説明

神経栄養因子

【課題】神経系の障害を診断し処置するために、さらなる神経栄養因子を提供する。
【解決手段】(a)特定の配列からなるヌクレオチド配列;(b)特定の配列からなるAA−AA105に対して少なくとも90%の相同性を含むニューブラスチンポリペプチド又はそこから誘導されるポリペプチドを発現時にコードするオープンリーディングフレームを含む核酸配列;(c)特定の配列からなるヌクレオチド配列を含む核酸に高ストリンジェンシー溶液ハイブリダイゼーション条件で特異的にハイブリダイズする核酸、又はその相補ストランド;および、(d)特定の配列として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の相同性である核酸、より成る群から選ばれた配列を含む、単離されたニューブラスチン核酸からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は神経栄養因子ポリペプチド、神経栄養因子ポリペプチドをコード化する核酸および神経栄養因子に特異的に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
神経栄養因子はニューロン細胞およびニューロン組織の生存を促進し、表現型分化を維持し、変性を防ぎ、活性を増進する、天然のタンパク質である。神経栄養因子は神経組織、および神経系によって支配される非神経組織から単離され、機能的および構造的に関連するグループ(ファミリー、スーパーファミリーまたはサブファミリーとも呼ばれる)に分類されている。神経栄養因子スーパーファミリーには、線維芽細胞成長因子、ニューロトロフィンおよびトランスフォーミング成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーが含まれる。神経栄養因子の個々の分子種は、それらの物理的構造、それらの複合受容体との相互作用および様々なタイプの神経細胞に対するそれらの作用によって識別される。TGF−βスーパーファミリー(Massagueら,Trends in Cell Biology,1994,4,172−178)に分類されるものには、GDNF、パーセフィン(persephin)(「PSP」;Milbrandtら,Neuron 1998,20,245−253、参考文献としてここに援用する)およびニュールツリン(neurturin)(「NTN」;WO 97/08196、参考文献としてここに援用する)を包含するグリア細胞由来神経栄養因子リガンド(「GDNF」;WO 93/06116,参考文献としてここに援用する)がある。GDNFサブファミリーのリガンドは共通して、RET受容体チロシンキナーゼによるシグナル伝達を誘導する能力を持っている。GDNFサブファミリーの上記3つのリガンドは、神経栄養受容体のファミリー、
【0003】
【化2】

受容体に対する相対的親和性が異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
神経栄養因子はニューロン組織に対する作用を持つので、神経系の障害を診断し処置するために、さらなる神経栄養因子を同定し特徴づけることが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(項目1)
(a)配列番号(SEQ ID NO:):1 のヌクレオチド配列;
(b)配列番号:2のAA−AA105に対して少なくとも90%の相同性を含むニューブラスチンポリペプチド又はそこから誘導されるポリペプチドを発現時にコードするオープンリーディングフレームを含む核酸配列;
(c)配列番号:1のヌクレオチド配列を含む核酸に高ストリンジェンシー溶液ハイブリダイゼーション条件で特異的にハイブリダイズする核酸、又はその相補ストランド;
(d)配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の相同性である核酸
より成る群から選ばれた配列を含む、単離されたニューブラスチン核酸。
【0006】
(項目2)
コード化されたポリペプチドが、配列番号:2、及び配列番号:5,6及び7のAA−AA105より成る群から選ばれる、項目1記載の核酸。
【0007】
(項目3)
配列番号:3の配列を含む、項目1記載の核酸。
【0008】
(項目4)
配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の相同性である,項目1記載の核酸。
【0009】
(項目5)
配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の相同性である,項目1記載の核酸。
【0010】
(項目6)
項目1〜5のいずれか1つに記載の核酸を含む発現ベクター。
【0011】
(項目7)
当該核酸によってコード化されるポリペプチドを、インビトロで当該核酸から発現させる段階を含む、項目6記載のベクターを使用する方法。
【0012】
(項目8)
項目1〜5のいずれか1つに記載の核酸及び(又は)項目6記載の発現ベクターを用いてインビトロで形質転換させた細胞。
【0013】
(項目9)
該細胞が真核細胞である、項目8記載の細胞。
【0014】
(項目10)
該細胞が哺乳類細胞、真菌細胞及び酵母細胞より成る群から選ばれる、項目9記載の細胞。
【0015】
(項目11)
哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b及びヒト神経幹細胞より成る群から選ばれる、項目10記載の細胞。
【0016】
(項目12)
配列番号:2のアミノ酸1〜105に対して少なくとも90%相同するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【0017】
(項目13)
配列番号:2,4,5,6及び7において上記アミノ酸配列のいずれか1つを含むニューブラスチン神経栄養因子ポリペプチド。
【0018】
(項目14)
当該ポリペプチドがグリコシル化されている、項目12又は13記載のポリペプチド。
【0019】
(項目15)
当該ポリペプチドが項目1〜5のいずれか1つに記載の核酸によってコードされる、項目12記載のポリペプチド。
【0020】
(項目16)
項目12〜15のいずれか1つに記載のポリペプチドを製造する方法であって、当該方法が上記ポリペプチドをニューブラスチン神経栄養因子核酸から発現させる工程を含む、上記方法。
【0021】
(項目17)
上記ニューブラスチン神経栄養因子核酸を含む細胞を、当該ポリペプチドの産生が可能な培養培地で培養する工程を含む、項目16記載の方法。
【0022】
(項目18)
当該ポリペプチドを、上記培養培地から回収する工程をさらに含む、項目17記載の方法。
【0023】
(項目19)
項目18記載の方法によって得られる精製されたポリペプチド。
【0024】
(項目20)
項目12〜15又は19のいずれか1つに記載のポリペプチドおよび薬学的に許容し得る担体を含む調合物。
【0025】
(項目21)
項目12〜15又は19のいずれか1つに記載のポリペプチドを医薬の製造に使用する方法。
【0026】
(項目22)
損傷性及び外傷性ニューロンに係わる神経変性疾患、たとえば末梢神経系、延髄及び(又は)脊髄の外傷性障害、脳虚血ニューロン損傷、神経障害及び特に末梢神経障、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症又はその他のあらゆる神経変性障害、及び痴呆に関連する記憶障害の治療ために、項目21記載の使用する方法。
【0027】
(項目23)
配列番号:17、18、19、20、23、24、25、26または28に記載の配列のいずれか1つを含む、PCRプライマー核酸配列。
【0028】
(項目24)
配列番号:2、4、5、6又は7に記載のポリペプチドのいずれか1つを製造する方法であって、配列番号:1又は3に記載の核酸配列のいずれか1つを含む細胞を、上記ポリペプチドの産生が可能な条件で培養し、その培養培地から上記ポリペプチドを回収することを含む、上記方法。
【0029】
(項目25)
(a)ニューブラスチンポリペプチドを発現時にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するか、または調節配列をその調節配列が内因性ニューブラスチン遺伝子の発現を調節するように相同組換えによって細胞に導入して、ニューブラスチン産生細胞を作成し、(b)そのニューブラスチン産生細胞をニューブラスチンポリペプチドの発現をもたらす培養条件で培養すること、
を含む、項目12〜15のいずれか1つに記載のニューブラスチンポリペプチドを製造する方法。
【0030】
(項目26)
配列番号:29または30に記載の配列を含む、ニューブラスチンポリペプチドをコード化する合成遺伝子。
【0031】
(項目27)
次の配列:
【0032】
【化2−A】

