移動局測位方法、測位基地局選択方法、移動局測位システム
【課題】妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局を除いた基地局を測位に用いる測位基地局として選択する測位基地局選択方法、及び測位基地局を用いて移動局を測位する移動局測位方法、移動局測位システムを提供する。
【解決手段】仮測位部56により、基地局組が設定され、基地局組を用いて移動局10の位置が仮測位結果として算出される。仮測位結果群抽出部60により、仮測位結果のうち、特定の基地局を含まない基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、各基地局12を特定の基地局とする仮測位結果群のばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定される。移動局位置算出部66により、測位基地局により構成される基地局組を用いた仮測位結果に基づいて、移動局10の位置が算出される。
【解決手段】仮測位部56により、基地局組が設定され、基地局組を用いて移動局10の位置が仮測位結果として算出される。仮測位結果群抽出部60により、仮測位結果のうち、特定の基地局を含まない基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、各基地局12を特定の基地局とする仮測位結果群のばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定される。移動局位置算出部66により、測位基地局により構成される基地局組を用いた仮測位結果に基づいて、移動局10の位置が算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法、移動局測位システム、および、前記測位基地局を選択するための測位基地局選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムが知られている。例えば特許文献1に記載された位置検出システムがそれである。
【0003】
このような測位システムにおいては、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が用いられるが、移動局の位置の算出(測位)に必要となる数を上回る基地局が存在する場合においては、移動局と何れの基地局との無線通信の結果を用いるかを選択することができる。かかる場合には、選択した通信結果、すなわち移動局といずれの基地局との通信結果を用いるかによって、測位の精度が左右される。具体的には、移動局と基地局との間における無線通信が反射波や妨害電波などの影響を受けることにより信頼性の乏しいものであると、その受信結果を用いた測位の結果は精度が悪化するおそれがあった。
【0004】
特許文献1には、かかる課題を解決するための方法として、複数の基地局から送信される無線信号のうち、移動局が最大の受信レベルで受信した無線信号に対応する基地局の位置から所定の距離以内に存在する基地局を選択する技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−77976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受信レベルに基づいて移動局と基地局との間の無線通信を評価する場合、マルチパスや妨害波による干渉の影響によって受信レベルが影響を受けることがあるので、正しい評価がされない場合がある。すなわち、移動局と基地局との無線通信において受信レベルが高い基地局の信頼性が高くならない場合がある。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択する測位基地局選択方法、選択された前記測位基地局を用いて移動局の位置を算出する移動局測位方法、および移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法であって、(b)複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、(c)該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、(d)前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、(e)該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、(f)該測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項11にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する際に、該複数の測位基地局として必要な基地局数を上回る複数の基地局から前記複数の測位基地局を選択するための測位基地局選択方法であって、(b)前記複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、(c)該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、(d)前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、(e)該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項12にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位部と、(c)該仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出部と、(d)前記仮測位結果群抽出部によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出部と、(e)該ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定部と、(f)該測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の移動局測位方法によれば、前記仮測位工程により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出工程により、前記仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出工程により、前記仮測位結果群抽出工程によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定工程により、前記ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定され、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0012】
好適には、前記移動局位置算出工程は、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により得られた仮測位結果の平均を前記移動局の位置として算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて設定される測位基地局により測位された仮測位結果の平均が前記移動局の位置として算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0013】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群の標準偏差を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群の標準偏差である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0014】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果の平均を算出し、前記移動局位置算出工程は、該ばらつき算出工程によって算出される前記仮測位結果の平均を用いて前記移動局の位置を算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつき算出工程において前記仮測位結果群の標準偏差が算出される際に前記仮測位結果の平均が算出されるので、移動局位置算出工程において仮測位結果の平均を改めて算出する必要がなく、移動局の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0015】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0016】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0017】
さらに好適には、(a)前記移動局測位方法は、前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、該通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択工程を有し、(b)前記仮測位工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から前記基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前述の、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が前記通信品質指標に基づいて測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる、という効果に加え、通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局が前記基地局予備選択工程によって選択され、前記基地局組選択工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から特定の基地局を除いて前記基地局組が設定されるので、前記基地局予備選択工程によって選択されない基地局を含む基地局組については前記仮測位工程による移動局の測位を行なう必要がないので、移動局の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0018】
また好適には、前記測位基地局設定工程は、前記基地局のそれぞれについて、それまでに前記測位基地局設定工程により測位基地局から除外された回数を記憶し、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局のうち、前記除外された回数が多い基地局を前記測位基地局から除外することにより測位基地局を設定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0019】
また好適には、(a)前記測位基地局設定工程は、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定し、(b)前記移動局位置算出工程は、該測位基地局設定工程によって複数設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により算出される仮測位結果の平均を、移動局の位置として算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0020】
また好適には、前記基地局組は3局の前記基地局により構成されること、を特徴とする。このようにすれば、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら選択された測位基地局のいずれか3局によって構成される基地局組を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0021】
また、請求項11に係る発明によれば、前記仮測位工程により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出工程により、前記仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出工程により、前記仮測位結果群抽出工程によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定工程により、前記ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができる。
【0022】
また、請求項12の移動局測位システムによれば、前記仮測位部により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出部により、前記仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出部により、前記仮測位結果群抽出部によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定部により、前記ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定され、前記測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた複数の基地局である、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12E、第6基地局12F、第7基地局12G(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。移動局測位システム8においては、移動局10の測位を行なうのに必要な最小の数を上回る数の基地局12が含まれている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。以下の説明においては、移動局10の座標を(x,y)、第1基地局12Aの座標を(xa,ya)、第2基地局12Bの座標を(xb,yb)、第3基地局12Cの座標を(xc,yc)、第4基地局12Dの座標を(xd,yd)、のように表わす。
【0025】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号(ID)や固有の拡散符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0026】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0027】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12においては、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0028】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部24は、各基地局12に対し測位のための電波を送信する際には、予め定められた所定の送信出力により電波を送信するものとされている。
【0029】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により受信された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。前記無線部24および制御部26などが送信機としての機能を有する。
【0030】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有している。また基地局12は、前記アンテナ32を介して電波の送受信を行なう無線部34、制御部36、測位情報検出部40、通信状態検出部42、時計44などを含んで構成されている。基地局12は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これらの機能を行なうようにされている。さらに基地局12は通信インタフェース46を備えて構成されている。
【0031】
アンテナ32は、前述の移動局10のアンテナ22と同様に、電波の送受信に用いられるものであって、好適には指向性のないアンテナが用いられる。無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様に、基地局12における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部36により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部34は制御部36によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、無線部34のそれぞれに対応するアンテナ32により電波を送信する。このように、無線部34は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部34は、電波の受信時にはアンテナ32によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部34は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0032】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により取り出されたり、後述するサーバ14から得られる情報を処理したり、指令に従って基地局12の作動を変更したりする。前記無線部34の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0033】
測位情報検出部40は、移動局10から送信される測位のための電波を無線部34が受信した際の受信結果であって、後述するサーバ14の仮測位部56が移動局10の位置の算出に用いるための情報である測位情報を検出する。本実施例においては、この測位情報は例えば受信した電波の受信強度であり、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられる。測位情報検出部40による受信強度の値の検出は、例えば予め定められた一定時間である受信時間区間において行なわれ、その平均が用いられる。
【0034】
通信状態検出部42は、移動局10から送信される測位のための電波を基地局12の無線部34において受信した際における、電波の通信状態を表わす指標を検出する。本実施例においては、この指標は受信した電波の受信強度であり、例えば前述の測位情報検出部40において検出されるRSSIが用いられる。このようにすれば、電波の通信状態を表わす指標であるRSSIが大きいほど、電波を強い強度で受信できる、すなわち良好な通信状態であると推定することができる。なお、上述のように測位情報検出部40と通信状態検出部42とが検出する対象が同一である場合には、これら測位情報検出部40と通信状態検出部42とが区別して設けられる必要はなく、実質的に同一であってもよい。前記電波の通信状態を表わす指標が通信品質指標に対応する。
【0035】
時計44は、制御部36に時刻情報を供給する。制御部36は、前述の測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標を時刻ごとに検出することができる。通信インタフェース46は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出れる通信状態を表わす指標についての情報などが通信インタフェース46を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース46を介して受信される。
【0036】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部58、基地局予備選択部54、仮測位部56、仮測位結果群抽出部60、ばらつき算出部62、測位基地局設定部64、移動局位置算出部66、通信インタフェース52などを機能的に有して構成される。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0037】
通信インタフェース52は、前述の基地局12の通信インタフェース46と同様に通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なうものであって、具体的にはサーバ14から基地局12に対して情報の送受信を行なう。例えば基地局12に対しその作動を制御するための指令を送信したり、基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標などを基地局12から受信したりする。
【0038】
基地局予備選択部54は、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標に基づいて、移動局測位システム8を構成する基地局12のうちから、後述する仮測位部56において移動局10の位置の算出に用いられる基地局12を選択する。本実施例においては、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した際の受信強度を表わすRSSIであり、基地局予備選択部54は、移動局測位システム8に含まれる基地局12のうち、このRSSIが予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択する。前記しきい値は、例えば、後述する仮測位部56における移動局10の位置の算出の際の誤差が許容範囲内となるように、予め実験的に、あるいはシミュレーションにより得られる値に設定される。
【0039】
仮測位部56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12を用いて、移動局10の位置の算出を行なう。具体的には仮測位部56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12から、予め定められる所定数の基地局の組み合わせである基地局組を複数設定する。そして設定された複数の基地局組のそれぞれについて、基地局組を構成する基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。算出された移動局10の位置についての情報は、算出に用いた基地局組についての情報とともに記憶部58に記憶される。
