説明

移動体通信システム

【課題】モバイルIP使用の列車無線ITシステムで、レイヤ3のネットワークでは、無線リンク接続からハンドオーバ完了まで通信が待たされ、レイヤ2トリガ採用の場合も、複数無線チャネル併用の通信や、無線帯域変動の無線システムでは、十分な通信帯域が確保できない場合がある。
【解決手段】移動体に搭載され、配下に複数の端末を有するモバイルルータ、移動体の移動経路に沿って配置される複数の無線基地局、外部ネットワークに接続されるホームエージェントに接続され、無線基地局を収容し、モバイルルータの移動捕捉を行うアクセスルータ、ネットワークの移動を検出するハンドオーバ事前検出機構を備え、モバイルルータはハンドオーバ事前検出装置の検出信号で通信可能使用帯域を算出し、かつアップリンク無線通信帯域の制限機能を有し、ホームエージェントはダウンリンク無線通信帯域の制限機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車や車などの移動体内にあるモバイルネットワークと、固定的に設置される地上系ネットワーク間の通信に用いられる移動体通信システムにおいてネットワークモビリティ技術に基づいた通信を行う移動体通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の列車無線システムでは、東北・上越新幹線において無線インタフェースに漏洩同軸ケーブル無線(LCX)を使用したデジタル通信が実現されている。
このシステムでは無線チャネルが音声チャネルとデータチャネル(帯域により2系統)に分かれており、音声チャネルは音声通話時にチャネルを確保して使用し、データチャネルは、必要時にチャネルを確保し通信するように構成されている。
無線通信はデジタル化されているが、通信プロトコルはIP(Internet Protocol)化されていない。
【0003】
モバイルルータを使用した実験システムとしては、列車にモバイルルータを搭載し、無線LAN(Local Area Network)や他の無線I/F(Inter Face)を通してインターネット接続やデータ通信実験を鉄道各社にて実施している。このシステムでは通信プロトコルにモバイルIPを適用し、異なるサブネットワーク間を移動した場合にもIP通信を継続することが可能な構成となっている。
また、モバイルルータを自動車に搭載し、無線LANや携帯電話ネットワークを通してインターネットアクセスする実験も通信機器メーカー等で実施されている。このシステムも同様にモバイルIPを適用している。
【0004】
このようなモバイルルータを使用した列車IT(Information Technologe)システムの従来技術として、列車インターネットに関する調査研究会著の「列車インターネットに関する調査研究報告書」(非特許文献1)がある。この非特許文献1においては、モバイルルータに複数の無線システム(ミリ波、無線LAN、セルラー)を搭載し、列車内からインターネットアクセスや大容量データのダウンロードの実験を実施している。
【0005】
また、モバイルルータを使用した特許文献としては、特開2003-283515号公報(特許文献1)がある。特許文献1では路測ネットワーク(DSRC)と車載ネットワークを移動ルータ(モバイルルータ)で接続するシステムに関して示されており、ネットワーク間のハンドオーバ時のTCP(Transmission Control Protocol)コネクションの通信性能をAck(Acknowledge)信号の処理で高速化する手法について記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003-283515号公報
【非特許文献1】列車インターネットに関する調査研究会著,「列車インターネットに関する調査研究報告書」、総務省四国総合通信局、平成15年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
列車無線ITシステムにおいて、モバイルIPを採用したシステムを構築した場合、レイヤ3のネットワークを移動時のモバイルIPによりハンドオーバするときは、無線Link接続後、ネットワーク側からのルータ広告受信待ちか、ルータ広告要求によるルータ広告受信待ちとなり、ルータ広告受信後にIPレベルのハンドオーバを実行しなければならない。
このため、無線Link接続からハンドオーバ完了するまでの間に待ち時間が発生し、通信が待たされるという問題があった。
【0008】
また、列車無線ITシステムにレイヤ2トリガを採用した場合でも、無線Linkの接続、切断の情報しかレイヤ2モバイルルータ側では入手することが出来ず、複数無線チャネルを併用して通信する場合や、通信状況により無線帯域が変動する無線システムの場合などに、無線Linkレイヤ2トリガを送信するタイミングによっては十分な通信帯域が確保されない状態で通信を開始する問題があった。