のいずれかを有するニューブラスチンペプチド。
【0033】
(項目28)
項目27のペプチドのいずれかに対して産生される抗体。
【0034】
(項目29)
配列番号:2、4、5、6、7、9、10、11、12及び16に記載の配列のいずれか1つに対して少なくとも70%の相同性であるアミノ酸配列を有するニューブラスチン神経栄養因子を、黄斑変性、色素性痒疹、及び緑内障を患う患者の網膜で光受容体損失を含む、眼疾患の治療用医薬の製造に使用する方法。
【0035】
(項目30)
配列番号:2、4、5、6、7、9、10、11、12及び16に記載の配列のいずれか1つに対して少なくとも70%の相同性であるアミノ酸配列を有するニューブラスチンポリペプチドを発現時にコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を、黄斑変性、色素性痒疹、及び緑内障を患う患者の網膜で光受容体損失を含む、眼疾患の治療用医薬の製造に使用する方法。
【0036】
発明の要約
本発明は、本明細書で「ニューブラスチン(neublastin)」または「NBN」と呼ぶ、新規神経栄養因子に関する。ニューブラスチンは他のGDNFリガンドと相同(=同一)な領域を有し(下記表3および表4参照)、RETと相互作用する能力を持つ(例えばAiraksinenら,Mol.Cell.Neuroscience,1999,13,313−325)ので、ニューブラスチンはGDNFサブファミリーに分類され、ニューブラスチンは新規かつユニークな神経栄養因子である。他のGDNFリガンドとは異なり、ニューブラスチンはGFRα3−RET受容体複合体に対する高い親和性を示し、またそのアミノ酸配列中にユニークな亜領域を示す。
【0037】
本明細書で使用されるとき「ニューブラスチンポリペプチド」は、(例えば実施例6、7、8および9に記載するように)神経栄養活性活性を有するポリペプチドであり、配列番号2のAA−95〜AA105、配列番号2のAA〜AA105、配列番号4のAA−97〜AA140、配列番号4のAA−41〜AA140(「プロ」)、配列番号4のAA〜AA140、配列番号9のAA−80〜AA140(「野生型」プレプロ)、配列番号9のAA−41〜AA140(プロ)、配列番号5のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号6のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号7のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号10のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号11のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号12のAA〜AA113(成熟113AA)に記載のヒト「ニューブラスチン」ポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性(=同一性)を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドおよびそれらの変異体および誘導体を包含する。また本発明では、配列番号16のAA〜AA224に記載のネズミ「ニューブラスチン」ポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドも考えられる。
【0038】
上に定義したニューブラスチンポリペプチドのC末端配列は、好ましくは、配列番号2のAA72〜AA105(すなわち配列番号9のAA107〜AA140)、より好ましくは配列番号2のAA41〜AA105(すなわち配列番号9のAA76〜AA140)に記載のアミノ酸配列、または配列番号16のAA191〜AA224に記載するアミノ酸配列を持つ。
【0039】
また、ニューブラスチンポリペプチドはGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つの保存されたCys残基を保持していることが好ましい。
【0040】
ニューブラスチンポリペプチドは、好ましくは、上記の配列(すなわち配列番号2のAA−95〜AA105、配列番号2のAA〜AA105、配列番号4のAA−97〜AA140、配列番号4のAA〜AA140、配列番号4のAA−41〜AA140、配列番号9のAA−80〜AA140(「野生型」プレプロ)、配列番号9のAA−41〜AA140(プロ)、配列番号5のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号6のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号7のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号10のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号11のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号12のAA〜AA113(成熟113AA)および配列番号16のAA〜AA224)に対して、85%より高い相同性、最も好ましくは95%より高い相同性を有する。
【0041】
本明細書で使用されるとき「ニューブラスチン核酸」とは、ニューブラスチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。したがって、単離されたニューブラスチン核酸は、翻訳に必要とされる適切な諸成分にばく露された場合にニューブラスチンポリペプチドをコード化またはコードするヌクレオチドコドンのオープンリーディングフレームを有するポリヌクレオチド分子である。本発明のニューブラスチン核酸はRNAでも、DNA(例えばゲノムDNAまたはニューブラスチンmRNAに相補的なかつ/またはニューブラスチンmRNAから転写されたDNA(「cDNA」))でもよい。したがって本発明のニューブラスチン核酸はさらに、ニューブラスチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件で、特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子を包含する。また本発明は、ニューブラスチンポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドまたはその断片の同定、単離および増幅に有用な核酸プライマーに関する。本発明の一定の態様では、それらプライマーのうち一定のものが、ニューブラスチン核酸へのハイブリダイゼーションには有用であるがGDNFファミリーの他のメンバーをコードする核酸へのハイブリダイゼーションには役立たない、ニューブラスチン特異的プローブである。「特異的」「特異性」または「特異的に」という用語は、ニューブラスチン核酸とハイブリダイズすることができ、GDNFリガンド(例えばGDNF、パーセフィンおよびニュールツリン)を一意的にコードする核酸にはハイブリダイズできないことを含めて非ニューブラスチン核酸とはハイブリダイズできないことを意味する。
【0042】
もう一つの態様として、本発明のニューブラスチン核酸は、相補的核酸配列を持つことにより、または当該核酸がニューブラスチンをコードするポリヌクレオチドに高ストリンジェンシー条件で特異的にハイブリダイズすることを立証することにより、ニューブラスチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的であると同定される核酸である。ニューブラスチン核酸の具体例には、配列番号1、配列番号3、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号29および配列番号30として本明細書に示す核酸配列ならびに配列番号17〜28、31および32のプライマーなどがあるが、これらに限定されるわけではない。本発明のニューブラスチン核酸にはさらに、例えば図8に示す核酸断片など(ただしこれらに限らない)の、ニューブラスチン核酸のユニークな亜領域または断片も包含される。
【0043】
本発明のニューブラスチン核酸は、例えばインビトロでニューブラスチンポリペプチドを発現させたり、またはニューブラスチン核酸を動物に投与してインビボで発現させることなどによって、ニューブラスチンポリペプチドを発現させるために使用できる。ニューブラスチン核酸は、核酸ベクター、例えば発現ベクターまたはクローニングベクターに組み込むことができる。ニューブラスチン核酸は、核酸ベクターの一部として維持し、複製し、転移させ、または発現させることができるが、必ずしもその必要はない。ニューブラスチンポリヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターは、細胞内に導入しかつ/または細胞内に維持することができる。ニューブラスチンベクターを保持する細胞は原核細胞であってよい。もう一つの選択肢として、ニューブラスチン核酸を真核細胞(例えばポリペプチドを成熟タンパク質に翻訳後プロセシングするための適切な装置および/またはポリペプチドを当該細胞の細胞外環境に分泌するための適切な装置を含有する真核細胞)に導入することもできる。
【0044】
さらに本発明はニューブラスチン神経栄養因子「ニューブラスチン」を特徴とする。ニューブラスチンは単ポリペプチドの形をとってもよいし、2以上のニューブラスチンポリペプチドの多量体(例えばニューブラスチン二量体)であってもよい。ニューブラスチンポリペプチドは、例えばシステイン−システイン相互作用、スルフヒドリル結合および非共有結合的相互作用など(ただしこれらに限らない)といった、当業者に知られる分子間の構造的結合により、多量体として会合する。ニューブラスチンポリペプチドの具体例には、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12および配列番号16として本明細書に開示するアミノ酸配列があるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
本発明のニューブラスチンポリペプチドは、ニューロンの欠陥(損傷を受けたニューロンおよび外傷を受けたニューロンを含むが、これらに限らない)の処置に有用である。外傷を受ける末梢神経には、延髄または脊髄の神経が含まれるが、これらに限らない。ニューブラスチンポリペプチドは、神経変性疾患、例えば脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、例えば末梢神経障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの処置に有用である。さらに、ニューブラスチンポリペプチドには、記憶障害(例えば痴呆に伴なう記憶障害)の処置での使用が考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
発明の詳細な開示
出願人は、ここに「ニューブラスチン(neublastin)」または「NBN」と呼ぶ新規神経栄養因子をコード化する核酸を同定した。ニューブラスチンは、神経栄養因子のトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)サブクラスのメンバーである。
【0047】
ニューブラスチンをコード化するcDNAは、最初は、以下のように同定された。TBLASTN 1.4.11アルゴリズム(Atschulら,Nucl. Acids Res. 1997,25,3389−3402)を使用し、クエリーとしてヒトパーセフィン(GenBank受諾番号AF040962)を使用することにより、GenBankエントリーAC005038およびAC005051の2つのヒト細菌人工染色体(BAC)のHGTS(High−Throughput Genomic Sequence)に、290bpの断片が同定された。AC005038は順序不明の5つのコンティグ約190,000bpからなり、AC005051は順序不明の12のコンティグ約132,000bpからなる。上記2つのBACクローン中に同定された290bp断片は、神経栄養因子ヒトパーセフィンのcDNAのコード領域と相同であるが同一ではない領域を持つことが判明した。
【0048】
この290bp配列から、2つのニューブラスチン特異的PCRプライマー(トップ鎖(top strand)プライマー[配列番号17]およびボトム鎖(bottom strand)プライマー[配列番号18])を合成した。ヒト胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。最初のスクリーニングでは、約5,000クローン/ウェルの50,000cDNAクローンから、上記2つのPCRプライマー[配列番号17および18]によるcDNAライブラリー「マスタープレート」の96ウェルPCRスクリーニングを行なった。第二のPCRスクリーニングは、約5,000クローン/ウェルの大腸菌グリセロール保存液を含むヒト胎児脳cDNAライブラリー「サブプレート」で行なった。
【0049】
上記マスタープレートとサブプレートの両方のPCRスクリーニングで102bpの断片[配列番号13]が同定された。陽性cDNAクローン(102bp断片を保持するもの)を選択し、2枚のLB/抗生物質含有プレートに播種し、終夜生育させた。これらのプレートから、合計96個の細菌コロニーを選択し、両PCRプライマー[配列番号17および18]ならびに不可欠なPCR増幅試薬類を含む新しい96ウェルPCRプレートの各ウェルに、個別に播種した。次にPCR増幅を行ない、96個の個々のPCR反応系を2%アガロースゲル電気泳動によって分析した。次に、上記102bp断片を含有するクローンを持つ陽性コロニーを同定した。上記102bp断片を含有する陽性コロニーからプラスミドDNAを得て、配列決定した。次に、配列決定分析を行なうことにより、861bpの完全長cDNA[配列番号8]の存在が明らかになった。配列番号8中に同定される663bpのオープンリーディングフレーム(ORF)またはコード領域は、プレプロポリペプチド(「プレプロニューブラスチン」と呼ぶ)をコード化し、これを配列番号9に示す。配列番号9に基づき、3つのニューブラスチン変異体が同定された。それらの変異体には以下のポリペプチドが含まれる:
(i)配列番号10のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN140と呼ばれる140アミノ酸ポリペプチド;
(ii)配列番号11のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN116と呼ばれる116アミノ酸ポリペプチド;
(iii)配列番号12のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN113と呼ばれる113アミノ酸ポリペプチド。
【0050】
782bpの5’非翻訳DNA、663bpのコード化DNAおよび447bpの3’非翻訳DNA(合計1992bp)を含有する全cDNA配列は、受諾番号AF120274としてGenBankに提出されている。
【0051】
ゲノムニューブラスチンコード化配列は以下のように同定された。
【0052】
ゲノムニューブラスチンコード化配列をクローニングする目的で、新たなプライマーセットを作成した。具体的に述べると、第1プライマー対はセンス=配列番号23およびアンチセンス=配列番号24からなり、第2プライマー対はセンス=配列番号25およびアンチセンス=配列番号26からなった。
【0053】
第2プライマー対を使って、887bpのDNA断片をヒトゲノムDNAの調製物からPCRによって増幅し、pCRIIベクター(Invitrogen)にクローニングし、大腸菌に形質転換した。得られたプラスミドを配列決定したところ、(配列番号3に記載するように)861bpの推定cDNA配列(ここにニューブラスチンと名付けるタンパク質をコード化する)が予測された。同様に、第1プライマー対を使用すると、870bpのDNA断片がヒトゲノムDNAのPCRによって得られた。この断片には、上記の887bp配列と比較して、オープンリーディングフレームの3’末端に余分な42bpの領域が見出された。エキソン−イントロン境界をマッピングして、他の神経栄養因子の核酸配列と比較することにより、ニューブラスチン遺伝子のゲノム構造を予測した。この分析により、ニューブラスチン遺伝子は70bpのイントロンによって分離された少なくとも2つのエキソンを有することが明らかになった。
【0054】
また、この配列を用いて、GenBankをニューブラスチンEST配列についてスクリーニングした。GenBankエントリーAA844072、AA931637およびAA533512に、3つのEST配列が同定されたことから、ニューブラスチン核酸がmRNAに転写されることが示された。
【0055】
得られた全cDNA配列(AF120274)とGenBankエントリーAC005038およびAC005051中に存在するゲノム配列との比較により、ニューブラスチン遺伝子は4つのイントロンによって分離された少なくとも5つのエキソン(3つのコーディングエキソンを含む)からなることが明らかになった(例えば図8を参照されたい)。全体として上記エキソンは完全長ニューブラスチンポリペプチドの予想アミノ酸配列を持つ。887bp断片がプロニューブラスチンの全コード領域を含むことがわかった点にも注目すべきである。予想されるcDNA[配列番号3]は、3つの既知ヒトタンパク質、すなわちパーセフィン、ニュールツリンおよびGDNFに対して相同性を示すプロニューブラスチン(181アミノ酸残基)をコード化するオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでいる。
【0056】
本発明のニューブラスチン核酸
もう一つの側面として、本発明は、本発明のポリペプチドを発現させることができるポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA、cDNAおよびRNA配列ならびにアンチセンス配列を包含し、天然のポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチドおよび意図的に操作したポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドには、遺伝暗号の結果、縮重しているが、ニューブラスチンポリペプチドを発現時にコードする配列も包含される。
【0057】
ここに定義される用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長、好ましくは少なくとも15塩基長のポリマー型ヌクレオチドを指す。「単離されたポリヌクレオチド」とは、当該ポリヌクレオチドが由来する生物の天然のゲノム中で当該ポリヌクレオチドが(一つは5’末端側で、一つは3’末端側で)すぐに接している両コード配列と、すぐには接していないポリヌクレオチドを意味する。したがって、この用語は、発現ベクター、自律複製プラスミドまたは自律複製ウイルス、もしくは原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNA、または他の配列から独立した単独の分子(例えばcDNA)として存在する組換えDNAを包含する。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のヌクレオチド配列と1つまたは複数のヌクレオチド位置で相違するヌクレオチド配列を持つ対立遺伝子変異体および「突然変異ポリヌクレオチド」も包含する。
【0059】
好ましい一態様として、本発明のポリヌクレオチドは、下に詳述するように、少なくとも中、中/高または高ストリンジェンシー条件で、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列、配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列、または配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列、その相補鎖もしくは部分配列とハイブリダイズすることができる核酸(DNA)配列を有する。
【0060】
もう一つの好ましい態様として、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列、配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列、または配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%相同な核酸(DNA)配列を有する。
【0061】
その最も好ましい態様として、本ポリヌクレオチドは、配列番号1として記載するDNA配列、配列番号3として記載するDNA配列、配列番号8として記載するDNA配列、または配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列を有する。
【0062】
本発明は、ニューブラスチンポリペプチドまたはその断片を発現時にコードするニューブラスチンポリヌクレオチドを同定、単離および増幅するための新規プライマーならびにDNA配列も提供する。そのようなプライマーには、配列番号17〜28および31〜32に記載のポリヌクレオチドが包含される。また本発明は、それらのプライマーから生成するニューブラスチンDNA配列を、配列番号13および14に記載の配列を含めて、提供する。さらに本発明は、ニューブラスチンエキソンに隣接するゲノムDNA中の3’または5’非翻訳領域(「UTR」)から得られるDNA配列を提供する。そのような配列は、ニューブラスチンポリペプチドまたはその断片を発現時にコードするニューブラスチンポリヌクレオチドを同定、単離および増幅するのに有用である。
【0063】
本発明の3’UTR配列には、
配列番号1のヌクレオチド721−865、
配列番号3のヌクレオチド718−861、
配列番号8のヌクレオチド718−861、
配列番号15のヌクレオチド1647−2136、
に記載の配列、および上記の配列に由来する(すなわち上記の配列に含まれる)10〜25ヌクレオチドの連続する配列(例えばプライマーとして有用なもの)、
が包含される。
【0064】
本発明の5’UTR配列には、
配列番号1のヌクレオチド1−10、
配列番号8のヌクレオチド1−57、
配列番号15の1−974、
に記載の配列、および上記の配列に由来する(すなわち上記の配列に含まれる)10〜25ヌクレオチドの連続する配列(例えばプライマーとして有用なもの)、
が包含される。
【0065】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons)に記載されているようなクローニング法によって、好ましく取得することができる。好ましい一態様として、本ポリヌクレオチドは、ヒトゲノムDNAまたはヒト脳のcDNAライブラリーからクローニングされるか、ヒトゲノムDNAまたはヒト脳のcDNAライブラリーに基づいて作成される。
【0066】
DNA配列の相同性
上で言及したDNA配列相同性は、第1配列の第2配列からの派生を示す2つの配列間の同一度として決定することができる。相同性は、例えばGCGプログラムパッケージに含まれるGAPなどの当技術分野で知られるコンピュータープログラムを使って、適切に決定できる[Needleman,S.B.およびWunsch,C.D.,Journal of Molecular Biology 1970,48,443−453]。GAP挿入ペナルティー(GAP creation penalty)5.0およびGAP伸長ペナルティー(GAP extension penalty)0.3というDNA配列比較用の設定でGAPを使用することにより、上で言及した類似DNA配列のコード領域は、配列番号1に示すDNA配列のCDS(コード化)部分または配列番号3に示すDNA配列のCDS(コード化)部分または配列番号8に示すDNA配列のCDS(コード化)部分、配列番号15に示すDNA配列のCDS(コード化)部分と、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一度を示す。
【0067】
「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が特定の比較領域にわたってヌクレオチド単位で同一である程度を指す。「配列同一性百分率」という用語は、上記の比較領域にわたって最適に整列された2つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えばA、T、C、G、UまたはI)が両方の配列中に存在する位置の数を決定することで一致した位置の数を求め、その一致した位置の数を比較領域の位置の総数(すなわちウインドウサイズ)で割り、その商を100倍して、配列同一性百分率を求めることによって計算される。本明細書で使用する「実質的同一」という用語は、当該ポリヌクレオチドが、ある比較領域にわたって基準配列と比較したときに、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、しばしば90〜95%の配列同一性、より一般には少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含んでなるようなポリヌクレオチド配列の特徴を示す。
【0068】
ハイブリダイゼーションプロトコール
本発明のポリヌクレオチドは、以下に詳述するように、少なくとも中、中/高または高ストリンジェンシー条件で、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列、または配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列、または配列番号15として記載するポリヌクレチド配列、もしくはそれらの相補鎖またはそれらの部分配列とハイブリダイズすることができる核酸配列を持つものである。
【0069】
ヌクレオチドプローブと相同DNAまたはRNA配列の間のハイブリダイゼーションを決定するのに適した実験条件では、ハイブリダイズさせるDNA断片またはRNAを含んでいるフィルターを5×SSC[塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム;Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,コールドスプリングハーバー研究所,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー,1989を参照されたい]中で10分間予浸し、5×SSC、5×デンハート液[Sambrookら(前掲)参照]、0.5%SDSおよび100μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNA[Sambrookら(前掲)参照]の溶液中でフィルターのプレハイブリダイゼーションを行なった後、ランダムプライム法[Feinberg APおよびVogelstein B,Anal.Biochem.1983,132,6−13]で32P−dCTP標識した(比活性>1×10cpm/μg)プローブを10ng/mlの濃度で含む同溶液中、約45℃で12時間のハイブリダイゼーションを行なう。次いでフィルターに、0.1×SSC、0.5%SDS中、少なくとも、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー条件)、好ましくは少なくとも65℃(中/高ストリンジェンシー条件)、より好ましくは少なくとも70℃(高ストリンジェンシー条件)、より一層好ましくは少なくとも75℃(超高ストリンジェンシー条件)の温度での30分間の洗浄を2回行なう。これらの条件でオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする分子は、X線フィルムを使って検出できる。
【0070】
クローン化ポリヌクレオチド
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、具体的には、クローン化ポリヌクレオチドであってもよい。ここに定義される用語「クローン化ポリヌクレオチド」は、DNA(具体的にはcDNA、すなわちRNAから酵素的に誘導されたDNAであってもよい)のセグメントを本来の位置から異なる部位に移動させてその部位で複製させるために、遺伝子工学において現在使用されている標準的クローニング法に従ってクローン化された、ポリヌクレオチドまたはDNA配列を指す。
【0071】
クローニングは任意の適当な方法で達成でき、クローニングには逆転写酵素法、PCR法などの方法と、所望のDNAセグメントの切り出しおよび単離が必要になりうる。
【0072】
本発明のクローン化ポリヌクレオチドは、その他に「DNA構築体」または「単離されたDNA配列」と呼ぶこともでき、具体的には相補DNA(cDNA)であってもよい。
【0073】
生物学的供給源
本発明の単離されたポリヌクレオチドは任意の適当な供給源から得ることができる。
【0074】
好ましい一態様として、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAライブラリー、例えば胎児または成人の脳(具体的には前脳、後脳、皮質、線条体、扁桃体、小脳、尾状核、脳梁、海馬、視床核、視床下核、嗅核、被殻、黒質、後根神経節、三叉神経節、上腸間膜動脈、または視床)、脊髄、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、肝臓、膵臓、腸、眼、網膜、歯髄、毛包、前立腺、下垂体、または気管のcDNAライブラリーなどからクローニングされるか、それらcDNAライブラリーに基づいて作成される。
【0075】
ヒトおよびヒト以外の様々な組織に由来する市販のcDNAライブラリーは、例えばStratageneやClontechなどから入手できる。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、例えば実施例に記載するような標準的方法によって得ることができる。
【0076】
本発明のニューブラスチンポリペプチド
上記のように、本明細書で使用されるとき「ニューブラスチンポリペプチド」は、(例えば実施例6、7、8および9に記載するように)神経栄養活性を有するポリペプチドであり、配列番号2のAA−95〜AA105、配列番号2のAA〜AA105、配列番号4のAA−97〜AA140、配列番号4のAA−41〜AA140、配列番号4のAA〜AA140、配列番号9のAA−80〜AA140(「野生型」プレプロ)、配列番号9のAA−41〜AA140(プロ)、配列番号5のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号6のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号7のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号10のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号11のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号12のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号16のAA〜AA224(ネズミプレプロ)に記載の「ニューブラスチン」ポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドおよび前記各ポリペプチドの変異体ならびに誘導体を包含する。
【0077】
上記ニューブラスチンポリペプチドのC末端配列は、好ましくは、配列番号2のAA72〜AA105(すなわち配列番号9のAA107〜AA140)、より好ましくは配列番号2のAA41〜AA105(すなわち配列番号9のAA76〜AA140)に記載するようなアミノ酸配列を持つ。
【0078】
また、ニューブラスチンポリペプチドはGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つの保存されたCys残基を保持していることが好ましい。
【0079】
ニューブラスチンポリペプチドは、好ましくは、上記の配列(すなわち配列番号2のAA−95〜AA105、配列番号2のAA〜AA105、配列番号4のAA−97〜AA140、配列番号4のAA−41〜AA140、配列番号4のAA〜AA140、配列番号9のAA−80〜AA140(「野生型」プレプロ)、配列番号9のAA−41〜AA140(プロ)、配列番号5のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号6のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号7のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号10のAA〜AA140(成熟140AA)、配列番号11のAA〜AA116(成熟116AA)、配列番号12のAA〜AA113(成熟113AA)、配列番号16のAA〜AA224(ネズミプレプロ)に対して、85%より高い相同性、最も好ましくは95%より高い相同性を有し、上記ニューブラスチンポリペプチドのC末端配列を持つ前記ポリペプチドはいずれも、好ましくは、配列番号2のAA72〜AA105(すなわち配列番号9のAA107〜AA140)、より好ましくは配列番号2のAA41〜AA105(すなわち配列番号9のAA76〜AA140)または配列番号16のA191−A224に記載するようなアミノ酸配列を持つ。
【0080】
また本発明では、配列番号16のAA〜AA224に記載のネズミ「ニューブラスチン」ポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドも考えられる。
【0081】
一態様として本発明の好ましいポリペプチドの代表例は、ニューブラスチンのプレプロ配列(配列番号2、4、9および16にそれぞれ記載するような配列)、プロ配列(配列番号2のAA−75−A105または配列番号4および9のそれぞれAA−41〜AA140に記載するような配列)および成熟配列(配列番号5、6、7、10、11または12、好ましくは配列番号10、11、12に記載するような配列)である。
【0082】
本発明のポリペプチドは変異体ポリペプチドを包含する。本発明に関して「変異体ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸位置で配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号16として記載する配列と相違するアミノ酸配列を持つポリペプチド(またはタンパク質)を意味する。そのような変異体ポリペプチドには、上述の改変ポリペプチド、保存的置換体、スプライス変異体、イソ型、他の種に由来する相同体および多型が包含される。
【0083】
ここに定義される用語「保存的置換」とは、あるアミノ酸残基を別の生物学的に類似する残基で置き換えることを意味する。例えば、保存的アミノ酸置換は、特にそれらが当該ポリペプチドまたはタンパク質中の残基の総数の10%未満に相当する場合は、生物活性にほとんどまたは全く影響をもたないと予想される。保存的アミノ酸置換は、好ましくは、当該ポリペプチドまたはタンパク質の5%未満、最も好ましくは当該ポリペプチドまたはタンパク質の2%未満の変化に相当する(例えば、NBN113で計算すると、最も好ましい保存的置換は野生型成熟アミノ酸配列中の3個未満のアミノ酸置換に相当することになる)。特に好ましい一態様では、成熟配列中にただ一つのアミノ酸置換があり、置換される残基と代替残基は両者とも非環状アミノ酸である。
【0084】
特に保存的な置換の他の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの疎水性残基の別の疎水性残基による置換、極性残基の別の極性残基による置換、例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換またはグルタミンによるアルパラギンの置換などが挙げられる。
【0085】
保存的置換という用語には、置換ポリペプチドに対して産生させた抗体が非置換ポリペプチドとも免疫反応するという条件の下で、非置換親アミノ酸残基の代わりに置換アミノ酸残基を使用することも包含される。
【0086】
この一次アミノ酸配列の改変は、無改変の対応ポリペプチドと比較して実質的に等価な活性を持ち、したがって当該親タンパク質の機能的類似体であるとみなすことができるタンパク質をもたらしうる。そのような改変は、例えば部位特異的突然変異誘発による改変のように意図的であってもよいし自発的に起こる場合もあり、スプライス変異体、イソ型、他の種に由来する相同体および多型が包含される。本発明では、そのような機能的類似体も考えられている。
【0087】
さらにまた一次アミノ酸配列の改変は、親タンパク質の生物活性を保っていないタンパク質(ドミナントネガティブ型などを含む)も、もたらしうる。ドミナントネガティブタンパク質は、通常は当該ポリペプチドと機能的に相互作用する上流または下流成分などの調節因子に結合するか、それら調節因子を他の方法で封鎖することによって、野生型タンパク質を妨害しうる。本発明では、そのようなドミナントネガティブ型も考えられている。
【0088】
「シグナルペプチド」とは、さらなる翻訳後プロセッシングと分布のために、当該シグナルペプチドが結合している新たに合成されたポリペプチドを小胞体(ER)に誘導するペプチド配列である。
【0089】
ニューブラスチンに関して本明細書で使用されるとき「異種シグナルペプチド」とは、ヒトニューブラスチンシグナルペプチドではないシグナルペプチド、通例はニューブラスチン以外の何らかの哺乳類タンパク質のシグナルペプチドを意味する。
【0090】
ヒトニューブラスチンDNA配列(cDNAまたはゲノムDNA)、もしくはサイレントなコドン変化または保存的アミノ酸置換をもたらすコドン変化を持つ点でヒトニューブラスチンDNAとは相違する配列を使って、培養ヒト細胞が当該酵素を過剰発現し分泌するように、それらの細胞を遺伝子改変できることは、当業者には理解されるだろう。
【0091】
本発明のポリペプチドには、ポリペプチドまたはその断片のN末端もしくはC末端に、別のポリペプチドが融合されているキメラポリペプチドまたは切断可能な融合ポリペプチドも包含される。キメラポリペプチドは、本発明の核酸配列(またはその一部)に、別のポリペプチドをコード化する核酸配列(またはその一部)を融合することによって作成できる。
【0092】
キメラポリペプチドを製造する技術は標準的技術である。そのような技術では、通常、各配列をそれらがどちらも同じ読み枠になるように結合し、1つまたは複数の同じプロモーターおよび同じターミネーターの制御下に、その融合ポリペプチドを発現させることが必要とされる。
【0093】
本発明のポリペプチドには、完全長ニューブラスチン分子の切断型も包含される。そのような切断型分子では、1つまたは複数のアミノ酸が、N末端またはC末端(好ましくはN末端)から削除されている。
【0094】
アミノ酸配列相同性
候補ポリペプチドが本発明のニューブラスチンポリペプチドと相同性を共有する程度は、2つのアミノ酸配列間の同一度として決定される。高レベルの配列同一性は、第1配列が第2配列に由来する可能性を示す。
【0095】
相同性は、ClustalXコンピューター整列プログラム[Thompson,JD,Gibson TJ,Plewniak F,Jeanmougin FおよびHiggins DG「The ClustalX windows interface: flexible strategies for multiple sequence alignment aided by quality analysis tools」Nucleic Acids Res.197,25(24): 4876−82]と、ここに提案するデフォルトパラメーターなど(ただしこれに限らない)のコンピューター分析によって決定される。このプログラムを使用すると、本発明の類似DNA配列によってコード化されるポリペプチドの成熟部分は、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号16として本明細書に記載するアミノ酸配列と、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の同一度を示す。
【0096】
相同性決定によれば、TGF−βスーパーファミリーに属する本発明のポリペプチドはGDNFサブファミリーと近縁であるが、このサブファミリーの別個のメンバーであることが確認される。
【0097】
生物活性ポリペプチド
本発明のポリペプチドは、プレプロタンパク質、プロタンパク質、成熟タンパク質、グリコシル化タンパク質、リン酸化タンパク質の形、または他の翻訳後修飾を受けた任意のタンパク質の形を含めて、任意の生物活性形で提供できる。
【0098】
本発明のポリペプチドは、具体的には、好ましくは配列表に示すN残基でグリコシル化されるN−グリコシル化ポリペプチドであってもよい。
【0099】
好ましい態様として、本発明のポリペプチドは、122位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号9として記載のアミノ酸配列、122位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号10として記載のアミノ酸配列、98位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号11として記載のアミノ酸配列、または95位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号12として記載のアミノ酸配列を持つ。
【0100】
本発明では、例えば参考文献としてここに援用する米国特許第5,434,131号などに記載されているようなIg融合物などのニューブラスチン融合タンパク質も考えられる。
【0101】
一態様として本発明は、配列番号2として示すアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号2として記載する配列に少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0102】
もう一つの態様として本発明は、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号4として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より一層好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0103】
第三の態様として本発明は、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号5として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0104】
第四の態様として本発明は、配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号6として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0105】
第五の態様として本発明は、配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号7として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0106】
本発明のニューブラスチンポリペプチドには、例えば配列番号5〜7のポリペプチドアミノ酸配列(配列中のXaaはAsnまたはThrを示し、YaaはAlaまたはProを示す)などの対立遺伝子変異体も包含される。
【0107】
第六の態様として本発明は、配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号9として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0108】
第七の態様として本発明は、配列番号10のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号10として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0109】
第八の態様として本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号11として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0110】
第九の態様として本発明は、配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号12として記載する配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0111】
第十の態様として本発明は、配列番号16のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはネズミプレプロニューブラスチンである配列番号16として記載の配列に少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0112】
もう一つの態様として、本発明のポリペプチドは、GDNFサブファミリーフィンガープリント、すなわち表3の下線部のアミノ酸残基を持つ。
【0113】
さらにもう一つの態様として、本発明は、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列、その相補鎖またはその部分配列と高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列によってコード化されるポリペプチドを提供する。好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列に少なくとも70%相同なポリヌクレオチド配列によってコード化される。その最も好ましい態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号1として記載するポリヌクレオチド配列によってコード化される。
【0114】
さらにもう一つの態様として、本発明は、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列、その相補鎖またはその部分配列と高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列によってコード化される新規ポリペプチドを提供する。好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列に少なくとも70%相同なポリヌクレオチド配列によってコード化される。その最も好ましい態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号3として記載するポリヌクレオチド配列によってコード化される。
【0115】
さらにもう一つの態様として、本発明は、配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列、その相補鎖またはその部分配列と高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列によってコード化される新規ポリペプチドを提供する。好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列に少なくとも70%相同なポリヌクレオチド配列によってコード化される。その最も好ましい態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号8として記載するポリヌクレオチド配列によってコード化される。
【0116】
さらにもう一つの態様として、本発明は、配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列、その相補鎖またはその部分配列と高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列によってコード化される新規ポリペプチドを提供する。好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列に少なくとも70%相同なポリヌクレオチド配列によってコード化される。その最も好ましい態様として、本発明のポリペプチドは、配列番号15として記載するポリヌクレオチド配列によってコード化される。
【0117】
生物学的起源
本発明のポリペプチドは哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞またはネズミ由来の細胞から単離できる。
【0118】
最も好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、ヒト心臓組織、ヒト骨格筋、ヒト膵臓、またはヒト脳組織、特に尾状核もしくは視床から単離することができ、または下に詳述するように、哺乳類由来のDNAから得ることができる。
【0119】
神経栄養活性
本発明のニューブラスチンポリペプチドは神経細胞またはニューロン細胞の代謝、成長、分化または生存を調節するのに有用である。具体的に述べると、ニューブラスチンポリペプチドは、生きている動物(例えばヒト)の障害または疾患であって神経栄養剤の活性に反応するものを処置または軽減するために使用される。そのような処置と方法は、下に詳述する。
【0120】
抗体
本発明のニューブラスチンポリペプチドまたはニューブラスチンポリペプチド断片は、ニューブラスチン特異抗体を作成するために使用される。本明細書で使用されるとき「ニューブラスチン特異抗体」とは、ニューブラスチンポリペプチドまたはニューブラスチンポリペプチド断片に対して免疫反応性の抗体またはニューブラスチンポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体(例えばポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)である。
【0121】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の製造は当技術分野では周知である。ポリクローナル抗体は、具体的には、例えばGreenら著「Production of Polyclonal Antisera(ポリクローナル抗血清の産生)」Immunochemical Protocols(Manson編,Humana Press,1992)の1〜5頁、Coliganら著「Production of Polyclonal Antisera in Rabbits,Rats,Mice and Hamsters(ウサギ、ラット、マウスおよびハムスターにおけるポリクローナル抗血清の産生)」Current Protocols in Immunology(1992)の2.4.1節、ならびにEd HarlowおよびDavid Lane(編)「Antibodies: A laboratory manual」(Cold Spring Harbor Lab.Press,1988)に記載されているように取得することができる。これらのプロトコールは参照によりここに援用される。モノクローナル抗体は、具体的には、例えばKohlerおよびMilstein,Nature,1975,256:495、Colliganら,Current Protocols
in Immunology,1992の2.5.1〜2.6.7節、およびHarlowら,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,Pub.,1988)の726頁に記載されているように取得することができ、これらのプロトコールは参照によりここに援用される。
【0122】
簡単に述べると、モノクローナル抗体は、抗原を含んでなる組成物を例えばマウスに注射し、血清試料を採取することによって抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を入手し、そのBリンパ球をメラノーマ細胞と融合してハイブリドーマを生成し、そのハイブリドーマをクローン化し、上記抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、そのハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって得ることができる。
【0123】
モノクローナル抗体は、プロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどを含む、種々の確立された技術によって、ハイブリドーマ培養から単離および精製できる。例えばColiganら,Current Protocols in Immunology,1992,2.7.1〜2.7.12節および2.9.1〜2.9.3節ならびにBarnesら著「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」Methods in Molecular Biology(Humana Press,1992)の第10巻79〜104頁を参照されたい。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、随意に、例えば、その抗体を産生させる際に対象としたポリペプチドが結合しているマトリックスへの結合と、そのマトリックスからの溶出によって、さらに精製することができる。
【0124】
本発明のニューブラスチンポリペプチドに結合する抗体は、完全なポリペプチドまたは興味のある小ペプチドを含有する断片を免疫抗原として使用して、作成することができる。動物の免疫化に使用するポリペプチドは、組換えDNA技術によって、または化学合成によって得ることができ、それらのポリペプチドは随意に担体タンパク質に結合してもよい。ペプチドに化学的に結合される担体タンパク質であって、よく使用されるものには、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)および破傷風トキソイドがある。次に、結合したペプチドを使って動物(具体的にはマウス、ラット、ハムスターまたはウサギなどが挙げられる)を免疫化する。
【0125】
一態様として、抗体は次のペプチドを用いて作成される:ペプチド1:CRPTRYEAVSFMDVNST(配列番号9のアミノ酸(AA)108−124)またはペプチド2:ALRPPPGSRPVSQPC(配列番号9のアミノ酸93−107)。これらのポリペプチドを用いて抗体を作成する方法は実施例10に記載する。
【0126】
本発明者らは、次のペプチドに対するウサギポリクローナル抗体も作成した。
【0127】
【化3】

