説明

移動基地局及び移動通信システム

【課題】本発明は移動通信に関し、特に車両内等の移動する特定空間において、市販の移動機に対してその空間に固有の付加価値サービスを提供する移動体通信システム、移動基地局を提供することを目的とする。
【解決手段】所定エリア内を範囲とする固定の無線コントロールゾーンを管轄する既存基地局と、移動媒体の内部空間に割当てられた移動する無線コントロールゾーンを管轄する移動基地局と、移動局とから構成される移動通信システムにおいて、前記移動局は、前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有する移動通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信に関し、特に車両内等の移動する特定空間において、市販の携帯電話機等の移動機に対してその空間に固有の付加価値サービスを提供する移動体通信システム、移動基地局及びその制御方法に関するものである。すなわち、本発明では走行する電車やバス等の公共的交通媒体等の移動する特定空間に無線コントロールゾーン(Cz;control zone)を割り付け、その移動する無線コントロールゾーン配下の移動機に対して移動媒体に固有のサービスを提供する。
【背景技術】
【0002】
従来には、上述した移動媒体自体に専用の無線コントロールゾーンを割りつけて移動媒体と共にその無線コントロールゾーンが移動するという考え方は無かった。このような無線コントロールゾーンを設けることによって移動媒体内部とその外部とを明確に区別できるという利点が生ずる。
【0003】
従来の固定した無線コントロールゾーン内では移動媒体内部の加入端末とそれ以外の加入端末とを区別する手段はなく、市販の携帯電話端末等を用いた電話サービスではいずれの端末に対しても同じ移動通信サービスが提供されていた。
【0004】
図1は、従来の移動体通信システムの一例を示したものである。
図1において、無線基地局A(10)は無線コントロールゾーンA(CzA)(20)を制御している。また、無線コントロールゾーン20には移動媒体B(30)内に移動局α及びβ(40、41)が存在し、その外には移動局γ(42)が存在している。無線基地局10は前記各移動局40〜42に通信サービスを提供している。
【0005】
上記従来の移動通信システムでは、各移動局40〜42と無線基地局10とが直接呼制御及び通話制御を行うため、例えば図1に移動局40の例で示すように移動局40が移動媒体30の内外いずれに位置するのかを識別することができなかった。従って、無線基地局10は、移動媒体30内部の移動局40及び41とそれ以外の移動局42とを区別することなく全ての移動局40、41及び42に同じ移動通信サービスを提供していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−259973号公報
【特許文献2】特開平9−121188号公報
【特許文献3】国際公開第96/02093号(特表平10−502777号公報参照)
【特許文献4】特開平9−121376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来は移動媒体12の内部で例えば駅到着時刻案内等の車内専用サービス(外部からは受けられないサービス)を提供しようとする場合には、移動媒体30内部にテロップ用の専用機器を設置したり、また加入者は車内放送を受信するための専用端末等を購入する必要があった。この場合には前記専用機器や専用端末に要するコストが発生し、前者の場合には企業広告の表示等によりそのコストの低減も可能であるが、後者の場合には加入者負担が大きいという問題があった。
【0008】
ところで、後者の場合には前記専用端末に代えて、加入者が所持する市販の携帯電話端末等を利用した基地局10からの特番ダイヤルサービス等を提供することも可能である。しかしながら、移動媒体30の移動経路中には高層ビルやトンネル等による様々な電波不感地帯が散在すると考えられ、常に一定の通信品質を保証することは困難である。また、移動媒体30が例えば現在の無線コントロールゾーン20から隣の無線コントロールゾーン21へ高速で移動する際には、それらの基地局と車両内の加入端末との間で通話サービスを維持するために一斉にチャネル切り替えや位置登録処理が発生する。その結果、網側に対しては一時的な輻輳状態を誘発する恐れが生じ、また加入端末の側ではとまり木チャネルのスキャン発生によって端末電池の消耗が早まる等の種々の問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記種々の問題に鑑み、走行する電車やバス等の移動媒体の特定空間内に移動する無線コントロールゾーンを割付け、それによって明確に移動媒体内部とその外部とを区別し、前記移動する無線コントロールゾーン配下の携帯電話端末等に対して移動媒体に固有の付加サービスを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、所定エリア内を範囲とする固定の無線コントロールゾーンを管轄する既存基地局と、移動媒体の内部空間に割当てられた移動する無線コントロールゾーンを管轄する移動基地局と、移動局とから構成する移動通信システムが提供される。
【0011】
前記移動基地局は、前記既存基地局との間で移動局としての通信処理を行う第1の通信手段と、前記移動する無線コントロールゾーン内の移動局との間で基地局としての通信処理を行う第2の通信手段と、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との間のパス接続制御を行う移動基地局制御手段と、を有する。
【0012】
前記移動局は、前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有する。
【0013】
前記移動基地局は、前記既存基地局との間で移動局としての通信処理を行う第1の通信手段と、前記移動する無線コントロールゾーン内の移動局との間で基地局としての通信処理を行う第2の通信手段と、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との間のパス接続制御を行う移動基地局制御手段と、前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有する。
【0014】
さらに、前記移動局は、前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば以下のような特別の効果が生ずる。
(1)移動無線コントロールゾーンの配下にある移動局に対して通信品質を維持したまま移動媒体に固有のサービスを提供可能となる。
