーゼ)の発現について比較分析される。
【0115】
神経伝達物質を内因的に産生することができる細胞が本発明との使用のために選択される場合(例えば、ニューロン誘導されたBMSc)においては、そのような細胞は、好ましくは、神経伝達物質の合成に関係している酵素(例えば、内因性チロシンヒドロキシラーゼ)の内因性コード配列を欠失または変異させるように遺伝子操作されることが理解される。そのような遺伝子操作は、例えば、Galli−Taliadoros他(J.Immunol.Methods、181:1〜15、1995)およびHarris&Ford(Pharmacogenomics、1:433〜43、2000)によって記載される技術およびベクターなどの、遺伝子ノックアウトまたは部位特異的変異のための技術およびベクターを用いることによって達成することができる。あるいは、神経伝達物質を内因的に産生することができる細胞を、神経毒(例えば、MPTP)にさらすことによって、または、図18などに例示される自殺ベクターを用いた形質転換によって除くことができる。
【0116】
内因性配列の欠失は、細胞が、神経伝達物質を内因的に合成する能力を同時に失い、かつ、制御可能な調節配列の転写制御下に配置された、酵素をコードする外因性配列のゲノム組込みにより(調節可能な)そのような能力を獲得するように、外因性酵素のコード配列(例えば、上記のコード配列)のノックインと組み合わせることができる。
【0117】
あるいは、そのような細胞はまた、内因性酵素のコード配列が調節可能なプロモーター配列の制御下にもたらされるように遺伝子操作することができる。そのような操作は、酵素の内因性プロモーター配列(例えば、THプロモーター配列)を調節可能なプロモーター配列の遺伝子ノックインにより置換することによって達成することができる。
【0118】
場合により、本発明の細胞は、脳移植時に生じる細胞死に対する抵抗性を獲得するように形質転換される。脳組織に移植された細胞は、低酸素症、低血糖、機械的外傷、フリーラジカル、増殖因子枯渇、および、宿主脳における興奮性アミノ酸の過度な細胞外濃度によって開始されるアポトーシスを受け得ることが見出されている(Brundin他、Cell Transolant.、9:179〜195、2000)。アポトーシス誘導による細胞死の危険性が高い状況のもとでは、本発明の細胞は、アポトーシス阻害ポリペプチド(例えば、ヒトbcl−2遺伝子(AdamsおよびCory、Science、281:1322〜1326、1998)など)をコードするポリヌクレオチドで形質転換することができる。このポリペプチドは、本明細書中上記などに記載される構成的プロモーターの制御下で、または好ましくは、例えば、Levy他(Journal of Molecular Neuroscience、21:121〜132、2003)によって記載されるようなヒトニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロン組織特異的なプロモーターの制御下で発現させることができる。
【0119】
本発明の細胞は、その種類は移植部位に依存する様々な移植法を使用して治療者に投与することができる。
【0120】
「移植」、「細胞置換」または「移植する」の用語または表現は、本明細書中では相互に交換可能に使用され、本発明の細胞を標的組織に導入することを示す。細胞は移植者に由来し得るか、または、同種もしくは異種の提供者に由来し得る。
【0121】
細胞は、中枢神経系内に、または宿主の脳の脳室空洞内に、または宿主の脳の表面の硬膜下に移植することができる。成功する移植のための条件には、(i)移植組織の生存性;(ii)移植部位における移植片の保持;および(iii)移植部位における最小限量の病理学的反応が含まれる。様々な神経組織(例えば、胚性脳組織)を宿主の脳に移植するための様々な方法が、“Neural grafting in the mammalian CNS”(BjorklundおよびStenevi編、1985)に記載されている。これらの手法には、実質内の移植、すなわち、移植時に、脳の実質組織と対比されるように宿主脳内における組織の注射または留置によって達成される、(脳の外側または実質外での移植と比較されるような)宿主脳内での実質内移植が含まれる。
【0122】
実質内移植は、2つの方法を使用して達成することができる:(i)細胞を宿主の脳の実質組織の中に注射すること、または(ii)宿主の脳の実質組織を露出させるために手術的手段によって空洞を調製し、その後、移植片を空洞の中に置くこと。両方の方法では、実質組織留置が移植時に移植片と宿主の脳組織との間にもたらされ、また、両方の方法では、移植片と宿主の脳組織との間での解剖学的な一体化が促進される。このことは、移植片が宿主の脳の構成部分になり、宿主の生涯にわたって生存することが要求されるならば、重要である。
【0123】
あるいは、移植片は、脳室(例えば、大脳脳室)に、または硬膜下、すなわち、宿主の脳の表面に設置することができ、この場合、移植片は、介在する軟膜またはクモ膜および軟膜によって宿主の脳の実質組織から隔てられる。脳室への移植は、ドナー細胞の注射によって達成することができ、または、3%コラーゲンなどの基質において細胞を成長させて、移植片の位置の変化を防止するために、脳室に移植され得る充実組織の栓を形成させることによって達成することができる。硬膜下移植の場合、細胞は、硬膜にすき間を作製した後、脳の表面の周囲に注射することができる。宿主の脳の選択された領域への注射は、ドリルで穴を開け、硬膜に穴を開けて、マイクロシリンジのニードルが挿入されることを可能にすることによって行うことができる。マイクロシリンジは、好ましくは、定位固定フレームに取り付けられ、三次元の定位固定座標が、ニードルを脳または脊髄の所望される位置に設置するために選択される。細胞はまた、脳の被殻、基底核、海馬皮質、線条体、黒質または尾状領域、ならびに脊髄に導入することができる。
【0124】
移植のために、細胞懸濁物がシリンジの中に引き込まれ、麻酔された移植者に投与される。多数回の注射を、この手法を使用して行うことができる。
【0125】
従って、このような細胞懸濁手法は、脳または脊髄における任意の所定部位への細胞の移植を可能にし、比較的非外傷性であり、同じ細胞懸濁物を使用して数カ所の異なる部位または同じ部位における同時での多数回の移植を可能にし、かつ、異なる解剖学的領域からの細胞の混合物を可能にする。多数の移植片は、細胞タイプの混合物、および/または細胞に挿入された導入遺伝子の混合物からなり得る。好ましくは、約10個〜約10個の細胞が移植片あたり導入される。
【0126】
空洞内への移植の場合、これは脊髄移植のためには好ましい場合があるが、組織が、例えば、Stenevi他(Brain Res.、114:1〜20、1976)によって記載されるように、脳を覆っている骨を除き、ゲルフォームなどの材料で出血を止めることによって、移植空洞を形成するために、中枢神経系(CNS)の外側表面に近い領域から除かれる。吸引を、空洞を作製するために使用することができる。その後、移植片が空洞内に設置される。2つ以上の移植片を、細胞または充実組織移植組織の注射を使用して同じ空洞に設置することができる。好ましくは、移植部位は、本発明の細胞によって合成される神経伝達物質のタイプによって決定される。例えば、ドーパミン作動性細胞は、好ましくは、パーキンソン病患者の黒質に移植される。
【0127】
本発明の細胞は、神経変性障害を治療することにおいて有用な治療剤と同時投与することができ、例えば、増殖因子(例えば、神経増殖因子)、ガングリオシド、抗生物質、神経伝達物質、神経ホルモン、毒素、神経突起促進分子、および代謝拮抗剤、ならびにこれらの分子の前駆体(例えば、L−DOPAなど)と同時投与することができる。
【0128】
移植後、治療された個体は、移植された細胞によって放出される神経伝達物質のレベルについて注意深く、かつ継続してモニターされる。神経伝達物質レベルは、好ましくは、神経変性障害を診断するために好適な臨床試験を使用することによって間接的に推定される。例えば、パーキンソン病患者における移植された細胞によるドーパミンの放出は、例えば、Adker,C.H.およびAhlskog,J.E.編、“Parkinson’s Disease and Movement Disorders,Diagnosis and Treatment Guidelines for the Practicing Physician”(Humana Press、New Jersey、2000)などに記載されるパーキンソン病用の臨床診断試験を使用して推定することができる。モニターされた表示値に基づいて、神経伝達物質の放出速度が、移植された細胞における神経伝達物質の合成を調節することができる作用物を個体に投与することによって、またはそのような作用物を個体から取り除くことによって調節される。作用物は、本明細書中上記などに記載される、神経伝達物質の合成に関係する酵素の発現をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションすることができる任意の分子であり得る。
【0129】
作用物は、個体に対して直接投与することができ、または医薬組成物の一部(有効成分)として投与することができる。
【0130】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分または作用物の1つまたは複数と、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤などの他の化学的成分との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する配合物の投与を容易にすることである。
【0131】
本明細書中以降において、表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は、相互に交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された配合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。佐剤はこれらの表現に含まれる。
【0132】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0133】
薬物の配合および投与のための様々な技術を、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出すことができる(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0134】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療効果的な量または用量をインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから最初に推定することができる。好ましくは、用量が、所望される濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて定められる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0135】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、インビトロ、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手法によって明らかにすることができる。これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第1章、1頁を参照のこと)。例えば、パーキンソン病患者は、治療に対する正の応答を示す改善された運動機能について、また、過度なドーパミン発現を示す遁走ジスキネジー症状について症状的にモニターされ得る。
