説明

神経弛緩薬用の、吐き出すことができない経口用迅速崩壊性フィルム

フィルム型の単層の、界面活性剤、発泡性添加剤及び風味マスカーを含まず、且つ1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤、並びに神経弛緩薬の群からの1つ又は複数の有効成分を含む、空洞を含まない製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経弛緩薬を含む、吐き出すことができない経口用迅速崩壊性単層フィルムに、その製造に、及びその使用に関する。好ましくは、オランザピンが神経弛緩薬として用いられる。
【背景技術】
【0002】
口に付着して、且つ迅速に崩壊する薬学的な投薬形態(例えば融解可能な錠剤等)は、様々な観点で好適である。それらは、他の経口薬剤形態(例えば、フィルムでコーティングされた錠剤)で治療するのが困難である統合失調症のような精神障害を患う患者への薬物の経口投与を促進する。投薬形態の粘膜付着性及び迅速な崩壊のため、患者は、例えば口腔中で薬剤形態を保持することができず、その後は再び薬剤形態を吐き出すことはできない。しかしながら、融解可能な錠剤の不利点は、入念な凍結乾燥プロセスを要するそれらのコストの高い生産である。例えば、ドイツ特許第27 44 493号、欧州特許第0 793 495号及び国際公開第01/39 836号を参照されたい。さらに、有効成分(例えばオランザピン等)によっては、フィルムコーティングされた錠剤においてほんの限られた化学的安定性しか有さないものもある。
【0003】
同様に、粘膜付着性であり、且つ口の中で迅速に崩壊する経口薬剤形態はまた、平坦なフィルムを考慮に入れている。これらは、薄い層厚、したがって大きな表面積により崩壊され、これが迅速な崩壊を起こす。
【0004】
例えば、欧州特許第936 905号は、睡眠薬、抗癲癇薬又は向精神神経薬(psychoneurotropics)を含む粘膜付着性フィルムについて記載しており、当該フィルムは、界面活性剤を含有する。しかしながら、界面活性剤を使用することの不利点は、皮膚又は粘膜に対して刺激を引き起こすそれらの潜在性である。さらに、通例の界面活性剤の多くは、非常に苦い風味を有する。同様に、有効成分が胃腸管中で吸収される場合の相互作用の可能性も不利点である。
【0005】
国際公開第03/101 420号は、口腔粘膜へ付着する傾向が低減したフィルムについて記載しており、国際公開第03/070 227号は、粘膜付着性フィルムについて記載しており、各場合で、例えば向精神薬を含み、発泡性添加剤として二酸化炭素形成剤を含有するフィルムが記載されている。発泡性添加剤の不利点は、その酸性風味及び口腔中での泡の形成である。さらに、配合物は、非常に水分に敏感である。発泡性構成成分と配合物の補助剤との間の化学的相互作用の可能性もまた不都合である。
【0006】
国際公開第02/02085号は、口腔粘膜へ付着する傾向が低減し、且つ口腔粘膜へのフィルムの付着を低減するための空洞を有するフィルムを開示している、
【0007】
国際公開第01/70194号及び米国特許第20040247649号は、水溶性ポリマー、風味マスカー及び有効成分、例えば向精神薬を含む粘膜付着性フィルムについて記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、神経弛緩薬、特にオランザピンを含む、吐き出すことができないフィルムを提供することである。フィルムは、神経弛緩薬の経口投与に適切であるべきである。液体又は唾液と接触した後、フィルムは口へ付着すべきであり、口でフィルムは迅速に崩壊すべきであり、例えば、唾液の作用下で溶解又は分解されるべきである。有効成分含有フィルムは、化学的に及び物理的にともに安定であるべきである。フィルムは、上述の界面活性剤、発泡性添加剤又は風味マスカーを含むべきではない。フィルムは、生産するのに経済的であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当該問題を解決するために、本発明は、1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤、並びに神経弛緩薬の群からの1つ又は複数の有効成分を含むフィルム型の製剤を提供する。フィルム型製剤は好ましくは単層であり、好ましくは空洞、界面活性剤、発泡性添加剤及び風味マスカーを実質的に含まない。好ましくは、フィルム型製剤は、フィルム、特に固形フィルムである。好ましくは、フィルムは単層であり、1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤及び1つ又は複数の有効成分を含む。好ましくは、フィルムは、空洞、界面活性剤、発泡性添加剤及び風味マスカーを実質的に含まない。好ましくは、フィルムは、唾液中で迅速に崩壊する。