【0009】
また、確立された無線通信帯域を認識することなくUp Link/Down Linkの通信を開始する為、大量のトラフィックが流れ込んできてもトラフィックを抑制することが出来なかった。
【0010】
さらに、同一無線基地局に複数の移動体が接続され、各移動体が無線帯域を最大限に使用して通信している場合、他の移動体の通信帯域を逼迫させるといった問題が発生する可能性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る移動体通信システムは、
移動体に搭載され、配下にネットワークで接続された複数の端末を有するモバイルルータと、移動体の移動経路に沿って通信エリアが得られるように配置される複数の無線基地局と、モバイルルータの移動の捕捉を行うと共に外部ネットワークに接続されるホームエージェントと、ホームエージェントに接続され、無線基地局を収容するアクセスルータを備え、モバイルIP(Internet Protocol)ネットワークモビリティ技術に基づいた移動体通信システムにおいて、
ネットワークの移動を無線Linkの階層で検出し、その検出信号には無線Linkの情報を含むハンドオーバ事前検出機構を備え、
前記、モバイルルータはハンドオーバ事前検出装置の検出信号に含まれる情報に基づいて通信可能な使用帯域を算出し、かつUp Link無線通信帯域の制限機能を有し、
前記ホームエージェントはDown Link無線通信帯域の制限機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る移動体通信システムによれば、モバイルルータはハンドオーバ事前検出装置の検出信号に含まれる情報に基づいて通信可能な使用帯域を算出し、かつUp Link無線通信帯域の制限機能を有し、また、ホームエージェントはDown Link無線通信帯域の制限機能を有しているので、確立された無線通信帯域で通信を実行する為、大量のトラフィックが流れ込んできたとき、トラフィックを抑制することが出来る。
また、通信帯域を常に算出する機能を有することで、通信帯域を公平に分配または意図的に通信帯域の大小を調整することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下にこの発明にかかる移動体通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る移動体通信システムの実施の形態1のシステム構成を示す図である。図1に示す移動体通信システムは、基本的にモバイルIPのネットワークモビリティ(NEMO)技術に基づいて動作する。周知のようにモバイルIPは個々の端末が位置登録/更新を行うのに対して、モバイルIP ネットワークモビリティでは移動するネットワーク(モバイルネットワーク)をモバイルネットワーク単位でモバイルルータが位置登録/更新を実行する。従って、モバイルルータ配下に接続されている端末はモバイルIPの位置登録/更新の手続きをする必要がない。
【0015】
図1に示す移動体通信システムにおいて、移動体である列車5(以下移動体として列車を例にして説明する)には、モバイルルータ1、ハンドオーバ事前検出装置としての無線インタフェースアダプタ2a、ノード装置である移動端末3a、3b、が設置されている。
地上系ネットワークには、無線基地局10a、10b、10c、アクセスルータ11a、11b、モバイルルータ1の位置を捕捉するホームエージェント12、このホームエージェント12の外部のIPネットワーク14に設けられたWebサーバ13を備える。
【0016】
列車5の移動経路に沿って、無線ネットワークを形成する漏洩同軸ケーブル15a、15b、15cが配置されている。無線基地局10a〜10cは無線ネットワーク15a〜15cの基地局である。
各無線ネットワーク15a〜15cはIPレベルで異なるサブネットワークに分かれている。各サブネットワーク間を移動する場合はモバイルIPのハンドオーバが発生する。
無線ネットワーク15a〜15cの基地局10a〜10cは、これら無線基地局を収容するアクセスルータ11a〜11bに接続されている。
ホームエージェント12は、モバイルルータ1のホームアドレスと気付けアドレスの関係を管理し、外部のネットワークからモバイルルータ1の配下にあるネットワーク宛てのパケットを捕捉して、ホームエージェント12とモバイルルータ1間のIPトンネル内にパケットを流し、モバイルルータ1でIPトンネルから配下のネットワークにパケットをフォワードする。
【0017】
図2はこの発明における実施の形態1の動作シーケンス図、図3はこの実施の形態1における無線インタフェースアダプタ2aからモバイルルータ1に送信されるレイヤ2トリガを説明する図、図4はこの実施の形態1の無線帯域割当調整機能を説明する図、図5は無線帯域割当調整機能を説明するフローである。