【0136】
作用物は様々な方法で患者に投与することができ、そのような方法には、限定されないが、経口投与、非経口投与、クモ膜下投与、脳室内投与および黒質内(intranigral)適用が含まれる。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第1章、1頁を参照のこと)。
【0137】
投薬量および投薬間隔は、移植された細胞による神経伝達物質の合成を効果的に調節するために十分である有効成分のレベルに合わせて個々に調製され得る。所望される効果を達成するために必要な投薬量は、個体の特性および投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿濃度を測定するために使用することができる。
【0138】
治療される状態の重篤度および応答性に依存して、服薬は単回または複数回の投与が可能であり、治療の経過は、数日から数週間まで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0139】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、治療されている個体、病気の重篤度、投与様式、処方医師の判断などに依存する。投薬量および投与時期は、個体の変化する状態の注意深い継続したモニターリングに応答する。例えば、治療されているパーキンソン病患者には、モニターリング中の表示値に基づいて、所望されるレベルにドーパミン合成を促進または抑制するために十分である量の作用物が投与される。
【0140】
従って、本発明は、効果的であり、安全であり、かつ臨床的に実施可能である神経変性疾患の細胞治療の新規な核酸構築物、構築物システム、細胞および方法を提供する。
【0141】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。また、本明細書中上記に描かれ、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、下記の実施例において実験的裏付けが見出される。
【0142】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0143】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学及び組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている[例えば以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら1989年;Ausubel, R.M.編1994年「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻;Ausubelら著1989年「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア;Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク1988年;Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク1998年;米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号及び5272057号に記載される方法;Cellis, J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻1994年;Coligan, J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻1994年;Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク1994年;MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク1980年;また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている。米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号及び5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」1984年;Hames, B.D.及びHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」1985年;Hames,B.D.及びHiggins S.J.編「Transcription and Translation」1984年;Freshney, R.I.編「Animal Cell Culture」1986年;「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press 1986年;Perbal, B.著「A Practical Guide to Molecular Cloning」1984年及び「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年;Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、1996年及びParfitt et al.(1987).Bone histomorphometry:standardization of nomenclature,symbols,and units.Report of the ASBMR Histomorphometry Nomenclature Committee.J Bone Miner Res 2(6),595−610;なおこれらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである]。その外の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0144】
実施例1
ヒト骨髄間質細胞(hBMSc)の単離および培養
方法:
増殖培養:骨髄吸引物(10ml)を、インフォームドコンセントを得た健康なヒトドナーの腸骨稜から得た。単核細胞を、密度勾配(Histopaque(登録商標)−1077)による遠心分離によって単離し、「増殖培地」[ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Biological Industries);100μg/mlのストレプトマイシン、100U/mlのペニシリン、12.5ユニット/mlのナイスタチン(SPN;Biological Industries);2mMのL−グルタミン;5%のウマ血清;15%のウシ胎児血清(FCS;Biological Industries);0.001%の2−β−メルカプトエタノール(Sigma);1xの非必須アミノ酸;10ng/mlのヒト上皮増殖因子(EGF)]に置床した。細胞を、37℃で2日間、加湿された5%COインキュベーターにおいてインキュベーションし、その後、非接着の細胞を捨てた。残ったプラスチック接着性の細胞をダルベッコのリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS;Biological Industries)で2回洗浄し、新鮮な成長培地を加えた。培地を3日毎または4日毎に取り替えた。細胞は15日以内に80%〜90%の密集度に成長し、円形もしくは紡錘体の形状(図1A)または平坦な形状(図1B〜図1C)となって現れた。
【0145】
フローサイトメトリー:増殖培養条件のもとで15日後、細胞を集め、0.05%トリプシンおよび25mMのEDTAを含むリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に懸濁した。細胞を、0.5x10細胞/mlの濃度での溶液において、細胞表面マーカーのCD45、CD5、CD20、CD11bおよびCD34(これらはリンパ造血系細胞に関連する)に対して特異的な抗体(Beckton Dickinson)で20分間、各抗体の経験的に決定された量(一般には10μl〜20μl)を用いて染色した。抗体で標識された細胞を2容量のPBSで徹底的に洗浄し、フロー緩衝液(PBSにおける1%パラホルムアルデヒド、0.1%アジ化ナトリウムおよび0.5%ウシ血清アルブミン)において固定処理した。洗浄細胞を、488nmの励起波長に調節されたアルゴンイオンレーザーを備えるFACSCalibur(商標)フローサイトメーター(Beckton Dickinson)によって、また、CELLQuest(商標)ソフトウエアプログラム(Beckton Dickinson)を用いて10000個の事象を集めることによって分析した。
【0146】
結果:
培養されたhBMScは、リンパ造血系細胞に関連する表面マーカー(すなわち、CD45、CD5、CD20、CD11bおよびCD34)のいずれも発現しておらず、むしろ、シナプス形成を示すCD90表面マーカー(Thy−1)を発現していた(図2)。
【0147】
実施例2
ヒト骨髄間質細胞(hBMSc)のインビトロ分化
方法:
分化培養:hBMScを、分化誘導に先だって、3ヶ月間まで「増殖培地」(これは本明細書中上記の実施例1に記載される)で培養した。その後、プラスチック接着性の細胞を「前分化培地」[SPN、2mMのグルタミン、N2補充物(インスリン 25μg/ml;プロゲステロン 20nM;プトレッシン 100μM;セレン 30nM;トランスフェリン 100μg/ml)、10%のFCS、10ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF;R&D Systems、MN)、および10ng/mlのヒト上皮増殖因子(EGF;R&D Systems)が補充されたDMEM]に移した。37℃で24時間インキュベーションした後、細胞を「分化用培地」[SPN、2mMのグルタミン、N2補充物(インスリン 25μg/ml;プロゲステロン 20nM;プトレッシン 100μM;セレン 30nM;1x10細胞/mlの密度にされた培地;トランスフェリン 100μg/ml)、200μMのブチル化ヒドロキシアニソール(BHA;Sigma)、1mMのジブチリル環状AMP(dbcAMP;Sigma)、0.5mMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX;Sigma)、10μMのドコサヘキサエン酸(DHA;Sigma)、および10μMのレチノイン酸(RA;Sigma)が補充されたDMEM]に移し、37℃で12時間〜72時間インキュベーションした。
【0148】
増殖評価:hMBScを、96ウエルマイクロタイタープレート(100μl/ウエル)に分注された「前分化培地」および「分化培地」に懸濁し、37℃で16時間および39時間インキュベーションした。その後、培養物に10μCi/mlのH−チミジンを補充し、培養物をさらに4時間インキュベーションした。その後、細胞を集め、0.05%トリプシンおよび25mMのEDTAを含むリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に懸濁し、液体シンチレーションカウンタ−を用いて分析して、細胞におけるH−チミジンの取り込みレベル(これは増殖活性を示す)を測定した。
【0149】
結果:
プラスチック接着性の細胞は、分化誘導後の3時間もの早期に現れ、分化誘導後の72時間において現れ続ける長い枝分かれプロセスを伴ったニューロン様の紡錘体形状を示した(図3A〜図3F)。
