説明

移動局の位置判定方法

セルラー通信ネットワーク(10)では、仮想基地局識別データを有する追加の制御信号は、明確な位置、例えば、送信機(7A−G)から無線システムに配信される。各仮想基地局識別データと、その制御信号が送信される位置間との接続が存在するので、移動端末(6)は、汎用的な処理に従って自身の位置推定を改善するためにこの情報を使用することができる。それゆえ、移動端末(6)のすべてにおいて変更を必要としない。移動端末(6)は、仮想基地局識別データを使用する通信システム(10)に接続することはできない。これは、このデータが、位置推定目的のためだけに意図されているからである。この方法では、位置推定を改善するために必要な追加の情報を提供するための装置を、かなり簡単にかつ廉価に作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、セルラー通信システムに関するものであり、特に、このようなシステムの移動端末の位置の推定に関するものである。
【0002】
背景
移動装置の位置の判定の可能性は、アプリケーションデベロッパ及び無線ネットワークオペレータに、位置に基づき、かつ位置に関するサービスを提供させることを可能にしている。これらの例には、案内システム、ショッピング支援、友人検索及びユーザ自身の周辺についての移動体ユーザ情報を与える他の情報サービスがある。
【0003】
商用サービスに加えて、いくつかの国での政府は、緊急発呼の位置を判定することを可能にすることを、ネットワークオペレータに要求している。例えば、米国での政府の要求事項(FCC E911)は、一定の割合のあらゆる緊急発呼の位置を判定することを可能にしなければならないことを要求している。屋内環境と屋外環境との間で課される要求に違いはない。
【0004】
屋外環境では、位置推定は、外部の位置判定方法、例えば、アシスト型(Assisted)GPS(A−GPS)のようなGPS(グローバル測位システム)に基づく方法を使用して実行することができる。位置推定は、無線ネットワーク自身を使用して実行することもできる。無線ネットワークを使用する方法は、2つのメイングループに分けることができる。1つ目のグループは、例えば、セル−IDを使用することによって、移動端末が接続される無線セルに基づく方法である。2つ目のグループは、いくつかの基地局(BS)からの無線信号の測定と、例えば、時間差(TD)を使用する端末位置の判定を使用する。
【0005】
移動ネットワークに接続することを可能にするために、あるいは、接続時にハンドオーバを実行することを可能にするために、移動端末は、典型的には、自身の基地局からだけでなく、他の基地局からの利用可能な信号を絶えず測定する。これらの信号は、典型的には、送信の無線状態を測定するために意図されている制御信号であり、この制御信号は、他のデータ中に、送信基地局との通信をどのように確立するかについての情報を含んでいる。特に、この制御信号はデータを含み、これは、それ自身によって、あるいはその制御信号が送信されたキャリヤの周波数との組み合わせで、基地局識別データを構築する。つまり、移動端末は、送信基地局のアイデンティティと無線状態の推定を取得することができる。移動端末は、典型的には、近隣リスト(neighbouring list)内のGSM(移動通信用グローバルシステム)において、この情報をコンパイルする。このリストは、情報としてネットワークへ送信される。
【0006】
位置推定は、近隣リスト内の測定値に基づくことができる。あるものは、無線基地局からの距離との関係と、基地局の正確な位置についての情報を組み合わせた無線状態を使用する。基地局位置は、通信ネットワーク内で把握されている。これは、様々なアルゴリズムに従って位置を推定するために、近隣リストを容易に使用できることを意味する。位置推定の精度は、一般的には、セルのサイズに比例する。
【0007】
三角測量法あるいは時間差(TD)方法は、2つ以上の異なる基地局に関連付けられている信号を使用する。これらの信号は、位置を計算するために使用される。あるいは、これらの信号は、基地局からどれくらいの距離に移動端末が位置しているかを計算するために使用される。この計算は、移動端末と様々な基地局間を信号が伝播するのに要する時間における相対的あるいは絶対的な差分に基づいている。TD方法で達成可能な精度は、システムアーキテクチャ、物理的な状態及び無線状態に依存する。典型的には、移動テレフォニーシステムにおけるTD方法の精度は、50から150メートルである。また、TD方法は、比較的、時間及びリソースを消費する。
【0008】
指紋方法は、あらゆる場所が、多かれ少なかれ、受信無線信号の固有の特徴的な署名を持っているという事実を使用する。これは、建物及び障害物によるマルチパス(multi-pathing)及び反射の結果である。異なる位置の特徴的な無線署名をデータベースに記憶しておき、受信した信号の署名と、データベースに記憶されている署名を比較することによって、装置の位置を判定することが可能となる。指紋方法は、逐次更新型のデータベースを必要とする。結果が良好なものになることは、典型的には、いくつかの異なるソースあるいは基地局からの信号と照合することが可能となることに依存する。
【0009】
屋内に位置している端末は、典型的には、周辺の屋外エリアをカバーする基地局との接続を持っている。この屋外エリアは、端末が屋外に位置している場合よりもその品位は低下する。屋内での通信範囲状態(coverage stiuation)を改善するためには、たくさんのより大きな建物に屋内移動テレフォニーシステムを装備することである。屋内システムのほとんどは、たいていは、基地局と分散アンテナシステムあるいはリーキング(leaking:漏出)ケーブルアンテナを構成している。広範囲に跨る建物に対しては、典型的には、リピータが使用される。これは、建物全体が1つの大きな無線セルとして出現し、かつ端末がその建物内のどこに位置しているかを判定することができなくなることになる。また、屋外に位置している基地局からの信号が弱くなるために、例えば、三角測量法を使用する、より精度の高い方法を通常に適用することが不可能となる。
【0010】
ある正攻法のソリューションは、測位用の付加的なシステムを使用することであり、これは、任意の移動テレフォニーシステムに基づいていないシステムである。これは、屋内GPSシステム、WLAN(無線ローカルエリアネットワーク)あるいはブルートゥースに基づくシステムあるいはいくつかの他のセンサーソリューションとすることができる。しかしながら、このようなシステムは、追加の複雑な機器を必要とし、また、端末には、専用のハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方を装備させなけばならない。これは、高価なソリューションとしてしまう。
【0011】
別の正攻法のソリューションは、屋内基地局の数を増やすこと、つまり、セルのサイズを小さくすることである。しかしながら、基地局は高価な機器であり、そのため、このようなソリューションはかなり費用がかかる。
【0012】
米国公開特許公報2003/0008644A1では、リピータを備える無線システム内の端末の位置を推定するための方法及び装置が開示されている。専用のアイデンティティコードが、各リピータに対して送信される。端末には、これらのコードを受信し、解釈するためのハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方が提供されている。CDMAシステムの実施形態では、識別コードは、リピータ識別用に専用に予約されている所定のオフセットの擬似ノイズシーケンスで実現することができる。リピータアイデンティティは、位置推定を改善するために使用することができる。いくつかの専用のソリューションが規格の既存フレームで可能であるとしても、このソリューションは、典型的には、専用アイデンティティコードを識別することを可能にするために、端末に追加のソフトウェアを必要とし、また、様々な通信規格の追加(addition)を必要とするという欠点がある。