【0018】
次にシステムの動作について説明する。
まず、通常のユーザデータの流れを、列車5内の移動端末3bが地上系ネットワークの外部IPネットワーク14にあるWebサーバ13と通信する場合を例にとって説明する。
列車5に設置されたモバイルルータ1と無線インタフェースアダプタ2aが基地局10bのネットワークに進入すると、無線インタフェースアダプタ2aは、基地局10bのネットワークに入ったことをレイヤ2トリガとしてモバイルルータ1にメッセージで報告する(201)。レイヤ2トリガのメッセージには図3に示すように各無線チャネルのLinkのステータス(Link Up/link Down)、無線Linkの信頼性(高・中・低)、無線Linkの帯域情報(レート)が含まれている。
モバイルルータ1は、レイヤ2トリガのメッセージを受信すると、通信帯域を計算し(202)、無線帯域分の通信帯域要求メッセージを基地局10b、アクセスルータ11aを経由してホームエージェント12に送信する(203)。
【0019】
ホームエージェント12はモバイルルータ1からの通信帯域要求メッセージに対して基地局10bの使用可能な通信帯域を計算し、モバイルルータ1に最終的な使用可能帯域をアクセスルータ11a経由で通知する(204)。
ホームエージェント12は計算した通信帯域に合わせて、モバイルルータ1宛のパケットが通信帯域を越えないように帯域抑制機能にて調整する(207)。
モバイルルータ1は最終的な使用可能帯域通知をホームエージェント12から受信すると、ホームエージェント12に対して位置登録要求を無線インタフェースアダプタ2a、漏洩同軸ケーブル15b、基地局10b、アクセスルータ11a経由にて実施する(205)。
また、モバイルルータ1は最終的な使用可能帯域通知をホームエージェント12から受信すると、ホームエージェント12と同様にホームエージェント12宛のパケットが通信帯域を越えないように帯域抑制機能にて調整する(208)。
【0020】
ホームエージェント12はモバイルルータ1からの位置登録要求に対して位置登録処理を行い、位置登録応答をアクセスルータ11a経由でモバイルルータ1へ送信する(206)。モバイルルータ1は位置登録応答を受信すると、配下の移動端末3bにアプリケーショントリガを送信する(210)。移動端末3bはこのアプリケーショントリガで通信を開始する。
位置登録完了後、ホームエージェント12からモバイルルータ1までモバイルIPの仮想的なトンネリングが張られる(207)。
また、ホームエージェント12はモバイルルータ1に使用可能帯域を通知後、モバイルルータ1へのIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限する機能を有効とする。
使用可能帯域の通知を受けた(204)モバイルルータ1はホームエージェント12と同様にIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限する。位置登録完了後、モバイルルータ1からホームエージェント12までモバイルIPの仮想的なトンネリングが張られ(208)、前記ユーザートラフィックがモバイルルータ1とホームエージェント12間のIPトンネル内を通過するようになる。
サブネットワーク間の移動が無い限り、前記のIPトンネルを通して外部のIPネットワーク14との通信が継続される。
【0021】
次に、アクセスルータ11aからアクセスルータ11bに切り替わる動作について概略説明する。
列車5に設置されたモバイルルータ1と無線インタフェースアダプタ2aが基地局10bのネットワークから基地局10cのネットワークに進入すると、無線インタフェースアダプタ2aは、基地局10cのネットワークに入ったことをレイヤ2トリガとしてモバイルルータ1にメッセージで報告する(301)。レイヤ2トリガのメッセージには図3に示すように各無線チャネルのLinkのステータス(Link Up/link Down)、無線Linkの信頼性(高・中・低)、無線Linkの帯域情報(レート)が含まれている。
モバイルルータ1は、レイヤ2トリガのメッセージを受信すると、無線基地局間ハンドオーバと認識し通信帯域を計算し(302)、無線帯域分の通信帯域要求メッセージを基地局10c、アクセスルータ11bを経由してホームエージェント12に送信する(303)。
【0022】
ホームエージェント12はモバイルルータ1からの通信帯域要求メッセージに対して基地局10cの使用可能な通信帯域を計算し、モバイルルータ1に最終的な使用可能帯域をアクセスルータ11b経由で通知する(304)。