【0150】
H−チミジンの取り込みは、分化した細胞では実質的に低下していた(図4)。従って、このことは、増殖がニューロン様の分化したbBMScでは弱められたことを示している。
【0151】
実施例3
分化中のhBMScにおけるニューロン転写物の同定
方法
RT−PCR:hBMScを「増殖培地」または「分化培地」(本明細書中上記の実施例1〜実施例2を参照のこと)において37℃で3時間〜72時間インキュベーションした。総RNAを、Chomczynski&Sacchi(1987)によって記載されるようなグアニジンイソチオシアナート法を使用することによってhBMScから抽出した。また、総RNAは、RNA単離キット(Puregene Gentra、Manneapolis、米国)を使用して新鮮なヒトリンパ球(ドナー由来)から抽出された。これらのRNAサンプルを1%アガロースのホルムアルデヒド変性ゲル電気泳動で分離して、それらの完全性を確認した。cDNAを作製するために、RNAサンプル(0.5μg)を、反応混合物[1.3μMのランダムプライマー、1x緩衝液(これはInvitroGeneによって供給された)、10mMのDTT、20μMのdNTPsおよびRNase阻害剤]に含有されるRT−superscriptII酵素(10ユニット)と混合し、25℃で10分間、42℃で2時間、70℃で15分間、そして95℃で5分インキュベーションした。得られたcDNAサンプルを、配列番号1〜2、配列番号11〜12、配列番号21〜22、配列番号26〜26および配列番号29〜30(下記の表1を参照のこと)によって示されるプライマーを使用するPCRによって分析し、94℃で1分間、55℃〜58℃で1分間および72℃で1分間の35サイクルのもとで増幅した。
表1
分化したhBMScにおけるニューロン転写物およびドーパミン作動性転写物を検出するための異なるエキソンに由来する上流側センスプライマーおよび下流側アンチセンスプライマー


【0152】
ノーザンブロット分析:hBMScから抽出されたRNAサンプルを、3%ホルムアルデヒドおよびMOPSが補充された1%アガロースゲルでサイズ分画して、Duralon−UVTMメンブラン(Stratagene)に転写した。その後、メンブランを、ニューロンマーカーのNEGF2(神経突起成長促進因子2)、NF−200(ニューロフィラメント重鎖)およびNSE(ニューロン特異的エノラーゼ)のための精製された32P標識プローブと一晩ハイブリダイゼーションさせた。ハイブリダイゼーション後のメンブランを数回洗浄して、保存ホスホルスクリーンに感光させ、ホスホルイメージャー(Cyclone、Packard)によってオートラジオグラフ化し、そして、RNAの等しい負荷および転写を確認するために、プローブを除き、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)のための32P標識プローブで再ハイブリダイゼーションした。
【0153】
リアルタイムPCR:ニューロンマーカーNEGF2のリアルタイム定量的PCR分析を、Sybergreen「PCRマスターミックス」および配列番号17〜18のプライマーを使用して「Rotor−Gene DNAサンプル分析システム」バージョン4.6(Corbett Research)で行った。また、GAPDHのリアルタイムPCR分析を、配列番号9〜10のプライマーを使用して、サンプル正規化のための促進された条件を提供するために行った。増幅プロトコルは、95℃で15秒間、55℃で40秒間、72℃で40秒間および77℃で20秒間の40サイクルであった。サンプル正規化のための促進された条件が18S rRNAの増幅によって適用された。増幅プロトコルは、95℃で20秒間および61℃で1分間の80サイクルであった。18S rRNAに対する遺伝子発現の定量が、プロトコルのΔΔCT法によって、また、標準曲線法から計算された。
【0154】
結果:
RT−PCR分析では、分化したhBMScおよび非分化のhBMScの両方におけるニューロンマーカーのネスチン、NSE、NF−M、CD90、RA−RおよびGPC4の転写発現が示される(図5A)。しかしながら、ニューロンマーカーのNF−Hおよびネクジンの転写発現は、分化したhBMScにおいてだけ生じていた(図5A)。
【0155】
リアルタイムPCR分析では、50時間のインキュベーションの後、非分化の細胞と比較したとき、分化した細胞においてNEGF2のmRNAの7倍の増大が示される(図5B)。
【0156】
ノーザンブロット分析では、ニューロンマーカーのNEGF2、NF−200およびNSEの転写発現が分化中のhBMScにおいて著しく増大したことが示される(それぞれ図5B〜図5D)。
【0157】
実施例4
分化したhBMScにおけるニューロンタンパク質の同定
方法:
ウエスタンブロット:hBMScから得られたタンパク質抽出物の50マイクログラムをサンプル緩衝液(62.5mMのTris−HCl(pH6.8)、10%グリセロール、2%SDS、5%の2−β−メルカプトエタノール、0.0025%ブロモフェノールブルー(SIGMA)において変性させた(サンプルで1:5希釈し、5分間煮沸した)。各サンプルを製造者の説明書に従って12.5%SDS−ポリアクリルアミドゲル(Bio−Rad Laboratories)に負荷した。電気泳動後、タンパク質をポリビニリデンジフルリドメンブラン(Bio−Rad Laboratories)に転写し、その後、0.1%のTween−20を含むTris緩衝化生理的食塩水(TSB;10mMのTris(7.5)、150mMのNaCl)における5%脱脂乳(ブロッキング溶液)を用いてブロッキング処理した。メンブランを、本明細書中下記の表2に記載されるようなニューロンマーカー特異的抗体と4℃で一晩プローブした。インキュベーション後、メンブランをブロッキング溶液で2回(それぞれ15分)洗浄し、次いでTBS−Tで1回、15分間洗浄し、その後、本明細書中下記の表3に記載されるような西洋ワサビペルオキシダーゼ共役化二次抗体にさらした。その後、メンブランをブロッキング溶液で2回(それぞれ15分)洗浄し、次いでTBS−Tで1回、15分間洗浄し、その後、増強SuperSignal(登録商標)化学発光検出キット(Pierce)を使用して染色し、医療用X線フィルム(Fuji Photo Film)に感光させた。アクチンが、誘導時の変化を評価および定量するために使用された。特定のタンパク質バンドの密度測定を、VersaDoc(登録商標)画像化システム(Bio−Rad Laboratories)およびQuantity One(登録商標)ソフトウエア(Bio−Rad)を使用することによって行った。
表2
ニューロンマーカー特異的抗体およびドーパミン作動性マーカー特異的抗体

表3
抗マウス二次抗体および抗ウサギ二次抗体


【0158】
結果:
免疫染色により、ニューロンマーカー(NeuN、NF−200、NSE)の存在が、分化誘導後の12時間、24時間、48時間および48時間の分化中のhBMScにおいてそれぞれ明らかにされた(図6A)。抗体標識されたGFAPおよびβ−チューブリンIIIが、分化誘導後の48時間および5日のhBMScにおいてそれぞれ観測された(図6B)。
【0159】
Neu−Nタンパク質、NSEタンパク質およびネスチンタンパク質の(アクチンに対する)発現は、ウエスタンブロット分析によって示されるように、分化誘導の後では実質的に増大していた(図7A〜図7C)。
【0160】
実施例5
分化中のhBMScの長期間の生存
方法:
長期分化培養:hBMScを「前分化培地」(上記の実施例2を参照のこと)において37℃で24時間インキュベーションし、その後、「長期分化培地」[SPN、2mMのグルタミン、N2補充物(インスリン 25μg/ml;プロゲステロン 20nM;プトレッシン 100μM;セレン 30nM;トランスフェリン 100μg/ml)、1mMのdbcAMP、0.5mMのIBMX、10μMのドコサヘキサエン酸(DHA;Sigma)、10ng/mlのbFGF、10ng/mlのヒトグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、および10ng/mlのヒトβ−神経増殖因子(β−NGF)が補充されたDMEM]に移した。hBMScをこの「長期分化培地」において37℃で28日間インキュベーションした。
【0161】
免疫アッセイ:細胞を、ポリ−L−リシン(Sigma)で無菌的に事前に処理されたスライドチャンバー(Nalge Nunc International)に置き、処理した。細胞を、PBS(pH7.3)における4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で30分間、次いで室温で30分間、固定処理した。その後、スライドをPBSで3回(それぞれ5分)洗浄し、0.1%TritonX−100(Sigma)および10%ヤギ血清(Biological Industries)を含有するPBSを用いて4℃で10分間、次いで室温で10分間、透過処理した。その後、スライドをPBSで3回(それぞれ5分)洗浄した。内因性ペルオキシドを、無水メタノール(Bio−Lab、イスラエル)における3%H(Merck)を加えることによって室温で20分間ブロッキング処理した。PBSにおける3回の洗浄(それぞれ5分)の後、スライドチャンバーを、本明細書中上記の実施例4における表2〜表3に記載されるように希釈された抗MAP2、抗β−チューブリンIIIまたは抗ネスチンと4℃で一晩インキュベーションした。翌日、スライドをPBSにおいて3回(それぞれ10分)徹底的に洗浄し、その後、10%ヤギ血清および0.2%Tween−20を含むPBSにおけるCy(商標)3−共役化ヤギ抗ウサギIgGまたはCy(商標)2−共役化ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と室温で30分間インキュベーションした。インキュベーション後、スライドをPBSで3回(それぞれ5分)洗浄し、グリセロールビニルアルコール固定液(Zymed Laboratories)で固定し、カバーガラスで覆い、蛍光顕微鏡で調べた。
【0162】
結果:
hBMScは、典型的なニューロン様細胞の形態を「長期分化培地」での28日間のインキュベーションの後に示した(図8)。
【0163】
抗体標識されたニューロンマーカーのMAP2(微小管結合タンパク質2)、β−チューブリンIIIおよびネスチンが、28日間のインキュベーションの後のhBMScにおいて観測された(それぞれ図9A〜図9C)。
【0164】
実施例6
分化したhBMScにおけるドーパミン作動性mRNAの発現
方法:
RT−PCR:hBMScを「増殖培地」および「分化培地」(本明細書中上記の実施例1〜実施例2を参照のこと)において12時間〜72時間インキュベーションした。総RNAを、Chomczynski&Sacchi(1987)によって記載されるようなグアニジンイソチオシアナート法を使用することによってhBMScから抽出した。ドーパミン作動性マーカーを同定するために設計されたRT−PCR法が、配列番号3〜8、配列番号13〜14および配列番号27〜28のプライマーを使用することを除いて、本質的には本明細書中上記の実施例3に記載されるように行われた。
【0165】
結果:
図10において認められ得るように、数個のドーパミン作動性マーカーの転写物が、分化したhBMScおよび/または非分化のhBMScにおいて発現していた。これらには、Nurr1[核受容体関連1;ドーパミンニューロンへの中脳前駆体の分化において役割を有する転写因子]およびAADC[芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ;L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)のドーパミンへの脱カルボキシル化、L−5−ヒドロキシトリプトファンのセロトニンへの脱カルボキシル化、およびL−トリプトファンのトリプタミンへの脱カルボキシル化を触媒する酵素]が含まれる。GTP[シクロヒドロラーゼ1;THに対するテトラヒドロビオプテリン(BH4)補因子を産生するために必要な酵素]の転写発現が、非分化のhBMScと比較した場合、分化したhBMScにおいて顕著に高くなっており、一方、D2ドーパミン受容体およびDATドーパミン輸送体の転写物が、分化したhBMScにおいてのみ発現していた。
【0166】
実施例7
分化したhBMScにおけるチロシンヒドロキシラーゼの誘導
方法:
リアルタイムPCR:総RNAを、Chomczynski&Sacchi(1987)によって記載されるようなグアニジンイソチオシアナート法を使用してhBMScから抽出した。cDNAを、ランダムプライマーを用いてRT反応を行うことによって、本明細書中上記の実施例3に記載されるように作製した。cDNAの増幅を、ヒトTHおよび18S rRNAの特異的なプライマーを使用するTaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用してABI Prism7700配列検出システム(Applied Biosystems)において行った。サンプル正規化のための促進された条件が18S rRNAの増幅によって適用された。増幅プロトコルは、95℃で20秒間および61℃で1分間の80サイクルであった。18S rRNAに対する遺伝子発現の定量が、プロトコルのΔΔCT法によって、また、標準曲線法から計算された。
【0167】
ウエスタンブロット分析: アッセイを、抗TH抗体および抗アクチン抗体を用いた免疫ブロッティングを行うことを除いて、本明細書中上記の実施例4に記載されるように行った。
【0168】
免疫アッセイ:アッセイを、本明細書中上記の実施例4における表2〜表3に記載されるような抗TH抗体を使用して、本明細書中上記の実施例5に記載されるように行った。
【0169】
結果
チロシンヒドロキシラーゼのmRNAレベルおよびタンパク質レベルがhBMScのニューロン分化のときに実質的に上昇していた(それぞれ図11A〜図11B)。また、抗体標識されたチロシンヒドロキシラーゼの存在が、分化誘導後6時間〜48時間の分化中のhBMScにおいて観測された(図11C)。
【0170】
実施例8
hBMScにおけるドーパミン関連タンパク質の同定
方法:
免疫アッセイ:hBMScを「分化培地」(本明細書中上記の実施例2を参照のこと)で5日間インキュベーションし、その後、集め、上記の実施例5に記載される手順を使用して小胞モノアミン輸送体2(VMAT−2)に対して特異的な抗体で染色した。細胞におけるVMAT−2に結合している抗体を、二次のCy(商標)3−共役化抗体を使用することによって可視化した。染色された細胞を、レーザー共焦点顕微鏡LSM510(ZEISS、ドイツ)で観測した。
【0171】
フローサイトメトリー:「分化培地」(本明細書中上記の実施例2を参照のこと)で48時間インキュベーションした後、細胞を集め、0.05%トリプシンおよび25mMのEDTAを含むリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に懸濁した。細胞懸濁物(0.5x10細胞/ml)を、上記の実施例4における表2〜表3に記載されるようなD2ドーパミン受容体に対して特異的な抗体と30分間インキュベーションした。抗体標識された細胞を2容量のPBSで徹底的に洗浄し、フロー緩衝液(PBSにおける1%パラホルムアルデヒド、0.1%アジ化ナトリウムおよび0.5%ウシ血清アルブミン)において固定処理した。洗浄された細胞をFACSCalibur(商標)フローサイトメーター(Beckton Dickinson)によって分析した。
【0172】
結果:
hBMScの蛍光顕微鏡像により、抗体標識されたVMAT2ドーパミン作動性マーカーが、分化したhBMScに存在し、非分化の細胞には存在しないことが明らかにされた(図12)。
【0173】
同様に、フローサイトメーター分析では、ドーパミノゲニンマーカーD2が、分化したhBMScにおいて発現し、非分化の細胞では発現していなかったことが示される(図13)。
【0174】
実施例9
分化中のhBMScによるドーパミン分泌は神経栄養性因子により誘導される
方法:
細胞培養:hBMScを下記の表4に記載されるように培養した。
表4
hBMScによるドーパミン分泌を誘導するために使用された培養培地

【0175】
HPLC分析:サンプルを、88μlの85%オルトリン酸および4.4mgのメタ重亜硫酸塩を mlのサンプルに加えることによって安定化させた。ドーパミンをアルミニウム吸着(アルミナ、Bioanalytical Systems Inc.)によって抽出した。注入サンプル(50μl)の分離は、逆相C18カラム(125X4.6mm直径、Hichrom,Inc.)をモノクロロ酢酸塩緩衝液移動相において用いたHPLC−電子化学検出(HPLC−ECD)システムでのイソクラティック溶出によって達成された。流速が1.2ml/分で設定され、分析セルの酸化電位が+650mVで設定された。結果は、様々な緩衝液条件および検出器設定のもとでのドーパミン標準物との同時溶出によって確認された。
【0176】
結果:
分化中のhBMScの上清における測定されたドーパミンの量は、「ドーパミン作動性分化用培地」での72時間のインキュベーション期間中、検出できないレベルから約23ng/ml(10細胞)に増大した(図14A)。KClによって細胞分極を誘導すること(56mMのKClを培地に補充し、その後、10分間のインキュベーションを行うこと)により、ドーパミン分泌がさらに高まった(図14B)。分化中のhBMScにより合成されたDOPA(ドーパミン前駆体)の量は、「ドーパミン作動性分化用培地」での72時間のインキュベーション期間中、約10pg/mlから300pg/ml(10細胞)に増大し(図14C)、一方、DOPAC(ドーパミン代謝産物)の量は、「ドーパミン作動性分化用培地」での50時間のインキュベーション期間中、検出できないレベルから約105ng/ml(10細胞)に増大した(図14D)。
【0177】
実施例10
パーキンソン病についてのラットモデルの線条体におけるマウスBMScの移植は回旋行動を改善する
方法:
マウス骨髄間質細胞(マウスBMSc)の作製:マウスBMS細胞を、強化緑色蛍光タンパク質を保有する遺伝子組換え雄マウス(Tg−EGFP;Hadjantonakis他、1998)から得た。マウスを頚部脱臼によって屠殺し、脛骨および大腿骨を取り出し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に入れた。マウス骨髄細胞を、0.5mlの無菌HBSSを詰めた、25Gニードルを有するシリンジ(1ml)を使用して骨髄を流し出すことによって回収した。回収された細胞を、牛乳のような均質な単一細胞懸濁物が達成されるまで穏やかにピペッティングを繰り返すことによって解離させた。単一細胞懸濁物を5mlのHBSSにおいて洗浄し、室温で20分間、1000gのもとで遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、細胞ペレットを10mlの成長培地に再懸濁した。
【0178】
細胞培養:単離されたマウス骨髄細胞を「増殖培地」(本明細書中上記の実施例1を参照のこと)で培養し、37℃で48時間インキュベーションした。その後、非接着性の層を捨て、強固に接着した細胞をPBSで2回洗浄し、新鮮な「増殖培地」で培養した。成長培地を、細胞が70%〜90%の密集度に達するまで3日毎〜4日毎に取り替えた。その後、細胞を集め、トリプシン−EDTA溶液(PBSにおける0.05%のトリプシンおよび25mMのEDTA)に混合し、37℃で5分間インキュベーションし、その後、「前分化培地」(本明細書中上記の実施例2を参照のこと)に移し、37℃で72時間さらにインキュベーションした。前分化させた細胞をPBSにおいて洗浄し、「分化培地」(本明細書中上記の実施例1を参照のこと)において37℃で12時間〜72時間インキュベーションすることによる神経様分化のために誘導した。
【0179】
マウスBMScの移植:神経分化した骨髄間質細胞(mBMSc)を、(Bjorklund他(2002)によって記載されるように)定位固定フレームを使用して雌6−OHDA障害ラットの黒質に注射した。生理的食塩水の注射が対照として使用された。
【0180】
回旋行動の分析:6−OHDA障害ラットを、回旋行動を誘導するためにアンフェタミン(5mg/kg)で治療した。アンフェタミンに対する回旋応答が、コンピューター処理される回旋計(San Diego Instrument)を使用して、移植後の3日目、15日目、30日目および45日目に調べられた。
【0181】
結果:
アンフェタミン誘導された6−OHDAラットへのニューロン誘導mBMScの移植により、ラットの回旋行動は、移植後45日目に2時間あたり約340回転からたった25回転に著しく減少していた(図15A)。治療されたラットの相対的な回旋速度は、移植後45日目に、生理的食塩水で治療されたラットと比較して97.9%減少していた(図15B)。
【0182】
実施例11
ラット脳における移植されたマウスBMScの生存および移動
方法:
ニューロン分化したTg−EGEFマウスのBMScを、本明細書中上記の実施例10に記載されるように、調製し、6−OHDAラットの黒質(両方の脳半球)に移植した。治療ラットおよび非治療ラット(生理的食塩水のみ)を移植後45日目に屠殺した。障害ラットおよび非障害ラットの脳半球から得られた組織サンプルを切片化して、移植されたmBMScの印となっている緑色蛍光タンパク質(GFP)の存在について蛍光顕微鏡で観察した。
【0183】
結果:
mBMScは、黒質移植後45日目に、治療ラットの黒質において生存しており(図15C)、治療ラットの線条体に移動していた(図15D)。また。移植された細胞は皮質および線条体への移動に成功していた(図15C〜図15D)。生理的食塩水が注射されたラットでは、回旋行動は変化がなかった。
【0184】
実施例12
稀突起神経膠細胞前駆体に分化したマウスBMSc
方法:
細胞培養:マウスB5/EGFP(雄)を頚部脱臼によって屠殺し、70%アルコール溶液を用いて調製した。脛骨および大腿骨を取り出し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS;Biological Industries、Bet−Haemek、イスラエル)に入れ、マウス骨髄細胞を、0.5mlの無菌HBSSを詰めた、25Gニードルを有するシリンジ(1ml)を使用して骨髄を流し出すことによって回収した。細胞を、牛乳のような均質な単一細胞懸濁物が達成されるまで数回、穏やかにピペッティングすることによって解離させた。骨髄吸引物を希釈し、5mlのHBSSを加え、室温(RT)で20分間、1000gで遠心分離し、上清を除くことによって洗浄した。細胞ペレットを1mlの成長培地に再懸濁し、10mlに希釈した。細胞を、ポリスチレンのプラスチック組織培養用の75cmフラスコ(Corning Incorporated、Corning、NY)において、「増殖培地」(本明細書中上記の実施例1を参照のこと)に1週間入れた。その後、細胞を、「増殖培地」が補充されたポリリシン被覆のスライドチャンバー(3200細胞/ウエル)に移し、37℃で24時間インキュベーションした。その後、成長培地を、2mMのグルタミン、SPN、下記物質の1つまたは複数が補充されたDMEMから構成される「稀突起神経膠細胞分化培地」で置き換えた:bFGF(10ng/ml)、EGF(10ng/ml〜20ng/ml)、インターロイキン−1b(20ng/ml〜40ng/ml)、dbcAMP(1mM〜2mM)、レチノイン酸(0.5μMまたは1μM)、ニューロトロフィン−3(50ng/mlまたは100ng/ml)、ヒト血小板由来増殖因子(PDGF−AA;5ng/ml〜20ng/ml)、N2補充物、トリヨードチロニエン(T3;40ng/ml)および毛様体神経栄養因子(20ng/ml;CNTF)。