【0013】
要約
従来のソリューションでは、位置推定の精度の改善は、高価な追加の装備に投入される大量の資本に関係している。また、専用のハードウェアあるいはソフトウェアを必要とするいくつかのソリューションは移動端末に追加される。これは、市場に現存するあらゆる端末が位置決めが可能でない、あるいはそれらがアップグレードされなければならないことを意味する。更に、現在あるいは近い将来の規格で動作可能なソリューションが要望されている。
【0014】
本発明の目的は、追加の装備への投資が制限されている状況で、精度が改善された移動端末の位置推定を提供することである。本発明の更なる目的は、既存セルラー規格を変更する必要がなく、また、移動端末を新調あるいはアップグレードする必要がない方法及び装置を提供することである。本発明の更に別の目的は、分散アンテナシステム、リーキングケーブルアンテナ及び、リピータを備えるシステムの少なくとも1つを含むシステムに構成されるように適合されている改善された位置推定を提供することである。本発明の更なる別の目的は、屋内システムでの改善された位置推定を提供することである。本発明の更に別の目的は、高速応答を与える位置推定を提供することである。
【0015】
上記目的は、請求項に従う装置及び方法によって達成される。一般的に言えば、仮想基地局識別データを有する追加の制御信号は、明確な位置から無線システムに配信される。各仮想基地局識別データと、それが送信される位置間との接続が存在するので、移動端末は、汎用的な処理に従って自身の位置推定を改善するためにこの情報を使用することができる。仮想基地局識別データは、通常の基地局識別データと同一のフォーマットで提供されるので、移動端末のすべてにおいて変更を必要としない。但し、移動端末は、仮想基地局識別データに関連付けられているセルを使用する通信システムに接続することはできない。これは、このデータが、位置推定目的のためだけに意図されているからである。このような方法で、位置推定を改善するために必要な追加の情報を提供するための装置は、かなり簡単にかつ廉価に作成することができる。
【0016】
移動端末は、仮想基地局識別データと実際の基地局識別データとを先天的には区別することができない。本発明の実施形態では、それゆえ、移動端末は、仮想基地局識別データに関連付けられているセルを使用する通信システムへの接続へ試行することすら禁止される。あるいは、移動端末が接続しようとする確率が少なくとも削減される。このような明確な禁止を示すデータは、仮想基地局識別データとともに送信することができる。接続試行確率を削減するための別の可能性は、仮想基地局識別データを搬送する制御信号の電力及び品質の少なくとも一方を制御することであり、これにより、移動端末は、接続目的のために仮想基地基地局識別データを簡単に選択することはない。
【0017】
本発明は、任意のセルラー通信システムに適用することができるが、特に、屋内システムで好適に実現されるように適合されている。このシステムは、特に、分散アンテナシステム、リーキングケーブルアンテナ及びリピータの少なくとも1つを使用するシステムの類である。
【0018】
本発明は、従来技術のソリューションに比べて多くの利点を持っている。本発明は、新規の方法ではない、既存のブロードキャストデータのタイプを使用しているので、提示の実施形態は、容易かつ廉価に既存のシステムに導入され、それゆえ、追加の機能あるいは装置の複雑さは低くなる。また、市場に現存する移動端末を、まったく変更することなく、提案するシステムで使用することができる。位置推定を行うリクエストとそれからの結果を取得するまでの遅延もかなり小さい、これは、いくつかの実施形態の端末は、システムへリクエストを送信することなく、自身の位置を判定することができるからである。
【0019】
詳細説明
本発明の動作を完全に理解するために、まず、セルラーネットワークにおける一般的な位置推定の概略を説明する。
【0020】
図1に示される、セルラーネットワーク10を用いる基本概念は、グリッドセル4A−Jとしてネットワークを構築することである。ここで、各セル4A−Jはそれぞれ、無線基地局2A−Jによってカバーされるエリアである。通信は、異なる無線リソースを介して発生する。隣接セル内で移動電話6と無線基地局2A−J間の干渉を回避するために、移動電話6と基地局2A−J間の通信は、異なるリソース、即ち、若干異なる構成あるいは設定の、例えば、周波数あるいは符号を使用する。これらのリソースあるいは「構成(コンフィグレーション:configurations)」の数は制限されている。GSMシステムでは、リソースは、制限数の許容キャリヤ周波数によって形成され、これらは、異なるセルで通信を分割するために使用される。WCDMA(広帯域符号分割多元アクセス)システムでは、リソースは、制限数の異なる符号によって特徴付けられている。無線リソースの数が制限されることは、ネットワーク10を慎重に計画することが重要であることを意味している。
【0021】
移動局(MS)、移動電話、移動端末及びハンドセットは、すべて位置決め対象の機器とみなしている。これらの用語は、本開示では等価表現として使用されるものとする。この機器は、典型的には、移動電話、ハンドヘルドコンピュータいわゆるパーソナルデジタルアシスタント(PDA)あるいは、セルラーあるいは移動ネットワークの無線受信機に装備される他の機器あるいは装置である。
【0022】
多くのセルラーネットワーク10では、移動端末6は、継続的に無線信号の受信状態を測定している。この理由にはいくつかある。1つは、不必要に高い送信電力を送信することを回避するために、送信電力を変更可能にするためである。一般的には、必ずしも必要ではないが、最高の無線状態の無線基地局は、セルラーネットワークの接続のために使用されるものの1つとなる。最高無線状態の基地局は、多くの場合、移動電話6に最近接しているものでもある。図1では、移動電話6は、基地局2Fを介して接続されている。つまり、移動電話6は、特定の基地局2Fのセル4F内に位置している。無線セルは、基地局を囲むエリアとして定義される。ここで、この基地局は、移動電話と最高の無線接続状態にある基地局である。基地局に関連付けられている送信地点の位置はセルラーネットワークによってわかるので、最高の無線状態の基地局のアイデンティティは、ここでは、移動電話のおおよその位置推定を与える。セルのサイズは、基地局の密度に比例する。図1では、それゆえ、移動電話6は、セル4F内に存在すると結論づけることができる場合がある。
【0023】
どの基地局が接続しているかを知るために、移動電話は、定常的に、他の基地局から送信される信号も測定する。これらの信号は、移動電話と基地局間の無線状態を測定するために意図されている専用の制御信号である。この信号は、他のデータとの間で、信号を送信している基地局とどのようにして接続を確立しているかについての情報を含んでいる。上述のように、近隣セル内の通信は、干渉を回避するために、若干異なる構成のリンクを介して実行される。制御信号は、典型的には、これらの異なる構成を使用して送信される。例として、GSMでは、ある基地局からの制御信号は、近隣の基地局から送信される制御信号とは異なる周波数上で送信される。しかしながら、基地局は、更に、再使用パターンで同一の周波数を使用することができる。互いに、同一周波数上の制御信号を送信しているが、異なるセルに関連付けられている基地局を分けることを可能にするためには、制御信号は、ある基地局からの制御信号と別の基地局からのものを区別することを可能にする他の情報も含んでいる。この情報は、単独で、あるいは制御信号の周波数との組み合わせで、特定の基地局を識別するための機能を与える。換言すれば、制御信号は、基地局識別データを備える。GSMでは、いわゆるカラーコードが、互いに異なる基地局を分別するために使用される。