このグループのうち、比較的C末端に近いペプチドR30およびR31だけが、ウェスタンブロット上で、還元条件下に、変性タンパク質を認識した。
【0128】
本発明者らは、既知のGDNF構造に基づいて表面露出ループであると予想され(EigenbrotおよびGerber,Nat.Struct.Biol.,1997,4,435−438)、したがって抗体作成に有用である、成熟タンパク質由来のさらなるニューブラスチン由来ペプチドも、下に詳述するように同定した。
【0129】
【化4】

本発明のもう一つの側面として、ニューブラスチンまたはニューブラスチン由来ペプチドを特異的に結合する抗体は、様々な媒質中のそれらニューブラスチン神経栄養因子の存在を検出するために、また特に、本発明のニューブラスチン分子と関係する状態または疾患の診断に使用できる。当技術分野では、例えばELISA、RIAおよびFACSなどといった、そのような検出のための様々なプロトコールが知られている。
【0130】
本発明の抗体は本神経栄養因子の効果を遮断するためにも使用でき、具体的には中和抗体でありうる。
【0131】
本発明のポリペプチドの製造方法
下に詳述するように、本発明のニューブラスチンポリペプチドをコード化するDNA配列を含む細胞を、当該ポリペプチドの産生が可能な条件で培養した後、その培養培地から当該ポリペプチドの回収を行なう。ニューブラスチンポリペプチドを生産する目的で細胞を遺伝子改変する必要がある場合は、細胞を従来の方法で、または遺伝子活性化法によって、改変することができる。
【0132】
従来の方法では、ニューブラスチンcDNAまたはゲノムDNA配列を含有するDNA分子が発現構築体内に含まれ、例えばリポソーム−、ポリブレン−またはDEAEデキストラン−トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、または加速微粒子法(「バイオリスティック法」)など(ただしこれらに限らない)の標準的方法によって、細胞中にトランスフェクトされる。もう一つの選択肢として、ウイルスベクターによってDNAを送達する系も使用できるだろう。遺伝子導入に役立つことが知られているウイルスには、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、おたふくかぜウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルス、およびカナリア痘瘡ウイルスなどのワクシニアウイルス、ならびに昆虫細胞(特にSfP9昆虫細胞)のバキュロウイルス感染などがある。
【0133】
もう一つの選択肢として、米国特許第5,733,761号および同第5,750,376号(それぞれ参考文献としてここに援用する)に記載されているような遺伝子活性化(「GA」)法を使って、細胞を改変することもできる。
【0134】
したがって、細胞に関して本明細書で使用する「遺伝子改変(された)」という用語は、特定の遺伝子産物を、その遺伝子産物をコード化するDNA分子および/またはその遺伝子産物のコード配列の発現を制御する調節要素をコード化するDNA分子が導入された結果、発現させる細胞を包含するものとする。上記DNA分子は、特定のゲノム部位への当該DNA分子の組み込みを可能にする遺伝子ターゲティングによって導入することができる。
【0135】
組換え発現ベクター
さらなる側面として、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の組換え発現ベクターは任意の適当な真核細胞用発現ベクターであってよい。好ましい組換え発現ベクターは、ユビキチンプロモーター含有ベクターpTEJ−8(Johansen TE,Schoeller MS,Tolstoy S,Schwartz T,FEBS Lett.1990,267,289−294)およびその誘導体、例えばpUbi1Zである。好ましい市販の真核細胞用発現ベクターには、例えばウイルスプロモーター含有ベクターpcDNA−3(Invitrogenから入手できる)がある。もう一つの好ましい発現ベクターはSV40初期およびアデノウイルス主要後期プロモーター(プラスミドpAD2betaに由来、NortonおよびCoffin,Mol.Cell.Biol.1985,5,281)を使用するものである。
【0136】
本発明は、原核細胞用発現ベクターおよび原核細胞での発現にコドンを最適化した合成遺伝子(シンジーン(syngene))も提供する。シンジーンは、より低いGC含量と好ましい細菌(例えば大腸菌)コドンを持つものを構築した。このシンジーンは2つのベクター、すなわちpET19bと、pET19bの誘導体であるpMJB164にクローニングされている。pET19bを使った構築を図14に示す。この構築体では、ニューブラスチンの成熟ドメインをコード化する配列が開始メチオニンに直接融合されている。pMJB164を使った構築を図15に示す。
【0137】
産生細胞
さらにもう一つの側面として、本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチド配列および/または本発明の組換え発現ベクターを含むように遺伝子操作された産生細胞を提供する。本発明の細胞は、具体的には、本発明のポリペプチドを一過性または安定に発現、過剰発現もしくは同時発現するように遺伝子操作することができる。一過性または安定発現を引き起こす方法は当技術分野では知られている。
【0138】
本発明のポリヌクレオチドは発現ベクター(例えばプラスミド、ウイルスまたは他の発現媒体)に挿入することができ、また随意に、発現制御配列に対して、コード配列の発現が当該発現制御配列に適合する条件で達成されるような方法で、連結により、機能的に連結することができる。好適な発現制御配列には、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン、イントロンのためのスプライスシグナル、停止コドンなどがあり、それらは全て、mRNAの適切な翻訳が可能なように、本発明ポリヌクレオチドの正しい読み枠内に保たれる。発現制御配列にはリーダー配列、融合パートナー配列などの追加の成分を含めてもよい。
【0139】
プロモーターは具体的には構成的プロモーターでも誘導性プロモーターでもよい。細菌系でクローニングを行なう場合は、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターを使用できる。クローニングを哺乳類系で行なう場合は、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばユビキチンプロモーター、TKプロモーターまたはメタロチオネインプロモーターなど、もしくは哺乳類ウイルスに由来するプロモーター、例えばレトロウイルス末端反復配列、アデノウイルス後期プロモーターまたはワクシニアウイルス7.5Kプロモーターなどを使用できる。組換えDNA法または合成法によって得られるプロモーターも、本発明ポリヌクレオチドの転写に備えて使用することができる。
【0140】