【0040】
図1に示した本実施例における移動局測位システム8を例として具体的に説明する。移動局測位システム8は第1基地局12A乃至第7基地局12Gを含んで構成されている。移動局10から送信された測位のための電波が送信され、各基地局12の無線部34により受信される。そして各基地局12の通信状態検出部42において通信状態を表わす指標であるRSSIが検出され、サーバ14の基地局予備選択部54により、各基地局12のRSSIのうち、予め設定されたしきい値を上回っている基地局として、例えば、第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局が選択される。
【0041】
仮測位部56において、移動局10が平面を移動する際には、移動局10の位置を算出するために用いる基地局12の所定数は3とされている。したがって、仮測位部56は、基地局予備選択部54により選択された第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局から、3つの基地局からなる基地局組を設定する。設定される基地局組は、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、3)」と表わす。)、第1基地局12A、第2基地局12B、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、4)」と表わす。)、第1基地局12A、第2基地局12B、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、5)」と表わす。)、第1基地局12A、第3基地局12C、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(1、3、4)」と表わす。)、第1基地局12A、第3基地局12C、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、3、5)」と表わす。)、第1基地局12A、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、4、5)」と表わす。)、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(2、3、4)」と表わす。)、第2基地局12B、第3基地局12C、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(2、3、5)」と表わす。)、第2基地局12B、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(2、4、5)」と表わす。)、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(3、4、5)」と表わす。)、の10組の基地局組を設定する。
【0042】
仮測位部56は続いて、設定された基地局組のそれぞれについて、基地局組を構成する基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。前述のように、本実施例においては、測位情報検出部40によって検出される測位情報は、移動局10から送信される測位のための電波の受信強度(RSSI)である。所定の出力により送信された電波を受信した際の受信強度と、電波の伝搬距離D、すなわち移動局10と基地局12との距離とは、図5に示すように1対1の関係にある。したがって、この図5に示す関係を記憶部58に予め記憶しておき、この関係に基づいて各基地局12における測位情報であるRSSIをそれぞれの基地局12と移動局10との距離に変換することができる。このようにして、仮測位部56は基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0043】
仮測位部56は続いて、算出された基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、予め既知とされ、例えば記憶部58に記憶されている各基地局12の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。例として、仮測位部56が基地局組(1、2、3)を用いて移動局10の位置を算出する過程について図6を用いて説明する。
【0044】
図6は、仮測位部56による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)、基地局組(1、2、3)を構成する基地局である、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xa,ya)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xb,yb)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xc,yc)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図6における基地局12の配置は説明を簡単にするため図1のものと異なっている。
(xa - x)2 + (ya - y)2= r12
(xb - x)2 + (yb - y)2= r22 ・・・(1)
(xc - x)2 + (yc - y)2= r32
ここで、r1、r2およびr3(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、および、第3基地局12Cのそれぞれから移動局10までの距離であって、前述のように測位情報であるRSSIと図5に示す関係とから得られる値である。そして、仮測位部56は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。このように、基地局12の位置およびその基地局12と移動局10との距離に基づいて移動局10の位置を算出する場合、前記(1)式として3本以上の式があれば、移動局10の位置を解として算出することができる。すなわち、移動局10から送信される測位のための電波を少なくとも3局以上の基地局12によって受信できればよい。従って、本実施例においては、基地局組は3局の基地局によって構成される。
【0045】
仮測位部56によって算出される移動局10の位置は、その算出に用いた基地局組についての情報とともに記憶部58に記憶される。以下の説明において、基地局組(a,b,c)を用いて仮測位部56によって算出された移動局の位置を、仮測位結果S(a,b,c)と表記し、仮測位結果S(a,b,c)を基地局組(a,b,c)に対応する仮測位結果という。
【0046】
図4に戻って、仮測位結果群抽出部60は、前記仮測位部56によって算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する。本実施例においては、仮測位部56によって、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、2、5)、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)の10組の基地局組が設定されるが、例えば、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合、この特定基地局である第1基地局12Aを含まない基地局組である、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が、仮測位結果群として抽出される。同様に、第2基地局12Bが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、3、4)、S(1、3、5)、S(1、4、5)、S(3、4、5)が仮測位結果群として抽出され、第3基地局12Cが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、4)、S(1、2、5)、S(1、4、5)、S(2、4、5)が仮測位結果群として抽出され、第4基地局12Dが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、5)、S(1、3、5)、S(2、3、5)が仮測位結果群として、それぞれ抽出され、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が仮測位結果群として、それぞれ抽出される。
【0047】
ばらつき算出部62は、仮測位結果群抽出部60によって抽出された各基地局12を前記特定の基地局とした際の仮測位結果群について、ばらつきを算出する。このばらつきは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であって、本実施例においては、ばらつきσは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の座標の標準偏差として、次式(2)で定義される。
【数1】
ここで、σxは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のX方向の座標の標準偏差であり、σyは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のY方向の座標の標準偏差であり、次式(3)で表わされる。
【数2】
(3)式において、添字iは仮測位結果群に含まれる各測位結果を表わし、Nは仮測位結果群に含まれる測位結果の総数を表わす。また、(3)式においてxAVは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のX方向の座標の平均であり、yAVは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のY方向の座標の平均である。具体的には次式(4)で表わされる。
【数3】
ばらつき算出部62は、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ1、第2基地局12Bが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ2、第3基地局12Cが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ3、第4基地局12Dが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ4、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ5としてそれぞれ算出する。
【0048】
図7は、仮測位部56が設定する基地局組と、その基地局組に対応する仮測位結果、および第1基地局12A乃至第5基地局12Eのそれぞれを特定の基地局としたときの各仮測位結果群を構成する仮測位結果を説明する図である。図の第1列には仮測位部56が設定する基地局組が、第2列には第1列の基地局組に対応する仮測位結果がそれぞれ示されており、第3列乃至第7列に、それぞれ第1基地局12A乃至第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合の仮測位結果群を構成する基地局を示しており、各列に対応する仮測位結果群は、丸印が付された行の第2列に記載された仮測位結果により構成される。
【0049】
図8は、第1基地局12A乃至第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合の仮測位結果群およびばらつきの一例を表わすシミュレーション結果である。このシミュレーションにおいては、第1基地局12Aの位置を(2(m),0(m))、第2基地局12Bの位置を(7,0)、第3基地局12Cの位置を(0,8)、第4基地局12Dの位置を(7,10)、第5基地局12Eの位置を(10,5)とし、移動局10の位置を(4,4)としている。また、各基地局12における測距誤差のばらつきの値は、第1基地局12A乃至第4基地局12Dについては、0.5、第5基地局12Eについては−3とした。このばらつきは、移動局10から送信される測位のための電波を各基地局12が受信し、その強度から算出される移動局10と各基地局12のそれぞれとの距離の平均と、真値とのずれを表わしている。ばらつきが大きいことは、そのばらつきが大きい基地局の近傍に妨害波の送信源が存在していたり、あるいは反射波の影響を受けやすい位置にあるなどにより、妨害波やマルチパスによる干渉の影響を受けやすいことを表わしている。
【0050】
図8の(a)乃至(e)は、それぞれ、前記特定の基地局を第1基地局12A乃至第5基地局12Eとした場合に対応する図である。各図において、前記特定基地局以外の基地局12は黒四角のプロットで表わされている。すなわち、黒四角で表わされた位置にある基地局12から基地局組が設定されて、その基地局組を用いて仮測位部56による移動局10の仮測位が行なわれる。また、図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、設定される基地局組のそれぞれを用いて行なわれる仮測位結果が黒丸のプロットにより表わされている。すなわち、図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、複数の黒丸で表わされた点の集合が仮測位結果群に対応する。具体的には例えば、第1基地局12Aを特定の基地局とした場合図8(a)については、前記特定の基地局以外の基地局である第2基地局12B乃至第5基地局12Eが黒四角のプロットで表わされ、これら第2基地局12B乃至第5基地局12Eから設定される基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が黒丸のプロットで表わされている。図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、ばらつき算出部62によりばらつきとしての標準偏差σの値が算出される際に算出される仮測位結果群の平均(xAV,yAV)は白丸のプロットにより表わされ、移動局10の実際の位置はプラス記号のプロットで表わされている。
【0051】
ばらつき算出部62により算出されるばらつきσは、第1基地局12Aを特定の基地局とした場合図8(a)についてはσ1=1.07、第2基地局12Bを特定の基地局とした場合図8(b)についてはσ2=0.99、第3基地局12Cを特定の基地局とした場合図8(c)についてはσ3=1.19、第4基地局12Dを特定の基地局とした場合図8(d)についてはσ4=1.15、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合図8(e)についてはσ=0.34、となる。
【0052】
図4に戻って、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する。本実施例においては、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、最も小さいばらつきが選択される。そして、選択された最も小さいばらつきに対応する仮測位結果群を抽出する際に前記特定の基地局を除いて、測位基地局が設定される。すなわち、測位基地局は、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局のうち、前記特定の基地局を含まない基地局として設定される。
【0053】
前述の図8の例においては、ばらつきσ5がσ1乃至σ5のうちで最も小さい。そのばらつきσ5に対応する仮測位結果群は、第5基地局12Eを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。従って、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局である第1基地局12A乃至第5基地局12Eのうち、前記特定の基地局である第5基地局12Eを除く基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dが測位基地局設定部64により測位基地局として設定される。なお、このシミュレーション例によれば、測距誤差のばらつきが大きいとされた第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合のばらつきσ5が最も小さくなっており、シミュレーション結果が妥当なものであるとされる。また、ばらつきσと、仮測位結果群との関係において、ばらつきσが小さい程、移動局10の実際の位置と、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)との距離が小さくなっているので、ばらつきσが小さくなるように前記特定の基地局を選択し、その特定の基地局以外の基地局を測位基地局として移動局10の測位を行なうことによりその測位の精度を高めることができる。
【0054】
このように、測位基地局設定部64においては、基地局予備選択部54によって選択された基地局のうち、測位基地局とされない基地局が発生する。そこで、測位基地局設定部64は、測位基地局となる基地局を設定する毎に、測位基地局から除かれた基地局について、その除外回数を基地局ごとに記憶する。具体的には、前述のようにばらつきσ5が最も小さい場合には、測位基地局設定部64は、前記特定の基地局である第5基地局12Eを除く基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dを測位基地局として設定するとともに、第5基地局12Eが測位基地局から除外された回数を1回加算する。
【0055】
また、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、次のようにして測位基地局を設定する。なお、前記最も小さいばらつきσが複数ある場合とは、最も小さい値である等しい値のばらつきσが複数ある場合に限られず、最も小さい値であるばらつきσの値に対して、仮測位部56における測定誤差などを考慮した所定の範囲内に他のばらつきの値が含まれる場合であってもよい。このような場合において、測位基地局設定部64は、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、前記特定の基地局とされた基地局を抽出する。そして、これら特定の基地局とされた基地局のそれぞれについて、測位基地局設定部64において計数される測位基地局から除外された回数を比較する。測位基地局設定部64は、複数ある最も小さいばらつきσのそれぞれに対応して、特定の基地局とされた基地局のうち、測位基地局から除外された回数の多い基地局を除いて、測位基地局を設定する。
【0056】
具体的な例として、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、ばらつきσ1およびσ2が最も小さいばらつきであった場合について説明する。この場合、最も小さい複数のばらつきσ1およびσ2に対応する仮測位結果群はそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。そこで測位基地局設定部64は、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bのそれぞれについて、それまでに測位基地局から除外された回数を比較する。そして、第1基地局12Aが測位基地局から除外された回数が第2基地局12Bが測位基地局から除外された回数よりも多い場合には、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局である第1基地局12A乃至第5基地局12Eのうち、第1基地局12Aを除く基地局、すなわち第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する。測位基地局設定部64を含む移動局測位システム8における測位基地局の設定方法が、本願発明の測位基地局選択方法に対応する。したがって、移動局測位システム8は測位基地局選択システム9を包含する。
【0057】
図4に戻って、移動局位置算出部66は、前記測位基地局設定部64によって設定された測位基地局により行なわれた仮測位結果に基づいて、移動局10の位置を算出する。具体的には、移動局位置算出部66は、前記測位基地局設定部64によって測位基地局と設定された基地局により構成される基地局組のそれぞれを用いて、前記仮測位部56によって行なわれた測位結果を平均を算出し、その平均を移動局10の位置とする。
【0058】
具体的には例えば、前述のように、前記測位基地局設定部64により、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされ、第5基地局12Eを含まない基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dを測位基地局と設定される場合には、その測位基地局によって構成される基地局組である基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれについて前記仮測位部56によって算出された仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が仮測位結果群が記憶部58から読み出され、その平均である、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)が算出され、移動局10の位置とされる。
【0059】
本実施例においては、ばらつき算出部62において、各基地局12を特定の基地局とした場合のばらつきσを算出する際に、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)が算出されていることから、ばらつき算出部62におけるばらつきσの算出過程において算出される仮測位結果群の平均(xAV,yAV)を記憶部58などに記憶しておき、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局に対応した測位結果群の平均(xAV,yAV)を、記憶部58に記憶された測位結果群の平均(xAV,yAV)から選択して読み出すことができる。このようにすれば、測位結果群の平均(xAV,yAV)を改めて行なう必要がなく、計算量の低減を図ることができ、測位に要する所要時間や消費電力を低減させることができる。移動局測位システム8における移動局10の測位の方法が、本願発明の移動局測位方法に対応する。