【0024】
ネットワークは、典型的には、どの基地局が近接して存在しているかについて移動端末へ通知する。これにより、移動電話は、どの制御信号を待機するかを知ることになる。移動電話は、測定対象の情報がアクセス可能でない場合に、他の基地局それぞれからの信号を測定することができる。これは、例えば、ユーザのオペレータが通信範囲を持っていないが、他のオペレータが通信範囲を持っているエリア内の場合に実現することができる。基地局から送信される制御信号の測定結果は、典型的には、コンパイルされた方法で移動端末に記憶される。このような近隣基地局のリストあるいは、少なくともそのようなリストに対応するデータは、移動端末内で更新し続けられ、かつ近隣リストとして頻繁に参照される。
【0025】
図1の状況に対するこのような近隣リストの例を、図2に示す。このリストは、無線状態の品質に基づいて記憶され、リストの最上位には最高無線状態の基地局が存在している。リストの各行100は、ある特定の基地局を参照する。この例では、第1列102は、基地局のアイデンティティを備えている。第2の部分104は、付加的な情報を備えている。本実施形態では、第2列105は、一般情報を備えている。第3列106から第5列108は、例えば、各基地局についての無線状態の品質の測定値、信号品質、例外(barring)フラグあるいはハンドオーバ決定用に重要なデータの類に関連するデータを備えている。
【0026】
このようなリストの測定値は、継続的に、基地局に送信され、無線状態に関して更新されるネットワークを維持する。これにより、基地局あるいはそれに接続されている任意のネットワークサーバは、任意の接続されている移動端末の近隣リストの内容を検索することができる。
【0027】
本開示では、「ポジション(位置:position)」と「ロケーション(場所:location)」いう表現を使用している。位置は、座標あるいは緯度(degree)(例えば、WGS−84基準点)として与えられる地理的位置を意味するように意図されている。これには、方位及び方向(heading)の少なくとも一方、速度、加速度等も含んでいても良い。位置は、相対測定値として与えられても良い。場所は、設備あるいは地域のタイプ(あるいはそれに関連して)によって定義されるより主観的な位置である。場所の例には、:「軍事地域/設備」、「病院」、「会社」、「映画館」、「非常口」がある。「場所」という表現は、「位置」によって構成されているものが何かについても意味するものと想定されている。
【0028】
通常の位置推定のほとんどは、移動端末との最高の無線状態の基地局、即ち、近隣リストの最上位の基地局のセル内にあるとしておおよその位置を判定するものである。図1では、これは、移動電話6がセル4F内に位置しているという可能性があると結論づけることが可能であることを意味する。異なるアルゴリズムに対して近隣リスト内のいくつかのエントリを使用することは、移動電話がとどまっているセルよりもより良い精度を計算できることを意味する。図2では、基地局2Gは、近隣リスト内の2番目の位置にあることがわかる。そして、図1で破線で示される、セル4Gに面して60度の方向のセクタに移動電話が位置していることはかなり確からしい。また、基地局2Iは、近隣リストの3番目のエントリであるので、移動端末6は、セル4Iに最近接しているセクタの半ばに位置していることも確からしい。また、例えば、信号強度率等を考慮することによって精度を更に向上することができる。
【0029】
位置及び場所の少なくとも一方についての推定のために、近隣リストを解釈する解釈あるいは計算は、セルラーシステムあるいは端末内の一方で行われても良い。位置推定がシステム内、例えば、ネットワークサーバ内で行われる場合、移動端末は、それに対応する近隣リストあるいは測定を無線基地局に送信しなければならない。移動端末自身が位置推定を実行する場合、その位置推定は、基本概念上は、例えば、セルIDの形態で、最近接基地局の判定を備えることができる。このような位置情報は、ある要件では、位置判定に基づく多くのサービスを十分にサポートすることができる。しかしながら、実際の地理位置が推定される場合には、移動端末は、まず、特定の周辺についての情報をまず必要とする。このような情報は、異なる基地局の既知の位置を少なくとも含まなければならず、また、測定対象の基地局に関する指示から推定することができる。位置、建物あるいは周辺環境を特定することができるその他の情報も有用となり得る。例えば、特定の建物についてのこのような特定の情報は、移動体の位置判定が不可能な地域を除外することが可能な地図情報を構成することができる。建物の壁面内にあるいは床から10メートルの空中で静止して移動端末が存在していないことは十中八九は自明なことである。
【0030】
セルラーシステム内の屋内通信範囲は、通常は、屋外通信範囲よりも品質は低下する。それゆえ、大規模の建物の多くは、自身で所有するローカルセルあるいはセル群を持っている。典型的な従来よりのシステムが図3に示される。1つの単一の基地局8は、分散アンテナシステムを提供し、これは、屋内エリアに渡って分散されているいくつかのアンテナ14を備えている。リピータ12は、配信中の信号を増幅するために存在し得る。すべてのアンテナは同一の情報を提供するので、移動端末6は、すべてのアンテナ14をまとめて1つの送信システムとしてみなしている。これは、第一のセル4に関連付けられている。また、移動端末6は、自身がどのアンテナと通信しているかを気にしないので、上述のような正確な位置推定はあまり良好には機能しない。位置推定精度を向上するための方法の1つは、より小さいセルを提供することである。
【0031】
本発明では、リピータあるいは任意の他のアクティブコンポーネントによって提供される、分散アンテナシステムとリーキングケーブルシステム及びサブシステムが、本発明をより良好に適合されるものと想定される。用語「アンテナ」は、通常は、分散アンテナシステムのアンテナだけでなく、リーキングケーブルアンテナ上のリーキングケーブルの部分の両方に対するものとして使用される。
【0032】
屋外通信範囲に対する基地局の典型的な接続不良は、三角測量用に屋外に配置される基地局を使用することを難しくする、あるいは更には、不可能にする。ある基地局のみが屋内通信範囲用に頻繁に使用されるので、位置判定用に、内部での屋内三角測量を使用することは不可能である。広範囲に渡る建物(例えば、空港)のいくつかでは、リピータが使用される。次に、セルは、その範囲は十分に大きなものとなり、この範囲では、移動電話は、かなり大きなセルに接続することになる。即ち、位置推定精度は低下する。
【0033】
近隣リストに基づく位置推定の精度は、基本的には、セルサイズに比例する。より小さいセルは、一般的には、良好な位置推定をもたらす。しかしながら、セルは基地局によって制御され、また、基地局は、一般的にはかなり高価である。しかしながら、位置推定のために使用される基地局の機能は、かなり制限される。事実、基地局識別データを有する制御信号だけが明確な位置から送信される場合には、この信号は、位置決めルーチンを実行するためには十分である。本発明は、この見解に基づいているものであるので、「仮想」基地局を導入し、あるいは少なくとも、「仮想」基地局識別データを送信することを少なくとも提供する。