【0185】
免疫アッセイ:培養物を、1日間、2日間または6日間(成長培地を新鮮な培地で2日毎に置き換えながら)、37℃でインキュベーションして、4%PFAにおいて固定処理した。細胞を10%FCS溶液においてブロッキング処理し、その後、5ug/mlの抗A2B5モノクローナル抗体(1:200;R&D systems;1:200)と4℃で一晩インキュベーションした。その後、細胞を、PBSにおいて10分間、2回洗浄し、ヤギ抗マウスCy−3二次抗体(Jackson laboratories;1:500)と室温で20分間インキュベーションした。A2B5(稀突起神経膠細胞前駆体の初期マーカー)について陽性に染色された細胞の出現を、Image ProPlus細胞計数プログラム(Cybernetics)を備える蛍光顕微鏡を使用して測定した。
【0186】
結果:
ニューロン的な細胞形態が、誘導物質のいずれか1つ(IL−1b、dbcAMP、レチノイン酸またはNT−3)を単独で用いて培養された、24時間のインキュベーションの後の細胞において観測された。細胞形態に対する最も顕著な影響が、dbcAMPおよびNT−3によって誘導され(図20A)、同様に、IL−6および甲状腺因子3によって誘導された(データは示されず)。
【0187】
細胞の生存は、誘導物質のいずれか1つを単独で(いずれかの濃度で)用いて6日間インキュベーションした後において正常であった。他方で、誘導物質が組み合わせられたときには、細胞の生存が低下した。
【0188】
稀突起神経膠細胞始原細胞のマーカーA2B5について陽性に染色された細胞の出現は全体で8%であった。抗体標識されたA2B5の最高の出現が、NT−3で治療された細胞において見出された(図20B)。
【0189】
従って、BMScは、多発性硬化症を治療するために利用され得る稀突起神経膠細胞(ミエリン産生細胞)の前駆体に分化させるために誘導されることができる。
【0190】
実施例13
筋萎縮性脊索硬化症(ALS)における細胞置換
方法:
動物:変異したヒトスーパーオキシドジスムターゼ−1遺伝子(SOD1;Gurney他、1994)を発現するTgN(SOD1−G93A)1Gur遺伝子組換えマウスがCSJF1において交配された。この遺伝子組換えマウスは3月齢までは健康であったが、その後、ALSが悪化し、4月齢〜5月齢で完全に麻痺した。
【0191】
移植:ニューロン分化した雄マウスBMScを本明細書中上記の実施例10に記載されるように得た。細胞を雌の変異SOD1遺伝子組換えマウスおよび野生型マウスの脊髄(大槽)内に注射した(10細胞/注射;治療群あたり5匹の動物による反復)。生理的食塩水の注射が対照として使用された。
【0192】
運動機能の評価:治療マウスおよび非治療マウス(生理的食塩水のみ)の回旋行動が、回旋計(San Diego Instrument)を使用することによって毎週評価された。
【0193】
結果:
SOD1を発現するマウスは、7週目以降からの回旋成績の実質的な低下および4ヶ月後〜5ヶ月後での完全な麻痺によって示されるように筋萎縮性脊索硬化症(ALS)に罹患した(図21)。
【0194】
PCR分析では、(雄由来の移植された細胞を示す)Y染色体が、治療された雌マウスの脊髄に存在することが検出された。Y染色体は、治療された雌マウスのどの他の組織においても検出されなかった(図22)。
【0195】
7週齢の治療された野生型の回旋行動は、非治療(生理的食塩水のみ)の野生型マウスとは著しく異なっていなかった(図23)。他方で、治療されたSOD1マウスは、運動機能の改善を示す回旋行動の実質的な低下を示した(図24)。
【0196】
実施例14
Nurr1発現ベクターの構築
核受容体関連1(Nurr−1)は、ドーパミンニューロンへの中脳前駆体の分化に関与する転写因子である。ヒトNurr1の全長cDNA(GeneBankアクセション番号NM_173171)を、5’BamHIプライマーおよび3’XbaIプライマー(配列番号31〜32によって示されるプライマー)を使用して、高忠実Taqポリメラーゼ(TaKaRa、日本)を使用して増幅した。増幅のPCR条件は下記の通りであった:95℃で1分間、56℃で1分間、72℃で1分間の10サイクル;95℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間の10サイクル;95℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間の10サイクル。PCR産物をBamHIおよびXbaIの制限酵素で消化し、得られたフラグメントを、T4DNAリガーゼ(New England BioLabs)を使用して、図17に例示されるような発現ベクターpcDNA−3.1A(Invitrogene)に挿入し、クローン化した。
【0197】
ヒト骨髄間質細胞(hBMSc;60%〜80%のコンフルエンス)を、FuGENE−6トランスフェクション試薬を製造者の推奨法(Roche Applied Science)に従って使用してpcDNANurr1でトランスフェクションした。安定的にトランスフェクションされた細胞を、500μg/mLのネオマイシン(G418硫酸塩、Clontech、Palo Alto、CA)を含有する成長培地で単離した。総RNAを、Chomczynski&Sacchi(1987)によって記載されるように、単離されたネオマイシン抵抗性hBMScから抽出し、Nurr1転写物の存在を、本明細書中上記の実施例3に記載されるようなRT−PCR手法を使用して確認した。
【0198】
実施例15
チロシンヒドロキシラーゼのドキシサイクリン調節による発現のためのhBMScの形質転換
誘導可能なチロシンヒドロキシラーゼ(TH)発現を、下記のように構築され得る応答性ベクターおよび調節ベクターでhBMScを形質転換することによって達成することができる。
【0199】
TH応答性ベクター:1.5kbのヒトチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子(TH、GenBankアクセション番号NM_000360)を、高忠実Taqポリメラーゼ(TaKaRa、日本)、配列番号39〜40により示されるプライマーを使用するPCRによってヒトcDNAから単離することができる。THのcDNAは、図19Aに例示されるようなpBI−EGFP(Clontech Tet−Off(商標)遺伝子発現システムおよびTet−On(商標)遺伝子発現システム)に挿入される。
【0200】
TH調節ベクター:1.3kbのヒトNSE遺伝子(HSENO2、GeneBankアクセション番号X51956)のプロモーターが、配列番号37〜38のプロモーターを使用するPCRによってヒトcDNAから単離される。NSEプロモーターのcDNAは、その後、図19Aに例示されるように、5−LTR−Ψの代わりに、pRevTet−Off−IN(Clontech)において転写活性化因子遺伝子(tTA;Gossen,M.およびBujard,H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547〜551、1992)の上流に挿入される。neo遺伝子を有する陽性のクローンが、抗生物質ネオマイシンを使用して選択される。
【0201】
hBMScは、本明細書中上記で記載される形質転換方法のいずれかを使用して応答性ベクターおよび調節ベクター(Tet−off/Tet−onシステム)の両方で形質転換することができる。細胞に導入されると、テトラサイクリンにより制御されるトランス活性化因子(tTA)と、ネオマイシン抵抗性をコードする遺伝子(Neo)との間に存在する内部リボソーム進入部位(IRES)を含む調節ベクターにより、これら2つのエレメントが同時に発現される。発現したtTAは、応答ベクターに存在するテトラサイクリン応答エレメント(TRE)と結合し、それによりTHの転写を活性化する。しかしながら、ドキシサイクリン(血液脳関門を横断する抗生物質)が存在する場合、TREに対するiTAの結合が阻止され、それにより、THの転写が停止させられる。THのこの薬物制御された発現が図19Bに概略的に図示される。
【0202】
従って、hBMScは、経口投与することができるドキシサイクリンなどの負の調節因子の制御下でTHを発現するように遺伝子改変することができる。
【0203】
THの発現はドーパミンの合成をもたらすので、遺伝子改変されたhBMScは、パーキンソン病などの神経変性疾患の安全かつ効果的な治療を提供するために細胞置換治療において使用することができる。
【0204】
THの発現を誘導する作用物を使用する正の調節もまた、例えば、TH遺伝子を含有する応答性ベクターpDHSPと、調節因子ベクターpVgRXRとを利用するエクジソン誘導可能な哺乳動物発現システム(Invitrogen)を使用して達成され得ることが理解される。誘導因子(例えば、ポナステロンAまたはムリステロンA)が存在する場合、機能的なエクジソン受容体がエクジソン応答性プロモーターの上流側で結合し、THの発現を活性化する。
【0205】
分かりやすくするため別個の実施態様で説明されている本発明のいくつもの特徴は、組み合わせて単一の実施態様にして提供することもできることは分かるであろう。逆に簡略化するため単一の実施態様で説明されている本発明の各種特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0206】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの代替、変形及び変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような代替、変形及び変更をすべて含むものであることを意図する。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願及びGenBankは、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願及びGenBank各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。









【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】非分化のヒト骨髄間質細胞(hBMSc)の光学顕微鏡像を例示する(図1A〜図1C)。
【図2】非分化hBMScのフローサイトメーター分析を例示する。
【図3】ニューロンに分化した成人hBMScの光学顕微鏡像を例示する。
【図4】「分化用培地」で培養されたhBMSc、および「前分化用培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で培養されたhBMScにおけるH−チミジン取り込み(これは細胞増殖を示す)を例示する。
【図5a】ニューロン転写物を同定するために計画されたRT−PCR分析を例示する。
【図5b】NEGF2の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析およびリアルタイムPCR分析を例示する。
【図5c−d】図5Cは、ニューロフィラメント200(NF−200)の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析を例示する。図5Dは、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の32P標識されたPCR産物をプローブとして利用したノーザンブロット分析を例示する。