【0016】
(2)高速移動中であるにもかかわらずチャネル切替や位置登録が軽減できるため、網側の輻輳を抑制し、さらには移動局の消費電力を抑えることができる。
(3)なお、本発明は移動しない特定エリア内(移動速度ゼロに相当)に対してもその領域に限定した無線コントロールゾーンを設けることによって同様に適用可能であり、その特定エリア内に固有のサービスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の移動体通信システムの一例を示した図である。
【図2】本発明による移動基地局と既存の固定基地局との間の通信動作を概説した図である。
【図3】本発明による既存基地局、移動基地局、及び移動基地局配下の移動局からなる通話チャネル切り替え制御の説明図である。
【図4】本発明による既存基地局、移動基地局、及び移動基地局配下の移動局からなる通話チャネル切り替え制御の説明図である。
【図5】本発明による移動基地局の基本構成例を示した図である。
【図6】待ち受け状態における移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(1)である。
【図7】待ち受け状態における移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(2)である。
【図8】本発明による切替保留時間制御の一例を示した図である。
【図9】本発明による送信電力制御の一例を示した図である。
【図10】通話状態における既存無線コントロールゾーンと移動無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(1)である。
【図11】通話状態における既存無線コントロールゾーンと移動無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(2)である。
【図12】通話状態における既存無線コントロールゾーンと移動無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(3)である。
【図13】通話状態における既存無線コントロールゾーンと移動無線コントロールゾーンとの間の入退動作の一例を示した図(4)である。
【図14】移動基地局の位置登録動作の一例を示した図である。
【図15】本発明による制御チャネル切替制御の一例を示した図である。
【図16】移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信動作の一例を示した図(1)である。
【図17】移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信動作の一例を示した図(2)である。
【図18】移動無線コントロールゾーン内の加入端末からの発信動作の一例を示した図である。
【図19】既存基地局と移動基地局との間のチャネル切替の一例を示した図である。
【図20】移動基地局と加入端末との間のチャネル切替の一例を示した図である。
【図21】終話動作の一例を示した図である。
【図22】移動基地局と既存基地局との間のスケルチ終話制御の一例を示した図である。
【図23】移動基地局と加入端末との間のスケルチ終話制御の一例を示した図である。
【図24】通話チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図である。
【図25】制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図(1)である。
【図26】制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図(2)である。
【図27】制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図(3)である。
【図28】通話/制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図(1)である。
【図29】通話/制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示した図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2は、本発明による移動基地局と既存の固定基地局との間の通信動作の説明図である。図2は、本発明により移動通信サービスエリア内を移動する無線コントロールゾーン(以降、「移動無線コントロールゾーン」と呼ぶ)が割り付けられたa、b及びcの3両からなる移動媒体30が、既存の無線コントロールゾーンA(以降、「既存無線コントロールゾーン」と呼ぶ)(20)から既存無線コントロールゾーンC(22)へ、そして既存無線コントロールゾーンE(24)へと順次移動する場合を示している。ここで、前記移動媒体30に備えられた移動無線コントロールゾーンを制御する装置(以降、「移動基地局」と呼ぶ)は、移動無線コントロールゾーン内の加入端末との通信処理及び通信管理を行い、さらに車両内の専用サービスを提供する。また、前記移動基地局は、移動通信サービスを提供している既存の固定基地局(以降、「既存基地局」と呼ぶ)との通信を行ってチャネル切替や位置登録等の移動通話サービスを実現する。
【0019】
本発明の説明のため、以降では移動媒体30を移動基地局30と置き換えて説明する。移動基地局30は、既存無線コントロールゾーンA(20)内の始発地で既存基地局A(10)と接続状態(既存基地局Aのとまり木チャネルを確保し、通話呼があれば既存基地局10の通話チャネルを数チャネル獲得できる状態)にある。次に、移動基地局30が既存無線コントロールゾーンC(22)に向けて移動を開始すると、既存無線コントロールゾーン20と既存無線コントロールゾーンB(21)とが重複するw地点(50)付近で既存基地局B(11)からの通信状態の方が徐々に良くなる。
【0020】
そこで、前記移動基地局30は、とまり木チャネルのスキャンによってそれまで接続していた既存基地局10からその時点で最良の既存基地局11へと基地局の選択変更を行い、もし通話呼があれば通話チャネルのチャネル切り替えも行う。同様の動作がx地点〜z地点(51〜53)の各々の付近で実行され、最終目的地である既存無線コントロールゾーンE(14)に到着する。
【0021】
図3は、本発明による既存基地局、移動基地局、及び移動基地局配下の移動局からなる通話チャネル切り替え制御の説明図である。
図3では、図2の移動基地局30が既存基地局10の既存無線コントロールゾーン20から既存基地局11の既存無線コントロールゾーン21へ順次移動していく際の通話チャネルの切り替わりを図式的に示している。