【0034】
本発明は、多くのセルラー通信ネットワークに適用可能である。しかしながら、分散アンテナシステム、リーキングケーブルシステムあるいはリピータによって供給されるサブシステムに配置される移動端末の位置を推定するために適用される場合に、特に、有効であることが現在確信されるものである。本発明に従う位置判定方法の精度は、例えば、本発明が実現される施設あるいは環境、また、他の必要条件及び様々な加入者の要求に依存する。しかしながら、20−50メートルの位置精度は、現実的なものと思われる。本発明は、屋内システム、地下鉄道システム(地下鉄)及び、セルラーマクロシステムに接続されるサブシステム、例えば、リピータを使用するマクロ無線セルに接続されているトンネル内に位置する移動端末の位置決めのために効果的に使用することができる。
【0035】
本発明に従う位置決め方法は、セルラー移動無線システム内の位置決めを主要な目的としている。GSMは、本開示で示される実施形態で使用される移動無線テレフォニー規格である。しかしながら、本発明は、他のセルラー移動無線システム及びそれらの関連規格にも適用可能であり、これには、例えば、TDMA(時分割多元アクセス)、CDMA(符号分割多元アクセス)、広帯域CDMA(WCDMA)及びTDD(時分割全二重通信)技術に基づく他の無線規格がある。
【0036】
本発明の基本概念は、より大きなセルを、いくつかのより小さな仮想セルに分割することであり、この仮想セルは、実際の無線セルではなく、その意味では、この特定の仮想セルのそれぞれは無線基地局によって管理されず、また制御されない。その代わり、仮想セルは、ある位置に関係付けられている、ある仮想基地局識別データに関連付けられるように定義される。仮想基地局識別データは、関係する位置から送信される異なる制御信号によって、無線インタフェースに提供される。つまり、仮想セルは、付加的な制御信号として存在する。これは既存のタイプのものであるが、位置推定のために使用されるためだけの目的で送信される。
【0037】
一般的には、「仮想」は、信号あるいは装置が、ある構成においてのみ実際の信号あるいは装置として見なすことを意味するために使用される。本開示では、このような構成は、移動端末の位置判定の目的である。別の構成では、「仮想」装置あるいは信号は、その類の実際の信号あるいは装置としては動作しない。例として、「仮想」制御信号は実際のセル及び基地局に対応する信号ではないばかりか、位置推定用に使用されるためだけに送信される。同様にして、「仮想」基地局は、これは、「仮想」制御信号を送信するものであっても良く、例えば、制御データを送信する単純な送信機であっても良いが、通信ネットワークへ移動端末を接続するために使用することはできない。しかしながら、仮想基地局識別データは、実施の基地局識別データを区別することはできない。
【0038】
本開示の実施形態で説明される機器及び構成とともに説明される建物あるいは他の地域においては、位置推定は、標準機能を使用して実行される。特に、移動端末が無線ネットワークに接続する場合にセットアップ及びコンフィグレーション用に通常使用される移動端末の測定機能を使用することができる。一方で、しかしながら、仮想基地局は、典型的には、近隣リストのより下位に存在しているので、位置判定アルゴリズムは、仮想制御シグナリングによってもたらされる情報により注意を払うために、若干修正しないければならないことに注意する。
【0039】
図4は、本発明に従う分散アンテナシステムの実施形態を示している。従来システムで存在する部品及び装置に加えて、図4のシステムは、付加的に、分散アンテナ14によってカバーされる同一のエリアに渡って分散された、いくつかの送信機7A−Gを備えている。各送信機7A−Gからは、各送受信機7A−Gに対して専用の仮想基地局識別データが送信される。これのために、セル4内に存在する移動端末6は、仮想基地局識別データを有する制御信号も経験することになる。基地局識別データが仮想タイプであるかどうかについての事前の情報は存在していないので、移動端末6は送信機7A−Gを正規の基地局のアンテナとして解釈し、かつ7つの追加のマイクロセル5A−Gが存在しているという印象を持っている。位置判定手段を備えるネットワークサーバには、基地局8を介して、これらの追加の送信機7A−Gのそれぞれの位置についての情報が提供され、また、位置判定は、通常のルーチンに従って実行することができる。図4に示される移動端末6は、測定値に基づく近隣リストを生成することになる。ここで、送信機7Aは、すべての送信機7A−Gの内の最高のもののところに位置している。これによって、移動端末6を、仮想セル5A内に存在するように配置することができる。位置精度の更なる微調整は、他の送信機7A−Gからの処理情報でも達成することができる。
【0040】
本実施形態の送信機7A−Gは、通常の通信ノードとして移動テレフォニーネットワークに直接接続されている必要がない建物の天井あるいは壁面の小さい無線送信機であることが好ましい。送信機7A−Gは、通信ネットワークを介して更に通信されることが意図されている移動端末からのアップリンクデータを処理することができない。送信機7A−Gは受信機手段を持っていても良いが、これらの手段は、ネットワークと送信機7A−G間の通信のためだけに、例えば、送信周波数あるいは電力を制御するためだけに意図されているものである。その意味では、送信機7A−Gは、よりユーザ端末のように動作する。精度は、送信機の密度と分散パターンに依存するので、特定の局所的な要求に容易に適合する。テレフォニーシステム自身の実際のレイアウトが、送信機の構成を制限することはない。密度は、建物内の異なる位置間でも変化し得る。但し、WCDMAに対しては、近距離−遠距離(near-far)干渉問題を考慮しなければならないことに注意する。実際のアンテナの1つから遠くに位置している別の送信機は、仮想送信機に近接して位置しているユーザに対して通信問題を生じ得る。
【0041】
位置決め目的のために仮想セルを導入する一般的な概念は、汎用セルラーシステムにも使用することができる。図5では、汎用セルラー無線通信システムのセルが示されている。基地局2は、基地局2に関連する基地局識別データを有する制御信号を送信し、また、セル4は、基地局2に関連付けられている。セル4内の異なる位置で追加の送信機7A−Gを導入することによって、仮想セル5A−Gが定義される。送信機7Gは、基地局2と併せて位置決めされる。移動端末6からの観点では、このシステムは、マクロ−マイクロ−システムのように見える。ここで、実際のセル4はマクロセルであり、仮想セル5A−Gは、マイクロセルに対応する。位置判定の精度は、相対的に廉価な送信機装置の追加によって著しく上がる。
【0042】
図6は、図4の実施形態と類似するものを示しているが、ここでは、リーキングケーブルアンテナ13を使用するシステムに対するものとなっている。但し、図4による原理のすべては同一のものとなっている。
【0043】
図7は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態は、図4の実施形態に対して、送信機7に通信システム自身、例えば、アンテナ14が統合されている点が異なっている。送信機7は、例えば、制御ユニットとの必要な通信のための同一のアンテナケーブルを容易に利用することができる。送信機7は、自身が所有するアンテナ(不図示)を持つことができる。あるいは、送信機7は、通信システムによって使用されるアンテナ14を共有しても良い。これにより、天井に備える装置を減らし、かつ送信機7を制御し、かつアンテナケーブルを使用する電力をその送信機7に供給する機能をもたらすことになる。
【0044】