【図6】「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で12時間〜5日間培養されたhBMScにおけるニューロンマーカーの蛍光顕微鏡像を例示する(図6A〜図6B)。図6Aは、抗体で標識されたニューロン核特異的マーカー(NeuN;12時間後に発現した)、ニューロフィラメント重鎖(NF−200;24時間後に発現した)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE;48時間後に発現した)およびネスチン(48時間後に発現した)を例示する。図6Bは、抗体で標識されたグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP;48時間後に発現した)およびβ−チューブリンIII(5日後に発現した)を例示する。
【図7a−b】ニューロン特異的エノラーゼ(NSE;図7A)、ニューロン核特異的マーカー(NeuN;図7B)およびネスチン(図7C)の上昇した発現を示す、分化したhBMScのウエスタンブロット分析を例示する。
【図7c】ニューロン特異的エノラーゼ(NSE;図7A)、ニューロン核特異的マーカー(NeuN;図7B)およびネスチン(図7C)の上昇した発現を示す、分化したhBMScのウエスタンブロット分析を例示する。
【図8】「長期分化培地」(下記の実施例の実施例5を参照のこと)で28日間インキュベーションした後におけるニューロン様の分化したhBMScの光学顕微鏡像を例示する。
【図9a】分化した細胞におけるニューロンマーカーのβ−チューブリンIIIの抗体標識された発現を例示する。
【図9b】分化した細胞におけるニューロンマーカーのMAP−2の抗体標識された発現を例示する。
【図9c】分化した細胞におけるニューロンマーカーのネスチンの抗体標識された発現を例示する。
【図10】「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で12時間〜72時間培養されたhBMScにおけるドーパミン作動性マーカーを同定するために計画されたRT−PCR分析を例示する。
【図11a−b】図11Aは、分化した細胞における上昇したTH転写を示すリアルタイムPCR分析を例示する(図11A〜図11C)。図11Bは、分化した細胞におけるTHの上昇したレベルを示すウエスタンブロット分析を例示する。
【図11c】分化した細胞における抗体標識されたTH発現を強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
【図12】分化した細胞における抗体標識された小胞モノアミン輸送体2(VMAT−2)を強調する、「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で5日間インキュベーションされたhBMScの共焦点蛍光顕微鏡像を例示する。
【図13】「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で48時間インキュベーションされたhBMScのフローサイトメーター分析を例示する。
【図14a−b】図14Aは、「分化培地」(下記の実施例の実施例2を参照のこと)で0〜96時間インキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミンのレベルを例示する。図14Bは、「分化培地」で0〜96時間インキュベーションされ、その後、56mMのKCl溶液において10分間さらにインキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミンのレベルを例示する。
【図14c−d】図14Cは、「分化培地」で0〜72時間インキュベーションされたhBMScの上清における測定されたドーパミン前駆体DOPAのレベルを例示する。図14Dは、「分化培地」で0〜50時間培養されたhBMScの上清における測定されたドーパミン代謝産物DOPACのレベルを例示する。
【図15a−b】図15Aは、移植後の経時的な回旋速度の変化を例示し、低下しつつある回旋(これは運動機能の改善を示す)を移植後45日目に示している。図15Bは、移植後の経時的な(非治療マウスと比較したときの)相対的回旋における変化を例示し、相対的回旋の97.9%の減少を移植後45日目に示している。
【図15c−d】図15Cは、移植後45日目の治療されたマウスの黒質に存在する移植されたmBMScを強調する蛍光顕微鏡像を例示する。図15Dは、黒質移植後45日目の治療されたマウスの線条体に存在する移植されたmBMScを強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
【図16a−b】図16Aは、トリプトファンヒドロキシラーゼの発現を示すウエスタンブロット分析を例示する。図16Bは、トリプトファンヒドロキシラーゼの転写を示すRT−PCR分析を例示する
【図16c】DOPAC(ドーパミン代謝産物)および5HIAA(セロトニン代謝産物)の合成を示すHPLC分析を例示する。
【図17】pcDNA−3.1A(Invitrogene)に挿入されたNurr−1コード配列を含有する発現ベクターの構築物を例示する。
【図18】ドーパミン作動性細胞の負の選択のために設計された構築物を例示する。
【図19a】このシステムの調節因子構築物および応答構築物を例示する。
【図19b】このシステムの作用様式を記載する概略図を例示する。
【図20】GFP−Tgマウスの分化したBMSc(mBMSc)の蛍光顕微鏡像を例示する(図20A〜図20B)。図20Aは、「分化培地」(実施例1参照)により誘導される形態学的変化の蛍光顕微鏡像を例示する。図20Bは、NT−3誘導のmBMScにおいて発現する抗体標識されたA2B5(稀突起神経膠細胞前駆体のマーカー)を強調する蛍光顕微鏡像を例示する。
【図21】SOD1を発現するマウス(筋萎縮性側索硬化症(ALS)の動物モデル)の回旋成績における経時変化を例示する。
【図22】雄由来のmBMScが大槽内に移植された後の1週間目にサンプリングされた雌マウスの種々の組織のPCR分析を例示する。
【図23】7週齢のときにその脊髄内へのmBMSc移植を受けた野生型マウスのロータロド(rotarod)成績(回旋行動を示す)を例示する。
【図24】7週齢のときにその脊髄内へのmBMSc移植を受けたSOD1マウス(筋萎縮性側索硬化症のモデル)のロータロド成績(回旋行動を示す)を例示する。
【配列表フリーテキスト】
【0208】
配列番号1〜40は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。
【配列表】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であり、それにより神経変性障害を治療することができる細胞を、その必要性のある個体に投与することを含む、神経変性障害を治療する方法。
【請求項2】
前記細胞における前記神経伝達物質の前記合成を調節することができる作用物または条件に前記個体をさらすことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞は、前記神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であるように遺伝子改変される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物で形質転換され、この場合、前記発現構築物は、前記ポリヌクレオチドの発現が前記作用物により制御可能であるように設計される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をダウンレギュレーションすることができる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をアップレギュレーションすることができる請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、第1の調節配列の転写制御下に配置された、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、第2の調節配列の転写制御下に配置された、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む少なくとも1つの発現構築物で形質転換され、この場合、前記トランス活性化因子は、前記作用物の非存在下で、前記第1の調節配列を活性化して、前記第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記作用物はドキシサイクリンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トランス活性化因子はテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の調節配列はテトラサイクリン応答エレメントを含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素は、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼI、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、トリプトファン−5モノオキシゲナーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の調節配列はヒト特異的エノラーゼのプロモーターを含む請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記神経変性障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびハンチングトン病からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記神経変性障害はパーキンソン病である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記神経伝達物質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、γ−アミノ酪酸、セロトニン、アセチルコリンおよびグルタミン酸からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞は骨髄細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記骨髄細胞は骨髄間質細胞である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞はニューロン様細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ニューロン様細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の内因性活性を有しない請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ニューロン様細胞は少なくとも1つのニューロンマーカーを発現する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ニューロンマーカーは、CD90、ニューロン特異的核タンパク質、ニューロフィラメント重鎖、ニューロン特異的エノラーゼ、β−チューブリン3、MAP−2、チロシンヒドロキシラーゼ、微小管結合タンパク質、ネスチンおよびカルビンジンからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞を投与することは、前記細胞を前記個体の脳組織内に移植することによって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞を投与することは、前記細胞を前記個体の脊髄内に移植することによって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記個体をさらすことは、前記作用物を前記個体に経口投与することによって達成される請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記個体をさらすことは、前記作用物を前記個体に注入することによって達成される請求項2に記載の方法。