好適な発現ベクターは通例、発現起点(origin of expression)、プロモーターおよび形質転換された細胞の表現型選択を可能にする特殊な遺伝子を含み、例えば細菌における発現のためのT7系発現ベクター[Rosenbergら,Gene 1987,56,125]、哺乳類細胞における発現のためのpTEJ−8、pUbi1Z、pcDNA−3およびpMSXND発現ベクター[LeeおよびNathans,J.Biol.Chem.1988,263,3521]、昆虫細胞における発現のためのバキュロウイルス由来ベクター、および卵母細胞発現ベクターPTLN[Lorenz C,Pusch MおよびJentsch TJ著「Heteromultimeric CLC chloride channels with novel properties(新規な特性をもつヘテロ多量体型CLC塩素イオンチャネル)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993,93,13362−13366]などが挙げられる。
【0141】
好ましい一態様として、本発明の細胞は、真核細胞、例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞、卵母細胞または酵母細胞である。本発明の細胞は、HEK293細胞などのヒト胎児腎臓(HEK)細胞、BHK21細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞(XLO)であってよいが、これらに限定されるわけではない。もう一つの態様としては、本発明の細胞は、真菌細胞、例えば糸状菌細胞である。もう一つの好ましい態様として、本細胞は昆虫細胞であり、最も好ましくはSf9細胞である。他の好ましい本発明の哺乳類細胞はPC12、HiB5、RN33b細胞系およびヒト神経前駆細胞である。ヒト細胞が最も好ましい。
【0142】
初代または二次細胞の例としては、線維芽細胞、上皮細胞(乳腺上皮細胞および腸上皮細胞を含む)、内皮細胞、血液の固形成分(リンパ球および骨髄細胞を含む)、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋細胞、神経細胞、またはそれら細胞型の前駆体が挙げられる。本発明方法に有用な不死化ヒト細胞系の例としては、Bowesメラノーマ細胞(ATCC受託番号CRL9607)、Daudi細胞(ATCC受託番号CCL213)、HeLa細胞およびHeLa細胞の派生株(ATCC受託番号CCL2、CCL2.1、およびCCL2.2)、HL−60細胞(ATCC受託番号CCL240)、HT−1080細胞(ATCC受託番号CCL121)、Jurkat細胞(ATCC受託番号TIB152)、KB癌腫細胞(ATCC受託番号CCL17)、K−562白血病細胞(ATCC受託番号CCL243)、MCF−7乳癌細胞(ATCC受託番号BTH22)、MOLT−4細胞(ATCC受託番号1582)、Namalwa細胞(ATCC受託番号CRL1432)、Raji細胞(ATCC受託番号CCL86)、RPMI8226細胞(ATCC受託番号CCL155)、U−937細胞(ATCC受託番号CRL1593)、WI−38VA13亜系統2R4細胞(ATCC受託番号CLL75.1)、2780AD卵巣癌細胞(Van der Blickら,Cancer Res.1988,48,5927−5932)およびヒト細胞と別の種の細胞との融合によって作出されるヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。WI−38(ATCC受託番号CCL75)およびMRC−5(ATCC受託番号CCL171)などの二次ヒト線維芽細胞株も使用できる。
【0143】
本発明の細胞が真核細胞である場合、異種ポリヌクレオチドの取り込みは、具体的には、感染(ウイルスベクターを使用)、トランスフェクション(プラスミドベクターを使用)、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポフェクションまたは当技術分野で知られる他の物理的化学的方法によって行なうことができる。
【0144】
より好ましい態様として、本発明の単離されたポリヌクレオチド配列および/または本発明の組換え発現ベクターは、細胞の不死化および/またはトランスフォーメーションを媒介することができる少なくとも一つのDNA分子を含む哺乳類宿主細胞、神経前駆細胞、星状膠細胞、T細胞、造血幹細胞、非分裂細胞または大脳内皮細胞にトランスフェクトされる。
【0145】
宿主細胞における内因性遺伝子の活性化は、調節要素を導入することによって、具体的には、本発明のニューブラスチンポリペプチドをコード化する内因性遺伝子の転写をもたらすことができるプロモーターを導入することによって、達成することができる。
【0146】
医薬組成物
もう一つの側面として本発明は、治療有効量の本発明ポリペプチドを含んでなる新規医薬組成物を提供する。
【0147】
本発明のポリペプチドは、治療用として、任意の便利な形態で投与することができる。好ましい一態様として、本発明のポリペプチドは、1つまたは複数の佐剤、賦形剤、担体および/または希釈剤と共に、当技術分野で知られる従来の方法を使って当業者が製造する医薬組成物に組み込まれる。
【0148】
上記の医薬組成物は、本発明のポリペプチドまたはその抗体を含みうる。本組成物は単独でまたは1つもしくは複数の薬剤、薬物またはホルモンと組み合わせて投与することができる。
【0149】
本発明の医薬組成物は、例えば経口、静脈内、筋肉内、動脈間(interarterial)、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸(anteral)、局所外用、舌下または直腸適用、口腔内、膣、眼窩内、脳内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、槽内、嚢内、肺内、経粘膜または吸入など(ただしこれらに限らない)の任意の適当な経路で投与できる。
【0150】
肺内送達の方法、装置および製薬は、例えば米国特許第5,785,049号、第5,780,019号および第5,775,320号(それぞれ参考文献としてここに援用する)などに記載されている。投与は製剤の定期的ボーラス注射によって行なうことができ、または体外(例えばIVバッグ)もしくは体内(例えば生崩壊性植込み剤、生体人工器官、または移植されたニューブラスチン産生細胞のコロニー)にあるリザーバーからの静脈内または腹腔内投与によって、より継続的に行なうことができる。例えば米国特許第4,407,957号、第5,798,113号および第5,800,828号(それぞれ参考文献としてここに援用する)などを参照されたい。肺内送達の方法および装置は、例えば米国特許第5,654,007号、第5,780,014号および第5,814,607号(それぞれ参考文献としてここに援用する)などに記載されている。
【0151】
具体的に述べると、本発明によるニューブラスチンの投与は、
(a)ポンプ(例えばAnnals of Pharmacotherapy,27:912(1993);Cancer,41:1270(1993);Cancer Research,44:1698(1984)(参考文献としてここに援用する)を参照されたい)、
(b)マイクロカプセル化(例えば米国特許第4,352,883号、第4,353,888号および第5,084,350号(参考文献としてここに援用する)を参照されたい)、
(c)持続放出ポリマー植込み剤(例えばSabel,米国特許第4,883,66号(参考文献としてここに援用する)を参照されたい)、
(d)マクロカプセル化(例えば米国特許第5,284,761号、第5,158,881号、第4,976,859号および第4,968,733号ならびにPCT特許出願公開WO92/19195、WO95/05452(それぞれ参考文献としてここに援用する)を参照されたい)、
(e)CNSへの裸のまたはカプセル化されていない細胞移植物(例えば米国特許第5,082,670号および第5,618,531号(それぞれ参考文献としてここに援用する)、
(f)皮下、静脈内、動脈内、筋肉内への、または他の適当な部位への注射、および
(g)カプセル剤、液剤、錠剤、丸剤、または持続放出製剤としての経口投与
を含めて、任意の適当な送達手段を使って達成できる。
【0152】
本発明の一態様では、ニューブラスチンが、CNSに、好ましくは脳室、脳実質、くも膜下腔または他の適当なCNS部位に、最も好ましくはくも膜下腔内に、直接送達される。
【0153】
もう一つの好ましい態様として、本発明者らは、皮下注射、静脈内投与または静脈内注入による全身送達を考えている。
【0154】
他の有用な非経口送達システムには、エチレン−ビニル酢酸コポリマー粒子、浸透圧ポンプ、植込み型注入システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、注射針による注射、ニードルレス注射、噴霧器、エアロゾル化装置、エレクトロポレーションおよび経皮パッチがある。
【0155】
製剤化と投与の技術に関するさらなる詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン)の最新版に見ることができる。
【0156】
活性成分は1日に1回または数回の投薬で投与することができる。現時点で考えられる適切な投薬量は、1投与あたり0.5ng/kg−体重〜約50μg/kgおよび1日あたり約1.0ng/kg〜約100μg/kgのニューブラスチンである。ニューブラスチン医薬組成物は、神経栄養因子の局所濃度を、約5ng/ml−脳脊髄液(「CSF」)〜25ng/ml−CSFにするべきである。
【0157】
投与される量はもちろん、処置される個体の年齢、体重および状態ならびに投与経路、剤形、投与計画および所望する結果に注意深く適応させなければならず、正確な投薬量はもちろん医師によって決定されるべきである。
【0158】
さらなる態様として、本発明のニューブラスチンポリペプチドは、下記治療法の項に詳述するように細胞系およびベクターを使用して、遺伝子送達によって投与することができる。そのような治療用細胞系を作成するために、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクター(例えばプラスミド、ウイルスまたは他の発現媒体)に挿入し、発現制御配列に対して、コード配列の発現が当該発現制御配列に適合する条件で達成されるような方法で、連結により、機能的に連結することができる。好適な発現制御配列には、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン、イントロンのためのスプライスシグナル、停止コドンが含まれ、それらは全て、mRNAの適切な翻訳が可能なように、本発明ポリヌクレオチドの正しい読み枠内に保たれる。発現制御配列にはリーダー配列、融合パートナー配列などの追加の成分を含めてもよい。
【0159】
プロモーターは具体的には構成的プロモーターでも誘導性プロモーターでもよい。構成的プロモーターとしては、合成プロモーター、ウイルスプロモーターまたは哺乳類細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばヒトユビキチンプロモーター)などが考えられる。好ましい一態様として、本治療用細胞系は、本発明のポリペプチドを発現させるヒト不死化神経細胞系になるだろう。移植について本発明者らは、約10〜1010細胞、より好適には10〜約10細胞を移植することを考えている。
【0160】
治療法
ポリヌクレオチドおよびタンパク質、そこから生産されるポリペプチド、ペプチド断片または誘導体、ならびにそれらタンパク質、ペプチドまたは誘導体に対する抗体に関する本発明は、動物(ヒトを含む)の生体の障害または疾患であって神経栄養剤の活性に反応するものを処置または軽減するために使用できる。
【0161】
本発明のポリペプチドは、ニューブラスチンポリペプチドに反応する病理学的過程を処置するために、例えば注射、植込みまたは経口摂取型医薬組成物などを介して直接使用できる。
【0162】
本発明のポリヌクレオチドは、その相補配列を含めて、本発明の神経栄養因子の発現に使用できる。これは、それら本発明のタンパク質、ペプチドまたは誘導体を発現させる細胞系によって、またはそれら本発明のタンパク質、ペプチドまたは誘導体をコード化するウイルスベクターによって、またはそれらタンパク質、ペプチドまたは誘導体を発現させる宿主細胞によって達成できる。これらの細胞、ベクターおよび組成物は、ニューブラスチンポリペプチドに反応する疾患過程に冒されている処置標的領域に投与できる。
【0163】
好適な発現ベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクシニアウイルスもしくは種々の細菌産生プラスミドから得ることができ、生物全体または標的とする器官、組織または細胞集団へのヌクレオチド配列のインビボ送達に使用できる。他の方法には、リポソームトランスフェクション、エレクトロポレーション、核その他の局在シグナルを含む担体ペプチドを用いたトランスフェクションおよび徐放系による遺伝子送達などがあるが、これらに限定されるわけではない。本発明のさらにもう一つの側面として、ニューブラスチン発現を阻害または増進するために、ニューブラスチン遺伝子またはその一部に相補的な「アンチセンス」ヌクレオチド配列を使用できる。
【0164】
さらにもう一つの側面として、本発明は、動物(ヒトを含む)の生体の障害または疾患であって神経栄養剤の活性に反応するものを処置または軽減する方法に関する。
【0165】
上記の障害または疾患は、具体的には、外傷、手術、虚血、感染、代謝性疾患、栄養不足、悪性腫瘍または毒物によって起こる神経系の損傷および遺伝性または特発性の過程でありうる。
【0166】
上記の損傷は、具体的には、感覚ニューロンまたは網膜神経節細胞(後根神経節のニューロンまたは次に挙げる組織中の任意のニューロンを含む)に起こっているものであってよい:膝、錐体および節状神経節、第八脳神経の前庭聴覚複合体、三叉神経節の上下顎葉の腹外側極、および中脳三叉神経核。
【0167】
本発明方法の好ましい一態様では、上記の疾患または障害が、例えば末梢神経、延髄および/または脊髄の外傷性損傷、脳虚血性ニューロン損傷、神経障害、特に末梢神経障害、末梢神経の外傷または損傷、虚血性脳卒中、急性脳損傷、急性脊髄損傷、神経系腫瘍、多発性硬化症、神経毒へのばく露、糖尿病または腎機能不全などの代謝性疾患、および感染性物質によって起こる損傷、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、パーキンソンプラス症候群、進行性核上麻痺(スチール・リチャードソン・オルセウスキー症候群)、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、シャイ・ドレーガー症候群(多系統萎縮症)、グァムパーキンソン痴呆症候群、筋萎縮性側索硬化症、または他の任意の先天性または神経変性疾患、および痴呆に関係する記憶障害などの、損傷したニューロンおよび外傷性ニューロンが関係する神経変性疾患である。
【0168】
好ましい一態様として、本発明者らは、感覚系および/または自律系ニューロンの処置を考えている。もう一つの好ましい態様として、本発明者らは、筋萎縮性側索硬化症(「ALS」)および脊髄筋萎縮症などの運動ニューロン疾患の処置を考えている。さらにもう一つの好ましい態様として、本発明者らは、本発明ニューブラスチン分子を使用して外傷性損傷後の神経回復を増進することを考えている。一態様として、本発明者らは、神経誘導管をニューブラスチンポリペプチドを含有するマトリックスと共に使用することを考えている。そのような神経誘導管は、例えば米国特許第5,834,029号(参考文献としてここに援用する)に開示されている。
【0169】
好ましい一態様として、本発明のポリペプチドおよび核酸(ならびにそれらを含んでなる医薬組成物)は、末梢神経障害の処置に使用される。本発明の分子による治療が考えられる末梢神経障害には、外傷誘発性の神経障害、例えば物理的損傷または疾患状態、脳への物理的損傷、脊髄への物理的損傷、脳損傷に伴なう脳卒中、および神経変性に関係する神経学的障害などよって起こるものなどがある。
【0170】
本発明者らは、化学療法誘発性の神経障害(タキソールまたはシスプラチンなどの化学療法剤の送達によって起こるもの)、毒素誘発性の神経障害、薬物誘発性の神経障害、ビタミン不足誘発性の神経障害、特発性神経障害および糖尿病性神経障害の処置も考えている。例えば米国特許第5,496,804号および第5,916,555号(それぞれ参考文献としてここに援用する)を参照されたい。
【0171】
本発明者らは、本発明のニューブラスチンヌクレオチドおよびニューブラスチンペプチドを使った、非神経障害、多発性単神経障害、多発神経障害(軸索性および脱髄性神経障害を含む)の処置も考えている。
【0172】
もう一つの好ましい態様として、本発明のポリペプチドおよび核酸(ならびにそれらを含む医薬組成物)は、眼の様々な障害(黄斑変性、網膜色素変性症、緑内障などの疾患に冒された患者における網膜中の光受容器損失を含む)の処置に使用される。
【0173】
本発明のもう一つの目的は、ヒトを含む哺乳動物の脳に生物活性型のニューブラスチンまたはニューブラスチンの前駆体(すなわち身体によって生物活性型のニューブラスチンに容易に変換されうる分子)を産生できるベクターまたは細胞を移植することによって、上記の疾患および障害に関係する変性変化を予防する方法を提供することであり、またさらに、ニューブラスチンを分泌する細胞は(例えば半透性膜に)カプセル化することもできる。
【0174】
細胞はヒトを含む哺乳類の脳への移植または埋植に使用するためにインビトロで生育させることができる。
【0175】
好ましい一態様として、本発明のポリペプチドをコード化する遺伝子を、例えば国際特許出願WO98/32869に記載の発現ベクターを用いて、適当な細胞系に(例えばHiB5やRN33bにような不死化ラット神経幹細胞系またはヒト不死化神経前駆細胞系に)トランスフェクトし、得られた細胞株をヒトを含む生体の脳内に植込んで、CNS中で本発明の治療用ポリペプチドを分泌させる。
【0176】
診断およびスクリーニング方法
ニューブラスチン核酸は、ある個体が、ニューブラスチン遺伝子の欠損(例えば遺伝によって、または異常な胚発生によって、または後天的なDNA損傷によって獲得されたニューブラスチン対立遺伝子の欠損など)に起因する神経障害を発生させる素因を持つかどうかを決定するために使用できる。その分析は、例えばニューブラスチン遺伝子内の欠失または点突然変異を検出することによって、またはそのような遺伝子欠損の素因の遺伝を特異的制限断片長多型で検出することによって、または患者から採取した核酸試料をニューブラスチン遺伝子に特異的な核酸プローブとハイブリダイズさせて当該核酸にハイブリダイズするそのプローブの能力を確認することにより正常なニューブラスチン遺伝子の有無を検出することによって、行なうことができる。
【0177】
特にニューブラスチン核酸は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。そのようなハイブリダイゼーション測定法は、ニューブラスチンタンパク質をコード化するmRNAのレベルの異常に関係する様々な異常、障害または疾患状態を検出、予知、診断または監視するために使用できる。ニューブラスチン核酸は、ニューブラスチン神経栄養因子依存的な生理過程の「マーカー」と解釈することができる。それらの過程には「正常な」生理過程(例えばニューロンの機能)および病的過程(例えば神経変性疾患)が含まれるが、これらに限らない。ニューブラスチンタンパク質および/またはニューブラスチンコード化mRNAのレベルの異常(すなわち上昇または欠乏)による特定患者部分集団の特徴づけは、新しい疾患分類につながりうる。ここに定義される「レベルの異常」とは、定量的または定性的手段によって決定される、対照試料またはその障害をもたない個体と比較した場合のレベルの増加または減少を意味する。
【0178】
本発明のニューブラスチン核酸およびニューブラスチンポリペプチドは、ニューブラスチン類似体(ニューブラスチンの小分子模倣体を含む)をスクリーニングし同定するためにも使用できる。考えられる一態様として、本発明は、ニューロブラスチン(neuroblastin)媒介性の生物学的効果を誘導する候補化合物を同定する方法であって、ニューブラスチンと接触させると検出可能な産物を発現させる試験細胞を用意し、その細胞を候補化合物にばく露し、上記検出可能な産物を検出するという各段階を含む方法を提供する。上記検出可能な産物の発現は、ニューロブラスチン媒介性の生物学的効果を誘導する当該候補化合物の能力を示す。
【0179】
さらに本発明のニューブラスチン核酸およびニューブラスチンポリペプチドは、近縁の新規遺伝子配列およびそれらによってコードされるタンパク質(対立遺伝子変異体および一塩基多型(「SNP」)を含む)を同定するために、DNAチップまたはタンパク質チップ上で、もしくはコンピュータープログラムで、使用することができる。そのような方法は、例えば米国特許第5,795,716号、第5,754,524号、第5,733,729号、第5,800,992号、第5,445,934号、第5,525,464号(それぞれ参考文献としてここに援用する)などに記載されている。
【実施例】
【0180】
実施例1:ニューブラスチン核酸の単離法
方法1:ニューブラスチン遺伝子に関するヒト胎児脳cDNAの迅速スクリーニング
GenBankに提出された2つのHGTS(high throughput genomic sequence)(受諾番号AC005038およびAC005051)に、ヒトパーセフィンとの相同性によって、290bpの断片が同定された。その290bp断片の核酸配列から、2つのニューブラスチン特異的プライマーを合成した。ニューブラスチントップ鎖プライマー(「NBNint.sence」)の配列は5’−CCT GGC CAG CCT ACT GGG−3’[配列番号17]とした。ニューブラスチンボトム鎖プライマー(「NBNint.antisence」)の配列は、5’−AAG GAG ACC GCT TCG TAG CG−3’[配列番号18]とした。これらのプライマーを使って、96ウェルのPCR反応を行なった。
【0181】
500,000個のcDNAクローンから得たプラスミドDNAを含む96ウェルマスタープレートには、1ウェルあたり約5000クローンが負荷された。96ウェルサブプレートは、1ウェルあたり50クローンの大腸菌DH10Bグリセロール保存液を含むものを使用した。
【0182】
ニューブラスチン核酸はポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)法を使った3ラウンドの増幅によって同定された。増幅は試料中の核酸のコピー数を増加させる。
【0183】
マスタープレートスクリーニング:上記の96ウェルPCRスクリーニング法を使って、ヒト胎児脳cDNAマスタープレートを、ヒトニューブラスチンcDNAを単離するために、遺伝子特異的プライマーでスクリーニングした。
【0184】
30ngのヒト胎児脳cDNA(6ng/μl;Origene Technologies)をマスタープレートの対応するウェルから取り、次の試薬を含む総液量25μlの反応液に入れた:上記2つの遺伝子特異的プライマー(すなわちNBNint.senceおよびNBNint.antisence)各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV,英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)および0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)。
【0185】
PCR熱サイクル反応は次の手順と条件で行なった。まずDNAを94℃で3分間変性させた後、94℃で各1分間の変性、55℃で1分間のアニーリング、72℃で90秒間の第一伸長を35サイクル行ない、最終伸長を72℃で5分間行った。96の個々のPCR反応の産物を、臭化エチジウム染料を含む2%アガロースゲルを使ったゲル電気泳動によって分析した。あるウェルにみられた102bpの陽性PCR産物は、ただ一つの96ウェルサブプレートに対応することがわかった。
【0186】
その102bp核酸断片は次の配列[配列番号13]を持っていた。
【0187】
【化5】

サブプレートスクリーニング:上記2つの遺伝子特異的プライマー各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV,英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)および0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)を含む総液量25μlの反応液に、対応するサブプレートウェルから取った1μlのグリセロール保存液を入れ、PCRによる増幅を行なうことにより、96ウェルヒト胎児脳サブプレートをスクリーニングした。
【0188】
マスタープレートスクリーニングについて記載したものと同じPCR熱サイクル条件を使用した。96の個々のPCR反応を、臭化エチジウムを含む2%アガロースゲルで分析し、上記の102pbのPCR断片を与える陽性ウェルを同定した。
【0189】
コロニーPCR:陽性サブプレートウェルから取ったグリセロール保存液1mlをルリアブロスに1:100希釈した。次に、上記の希釈液1mlおよび10mlを、ルリアブロス(「LB」)と100μg/mlカルベニシリンを含む2枚の別個の寒天プレートに播種した。次にそのLBプレートを30℃で終夜培養した。これらのプレートから96個のコロニーを拾って、25μlの最終液量に上記2つの遺伝子特異的プライマー各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV; 英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)、0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)を含む新しい96ウェルPCRプレートに入れた。
【0190】
マスタープレートスクリーニングについて記載したものと同じPCR熱サイクル条件を使用した。次に、96の個々のPCR反応を、臭化エチジウムを含む2%アガロースゲルで分析した。次いで上記102bp断片を含む陽性コロニーを同定した。
【0191】
この陽性コロニーから調製したプラスミドDNAの配列決定により、861bp[配列番号8]の完全長cDNAが明らかになった。このcDNAはプレプロニューブラスチン[配列番号9]をコードしていた。BigDye(登録商標)ターミネーターサイクルシークエンシングキット(米国PE Applied Biosystems)を用いて、自動DNA配列決定を行なった。配列決定用ゲルはABI Prism 377(米国PE Applied Biosystems)で泳動した。
【0192】
方法2:ヒト脳からのニューブラスチンcDNAのクローニング
完全長ニューブラスチンcDNAまたはcDNA断片を増幅するもう一つの方法は、ベクター特異的またはアダプター特異的プライマーと組み合わせた上記ニューブラスチン特異的プライマーNBNint.senceおよびNBNint.antisenceならびにRACE(Rapid Amplification of cDNA ends)法により、例えばMarathon cDNA増幅キット(米国Clontech Laboratories,カタログ番号K1802−1)を使って行なうことができる。
【0193】
完全長ニューブラスチンcDNAの増幅には、ヒト全脳Marathon−Ready cDNA(米国Clontech Laboratories,カタログ番号7400−1)を使用することができる。増幅に有用なプライマーとしては、Marathon−Ready cDNAに同梱されているアダプタープライマーAP1と組み合わせたニューブラスチントップ鎖プライマー5’−ATGGAACTTGGACTTGG−3’[配列番号19](「NBNext.sence」)およびニューブラスチンボトム鎖プライマー5’−TCCATCACCCACCGGC−3’[配列番号20](「NBNext.antisence」)が挙げられる。代替トップ鎖プライマー5’−CTAGGAGCCCATGCCC−3’[配列番号28]も使用した。さらにもう一つの代替ボトム鎖プライマー5’−GAGCGAGCCCTCAGCC−3’[配列番号33]も使用できる。同様に、代替ボトム鎖プライマー配列番号24および26も使用できる。
【0194】
方法3:ヒト脳からのニューブラスチンcDNAのクローニング
ニューブラスチンcDNAをクローニングするもう一つの方法は、ここに記載する1つまたは複数のニューブラスチンプローブを使って(図1に例示するように)成人または胎児脳ライブラリーをスクリーニングすることである。これらのライブラリーには、λgt11ヒト脳(米国Clontech Laboratories,カタログ番号HL3002b)またはλgt11ヒト胎児脳(米国Clontech Laboratories,カタログ番号HL3002b)が含まれる。
【0195】
方法4:ニューブラスチン遺伝子に関するマウス胎児cDNAの迅速スクリーニング
ニューブラスチン遺伝子の迅速スクリーニングを次の方法で行なった。500,000個のcDNAクローンから得たプラスミドDNAを含む96ウェルマスタープレートには、1ウェルあたり約5000クローンが負荷された。96ウェルサブプレートは、1ウェルあたり50クローンの大腸菌グリセロール保存液を含むものを使用した。問題の遺伝子(すなわちニューブラスチン)を同定するために、PCRによる3ラウンドの増幅を行なった。
【0196】
マスタープレートスクリーニング:マウスニューブラスチンcDNAを単離するために、遺伝子特異的プライマーを用いた96ウェルPCRにより、マウスフェトル(fettle)cDNAマスタープレートをスクリーニングした。次に2つのプライマーを合成した:
(1)ニューブラスチンC2プライマー(NBNint.sence):5’−GGCCACCGCTCCGACGAG−3’[配列番号21]および(2)ニューブラスチンC2asプライマー(NBNint.antisence):5’−GGCGGTCCACGGTTCTCCAG−3’[配列番号22]。これら2つの遺伝子特異的プライマーを使用することにより、220bpの陽性PCR産物が同定された。この220bp核酸は次の配列[配列番号14]を持っていた。
【0197】
【化6】