ホームエージェント12は計算した通信帯域に合わせて、モバイルルータ1宛のパケットが通信帯域を越えないように帯域抑制機能にて調整する(308)。
モバイルルータ1は最終的な使用可能帯域通知をホームエージェント12から受信すると、ホームエージェント12に対して位置登録要求を無線インタフェースアダプタ2a、漏洩同軸ケーブル15c、基地局10c、アクセスルータ11b経由にて実施する(305)。
また、モバイルルータ1は最終的な使用可能帯域通知をホームエージェント12から受信すると、ホームエージェント12と同様にホームエージェント12宛のパケットが通信帯域を越えないように帯域抑制機能にて調整する(309)。
【0023】
ホームエージェント12はモバイルルータ1からの位置登録要求に対して位置登録処理を行い、位置登録応答をアクセスルータ11b経由でモバイルルータ1へ送信する(306)と共にアクセスルータ11aに対しLinkダウンの通知をする(307)。
位置登録完了後、ホームエージェント12からモバイルルータ1までモバイルIPの仮想的なトンネリングが張られる。モバイルルータ1は位置登録応答を受信すると、配下の移動端末3bにアプリケーショントリガを送信する(310)。移動端末3bはこのアプリケーショントリガで通信を開始する。
【0024】
次に、別な移動時の動作について説明する。
無線基地局10a→無線基地局10bへのハンドオーバを例にとり、図5を参照して説明する。
基地局10aに接続されていた無線インタフェースアダプタ2aが列車5の移動により、基地局10bに接続されると無線インタフェースアダプタ2aは、無線Linkが変更されたことをレイヤ2トリガとしてモバイルルータ1にメッセージで報告する(S501)。
【0025】
レイヤ2トリガのメッセージには図3に示すように各無線チャネルのLinkのステータス(Link Up/link Down)、無線Linkの信頼性(高・中・低)、無線Linkの帯域情報(レート)が含まれている。レイヤ2トリガは各無線チャネルのステータスが変化する度に無線インタフェースアダプタ2aからモバイルルータ1に送信される。
モバイルルータ1は、予め設定されているハンドオーバ条件に合致するか否か判定する(S502)。合致した場合にハンドオーバ動作を開始する。(例えば、無線チャネル1、2がLink Upしている状態の時、ハンドオーバ条件成立とするなど。)
ハンドオーバ条件の設定は、各移動体に固定的に設定されても、随時変更されても構わないが、本実施の形態では説明を簡略化する為に、固定的に設定されているものとする。
【0026】
モバイルルータ1が無線インタフェースアダプタ2aからのレイヤ2トリガメッセージにてハンドオーバ条件成立したと判断すると、モバイルルータ1はレイヤ2トリガのメッセージにおける無線Linkの帯域情報(レート)を基に通信帯域を計算する。図3の例では3128kbpsの帯域が確保可能なことになる。
モバイルルータ1は、無線帯域分の通信帯域要求メッセージをアクセスルータ11aに送信する(S503)。アクセスルータ11aはモバイルルータ1からの通信帯域要求メッセージをホームエージェント12に送信する(S504)。ホームエージェント12は基地局10bの使用可能な通信帯域を計算(S505)し、モバイルルータ1に最終的な使用可能帯域をアクセスルータ11a経由で通知する(S506)。
【0027】
ホームエージェント12は、同一無線基地局10bに接続されている他のモバイルルータにも再計算した通信帯域情報を送信する。
ホームエージェント12はモバイルルータ1に使用可能帯域を通知後、モバイルルータ1へのIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限する機能を有効とする。
使用可能帯域の通知を受けた(S507)モバイルルータ1はホームエージェント12と同様にIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限(S508)し、無線チャネルCh1/Ch2を使用して、ホームエージェント12に対して新しいネットワークの位置登録を実施する(S509)。
前記位置登録完了後、ユーザートラフィックがモバイルルータ1とホームエージェント12間のIPトンネル内を通過するようになる。
【0028】
上記のように漏洩同軸ケーブル無線間のトラフィックをそれぞれモバイルルータ1とホームエージェント12で制限するように構成する為、他のモバイルルータが同一無線エリアに侵入してきた場合にも、公平にリソースを分け合うことが可能になる。
【0029】
次に同一無線エリアに複数の列車が進入してきた場合の処理について説明する。
図4は同一無線エリア内に他のモバイルルータが進入してきた場合の通信帯域の変動をグラフ化したものである。