また、分散アンテナ及びリーキングケーブルを有するシステムの多くは、異なるアクティブコンポーネントを使用することで、パフォーマンス及び通信範囲の少なくとも一方を向上する。最も一般に使用されるアクティブコンポーネントの1つには、リピータがある。本発明の更なる別の実施形態を図8に示す。ここでは、制御信号送信機7は、リーキングケーブルシステム内にリピータ12が統合されている。仮想基地局識別データを有する制御信号は、リピータの後に配置されるリーキングケーブルシステムの部分13Bからのみ送信される。つまり、仮想セル5は、部分13Bの周辺のエリアを特徴付けている。たとえ「仮想」信号を有するエリアの部分のみが仮想セルとして示される場合でも、もちろん、その「仮想」信号が受信されないあるいは受信される信号強度が所定閾値以下であるという事実に基づいて、移動電話6が実際のセル4の別の部分に位置しているかどうかを判定することが可能となる。これは、図8の移動端末についての状況である。
【0045】
リピータを備える屋内システムを使用する建物で、かつそこでは、位置の精度の要求があまり高くない場合には、例えば、リピータ内に統合されている制御信号送信機を用いるソリューションは十分に機能する。これは、基地局の使用を最適化するのに好適な方法である。同時に、広範囲の地理的エリアをカバーするので、特定のサブエリア内で移動端末が位置しているかどうかを判定することも可能である。
【0046】
ある例の用途には、施設内の移動端末の使用に制限が伴う。例えば、病院の建物のある階あるいは内部のような大規模施設のある部分では、電話をユーザに使用可能にするべきではない。別の用途には、地下鉄道システム(地下鉄)内があり、これは、どの駅に移動電話が存在しているかを判定することを可能にしても良い。
【0047】
また、リピータは、例えば、トンネル、建物あるいは車両のような、無線通信範囲が不良なエリアと屋外マクロセルとを接続するために広く使用されている。このような状況を図9に示している。基地局8は、屋外マクロセル4に対するアンテナ16を持っている。リピータに基づく実装は、ここでは適切である。これは、マクロセル基地局を使用する移動電話が建物内に位置しているかどうかを判定することを可能にするからである。受信機18は、信号を受信し、リピータ12は、それを、例えば、分散アンテナ14の屋内システムに供給する。仮想基地局識別データを有する制御信号を付加するための手段7は、リピータに統合され、かつ仮想マイクロセル5が生成される。
【0048】
上述のように、セルラーネットワークの位置決め精度は、基地局の密度の増加しているか場合に向上する。仮想無線基地局を導入することによって、ネットワーク内の移動電話は、これを小さいセルを有するネットワークとして経験する。しかしながら、ネットワーク自身は、仮想無線基地局を全く考慮していない。この仮想セルは、典型的には、セルラーネットワークの標準セルとして計画され、かつ整備されている。これは、隣接セルが、わずかに異なる構成を使用することを意味している。仮想セルは、拡張制御信号を配備することによって、移動端末から参照されるものとして、ネットワークに導入される。例えば、GSMとWCDMAでは、BCCH(ブロードキャスト制御チャネル)がこれらの拡張制御信号に対して使用される。これは、無線基地局から送信される通常の制御信号に加えて送信される。異なる制御信号は、異なる送信位置に関連付けられている。移動電話では、制御信号が受信され、これを通常の基地局からの制御信号として解釈される。
【0049】
仮想基地局識別データの送信機は、移動電話から送信されるものを受信することができる実際の基地局ではないので、移動電話は、仮想基地局識別データに関連付けられているセルを使用するセルラーネットワークに接続することができない。更なる構成を必要とすることなく、仮想基地局は、近隣リストの最上位に存在しても良いので、移動電話は、それが実際に存在するものとして、仮想基地局に接続することを試行する。しかしながら、通信は確立することができないので、結局のところ、移動電話は、自身の試行を中止し、近隣リストの次のエントリに移動することになる。このような接続の試行は、バッテリ電力の量を消費することになるばかりか、接続及びハンドオーバの時間が長くなる。それゆえ、移動電話による接続の試行の確率を削減する、あるいは試行を防止する機能を適用することが好ましい。
【0050】
移動端末が仮想基地局へ接続することを試行することを防止あるいは禁止するための1つの方法は、この接続が基地局識別データを使用できないことを示す追加の情報を仮想制御信号に組み込むことである。これは、基地局が、「実際に」あるいは「仮想的に」、任意のトラフィックを受信できないことになることを通知するデータあるいはフラグを使用することによって実現することができる。GSMとWCDMAシステムでは、これは、「セルバリアリング(barring)」を使用することによって達成することができる。GSMでは、情報要素RACH制御パラメータ内のCell_Bar_Accessビットを、1に設定することができる。RACH制御パラメータは、システム情報タイプ1、2、2ビット、2テラ(ter)、3、4及び9メッセージに含められ、これは、セル内のすべての移動体へBCCHでブロードキャストされる。WCDMAでは、対応するパラメータ(セルバリア化(barred))がシステム情報ブロックタイプ15.3及び15.4に含まれる情報要素セルアクセス制限に含まれ、また、これは、BCCHでブロードキャストされる。
【0051】
移動端末が「仮想」基地局に接続することを試行することを回避するための別の方法は、移動電話が決してそれに接続しないことあるいはそれに接続しようとしないことを補償することである。移動端末が基地局に接続しようとしないことの理由には、「仮想」基地局への無線接続が、最適な選択として存在すること、あるいは使用することが十分にあることが決して許可されないことである。移動端末が接続を試行する確率を削減する方法は、移動端末が接続を試行しようとしないような方法で、意図的に移動端末を構成することである。このような構成は、典型的には、セル選択あるいはセル再選択データとしてブロードキャストされる。
【0052】
このことは、仮想送信機から送信される制御信号の送信電力を厳密に制御することによって達成することができ、そうすることで、近隣リストの上位に決して位置づけられることがなくなる。
【0053】
事実、これは、WCDMAシステム内で実現することが可能である。そして、仮想制御信号は、実際の制御信号として同一の周波数で送信することができるが、異なるスクランブルコードを持っている。この状況では、相対的な電力は、図7のように、仮想及び実際の信号が同一のアンテナを共有しているか場合に制御することができる。アンテナとユーザ間の伝送チャネルは、実際の及び仮想制御信号の両方に対して同一となり、かつ周波数選択性フェージング(frequency selective fading)の問題も存在しないので、アンテナでの電力差は、受信移動端末での電力差と同一になる。しかしながら、GSMに対しては、ユーザの位置での相対電力レベルを制御することに向けられたものではない。これは、仮想制御信号が、実際の制御信号とは異なる周波数上で送信されるからである。これは、周波数選択制フェージングが、実際の制御信号を仮想信号よりもより弱くしてしまうことを意味する。仮想信号が近隣リストの最上位に位置してしまわないことを補償するために、かなりの大きな電力マージンが使用されなければならなくなる。
【0054】