次に、96ウェルPCR反応を以下の方法で行なった。30ngのマウス胎仔脳cDNA(6ng/μl;Origene Technologies)をマスタープレートの対応するウェルから取り、上記2つの遺伝子特異的プライマー(すなわちC2プライマー(NBNint.sence)およびC2asプライマー(NBNint.antisence))各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV,英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)および0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)を含む総液量25μlの反応液に入れた。
【0198】
次のPCR熱サイクル条件を使用した:94℃で3分間の初期変性の後、94℃で各1分間の変性、55℃で1分間のアニーリング、72℃で90秒間の伸長を35サイクル、そして72℃で5分間の最終伸長。96の個々のPCR反応を、臭化エチジウム染料を含む2%アガロースゲルで分析した。あるウェルにみられた220bpの陽性PCR産物は、ただ一つの96ウェルサブプレートに対応することがわかった。次に、96の個々のPCR反応を、臭化エチジウム染料を含む2%アガロースゲルで分析した。同定された220bpの陽性PCR産物は、96ウェルサブプレートのただ一つのウェルに対応した。
【0199】
サブプレートスクリーニング:上記2つの遺伝子特異的プライマー各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV,英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)および0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)を含む最終総液量25μlの反応液に、対応するサブプレートウェルから取った1μlのグリセロール保存液を入れてPCRによる増幅を行なうことにより、96ウェルマウス胎児脳サブプレートをスクリーニングした。PCR熱サイクルは、マスタープレートスクリーニングについて記載した条件に従って行なった。
【0200】
次に、96の個々のPCR反応を、臭化エチジウムを含む2%アガロースゲルで分析し、上記の220bp断片を生成する陽性ウェルを同定した。
【0201】
コロニーPCR:陽性サブプレートウェルから取ったグリセロール保存液1mlをルリアブロス(LB)に1:100希釈した。次に、上記の希釈液1mlおよび10mlを、100μg/mlカルベニシリンを含む2枚の別個のLBプレートに播種し、30℃で終夜培養した。合計96個のコロニーを単離し、25μlの最終液量に上記2つの遺伝子特異的プライマー各0.2mM、1×標準PCR緩衝液(バッファーV; 英国Advanced Biotechnologies)、0.2mMの各dNTP(Amersham−Pharmacia)、0.1M GC−Melt(米国Clontech Laboratories)および0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(5U/μl;英国Advanced Biotechnologies)を含んでいる96ウェルPCRプレートに、上記96個のコロニーを移した。
【0202】
PCR熱サイクルを上記の条件に従って行なった(下記「マスタープレート」の項を参照)。96の個々のPCR反応を、臭化エチジウムを含む2%アガロースゲルでのゲル電気泳動によって分析した。220bp断片の存在によって、陽性コロニーを同定した。この陽性コロニーからプラスミドを調製した。そのクローンを、BigDye(登録商標)ターミネーターサイクルシークエンシングキットとAmpliTaq DNAポリメラーゼとを用いる自動DNA配列決定によって配列決定した。配列決定用ゲルはABI Prism 377(米国PE Applied Biosystems)で泳動した。その結果得られたこのクローンの配列から、2136bpの完全長cDNA[配列番号15]が明らかになった。このcDNAは、マウスプレプロニューブラスチンポリペプチドをコードする配列番号16の予想アミノ酸配列を持つオープンリーディングフレームを含む。
【0203】
実施例2:ゲノムニューブラスチンのクローニング
上述のように本出願人らは、GenBankに登録された2つのヒトBACクローン(受諾番号AC005038およびAC005051)に、ペーセフィンおよびパーセフィンの隣接配列に相同な領域を有する290bpの核酸断片を同定した。出願人らは、Lasergene Software(DNAStar,Inc.)を使って、さらなるニューブラスチン核酸をコード化する核酸をクローニングする目的で、上記861bpの予想配列を使って追加のプライマーを設計した。ゲノムDNAでのPCR反応を用いてニューブラスチン遺伝子をクローニグするために、2対のプライマーを使用した。それら2対のプライマーを、次に示す。
【0204】
第1プライマー対
【0205】
【化7】

第2プライマー対
【0206】
【化8】

第1プライマー対を使ったところ、Clontech Laboratoriesから購入したヒトゲノムDNAの調製物(カタログ番号6550−1)から、887bpのDNA断片が増幅された。
【0207】
PCRプロトコール:PCRはExpandTMハイフィデリティ(High Fidelity)PCRシステム(Boehringer Mannheim)をバッファー1と共に使用して行なった。PCR反応混合物には、50μlの総液量で5%ジメチルスルホキシド(DMSO)と17.5pmolの各dNTPを添加した。熱サイクルは、94℃で2分間の前変性段階の後、それぞれ94℃で10秒間および68℃で1分間の2段階サイクルを35回行なった。68℃で5分間のインキュベーションによって熱サイクルを停止した。熱サイクルはPTC−255 DNAエンジンテトラッド(Engine Tetrad)サーモサイクラー(マサチューセッツ州MJ Research)で行なった。PCR産物を2%アガロース(FMC)でのゲル電気泳動によって分析し、写真撮影した。
【0208】
ヒトゲノムDNAから第1プライマー対を使って増幅された887bp断片をpCRIIベクター(Invitrogen)にクローニングし、XL1−Blueコンピテント大腸菌細胞(Stratagene)に形質転換した。得られたプラスミド(ニューブラスチン−2と呼ぶ)をサーモシケナーゼ(Termosequenase)(Amersham Pharmacia Biotech)を使って配列決定した。配列決定反応生成物を、ALFExpress自動配列決定装置(Amersham Pharmacia Biotech)での電気泳動によって分析した。
【0209】
第2のプライマー対(上記の第1プライマー対)を用いるヒトゲノムDNAのPCR増幅によって得られた断片を配列決定したところ、オープンリーディングフレームの3’末端に追加された42bp領域が明らかになった。その完全長配列を、他の神経栄養因子類の核酸の配列と比較すると共に、NetgeneおよびGene Markソフトウェア(Brunakら,J.Mol.Biol.1991,220,49−65;Borodovskyら,Nucl.Acids Res.1995,23,3554−62)を使って、考えうるスプライス接合部とコードである可能性が高い領域とを同定する遺伝子発見ソフトウェアプログラムでエキソン−イントロン境界をマッピングすることによって分析した。エキソン−イントロン境界は、上記の迅速スクリーニングで得たcDNAによって確認された。
【0210】
図7に図示するように、得られたニューブラスチン遺伝子は70bpのイントロンで分離された2つのエキソンを持つ。それらのエキソンは全体として完全長ニューブラスチンポリペプチドの予想アミノ酸配列を持つ。予想されるcDNA[配列番号3]は、238アミノ酸残基[配列番号4]をコード化するオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでいる。ニューブラスチン−2クローンはプロニューブラスチンの全コード配列を含んでいた。この遺伝子によってコード化されるアミノ酸配列は3つのタンパク質、パーセフィン、ニュールツリンおよびGDNFに高い相同性を示した。
【0211】
実施例3:ニューブラスチン核酸の発現
ニューブラスチンRNAの発現は、げっ歯類およびヒトの神経組織と非神経組織の両方に、様々な未成熟および成熟発育段階で、下記の技術を用いて検出された。
【0212】
RT−PCRを用いてニューブラスチンRNA発現を検出する方法:配列番号1であると確認されたニューブラスチンDNA配列に基づいて、次のプライマーを合成した:(1)ニューブラスチンC2プライマー5’−GGCCACCGCTCCGACGAG−3’[配列番号21]および(2)ニューブラスチンC2asプライマー5’−GGCGGTCCACGGTTCTCCAG−3’[配列番号22]。このプライマーセットを使って、成人およびヒト胎児全脳mRNAからDNA断片をRT−PCR増幅した。この反応によって生成したDNA断片の中に220bpの断片があった。220bpのDNA断片が同定されたことから、ニューブラスチン遺伝子は成人および胎児の脳組織で発現されることが確認された。220bpのDNA断片は、これらのプライマーを用いてゲノムDNAからも増幅された。
【0213】
ノーザンブロットハイブリダイゼーションによってニューブラスチンRNA発現を検出する方法:成人組織由来のポリARNAのノーザンブロットを商業的供給者(米国Clontech Laboratories)から購入し、32P標識ニューブラスチンcDNAでプローブした。この標識ニューブラスチンcDNAは上記実施例1に記載の方法に従って調製した。
【0214】
プローブの調製:ニューブラスチン核酸DNA断片(配列番号8のヌクレオチド296−819)を、ハイブリダイゼーションプローブとして使用するために、Rediprime IIラベリングキット(Amersham;カタログ番号RPN1633)により、製造者の推奨するとおりに標識した。簡単に述べると、DNA試料を、45μlの10mM TE緩衝液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に2.5〜25ngの濃度になるように希釈した。次に、その試料を沸騰水浴中95〜100℃に5分間加熱し、その試料を氷上に5分間置いて急冷した後、それを短時間遠心分離して内容物を反応チューブの底に移動させることにより、DNAを変性させた。変性させたDNAの全量を、dATP、dGTP、dTTP、エキソヌクレアーゼフリーのクレノウ酵素およびランダムプライマーの緩衝溶液が乾燥安定化された形で入っている反応チューブに、5μlのRedivue[32P]dCTP(Amersham Pharmacia Biotech Ltd.)と共に加えた。ピペットチップを溶液中で動かして上下に2回ピペット操作することによってその溶液を混合し、その反応混合物を37℃で10分間インキュベートした。5μlの0.2M EDTAを添加することによって標識反応を停止した。ハイブリダイゼーションプローブとして使用するために、そのDNA試料を95〜100℃に5分間加熱した後、そのDNA試料を氷上で5分間急冷することにより、標識DNAを一本鎖に変性させた。そのチューブを遠心分離し、その内容物をよく混合した。最後に、一本鎖DNAプローブを、ヌクレオチド除去キット(Nucleotide Removal Kit; Qiagen)を使って精製した。
【0215】
ハイブリダイゼーション技術:調製済のノーザンブロットを商業的供給者から購入し(「マルチプル・ティシュー・ノーザン・ブロッツ(Multiple Tissue Northern Blots)」米国Clontech Laboratories;カタログ番号7760−1および7769−1)、製造者の指示に従い、上で調製したニューブラスチン32P標識プローブを使ってハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションには、ExpressHyb溶液(米国Clontech Laboratories)を使用し、約3ng/mlの濃度の標識プローブを使用した。ExpressHyb溶液を68℃に加熱した後、撹拌してすべての沈殿物を溶解させた。各ノーザンブロットメンブレン(10×10cm)を、製造者の指示に従い、Hybaidハイブリダイゼーションオーブンにて、少なくとも5mlのExpressHyb溶液中、68℃で30分間プレハイブリダイズした。ニューブラスチン32P標識プローブを95〜100℃で2時間変性させ、次に氷上で急冷した。14μlの標識プローブを5mlの新しいExpressHybに加え、よく混合した。標識DNAプローブを含有する上記5mlの新しいExperssHyb溶液をブロットの上に均等に分配することにより、プレハイブリダイゼーションに使用したExpressHyb溶液を置き換えた。ブロットをHybaidハイブリダイゼーションオーブン中、68℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、ブロットを濯ぎ、低ストリンジェンシー(0.05%SDSを含む室温の2×SSC緩衝液)で数回洗浄した後、高ストリンジェンシー洗浄(0.1%SDSを含む50℃の0.1×SSC)を行なった[20×SSCは0.3M NaCl/0.3Mクエン酸Na(pH7.0)である]。そのブロットを、増感紙を使って−80℃でHyperfilm MP(Amersham Pharmacia Biotech Ltd.)に接触させた。
【0216】
このノーザンブロットハイブリダイゼーション実験の結果を図1に示す。図1A(左)および図1B(右)は、実施例3に記述したように32P標識ニューブラスチンcDNAでプローブしたポリARNAのノーザンブロットである。マーカーは1.35キロ塩基対(「kb」)、2.4kb、4.4kb、7.5kbおよび9.5kbのサイズのポリヌクレオチドを表す。図1Aのメンブレンは、様々な成人組織から抽出されたmRNAで調製したものである。このノーザンブロットハイブリダイゼーション分析の結果より、本出願人らは、ニューブラスチンmRNAは多くの成人組織で発現されると結論する。最高レベルのニューブラスチン発現は、心臓、骨格筋および膵臓に検出される。図1Bのメンブレンは、成人脳の様々な領域から抽出されたRNAを使って調製したものである。成人脳内では、最高レベルの発現は尾状核および視床に見られる。約5kbのmRNA転写物が、脳内で発現されるニューブラスチンmRNAの主な形である。
【0217】
組織におけるインサイチューハイブリダイゼーションによってニューブラスチンRNA発現を検出する方法
以下の技術は動物組織(例えばげっ歯類組織)におけるニューブラスチンRNAの発現をニューブラスチンアンチセンスプローブによって測定するために使用される。
【0218】
マウスにおける発現
組織試料の調製:同期妊娠(time−pregnant)マウス(B&K Universal,スウェーデン・ストックホルム)を、妊娠13.5日または18.5日に頸椎脱臼によって屠殺した。滅菌条件下での切開によって胚を摘出し、直ちに4%パラホルムアルデヒド(「PFA」)を含む0.1Mリン酸緩衝液(PB)の溶液に24〜30時間浸漬した後、PFAから取り出してPBS中に保存した。その組織を30%ショ糖の溶液に浸漬し、次にTissueTech(OCT化合物、Sakura Finetek USA,カリフォルニア州トランス)に包埋した。6系列の冠状または矢状切片(各12μm)をクリオスタットで切断し、正に荷電したガラススライド上に解凍してのせた。新生仔頭部/脳(P1、P7)を胚段階と同じプロトコールで固定し、成体脳組織は解剖して直ちにドライアイスで凍結し、前もって包埋を行なわずにクリオスタットで切断した。
【0219】
ニューブラスチンリボプローブの調製:アンチセンスニューブラスチンRNAプローブ(以下「ニューブラスチンリボプローブ」という)を以下のように作成した。マウスニューブラスチンcDNA配列[配列番号15]のヌクレオチド1109〜1863をBlueScriptベクター(Stratagene)にサブクローニングした。得られたプラスミドをEcoRI制限エンドヌクレアーゼで切断して直線状DNAにした。そのEcoRI DNA断片を、T3 RNAポリメラーゼとジゴキシゲニン(「DIG」)RNAラベリングキットにより、製造者(Boehringer Mannheim)の指示に従ってインビトロで転写した。
【0220】
ハイブリダイゼーション:クリオスタット切片を4%PFAで10分間固定し、10mg/mlのプロテイナーゼKで5分間処理し、70%および95%エタノールで、それぞれ5分間と2分間、順次脱水した後、風乾した。1μg/mlのDIG標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオンホルムアミド、10%の50%デキストラン硫酸溶液、1%デンハート液、250μg/ml酵母tRNA、0.3M NaCl、20mM Tris−HCl(pH8)、5mM EDTA、10mM NaPO、1%サルコシル)を80℃に2分間加熱し、各切片に適用した。次に、それらの切片をパラフィルムで覆い、55℃で16〜18時間インキュベートした。
【0221】
翌日、それらの切片を、高ストリンジェンシー(50%ホルムアミドを含む2×SSC)で55℃で30分間洗浄した後、RNase緩衝液中で洗浄し、20μg/mlのRNase Aと共に37℃で30分間インキュベートした。DIG標識プローブを検出するために、切片をブロッキング溶液(0.1%Tween−20および10%熱非働化ヤギ血清を含むPBS)中で1時間プレインキュベートした後、アルカリホスファターゼ結合抗DIG抗体(Boehringer Mannheim)の1:5000希釈液と共に4℃で終夜インキュベートした。翌日、各切片に、0.1%Tween−20を含むPBSでの2時間の洗浄を4回行ない、次にNTMT緩衝液(100mM NaCl、100mM Tris−HCl(pH9.5)、50mM MgCl、0.1%Tween−20)中で10分間の洗浄を2回行なった。次に、それらの切片を、0.5mg/mlのレバミゾールを含むBMパープル基質中で48時間インキュベートした。PBS中で洗浄することによって、発色反応を停止した。切片を風乾し、DPX(スウェーデンKEBO−lab)を使ってカバーガラスで覆った。
【0222】
このインサイチューハイブリダイゼーション反応の結果を表1に記載する。
【0223】
(表1)
【0224】
【表1】

表1に示すように、胎生13.5日(「E13.5」)で、ニューブラスチンは脊髄と後脳に発現され、前脳に弱く発現された。ニューブラスチン発現は、発生中の網膜および感覚神経節(後根神経節および三叉神経節(V))でも検出された。神経系の外では、腎臓、肺および腸に弱い発現が認められ、ニューブラスチンがこれらの組織でも発現されることが示された。
【0225】
胎生18.5日(「E18.5」)では、ニューブラスチンは、三叉神経節(V)に最も顕著に発現された。ニューブラスチン発現は、網膜、線条体および皮質にも検出された。また発現は歯原基にも見られた。
【0226】
再び表1について述べると、E18.5の時点から生後1日および7日までは、増加したニューブラスチン発現が皮質、線条体および三叉神経節(V)に見られた。ニューブラスチン発現は、皮質の外側の層の方が、皮質の内側の層よりも顕著だった。P7では、生後1日と同じ構造に発現が見出されたが、それに加えて、海馬、特に歯状回および小脳にもニューブラスチン発現が見出された。ネズミ成体脳では、歯状回にニューブラスチンが強く発現され、試験した他の組織ではニューブラスチン発現は極めて低いレベルか、検出不可能だった。
【0227】
ラットにおける発現
以下の実験では、アルカリホスファターゼ標識オリゴデオキシヌクレチドニューブラスチンアンチセンスプローブによるラット組織のハイブリダイゼーションを説明する。
【0228】
組織試料の調製:ペントバルビタール麻酔後に妊娠ウィスターラット(デンマーク、Mollegaard Breeding)からラット胚(E14)を得た。出生後ラット(P0、P7、成体)は断頭によって屠殺した。解剖した脳および頭部全体を直ちに冷0.9%NaClに浸漬し、新鮮凍結し、クリオスタットで20μmに切片化した(冠状および矢状切片、10系列)。
【0229】
インサイチューハイブリダイゼーション:2系列の切片を、アンチセンスアルカリホスファターゼ(AP)結合オリゴデオキシヌクレオチドプローブ(5’−NCA GGT GGT CCG TGG GGG GCG CCA AGA CCG G−3’[配列番号27]、オリゴ番号164675、デンマーク・DNA Technology)を使ってハイブリダイズさせた。このプローブは、配列番号15のマウスニューブラスチンcDNAの塩基1140〜1169に相補的である。
【0230】
ハイブリダイゼーションに先立って、切片を室温で風乾し、55℃で10分間加熱した後、96%エタノールで4℃で終夜処理した。次に、それらの切片を風乾し、ハイブリダイゼーション媒質(5.0pmolプローブ/ml)中39℃終夜インキュベートした(Finsenら,Neurosci.1992,47,105−113;Westら,J.Comp.Neurol.1996,370,11−22)。
【0231】
ハイブリダイゼーション後の処理は、1×SSC(0.15M NaCl,0.015Mクエン酸Na)中55℃で30分間のすすぎを3回の後、室温の Tris−HCl(pH9.5)中で10分間のすすぎを3回行ない、次にAP発色剤を添加することからなった。AP発色剤は使用直前に調製し、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT,Sigma)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP,Sigma)および Tris−HCl−MgCl緩衝液(pH9.5)を含んだ(Finsenら,Neurosci.1992,47,105−113)。AP発色は暗所室温にて48時間行なった。切片を蒸留水で濯ぐことによって、発色反応を停止した。切片をアセトン系列中で脱水し、キシレン−フェノールクレオソート(英国Allchem)中で軟化させ、キシレンで透徹し、Eukitt(デンマークBie & Berntsen)を使ってカバーガラスで覆った。
【0232】
対照反応は、(1)ハイブリダイゼーションに先立って切片をRNase A(50μg/ml,スウェーデン・Pharmacia)で前処理すること、(2)100倍過剰の非標識プローブを使って切片をハイブリダイズさせること、および(3)ハイブリダイゼーション緩衝液のみを使って切片をハイブリダイズさせることからなった。このハイブリダイゼーション反応の結果を表2に記載する。
【0233】
(表2)
【0234】
【表2】