【請求項27】
(a)神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能である細胞を、その必要性のある個体に投与する工程、および(b)前記細胞における前記神経伝達物質の前記合成を調節することができる作用物または条件に前記個体を定期的にさらし、それにより神経変性障害を治療する工程を含む、神経変性障害を治療する方法。
【請求項28】
前記細胞は、前記神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であるように遺伝子改変される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物で形質転換され、この場合、前記発現構築物は、前記ポリヌクレオチドの発現が前記作用物により制御可能であるように設計される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をダウンレギュレーションすることができる請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をアップレギュレーションすることができる請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記神経変性障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびハンチングトン病からなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記神経変性障害はパーキンソン病である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経伝達物質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、γ−アミノ酪酸、セロトニン、アセチルコリンおよびグルタミン酸からなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素は、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼI、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、トリプトファン−5モノオキシゲナーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞は骨髄細胞である請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記骨髄細胞は骨髄間質細胞である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞はニューロン様細胞である請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記ニューロン様細胞は少なくとも1つのニューロンマーカーを発現する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ニューロンマーカーは、CD90、ニューロン特異的核タンパク質、ニューロフィラメント重鎖、ニューロン特異的エノラーゼ、β−チューブリン3、MAP−2、チロシンヒドロキシラーゼ、微小管結合タンパク質、ネスチンおよびカルビンジンからなる群から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞は、前記作用物が存在しないとき、活性化因子分子が応答エレメントと結合し、それにより前記チロシンヒドロキシラーゼの発現をアップレギュレーションするように前記作用物の調節可能な制御下でチロシンヒドロキシラーゼを発現させるために遺伝子改変される請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記作用物はドキシサイクリンである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性化因子分子はテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記応答エレメントはテトラサイクリン応答エレメントである請求項42に記載の方法。
【請求項46】
神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、哺乳動物細胞における前記酵素の発現を調節することができる調節配列の制御下に配置されて含む核酸構築物。
【請求項47】
前記調節配列はテトラサイクリン応答エレメントを含む請求項46に記載の核酸構築物。
【請求項48】
前記酵素は、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼI、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、トリプトファン−5モノオキシゲナーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される請求項46に記載の核酸構築物。
【請求項49】
神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列を第1の調節配列の転写制御下に配置されて含む第1の発現構築物と、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列を第2の調節配列の転写制御下に配置されて含む第2の発現構築物とを含む構築物システムであって、この場合、前記トランス活性化因子は、前記第1の調節配列を活性化して、前記第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる構築物システム。
【請求項50】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項49に記載の構築物システム。
【請求項51】
前記酵素はチロシンヒドロキシラーゼである請求項49に記載の構築物システム。
【請求項52】
前記第1の調節配列はテトラサイクリン応答エレメントを含む請求項49に記載の構築物システム。
【請求項53】
前記トランス活性化因子はテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である請求項49に記載の構築物システム。
【請求項54】
請求項46に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項55】
前記細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の内因性活性を有しないニューロン様細胞である請求項54に記載の細胞。
【請求項56】
アポトーシス阻害ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む請求項54に記載の細胞。
【請求項57】
請求項49に記載の構築物システムを含む細胞。
【請求項58】
前記細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の内因性活性を有しないニューロン様細胞である請求項56に記載の細胞。
【請求項59】
アポトーシス阻害ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む請求項57に記載の細胞。
【請求項60】
神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する方法であって、(a)骨髄細胞を単離する工程、(b)前記骨髄細胞を維持および/または拡大することができる増殖用培地において前記骨髄細胞をインキュベーションする工程、(c)工程(b)から得られる細胞から骨髄間質細胞を選択する工程、および(d)少なくとも1つの多不飽和脂肪酸および少なくとも1つの分化用作用物を含む分化用培地において前記骨髄間質細胞をインキュベーションし、それにより、神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する工程を含む方法。
【請求項61】
前記増殖培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、FCS、2−β−メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびEGFを含む請求項60に記載の方法。
【請求項62】
工程(d)の前に、工程(c)から得られた細胞を前分化用培地においてインキュベーションし、それにより前記細胞をニューロン様細胞に分化させやすくすることをさらに含む請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前分化用培地はbFGFを含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記前分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびFCSをさらに含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの多不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つの分化用作用物は、BHA、dbcAMPおよびIBMXからなる群から選択される請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびレチノイン酸をさらに含む請求項60に記載の方法。
【請求項68】
工程(a)は吸引によって達成される請求項60に記載の方法。
【請求項69】
工程(c)は、表面接着細胞を集めることによって達成される請求項60に記載の方法。
【請求項70】
神経伝達物質を合成することができる骨髄由来間質細胞を含む細胞集団。
【請求項71】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項70に記載の細胞集団。
【請求項72】
前記神経伝達物質はセロトニンである請求項70に記載の細胞集団。
【請求項73】
少なくとも2つのタイプの神経伝達物質を合成することができる骨髄由来ニューロン様細胞を含む混合細胞集団。
【請求項74】
前記少なくとも2つのタイプの神経伝達物質は、ドーパミンを含む請求項73に記載の混合細胞集団。
【請求項75】
前記少なくとも2つのタイプの神経伝達物質は、セロトニンを含む請求項73に記載の混合細胞集団。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であり、それにより神経変性障害を治療することができる細胞を、その必要性のある個体に投与することを含む、神経変性障害を治療する方法。
【請求項2】