【0060】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、測位情報検出部40において前記測位情報を測定させ、また、通信状態検出部42により移動局10と各基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標を検出させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0061】
SA2においては、各基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0062】
SA3は、SA2の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、SA2で受信されたサーバ14から前記(1)の指令を受信したか否かが判断される。前記(1)の指令を受信した基地局12、すなわち代表基地局においては本ステップの判断が肯定され、SA4が実行される。また、前記(1)の指令を受信せず、(2)の指令のみを受信した基地局12においては、本ステップの判断が否定され、SA4が実行されることなく、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0063】
SA4においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。この移動局10への指令の送信が行なわれた後、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0064】
SA5においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA4の指令)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA6が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA5が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0065】
移動局10の無線部24などに対応するSA6においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0066】
各基地局12の無線部34、測位情報検出部40、通信状態検出部42などに対応するSA7においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信結果に関し、測位に用いられる値である測位情報の値が検出される。また、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標が検出される。本実施例においては、測位情報は、受信した電波の強度を表わすRSSIであり、また、電波の通信状態を表わす指標もまた、受信した電波の強度を表わすRSSIとされているので、このRSSIが検出される。
【0067】
通信インタフェース46などに対応するSA8においては、SA7で検出される測位情報および電波の通信状態を表わす指標についての情報が、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。
【0068】
サーバ14の基地局予備選択部54に対応するSA9においては、SA7において各基地局12で検出された、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標に基づいて、仮測位に用いる基地局を選択する。本ステップにおける仮測位に用いる基地局の選択は、例えば、前記電波の通信状態を表わす指標が予め設定されるしきい値を上回る基地局を選択することによって行なわれる。
【0069】
仮測位部56に対応するSA10においては、SA9において選択された基地局から、予め定められた所定数である3局の基地局の組み合わせである基地局組が複数設定され、設定された基地局組のそれぞれを用いて移動局の位置の算出、すなわち仮測位が行なわれる。具体的には、基地局組を構成する各基地局12においてSA7で検出される測位情報と、予め既知とされている各基地局12の位置についての情報とに基づいて移動局10の位置が算出される。具体的には、本実施例においては、SA7で検出される測位情報は、移動局10から所定の出力により送信された電波の受信強度であることから、予め記憶されている受信強度と電波の伝搬距離との関係(例えば図5)に基づいて、各基地局12と移動局10との距離がそれぞれ算出される。そして、算出された値が適用された前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置が算出(仮測位)される。この仮測位が、SA9において選択された基地局から構成される全ての各基地局組について実行される。例えば、SA10において第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局が選択される場合、本ステップにおいて、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、2、5)、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)の10組の基地局組が設定され、それぞれの基地局組を用いて仮測位が行なわれる。なお、基地局組(1、2、3)は前述のように、第1基地局12A、第2基地局12B、および第3基地局12Cからなる基地局組を表わす。他の基地局組についても同様である。
【0070】
仮測位結果群抽出部60に対応するSA11においては、SA10で算出された基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出される。例えば、SA10において前記10組の基地局組のそれぞれについての仮測位結果がで算出された場合において、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合、この特定基地局である第1基地局12Aを含まない基地局組である、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が、仮測位結果群として抽出される。
【0071】
ばらつき算出部62に対応するSA12においては、SA11において抽出された各基地局12を前記特定の基地局とした際の仮測位結果群について、それぞればらつきが算出される。このばらつきは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であって、本実施例においては仮測位結果群を構成する各仮測位結果の標準偏差とされている。例えば、SA11において第1基地局12A乃至第5基地局12Eのそれぞれが前記特定の基地局とされる場合についてSA11において抽出される仮測位結果群のそれぞれについて、ばらつきσ1乃至σ5が算出される。
【0072】
SA13においては、測位基地局設定部64および移動局位置算出部66に対応する測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンが実行される。図10はこの測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【0073】
SB1乃至SB3は、測位基地局設定部64に対応するものである。まず、SB1においては、SA12において算出される各基地局12を前記特定の基地局とした際の各仮測位結果群についてのばらつきσが比較され、最も小さい値となるばらつきσが複数あるか否かが判断される。最も小さい値となるばらつきσが複数あるとは、最も小さい値となる複数の等しい値のばらつきσがある場合に限られず、例えば、最も小さい値となるばらつきσから予め設定された所定の範囲内であるばらつきσが存在する場合を含むようにしてもよい。最も小さい値となるばらつきσが複数ある場合には、本ステップの判断が肯定され、SB2が実行される。また、最も小さい値となるばらつきσが1つである場合には、本ステップの判断が否定され、SB3が実行される。
【0074】
SB2は、SB1において最も小さい値となるばらつきσが複数あるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、前記特定の基地局とされた基地局が抽出される。そして、これら特定の基地局とされた基地局のそれぞれについて、それまでに図9および図10のフローチャートが実行されることにより測位基地局の設定が繰り返し行なわれた際に測位基地局から除外された回数が比較される。そして、複数ある最も小さいばらつきσのそれぞれに対応して、特定の基地局とされた基地局のうち、測位基地局から除外された回数の多い基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0075】
一方、SB3は、SB1において最も小さい値となるばらつきσが1つだけあるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、SB1で最も小さい値とされたばらつきσを算出した仮測位結果群について、前記特定の基地局とされた基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0076】
なお、SB2およびSB3においては、測位基地局とならない基地局が選択されたが、測位基地局はSA9で選択された基地局のうち、SB2もしくはSB3において選択された基地局を除いた基地局とされるので、SB2およびSB3は実質的には測位基地局を選択している。
【0077】
移動局位置算出部66に対応するSB4においては、SB2もしくはSB3のいずれかにおいて選択された基地局12を特定の基地局とした際の仮測位結果群に含まれる仮測位結果の平均(xAV,yAV)が移動局10の位置として算出される。
【0078】
SB5においては、SB2もしくはSB3において測位基地局とならない基地局として選択された基地局について、測位基地局から除外された回数が更新される。この回数はSB2における判断において用いられる。
【0079】
前述の実施例によれば、移動局測位システム8において、仮測位部56により、複数の基地局12から該複数よりも小さい所定数の基地局12の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局10の位置が算出され、仮測位結果群抽出部60により、仮測位部56によって基地局組ごとに算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、仮測位結果群抽出部60によって複数の基地局12の少なくとも一部の基地局12のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定され、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、移動局10の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0080】
また、前述の実施例によれば、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の平均(xAV,yAV)を前記移動局10の位置として算出するので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0081】
また、前述の実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群の標準偏差をばらつきσとして算出する。仮測位結果における誤差が大きいほどばらつきが大きくなるので、測位基地局設定部64が、算出されるばらつきσに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0082】
また、前述の実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果の平均(xAV,yAV)を算出し、移動局位置算出66は、ばらつき算出部62によって算出される前記仮測位結果の平均(xAV,yAV)を用いて前記移動局10の位置を算出する。ばらつき算出部62における仮測位結果群の標準偏差が算出される際に仮測位結果の平均(xAV,yAV)が算出されるので、移動局位置算出部66において仮測位結果の平均(xAV,yAV)を改めて算出する必要がなく、移動局10の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0083】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、その通信品質指標に基づいて移動局10との通信が良好に行なわれると判断される基地局12を選択する基地局予備選択部54を有し、仮測位56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12から基地局組を設定し、設定された基地局組を用いて移動局10の位置を算出するので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12である前記特定の基地局を除いた基地局が前記通信品質指標に基づいて測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができるとともに、基地局予備選択部54によって選択されない基地局を含む基地局組については前記仮測位部56による移動局10の仮測位を行なう必要がないので、移動局10の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0084】
また、前述の実施例によれば、測位基地局設定部64は、基地局12のそれぞれについて、それまでに測位基地局設定部64により測位基地局から除外された回数を記憶し、ばらつき算出工程62によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、これら複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局12のうち、前記除外された回数が多い基地局12を測位基地局から除外することにより測位基地局を設定するので、ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。
【0085】
また、前述の実施例によれば、基地局組は3局の基地局12により構成されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12を除いた基地局12が測位に用いる基地局12である測位基地局として選択され、それら選択された測位基地局のいずれか3局によって構成される基地局組を用いて平面上などを移動する移動局10の測位を行なうことができる。
【0086】
また、前述の実施例によれば、仮測位部56により、複数の基地局12からその複数よりも小さい所定数の基地局12の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局10の位置が算出され、仮測位結果群抽出部60により、前記仮測位部56によって基地局組ごとに算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、仮測位結果群抽出部60によって複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができる。
【0087】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0088】
本実施例は、測位基地局設定部64および移動局位置算出部66の作動に関するものであって、特にばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合に関するものである。
【0089】
前述の実施例においては、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定することとされたが、これについては本実施例においても同様である。一方、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、前述の実施例における作動とは異なる作動を行なう。なお、前記最も小さいばらつきσが複数ある場合とは、最も小さい値である等しい値のばらつきσが複数ある場合に限られず、最も小さい値であるばらつきσの値に対して、仮測位部56における測定誤差などを考慮した所定の範囲内に他のばらつきの値が含まれる場合であってもよいことは、前述の実施例と同様である。
【0090】
測位基地局設定部64および移動局位置算出部66は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、次のようにして測位基地局を設定し、移動局10の位置を算出する。まず、測位基地局設定部64は、ばらつきσが最も小さいとされる複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定する。そして、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64によって複数種類設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて仮測位部56により算出される仮測位結果の平均を、移動局10の位置として算出する。
【0091】
具体的な例を用いて説明する。ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、ばらつきσ1およびσ2が最も小さいばらつきであった場合について説明する。この場合、最も小さい複数のばらつきσ1およびσ2に対応する仮測位結果群はそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。そこで測位基地局設定部64は、第1基地局12Aを特定の基地局とした際の仮測位結果群に対応して、第1基地局12Aを除いて、すなわち第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定するとともに、第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群に対応して、第2基地局12Bを除いて、すなわち第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを別の種類の測位基地局として設定する。
【0092】
このうち、第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、この測位基地局から構成される基地局組は、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)であり、第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、この測位基地局から構成される基地局組は、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(3、4、5)である。そこで、移動局位置算出部66は、これら複数種類の測位基地局からそれぞれ構成される基地局組のそれぞれを用いて前記仮測位部56によって算出される移動局10の仮測位結果を平均し、その値を移動局10の位置とする。すなわち前述の例においては、基地局組(2、3、4)に対応する測位結果S(2、3、4)、基地局組(2、3、5)に対応する測位結果S(2、3、5)、基地局組(2、4、5)に対応する測位結果S(2、4、5)、基地局組(3、4、5)に対応する測位結果S(3、4、5)、基地局組(1、3、4)に対応する測位結果S(1、3、4)、基地局組(1、3、5)に対応する測位結果S(1、3、5)、基地局組(1、4、5)に対応する測位結果S(1、4、5)の平均を、移動局10の位置として算出する。この平均は、たとえば、各測位結果Sの各座標軸成分ごとの平均によって算出される。なお、基地局組(3、4、5)は、第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、および、第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合の両方において、測位基地局から構成される基地局組であるが、移動局位置算出部66における測位結果Sの平均の算出においては、この基地局組(3、4、5)に対応する測位結果S(3、4、5)のように複数種類の測位基地局に重複する測位結果Sについて重複して平均を算出する必要はない。
【0093】
図11は、本実施例における測位基地局設定部64および移動局位置算出部66の制御作動の一例の概要を説明するフローチャートであって、測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンとして、前述の実施例における移動局測位システム8の制御作動を説明する図9のフローチャートにおけるSA13で実行されるものである。
【0094】
SC1およびSC2は、測位基地局設定部64に対応するものである。まず、SC1においては、SA12において算出される各基地局12を前記特定の基地局とした際の各仮測位結果群についてのばらつきσが比較され、最も小さい値となるばらつきσが複数あるか否かが判断される。最も小さい値となるばらつきσが複数あるとは、最も小さい値となる複数の等しい値のばらつきσがある場合に限られず、例えば、最も小さい値となるばらつきσから予め設定された所定の範囲内であるばらつきσが存在する場合を含むようにしてもよい。最も小さい値となるばらつきσが複数ある場合には、本ステップの判断が肯定され、SC2が実行される。また、最も小さい値となるばらつきσが1つである場合には、本ステップの判断が否定され、SC4が実行される。