【0022】
また、移動基地局30は、1つ又は複数の移動無線コントロールゾーン60−1及び60−2を管理し、各移動無線コントロールゾーン配下の移動局と無線通信するための対移動局送受信装置37−1、37−2を備える。前記移動無線コントロールゾーン60−1及び60−2は、図2の車両a及びbの各車両内空間とそれぞれ対応し、本例では初めに車両aの移動無線コントロールゾーン60−1内に移動局α(40)が存在し、それが後に車両bの移動無線コントロールゾーン60−2内へ移動する場合を示している。
【0023】
なお、後に図9の例で示すように、前記対移動局送受信装置37−1、37−2は、無線信号の送出レベルを既存基地局からの信号レベルよりも所定値だけ大きくなるように制御する。これによって、移動局40と移動基地局30及び既存基地局10、11との間のとまり木レベル制御を実現し、移動局40と対移動局送受信装置37−1、37−2との間の優先的な接続を行う。本発明では、このレベル制御によって市販の携帯電話端末等を車内専用端末として使用可能にしている。
【0024】
図3において、既存基地局10及び11と移動基地局30との間の通信動作はすでに図2を用いて説明した通りであり、既存無線コントロールゾーン20と21が重複するw地点50付近で既存基地局10から既存基地局11へと通話チャネル接続が切替えられる。ここでは、本発明により移動基地局30が管理する移動無線コントロールゾーン60−1内の移動局40との接続状態はこの時点では変化せず、通信サービスはそのまま維持される。
【0025】
この状態で、移動局40が移動無線コントロールゾーン60−1(車両a)から隣の移動無線コントロールゾーン60−2(車両b)へ移動すると、対移動局送受信装置37−1との接続の品質が劣化し、反対に対移動局送受信装置37−2からの回線状態が良くなる。その結果、移動基地局30は、対移動局送受信装置37−1との接続を対移動局送受信装置37−2からの接続に切替える。
【0026】
図4は、本発明による既存基地局、移動基地局、及び移動基地局配下の移動局からなる制御チャネル切替制御の説明図である。
図4も、図3と同様に移動基地局30が既存基地局10の既存無線コントロールゾーン20から既存基地局11の既存無線コントロールゾーン21へと移動していく場合を示しており、ここでは制御チャネルの切り替わりを図式的に示している。
【0027】
本例では、初めに移動基地局30は既存基地局10と制御チャネルlと接続しており、さらに移動基地局30の配下では移動局40が呼接続中である。移動基地局30が(w)地点50付近に到達すると、既存基地局10との接続状態が劣化し、反対に既存基地局11との接続の方が制御チャネルの状態が品質的に良くなる。
【0028】
この時、移動基地局30は、移動局40の呼制御は終了するまで維持し、一方新たに呼制御が開始された移動局41に対しては制御チャネルmを使って既存基地局11と接続して呼制御を行う。やがて移動局40の呼制御は完了するが、移動局41はいまだ呼制御中である。呼制御が終了した制御チャネルlは、次にとまり木スキャンを開始し、前記制御チャネルmの劣化時に備える。
【0029】
上述したように、本発明によれば既存基地局10、11からみれば移動基地局30は複数の制御チャネルl、mを有した移動局と考えられ、また移動基地局30の配下にある移動局40、41からみれば移動基地局30は既存基地局と考えられる。このように、本発明によれば移動基地局30を境に上位局と下位局とを明確に区別することが可能となる。
【0030】
この構成により、移動基地局30は、その管理下にある移動無線コントロールゾーン内の移動局40、41(市販の携帯電話端末等)に対して車内の移動局間の通話サービス、車外からの着信禁止サービス、車内カフェテリア注文サービスや駅情報通報サービス等の車内専用サービスを提供することが可能となる。むろん、移動局40、41から通常のダイヤル操作によって移動基地局30を中継した既存基地局への発信や、そこからの着信も可能である。
【0031】
また、前記車内専用サービスには電波の不感地帯は存在せず高品質な通信サービスが提供できる。さらに、移動基地局30が隣接する既存無線コントロールゾーン間を通過する際にも移動基地局配下の車内通話サービスへの影響はなく、一斉チャネル切り替えや位置登録処理は発生しない。その結果、網側では一時的な輻輳状態の発生が回避され、移動局側ではとまり木チャネルのスキャンによる電池の消耗が低減される。
【0032】
図5は、本発明による移動基地局の基本構成例を示したものである。
図5において、対基地局送受信装置31は、移動通信サービス網を構成する既存基地局との通信を行う。基地局制御装置32は、対基地局送受信装置31を統括し、対基地局送受信装置31の回線獲得を行う。また、周辺の既存無線コントロールゾーンのとまり木のスキャンを行う。
【0033】
対移動局送受信装置37−1〜37−nは、移動基地局の配下にある各移動無線コントロールゾーン内の移動局との通信を行う。また、上述したように移動無線コントロールゾーン内の無線信号レベルを制御して移動局のとまり木レベル制御も行う。移動局制御装置33は、対移動局送受信装置37−1〜37−nを統括し、また移動無線コントロールゾーン間の通話チャネルや制御チャネルの切替制御を行う。
【0034】
移動基地局制御装置34は、基地局制御装置32と移動局制御装置33との間の統括制御を行い、その間の回線選択指示等を行う。付加サービス提供部35は、移動無線コントロールゾーン内の特番ダイヤルサービスや既存基地局からの着信禁止等のその移動媒体に固有のサービスを提供する。保守運用装置36は、移動基地局全体の保守運用を行う装置であってマン−マシン・インタフェースを有する例えばパーソナルコンピュータ等からなる。
【0035】
以降の図6〜図29では、本発明のより具体的な実施例として、本発明による移動通信基地局を含めた網から移動局(以降の例では、「加入端末」と呼ぶ)までの間の通信制御シーケンスの一例を示している。
以下、下記の7つの場合について本発明と関連する動作について詳細に説明する。なお、通信制御シーケンス自体の説明についてはRCR−27E(NTT)の勧告等を参照されたい。
【0036】
(1)移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の加入端末の入退動作
(2)移動基地局の位置登録動作と制御チャネル選択動作
(3)移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信動作
(4)移動無線コントロールゾーン内の加入端末からの発信動作
(5)移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼のチャネル切替動作
(6)移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼の切断動作
(7)移動無線コントロールゾーン内の専用サービス
【0037】
(1)移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の加入端末の入退動作について
ここでは、前記入退動作を、待ち受けの状態のまま入退する場合と通話状態で入退する場合に分けて説明する。
「1」待ち受けの状態の場合
図6及び7は、加入端末を所持する加入者が待ち受け状態にあり、その状態で移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退動作を行った場合の制御チャネルシーケンス例を示している。
【0038】
図6において、待ち受け状態の加入端末は、既存無線コントロールゾーンから移動無線コントロールゾーンに入ると、移動基地局からのより高いレベルの報知情報によって移動無線コントロールゾーンのとまり木チャネルを検出する(S101〜103)。前記報知情報には基地局情報や位置情報等が含まれる。
【0039】
前記移動無線コントロールゾーンからの報知情報によって位置番号の変化を認知した加入端末はその位置登録情報(移動機番号を含む)を送信する(S105)。移動基地局は、この情報を受けて、上位の既存基地局宛てに加入端末からの位置登録情報、移動機番号にさらに移動基地局番号を付加して送出する(S106)。前記既存基地局は、これらの情報をホームメモリ(HLR)を備えた網側へ送出する(S107)。
【0040】
前記既存基地局経由でこの情報を入手したホームメモリ(HLR)は、加入者のホームメモリ情報における加入端末の位置登録番号に代えて移動基地局の移動基地局番号を書き込む(S114)。それにより、前記加入者への着信時にはホームメモリ上の加入者情報の前記移動基地局番号からその移動基地局がいる位置番号を使って呼出しが行われる。
【0041】
なお、ホームメモリは加入者用のホームメモリと移動基地局用のホームメモリとに分けて構成してもよい。また、移動基地局も一般の加入端末と同じように加入者と同じホームメモリ上に登録することも可能である。しかしながら、本発明では1つの移動基地局に複数の加入端末が対応する構成を前提としているため前者の構成が望ましいと考えられる。
【0042】
次に、図7に示すように、加入端末が上記とは反対に待ち受け状態で移動無線コントロールゾーンから既存無線コントロールゾーンに移ると、加入端末は既存無線コントロールゾーンからのより高レベルなとまり木チャネルを検出し、その既存無線コントロールゾーンからの報知情報で位置番号が変わったこと認知する(S121〜124)。
【0043】
その結果、加入端末は加入端末主体の位置登録情報を送信し、この位置登録情報は既存無線コントロールゾーンの既存基地局へ与えられる(S125)。以降は従来通りであり、前記既存基地局はその位置登録情報を網側へ伝え(S126)、網ではホームメモリ上の加入者情報に前記加入端末からの既存無線コントロールゾーンの位置登録番号を記入する(S131)。
【0044】
ところで、例えば停車中の車両内の加入者がその移動無線コントロールゾーンから既存無線コントロールゾーンへ出てその後直ぐ元の移動無線コントロールゾーンへ戻った場合、停車中の車両の移動無線コントロールゾーンの傍を一般の加入者が通過する場合、それとは反対に移動中の移動無線コントロールゾーンが加入者の側を通過する場合、又は既存基地局の近傍を移動無線コントロールゾーンが通過する場合、等にはその都度電波状態の良いほうに一時的にチャネルが切り替わってしまうことが考えられる。
【0045】
その結果、一時的に加入端末及び移動基地局の位置登録情報が変化し、位置登録情報の更新によるトラヒックの増大や不必要に発生した負荷によってサービス提供が困難になる恐れがある。このような事態を回避するため、本発明では移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間で位置登録番号の切替が発生する際に、それを検出してから位置登録情報送出までに所定時間のタイムインターバルを設け、その間に変化が無いことを確認してから位置登録情報を送信するように構成する。
【0046】
図8は、本発明による切替保留時間制御の一例を示したものである。
図8の(a)及び(b)において、薄い網掛け部分は加入端末における既存基地局からの受信レベルを、そして濃い網掛けの部分は移動基地局からの受信レベルをそれぞれ示している。時間t1 は移動基地局からの受信レベルが既存基地局からの受信レベルを上回った時間を示しており、一方時間t0 は位置番号の変化を検出してから切替えを実行するまでの切替保留時間である。
【0047】
図8の(a)は、移動基地局が加入者の傍を通過するような場合を示しており、この場合はt1 <t0 となって加入端末からの位置登録情報の送出は行われない。また、図8の(b)は、移動基地局が駅等に到着したような場合を示しており、この場合にはt1 >t0 となり、図に矢印で示した時点で加入端末から位置登録情報が送出される。
【0048】
なお、上記の各例では加入端末側で切替保留時間を判断する構成をとっているが、前記切替保留時間に基づく切替制御を移動基地局や既存基地局等の上位局側で実行させてもよい。この場合、市販の加入端末がそのまま使用でき、網側のホームメモリのトラッフィック増加も回避できる。
【0049】
ところで、前述したように本発明では移動基地局がその配下の移動無線コントロールゾーンからの信号送信電力を周辺の既存無線コントロールゾーンからの信号受信電力レベルよりも常に高く設定することにより加入端末が周辺の既存無線コントロールゾーンへ接続に行かないように制御している。
【0050】
本発明によればさらに移動基地局側でその移動無線コントロールゾーン及び周辺の既存無線コントロールゾーンの回線状態を共に監視し、移動無線コントロールゾーンからの送信信号レベルが周辺の既存無線コントロールゾーンから最大信号受信レベルよりも常に所定値だけ高くなるように制御する。
【0051】
図9は、本発明による送信電力制御の一例を示したものである。
図9の(a)及び(b)も、図8の(a)及び(b)と同様に薄い網掛け部分は加入端末における既存基地局からの受信レベルを、そして濃い網掛けの部分は移動基地局からの受信レベルをそれぞれ示している。
【0052】
図9の(a)は、既存基地局の傍を移動基地局が通過するような場合を示しており、図の中央付近で既存基地局からの受信電力が最大となっている。もし、移動基地局がその送信電力を前記最大受信電力を超える値に固定的に設定すると、移動基地局の電力が過度に消費され、また前記既存基地局から離れた地域(既存基地局からの受信レベルが低い地域)を移動する際に周辺の一般加入者に不要な電波を送出してしまうことになる。