胎生14日(E14)で、ニューブラスチンはラット胚の前脳、後脳および脊髄に弱く発現された。ニューブラスチンmRNAは眼(網膜)、後根神経節、三叉神経節(V)ならびに腎臓、肺、心臓、肝臓および腸でも検出された。新生仔(P0)ラットでは、顕著なニューブラスチン発現が、皮質および線条体に認められた。ニューブラスチン発現は、嗅球および海馬でも検出された。7日齢(P7)ラットでは、ニューブラスチンが皮質、線条体、嗅球および小脳に発現された。顕著なシグナルが海馬に見られた。成体ラットの場合、脳のほとんどの領域で、ニューブラスチン発現は、極めて低いレベルまたは検出不可能なレベルだった。弱いシグナルが視床核に検出され、顕著なニューブラスチン発現が海馬に検出された。
【0235】
実施例4:ニューブラスチンポリペプチド
配列番号8に同定されるオープンリーディングフレームまたはコード領域(CDS)は、プレプロポリペプチド(「プレプロニューブラスチン」と呼ぶ)をコード化する。このオープンリーディングフレームから予測されるアミノ酸配列を配列番号9に示す。配列番号9に基づき、ニューブラスチンポリペプチドの3つの変異体が同定された。それらの変異体には、以下のポリペプチドが含まれる:
(i)配列番号10のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN140と呼ばれるポリペプチド、
(ii)配列番号11のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN116と呼ばれるポリペプチド、
(iii)配列番号12のアミノ酸配列を有し、本明細書でNBN113と呼ばれるポリペプチド。
【0236】
同様に、(配列番号4の)アミノ酸配列を有するプレプロポリペプチドをコード化する配列番号3に同定されるコード領域(CDS)に基づいて、ニューブラスチンの3つの変異体が同定された。それらの変異体には、以下のポリペプチドが含まれる:
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(ii)配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(iii)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【0237】
Clustal W(1.75)による多重配列整列に基づき、配列番号9をGDNF、パーセフィンおよびニュールツリンと整列させた。このアラインメントを表3に示す。
(表3)
(ニューブラスチンとパーセフィン、ニュールツリンおよびGDNFとのアミノ酸配列比較)
【0238】
【表3】

★ 完全に保存された単一の残基を持つ位置を示す。
: 次の「強(strong)」グループの一つが完全に保存されていることを示す:STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYW。
. 次の「弱(weaker)」グループの一つが完全に保存されていることを示す:CSA、ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、VLIM、HFY。
【0239】
表3に示すアミノ酸配列アラインメントから、ニューブラスチンは7つの保存されたシステイン残基を、TGF−βスーパーファミリー内で保存されている位置に持つことがわかる。一態様として、好ましいニューロブラスチンポリペプチドは、配列番号2の8、35、39、72、73、101および103位、または配列番号4および9の43、70、74、107、108、136および138位に保存された(7つの)システイン残基を含有する。これら7つの保存されたシステイン残基は、TGF−βスーパーファミリー内で3つの単量体ジスルフィド結合(例えば配列番号2ではシステイン残基8−73、35−101および39−101間、また例えば配列番号4および9ではシステイン残基43−108、70−136および74−138間が考えられる)と、1つの単量体間ジスルフィド結合(例えば配列番号2ではシステイン残基72−72間、また例えば配列番号4および9ではシステイン107−107間が考えられる)を形成し、それらは、伸展したβストランド領域と共にTGF−βスーパーファミリーの保存された構造モチーフを構成することが知られている。例えばDaopinら,Protein 1993,17,176−192を参照されたい。
【0240】
この配列アラインメントに基づいて、ニューブラスチンは神経栄養因子のGDNFサブファミリーの一メンバーであることが示された(表3では、GDNFサブファミリーフィンガープリントであるLGLG−FR(Y/F)CSGSC−QxCCRP−SAxxCGCに下線を引いている)。
【0241】
GDNFファミリーの他のメンバーに対するニューブラスチンの相同性を計算した。その結果を下記表4に記載する。
【0242】
(表4)
(GDNFファミリーの他のメンバーに対するニューブラスチンポリペプチドの相同性)
【0243】
【表4】

GDNF=グリア細胞系由来栄養因子
NTN=ニュールツリン
PSP=パーセフィン
IHA=インヒビン−α
TGF−β2=トランスフォーミング成長因子β2
「強い相同性」は、次の「強(strong)」グループの一つが保存されていることを示す:STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY、FYW。
【0244】
実施例5:ニューブラスチンの生産
本発明者らは、真核細胞と原核細胞の両方で、下記のようにニューブラスチンを生産した。
【0245】
発現ベクター:ニューブラスチンをコード化する完全長cDNAを真核細胞用発現ベクターpUbi1Zに挿入した。このベクターは、ヒトUbCプロモーターを改変型のpcDNA3.1/Zeoにクローニングすることによって作成された。無改変のpcDNA3.1/Zeoは市販されている(Invitrogen)。改変型pcDNA3.1/Zeoは、アンピシリン遺伝子(3933〜5015位)と2838〜3134位の配列が除去されているために、親ベクターより小さい。この改変型pcDNA3.1/ZeoのCMVプロモーターをpTEJ−8(Johansenら,FEBS Lett.1990,267,289−294)由来のUbCプロモーターで置き換えてpUbi1Zを得た。
【0246】
哺乳類細胞発現:次に、ニューブラスチンコード配列を含む上記pUbi1Zベクターを、不死化ラットニューロン細胞系である哺乳類細胞系HiB5にトランスフェクトした(Renfranzら,Cell,1991,66,713−729)。ニューブラスチンを安定に発現する数系統のHiB5細胞系(RT−PCRによって決定)を樹立した。ノーザンブロット上の全RNAを32P標識ニューブラスチンプローブとハイブリダイズさせることにより、上記安定細胞系のうちの一つに、HiB5pUb1zNBN22発現が確認された。これらの研究の結果を図2に示す。次に、HiB5pUbi1zNBN22を、ニューブラスチン神経栄養活性研究用のニューブラスチン源として使用した。
【0247】
図2は、HiB5pUbi1zNBN22クローン中のニューブラスチンcDNAの発現(すなわち、後述するように本発明の32P標識ニューブラスチンcDNAでプローブしたノーザンブロット)を示している。このブロットは、表示されているように、それぞれ非トランスフェクトHiB5細胞、HiB5pUbi1zNBN22細胞およびHiB5pUbi1zGDNF14から抽出された全RNAによって調製した。それぞれ4.1kbおよび1.9kbに相当する28Sおよび18S rRNAバンドの位置をブロットの上に示してある。
【0248】
図3に示すように、ニューブラスチン由来ポリペプチドに対して産生された抗体も、HiB5pUbi1zNBN22クローンから得た調整培地中に約13キロダルトン(「kD」)のタンパク質を認識したが、非トランスフェクトHiB5細胞から得た調整培地にはこれが認められなかった(実施例6参照)。
【0249】
未修飾(すなわち翻訳後修飾を受けていない)ニューブラスチンポリペプチドNBN140[配列番号10]およびNBN116[配列番号11]およびNBN113[配列番号12]の予想分子量は、それぞれ14.7キロダルトン(「kD」)、12.4kDおよび12.1kDであると決定された。
【0250】
方法:非トランスフェクトHiB5細胞およびHiB5pUbi1zNBN22クローンから得た全RNA(10μg)によるノーザンブロットを、0.8%ホルムアルデヒドアガロースゲルでの電気泳動によって調製し、ナイロンメンブレン(Duralone,Stratagene)にブロットした。そのブロットを、配列番号8とニューブラスチンcDNAの5’UTRおよび3’UTRに由来する追加のヌクレオチドとを含む、ランダムラベリング法で調製した1.3kbの32P標識プローブと、実施例3に記載したようにハイブリダイズさせ、洗浄した。そのブロットをHyperfilm MP(Amersham)に増感紙を使って−80℃で接触させた。
【0251】
N2サプリメント(Life Technologies)を添加した無血清培地中で終夜培養したHib5pUbi1NBN22または非トランスフェクトHib5細胞から得た調整培地を濃縮し、15%ポリアクリルアミドゲル(Amersham Pharmacia Biotech;カタログ番号80−1262−01)で分離した。タンパク質をPVDFメンブレン(Amersham Pharmacia Biotech;カタログ番号RPN−303F)に転写し、非特異的タンパク質結合部位を、0.1%Tween−20を含むPBS中の5%脱脂粉乳でブロックした。メンブレンをポリクローナルニューブラスチン抗体(1:1000)と共に終夜インキュベートした後、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合した抗ウサギIgG二次抗体(Amersham Pharmacia Biotech;カタログ番号NA934)(1:2000)と共にインキュベートした。ECL(enhanced chemoluminescence)(Amersham Pharmacia Biotech;カタログ番号RPN2109)またはECL+(Amersham Pharmacia Biotech; カタログ番号RPN2132)を製造者の指示(Amersham)に従って使用することにより、免疫染色を可視化した。
【0252】
これらの実験の結果を図3に示す。図3Aおよび3Bは、トランスフェクトされたHiB5細胞におけるニューブラスチンタンパク質の発現を示す図である。非トランスフェクトHiB5細胞[レーン1]またはニューブラスチンcDNAをトランスフェクトされた安定なHiB5クローン[レーン2]から得た終夜培養培地を後述のように濃縮した。次に、その培地を、ニューブラスチンに特異的な実施例10に記載の2種類のポリクローナル抗体Ab−1およびAb−2を使って、ウェスタンブロット法で分析した。トランスフェクト細胞から得た培地では、どちらの抗体も約15kDaの分子量を持つタンパク質を認識することがわかった。このタンパク質は非トランスフェクトHiB5細胞には見られなかった。
【0253】
ニューブラスチンをコード化するクローン化cDNAを、他の真核細胞用発現ベクター、例えば真核細胞用発現ベクターTEJ−8(Johansenら,FEBS Lett.1990,267,289−294)またはpcDNA−3(Invitrogen)に挿入して、得られた発現プラスミドを別の哺乳類細胞株、例えばチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞、HEK293細胞、COS、PC12またはRN33b細胞系、またはヒト神経幹細胞などにトランスフェクトすることもできる。ニューブラスチンを発現させる安定な細胞系は、例えばニューブラスチンタンパク質の生産に使用される。
【0254】
CHO細胞での発現
プラスミドpJC070.14の構築
チャイニーズハムスター卵巣細胞中でニューブラスチンcDNAを発現させるために、プレプロ型のヒトニューブラスチンをコード化するcDNA断片を、哺乳類発現ベクターpEAG347に挿入して、プラスミドpJC070.14を作成した。pEAG347は、タンデムなSV40初期およびアデノウイルス主要後期プロモーター(プラスミドpAD2beta由来:NortonおよびCoffin,Mol.Cell.Biol.1985,5,281)、ユニークなNotIクローニング部位を含み、その後ろにSV40後期転写ターミネーターおよびポリAシグナル(プラスミドpCMVbeta由来:MacGregorおよびCaskey,Nucl.Acids.Res 1989,17,2365)が続いている。その他にpEAG347は、pUC19由来のプラスミド骨格と、トランスフェクトされたCHO細胞でのMTX選択および増殖用のpSV2dhf由来のdhfrを含む。
【0255】
プラスミドpJC070.14を2段階で作成した。まず、ヒトニューブラスチンのプレプロ型をコード化する断片を、オリゴヌクレオチドKD2−824、5’ AAGGAAAAAA GCGGCCGCCA TGGAACTTGG ACTTGGAGG 3’[配列番号31]、KD2−825、5’ TTTTTTCCTT GGCGGCCGCT CAGCCCAGGC AGCCGCAGG 3’[配列番号32]およびPFUポリメラーゼによるポリメラーゼ連鎖反応を使って、プラスミドpUbi1Z−NBNから単離した。その断片をpPCR−Script Amp SK(+)のSrf−1部位にクローニングして、プラスミドpJC069を作成した。第二段階として、部分Not−1消化をプラスミドpJC069に行なって、685bp断片(ニューブラスチン遺伝子を含む)を生成し、それをプラスミドpEAG347のNot−1部位にクローニングして、プラスミドpJC070.14を作成した。プラスミドpJC070.14中のニューブラスチン遺伝子の転写は、アデノウイルス主要後期プロモーターによって制御される。
【0256】
ニューブラスチンを発現するCHO細胞系の作成 200μgのpJC070.14を、制限エンドヌクレアーゼMlu−1での消化によって直線化した。そのDNAをフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、エタノール沈殿した。直線化したそのDNAを20mM Hepes(pH7.05)、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM NaHPO、6mMデキストロース(HEBS)に再懸濁し、約4×10個のCHO dukx B1(dhfr−)細胞(p23)にエレクトロポレーション(280Vおよび960μF)によって導入した。エレクトロポレーションの後、細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したα+改変イーグル培地(MEM)に戻して2日間培養した。次に、それらの細胞をトリプシン処理し、10%透析FBSを添加したα−MEM(リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを欠くもの)中、100mm培養皿(100,000細胞/プレート)で、5日間培養した。次いでそれらの細胞を100,000細胞/100mmプレートの密度に分割し、200nMメトトレキセート中で選択した。耐性コロニーを拾い、6ウェルプレートに拡大培養し、各クローンから得た調整培地を、ニューブラスチンに関する後述の特異的測定法を用いてスクリーニングした。最高レベルのニューブラスチンを発現する12個のクローンをT162フラスコに拡大培養した後、再測定した。図10に示すように、CHO細胞系は25〜50ng/mlの範囲のニューブラスチンを産生した。
【0257】
ニューブラスチンに関する三元複合体測定法 本発明者らは、Sanicolaらが記載した三元複合体測定法(Proc Natl Acad Sci USA 1997,94,6238)の変法を用いて、CHO細胞系上清の培地中のニューブラスチンの存在について調べた。
【0258】
この測定法では、GDNF様分子の能力を、RETの細胞外ドメインと様々な補助受容体GFRα1、GFRα2およびGFRα3との間の結合を媒介するその能力について評価することができる。可溶型RETと補助受容体を融合タンパク質として作成した。ラットRETの細胞外ドメインと胎盤性アルカリホスファターゼとの融合タンパク質(RET−AP)およびラットGFRα1の細胞外ドメイン(WO9744356;1997年11月27日、参考文献としてここに援用する)とヒトIgG1のFcドメインとの融合タンパク質(rGFRα1−Ig)は記載されている(Sanicolaら,Proc Natl Acad Sci USA 1997,94,6238)。
【0259】
ネズミGFRα3の細胞外ドメインとヒトIgG1との融合タンパク質(mGFRα3−Ig)を作成するために、ネズミRETL3のアミノ酸1〜359をコード化するDNA断片を、ヒトIgG1のFcドメインを含む断片に結合し、発現ベクターpEAG347にクローニングして、プラスミドpGJ144を得た。プラスミドpGJ144をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)にトランスフェクトして、上記融合タンパク質を産生する安定細胞系を作成し、その融合タンパク質をプロテインAセファロース免疫アフィニティーカラムで標準的方法によって精製した。要約すると、そのGDNF様分子がこの測定法でRETへの補助受容体の結合を媒介できるのであれば、RET−AP融合タンパク質はプレート上に保持され、保持される量はアルカリホスファターゼの化学発光性基質を使って測定することができる。
【0260】
Dynex Microlite−1 ELISAプレート(Dynex Technologies)を50mM重炭酸塩/炭酸塩(pH9.6)中1μg/mlのヒトFcに特異的なヤギ抗体で16時間被覆した。そのプレートを空にし、300μlの1%I−Block(Tropix)TBS溶液/0.5%Tween−20(TBST)を1時間満たした。TBSTで3回洗浄した後、RET−AP融合遺伝子を発現する293EBNA細胞から得た調整培地に希釈した100μlの1μg/ml rGFRα1−IgまたはmGFRα3−Igで各ウェルを満たし、次に、CHOニューブラスチンクローンから得た100μlの調整培地をウェルの縦列の最上部のウェルに加え、各横列を下向きに2倍段階希釈し、室温で1.5時間インキュベートした。次に、そのプレートをTBSTで3回洗浄し、200mMトリス(pH9.8)、10mM MgCl(CSPD緩衝液)で2回洗浄した。次に、その洗浄溶液を、1mg/ml Sapphire化学発光増強剤(Tropix)を含むCSPD緩衝液中の425μM CSPD(Tropix)で置換し、室温で30分間インキュベートした。化学発光量はDynatech照度計を用いて測定した。
【0261】
最初の実験では、本発明者らは、CHO細胞系によって産生されたニューブラスチンがRETの細胞外ドメインへのGFRα1またはGFRα3の結合を媒介できるかどうかを調べた。図11に示すように、CHO細胞クローン#53から得られた調整培地は、mGFRα3−Ig融合タンパク質を含めた場合は上記三元複合体測定法で強いシグナルを生じたが、rGFRα1−Ig融合タンパク質を含めた場合にはシグナルを生じなかったことから、ニューブラスチンはGFRα3に結合するが、GFRα1には結合しないことが示された。この挙動によりニューブラスチンはGDNFとは明確に区別される。図11に示すように、GDNFはGFRα1に結合するが、GFRα3には結合しない。親CHO細胞系から得られた調整培地または未調整の培地を測定した場合は、どちらの補助受容体融合タンパク質でもシグナルは観察されなかった。
【0262】
CHO細胞系におけるニューブラスチンの発現レベルを定量するために、1ng/mlの濃度から始まるrGFRα1−IgおよびGDNFを使って標準曲線を作成した。次に、様々なCHO細胞株に関するニューブラスチン濃度を、この標準曲線を用いて計算した。5つのCHO細胞系による産生レベルを図10に示す。この推定値は、GDNFとGFRα1の間の結合親和力がニューブラスチンとGFRα3の間の結合親和力に類似しているという未検証の仮定に依存しているので、これらのレベルは概算値でしかない。
【0263】
CHO細胞系上清から得られるニューブラスチンの分析
CHO細胞系によって産生されるニューブラスチンをさらに分析するために、このタンパク質をGFRα3−Ig融合タンパク質を使って培地から抽出し、ニューブラスチンペプチドに対して産生させたポリクローナル抗体を使ったウェスタンブロットで分析した。
【0264】
第1の実験では、セファロースビーズに結合したmGFRα3−Igでニューブラスチンを抽出した。mGFRα3−Igはセファロースビーズに、その製造者であるPharmacia Inc.が提案する条件を使って結合した。100μLのmGFRα3−Ig−セファロースを、陰性対照CHO細胞系またはニューブラスチン産生CHO細胞系#16から得られる調整培地の試料1.0mLに加えた。その懸濁液を振盪台の上で2時間インキュベートした。各懸濁液を遠心分離し、上清を除去した後、10mM HEPES、100mM NaCl(pH7.5)1mLによる洗浄を3回行なった。各樹脂を100μLの2×還元試料緩衝液に再懸濁し、100℃に5分間加熱した。20μLの試料緩衝液上清および10μLの分子量標準(FMC)を、10〜20%既成SDS−PAGEゲル(Owl Scientific)の各ウェルに充填した。そのゲルを40mAの一定電流で72分間電気泳動した。
【0265】
ウェスタンブロット分析のために、Hofer Scientific装置で、10mM CAPS、10%メタノール、0.05%SDS、pH11.2緩衝系中、ニトロセルロース(Schleicher and Schuell)にタンパク質をエレクトロブロットした(400mAの一定電流で45分)。転写後、そのニトロセルロースフィルターをカセットから取り出し、1%酢酸中の0.1%Ponceau Sの溶液で60秒間染色することにより、分子量マーカーを可視化した。そのメンブレンを2片に切断し、蒸留水中で穏やかに撹拌することによって、過剰な染料を除去した。それらのメンブレンをTBS中の2%脱脂粉乳で4℃で終夜ブロックした。それらのメンブレンを、2%脱脂粉乳/TBS中に1.0μg/mLの濃度の、アフィニティー精製した2種類の抗ニューブラスチンペプチド抗体(R30およびR31)と共に、個別にインキュベートした。それらのメンブレンにTBS−Tweenで10分間の洗浄を3回行ない、ヤギ抗ウサギIgG−HRPコンジュゲート(Biorad)の1:5000希釈液中で30分間インキュベートした。それらのメンブレンにTBS−Tweenで10分間の洗浄を3回行ない、ECL基質(Amersham)で発色させた。図12に示すように、陰性対照細胞系から得た抽出タンパク質に観察されるバンド(レーン1および3)と比較すると、どちらの抗体でも、ニューブラスチン産生CHO細胞株から抽出したタンパク質に、特異的なバンドが検出された(レーン2および4)。
【0266】
低い方の分子種の分子量は約13kDであり、これはおそらく、プロドメインの切断後に生成するニューブラスチンの成熟ドメインに相当するのだろう。この切断は、プレプロニューブラスチンタンパク質の3つのArg−_(例えば−RXXR↓−)残基のいずれか一つの後ろで起こって、それぞれ配列番号10、11または12に示すような、140AA、116AAまたは113AA型を生成するのだろう。非修飾(すなわち翻訳後修飾を受けていない)ニューブラスチンポリペプチドNBN140[配列番号10]、NBN116[配列番号11]およびNBN113[配列番号21]の予想分子量は、それぞれ14.7kD、12.4kDおよび12.1kDと決定された。この分子種と他のニューブラスチン特異的バンドの構造を確認するには、さらなる分析が必要だろう。
【0267】
第2の実験では、ELISAプレート上に捕捉したhGFRα3−Igで、ニューブラスチンを抽出した。ヒトGFRα3の細胞外ドメイン(出願公開WO97/44356(1997年11月27日、参考文献としてここに援用する)に開示されている)とヒトIgG1のFcドメインとの融合タンパク質(hGFRα3−Ig)を作成するために、ヒトGFRα3のアミノ酸1〜364をコード化するDNA断片を、ヒトIgG1のFcドメインを含む断片に結合し、Sanicolaらが記載した発現ベクターCH269(Proc Natl Acad Sci USA 1997,94,6238)にクローニングした。このプラスミドによってコードされる融合タンパク質を、293エプシュタインバーウイルスコード核抗原(EBNA)細胞中で一過性に発現させ、標準的方法によりプロテインAセファロース免疫アフィニティーカラムで精製した。
【0268】
96ウェルプレートの6ウェルを、PBS中25mg/mlの濃度のヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異的;Jackson Immunulogics)(300ml/ウェル)で、4℃で終夜被覆した。そのウェルを400mlの1%BSA/PBS溶液で室温で1時間ブロックした。PBST(PBS+0.05%Tween 20)で3回洗浄した後、300mlのhGFRα3−Ig(0.1%BSAを含むPBS中10mg/ml)を各ウェルに加えた。そのプレートを室温で1時間インキュベートし、結合を最大にするために穏やかに振盪(200往復/分)した。次にそのウェルを空にし、再びPBSTで3回洗浄した。陰性対照CHO細胞またはニューブラスチン産生CHO細胞系#25から得た250mlの調整培地を3つのウェルのそれぞれに加えた。そのプレートを室温で3時間インキュベートし、穏やかに振盪(300往復/分)した。次に、ウェルをPBSTで2回洗浄した。25mlの非還元Laemliローディング緩衝液を第1のウェルに加え、結合しているタンパク質を溶出させるために、そのプレートを5分間速く振盪した(1300往復/分)。内容物を次のウェルに移し、第2および第3のウェルで、結合しているタンパク質を溶出させるために、この処置を繰返した。β−メルカプトエタノール(最終5%)を加えた後、試料を5分間煮沸し、10−20%ポリアクリルアミドゲルでのSDS−PAGEによって分析した。
【0269】
ウェスタンブロット分析を行なうために、タンパク質をニトロセルロースに転写した。そのメンブレンを5%脱脂粉乳、PBST中でブロックおよびプローブし、PBSTで洗浄した。ニューブラスチンは、2つのニューブラスチンペプチドに対して産生させたポリクローナル抗体(R30およびR31)(1μg/ml)との反応に続いて、HRP結合ヤギ抗ウサギ抗体(BioRad)との反応を行なった後、電気化学発光によって検出した。図13に示すように、5本のニューブラスチン特異的バンドが、ニューブラスチン産生CHO細胞系から得た抽出タンパク質に検出された(レーン2)。下側の2本のバンドは図12に観察されるバンドと極めて似ている。ここでも、下側のバンドはおそらく、プロドメインの切断後に生成するニューブラスチンの成熟ドメインに相当するのだろう。
【0270】
図13のバンドをさらに分析すると(データの記載なし)、PGNase Fによる約18kDバンドの脱グリコシル化が、そのバンドを、図13のゲルで最も下にあるバンドに相当するサイズまで減少させることがわかる。このことからニューブラスチンは哺乳類細胞中でグリコシル化タンパク質として産生されることが示唆される。
【0271】
大腸菌におけるニューブラスチンの発現
大腸菌中でニューブラスチン遺伝子を発現させるために、GC含量が低く好ましい大腸菌コドンを持つシンジーン(syngene;合成遺伝子)を構築した。このシンジーンは2つのベクターpET19bと、pET19bの誘導体であるpMJB164にクローニングされている。pET19bを使った構築を図14に示す。この構築体では、ニューブラスチンの成熟ドメイン(NBN113)をコードする配列が開始メチオニンに直接融合している。pMJB164を使った構築を図15に示す。この構築体では、ニューブラスチンの成熟ドメインが、エンテロキナーゼ切断部位によって隔てられたヒスチジンタグ(すなわち10個のヒスチジン)に融合している。開始メチオニンはそのヒスチジンタグの前にある。
図14でニューブラスチンをコード化しているヌクレオチド配列
【0272】
【化9】