【0010】
本発明による製剤は、フィルムの機械的安定性と有効成分の迅速な放出との非常に好適な組合せを提供することが見出された。
【0011】
例えば、本発明の実施態様は、1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤及び1つ又は複数の有効成分を含む単層のフィルム型製剤に関する。好ましくは、フィルム型製剤は、空洞、界面活性剤、発泡性添加剤及び風味マスカーを実質的に含まない。
【0012】
「単層のフィルム型製剤」という表現は好ましくは、単層のフィルムの形態である固形製剤を意味し、「単層」は、フィルムが単一層の形態であり、層は好ましくは均質であることを意味する。フィルムは、可撓性であっても又は非可撓性であってもよいが、好ましくは可撓性である。
【0013】
好ましくは、単層のフィルム型製剤は、空洞を実質的に含まず、「空洞」は、流体(気体及び/又は液体)で満たされる領域であると理解される。かかる空洞は通常、100μm未満の直径を有する。好ましくは、フィルム型製剤は、気泡、及び/又は流体(気体及び/又は液体)を含有する空洞を実質的に含まない。
【0014】
好ましくは、単層のフィルム型製剤は、界面活性剤を実質的に含まず、「界面活性剤を実質的に含まない」は、フィルム型製剤が、製剤全体に基づいて1重量%未満(乾燥製剤に基づいて)、好ましくは0.1重量%未満、特に0.01重量%未満の界面活性剤を含有することを意味する。特に、界面活性剤は、フィルム型製剤の生産中に構成成分として添加されない。界面活性剤は、本発明の状況では任意の通例の界面活性剤、湿潤剤又は界面活性物質である。
【0015】
好ましくは、単層のフィルム型製剤は、発泡性添加剤を実質的に含まず、「発泡性添加剤を実質的に含まない」は、フィルム型製剤が、製剤全体に基づいて1重量%未満(乾燥製剤に基づいて)、好ましくは0.1重量%未満、特に0.01重量%未満の発泡性添加剤を含有することを意味する。特に、発泡性添加剤は、フィルム型製剤の生産中に構成成分として添加されない。発泡性添加剤は、本発明の状況では、水の添加時、保存時、高温時等で、気体化合物を放出する化合物である。好ましくは、発泡性添加剤は、例えば唾液の作用下で、口腔中で気体化合物を放出する化合物(例えば、二酸化炭素形成剤等)である。したがって、フィルム型製剤は、例えば二酸化炭素形成剤等の発泡性添加剤を全く、又はほとんど含有しない。
【0016】
好ましくは、単層のフィルム型製剤は、風味マスカーを実質的に含まず、「風味マスカーを実質的に含まない」は、フィルム型製剤が、製剤全体に基づいて1重量%未満(乾燥製剤に基づいて)、好ましくは0.1重量%未満、特に0.01重量%未満の風味マスカーを含有することを意味する。特に、風味マスカーは、フィルム型製剤の生産中に構成成分として添加されない。風味マスカーは、本発明の状況では、不快な風味を有する物質と相互作用して、後者の不快な風味が「マスクされる」という結果を伴う。
【0017】
「風味マスカー」は、特に例えば有効成分の不快な風味を覆う働きをする物質として理解されるべきである。フィルム又はフィルム型製剤は、特に、有効成分とイオン交換樹脂との混合物、シクロデキストリンによる有効成分の包接化合物、又は被覆剤(例えば、Eudragit)による有効成分のコーティングを含まない。好ましくは、有効成分は、遊離形態で製剤中に含有され、例えば封入又は密封されない。
【0018】
さらなる実施態様は、フィルム型の単層の、好ましくは界面活性剤、発泡性添加剤及び風味マスカーを含まず、且つ1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤、並びに神経弛緩薬の群からの1つ又は複数の有効成分を含む、空洞を含まない製剤に関する。
【0019】
オランザピンは、本発明による製剤に関して神経弛緩薬として好ましい。
【0020】
本発明による製剤は風味マスカーを含まないが、任意に甘味剤又は香味剤を含むことができる。
【0021】
本発明による製剤では、フィルム中の有効成分含有量は、各場合、乾燥製剤に基づいて0.1〜60重量%、特に最大50重量%、好ましくは20〜30重量%、さらに特には約25重量%であり得る。
【0022】
本発明による製剤に関して、下記群:
−糖、糖アルコール及びそれらの誘導体、特にサッカロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ラクトース及びガラクトース、
−低分子量有機酸、特にクエン酸、コハク酸、リンゴ酸及びアジピン酸、
−ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジオレエート、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、パラフィン油及びヒマシ油、
−エチルセルロース、
−酢酸セルロース、
−フタル酸セルロース、
−及びかかるフィルム形成剤の混合物
からの1つ又は複数のフィルム形成剤を提供することができる。
【0023】
本発明による製剤に関して、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジオレエート、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、パラフィン油、エチルセルロース、酢酸セルロース及びフタル酸セルロースにより形成される群からの1つ又は複数のフィルム形成剤が好ましい。
【0024】
少なくとも1つのフィルム形成剤は、水中に不溶性であることが特に好ましい。特に好ましい水不溶性フィルム形成剤は、水不溶性エチルセルロース、水不溶性酢酸セルロース、及び水不溶性フタル酸セルロース、並びに同様にパラフィン油である。
【0025】
本発明によれば、「水不溶性」は好ましくは、下記の通りに定義される:特にドイツ薬局方(1987年1月7日の第9版)に従って化合物1部(フィルム形成剤1部又はゲル形成剤1部)が、水30〜100部中に、特に水100〜1000部中に、より特には水1000〜10,000部中に、非常に特には10,000部を上回る水中に可溶性であることである。「水溶性」は好ましくは、下記の通りに定義される:特にドイツ薬局方(1987年1月7日の第9版)に従って化合物1部(フィルム形成剤1部又はゲル形成剤1部)が、水10〜30部中に、特に水1〜10部中に、より特には1部未満の水中に可溶性であることである。
【0026】
本発明による製剤では、フィルムは、各場合、乾燥製剤に基づいて、5〜70重量%、好ましくは5〜30重量%の量でフィルム形成剤を含有することができる。
【0027】
フィルム形成剤は、本発明の状況では特に、機械特性の観点で或る特定の度合いの可撓性(例えば、弾力性、曲げ弾性率、弾性率等のような)をフィルム製剤に付与する化合物である。
【0028】
本発明による製剤に関して、下記群:
−高分子炭水化物、特にセルロース及びその誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、カラゲナン、デキストラン、トラガカント及び植物由来のガム、
−水中で可溶性又は膨潤性である合成ポリマー、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びポリアクリルアミド、
−ポリペプチド、特にゼラチン、アルブミン及びコラーゲン、並びに
−かかるゲル形成剤の混合物
からの少なくとも1つのゲル形成剤を提供することができる。
【0029】
本発明による製剤では、フィルムは、各場合、乾燥製剤に基づいて、10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%の量でゲル形成剤を含有することができる。
【0030】
ゲル形成剤は、本発明の状況では特に、60,000ダルトン未満、好ましくは10,000〜40,000ダルトンの分子量を有する高分子化合物である。かかる分子量の高分子化合物は好適には、製剤の迅速な崩壊を促進する。
【0031】
本発明による製剤に関して、少なくとも2つのゲル形成剤の組合せが好ましく、さらなる実施態様によれば、ゲル形成剤の一方は、水中に不溶性である。
【0032】
好ましい実施態様では、少なくとも1つのセルロース誘導体及び合成ポリマーの組合せは、本発明による製剤に関して好ましく、少なくとも1つの水不溶性セルロース誘導体、任意に1つ又は複数のさらなるセルロース誘導体及び水溶性合成ポリマーの組合わせ、より特には、水不溶性エチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにポリビニルピロリドンの組合せがさらに好ましい。例えば、特に好ましい実施態様では、本発明による製剤に関して、少なくとも2つのセルロース誘導体(それらのうち少なくとも1つが水中に不溶性である)の組合せ、特にヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース並びに水不溶性エチルセルロースの組合せが好ましい。
【0033】
本発明による製剤は、少なくとも1つの甘味剤、香味剤、防腐剤、着色剤及び/又は充填剤を含むことができ、各場合、乾燥製剤に基づいて、0.1〜30重量%、より特には1〜15重量%の含有量が好ましい。
【0034】