【0095】
SC2は、SC1において最も小さい値となるばらつきσが複数あるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、複数種類の測位基地局が設定される。そして、設定される複数種類の測位基地局のそれぞれによって基地局組が構成される。さらに、このように構成された基地局組のそれぞれを用いてSA10において行なわれた仮測位の結果がそれぞれ読み出される。
【0096】
移動局位置算出部66に対応するSC3においては、SC2で読み出された仮測位の結果の平均が算出され、移動局10の位置であるとされる。
【0097】
一方、SC4およびSC5は、SC1において判断が否定された場合、すなわち最も小さい値となるばらつきσが1つだけあるとされた場合に実行されるステップであり、前述の実施例における図10のSB3およびSB4にそれぞれ対応する。SC4においては、SC1で最も小さい値とされたばらつきσを算出した仮測位結果群について、前記特定の基地局とされた基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0098】
また、移動局位置算出部66に対応するSC5においては、SC4において選択された基地局12を特定の基地局とした際の仮測位結果群に含まれる仮測位結果の平均(xAV,yAV)が移動局10の位置として算出される。
【0099】
前述の実施例によれば、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、それら複数の仮測位結果群のそれぞれについて、複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定し、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64によって複数設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて仮測位部56により算出される仮測位結果の平均を、移動局10の位置として算出するので、ばらつきσが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。
【実施例3】
【0100】
本実施例は、ばらつき算出部62の作動に関するものである。前述の実施例においては、ばらつき算出部62は仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であるばらつきσを、(2)式で定義される仮測位結果群に含まれる仮測位結果の座標の標準偏差として算出した。本実施例においては、ばらつき算出部62は次のようにばらつきσを定義し、算出する。
【0101】
ばらつき算出部62は、仮測位結果群に含まれる仮測位結果のそれぞれの距離のうち、最大のものをばらつきσとして算出する。このようにすれば、ばらつきσは仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標となる。
【0102】
基地局予備選択部54(図4参照)により選択された基地局が第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局であり、特定の基地局が第5基地局12Eである場合を例として説明する。図12は本実施例におけるばらつき算出部62によるばらつきσの算出を説明する図である。図12には、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合の仮測位結果群、すなわち、第5基地局12Eを含まない基地局組である、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれを用いて算出された移動局10の仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が図示されている。基地局予備選択部54はこれらの仮測位結果のそれぞれの距離、すなわちS(1、2、3)とS(1、2、4)との距離d2、S(1、2、3)とS(1、3、4)との距離d6、S(1、2、3)とS(2、3、4)との距離d1、S(1、2、4)とS(1、3、4)との距離d3、S(1、2、4)とS(2、3、4)との距離d5、S(1、3、4)とS(2、3、4)との距離d4、をそれぞれ算出し、これらのうち最大のものを選択し、その値dmaxをその仮測位結果群のばらつきとする。
【0103】
本実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきσとして算出するので、仮測位結果における誤差が大きいほど仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値であるばらつきσが大きくなるように算出され、測位基地局設定部64は、算出されるばらつきσに基づいて測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができ、それら測位基地局を用いた移動局10の位置の算出を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【実施例4】
【0104】
本実施例は、ばらつき算出部62のさらに別の作動に関するものである。本実施例においては、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきσとして算出する。なお、測位の対象である移動局10が平面上を移動する場合には仮測位結果群を包含するのは円であり、測位の対象である移動局10が3次元空間を移動する場合には球である。前記ばらつきσとして算出する。このようにすれば、ばらつきσは仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標となる。
【0105】
基地局予備選択部54(図4参照)により選択された基地局が第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局であり、特定の基地局が第5基地局12Eである場合を例として説明する。図13は本実施例におけるばらつき算出部62によるばらつきσの算出を説明する図である。図13には、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合の仮測位結果群、すなわち、第5基地局12Eを含まない基地局組である、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれを用いて算出された移動局10の仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が図示されている。前述のように、移動局10が平面上を移動する場合には、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円の直径をばらつきσとして算出する。すなわち、ばらつき算出部62は、図13に示すように、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)を全て包含する円の直径Rを算出し、算出された直径Rの値をばらつきσとする。なお、本実施例においては、移動局10が平面上を移動する場合として仮測位結果Sを全て包含する円の直径Rをばらつきσとする例について説明したが、移動局10が3次元空間を移動する場合についても、仮測位結果Sを全て包含する球の直径Rをばらつきσとすることにより同様の効果が得られる。
【0106】
本実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出するので、仮測位結果における誤差が大きいほど仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径であるばらつきσが大きくなるように算出され、測位基地局設定部64は、算出されるばらつきσに基づいて測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができ、それら測位基地局を用いた移動局10の位置の算出を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0107】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0108】
例えば、前述の実施例においては移動局10は平面上を移動するものとされたが、かかる態様に限られず、空間(3次元)を移動するものであってもよい。この場合、移動局10の位置を表わす座標(x,y,z)を未知数として前記(1)式に対応する式が導出されればよい。
【0109】
また、前述の実施例においては、測位情報検出部40が測位情報として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波を受信した際の受信強度であったが、これに限られない。具体的には、例えば測位のための電波の移動局10における送信時刻および各基地局12における受信時刻であってもよい。この場合、これら送信時刻および受信時刻から得られる測位のための電波の伝搬時間に電波の速度を乗ずるなどして算出される移動局10と各基地局12との距離に基づいて移動局10の位置の算出が可能である。また、複数の基地局12における電波の受信時刻差に基づいて移動局10の位置の算出を行なうこともできる。これらの場合、好適には移動局10が送信する測位のための電波にはPN(Pseudo Noise;疑似雑音)符号が含められる。PN符号は、相関に鋭いピークを生ずるので、受信側においてマッチドフィルタ等を用いて同期検出を行なうことにより、精度のよい受信時刻の検出が可能となるためである。
【0110】
また、前述の実施例においては、通信状態検出部42が電波の通信状態を表わす指標として検出するのは、測位のための電波の受信強度(RSSI)だったが、これに限られない。例えば、測位のための電波に誤り検出符号が含められる場合には、該誤り検出符号に基づいて算出される受信した電波における誤り率(BER;bit error rate)とされてもよいし、あるいは測位のための電波に拡散符号が含まれる場合には、受信した電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号と同一のレプリカ符号との相関値のピーク値であってもよい。すなわち、電波の送受信に際し、その通信状態により一定の変化をする指標であれば、これらに限られない。また、前述の実施例においては、測位情報検出部40および通信状態検出部42はいずれも移動局10が送信する測位のための電波を検出の対象としたが、これにかぎられず、移動局10は測位情報検出部40による測位情報の検出のための電波と、通信状態検出部42による電波の通信状態を表わす指標の検出のための電波をそれぞれ送信し、各基地局12においては、受信した電波に応じて測位情報検出部40による測位情報の検出と、通信状態検出部42による電波の通信状態を表わす指標の検出とをそれぞれ行なってもよい。
【0111】
前述の実施例においては、基地局予備選択部54、仮測位部56、記憶部58、仮測位結果群抽出部60、ばらつき算出部62、測位基地局設定部64、移動局位置算出部66などはサーバ14の有する機能であるとされたが、これに限られない。例えばこれらをいずれかの基地局12の有する機能とすることも可能である。このようにすれば、サーバ14を設ける必要がない。
【0112】
また、前述の実施例において、位置情報検出部40および通信状態検出部42が検出する受信強度の値は、無線部34において受信する電波の受信強度の瞬時値であってもよいし、予め定められた複数回だけ検出された瞬時値の平均値であってもよい。
【0113】
前述の実施例においては、測位のための電波は移動局10から送信され、各基地局12により受信されるものであったが、このような態様に限られない。すなわち、移動局10が測位情報検出部40、通信状態検出部42を有し、各基地局12の無線部34からそれぞれ送信される測位のための電波を移動局10の無線部24によりそれぞれ受信し、受信した電波に対し測位情報の検出と、電波の通信状態を表わす指標の検出を行なうことも可能である。
【0114】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部54は、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択するものとされたが、このような態様に限られない。例えば、予め設定された基地局の数が選択されるように、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が大きいものから所定数の基地局を選択するようにしてもよい。
【0115】
また、前述の実施例においては、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の平均を移動局10の位置として算出したが、このような態様に限られない。例えば、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の中間値を移動局10の位置として算出しても、同様の効果が得られる。
【0116】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部54を含んで構成され、仮測位部56は基地局予備選択部54によって選択された基地局を用いて移動局10の位置を仮測位するものとされたが、このような態様に限られない。すなわち、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部54を含まない構成とすることも可能であり、この場合、仮測位部56は移動局10からの電波を受信した全ての基地局12の受信結果などに基づいて移動局10の位置を仮測位するなどにより、一定の効果が得られる。
【0117】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】移動局から送信される測位のための電波を基地局が受信した際の受信強度の大きさと、移動局と基地局との距離との関係を説明する図である。
【図6】図4における仮測位部による基地局組を用いた移動局の位置の算出を説明する図である。
【図7】基地局組と、その基地局組を用いた仮測位結果、および各基地局を特定の基地局とした場合における仮測位結果群を構成する仮測位結果を説明する図である。
【図8】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出を各基地局を特定の基地局とするごとに説明する図である。
【図9】本発明の一実施例である移動局測位システムの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおいて実行される測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンの制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】図9のフローチャートにおいて実行される測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンの制御作動の別の例を説明するフローチャートであって図10に対応する図である。
【図12】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出の別の例を説明する図である。
【図13】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出のさらに別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0119】
8:移動局測位システム
9:測位基地局選択システム
10:移動局
12:基地局
54:基地局予備選択部
56:仮測位部
60:仮測位結果群抽出部
62:ばらつき算出部
64:測位基地局設定部
66:移動局位置算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法、移動局測位システム、および、前記測位基地局を選択するための測位基地局選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムが知られている。例えば特許文献1に記載された位置検出システムがそれである。
【0003】
このような測位システムにおいては、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が用いられるが、移動局の位置の算出(測位)に必要となる数を上回る基地局が存在する場合においては、移動局と何れの基地局との無線通信の結果を用いるかを選択することができる。かかる場合には、選択した通信結果、すなわち移動局といずれの基地局との通信結果を用いるかによって、測位の精度が左右される。具体的には、移動局と基地局との間における無線通信が反射波や妨害電波などの影響を受けることにより信頼性の乏しいものであると、その受信結果を用いた測位の結果は精度が悪化するおそれがあった。
【0004】
特許文献1には、かかる課題を解決するための方法として、複数の基地局から送信される無線信号のうち、移動局が最大の受信レベルで受信した無線信号に対応する基地局の位置から所定の距離以内に存在する基地局を選択する技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−77976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受信レベルに基づいて移動局と基地局との間の無線通信を評価する場合、マルチパスや妨害波による干渉の影響によって受信レベルが影響を受けることがあるので、正しい評価がされない場合がある。すなわち、移動局と基地局との無線通信において受信レベルが高い基地局の信頼性が高くならない場合がある。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択する測位基地局選択方法、選択された前記測位基地局を用いて移動局の位置を算出する移動局測位方法、および移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法であって、(b)複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、(c)該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、(d)前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、(e)該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、(f)該測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項11にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する際に、該複数の測位基地局として必要な基地局数を上回る複数の基地局から前記複数の測位基地局を選択するための測位基地局選択方法であって、(b)前記複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、(c)該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、(d)前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、(e)該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項12にかかる発明は、(a)移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位部と、(c)該仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出部と、(d)前記仮測位結果群抽出部によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出部と、(e)該ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定部と、(f)該測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の移動局測位方法によれば、前記仮測位工程により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出工程により、前記仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出工程により、前記仮測位結果群抽出工程によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定工程により、前記ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定され、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0012】
好適には、前記移動局位置算出工程は、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により得られた仮測位結果の平均を前記移動局の位置として算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて設定される測位基地局により測位された仮測位結果の平均が前記移動局の位置として算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0013】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群の標準偏差を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群の標準偏差である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0014】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果の平均を算出し、前記移動局位置算出工程は、該ばらつき算出工程によって算出される前記仮測位結果の平均を用いて前記移動局の位置を算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつき算出工程において前記仮測位結果群の標準偏差が算出される際に前記仮測位結果の平均が算出されるので、移動局位置算出工程において仮測位結果の平均を改めて算出する必要がなく、移動局の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0015】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0016】