図15でhis標識ニューブラスチンをコード化しているヌクレオチド配列
【0273】
【化10】

実施例6:ラット胚ドーパミン作動性ニューロンの生存に対するニューブラスチンの効果とChAT活性
この一連の実験では、上記のニューブラスチン産生HiB5pUbi1zNBN22細胞から得られる調整培地の効果を評価した。
【0274】
培養物の調製:中脳腹側または脊髄をラットE14胚から冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で切り出した。組織片を、滅菌ろ過した0.1%トリプシン(Worthingon)および0.05%DNase(Sigma)/HBSS溶液中、37℃で20分間インキュベートした。次に、組織片をHBSS+0.5%DNaseで4回すすぎ、1mlの自動ピペットを使って解離させた。次にその懸濁液を600rpmで5分間遠心分離し、ペレットを血清調整培地(SCM;10%ウシ胎仔血清を含むDMEM)に再懸濁した。細胞の総数をトリパンブルー色素排除法で測定し、ドーパミン作動性ニューロンの生存の評価についてはポリ−L−リジン被覆8ウェルチャンバースライド(Nunc)に100,000細胞/cmの密度で、またChAT活性測定については48ウェルプレート(Nunc)に200,000細胞/cmの密度で播種した。細胞をSCM中、5%CO/95%Oおよび湿度95%、37℃で24〜48時間インキュベートした後、無血清培地(SFM)に変えて神経栄養因子類を添加した。
【0275】
ドーパミン作動性ニューロン生存評価用の細胞は、SFM+栄養因子添加物中に5日間放置した後、4%PFA中で5分間固定し、免疫組織化学によりチロシンヒドロキシラーゼについて染色した。
【0276】
ChAT活性用の細胞はSFMと共に3日間放置した後、HBSS+0.1%トリトンX−100中で溶解し、直ちにドライアイスでChAT活性測定まで凍結しておいた。
【0277】
栄養因子の添加:非トランスフェクトHiB5対照もしくはニューブラスチン(HiB5pUbi1zNBN22)またはGDNF(HiB5pUbi1zGDNF−L17)を産生するHiB5から、調整培地を集めた。HiB5pUbi1zNBN22は、その細胞から集めた調整培地をGDNF−ELISAで測定すると、約20ng/24時間/10細胞のGDNFを産生する。各細胞系をDMEM+1%FCSと共に終夜培養し、上清を取り出し、使用時まで−20℃で保存した。その上清は、細胞に添加するときにSFMで1:50に希釈した。別個のウェルをHiB5対照上清(1:50)+精製組換えラットGDNF(0.03〜10ng/ml)で処理した。
【0278】
これらの実験の結果を図4に示す。図4A〜4Cは、下記実施例5.1に記述するように、培養ラット胚ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの生存および無血清培地中の脳神経運動ニューロンのChAT活性に対するHiB5pUbi1zNBN22細胞から分泌されるニューブラスチンの効果を示す図である。
【0279】
図4Aは、E14中脳腹側から最初に樹立された無血清培養物中の、DIV5で測定したChAT活性(dpm/時)に対する組換えGDNFの用量反応曲線を示す図である[すなわちHiB5;GDNF 0.03ng/ml;GDNF 0.1ng/ml;GDNF 0.3ng/ml;GDNF 1ng/ml;GDNF 10ng/ml;GDNF 100ng/ml]。
【0280】
図4Bは、E14中脳腹側から最初に樹立された無血清培養物中の、DIV5で測定したCAT活性(dpm/時)を示す図である。ニューブラスチン産生HiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)またはGDNF産生HiB5GDNFL−17(GDNFL−17)細胞から得た希釈調整培地を、図に表示したように添加した[すなわちニューブラスチン1:10;ニューブラスチン1:50;GDNF L−17 1:50]。
【0281】
図4Cは、E14ラット中脳腹側から最初に樹立された無血清培養物中のDIV7での1ウェルあたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数[TH+ 細胞数/ウェル]を示す図である。非トランスフェクトHiB5細胞(HiB5)またはニューブラスチン産生HiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)から得た希釈調整培地を、様々な濃度で、図に表示したように添加した[すなわちHiB5 1:50;HiB5 1:40;GDNF 0.1ng/ml;GDNF 10ng/ml;GDNF 100ng/mlおよびニューブラスチン1:40]。
【0282】
ニューブラスチンをトランスフェクトしたHiB5細胞から得られる調整培地の1:40希釈液は、同じ希釈率および低い希釈率(1:10および1:40)の対照(非トランスフェクト)HiB5細胞と比較して、TH免疫反応性細胞数を有意に増加させる(例えば図4B参照)。TH免疫反応性細胞数の増加は、最大GDNF濃度(10ng/ml)で見られる増加に匹敵する。このことは、培地に分泌されたニューブラスチンがラット胚中脳腹側に由来するドーパミン作動性ニューロン集団の生存に効果を持つことを示している。これに対し、トランスフェクトされたHiB5細胞から分泌されるGDNFとは異なり、ニューブラスチンをトランスフェクトしたHiB5細胞から得られる調整培地の影響は、同じ培養物中のもう一つのニューロン集団であるコリン作動性ニューロンには見られない(例えば図4A参照)。
【0283】
実施例7:ブタ胚ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの切片培養の生存に対するニューブラスチンの効果
この実験では、ニューブラスチン産生HiB5pUbi1zNBN22細胞とブタ胚由来の中脳腹側の切片培養物との共培養の効果を評価した。
【0284】
培養物の調製:ブタ胚(E28;n=12)から滅菌条件下に中脳腹側(VM)を摘出し、400μmの切片に切断し、グルコース(6.5mg/ml)を含む冷ゲイ平衡塩類溶液(GIBCO)に入れた。その組織切片をStoppiniらが最初に開発した界面培養法[L.Stoppini,P.A.Buchs,D.Muller,J.Neurosci.Methods 1991,37,173−182]によって培養した。
【0285】
簡単に述べると、血清含有培地(Gibco BRL)と共に6ウェルプレート(Coster)中にインサートとして入れられた半多孔性膜(Millipore,0.3μm;8切片/膜が1VMに相当)上に、切片を置いた。各ウェルは、最終濃度が25mMになるようにD−グルコースを添加した1mlの培地(50%Optimem、25%ハンクス平衡塩類溶液(全てGIBCO))を含んだ。第0日に、7000個のトランスフェクトHiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)または7000個の非トランスフェクトHiB5細胞(対照)を各組織切片に接種した。その共培養を、まず33℃の培養器中で48時間生育して、温度感受性癌遺伝子で不死化したHiB5細胞を増殖させた後、37℃の培養器に入れ、そこでHiB5細胞を分化させた。培地を毎週2回交換した。有糸分裂阻害剤と抗生物質はどの段階でも使用しなかった。
【0286】
HPLCによるドーパミンの測定:インビトロ第12日および第21日に培養培地を集め、HPLCを用いて電気化学的検出法でドーパミンについて分析した(W.N.Slooth,J.B.P.Gramsbergen,J.Neurosci.Meth.1995,60,141−49)。
【0287】
組織処理と免疫組織化学:第21日に培養物をリン酸緩衝液中の4%ホルムアルデヒドで60分間固定し、20%ショ糖溶液で24時間脱水し、凍結し、20μmにクリオスタット切片化(4系列)し、ゼラチン被覆顕微鏡スライドにのせた。1系列の切片をチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に関して免疫染色した。簡単に述べると、切片に、1%トリトンX−100を含む0.05Mトリス緩衝食塩水(TBS,pH7.4)中で15分間の洗浄を三回行ない、TBS中、10%フェトル(fettle)ウシ血清(FBS,Life Technologies)と共に30分間インキュベートした。次に、10%FBSを含むTBSに1:600希釈したモノクローナルマウス抗TH抗体(Boehringer Mannheim)と共に、組織を4℃で24時間インキュベートした。1%トリトンX−100を含むTBSでの15分間のすすぎを3回行なった後、10%FBSを含むTBSに1:200希釈したビオチン化抗マウスIgG抗体(Amersham)と共に、切片を60分間インキュベートした。次に1%トリトンX−100を含むTBSで洗浄(15分間を3回)し、10%FBSを含むTBSに1:200希釈したストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ(Dako)と共に60分間インキュベートした。TBSで洗浄(15分間を3回)した後、0.01%Hを含むTBS中の0.05%3,3−ジアミノベンジジン(Sigma)で処理することによって、結合している抗体を可視化した。最後に、切片をアルコール中で脱水し、キシレンで透徹し、Eukittを使ってカバーガラスで覆った。
【0288】
細胞数および形態計測的分析:免疫反応性TH−irニューロンの定量を、明視野顕微鏡(オリンパス)を使って行なった。十分に保たれた細胞構造と明確な核を持ち強い染色を示す細胞だけを数えた。20倍の対物レンズを用いて4培養切片ごとの細胞数に基づいて概算した。TH−irニューロン中の核の平均直径(6.6±0.2μm,n=30)を使用し、Abercrombieの式(M.Abercrombie,Anat.Rec.1946,94,239−47)に従って、細胞数を二重計数について補正した。核のサイズはニューロン追跡システム(Neurolucida,MicroBrightField,Inc.)を使って見積もった。
【0289】
これらの実験の結果を図5に示す。図5A〜5Cは、後述するようにHiB5pUbi1NBN22細胞(ニューブラスチン)またはHiB5細胞(対照)と共培養したブタ胚ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの切片培養物の機能および生存に対する、HiB5pUbi1zNBN22細胞から分泌されたニューブラスチンの効果を示す図である。図5Aおよび図5Bは、それぞれDIV12[ドーパミン(pmol/ml)−第12日]およびDIV21[ドーパミン(pmol/ml)−第21日]に、培地に放出されたドーパミンを示す図である。図5Cは、DIV21での1培養あたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数[TH−ir細胞/培養]を示す図である。
【0290】
第12日の時点で、HiB5−ニューブラスチン共培養物から得られる培地は、HiB5−C共培養物から得られる培地よりも84%多いドーパミンを含むことが、HPLC分析によって明らかになった(図5A)。第21日の時点で相違は78%(図5B)であり、細胞数は、HiB5−ニューブラスチン共培養物がHiB5−C共培養物よりも66%多いチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性ニューロンを含むことを示した(P<0.05)(図5C)。これは、HiB5pUbi1zNBN22クローンから分泌されたニューブラスチンが、ブタ胚ドーパミン作動性ニューロンに対して強力な生存効果を持つことを示している。
【0291】
実施例8:無血清培地中の後根神経節の生存
この実施例では、既知の神経栄養因子類と比較したニューブラスチンポリペプチドの神経栄養活性を示す。
【0292】
妊娠したメスマウスを頸椎脱臼によって屠殺した。培養のために胚を次のように処理した。
【0293】
電解研磨したタングステン針を使って、表示した段階のC57/B16マウス(デンマークMollegaard Breeding)から後根神経節を切り出した。胚性神経節をカルシウムおよびマグネシウム不含のハンクス平衡塩類溶液中、0.05%トリプシン(Gibco/BRL)と共に37℃で5分間インキュベートした。生後神経節はコラゲナーゼ/ディスパーゼ1mg/mlで30〜45分間処理した後、トリプシン/DNAse 0.25%で15分間処理した。トリプシン溶液を除去した後、10%熱非働化ウマ血清を含む10mlのDMEMで神経節を1回洗浄し、先端熱加工したパスツールピペットで穏やかに砕いて、単細胞懸濁液を得た。
【0294】
ポリオルニチン(0.5mg/ml、終夜)およびラミニン(20mg/mlで4時間;Gibco/BRL)でプレコーティングした24ウェルプレート(Nunc)に、細胞を播種した。それらのニューロンを、2mMグルタミン、0.35%ウシ血清アルブミン、60ng/mlプロゲステロン、16mg/mlプトレシン、400ng/ml L−チロキシン、38ng/ml亜セレン酸ナトリウム、340ng/mlトリヨードチロニン、60mg/mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシンを添加したハムのF14からなる合成培地にて、湿潤5%CO培養器中、37℃で培養した。
【0295】
培養48時間後に、ニューロンは、位相差顕微鏡下にその双極性の形態により、明確に認められた。栄養因子類(ニューロンの播種に先立って10ng/mlの濃度で培養培地に添加)またはニューブラスチン産生HiB5pUbi1zNBN22細胞から得た調製培地の存在下もしくは不在下でのニューロンの生存百分率を、48時間の時点でウェル中のニューロン数を数えることによって評価した。
【0296】
これらの実験の結果を図9に示す。図中、
0は対照実験(因子類不在下)を表し、
1はGDNF存在下での実験を表し、
2はニュールツリン存在下での実験を表し、
3は本発明のニューブラスチン存在下での実験を表し、
E12は胎生12日で単離したDRG細胞に対して行なった実験から得られたデータを表し、
E16は胎生16日で単離したDRG細胞に対して行なった実験から得られたデータを表し、
P0は出生日に単離したDRG細胞に対して行なった実験から得られたデータを表し、
P7は生後7日で単離したDRG細胞に対して行なった実験から得られたデータを表し、
P15は生後15日で単離したDRG細胞に対して行なった実験から得られたデータを表す。
【0297】
これらの結果から、本発明の神経栄養因子が、確立した神経栄養因子に匹敵するか、さらにはそれを上回る活性を示すことが、明らかにわかる。
【0298】
実施例9:黒質ドーパミンニューロンに対するニューブラスチンのインビボ効果
成熟した黒質ドーパミン(DA)ニューロンを6−ヒドロキシドーパミン誘導性の変性から保護するニューブラスチン(ニューブラスチン)の能力を調べるために、本発明者らは、パーキンソン病のラットモデル(SauerおよびOertel,Neuroscience 1994,54,401−415)と、ニューブラスチンのレンチウイルス遺伝子導入を使用した。
【0299】
レンチウイルスの作成:ニューブラスチンをコード化するレンチウイルス導入ベクターpHR’−ニューブラスチンを作成するために、ニューブラスチンcDNAから得られる1331bpのBmaH1断片を、pSL301(Invitrogen)のBamH1/BglII部位にサブクローニングした。この構築体から1519bpのBamH1/Xho1断片を切り出し、ウッドチャック肝炎ウイルス翻訳後断片(Zufferey R,Donello JE,Trono D,Hope TJ「Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element enhances expression of transgenes delivered by retroviral vectors(ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節配列はレトロウイルスベクターによって送達された導入遺伝子の発現を増進させる)」J.Virol.1999,73(4),2886−2892)を保持するpHR’のBamH1/Xho1部位に結合させた。
【0300】
レンチウイルスベクターの作成は、例えばZuffereyら(Zufferey R,Nagy D,Mandel RJ,Naldini L,Trono D「Multiply attenuated lentiviral vector achieves efficient gene delivery in vivo(多重に弱毒化されたレンチウイルスベクターによりインビボで効率のよい遺伝子送達が達成される)」Nat.Biotechnol.1997,15(9),871−875)によって記載されている。簡単に述べると、導入構築体とヘルパープラスミドpR8.91およびpMDGを293T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後と72時間後に、培地に放出されたウイルス粒子を集めた。ウイルスを濃縮するために、培地を141,000gで1.5時間遠心分離し、そのペレットをDMEMに溶解した。緑色蛍光タンパク質(「GFP」)の遺伝子を保持する対照の力価は、293T細胞中のGFP蛍光により、10形質転換単位(TU)/mlと決定された。RNAスロットブロット法(von Schwedler U,Song J,Aiken C,Trono D「Vif is crucial for human immunodeficiency virus type 1 proviral DNA synthesis in infected cells(Vifは感染細胞でのI型ヒト免疫不全ウイルスのプロウイルスDNA合成にとって極めて重要である)」J.Virol.1993,67(8)4945−4955)を使って、ウイルス粒子力価を決定した。GDNF上清およびニューブラスチン上清には、GFP上清と比較して10分の1量の粒子が見出された。
【0301】
手術法:動物が関わる全ての作業は、ルンド(Lund)大学の実験動物の利用に関する倫理委員会によって設定された規則に従って行なわれた。
【0302】
21匹の若い雌スプレーグ・ドーリー成体ラット(B&K Universal、スウェーデン・ストックホルム)を使用し、ラット用固形飼料と水を自由に摂取させて12時間の明暗周期で飼育した。SauerおよびOertel(SauerおよびOertel,Neuroscience 1994,59,401−415)に従って、損傷の3週間前に、逆行性標識と6−OHDA損傷を行なった。簡単に述べると、エクイセシン(Equithesin)麻酔(0.3ml/100g)下に、逆行性トレーサーFluoro−Gold(FG;Fluorochrome,Inc.,コロラド州エングルウッド)の2%溶液(0.9%NaClに溶解)0.2μlを、ラットに両側から注入した。注入は、2μlハミルトンシリンジを使用し、AP=+0.5mm;ブレグマに対してML=±3.4mm;硬膜に対してDV=−5.0mmの座標に、切歯バー(incisor bar)を0.0mmに設定して行なった。また、針を引き抜く前に、さらに5分間放置して、0.05μl/分の注入を行なった。
【0303】
FG注入の14日後に、緑色蛍光タンパク質(GFP)、合計5デポジット(1μl/デポジット)の、ニューブラスチンまたはGDNFの遺伝子を保持するレンチウイルスベクターを、動物に与えた。それらデポジットのうち4つは、2本の針管に沿って、次の座標で線条体に与えられた:AP=+1.0mm、ML=−2.6mm、DV=−5.0mm、DV=−4.5mmおよびAP=0.0mm、ML=−3.7mm、DV=−5.0mm、DV=−4.5mm。黒質上デポジットはAP=−5.2mm、ML=−2.0mm、DV=−6.3mmに施した。歯バー(tooth bar)は−2.3mmに設定した。
【0304】
逆行性標識の21日後かつレンチウイルス注入の7日後に動物を再び麻酔し、10μlハミルトンシリンジで20μgの6−OHDA(Sigma;遊離塩基として計算し、0.02%アスコルビン酸を添加した氷冷食塩水3μlに溶解した)の1デポジットを、右線条体のFGデポジットと同じ位置に注入した。注入速度は1μl/分とし、針を引き抜く前にさらに3分間放置した。
【0305】
組織処理:6−OHDA注入の21日後に、動物を抱水クロラールで深く麻酔し、経心臓的に食塩水(pH7.4、室温)を1分間灌流した後、200mlの氷冷ホルムアルデヒド溶液(0.1%リン酸緩衝液(ph7.4)中の4%パラホルムアルデヒド)を灌流した。脳を解剖し、同じ固定液中で3〜4時間、後固定した後、25%ショ糖/0.1Mリン酸緩衝液に48時間移した。線条体および黒質(SN)にわたって5系列の40μm切片を凍結ミクロトームで切断した。
【0306】
SN中のドーパミン作動性ニューロンの定量的評価:黒質緻密部中のFG標識ニューロンの数は、先に記載されているように盲検者によって評価された(SauerおよびOertel,Neuroscience 1994,59,401−415)。簡単に述べると、副視索の内側終止核(MTN;PaxinosおよびWatsonのアトラス(1997)で−5.3)のレベルを中心とする3つの連続切片を使用し、MTNに対して外側の全ての標識/染色ニューロンを倍率40倍で数えた(n=6−7/群)。330nmでの落射照明下に明るく蛍光を発し、ニューロンの側面を示して、少なくとも一つの神経突起を延ばすものを、FG標識ニューロンに含めた。
【0307】
GFPを保持するレンチウイルスの注入を受けた動物の損傷側では、FG陽性黒質ニューロンの数が無傷の側の18%まで減少した。これに対し、レンチ−ニューブラスチンを注入した動物では、FG陽性黒質ニューロンの数がほとんど完全に保護された(89%)。これは、損傷側で逆行性標識されたニューロンの87%が保たれたレンチ−GDNF処置動物と同程度の効率だった。これは、ニューブラスチンが損傷を受けた成熟黒質ドーパミンニューロンにとって強力な生存因子であり、GDNFと同程度に強力であることを示している。
【0308】
図6は黒質ドーパミンニューロンに対するレンチウイルス産生ニューブラスチンのインビボ効果を示す図である。雌スプレーグ・ドーリーラットにおける黒質緻密部のニューロンを、右線条体への6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)の単回注入の3週間前に、Fluorogold(FG)で逆行性標識した。6−OHDA注入の1週間前に、動物に、図に示すようにニューブラスチン[ニューブラスチン]、GDNF[GDNF]または緑色蛍光タンパク質[GFP]を発現するレンチウイルスベクターを注入した。6−OHDA注入の21日後に、線条体の両側のFG標識ニューロンの数を決定した。この図は、3つの動物群の線条体の損傷(右)側対無傷(左)側のFG標識ニューロンの百分率[%FG損傷/無傷]を示す。
【0309】
実施例10:抗体の産生
ニューブラスチンに対する抗体を作成するために、2匹のウサギを、担体タンパク質に結合したペプチド1:CRPTRYEAVSFMDVNST(配列番号9のアミノ酸108〜124)またはペプチド2:ALRPPPGSRPVSQPC(配列番号9のアミノ酸93〜107)で、3週間間隔で免疫化した。各ペプチドにつき2匹のウサギを第0週、3週、6週および10週に免疫化し、第7週および11週に血液を採取した。2回目の採血液をペプチドアフィニティーカラムでアフィニティー精製した。それらの抗体をペプチドに準じてAb−1およびAb−2と名付けた。
【0310】
ウェスタンブロット:ニューブラスチンのcDNAを安定にトランスフェクトした2×10個のHiB5細胞(Hib5pUbi1zNBN22)または非トランスフェクトHiB5細胞を、Nサプリメントを添加した無血清培地で終夜インキュベートした。5kDaのカットオフメンブレンを持つ小濃縮器(Millipore,マサチューセッツ州ベッドフォード)で培地を濃縮した。濃縮試料に5×Laemmli試料緩衝液を加え、95℃に5分間加熱した。試料を15%アクリルアミドゲルでのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、PVDFメンブレンに転写した。残留タンパク質結合部位を、0.1%Tween−20を含むPBS中の5%脱脂粉乳でブロックした。メンブレンをニューブラスチン抗体(1:1000)と共に終夜インキュベートした後、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗ウサギまたは抗マウスIgG抗体(1:2000)と共にインキュベートした。
【0311】
免疫染色は、ECL+(enhanced chemoluminiscence Plus)を使用し、製造者の指示(Amersham)に従って可視化した。これらの実験の結果を図3および実施例5に示す。
【0312】
標準的技術を使って、本発明者らは、次のペプチドに対するウサギポリクローナル抗体も産生させた。
【0313】
【化11】