【0053】
図9の(b)は、そのような事態を回避する本発明の送信電力制御の一例を示したものである。本発明によれば、移動基地局からの送信電力は周辺の既存基地局からの受信電力よりも常に相対的に所定値だけ高くなるように可変制御される。従って、移動基地局内の加入端末の受信レベルは既存基地局からのものより常に高く、既存基地局の近傍を通過する際にも加入端末の切替制御は発生しない。また、既存基地局から離れた地点で移動基地局からの送信電力は低下し、さらに周辺の一般加入者への不要な電波の送出が防止される。
【0054】
「2」通話中の場合
図10〜13は、加入端末が通話中の状態で移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退動作を行った場合の通話チャネル切替えの制御シーケンス例を示している。
図10及び11は、通話中の状態で既存無線コントロールゾーンから移動無線コントロールゾーンへ加入者が移動した場合を示している。
【0055】
図10及び11の例は、移動基地局が既存基地局A及び既存基地局Bのそれぞれの既存無線コントロールゾーンが重複する領域内にあって既存基地局B側へ移動する場合の一例を示している。既存基地局Aと接続して通話をしていた加入者がその通話状態のまま移動無線コントロールゾーンに入ると、移動無線コントロールゾーンからの無線状態のほうが良くなるため加入端末主体のチャネル切替えが発生する。加入端末は既存基地局A及びBと移動基地局からのそれぞれの無線状態とさらに移動基地局番号を付与した無線状態報告2をそれまで通信していた既存基地局Aに報告する(S141)。
【0056】
前記報告により、既存基地局Aは移動無線コントロールゾーンの無線状態が最適と判断して網側に通話チャネルの獲得を要求する(S143及び144)。網側では前記移動基地局番号を基にホームメモリから移動基地局が存在する既存無線コントロールゾーンを求め、そこの既存基地局(本例ではA及びB)を介して移動基地局に通話チャネルの獲得を要求する(S145及び147)。
【0057】
本例では、移動基地局の移動先の既存基地局Bからの要求により(S149)、先ず移動基地局で通話チャネルが確保され(S153)、次に既存基地局Bにおいて移動基地局用の通話チャネルが確保される(S155)。それを受けた網側からのチャネル切替指示により(S162)、各通話チャネルが起動され(S164及び166)、元の既存基地局Aを通して加入端末に切替先の無線チャネルが指定される(S169)。
【0058】
以降、加入端末と移動基地局間及び移動基地局と既存基地局Bとの間で同期が確立され(S170及び172)、加入者の通話は中断されることなく維持される。なお、既存基地局Aはチャネル指定が解かれて通話チャネルを停波する(S176)。そして、前記通話が終了した時に位置登録処理が行われる。それについて図6で説明した通りである。
【0059】
図12及び13は、通話中の状態で移動無線コントロールゾーンから既存無線コントロールゾーンへ加入端末が入った場合を示している。
図12及び13では、例えば図10及び11で述べた移動基地局が域内を一周してきて元の既存基地局Aの既存無線コントロールゾーン内の元の駅に戻ってきたような場合を想定している。加入者が移動基地局から退出した後、加入端末から移動基地局に前述した周囲基地局の無線状態報告2が送出されると(S181)、移動基地局は既存無線コントロールゾーンの電波状態のほうが良いと判断してそれまで接続していた既存基地局Bへチャネルの確保を要求する(S183及び184)。
【0060】
そして、前記既存基地局Bからチャネル確保の要求を受けた網側は、対応する既存基地局にチャネル確保を指示し、既存基地局Aが通話チャネルを確保してそれに応答する(S186〜190)。その後、移動基地局から加入端末に対して切替先無線チャネルの指定が行われ(S196)、既存基地局Aと加入端末との間に同期が確立され、新たなチャネル先で通話状態が維持される(S197〜199)。また、無線チャネルの指定が完了した既存基地局B及び移動基地局の通話チャネルは停波される(S202及び203)。
【0061】
なお、先に説明した待ち受け状態における移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退時の例と同様に、通話中におけるチャネル切替動作も無線状態報告2により変化を検出した後所定時間を経過しなければチャネル切替動作は実行されない。その結果、無用なチャネル切替が回避される。
【0062】
(2)移動基地局の位置登録動作と制御チャネルの切替について
図14は、移動基地局の位置登録動作の一例を示したものである。
移動基地局は、先ず装置電源をオンした時に速やかに移動基地局がいる既存無線コントロールゾーン内の既存基地局に位置登録を行う。移動基地局の位置登録は、既存基地局からの報知情報によって通知される位置番号を通知することによって行われる。既存基地局経由で移動基地局用の位置登録を受けたホームメモリは、移動基地局番号に対して位置番号を付与する。
【0063】
図14の例では、移動基地局が既存無線基地局Aの既存無線コントロールゾーンから既存無線基地局Bの既存無線コントロールゾーンへ移動中に報知情報によって位置番号の変化を検出する場合を示している(S210〜217)。その間に、移動基地局はとまり木チャネルを切替ながら移動し(S213)、位置番号の変化を検出すると前述した移動基地局用の位置登録を実施する(S218)。
【0064】
その結果は、網側のホームメモリに記録される(S224)。図14から明らかなように、加入端末は本制御に一切関与しておらず、従って移動基地局配下の移動無線コントロールゾーン内における加入端末は移動基地局が移動基地局用の位置登録を実施した場合にも移動基地局固有の位置番号を認識したままである。
【0065】
ところで、本発明による移動基地局にはその配下に複数の加入端末が存在し、車両外部とのランダムな発着信によってその都度制御チャネルが専有される。このため、移動基地局は制御チャネルを複数所有して制御チャネルの切替要求に備える必要がある。移動基地局は発着信が無い時には通常の加入端末と同様に待ち受け状態にあり、制御チャネルの各々は既存基地局のとまり木チャネルに止まっているか、またはとまり木スキャンを行っている。
【0066】
発着信があると、移動基地局は複数の制御チャネルの中から通信可能で品質条件の良い制御チャネルを選択し、呼制御を開始する。呼量が増え使用中の制御チャネルの許容量が一杯になると、次の通信可能で品質条件の良い制御チャネルを選択する。移動基地局は、常に移動をしているので当初利用していた制御チャネルは、徐々に劣化する反面、利用していない制御チャネルは絶えず通信可能で品質条件の良い既存無線コントロールゾーンのとまり木に止まっている。