最初、ホームエージェント12は列車Aが進入時に通信帯域を割り当てる。通信帯域割当てのメカニズムは前記の方式により、列車Aの要求してきた通信帯域は通信帯域全体より少ない為、要求通り通信帯域が割り当てられる。
【0030】
次に、列車Bが進入して来た為、ホームエージェント12は前記割当てメカニズムにより同様に通信帯域を割り当てる。この時点では全体としての通信帯域をオーバーしない為、通信帯域割当てのメカニズムは前記の方式により、列車Bの要求通り通信帯域が割り当てられる。
【0031】
次に列車Cが同一の無線エリア内に進入して来た場合、列車Cの要求通り帯域割り当てをすると通信帯域の全帯域を超えてしまう為、ホームエージェント12は列車A,Bには通信帯域の変更要求、列車Cには要求された通信帯域より少ない通信帯域を割り当てるメッセージを送信する。
通信帯域の削減は、接続チャネルの切断による無線Linkの削減とモバイルルータ1、ホームエージェント12の通信帯域抑制機能の設定値を変更することで実現する。
【0032】
以上のように通信帯域を常に調整する機能を有することで、通信帯域を公平に分配または意図的に通信帯域の大小を調整することが出来る。
【0033】
通信帯域制限機能には、パケットのトラフィッククラスによる優先制御などのQoS(Quality of Service)機能が含まれている。QoS機能により、無線通信Linkの通信帯域以内でモバイルIPの制御プレーンやユーザートラフィック内の優先的に通す必要のあるパケットを限られた帯域内に効率的に通過させることが可能な構成となっている。
【0034】
実施の形態1のシステム構成では、無線インタフェースアダプタ2aとモバイルルータ1は分離した構成としているが、機能的に分離していればモバイルルータ1の内部に無線インタフェースアダプタ2aが組み込まれていても同様の動作を行う。
【0035】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2のシステム構成図である。
基本的に実施の形態1と同じだが無線ネットワークシステムの構成が異なる。図6において無線ネットワークは無線LANアクセスポイント18a〜18cで構成されている。
図7は実施の形態2のレイヤ2トリガを説明する図である。
【0036】
次に動作について説明する。
通信に関する基本的な動作(通常のユーザデータの流れ)は実施の形態1と同じになる為、説明は省略し、移動時の動作について説明する。
無線基地局18a→無線基地局18bへのハンドオーバを例にとって説明する。
基地局18aに接続されていた無線インタフェースアダプタ2bが、基地局18bに接続されると無線インタフェースアダプタ2bは、無線Linkが変更されたことをレイヤ2トリガとしてモバイルルータ1にメッセージで報告する。
【0037】
レイヤ2トリガのメッセージには図7に示すように接続されている無線Linkのチャネル、信頼性、通信レートの情報が含まれている。
レイヤ2トリガは各無線チャネルのステータスが変化する度に無線インタフェースアダプタ2bからモバイルルータ1に送信される。
モバイルルータ1は、予め設定されているハンドオーバ条件に合致した場合にハンドオーバ動作を開始する。(例えば、Rateが5Mを越えたときに条件成立とするなど。)
ハンドオーバ条件の設定は、各移動体に固定的に設定されても、随時変更されても構わないもとするが、本実施の形態では説明を簡略化する為に、固定的に設定されているものとする。
【0038】
モバイルルータ1が無線インタフェースアダプタ2bからのレイヤ2トリガメッセージにてハンドオーバ条件成立したと判断すると、モバイルルータ1は通信帯域を計算する。図7の例では11Mbpsの帯域が確保可能なことになる。
モバイルルータ1は、無線帯域分の通信帯域要求メッセージをホームエージェント12に送信する。ホームエージェント12は基地局18bの使用可能な通信帯域を計算し、モバイルルータ1に最終的な使用可能帯域を通知する。
ホームエージェント12はモバイルルータ1に使用可能帯域を通知後、モバイルルータ1へのIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限する機能を有効とする。
使用可能帯域の通知を受けたモバイルルータ1はホームエージェント1と同様にIPトンネリング時のみ帯域を使用可能帯域に制限し、ホームエージェント12に対して新しいネットワークの位置登録を実施する。
前記位置登録完了後、ユーザートラフィックがモバイルルータ1とホームエージェント12間のIPトンネル内を通過するようになる。
【0039】
他の列車が同一エリアに進入し、帯域調整が必要な場合には、実施の形態1と同様に通信帯域の調整を実施する。
無線帯域調整は無線LAN Linkの通信帯域を例えば、11Mbpsから2Mbpsに変更しそれに通信帯域制限機能を合わせる形で実施する。
【0040】
実施の形態3.