また好適には、前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出すること、を特徴とする。このようにすれば、このようにすれば、前記仮測位結果における誤差が大きいほど前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径である前記ばらつきが大きくなるように算出されるので、前記測位基地局設定工程が、算出されるばらつきに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0017】
さらに好適には、(a)前記移動局測位方法は、前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、該通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択工程を有し、(b)前記仮測位工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から前記基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前述の、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が前記通信品質指標に基づいて測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる、という効果に加え、通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局が前記基地局予備選択工程によって選択され、前記基地局組選択工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から特定の基地局を除いて前記基地局組が設定されるので、前記基地局予備選択工程によって選択されない基地局を含む基地局組については前記仮測位工程による移動局の測位を行なう必要がないので、移動局の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0018】
また好適には、前記測位基地局設定工程は、前記基地局のそれぞれについて、それまでに前記測位基地局設定工程により測位基地局から除外された回数を記憶し、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局のうち、前記除外された回数が多い基地局を前記測位基地局から除外することにより測位基地局を設定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0019】
また好適には、(a)前記測位基地局設定工程は、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定し、(b)前記移動局位置算出工程は、該測位基地局設定工程によって複数設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により算出される仮測位結果の平均を、移動局の位置として算出すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0020】
また好適には、前記基地局組は3局の前記基地局により構成されること、を特徴とする。このようにすれば、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら選択された測位基地局のいずれか3局によって構成される基地局組を用いて移動局の測位を行なうことができる。
【0021】
また、請求項11に係る発明によれば、前記仮測位工程により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出工程により、前記仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出工程により、前記仮測位結果群抽出工程によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定工程により、前記ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができる。
【0022】
また、請求項12の移動局測位システムによれば、前記仮測位部により、複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局の位置が算出され、前記仮測位結果群抽出部により、前記仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、前記ばらつき算出部により、前記仮測位結果群抽出部によって前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきが算出され、前記測位基地局設定部により、前記ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いて前記測位基地局が設定され、前記測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた複数の基地局である、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12E、第6基地局12F、第7基地局12G(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。移動局測位システム8においては、移動局10の測位を行なうのに必要な最小の数を上回る数の基地局12が含まれている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。以下の説明においては、移動局10の座標を(x,y)、第1基地局12Aの座標を(xa,ya)、第2基地局12Bの座標を(xb,yb)、第3基地局12Cの座標を(xc,yc)、第4基地局12Dの座標を(xd,yd)、のように表わす。
【0025】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号(ID)や固有の拡散符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0026】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0027】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12においては、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0028】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部24は、各基地局12に対し測位のための電波を送信する際には、予め定められた所定の送信出力により電波を送信するものとされている。
【0029】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により受信された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。前記無線部24および制御部26などが送信機としての機能を有する。
【0030】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有している。また基地局12は、前記アンテナ32を介して電波の送受信を行なう無線部34、制御部36、測位情報検出部40、通信状態検出部42、時計44などを含んで構成されている。基地局12は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これらの機能を行なうようにされている。さらに基地局12は通信インタフェース46を備えて構成されている。
【0031】
アンテナ32は、前述の移動局10のアンテナ22と同様に、電波の送受信に用いられるものであって、好適には指向性のないアンテナが用いられる。無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様に、基地局12における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部36により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部34は制御部36によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、無線部34のそれぞれに対応するアンテナ32により電波を送信する。このように、無線部34は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部34は、電波の受信時にはアンテナ32によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部34は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0032】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により取り出されたり、後述するサーバ14から得られる情報を処理したり、指令に従って基地局12の作動を変更したりする。前記無線部34の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0033】
測位情報検出部40は、移動局10から送信される測位のための電波を無線部34が受信した際の受信結果であって、後述するサーバ14の仮測位部56が移動局10の位置の算出に用いるための情報である測位情報を検出する。本実施例においては、この測位情報は例えば受信した電波の受信強度であり、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられる。測位情報検出部40による受信強度の値の検出は、例えば予め定められた一定時間である受信時間区間において行なわれ、その平均が用いられる。
【0034】
通信状態検出部42は、移動局10から送信される測位のための電波を基地局12の無線部34において受信した際における、電波の通信状態を表わす指標を検出する。本実施例においては、この指標は受信した電波の受信強度であり、例えば前述の測位情報検出部40において検出されるRSSIが用いられる。このようにすれば、電波の通信状態を表わす指標であるRSSIが大きいほど、電波を強い強度で受信できる、すなわち良好な通信状態であると推定することができる。なお、上述のように測位情報検出部40と通信状態検出部42とが検出する対象が同一である場合には、これら測位情報検出部40と通信状態検出部42とが区別して設けられる必要はなく、実質的に同一であってもよい。前記電波の通信状態を表わす指標が通信品質指標に対応する。
【0035】
時計44は、制御部36に時刻情報を供給する。制御部36は、前述の測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標を時刻ごとに検出することができる。通信インタフェース46は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出れる通信状態を表わす指標についての情報などが通信インタフェース46を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース46を介して受信される。
【0036】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部58、基地局予備選択部54、仮測位部56、仮測位結果群抽出部60、ばらつき算出部62、測位基地局設定部64、移動局位置算出部66、通信インタフェース52などを機能的に有して構成される。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0037】
通信インタフェース52は、前述の基地局12の通信インタフェース46と同様に通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なうものであって、具体的にはサーバ14から基地局12に対して情報の送受信を行なう。例えば基地局12に対しその作動を制御するための指令を送信したり、基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報や、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標などを基地局12から受信したりする。
【0038】
基地局予備選択部54は、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標に基づいて、移動局測位システム8を構成する基地局12のうちから、後述する仮測位部56において移動局10の位置の算出に用いられる基地局12を選択する。本実施例においては、通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した際の受信強度を表わすRSSIであり、基地局予備選択部54は、移動局測位システム8に含まれる基地局12のうち、このRSSIが予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択する。前記しきい値は、例えば、後述する仮測位部56における移動局10の位置の算出の際の誤差が許容範囲内となるように、予め実験的に、あるいはシミュレーションにより得られる値に設定される。
【0039】
仮測位部56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12を用いて、移動局10の位置の算出を行なう。具体的には仮測位部56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12から、予め定められる所定数の基地局の組み合わせである基地局組を複数設定する。そして設定された複数の基地局組のそれぞれについて、基地局組を構成する基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。算出された移動局10の位置についての情報は、算出に用いた基地局組についての情報とともに記憶部58に記憶される。
【0040】
図1に示した本実施例における移動局測位システム8を例として具体的に説明する。移動局測位システム8は第1基地局12A乃至第7基地局12Gを含んで構成されている。移動局10から送信された測位のための電波が送信され、各基地局12の無線部34により受信される。そして各基地局12の通信状態検出部42において通信状態を表わす指標であるRSSIが検出され、サーバ14の基地局予備選択部54により、各基地局12のRSSIのうち、予め設定されたしきい値を上回っている基地局として、例えば、第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局が選択される。
【0041】
仮測位部56において、移動局10が平面を移動する際には、移動局10の位置を算出するために用いる基地局12の所定数は3とされている。したがって、仮測位部56は、基地局予備選択部54により選択された第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局から、3つの基地局からなる基地局組を設定する。設定される基地局組は、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、3)」と表わす。)、第1基地局12A、第2基地局12B、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、4)」と表わす。)、第1基地局12A、第2基地局12B、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、2、5)」と表わす。)、第1基地局12A、第3基地局12C、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(1、3、4)」と表わす。)、第1基地局12A、第3基地局12C、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、3、5)」と表わす。)、第1基地局12A、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(1、4、5)」と表わす。)、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12Dからなる基地局組(以下、「基地局組(2、3、4)」と表わす。)、第2基地局12B、第3基地局12C、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(2、3、5)」と表わす。)、第2基地局12B、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(2、4、5)」と表わす。)、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12Eからなる基地局組(以下、「基地局組(3、4、5)」と表わす。)、の10組の基地局組を設定する。
【0042】
仮測位部56は続いて、設定された基地局組のそれぞれについて、基地局組を構成する基地局12の測位情報検出部40によって検出される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。前述のように、本実施例においては、測位情報検出部40によって検出される測位情報は、移動局10から送信される測位のための電波の受信強度(RSSI)である。所定の出力により送信された電波を受信した際の受信強度と、電波の伝搬距離D、すなわち移動局10と基地局12との距離とは、図5に示すように1対1の関係にある。したがって、この図5に示す関係を記憶部58に予め記憶しておき、この関係に基づいて各基地局12における測位情報であるRSSIをそれぞれの基地局12と移動局10との距離に変換することができる。このようにして、仮測位部56は基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0043】
仮測位部56は続いて、算出された基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、予め既知とされ、例えば記憶部58に記憶されている各基地局12の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。例として、仮測位部56が基地局組(1、2、3)を用いて移動局10の位置を算出する過程について図6を用いて説明する。
【0044】
図6は、仮測位部56による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)、基地局組(1、2、3)を構成する基地局である、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xa,ya)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xb,yb)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xc,yc)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図6における基地局12の配置は説明を簡単にするため図1のものと異なっている。
(xa - x)2 + (ya - y)2= r12
(xb - x)2 + (yb - y)2= r22 ・・・(1)
(xc - x)2 + (yc - y)2= r32
ここで、r1、r2およびr3(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、および、第3基地局12Cのそれぞれから移動局10までの距離であって、前述のように測位情報であるRSSIと図5に示す関係とから得られる値である。そして、仮測位部56は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。このように、基地局12の位置およびその基地局12と移動局10との距離に基づいて移動局10の位置を算出する場合、前記(1)式として3本以上の式があれば、移動局10の位置を解として算出することができる。すなわち、移動局10から送信される測位のための電波を少なくとも3局以上の基地局12によって受信できればよい。従って、本実施例においては、基地局組は3局の基地局によって構成される。
【0045】
仮測位部56によって算出される移動局10の位置は、その算出に用いた基地局組についての情報とともに記憶部58に記憶される。以下の説明において、基地局組(a,b,c)を用いて仮測位部56によって算出された移動局の位置を、仮測位結果S(a,b,c)と表記し、仮測位結果S(a,b,c)を基地局組(a,b,c)に対応する仮測位結果という。
【0046】