本発明による製剤は、例えば1〜500μm、好ましくは1〜300μmのフィルム厚を有し得る。
【0035】
本発明による製剤は、円形、丸形、楕円形、長円形、三角形、四角形又は多角形のフィルムの形態であり得る。
【0036】
さらに、本発明によるフィルム又は本発明による製剤に、平滑な表面を、或いは隆起及び/又は陥没を有する表面を設けることができる。好ましくは、表面は、隆起及び陥没の規則正しいパターン(例えば、波動パターン又はグリッドパターン等)を有し得る。
【0037】
さらに、本発明によるフィルム又は本発明による製剤は、キャリアフォイル上に提供され得る。
【0038】
さらに、本発明によるフィルム又は本発明による製剤に、ポリエチレン紙(PE紙)、ポリプロピレンフォイル(PPフォイル)又はポリエチレンテレフタレートフォイル(PETフォイル)で作製されるキャリアフォイルを提供することができる。好ましくは、本発明によるフィルム又は本発明による製剤は、ポリエチレン紙(PE紙)、ポリプロピレンフォイル(PPフォイル)又はポリエチレンテレフタレートフォイル(PETフォイル)で作製されるキャリアフォイル上に提供される。
【0039】
最後に、本発明によるフィルム又は本発明による製剤は、経口投与用に提供され得る。
【0040】
さらに、本発明の実施態様は、本発明による1つ若しくは複数のフィルム又は製剤を含むサシェに関する。
【0041】
最後に、本発明は、本発明による1つ若しくは複数のフィルム又は製剤を含む複数回用量容器に関する。
【0042】
したがって、驚くべきことに、1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤及び1つ又は複数の神経弛緩薬(例えば、オランザピンのような)を含む単層フィルム又は単層製剤が、例えばオランザピンを含有するフィルムコーティングされた錠剤よりも著しく高い化学的安定性を示すことが分かった。フィルムは口腔へ付着して、数秒以内に崩壊する。例えば、フィルムは、唾液により溶解又は分解され、例えば水溶性フィルムは溶解される。したがって、フィルムはもはや吐き出すことができない。フィルムが崩壊した後、有効成分は大部分が飲み込まれ、胃腸管中に吸収される。有効成分は、或る程度経粘膜的に吸収され得るが、これはごく僅かである。フィルムは好ましくは、空洞、界面活性剤、発泡性添加剤又は風味マスカーを実質的に含まない。フィルムの生産は、いわゆる融解可能な錠剤(その生産は、入念な凍結乾燥プロセスを要する)よりも実質的に経済的である。
【0043】
好ましくは、本発明による製剤は、少なくとも2つのフィルム形成剤を含む。好ましくは、本発明による製剤は、少なくとも2つのゲル形成剤を含む。少なくとも2つのゲル形成剤の組合せは特に好ましく、ゲル形成剤の一方は好ましくは、水中に不溶性である。
【0044】
好ましい実施態様では、本発明による製剤は、1つ又は複数のセルロース誘導体及び合成ポリマー、特に水不溶性セルロース誘導体及び水溶性合成ポリマーを含む。好ましくは、製剤は、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジオレエート、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、キシリトール及びパラフィン油から成る群から選択される1つ又は複数のさらなるフィルム形成剤をさらに含む。好ましくは、製剤は、1つ又は複数のさらなるゲル形成剤、特に1つ又は複数のさらなるセルロース誘導体、より特には60,000ダルトン未満の分子量を有する1つ又は複数のセルロース誘導体、非常に特にはヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに含む。
【0045】
少なくとも1つの水不溶性化合物及び少なくとも1つの水溶性化合物のかかる組合せは、フィルム型製剤が好適に、有効成分を迅速に放出し、同時に十分高い安定性を示すという結果を有する。
【0046】
別の好ましい実施態様では、本発明による製剤は、複数のセルロース誘導体(それらのうち1つが水中に不溶性である)、特にヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース並びに水不溶性エチルセルロース、並びにソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジオレエート、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、キシリトール及びパラフィン油から成る群から選択される1つ又は複数の化合物を含む。
【0047】