前記細胞における前記神経伝達物質の前記合成を調節することができる作用物または条件に前記個体をさらすことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能である細胞を、その必要性のある個体に投与する工程、および(b)前記細胞における前記神経伝達物質の前記合成を調節することができる作用物または条件に前記個体を定期的にさらし、それにより神経変性障害を治療する工程を含む、神経変性障害を治療する方法。
【請求項4】
前記細胞は、前記神経伝達物質の外因的に調節可能な合成が可能であるように遺伝子改変される請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物で形質転換され、この場合、前記発現構築物は、前記ポリヌクレオチドの発現が前記作用物により制御可能であるように設計される請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をダウンレギュレーションすることができる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記作用物は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の発現をアップレギュレーションすることができる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は、第1の調節配列の転写制御下に配置された、神経伝達物質の合成に関係する酵素をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、第2の調節配列の転写制御下に配置された、トランス活性化因子をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む少なくとも1つの発現構築物で形質転換され、この場合、前記トランス活性化因子は、前記作用物の非存在下で、前記第1の調節配列を活性化して、前記第1のポリヌクレオチド配列の転写を行わせることができる請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物はドキシサイクリンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トランス活性化因子はテトラサイクリン制御のトランス活性化因子である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の調節配列はテトラサイクリン応答エレメントを含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素は、チロシンヒドロキシラーゼ、DOPAデカルボキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼI、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、トリプトファン−5モノオキシゲナーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の調節配列はヒト特異的エノラーゼのプロモーターを含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記神経変性障害は、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびハンチングトン病からなる群から選択される請求項1又は3に記載の方法。
【請求項15】
前記神経変性障害はパーキンソン病である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記神経伝達物質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、γ−アミノ酪酸、セロトニン、アセチルコリンおよびグルタミン酸からなる群から選択される請求項1又は3に記載の方法。
【請求項17】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞は骨髄細胞である請求項1又は3に記載の方法。
【請求項19】
前記骨髄細胞は骨髄間質細胞である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞はニューロン様細胞である請求項1又は3に記載の方法。
【請求項21】
前記ニューロン様細胞は、前記神経伝達物質の前記合成に関係する前記酵素の内因性活性を有しない請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ニューロン様細胞は少なくとも1つのニューロンマーカーを発現する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ニューロンマーカーは、CD90、ニューロン特異的核タンパク質、ニューロフィラメント重鎖、ニューロン特異的エノラーゼ、β−チューブリン3、MAP−2、チロシンヒドロキシラーゼ、微小管結合タンパク質、ネスチンおよびカルビンジンからなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞を投与することは、前記細胞を前記個体の脳組織内に移植することによって達成される請求項1又は3に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞を投与することは、前記細胞を前記個体の脊髄内に移植することによって達成される請求項1又は3に記載の方法。
【請求項26】
前記個体をさらすことは、前記作用物を前記個体に経口投与することによって達成される請求項2又は3に記載の方法。
【請求項27】
前記個体をさらすことは、前記作用物を前記個体に注入することによって達成される請求項2又は3に記載の方法。
【請求項28】
神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する方法であって、(a)骨髄細胞を単離する工程、(b)前記骨髄細胞を維持および/または拡大することができる増殖用培地において前記骨髄細胞をインキュベーションする工程、(c)工程(b)から得られる細胞から骨髄間質細胞を選択する工程、および(d)少なくとも1つの多不飽和脂肪酸および少なくとも1つの分化用作用物を含む分化用培地において前記骨髄間質細胞をインキュベーションし、それにより、神経変性障害を治療する際に使用される細胞を作製する工程を含む方法。
【請求項29】
前記増殖培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、FCS、2−β−メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびEGFを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程(d)の前に、工程(c)から得られた細胞を前分化用培地においてインキュベーションし、それにより前記細胞をニューロン様細胞に分化させやすくすることをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前分化用培地はbFGFを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記前分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびFCSをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの多不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの分化用作用物は、BHA、dbcAMPおよびIBMXからなる群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記分化用培地は、DMEM、SPN、L−グルタミン、N2補充物およびレチノイン酸をさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)は吸引によって達成される請求項28に記載の方法。
【請求項37】
工程(c)は、表面接着細胞を集めることによって達成される請求項28に記載の方法。
【請求項38】
神経伝達物質を合成することができる骨髄由来間質細胞を含む細胞集団。
【請求項39】
前記神経伝達物質はドーパミンである請求項38に記載の細胞集団。
【請求項40】
前記神経伝達物質はセロトニンである請求項38に記載の細胞集団。
【請求項41】
少なくとも2つのタイプの神経伝達物質を合成することができる骨髄由来ニューロン様細胞を含む混合細胞集団。
【請求項42】
前記少なくとも2つのタイプの神経伝達物質は、ドーパミンを含む請求項41に記載の混合細胞集団。
【請求項43】
前記少なくとも2つのタイプの神経伝達物質は、セロトニンを含む請求項41に記載の混合細胞集団。

【図5c−d】
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【図14a−b】
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【図14c−d】
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【図15a−b】
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【図16c】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a−b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10】
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【図11a−b】
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【図11c】
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【図12】
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【図13】
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【図15c−d】
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【図16a−b】
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【図20】
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【図22】
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【公表番号】特表2006−506086(P2006−506086A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553057(P2004−553057)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000972
【国際公開番号】WO2004/046348
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503255958)ラモト アット テル アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】