図4に戻って、仮測位結果群抽出部60は、前記仮測位部56によって算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する。本実施例においては、仮測位部56によって、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、2、5)、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)の10組の基地局組が設定されるが、例えば、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合、この特定基地局である第1基地局12Aを含まない基地局組である、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が、仮測位結果群として抽出される。同様に、第2基地局12Bが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、3、4)、S(1、3、5)、S(1、4、5)、S(3、4、5)が仮測位結果群として抽出され、第3基地局12Cが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、4)、S(1、2、5)、S(1、4、5)、S(2、4、5)が仮測位結果群として抽出され、第4基地局12Dが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、5)、S(1、3、5)、S(2、3、5)が仮測位結果群として、それぞれ抽出され、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされる場合、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が仮測位結果群として、それぞれ抽出される。
【0047】
ばらつき算出部62は、仮測位結果群抽出部60によって抽出された各基地局12を前記特定の基地局とした際の仮測位結果群について、ばらつきを算出する。このばらつきは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であって、本実施例においては、ばらつきσは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の座標の標準偏差として、次式(2)で定義される。
【数1】
ここで、σxは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のX方向の座標の標準偏差であり、σyは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のY方向の座標の標準偏差であり、次式(3)で表わされる。
【数2】
(3)式において、添字iは仮測位結果群に含まれる各測位結果を表わし、Nは仮測位結果群に含まれる測位結果の総数を表わす。また、(3)式においてxAVは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のX方向の座標の平均であり、yAVは仮測位結果群に含まれる各仮測位結果のY方向の座標の平均である。具体的には次式(4)で表わされる。
【数3】
ばらつき算出部62は、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ1、第2基地局12Bが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ2、第3基地局12Cが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ3、第4基地局12Dが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ4、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされる場合の仮測位結果群のばらつきをσ5としてそれぞれ算出する。
【0048】
図7は、仮測位部56が設定する基地局組と、その基地局組に対応する仮測位結果、および第1基地局12A乃至第5基地局12Eのそれぞれを特定の基地局としたときの各仮測位結果群を構成する仮測位結果を説明する図である。図の第1列には仮測位部56が設定する基地局組が、第2列には第1列の基地局組に対応する仮測位結果がそれぞれ示されており、第3列乃至第7列に、それぞれ第1基地局12A乃至第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合の仮測位結果群を構成する基地局を示しており、各列に対応する仮測位結果群は、丸印が付された行の第2列に記載された仮測位結果により構成される。
【0049】
図8は、第1基地局12A乃至第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合の仮測位結果群およびばらつきの一例を表わすシミュレーション結果である。このシミュレーションにおいては、第1基地局12Aの位置を(2(m),0(m))、第2基地局12Bの位置を(7,0)、第3基地局12Cの位置を(0,8)、第4基地局12Dの位置を(7,10)、第5基地局12Eの位置を(10,5)とし、移動局10の位置を(4,4)としている。また、各基地局12における測距誤差のばらつきの値は、第1基地局12A乃至第4基地局12Dについては、0.5、第5基地局12Eについては−3とした。このばらつきは、移動局10から送信される測位のための電波を各基地局12が受信し、その強度から算出される移動局10と各基地局12のそれぞれとの距離の平均と、真値とのずれを表わしている。ばらつきが大きいことは、そのばらつきが大きい基地局の近傍に妨害波の送信源が存在していたり、あるいは反射波の影響を受けやすい位置にあるなどにより、妨害波やマルチパスによる干渉の影響を受けやすいことを表わしている。
【0050】
図8の(a)乃至(e)は、それぞれ、前記特定の基地局を第1基地局12A乃至第5基地局12Eとした場合に対応する図である。各図において、前記特定基地局以外の基地局12は黒四角のプロットで表わされている。すなわち、黒四角で表わされた位置にある基地局12から基地局組が設定されて、その基地局組を用いて仮測位部56による移動局10の仮測位が行なわれる。また、図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、設定される基地局組のそれぞれを用いて行なわれる仮測位結果が黒丸のプロットにより表わされている。すなわち、図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、複数の黒丸で表わされた点の集合が仮測位結果群に対応する。具体的には例えば、第1基地局12Aを特定の基地局とした場合図8(a)については、前記特定の基地局以外の基地局である第2基地局12B乃至第5基地局12Eが黒四角のプロットで表わされ、これら第2基地局12B乃至第5基地局12Eから設定される基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が黒丸のプロットで表わされている。図8の(a)乃至(e)のそれぞれにおいて、ばらつき算出部62によりばらつきとしての標準偏差σの値が算出される際に算出される仮測位結果群の平均(xAV,yAV)は白丸のプロットにより表わされ、移動局10の実際の位置はプラス記号のプロットで表わされている。
【0051】
ばらつき算出部62により算出されるばらつきσは、第1基地局12Aを特定の基地局とした場合図8(a)についてはσ1=1.07、第2基地局12Bを特定の基地局とした場合図8(b)についてはσ2=0.99、第3基地局12Cを特定の基地局とした場合図8(c)についてはσ3=1.19、第4基地局12Dを特定の基地局とした場合図8(d)についてはσ4=1.15、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合図8(e)についてはσ=0.34、となる。
【0052】
図4に戻って、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する。本実施例においては、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、最も小さいばらつきが選択される。そして、選択された最も小さいばらつきに対応する仮測位結果群を抽出する際に前記特定の基地局を除いて、測位基地局が設定される。すなわち、測位基地局は、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局のうち、前記特定の基地局を含まない基地局として設定される。
【0053】
前述の図8の例においては、ばらつきσ5がσ1乃至σ5のうちで最も小さい。そのばらつきσ5に対応する仮測位結果群は、第5基地局12Eを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。従って、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局である第1基地局12A乃至第5基地局12Eのうち、前記特定の基地局である第5基地局12Eを除く基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dが測位基地局設定部64により測位基地局として設定される。なお、このシミュレーション例によれば、測距誤差のばらつきが大きいとされた第5基地局12Eを前記特定の基地局とした場合のばらつきσ5が最も小さくなっており、シミュレーション結果が妥当なものであるとされる。また、ばらつきσと、仮測位結果群との関係において、ばらつきσが小さい程、移動局10の実際の位置と、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)との距離が小さくなっているので、ばらつきσが小さくなるように前記特定の基地局を選択し、その特定の基地局以外の基地局を測位基地局として移動局10の測位を行なうことによりその測位の精度を高めることができる。
【0054】
このように、測位基地局設定部64においては、基地局予備選択部54によって選択された基地局のうち、測位基地局とされない基地局が発生する。そこで、測位基地局設定部64は、測位基地局となる基地局を設定する毎に、測位基地局から除かれた基地局について、その除外回数を基地局ごとに記憶する。具体的には、前述のようにばらつきσ5が最も小さい場合には、測位基地局設定部64は、前記特定の基地局である第5基地局12Eを除く基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dを測位基地局として設定するとともに、第5基地局12Eが測位基地局から除外された回数を1回加算する。
【0055】
また、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、次のようにして測位基地局を設定する。なお、前記最も小さいばらつきσが複数ある場合とは、最も小さい値である等しい値のばらつきσが複数ある場合に限られず、最も小さい値であるばらつきσの値に対して、仮測位部56における測定誤差などを考慮した所定の範囲内に他のばらつきの値が含まれる場合であってもよい。このような場合において、測位基地局設定部64は、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、前記特定の基地局とされた基地局を抽出する。そして、これら特定の基地局とされた基地局のそれぞれについて、測位基地局設定部64において計数される測位基地局から除外された回数を比較する。測位基地局設定部64は、複数ある最も小さいばらつきσのそれぞれに対応して、特定の基地局とされた基地局のうち、測位基地局から除外された回数の多い基地局を除いて、測位基地局を設定する。
【0056】
具体的な例として、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、ばらつきσ1およびσ2が最も小さいばらつきであった場合について説明する。この場合、最も小さい複数のばらつきσ1およびσ2に対応する仮測位結果群はそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。そこで測位基地局設定部64は、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bのそれぞれについて、それまでに測位基地局から除外された回数を比較する。そして、第1基地局12Aが測位基地局から除外された回数が第2基地局12Bが測位基地局から除外された回数よりも多い場合には、前記基地局予備選択部54によって選択された基地局である第1基地局12A乃至第5基地局12Eのうち、第1基地局12Aを除く基地局、すなわち第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する。測位基地局設定部64を含む移動局測位システム8における測位基地局の設定方法が、本願発明の測位基地局選択方法に対応する。したがって、移動局測位システム8は測位基地局選択システム9を包含する。
【0057】
図4に戻って、移動局位置算出部66は、前記測位基地局設定部64によって設定された測位基地局により行なわれた仮測位結果に基づいて、移動局10の位置を算出する。具体的には、移動局位置算出部66は、前記測位基地局設定部64によって測位基地局と設定された基地局により構成される基地局組のそれぞれを用いて、前記仮測位部56によって行なわれた測位結果を平均を算出し、その平均を移動局10の位置とする。
【0058】
具体的には例えば、前述のように、前記測位基地局設定部64により、第5基地局12Eが前記特定の基地局とされ、第5基地局12Eを含まない基地局、すなわち第1基地局12A乃至第4基地局12Dを測位基地局と設定される場合には、その測位基地局によって構成される基地局組である基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれについて前記仮測位部56によって算出された仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が仮測位結果群が記憶部58から読み出され、その平均である、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)が算出され、移動局10の位置とされる。
【0059】
本実施例においては、ばらつき算出部62において、各基地局12を特定の基地局とした場合のばらつきσを算出する際に、仮測位結果群の平均(xAV,yAV)が算出されていることから、ばらつき算出部62におけるばらつきσの算出過程において算出される仮測位結果群の平均(xAV,yAV)を記憶部58などに記憶しておき、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局に対応した測位結果群の平均(xAV,yAV)を、記憶部58に記憶された測位結果群の平均(xAV,yAV)から選択して読み出すことができる。このようにすれば、測位結果群の平均(xAV,yAV)を改めて行なう必要がなく、計算量の低減を図ることができ、測位に要する所要時間や消費電力を低減させることができる。移動局測位システム8における移動局10の測位の方法が、本願発明の移動局測位方法に対応する。
【0060】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、測位情報検出部40において前記測位情報を測定させ、また、通信状態検出部42により移動局10と各基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標を検出させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0061】
SA2においては、各基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0062】
SA3は、SA2の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、SA2で受信されたサーバ14から前記(1)の指令を受信したか否かが判断される。前記(1)の指令を受信した基地局12、すなわち代表基地局においては本ステップの判断が肯定され、SA4が実行される。また、前記(1)の指令を受信せず、(2)の指令のみを受信した基地局12においては、本ステップの判断が否定され、SA4が実行されることなく、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0063】
SA4においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。この移動局10への指令の送信が行なわれた後、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0064】
SA5においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA4の指令)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA6が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA5が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0065】
移動局10の無線部24などに対応するSA6においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0066】
各基地局12の無線部34、測位情報検出部40、通信状態検出部42などに対応するSA7においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信結果に関し、測位に用いられる値である測位情報の値が検出される。また、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標が検出される。本実施例においては、測位情報は、受信した電波の強度を表わすRSSIであり、また、電波の通信状態を表わす指標もまた、受信した電波の強度を表わすRSSIとされているので、このRSSIが検出される。
【0067】
通信インタフェース46などに対応するSA8においては、SA7で検出される測位情報および電波の通信状態を表わす指標についての情報が、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。
【0068】
サーバ14の基地局予備選択部54に対応するSA9においては、SA7において各基地局12で検出された、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす指標に基づいて、仮測位に用いる基地局を選択する。本ステップにおける仮測位に用いる基地局の選択は、例えば、前記電波の通信状態を表わす指標が予め設定されるしきい値を上回る基地局を選択することによって行なわれる。
【0069】
仮測位部56に対応するSA10においては、SA9において選択された基地局から、予め定められた所定数である3局の基地局の組み合わせである基地局組が複数設定され、設定された基地局組のそれぞれを用いて移動局の位置の算出、すなわち仮測位が行なわれる。具体的には、基地局組を構成する各基地局12においてSA7で検出される測位情報と、予め既知とされている各基地局12の位置についての情報とに基づいて移動局10の位置が算出される。具体的には、本実施例においては、SA7で検出される測位情報は、移動局10から所定の出力により送信された電波の受信強度であることから、予め記憶されている受信強度と電波の伝搬距離との関係(例えば図5)に基づいて、各基地局12と移動局10との距離がそれぞれ算出される。そして、算出された値が適用された前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置が算出(仮測位)される。この仮測位が、SA9において選択された基地局から構成される全ての各基地局組について実行される。例えば、SA10において第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局が選択される場合、本ステップにおいて、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、2、5)、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)の10組の基地局組が設定され、それぞれの基地局組を用いて仮測位が行なわれる。なお、基地局組(1、2、3)は前述のように、第1基地局12A、第2基地局12B、および第3基地局12Cからなる基地局組を表わす。他の基地局組についても同様である。
【0070】
仮測位結果群抽出部60に対応するSA11においては、SA10で算出された基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出される。例えば、SA10において前記10組の基地局組のそれぞれについての仮測位結果がで算出された場合において、第1基地局12Aが前記特定の基地局とされる場合、この特定基地局である第1基地局12Aを含まない基地局組である、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)のそれぞれに対応する仮測位結果S(2、3、4)、S(2、3、5)、S(2、4、5)、S(3、4、5)が、仮測位結果群として抽出される。
【0071】
ばらつき算出部62に対応するSA12においては、SA11において抽出された各基地局12を前記特定の基地局とした際の仮測位結果群について、それぞればらつきが算出される。このばらつきは、仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であって、本実施例においては仮測位結果群を構成する各仮測位結果の標準偏差とされている。例えば、SA11において第1基地局12A乃至第5基地局12Eのそれぞれが前記特定の基地局とされる場合についてSA11において抽出される仮測位結果群のそれぞれについて、ばらつきσ1乃至σ5が算出される。
【0072】