仮想制御信号に、いくつかの種類のひずみを適用することを可能にしても良い。そうすることで、移動電話は接続が不良であることをみなすことになる。これは、WCDMAのフレームワーク内で実行することも可能である。これは、WCDMAも、セル選択基準の1つである、評価Ec/N0と表現される信号品質を使用するからである。しかしながら、GSMでは、信号品質ではなく、信号強度のみがセル選択の基準として使用され、これは、ひずみは何ら効果を持たないことを意味する。
【0055】
本発明の実施形態では、仮想送信機はセルラーシステムに統合される。図10は、このような実施形態に従って構成される分散アンテナシステムを示している。いくつかの制御信号は、ネットワーク内のある地点、例えば、基地局8で制御信号インジェクタ21によって投入される。この信号は、周波数シフト、符号分割あるいは信号を拡散するための任意の他の方法を使用して分割される。この信号は、実際の信号とともに、アンテナケーブルを介して送信される。信号が使用される位置では、信号セレクタ22が、対応する制御信号を選択し、その信号を移動端末6によって受信することができる信号に変換する。
【0056】
制御信号インジェクタ21は、ダウンリンク制御信号(例えば、GSM内のBCCH)を生成する装置であり、その信号をシステム内に投入する。制御信号インジェクタ21は、いくつかの(システム内の仮想セルの数だけの)「仮想」制御信号を生成する。それぞれの信号は、固有の内容、即ち、仮想基地局識別データを持っていて、これは、どのエリアに移動電話が存在するかを判定するために使用されることになる。仮想基地局識別データは、典型的には、異なるセルID、異なる基地局アイデンティティコード(BSIC)あるいは、ある制御信号と異なる制御信号を生成する他の情報を有している。制御信号インジェクタ21は、別の信号から信号を分けることを可能にする方法で、信号を変換し送信する。これは、典型的には、以下に説明する周波数、符号あるいは時分割を使用して実行される。信号セレクタ22では、これらの信号は、オリジナルの信号フォーマットに逆変換される。
【0057】
信号セレクタ22は、2つの主要な機能を持っている。1つは、使用対象の正規の制御信号を分割することであり、もう1つは、その分割された信号を、移動電話6によって受信される正常なオリジナル信号フォーマットに逆変換することである。この信号セレクタ22は、移動電話6の位置を判定するために使用される制御信号にのみ影響を及ぼす。他の信号のすべて、例えば、トラフィックデータには影響しない。
【0058】
WCDMAシステムに対する信号セレクタ22は、多少複雑な装置である。ここでは、異なる制御信号を分割するために符号が使用される。WCDMAに対する信号セレクタ22は、干渉キャンセラとして動作し、これは、どの符号を通過させて、また、どの符号をキャンセルするかを知っていなければならない。より広帯域を消費するより容易なソリューションは、GSMに対して提案されているように、周波数シフトを使用する異なるアンテナに対して異なる制御信号を拡散する(spread)ことである。
【0059】
アンテナケーブル上の実際の制御信号、実際のデータトラフィック及び仮想制御信号と、無線インタフェース内の別の信号間では、ある多重技術を使用することも可能である。例えば、WCDMAがエアインタフェースを介して使用される場合、仮想制御信号は、いずれにしても、アンテナケーブル上の信号内で多重化される周波数とすることができる。信号セレクタ22は、そのような場合、変換に対して責任を持つことになる。
【0060】
同様の実装が、リーキングケーブルシステムでも可能である。図11は、このようなシステムを示している。制御信号インジェクタ21は、基本的には上述のように動作する。しかしながら、信号セレクタ22の複雑さがわずかに高くなっている。リーキングケーブルシステムでは、信号セレクタは、制御信号として送信するために信号を選択しなければならないばかりか、システム経路内の後段の地点ですべての制御信号を使用させなければならない。アンテナケーブルの最初の部分では、実際の制御信号、データトラフィック及びすべての仮想制御信号が存在している。リーキングケーブル部分13Aでは、仮想制御信号の1つがフィルタにかけられる。リーキングケーブル部分13Bでは、仮想制御信号の別のものがフィルタにかけられる。リーキングケーブル部分13Cでは、実際の制御信号のみが放出される。位置の識別は、検出することが可能な制御信号の組み合わせに基づかなければならない。図11の移動端末6は、実際のセル4に対応する実際の制御信号を経験するばかりか、1つの仮想制御信号を経験する。それゆえ、予想される位置は、ある仮想セルによってのみカバーされるエリアである。
【0061】
以下のセクションは、図10とともに、本発明の上述の提示のインジェクタに関連する実施形態に従う、GSM内の近隣リスト、仮想セルID位置推定の詳細を説明する。
【0062】
制御信号インジェクタ21は、N個のネットワーク構成可能BCCHキャリヤ(f_1,...,f_N)を生成するGSM送信機を含み、このキャリヤは、周波数バーストと同期バースト(ネットワーク構成可能なBSIC_1,...,BSIC_N)を含んでいる、そうでなければ、ランダムGMSK(ガウシアン最小シフトキーイング)変調データだけを含んでいる。制御信号インジェクタ21は、BTS(基地送受信局)信号出力(これは、BCCHキャリヤf_0とトラフィックチャネルf_TCH1,...,f_TCHn)に付加され(組み込まれ)、分散アンテナシステムに送信される。BCCHキャリヤf_0内のハンドオーバ近隣リストは、周波数f_1,...,f_Nを有する。そうすることで、移動端末6に、これらの周波数の信号強度の測定が指示される。
【0063】
アンテナ番号kでは、BTSによって使用される周波数f_0,f_TCH1,...,f_TCHnと周波数f_kをカバーするバンドパスフィルタを備える信号セレクタ22が存在し、ここで、f_kは、制御信号インジェクタ21によって使用されるf_1,...,f_Nのセットの1つの周波数である。アンテナ番号kに近い移動端末6は、典型的には、通常のBTS周波数f_0,f_TCH1,...,f_TCHnとf_kを受信する。
【0064】
信号強度測定値を、位置推定を実行するサーバへ送信する好適な方法が2つ存在する。
【0065】
1.BSCは、f_1,...,f_Nが実際のハンドオーバ候補ではなく、かつその目的のために任意の測定値を破棄することを知っている。次に、測定された信号強度を位置決めサーバへ送信することができる。
【0066】
2.BSCは、f_1,...,f_Nが仮想キャリヤであるが、f_1,...,f_Nが依然としてOSSを介して近隣リストの一部を構成していることには気にかけていない。これらの仮想周波数へのハンドオーバの試行を回避するために、BSCは、f_kに対してBSIC_k2を記憶しても良い。ここで、BSIC_k≠BSIC_k2である。測定レポートを受信すると、BSCは、間違ったセルが測定されていると結論づけることができる。この構成では、移動端末は、例えば、SIMアプリケーションツールキットを介して、測定レポートを送信するための別の手段を持たなければならない。
【0067】
実際の位置推定は、メイン通信ネットワークのノード、例えば、基地局で実行することができる。たいていは、位置決めの要求と最終位置位置推定を行うことの間の遅延は、できる限り小さくするべきであるという要望が存在する。このような場合、システムへリクエストを送信することなく端末自身の位置を判定することができるソリューションは有効である。
【0068】