フィルム形成剤:ゲル形成剤は、0.7:10〜70:10、好ましくは3:10〜50:10、特に4:10〜30:10、具体的には5:10〜15:10の比で存在し得る。フィルム形成剤:ゲル形成剤の比は、非常に特に5:10〜8:10である。
【0048】
フィルムは、有効成分として、神経弛緩薬、例えばオランザピン、ベンペリドール、ハロペリドール、クロザピン、フルペンチキソール、フルフェナジン、ドロペリドール、メルペロン、フルペンチキソールデカノエート、フルスピリレン、ブロムペリドール、ピモジド、トリフルプロメタジン、リスペリドン、セルチンドール、トリフルペリドール及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩の群の1つ又は複数の代表を含み得る。オランザピンが有効成分として使用されるのが好ましい。
【0049】
フィルム中の有効成分含有量は、各場合、乾燥製剤に基づいて、0.1〜60重量%、特に最大50重量%、好ましくは25重量%であり得る。
【0050】
さらに、フィルムは、甘味剤、香味剤、防腐剤(例えば、ソルビン酸又はその塩)、着色剤及び/又は充填剤を含み得る。
【0051】
適切な甘味剤は、スクラロース、アスパルテーム、チクロ、サッカリン及び/又はアセスルファ、或いはそれらの物質の組合せである。
【0052】
香味剤として、天然香味剤又は人工香味剤、例えば、レモン、オレンジ、イチゴ、バニラ又はペパーミント香味剤、酢酸シンナミル、シトラール、シトロネラ、ギ酸オイゲニル、メントール及び/又はメチルアニソールが使用され得る。
【0053】
着色剤として、薬学的に通例の香味剤及び顔料、特にTiO2、Fexx、β−カロテン、アゾルビン、インジゴチン、リボフラビン等が使用され得る。
【0054】
充填剤として、炭酸塩、リン酸塩のような塩、例えばSiO2(特に、アエロジル(Aerosil)の形態で)等のような酸化物及び/又はセルロース及びその誘導体、並びに同様に例えばラクトース又はデンプン誘導体(例えば、シクロデキストリン)のような難溶性の糖及び糖誘導体が使用され得るが、但し、それらは、製品中では実質的に非溶解形態で存在し、したがって充填剤の機械特性を満たす。好ましくは、SiO2が充填剤として使用される。
【0055】
フィルムの厚さは、1〜500μm、好ましくは1〜300μmであり得る。口腔中での不快感を回避するためには、フィルム厚は、あまり厚くてはいけない。
【0056】
フィルムは、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形又は多角形の形状を有することができるが、フィルムはまた、任意の丸形の形状を有することもできる。
【0057】
フィルムの表面は、平滑であり得るか、或いは隆起又は陥没が設けられ得る。
【0058】
口腔中のフィルムの崩壊時間は、200秒未満、好ましくは10〜60秒、特に10〜30秒である。
【0059】
フィルムの調製に関して、有効成分は、溶媒中に懸濁又は溶解される。アルコール又はアルコール/水混合物が溶媒として使用され得る。
【0060】
フィルム形成剤、ゲル形成剤及び任意に甘味剤、香味剤、着色剤及び/又は充填剤の添加後、混合物が均質化される。混合物は、適切なコーティング方法を用いてキャリア材料へ塗布される。キャリア材料として、例えばPE紙又はPP若しくはPETフォイルが使用され得る。コーティングされたキャリア材料は、30〜120℃で、好ましくは30〜70℃で乾燥される。続いて、コーティングされたキャリア材料は、さらに加工処理して、規定面積の別個のフィルムを形成する。これは、打抜き、切取り又は型打ちにより達成され得る。フィルムは、キャリアフォイルとともに又はキャリアフォイルを伴わずにサシェへ個々にパッキングされる。フィルムはまた、複数回用量容器へパッキングされ得る。投与前に、適用可能である場合、有効成分含有フィルムはキャリア材料から取り外される。
【0061】
フィルム型製剤は、中枢神経系における障害の治療、統合失調症の治療、統合失調症様疾患の治療、急性躁病の治療、軽度の不安神経症の治療等において、神経弛緩薬の投与のために本発明に従って使用される。好ましくは、フィルム型製剤は、中枢神経系における障害の治療、統合失調症の治療、統合失調症様疾患の治療、急性躁病の治療、軽度の不安神経症の治療等用の薬剤を製造するのに使用される。
【実施例】
【0062】
本発明は、より詳細に以下の実施例により説明されるが、それにより本発明の範囲を限定しない。
【0063】
別記しない限り、重量%で付与されるパーセントは全て、乾燥製剤に関する。
【0064】
実施例1:
下記物質がオランザピンフィルムを生産するのに使用される。
【0065】
【表1】

【0066】
調製:
フィルムの調製に関して、最初に、D−ソルビトールを水中に溶解する。溶媒として1,3−ブタンジオール、パルミチン酸イソプロピル、パラフィン油及びエタノールを得られた溶液に添加して、混合物を攪拌する。次に、まずエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加及び溶解させて、続いてオランザピンを計量して、得られた懸濁液を、適切な攪拌装置を使用して均質化させる。
【0067】
次に、混合物を、コーティング機を使用して適切なキャリア、例えばPEフォイル上に広げ、エタノール/水混合物を50℃で除去する。続いて、そのようにして得られるフィルムを、投薬量に従って打抜いて、包装する。
【0068】
オランザピンフィルムと、フィルムコーティングされたオランザピン錠剤との安定性の比較
【表2】

【0069】
上記表から分かるように、場合によっては生産の直後でさえも、オランザピンを含有するフィルムコーティングされた錠剤においてかなりの量の不純物を検出することができ、その量は、その後の保存時に増加する。これと比べて、フィルム製剤ではかろうじて検出可能な不純物しか形成されない。
【0070】
実施例2:
【表3】

【0071】
調製は、実施例1と同様に実施される。
【0072】
実施例3:
実施例1と同様に、種々の投与量のオランザピンを含有する下記表に示される組成のフィルムを調製した。
【0073】
【表4】

【0074】
血液レベル曲線において、このようにして調製されるフィルム製剤は、それぞれ同じ投薬量のフィルムコーティングされた錠剤の有効成分血液レベルと同程度の有効成分血液レベルを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のフィルム形成剤、1つ又は複数のゲル形成剤、並びに神経弛緩薬の群からの1つ又は複数の有効成分を含む、フィルム型製剤。
【請求項2】
前記製剤が固形フィルムである、請求項1記載のフィルム型製剤。
【請求項3】
単一層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム型製剤。
【請求項4】
空洞を含まないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項5】
界面活性剤を含まないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項6】
発泡性添加剤を含まないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項7】
風味マスカーを含まないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項8】
前記神経弛緩薬が、オランザピン、ベンペリドール、ハロペリドール、クロザピン、フルペンチキソール、フルフェナジン、ドロペリドール、メルペロン、フルペンチキソールデカノエート、フルスピリレン、ブロムペリドール、ピモジド、トリフルプロメタジン、リスペリドン、セルチンドール、トリフルペリドール及びそれらの薬学的に許容可能な塩から成る群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項9】
前記神経弛緩薬が、オランザピンである、請求項8記載のフィルム型製剤。
【請求項10】
前記フィルム中の前記有効成分の含有量が、0.1〜60重量%、特に最大50重量%、好ましくは20〜30重量%、さらに特には約25重量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項11】
下記群:
−糖、糖アルコール及びそれらの誘導体、特にサッカロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ラクトース及びガラクトース、
−低分子量有機酸、特にクエン酸、コハク酸、リンゴ酸及びアジピン酸、
−ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジオレエート、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、パラフィン油及びヒマシ油、
−エチルセルロース、
−酢酸セルロース、
−フタル酸セルロース、
−及びかかるフィルム形成剤の混合物
からの1つ又は複数のフィルム形成剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項12】
エチルセルロース、酢酸セルロース、フタル酸セルロース、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル及びパラフィン油により形成される群からの1つ又は複数のフィルム形成剤を含む、請求項11記載のフィルム型製剤。