図8は実施の形態3のシステム構成図である。
実施の形態3は、基本的には実施の形態1、実施の形態2と同じであるが、無線I/Fが漏洩同軸ケーブル無線と無線LANの複数種類設置されていることが他の実施の形態と異なり、実施の形態1と実施の形態2を組み合わせたシステムである。
この実施の形態の動作は、無線I/Fに漏洩同軸ケーブル無線を用いる場合は実施の形態1と、無線I/Fに無線LANを用いる場合は実施の形態2と同様な動作をする。
実施の形態3のように複数の異なる無線インタフェースを実装することにより、夫々の無線インタフェースのシステムに対応可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、旅客サービス通信と業務用通信という具合に、通信を論知的/物理的に分離して移動する乗り物(例えば、列車、航空機、バス等)の無線ITシステム構築に有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1の移動体通信システムを示す構成図である。
【図2】実施の形態1の動作を示すシーケンス図である。
【図3】実施の形態1のレイヤ2トリガについての説明図である。
【図4】無線帯域調整機能についての説明図である。
【図5】無線帯域調整機能の動作説明図である。
【図6】実施の形態2の移動体通信システムを説明する構成図である。
【図7】実施の形態2のレイヤ2トリガについての説明図である。
【図8】実施の形態3の移動体通信システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1;モバイルルータ、2a、2b;無線インタフェースアダプタ、3a、3b;移動端末、5;移動体(列車)、10a、10b、10c;無線基地局装置、11a、11b;アクセスルータ、12;ホームエージェント、13;Webサーバ、15a、15b、15c;漏洩同軸ケーブル、18;無線LANアクセスポイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、配下にネットワークで接続された複数の端末を有するモバイルルータと、移動体の移動経路に沿って通信エリアが得られるように配置された複数の無線基地局と、モバイルルータの移動の捕捉を行うと共に外部ネットワークに接続されるホームエージェントと、ホームエージェントに接続され、無線基地局を収容するアクセスルータを備え、モバイルIP(Internet Protocol)ネットワークモビリティ技術に基づいた移動体通信システムにおいて、
ネットワークの移動を無線Linkの階層で検出し、その検出信号には無線Linkの情報を含むハンドオーバ事前検出機構をさらに備え、
前記、モバイルルータはハンドオーバ事前検出装置の検出信号に含まれる情報に基づいて通信可能な使用帯域を算出し、かつUp Link無線通信帯域の制限機能を有し、
前記ホームエージェントはDown Link無線通信帯域の制限機能を有することを特徴とする移動体通信システム。
【請求項2】
前記モバイルルータは前記ホームエージェントへの位置登録メッセージ内に無線Linkから算出した無線通信帯域情報を付加し、ホームエージェントは無線基地局が使用中の無線帯域情報から通信可能な無線帯域を算出し、モバイルルータに使用可能無線帯域情報を送信する機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記ホームエージェントは、移動体に搭載されたモバイルルータが接続されている同一無線基地局に他の移動体に搭載されたモバイルルータが接続された場合に、無線基地局及び通信経路の通信帯域内に全ての通信が収まるように帯域調整し、接続されている各モバイルルータは帯域調整する機能を有する機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記ハンドオーバ事前検出装置はその検出信号に無線Linkの接続・切断以外に接続した無線Linkの通信帯域、通信品質情報を含み、モバイルルータへ検出信号を送信する機能を有する機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の移動体通信システム。
【請求項5】
前記モバイルルータは、ハンドオーバを実行し通信帯域が規定値以上に確保された時点でモバイルルータ配下に接続されているノード装置へ通信開始を支持するメッセージを送信する機能を有する機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の移動体通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−36432(P2007−36432A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214068(P2005−214068)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】