SA13においては、測位基地局設定部64および移動局位置算出部66に対応する測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンが実行される。図10はこの測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンにおける制御作動の一例の概要を説明するフローチャートである。
【0073】
SB1乃至SB3は、測位基地局設定部64に対応するものである。まず、SB1においては、SA12において算出される各基地局12を前記特定の基地局とした際の各仮測位結果群についてのばらつきσが比較され、最も小さい値となるばらつきσが複数あるか否かが判断される。最も小さい値となるばらつきσが複数あるとは、最も小さい値となる複数の等しい値のばらつきσがある場合に限られず、例えば、最も小さい値となるばらつきσから予め設定された所定の範囲内であるばらつきσが存在する場合を含むようにしてもよい。最も小さい値となるばらつきσが複数ある場合には、本ステップの判断が肯定され、SB2が実行される。また、最も小さい値となるばらつきσが1つである場合には、本ステップの判断が否定され、SB3が実行される。
【0074】
SB2は、SB1において最も小さい値となるばらつきσが複数あるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、前記特定の基地局とされた基地局が抽出される。そして、これら特定の基地局とされた基地局のそれぞれについて、それまでに図9および図10のフローチャートが実行されることにより測位基地局の設定が繰り返し行なわれた際に測位基地局から除外された回数が比較される。そして、複数ある最も小さいばらつきσのそれぞれに対応して、特定の基地局とされた基地局のうち、測位基地局から除外された回数の多い基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0075】
一方、SB3は、SB1において最も小さい値となるばらつきσが1つだけあるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、SB1で最も小さい値とされたばらつきσを算出した仮測位結果群について、前記特定の基地局とされた基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0076】
なお、SB2およびSB3においては、測位基地局とならない基地局が選択されたが、測位基地局はSA9で選択された基地局のうち、SB2もしくはSB3において選択された基地局を除いた基地局とされるので、SB2およびSB3は実質的には測位基地局を選択している。
【0077】
移動局位置算出部66に対応するSB4においては、SB2もしくはSB3のいずれかにおいて選択された基地局12を特定の基地局とした際の仮測位結果群に含まれる仮測位結果の平均(xAV,yAV)が移動局10の位置として算出される。
【0078】
SB5においては、SB2もしくはSB3において測位基地局とならない基地局として選択された基地局について、測位基地局から除外された回数が更新される。この回数はSB2における判断において用いられる。
【0079】
前述の実施例によれば、移動局測位システム8において、仮測位部56により、複数の基地局12から該複数よりも小さい所定数の基地局12の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局10の位置が算出され、仮測位結果群抽出部60により、仮測位部56によって基地局組ごとに算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、仮測位結果群抽出部60によって複数の基地局12の少なくとも一部の基地局12のそれぞれを前記特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定され、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、移動局10の位置が算出されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0080】
また、前述の実施例によれば、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の平均(xAV,yAV)を前記移動局10の位置として算出するので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0081】
また、前述の実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群の標準偏差をばらつきσとして算出する。仮測位結果における誤差が大きいほどばらつきが大きくなるので、測位基地局設定部64が、算出されるばらつきσに基づいて前記測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0082】
また、前述の実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果の平均(xAV,yAV)を算出し、移動局位置算出66は、ばらつき算出部62によって算出される前記仮測位結果の平均(xAV,yAV)を用いて前記移動局10の位置を算出する。ばらつき算出部62における仮測位結果群の標準偏差が算出される際に仮測位結果の平均(xAV,yAV)が算出されるので、移動局位置算出部66において仮測位結果の平均(xAV,yAV)を改めて算出する必要がなく、移動局10の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0083】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、その通信品質指標に基づいて移動局10との通信が良好に行なわれると判断される基地局12を選択する基地局予備選択部54を有し、仮測位56は、基地局予備選択部54によって選択された基地局12から基地局組を設定し、設定された基地局組を用いて移動局10の位置を算出するので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12である前記特定の基地局を除いた基地局が前記通信品質指標に基づいて測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局の測位を行なうことができるとともに、基地局予備選択部54によって選択されない基地局を含む基地局組については前記仮測位部56による移動局10の仮測位を行なう必要がないので、移動局10の測位に要する演算量を低減することができ、演算にかかる時間や演算装置による消費電力の低減を図ることができる。
【0084】
また、前述の実施例によれば、測位基地局設定部64は、基地局12のそれぞれについて、それまでに測位基地局設定部64により測位基地局から除外された回数を記憶し、ばらつき算出工程62によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、これら複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局12のうち、前記除外された回数が多い基地局12を測位基地局から除外することにより測位基地局を設定するので、ばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。
【0085】
また、前述の実施例によれば、基地局組は3局の基地局12により構成されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12を除いた基地局12が測位に用いる基地局12である測位基地局として選択され、それら選択された測位基地局のいずれか3局によって構成される基地局組を用いて平面上などを移動する移動局10の測位を行なうことができる。
【0086】
また、前述の実施例によれば、仮測位部56により、複数の基地局12からその複数よりも小さい所定数の基地局12の組み合わせである基地局組が設定され、設定された基地局組を用いて移動局10の位置が算出され、仮測位結果群抽出部60により、前記仮測位部56によって基地局組ごとに算出される基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果が仮測位結果群として抽出され、ばらつき算出部62により、仮測位結果群抽出部60によって複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを特定の基地局とすることにより得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきσが算出され、測位基地局設定部64により、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局12を除いて測位基地局が設定されるので、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である前記特定の基地局を除いた基地局を測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができる。
【0087】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0088】
本実施例は、測位基地局設定部64および移動局位置算出部66の作動に関するものであって、特にばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合に関するものである。
【0089】
前述の実施例においては、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、ばらつきσが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定することとされたが、これについては本実施例においても同様である。一方、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、前述の実施例における作動とは異なる作動を行なう。なお、前記最も小さいばらつきσが複数ある場合とは、最も小さい値である等しい値のばらつきσが複数ある場合に限られず、最も小さい値であるばらつきσの値に対して、仮測位部56における測定誤差などを考慮した所定の範囲内に他のばらつきの値が含まれる場合であってもよいことは、前述の実施例と同様である。
【0090】
測位基地局設定部64および移動局位置算出部66は、ばらつき算出部62によって算出される仮測位結果群のばらつきσのそれぞれのうち、最も小さいばらつきσが複数ある場合には、次のようにして測位基地局を設定し、移動局10の位置を算出する。まず、測位基地局設定部64は、ばらつきσが最も小さいとされる複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定する。そして、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64によって複数種類設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて仮測位部56により算出される仮測位結果の平均を、移動局10の位置として算出する。
【0091】
具体的な例を用いて説明する。ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσ1乃至σ5の大きさが比較され、ばらつきσ1およびσ2が最も小さいばらつきであった場合について説明する。この場合、最も小さい複数のばらつきσ1およびσ2に対応する仮測位結果群はそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群である。そこで測位基地局設定部64は、第1基地局12Aを特定の基地局とした際の仮測位結果群に対応して、第1基地局12Aを除いて、すなわち第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定するとともに、第2基地局12Bを特定の基地局とした際の仮測位結果群に対応して、第2基地局12Bを除いて、すなわち第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを別の種類の測位基地局として設定する。
【0092】
このうち、第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、この測位基地局から構成される基地局組は、基地局組(2、3、4)、基地局組(2、3、5)、基地局組(2、4、5)、基地局組(3、4、5)であり、第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、この測位基地局から構成される基地局組は、基地局組(1、3、4)、基地局組(1、3、5)、基地局組(1、4、5)、基地局組(3、4、5)である。そこで、移動局位置算出部66は、これら複数種類の測位基地局からそれぞれ構成される基地局組のそれぞれを用いて前記仮測位部56によって算出される移動局10の仮測位結果を平均し、その値を移動局10の位置とする。すなわち前述の例においては、基地局組(2、3、4)に対応する測位結果S(2、3、4)、基地局組(2、3、5)に対応する測位結果S(2、3、5)、基地局組(2、4、5)に対応する測位結果S(2、4、5)、基地局組(3、4、5)に対応する測位結果S(3、4、5)、基地局組(1、3、4)に対応する測位結果S(1、3、4)、基地局組(1、3、5)に対応する測位結果S(1、3、5)、基地局組(1、4、5)に対応する測位結果S(1、4、5)の平均を、移動局10の位置として算出する。この平均は、たとえば、各測位結果Sの各座標軸成分ごとの平均によって算出される。なお、基地局組(3、4、5)は、第2基地局12B乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合、および、第1基地局12Aおよび第3基地局12C乃至第5基地局12Eを測位基地局として設定する場合の両方において、測位基地局から構成される基地局組であるが、移動局位置算出部66における測位結果Sの平均の算出においては、この基地局組(3、4、5)に対応する測位結果S(3、4、5)のように複数種類の測位基地局に重複する測位結果Sについて重複して平均を算出する必要はない。
【0093】
図11は、本実施例における測位基地局設定部64および移動局位置算出部66の制御作動の一例の概要を説明するフローチャートであって、測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンとして、前述の実施例における移動局測位システム8の制御作動を説明する図9のフローチャートにおけるSA13で実行されるものである。
【0094】
SC1およびSC2は、測位基地局設定部64に対応するものである。まず、SC1においては、SA12において算出される各基地局12を前記特定の基地局とした際の各仮測位結果群についてのばらつきσが比較され、最も小さい値となるばらつきσが複数あるか否かが判断される。最も小さい値となるばらつきσが複数あるとは、最も小さい値となる複数の等しい値のばらつきσがある場合に限られず、例えば、最も小さい値となるばらつきσから予め設定された所定の範囲内であるばらつきσが存在する場合を含むようにしてもよい。最も小さい値となるばらつきσが複数ある場合には、本ステップの判断が肯定され、SC2が実行される。また、最も小さい値となるばらつきσが1つである場合には、本ステップの判断が否定され、SC4が実行される。
【0095】
SC2は、SC1において最も小さい値となるばらつきσが複数あるとされた場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、複数ある最も小さいばらつきσを算出した仮測位結果群のそれぞれについて、複数種類の測位基地局が設定される。そして、設定される複数種類の測位基地局のそれぞれによって基地局組が構成される。さらに、このように構成された基地局組のそれぞれを用いてSA10において行なわれた仮測位の結果がそれぞれ読み出される。
【0096】
移動局位置算出部66に対応するSC3においては、SC2で読み出された仮測位の結果の平均が算出され、移動局10の位置であるとされる。
【0097】
一方、SC4およびSC5は、SC1において判断が否定された場合、すなわち最も小さい値となるばらつきσが1つだけあるとされた場合に実行されるステップであり、前述の実施例における図10のSB3およびSB4にそれぞれ対応する。SC4においては、SC1で最も小さい値とされたばらつきσを算出した仮測位結果群について、前記特定の基地局とされた基地局が測位基地局とならない基地局として選択される。
【0098】
また、移動局位置算出部66に対応するSC5においては、SC4において選択された基地局12を特定の基地局とした際の仮測位結果群に含まれる仮測位結果の平均(xAV,yAV)が移動局10の位置として算出される。
【0099】
前述の実施例によれば、測位基地局設定部64は、ばらつき算出部62によって算出されるばらつきσが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、それら複数の仮測位結果群のそれぞれについて、複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除外することにより測位基地局をそれぞれ設定し、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64によって複数設定される測位基地局のそれぞれによって構成される基地局組を用いて仮測位部56により算出される仮測位結果の平均を、移動局10の位置として算出するので、ばらつきσが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合においても、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局12である前記特定の基地局を除いた基地局が測位に用いる基地局である測位基地局として選択され、それら測位基地局を用いて移動局10の測位を行なうことができる。
【実施例3】
【0100】
本実施例は、ばらつき算出部62の作動に関するものである。前述の実施例においては、ばらつき算出部62は仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標であるばらつきσを、(2)式で定義される仮測位結果群に含まれる仮測位結果の座標の標準偏差として算出した。本実施例においては、ばらつき算出部62は次のようにばらつきσを定義し、算出する。
【0101】
ばらつき算出部62は、仮測位結果群に含まれる仮測位結果のそれぞれの距離のうち、最大のものをばらつきσとして算出する。このようにすれば、ばらつきσは仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標となる。
【0102】
基地局予備選択部54(図4参照)により選択された基地局が第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局であり、特定の基地局が第5基地局12Eである場合を例として説明する。図12は本実施例におけるばらつき算出部62によるばらつきσの算出を説明する図である。図12には、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合の仮測位結果群、すなわち、第5基地局12Eを含まない基地局組である、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれを用いて算出された移動局10の仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が図示されている。基地局予備選択部54はこれらの仮測位結果のそれぞれの距離、すなわちS(1、2、3)とS(1、2、4)との距離d2、S(1、2、3)とS(1、3、4)との距離d6、S(1、2、3)とS(2、3、4)との距離d1、S(1、2、4)とS(1、3、4)との距離d3、S(1、2、4)とS(2、3、4)との距離d5、S(1、3、4)とS(2、3、4)との距離d4、をそれぞれ算出し、これらのうち最大のものを選択し、その値dmaxをその仮測位結果群のばらつきとする。
【0103】
本実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきσとして算出するので、仮測位結果における誤差が大きいほど仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値であるばらつきσが大きくなるように算出され、測位基地局設定部64は、算出されるばらつきσに基づいて測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができ、それら測位基地局を用いた移動局10の位置の算出を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【実施例4】
【0104】
本実施例は、ばらつき算出部62のさらに別の作動に関するものである。本実施例においては、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきσとして算出する。なお、測位の対象である移動局10が平面上を移動する場合には仮測位結果群を包含するのは円であり、測位の対象である移動局10が3次元空間を移動する場合には球である。前記ばらつきσとして算出する。このようにすれば、ばらつきσは仮測位結果群に含まれる仮測位結果の分布の度合いを表わす指標となる。
【0105】