C末端に比較的近いR30およびR31だけが、ウェスタンブロット上、還元条件下で、変性タンパク質を認識した。
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】32P標識ニューブラスチンcDNAでプローブされた2枚のノーザンブロットの写真画像であって、様々な成人組織タイプ(図A)および様々な成人脳領域(図B)におけるニューブラスチン遺伝子の相対的発現レベルを比較したものである。
【図2】32P標識ニューブラスチンcDNAでプローブされたノーザンブロットの写真画像であって、非トランスフェクト細胞系HiB5で発現されるニューブラスチンcDNAの量を、ニューブラスチンcDNAをトランスフェクトした細胞系で発現されるニューブラスチンcDNAの量およびGDNF−cDNAをトランスフェクトした細胞系と比較したものである。
【図3】ニューブラスチンタンパク質が非トランスフェクトHiB5細胞(レーン1)で発現される程度を、ニューブラスチンcDNAを安定にトランスフェクトしたHiB5細胞系(レーン2)と比較する、2枚のウェスタンブロットの写真画像であって、ニューブラスチン特異抗体Ab−2(左側のブロット;図A)またはニューブラスチン特異抗体Ab−1(右側のブロット;図B)でプローブしたものである。
【図4】無血清培地における培養ラット胎仔ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの生存およびコリン作動性脳神経運動ニューロンのChAT活性に対するニューブラスチンの影響を示す図。具体的に述べると、図4AはChAT活性(dpm/時間)に対する組換えGDNFの用量反応曲線を示す図である。図4Bはニューブラスチン産生細胞またはGDNF産生細胞から得られる希釈調整培地を使ったChAT活性(dpm/時間)を示す図である。図4Cは1ウェルあたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数を示す図である。
【図5A】HiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)またはHiB5細胞(対照)と同時培養したブタ胎仔ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの切片培養物の機能および生存に対する、HiB5pUbi1zNBN22細胞から分泌されたニューブラスチンの影響を示す図。図5Aおよび図5Bは、それぞれDIV12[ドーパミン(pmol/ml)−第12日]およびDIV21[ドーパミン(pmol/ml)−第21日]の時点で、培地に放出されたドーパミンを表す。図5CはDIV21での1培養あたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数を示す図である。
【図5B】HiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)またはHiB5細胞(対照)と同時培養したブタ胎仔ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの切片培養物の機能および生存に対する、HiB5pUbi1zNBN22細胞から分泌されたニューブラスチンの影響を示す図。図5Aおよび図5Bは、それぞれDIV12[ドーパミン(pmol/ml)−第12日]およびDIV21[ドーパミン(pmol/ml)−第21日]の時点で、培地に放出されたドーパミンを表す。図5CはDIV21での1培養あたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数を示す図である。
【図5C】HiB5pUbi1zNBN22細胞(ニューブラスチン)またはHiB5細胞(対照)と同時培養したブタ胎仔ドーパミン作動性中脳腹側ニューロンの切片培養物の機能および生存に対する、HiB5pUbi1zNBN22細胞から分泌されたニューブラスチンの影響を示す図。図5Aおよび図5Bは、それぞれDIV12[ドーパミン(pmol/ml)−第12日]およびDIV21[ドーパミン(pmol/ml)−第21日]の時点で、培地に放出されたドーパミンを表す。図5CはDIV21での1培養あたりのチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性細胞の数を示す図である。
【図6】黒質ドーパミンニューロンに対するレンチウイルス産生ニューブラスチンのインビボ効果を示す図である。
【図7】完全長ニューブラスチン遺伝子の同定に使用できる核酸プライマーと、ゲノムニューブラスチンコード配列(すなわち遺伝子)に対するそれらの空間的な向きを含む、ニューブラスチン遺伝子のゲノム構造の模式図である。
【図8】ニューブラスチンポリペプチドをコード化する核酸にはハイブリダイズするが、他の既知のGDNFファミリーメンバー(すなわちGDNF、パーセフィンおよびニュールツリン)をコード化する核酸にはハイブリダイズしないニューブラスチン特異的プライマーであって、ヒトニューブラスチンポリペプチドをコード化するcDNAクローンを同定するために使用したものを示す図である。
【図9】様々な発生段階から得た解離ラット後根神経節細胞の培養物に対する本発明ポリペプチドの神経栄養活性を、既知の神経栄養因子で得られるものと比較して示す図[0 対照実験(因子類不在下);1 GDNF存在下;2 ニュールツリン存在下;3 本発明ニューブラスチンの存在下;E12 胎生12日;E16 胎生16日;P0 出生日;P7 生後7日;P15 生後15日]である。
【図10】CHO細胞系からのニューブラスチンの産生を示す図である。
【図11】GFRα−1受容体およびGFRα−3受容体へのニューブラスチンおよびGDNFの結合の比較を示す図である。
【図12】ニューブラスチンへのR30抗ペプチド抗体およびR31抗ペプチド抗体の結合を図示するウェスタンブロットの写真画像である。
【図13】RETL3−Igへのアフィニティー結合によるニューブラスチンの抽出を示すゲルの写真である。
【図14】pET19b−ニューブラスチンのプラスミド地図と、ニューブラスチンの合成遺伝子の配列である。
【図15】pMJB164−Hisニューブラスチンのプラスミド地図と、Hisニューブラスチンの合成遺伝子の配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号(SEQ ID NO:):1のヌクレオチド配列;
(b)配列番号:2のAA−AA105に対して少なくとも90%の相同性を含むニューブラスチンポリペプチド又はそこから誘導されるポリペプチドを発現時にコードするオープンリーディングフレームを含む核酸配列;
(c)配列番号:1のヌクレオチド配列を含む核酸に高ストリンジェンシー溶液ハイブリダイゼーション条件で特異的にハイブリダイズする核酸、又はその相補ストランド;
(d)配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の相同性である核酸
より成る群から選ばれた配列を含む、単離されたニューブラスチン核酸。
【請求項2】
コード化されたポリペプチドが、配列番号:2のAA−AA105、及び配列番号:5,6及び7のAA−AA105より成る群から選ばれる、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
配列番号:3の配列を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項4】
配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の相同性である,請求項1記載の核酸。
【請求項5】
配列番号:1として存在するポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の相同性である,請求項1記載の核酸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項7】
当該核酸によってコード化されるポリペプチドを、インビトロで当該核酸から発現させる段階を含む、請求項6記載のベクターを使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の核酸及び(又は)請求項6記載の発現ベクターを用いてインビトロで形質転換させた細胞。
【請求項9】
該細胞が真核細胞である、請求項8記載の細胞。
【請求項10】
該細胞が哺乳類細胞、真菌細胞及び酵母細胞より成る群から選ばれる、請求項9記載の細胞。
【請求項11】
哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b及びヒト神経幹細胞より成る群から選ばれる、請求項10記載の細胞。
【請求項12】
配列番号:2のアミノ酸1〜105に対して少なくとも90%相同するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号:2,4,5,6及び7に記載のアミノ酸配列のいずれか1つを含むニューブラスチン神経栄養因子ポリペプチド。
【請求項14】
当該ポリペプチドがグリコシル化されている、請求項12又は13記載のポリペプチド。
【請求項15】
当該ポリペプチドが請求項1〜5のいずれか1つに記載の核酸によってコードされる、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1つに記載のポリペプチドを製造する方法であって、当該方法が上記ポリペプチドをニューブラスチン神経栄養因子核酸から発現させる工程を含む、上記方法。
【請求項17】
上記ニューブラスチン神経栄養因子核酸を含む細胞を、当該ポリペプチドの産生が可能な培養培地で培養する工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
当該ポリペプチドを、上記培養培地から回収する工程をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法によって得られる精製されたポリペプチド。
【請求項20】
請求項12〜15又は19のいずれか1つに記載のポリペプチドおよび薬学的に許容し得る担体を含む調合物。
【請求項21】
請求項12〜15又は19のいずれか1つに記載のポリペプチドを医薬の製造に使用する方法。
【請求項22】
損傷性及び外傷性ニューロンに係わる神経変性疾患、たとえば末梢神経系、延髄及び(又は)脊髄の外傷性障害、脳虚血ニューロン損傷、神経障害及び特に末梢神経障、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症又はその他のあらゆる神経変性障害、及び痴呆に関連する記憶障害の治療ために、請求項21記載の使用する方法。
【請求項23】
配列番号:17、18、19、20、23、24、25、26または28に記載の配列のいずれか1つを含む、PCRプライマー核酸配列。
【請求項24】
配列番号 2、4、5、6又は7に記載のポリペプチドのいずれか1つを製造する方法であって、配列番号:1又は3に記載の核酸配列のいずれか1つを含む細胞を、上記ポリペプチドの産生が可能な条件で培養し、その培養培地から上記ポリペプチドを回収することを含む、上記方法。
【請求項25】
(a)ニューブラスチンポリペプチドを発現時にコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するか、または調節配列をその調節配列が内因性ニューブラスチン遺伝子の発現を調節するように相同組換えによって細胞に導入して、ニューブラスチン産生細胞を作成し、
(b)そのニューブラスチン産生細胞をニューブラスチンポリペプチドの発現をもたらす培養条件で培養すること、
を含む、請求項12〜15のいずれか1つに記載のニューブラスチンポリペプチドを製造する方法。
【請求項26】
配列番号:29または30に記載の配列を含む、ニューブラスチンポリペプチドをコード化する合成遺伝子。
【請求項27】
次の配列:
【化1】

のいずれかを有するニューブラスチンペプチド。
【請求項28】
請求項27のペプチドのいずれかに対して産生される抗体。
【請求項29】
配列番号:2、4、5、6、7、9、10、11、12及び16に記載の配列のいずれか1つに対して少なくとも70%の相同性であるアミノ酸配列を有するニューブラスチン神経栄養因子を、黄斑変性、色素性痒疹、及び緑内障を患う患者の網膜で光受容体損失を含む、眼疾患の治療用医薬の製造に使用する方法。
【請求項30】
配列番号:2、4、5、6、7、9、10、11、12及び16に記載の配列のいずれか1つに対して少なくとも70%の相同性であるアミノ酸配列を有するニューブラスチンポリペプチドを発現時にコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を、黄斑変性、色素性痒疹、及び緑内障を患う患者の網膜で光受容体損失を含む、眼疾患の治療用医薬の製造に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−122053(P2006−122053A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326745(P2005−326745)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【分割の表示】特願2005−161155(P2005−161155)の分割
【原出願日】平成11年7月5日(1999.7.5)
【出願人】(501008705)エヌエスゲーネ・アクティーゼルスカブ (6)
【Fターム(参考)】