【0067】
基地局制御装置32(図5)は常に通信可能で品質条件の良い制御チャネルを選択するため、より良い品質の前記空制御チャネルが次に使用されることになる。今まで使用していた制御チャネルは、移動基地局の移動によってその品質が徐々に劣化するため、新たな呼制御には割り当てられなくなってやがて制御する呼が無くなる。前記制御チャネルはその後待ち受け状態に入り、通信可能で品質条件の良い既存基地局のとまり木をスキャンする。以下は、この動作を繰り返す事になる。
【0068】
図15は、上述した本発明による移動基地局の制御チャネル切替動作の一例を図式的に示したものである。
図15の例では3個の制御チャネルa、b及びcが使われている。それらの動作を簡単に説明すると以下の通りである。
「1」移動基地局の制御チャネルaが既存基地局Aと呼制御を実施している。「2」時間経過。体制に変化なし。「3」移動基地局の制御チャネルbで既存基地局Bと呼制御を開始する。従って、移動基地局の制御チャネルaには新たな呼制御は行わない。「4」時間経過。体制に変化なし。
【0069】
「5」移動基地局の制御チャネルaに呼制御がなくなる。「6」移動基地局の制御チャネルaがとまり木スキャンを行い、既存基地局Dを認識する。移動基地局の制御チャネルcは既存基地局Cと呼制御を開始する。従って、移動基地局の制御チャネルbには新たな呼制御は行わない。「7」時間経過。体制に変化なし。「8」時間経過。体制に変化なし。
【0070】
なお、制御チャネルは、呼を接続する発着信制御の時だけ使用するため、個々の呼接続に必要な制御チャネルの専有時間は少ない。また、制御チャネルを数秒専有するような呼があったとしても、そのような呼は異常呼として切断される。従って、制御チャネルは、その利用から開放された後数秒で待ち受け状態に入ることが可能である。
【0071】
(3)移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信動作について
図16及び17は、移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信動作の一例を示したものである。
図16において、移動無線コントロールゾーン内の加入端末への着信があった時、網側ではホームメモリにより加入者の位置情報を検索する。そこで先の(1)「移動無線コントロールゾーンと既存無線コントロールゾーンとの間の入退動作」で説明したように、加入端末の位置情報にはその位置番号に代えて移動基地局番号が記入されていることを認知する。その結果、ホームメモリは前記移動基地局番号を基に移動基地局の位置情報を探し、そこから位置番号を獲得する(S230)。
【0072】
そして、獲得した位置番号の既存基地局へ呼出を行う(S231及び232)。本例では呼出を受信した既存基地局Bから移動基地局を呼び出し、その移動基地局は配下の移動無線コントロールゾーンに対して呼出を中継する(S233及び234)。呼出を受けた加入端末はそれに応答して着信無線状態報告を返すが(S235)、移動基地局はその無線状態を一時保持し、既存基地局Bとの間の通話用の無線機を確保してから既存基地局Bへ移動基地局から見た無線状態を返信する(S236)。
【0073】
この段階では移動基地局において通話用の無線機は準備されているだけであり、以後既存基地局Bと移動基地局との間及び加入者と移動基地局との間ではそれぞれ別個の回線接続制御が行われる。すなわち、既存基地局Bと移動基地局との間では、既存基地局から網側への無線状態報告に基づいて選択された通話回線が既存基地局Bを通して移動基地局に通知される(S237〜239)。なお、この時他の周辺既存基地局との通話回線が獲得されることもある。移動基地局は、網側からのチャネル設定指示により確保してあった通話チャネルを起動し(S247)、準備された通話用の無線機で同期制御等を行って既存基地局と移動基地局との間の通話チャネルを確立する(S251〜253)。
【0074】
一方、加入端末と移動基地局との間では、前記一時保持してあった加入端末からの無線状態報告を基に移動基地局が配下の移動無線コントロールゾーンにおける通話回線を獲得して加入者に通知する(S248)。その後、加入者と同期を取って加入端末と移動基地局との間の通話チャネルを確立する(S249及び250)。既存基地局と移動基地局との間及び加入者と移動基地局との間で通話チャネルが確立すると、それを通して呼制御信号が網側と加入端末との間で送受され、最終的に加入端末への着信呼が確立する。
【0075】
(4)移動無線コントロールゾーン内の加入端末からの発信動作について
図18は、移動無線コントロールゾーン内の加入端末からの発信動作の一例を示したものである。
図18において、移動無線コントロールゾーン内の発信加入端末は、周辺の移動無線コントロールゾーン及び既存無線コントロールゾーンの無線状態を移動基地局に通知する(S260)。移動基地局は、加入端末からの発信無線状態報告を内部に一時保持して、移動基地局の発信無線状態を既存基地局に送信する(S261)。
【0076】
これ以後の動作(S262〜278)は前述した着信動作(S237〜253)と同じであり、既存基地局と移動基地局との間及び加入者と移動基地局との間で通話チャネルが確立すると、それを通して呼制御信号が網側と加入端末との間で送受され、最終的に加入端末からの発信呼が確立する。
【0077】
(5)移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼のチャネル切替動作について
移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼のチャネル切替には、移動基地局が既存基地局との間で行う既存無線コントロールゾーン間のチャネル切替と、移動基地局配下の複数の移動無線コントロールゾーンの間を加入者が移動する際の移動無線コントロールゾーン間のチャネル切替とが存在する。以下では、それらについて説明する。
【0078】
「1」既存無線コントロールゾーン間のチャネル切替
図19は、既存基地局と移動基地局との間のチャネル切替の一例を示したものである。
図19において、移動基地局は、既存基地局から移動基地局周辺の既存無線コントロールゾーンの無線状態を報知情報によって周期的に入手しながら移動している。移動基地局は、現在の呼が接続している通話回線の無線状態が他の周辺の既存基地局Aからのものより所定量劣化したことを検出すると、現在の呼が接続している既存基地局Bに対して移動基地局主体のチャネル切替を無線状態報告2に付して要求する(S280)。