図12Aでは、移動端末の実施形態のブロック図が示されている。移動端末6は、受信機40を備え、これは、制御信号とデータトラフィックの両方の受信を行う。位置推定器42は、受信した制御信号に関する情報を送信するための受信機40に接続されている。位置推定器は、近隣リスト44を備えている。ここでは、周辺基地局、実際のものあるいは仮想のものに関する状態が集められている。位置推定器は、更に、基地局識別データとそれに関連する位置間の関係を有するデータベース46を備えている。このようなデータベースは、ネットワークに元々接続しているセルラーネットワークからダウンロードされることが好ましい。この近隣リスト44とデータベース46を使用して、位置推定器42は、従来の方法に従って移動端末6に対する推定位置の判定を実行する。
【0069】
図12Bでは、移動端末6の別の実施形態のブロック図が示されている。この場合、実際の位置推定は、基地局で実行される。ここでは、移動端末6は、受信機40と近隣リスト44を備える。近隣リスト44の内容は、移動端末6で局所的に評価されない代わりに、近隣リスト44の内容は、送信機46を介して基地局へ送信される。
【0070】
図13では、対応する基地局のブロック図が示されている。基地局8は、位置推定器42に接続されている受信機40を備える。位置推定器42は、セルIDと位置間の関係を記憶するデータベースを備えている、あるいはそのデータベースに少なくともアクセスする。移動端末の近隣リストのコピー44’は、位置推定器でも利用可能である。近隣リストのコピー44’とデータベース46を使用して、位置推定器42は、従来の方法に従って移動端末に対する推定位置の判定を実行することができる。
【0071】
図14は、本発明に従う方法の実施形態の主要なステップに関するフロー図を示している。処理は、ステップ20で開始する。ステップ202では、基地局及び仮想基地局に対するBSICあるいは他の基地局識別データが制御信号で送信される。送信された制御信号は、ステップ204で、移動端末によって受信される。ステップ206で、仮想基地局(群)へ移動端末が接続することを禁止するあるいは防止するための手段が適用される。そして、ステップ208で、移動端末の位置が、基地局と仮想基地局に対して受信された制御信号に基づいて判定される。そして、処理はステップ210で終了する。
【0072】
ここまででは、セルIDに基づく位置推定方法についてのみ説明している。位置推定の精度を高めるために、より改善された位置決め方法、例えば、時間差方法あるいはフィンガープリント(指紋)方法のような方法と、本発明を組み合わせることも可能である。
【0073】
本開示内の実施形態は、第一に、分散アンテナシステム、リーキングケーブルシステム及び、リピータによって供給されるアンテナを有するシステムの少なくとも1つが装備されているエリアを対象としている。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態に実施しても良く、また、本明細書で説明される実施形態に制限されると結論づけるべきでない。むしろ、これらの実施形態を提供することで、本開示は十分かつ完全となるものであり、また、本発明の範囲を当業者に完全に伝えることになる。
【0074】
請求項によってもっぱら定義される本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変形及び変更を本発明に行っても良いことが当業者には理解されであろう。特に、異なる実施形態の一部のシステムを、任意の組み合わせで組み合わすことが可能であることが理解され、また、技術的にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】セルラー通信システムの概要を示す図である。
【図2】近隣リストの典型的な内容を示す図である。
【図3】従来技術に従う分散アンテナシステムの概要を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に従う分散アンテナシステムの概要を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に従う汎用セルラー通信システムの概要を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従うリーキングケーブルアンテナシステムの概要を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態に従う分散アンテナシステムの概要を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態に従うリーキングケーブルアンテナシステムの概要を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に従うリピータを使用する通信システムの概要を示す図である。
【図10】本発明の更に別の実施形態に従う分散アンテナシステムの概要を示す図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態に従うリーキングケーブルアンテナシステムの概要を示す図である。
【図12A】本発明で有用な移動端末の実施形態のブロック図である。
【図12B】本発明で有用な移動端末の実施形態のブロック図である。
【図13】本発明で有用な基地局の実施形態のブロック図である。
【図14】本発明に従う方法の実施形態の主要なステップを示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワーク(10)内の移動局(6)の位置判定方法であって、
−前記移動通信ネットワークに、基地局識別データを有する制御信号を送信するステップと、
前記基地局識別データは、該基地局識別データを有する前記制御信号の送信位置(2、2A−J、7、7A−G、13、13A−C、14、16、22)に関連付けられていて、
−前記移動局(6)で前記送信された制御信号を受信するステップと、
−前記受信された制御信号と前記基地局識別データの特徴に基づいて、前記移動局(6)の推定位置を判定するステップとを備え、
前記制御信号の少なくとも1つは、仮想基地局識別データを備え、
前記移動局(6)は、前記仮想基地局識別データに関連付けられている仮想セルを使用する前記移動通信ネットワーク(10)に接続することが不能にされており、
これによって、前記判定するステップは、前記仮想基地局識別データに関連付けられている前記送信位置(7、7A−G、22)に少なくとも基づいて実行される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記仮想基地局識別データに関連付けられている前記仮想セルを使用する前記移動通信ネットワーク(10)への接続を前記移動局(6)が試行する確率を削減するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仮想基地局識別データに関連付けられている前記仮想セルを使用する前記移動通信ネットワーク(10)への接続を前記移動局(6)が試行することを禁止するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記禁止するステップは、前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つに、前記仮想基地局識別データが利用不能であることを示す情報を組み込むステップを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記利用不能であることを示す情報は、前記制御信号内のフラグである