【請求項13】
前記フィルムが、5〜70重量%の量でフィルム形成剤を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項14】
下記群:
−高分子炭水化物、特にセルロース及びその誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、カラゲナン、デキストラン、トラガカント及び植物由来のガム、
−水中で可溶性又は膨潤性である合成ポリマー、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びポリアクリルアミド、
−ポリペプチド、特にゼラチン、アルブミン及びコラーゲン、並びに
−かかるゲル形成剤の混合物
からの1つ又は複数のゲル形成剤(複数可)を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項15】
前記ゲル形成剤がセルロース誘導体である、請求項14記載のフィルム型製剤。
【請求項16】
前記セルロース誘導体が、60,000ダルトン未満の分子量を有する、請求項15記載のフィルム型製剤。
【請求項17】
ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項15又は16に記載のフィルム型製剤。
【請求項18】
前記フィルムが、10〜70重量%の量でゲル形成剤を含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項19】
甘味剤、香味剤、防腐剤、着色剤及び/又は充填剤をさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項20】
1〜500μmのフィルム厚を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項21】
円形、丸形、楕円形、長円形、三角形、四角形又は多角形のフィルム形状を有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項22】
平滑な表面、或いは隆起及び/又は陥没を有する表面を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項23】
前記製剤が、キャリアフォイル上に配置される、請求項1〜22のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項24】
前記キャリアフォイルが、ポリエチレン紙(PE紙)、ポリプロピレンフォイル(PPフォイル)及びポリエチレンテレフタレートフォイル(PETフォイル)から選択される、請求項23記載のフィルム型製剤。
【請求項25】
経口投与用である請求項1〜24のいずれか1項に記載のフィルム型製剤。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の1つ又は複数のフィルム型製剤を含むサシェ。
【請求項27】
請求項1〜25の少なくとも1項に記載の1つ又は複数の製剤を含む複数回用量容器。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の製剤の製造プロセスであって、適切な溶媒中にフィルム形成剤を溶解させる工程と、ゲル形成剤を添加する工程と、有効成分を添加する工程と、混合物を均質化させる工程と、該混合物を適切なキャリアへ塗布する工程と、前記溶媒を除去する工程とを含む、製剤の製造プロセス。
【請求項29】
中枢神経系における障害の治療における、統合失調症の治療における、統合失調症様疾患の治療における、急性躁病の治療における、及び/又は軽度の不安神経症の治療における、請求項1〜25のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項30】
中枢神経系における障害の治療、統合失調症の治療、統合失調症様疾患の治療、急性躁病の治療、及び/又は軽度の不安神経症の治療用の薬剤の製造における、請求項1〜25のいずれか1項に記載の製剤の使用。

【公表番号】特表2009−501752(P2009−501752A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521902(P2008−521902)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007177
【国際公開番号】WO2007/009801
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(500085389)ヘキサル アーゲー (7)
【Fターム(参考)】