【0079】
移動基地局主体のチャネル切替を要求された既存基地局Bは、網側からの無線チャネル指定指示により切替先チャネルを移動基地局に通知する(S292)。移動基地局は、新たな既存基地局Aと切替先チャネルの同期が取れしだい既存基地局Bとの割り当て通話チャネルを既存基地局Aの切替先通話チャネルに切り替え、既存基地局Bは元の通話チャネルを停波する(S293〜297)。このように、加入端末はこの場合の動作に一切関与せず、加入端末におけるチャネル切替処理は発生しない。
【0080】
「2」移動無線コントロールゾーン間のチャネル切替
図20は、移動基地局と加入端末との間のチャネル切替の一例を示したものである。
図20の例は、例えば電車等の移動基地局がその配下に各車両等に割り付けられた複数の移動無線コントロールゾーンの集合体を有しており、その移動基地局が移動中に車両内部の加入者が別の移動無線コントロールゾーン(別の車両)に移動するような場合を示している。
【0081】
加入端末は、移動基地局及び既存基地局が報知する周辺無線コントロールゾーン情報(移動無線コントロールゾーン及び既存無線コントロールゾーンの構成情報)に基づいて各無線コントロールゾーンの無線状態を監視し、一定間隔でその無線状態報告2を移動基地局に通知する(S300)。ここで、通話中の加入者が移動基地局配下の隣接した複数の移動無線コントロールゾーン間を移動した場合、移動元の移動無線コントロールゾーンの無線状態が劣化し、反対に移動先の移動無線コントロールゾーンの無線状態が良くなる。
【0082】
この時、移動基地局は移動元の移動無線コントロールゾーンより移動先の移動無線コントロールゾーンの無線状態方が良くなったと判断して移動先の移動無線コントロールゾーンの回線を獲得し、加入端末に切替先チャネルを通知する(S302〜304)。そしてその切替先チャネルと加入端末との間の同期が取れしだい通話チャネルを切り替える(S305〜307)。
【0083】
本例の動作では、前述した図19の場合とは反対に既存基地局は一切関与しない。従って、既存基地局と移動基地局との間においてチャネル切替処理は発生しない。なお、移動基地局は、加入端末との間で通信ビットエラー等が発生した場合にも品質劣化によるものと判断して移動無線コントロールゾーン内におけるチャネル切替を行なう。
【0084】
(6)移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼の切断動作について
移動無線コントロールゾーン内の加入端末の呼の切断には、大きく分けて終話動作、移動基地局と既存基地局との間のスケルチ終話、及び移動基地局と加入端末との間のスケルチ終話が上げられる。以下、それらについて説明する。
【0085】
「1」終話動作
図21は、終話動作の一例について示したものである。
図21に示すように、網側からの終話の場合、通話チャネルを介した呼制御による終話処理が既存基地局と加入端末との間で行われた後、網側からその既存基地局を経由して移動基地局にチャネル切断が通知される(S310及び311)。移動基地局は加入端末にチャネル切断を中継するとチャネル切断の確認を既存基地局に返信し(S311及び314)、既存基地局は通話チャネルを切断する(S317)。また、加入端末は、チャネル切断を受信すると確認を返信する(S312及び313)。
【0086】
加入端末からのチャネル切断の確認を受信した移動基地局は、加入端末側の通話チャネルを切断する(S315)。また、加入端末側の切断の場合にも、通話チャネルを介した呼制御による終話処理が既存基地局と加入端末との間で行われ、網側から既存基地局を経由して移動基地局にチャネル切断が通知される。以降の動作は上記と同様である。
【0087】
「2」移動基地局と既存基地局との間のスケルチ終話
図22は、移動基地局と既存基地局との間のスケルチ終話制御シーケンスの一例を示したものである。
図22の例では、移動基地局及び既存基地局Bの双方が、その間の通話回線を監視中に無線状態が所定レベルより低下したことを検出し、その状況が所定時間待っても回復しないことによりスケルチ終話を検出する(S320、321及び325)。
【0088】
その結果、既存基地局は網側にチャネル切断を通知して通話回線を切断する(S322〜324)。一方、移動基地局は配下の加入端末にチャネル切断(スケルチ終話)を通知して加入者からの確認通知を待ち、その確認通知受信後に通話回線を切断する(S326〜328)。
【0089】
「3」移動基地局と加入端末との間のスケルチ終話
図23は、移動基地局と加入端末との間のスケルチ終話制御シーケンスの一例を示したものである。
図23の例では、移動基地局が配下の移動無線コントロールゾーンに割り当てた通話チャネルの無線状態を監視し、所定レベルより無線状態が悪化し且つ所定時間待ってもその状況が回復しない場合に(S330)、加入者にチャネル切断(スケルチ終話)を通知する(届かない事を前提にしている)(S332)。
【0090】
それと同時に、移動基地局は既存基地局への通話チャネルの送信を停止する(切断)(S335)。これによって、既存基地局は下位局のスケルチ終話を認知し、上述したのと同様に網側に対して通話チャネルの切断処理を要求する(S336〜339)。
【0091】
(7)移動無線コントロールゾーン内の専用サービスについて
これまで述べた本発明によれば、以下の例で示すように交通媒体に固有の種々のサービスを提供することが可能となる。車内専用サービスには、音声やデジタル信号による通話チャネルを利用したサービスや制御チャネルを利用した少量の情報サービス等が上げられる。
【0092】
「1」通話チャネルを利用したサービス
図24は、本発明による通話チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示したものである。
図24では、いわゆる車内専用の特番ダイヤルサービスを提供する。加入者は、特番(先頭に『#』や『*』を押す等の『0』,『1』以外の番号)をダイヤルすると(S340)、移動基地局内の移動基地局制御装置34(図5)がその特番を認識して、同基地内の付加サービス提供部35(同図)がそのサービス内容を決定する。その結果、例えば車内の案内係等が呼出される(S345)。
【0093】
本例では通話チャネル内のデータ種別(S346)は何ら規定しておらず、通話チャネルは音声による情報提供やデータ通信(パーソナルコンピュータ通信やFAX等)に使用される。サービス例としては、例えば車内の注文(カフェテリア)や問い合わせ(観光案内)等が考えられる。
【0094】
「2」制御チャネルを利用したサービス
図25〜27は、本発明による制御チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示したものである。