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記確率を削減するステップは、前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つの送信電力を制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つの送信電力は、前記移動通信ネットワーク(10)の通信エリア内のどこかに位置している移動局(6)で受信される電力を与えるように制御され、前記受信される電力は、実際の基地局識別データを有する制御信号少なくとも1つの受信される電力よりも著しく小さい
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つは、実際の基地局識別データを有する制御信号の少なくとも1つとして、同一位置から送信され、これによって、前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つの送信電力は、同一位置から送信される実際の基地局識別データを有する制御信号の少なくとも1つの送信電力よりも小さくなるように制御される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記確率を削減するステップは、前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号の少なくとも1つの信号対ノイズ比を制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記信号対ノイズ比を制御するステップは、前記仮想基地局識別データを有する前記制御信号へノイズを付加する
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移動局(6)の推定位置を判定するステップは、前記移動局(6)の近隣リスト(44、44’)に基づいている
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記仮想基地局識別データに関連付けられている装置(7、7A−G、22)は、
分散アンテナシステム、
リーキングケーブルシステム及び
それらの組み合わせのシステム
の前記リストから選択されるアンテナシステムによってカバーされるエリア内に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記仮想基地局識別データに関連付けられている装置(7、7A−G、22)は、リピータ装備システムによってカバーされるエリア内に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
−仮想基地局識別データを有する制御信号を、前記アンテナシステムに対する基地局(8)に提供するステップと、
−共通アンテナ接続上の仮想基地局識別データを有する前記制御信号を配信するステップと、
−無線インタフェース上で選択される制御信号の送信に対し、前記アンテナシステム内の異なる位置で仮想基地局識別データを有する前記制御信号のそれぞれを選択するステップと
を備えることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
移動通信ネットワーク(10)の無線ネットワークであって、
−基地局識別データを有する制御信号を移動局(6)へ送信するように構成されている送信機(2、2A−J、7、7A−G、13、13A−C、14、16、22)と、
前記基地局識別データは、該基地局識別データを送信する前記送信機の位置(2、2A−J、7、7A−G、13、13A−C、14、16、22)に関連付けられていて、
−前記移動局(6)で受信される前記制御信号の特性に関連付けられている情報を収集し、かつ前記基地局識別データを抽出するように構成されている受信機手段(40)と、
−前記受信された制御信号と前記基地局識別データの特徴に基づいて、前記移動局(6)の推定位置を判定するように構成されている位置決め手段(42)とを備え、
前記制御信号の少なくとも1つは、仮想基地局識別データを備え、
前記移動局(6)は、前記仮想基地局識別データに関連付けられている仮想セルを使用する前記移動通信ネットワーク(10)に接続することが不能にされており、
前記位置決め手段は、前記仮想基地局識別データに関連付けられている前記送信機の位置(7、7A−G、22)に少なくとも基づいて、前記推定位置を判定するように構成されている
ことを特徴とする無線ネットワーク。
【請求項16】
各仮想基地局識別データに関連付けられている少なくとも1つの装置(7、7A−G、22)を備え、
これによって、前記移動局(6)は、前記少なくとも1つの装置(7、7A−G、22)を介して、前記移動通信ネットワークに接続することが不能にされる
ことを特徴とする請求項15に記載の無線ネットワーク。
【請求項17】
基地局と、
分散アンテナシステム、
リーキングケーブルシステム及び
それらの組み合わせのシステム
のリストから選択されるアンテナシステムと
を備えることを特徴する請求項15または16に記載の無線ネットワーク。
【請求項18】
前記アンテナシステム内のリピータを備える
こと特徴する請求項15乃至17のいずれか1項に記載の無線ネットワーク。
【請求項19】
前記少なくとも1つの装置の少なくとも1つは、送信機(7、7A−G)である
こと特徴する請求項16乃至18のいずれか1項に記載の無線ネットワーク。
【請求項20】
前記少なくとも1つの装置の少なくとも1つは、実際の基地局識別データを有する制御信号に対する送信機(13、13A−C、14)に接続されているセレクタ手段(22)である
こと特徴する請求項16に記載の無線ネットワーク。
【請求項21】
前記セレクタ手段(22)は、1つ以外は、仮想基地局識別データを有する制御信号のすべてを抑制するように構成されている
ことを特徴とする請求項20に記載の無線ネットワーク。
【請求項22】
前記基地局(8)は、仮想基地局識別データを有する制御信号を提供する手段(21)を備える
ことを特徴とする請求項20または21に記載の無線ネットワーク。
【請求項23】
移動通信ネットワーク(10)であって、
−基地局識別データを有する制御信号を移動局(6)へ送信するように構成されている送信機(2、2A−J、7、7A−G、13、13A−C、14、16)と、
前記基地局識別データは、該基地局識別データを送信する前記送信機の位置(2、2A−J、7、7A−G、13、13A−C、14、16、22)に関連付けられていて、
−前記移動局(6)で受信される前記制御信号の特性に関連付けられている情報を収集し、かつ前記基地局識別データを抽出するように構成されている受信機手段(40)と、
−前記受信された制御信号と前記基地局識別データの特徴に基づいて、前記移動局(6)の推定位置を判定するように構成されている位置決め手段(42)とを備え、
前記制御信号の少なくとも1つは、仮想基地局識別データを備え、
前記移動局(6)は、前記仮想基地局識別データに関連付けられている仮想セルを使用する前記移動通信ネットワーク(10)に接続することが不能にされており、
前記位置決め手段(42)は、前記仮想基地局識別データに関連付けられている前記送信機の位置(7、7A−G、22)に少なくとも基づいて、前記推定位置を判定するように構成されている
ことを特徴とする移動通信ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−534213(P2007−534213A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532222(P2006−532222)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001328
【国際公開番号】WO2005/032202
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】