基地局予備選択部54(図4参照)により選択された基地局が第1基地局12A乃至第5基地局12Eの5つの基地局であり、特定の基地局が第5基地局12Eである場合を例として説明する。図13は本実施例におけるばらつき算出部62によるばらつきσの算出を説明する図である。図13には、第5基地局12Eを特定の基地局とした場合の仮測位結果群、すなわち、第5基地局12Eを含まない基地局組である、基地局組(1、2、3)、基地局組(1、2、4)、基地局組(1、3、4)、基地局組(2、3、4)のそれぞれを用いて算出された移動局10の仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)が図示されている。前述のように、移動局10が平面上を移動する場合には、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円の直径をばらつきσとして算出する。すなわち、ばらつき算出部62は、図13に示すように、仮測位結果S(1、2、3)、S(1、2、4)、S(1、3、4)、S(2、3、4)を全て包含する円の直径Rを算出し、算出された直径Rの値をばらつきσとする。なお、本実施例においては、移動局10が平面上を移動する場合として仮測位結果Sを全て包含する円の直径Rをばらつきσとする例について説明したが、移動局10が3次元空間を移動する場合についても、仮測位結果Sを全て包含する球の直径Rをばらつきσとすることにより同様の効果が得られる。
【0106】
本実施例によれば、ばらつき算出部62は、仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出するので、仮測位結果における誤差が大きいほど仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径であるばらつきσが大きくなるように算出され、測位基地局設定部64は、算出されるばらつきσに基づいて測位基地局を設定することにより、妨害波やマルチパスによる干渉を受ける基地局である特定の基地局を除いた基地局12が測位に用いる基地局である測位基地局として選択することができ、それら測位基地局を用いた移動局10の位置の算出を行なうことができる。すなわち、測位結果における妨害波やマルチパスによる干渉の影響を低減することができる。
【0107】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0108】
例えば、前述の実施例においては移動局10は平面上を移動するものとされたが、かかる態様に限られず、空間(3次元)を移動するものであってもよい。この場合、移動局10の位置を表わす座標(x,y,z)を未知数として前記(1)式に対応する式が導出されればよい。
【0109】
また、前述の実施例においては、測位情報検出部40が測位情報として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波を受信した際の受信強度であったが、これに限られない。具体的には、例えば測位のための電波の移動局10における送信時刻および各基地局12における受信時刻であってもよい。この場合、これら送信時刻および受信時刻から得られる測位のための電波の伝搬時間に電波の速度を乗ずるなどして算出される移動局10と各基地局12との距離に基づいて移動局10の位置の算出が可能である。また、複数の基地局12における電波の受信時刻差に基づいて移動局10の位置の算出を行なうこともできる。これらの場合、好適には移動局10が送信する測位のための電波にはPN(Pseudo Noise;疑似雑音)符号が含められる。PN符号は、相関に鋭いピークを生ずるので、受信側においてマッチドフィルタ等を用いて同期検出を行なうことにより、精度のよい受信時刻の検出が可能となるためである。
【0110】
また、前述の実施例においては、通信状態検出部42が電波の通信状態を表わす指標として検出するのは、測位のための電波の受信強度(RSSI)だったが、これに限られない。例えば、測位のための電波に誤り検出符号が含められる場合には、該誤り検出符号に基づいて算出される受信した電波における誤り率(BER;bit error rate)とされてもよいし、あるいは測位のための電波に拡散符号が含まれる場合には、受信した電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号と同一のレプリカ符号との相関値のピーク値であってもよい。すなわち、電波の送受信に際し、その通信状態により一定の変化をする指標であれば、これらに限られない。また、前述の実施例においては、測位情報検出部40および通信状態検出部42はいずれも移動局10が送信する測位のための電波を検出の対象としたが、これにかぎられず、移動局10は測位情報検出部40による測位情報の検出のための電波と、通信状態検出部42による電波の通信状態を表わす指標の検出のための電波をそれぞれ送信し、各基地局12においては、受信した電波に応じて測位情報検出部40による測位情報の検出と、通信状態検出部42による電波の通信状態を表わす指標の検出とをそれぞれ行なってもよい。
【0111】
前述の実施例においては、基地局予備選択部54、仮測位部56、記憶部58、仮測位結果群抽出部60、ばらつき算出部62、測位基地局設定部64、移動局位置算出部66などはサーバ14の有する機能であるとされたが、これに限られない。例えばこれらをいずれかの基地局12の有する機能とすることも可能である。このようにすれば、サーバ14を設ける必要がない。
【0112】
また、前述の実施例において、位置情報検出部40および通信状態検出部42が検出する受信強度の値は、無線部34において受信する電波の受信強度の瞬時値であってもよいし、予め定められた複数回だけ検出された瞬時値の平均値であってもよい。
【0113】
前述の実施例においては、測位のための電波は移動局10から送信され、各基地局12により受信されるものであったが、このような態様に限られない。すなわち、移動局10が測位情報検出部40、通信状態検出部42を有し、各基地局12の無線部34からそれぞれ送信される測位のための電波を移動局10の無線部24によりそれぞれ受信し、受信した電波に対し測位情報の検出と、電波の通信状態を表わす指標の検出を行なうことも可能である。
【0114】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部54は、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択するものとされたが、このような態様に限られない。例えば、予め設定された基地局の数が選択されるように、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が大きいものから所定数の基地局を選択するようにしてもよい。
【0115】
また、前述の実施例においては、移動局位置算出部66は、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の平均を移動局10の位置として算出したが、このような態様に限られない。例えば、測位基地局設定部64により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて仮測位部56により得られた仮測位結果の中間値を移動局10の位置として算出しても、同様の効果が得られる。
【0116】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部54を含んで構成され、仮測位部56は基地局予備選択部54によって選択された基地局を用いて移動局10の位置を仮測位するものとされたが、このような態様に限られない。すなわち、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部54を含まない構成とすることも可能であり、この場合、仮測位部56は移動局10からの電波を受信した全ての基地局12の受信結果などに基づいて移動局10の位置を仮測位するなどにより、一定の効果が得られる。
【0117】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】移動局から送信される測位のための電波を基地局が受信した際の受信強度の大きさと、移動局と基地局との距離との関係を説明する図である。
【図6】図4における仮測位部による基地局組を用いた移動局の位置の算出を説明する図である。
【図7】基地局組と、その基地局組を用いた仮測位結果、および各基地局を特定の基地局とした場合における仮測位結果群を構成する仮測位結果を説明する図である。
【図8】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出を各基地局を特定の基地局とするごとに説明する図である。
【図9】本発明の一実施例である移動局測位システムの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおいて実行される測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンの制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】図9のフローチャートにおいて実行される測位基地局設定・移動局位置算出ルーチンの制御作動の別の例を説明するフローチャートであって図10に対応する図である。
【図12】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出の別の例を説明する図である。
【図13】図4のばらつき算出部による仮測位結果群のばらつきの算出のさらに別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0119】
8:移動局測位システム
9:測位基地局選択システム
10:移動局
12:基地局
54:基地局予備選択部
56:仮測位部
60:仮測位結果群抽出部
62:ばらつき算出部
64:測位基地局設定部
66:移動局位置算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法であって、
複数の基地局から所定数の基地局の組み合わせである基地局組を複数設定し、該複数の基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、
該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、
前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、
該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、
該測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出工程と、
を有することを特徴とする移動局測位方法。
【請求項2】
前記移動局位置算出工程は、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により得られた仮測位結果の平均を前記移動局の位置として算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位方法。
【請求項3】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群の標準偏差を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項4】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果の平均を算出し、
前記移動局位置算出工程は、該ばらつき算出工程によって算出される前記仮測位結果の平均を用いて前記移動局の位置を算出すること、
を特徴とする請求項3に記載の移動局測位方法。
【請求項5】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項6】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項7】
前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、該通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択工程を有し
前記仮測位工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から前記基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項8】
前記測位基地局設定工程は、前記基地局のそれぞれについて、それまでに前記測位基地局設定工程により測位基地局から除かれた除外回数を記憶し、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局のうち、前記除外回数が多い基地局を除いた前記測位基地局を設定すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項9】
前記測位基地局設定工程は、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局をそれぞれ設定し、
前記移動局位置算出工程は、該測位基地局設定工程によってそれぞれ設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により算出される仮測位結果の平均を、移動局の位置として算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位方法。
【請求項10】
前記基地局組は3局の前記基地局により構成されること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項11】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する際に、該複数の測位基地局として必要な基地局数を上回る複数の基地局から前記複数の測位基地局を選択するための測位基地局選択方法であって、
前記複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、
該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、
前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、
該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、
を有することを特徴とする測位基地局選択方法。
【請求項12】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位部と、
該仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出部と、
前記仮測位結果群抽出部によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出部と、
該ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定部と、
該測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項1】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位方法であって、
複数の基地局から所定数の基地局の組み合わせである基地局組を複数設定し、該複数の基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、
該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、
前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、
該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、
該測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出工程と、
を有することを特徴とする移動局測位方法。
【請求項2】
前記移動局位置算出工程は、前記測位基地局設定工程により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により得られた仮測位結果の平均を前記移動局の位置として算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位方法。
【請求項3】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群の標準偏差を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項4】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果の平均を算出し、
前記移動局位置算出工程は、該ばらつき算出工程によって算出される前記仮測位結果の平均を用いて前記移動局の位置を算出すること、
を特徴とする請求項3に記載の移動局測位方法。
【請求項5】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群のうちの2つの仮測位結果を結ぶ線分のうち最長の距離の値を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項6】
前記ばらつき算出工程は、前記仮測位結果群を包含する円もしくは球の直径を前記ばらつきとして算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位方法。
【請求項7】
前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出し、該通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択工程を有し
前記仮測位工程は、該基地局予備選択工程によって選択された基地局から前記基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項8】
前記測位基地局設定工程は、前記基地局のそれぞれについて、それまでに前記測位基地局設定工程により測位基地局から除かれた除外回数を記憶し、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局のうち、前記除外回数が多い基地局を除いた前記測位基地局を設定すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項9】
前記測位基地局設定工程は、前記ばらつき算出工程によって算出されるばらつきが最も小さいとされる仮測位結果群が複数存在する場合において、該複数の仮測位結果群のそれぞれについて、該複数の仮測位結果群の算出に際し特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局をそれぞれ設定し、
前記移動局位置算出工程は、該測位基地局設定工程によってそれぞれ設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて前記仮測位工程により算出される仮測位結果の平均を、移動局の位置として算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位方法。
【請求項10】
前記基地局組は3局の前記基地局により構成されること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項11】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する際に、該複数の測位基地局として必要な基地局数を上回る複数の基地局から前記複数の測位基地局を選択するための測位基地局選択方法であって、
前記複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位工程と、
該仮測位工程によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出工程と、
前記仮測位結果群抽出工程によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出工程と、
該ばらつき算出工程によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定工程と、
を有することを特徴とする測位基地局選択方法。
【請求項12】
移動局と複数の測位基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
複数の基地局から該複数よりも小さい所定数の基地局の組み合わせである基地局組を設定し、該基地局組を用いて移動局の位置を算出する仮測位部と、
該仮測位部によって該基地局組ごとに算出される前記基地局組のそれぞれに対応する仮測位結果のうち、特定の基地局を前記基地局組に含まない複数の基地局組に対応する仮測位結果を仮測位結果群として抽出する仮測位結果群抽出部と、
前記仮測位結果群抽出部によって、前記複数の基地局の少なくとも一部の基地局のそれぞれを前記特定の基地局とすることによって得られる仮測位結果群のそれぞれについてばらつきを算出するばらつき算出部と、
該ばらつき算出部によって算出される仮測位結果群のばらつきのそれぞれのうち、該ばらつきが最も小さい仮測位結果群の算出に際し前記特定の基地局とされた基地局を除いた前記測位基地局を設定する測位基地局設定部と、
該測位基地局設定部により設定される測位基地局により構成される基地局組を用いて得られた測位結果に基づいて、前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−122125(P2010−122125A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297401(P2008−297401)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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