図25では、加入端末に対して制御チャネルを利用した付加情報サービスの例を示している。本例では、移動基地局から周期的に報知情報を送出する際に前記情報がそれに付加されて送出される(S360)。なお、別の特定タイミングや周期毎に情報提供することも可能である。
【0095】
加入端末は、常に移動基地局が送信してくる報知情報を受信しており、前記報知情報に付加された情報を認識すると、それを加入端末の表示部(液晶等)に表示する(付加情報サービス)。付加情報のサービス例としては、駅到着の表示を駅の発着に合わせて移動基地局内の付加サービス提供部35が移動基地局制御装置34に指示し、前記移動基地局制御装置34が報知情報に情報を付与して送信するテロップサービス等が考えられる。
【0096】
図26及び27では、発着信拒否サービスの例を示している。ここでは前記報知情報における規制に関する情報を利用し、列車等が移動を始めると同時に発着信規制を行う。図26の着信拒否サービスの例では、それにより通話拒否オンの状態となった後、網側からの呼出があると(S370及びS373〜375)、移動基地局は加入端末へALERTメッセージを送出することなく加入端末を開放する(S377)。従って、この場合に加入端末は鳴動しない。
【0097】
また、図27の発振拒否サービス例では、通話拒否オンの状態で(S380)加入端末から発呼があった場合に(S381)、移動基地局は単にその加入端末を開放する(S382)。通常の発着信規制の場合には、加入者は例えば通話可能な他の無線コントロールゾーンへ移ることも考えられるが、本例のように発着信シーケンスそのものを打ち切ることで加入者は他の無線コントロールゾーンに移ることを断念するものと思われる。
【0098】
また、本発明によれば上記と同様な手順で種々の情報規制サービスを提供することができる。例えば、ある特定の移動無線コントロールゾーン(グリーン車両等)だけを発着信規制の対象からはずすことによって、移動無線コントロールゾーン間で情報内容の差別化を図ることも可能である。
【0099】
「3」通話/制御の両チャネルを利用したサービス
図28及び29は、本発明による通話/制御の両チャネルを利用した車内専用サービスの一例を示したものである。
本例では、加入者が移動基地局内の付加サービス提供部35に通話チャネルを通して音声又はデータによる指示を与えると、一定時間経過後に制御チャネルを通してその返答/応答が通知される。
【0100】
このサービスは、前述した通話チャネルを使用したサービス例(図24)と制御チャネルを利用したサービス例(図25)とを組み合せて実現されており、ステップS390〜400までが前者のサービスに相当し、次のステップS401〜403が後者のサービスに相当する。なお、返答/応答にも音声チャネルを使用する場合もあり、その例が残りのステップS402〜415に示されている。これは、前者のサービスと同様である。本サービス例としては、例えば到着駅を音声で指示すると、携帯電話端末の表示器に到着時刻を表示させる等のサービスが考えられる。
【符号の説明】
【0101】
10〜14 既存基地局
20〜24 既存無線コントロールゾーン
30 移動基地局
31 対基地局送受信装置
32 基地局制御装置
33 移動局制御装置
34 移動基地局制御装置
35 付加サービス提供部
36 保守運用装置
37−1〜37−n 対移動局送受信装置
40〜42 移動局
50〜53 既存無線コントロールゾーン重複点
60−1、60−2 移動無線コントロールゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリア内を範囲とする固定の無線コントロールゾーンを管轄する既存基地局と、移動媒体の内部空間に割当てられた移動する無線コントロールゾーンを管轄する移動基地局と、移動局とから構成される移動通信システムにおいて、
前記移動基地局は、
前記既存基地局との間で移動局としての通信処理を行う第1の通信手段と、
前記移動する無線コントロールゾーン内の移動局との間で基地局としての通信処理を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との間のパス接続制御を行う移動基地局制御手段と、を有し、
前記移動局は、
前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
所定エリア内を範囲とする固定の無線コントロールゾーンを管轄する既存基地局と、移動媒体の内部空間に割当てられた移動する無線コントロールゾーンを管轄する移動基地局と、移動局とから構成される移動通信システムにおいて、
前記移動基地局は、
前記既存基地局との間で移動局としての通信処理を行う第1の通信手段と、
前記移動する無線コントロールゾーン内の移動局との間で基地局としての通信処理を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との間のパス接続制御を行う移動基地局制御手段と、
前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有することを特徴とする移動通信システム。
【請求項3】
所定エリア内を範囲とする固定の無線コントロールゾーンを管轄する既存基地局と、移動媒体の内部空間に割当てられた移動する無線コントロールゾーンを管轄する移動基地局と、移動局とから構成される移動通信システムにおいて、
前記移動基地局は、
前記既存基地局との間で移動局としての通信処理を行う第1の通信手段と、
前記移動する無線コントロールゾーン内の移動局との間で基地局としての通信処理を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との間のパス接続制御を行う移動基地局制御手段を有し、
前記移動局は、
前記移動する無線コントロールゾーンに対する入退時に、その入退の状態が所定時間継続した場合に回線接続処理及び回線切替処理を行う回線処理手段を有することを特徴とする移動通信システムにおける移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−176874(P2011−176874A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103245(P2011−103245)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−148629(P2007−148629)の分割
【原出願日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】