説明

移動物体検出装置及び方法、並びにプログラム

【課題】夜間など暗い場所でも充分な検出精度を得ることができるようにする。
【解決手段】 画像入力処理部11は、解析画像のデータを入力し、解析画像内で指定領域を設定する処理を実行する。近距離検出処理部12は、設定された指定領域を移動する、監視カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像を検出し、遠距離検出処理部13は、設定された指定領域を移動する、監視カメラから第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する。また、遠距離検出処理部13は、第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて移動物体の有無を判定する相関判定とを選択的に切り替えて使用する。本発明は、監視システムに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体検出装置及び方法、並びにプログラムに関し、特に、夜間など暗い場所でも充分な検出精度を得られるようにする、移動物体検出装置及び方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、監視カメラにより所定の空間を監視する監視システムが存在する。このような監視システムは、監視カメラの撮像画像を解析画像として、解析画像のデータを解析することによって、当該監視画像内の指定された領域を移動した移動物体の像を検出する。このような監視システムには、従来、動きベクトルを用いて移動物体の像を検出する手法(例えば特許文献1参照)や、撮像時点と過去の相関を用いて移動物体を検出する手法(例えば、特許文献2,3参照)が多くの場合適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−260049号公報
【特許文献2】特許第3506934号公報
【特許文献3】特開2007−251721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視システムの性質上、検出漏れや誤検出が発生しないようにするため、たとえ夜間など暗い場所でも一定以上の検出精度が要求される。特許文献1乃至3を含め従来の移動物体の検出手法では、当該要求に十分に応えられていない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、夜間など暗い場所でも充分な検出精度を得ることを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の移動物体検出装置は、カメラにより撮像された画像である解析画像のデータを入力し、前記解析画像内で指定領域を設定する処理を実行する画像入力処理手段と、前記画像入力処理手段により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像を検出する第1の検出処理手段と、前記画像入力処理手段により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラから前記第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する第2の検出処理手段とを備え、前記第2の検出処理手段は、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて前記移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて前記移動物体の有無を判定する相関判定とを選択的に切り替えて使用する。
【0007】
前記第2の検出処理手段は、所定の指標に基づいて、前記動きベクトル判定と前記相関判定とのうち何れか一方を、処理手法として決定する処理手法決定手段と、前記処理手法決定手段により前記処理手法として前記動きベクトル判定が決定された場合には、前記動きベクトル判定に従って、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する動きベクトル判定手段と、前記処理手法決定手段により前記処理手法として前記相関判定が決定された場合に、前記相関判定に従って、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する相関判定手段とを有することができる。
【0008】
前記第2の検出処理手段は、前記処理手法決定手段が用いる前記指標として、前記指定領域の輝度が一定の基準以下であるかを判定する輝度判定手段をさらに有し、前記処理手法決定手段は、前記指定領域の輝度が一定の基準を超えていると前記輝度判定手段により判定された場合、前記動きベクトル判定を前記処理手法として決定し、前記指定領域の輝度が一定の基準以下であると前記輝度判定手段により判定された場合、前記相関判定を前記処理手法として決定することができる。
【0009】
前記処理手法決定手段が用いる前記指標を、外部から入力する外部入力手段をさらに備え、前記処理手法決定手段は、前記外部入力手段に入力された前記指標に基づいて、前記動きベクトル判定と前記相関判定とのうち何れか一方を、前記処理手法として決定することができる。
【0010】
前記第2の検出処理手段によって探索される前記移動物体の像の距離の範囲が複数段階設定されており、前記第2の検出処理手段は、前記複数段階の距離の範囲毎に相互に独立して、前記処理手法として、前記動きベクトル判定と前記相関判定とを選択的に切り替えて使用することができる。
【0011】
本発明の一側面の移動物体検出方法及びプログラムは、上述した本発明の一側面の移動物体検出装置に対応する方法及びプログラムである。
【0012】
本発明の一側面の移動物体検出装置及び方法並びにプログラムにおいては、カメラにより撮像された画像である解析画像のデータが入力され、前記解析画像内で指定領域を設定する処理が実行される。設定された前記指定領域を移動する、前記カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像が検出され、設定された前記指定領域を移動する、前記カメラから前記第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像が検出される。前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて前記移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて前記移動物体の有無を判定する相関判定とが選択的に切り替えて使用される。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、夜間など暗い場所でも充分な検出精度を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】画像解析処理の対象となる解析画像の一例を示す図である。
【図3】探索範囲の分担の一例を示す図である。
【図4】動きベクトルの探索範囲の一例を示す図である。
【図5】検出領域の一例を示す図である。
【図6】画像解析処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】近距離検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【図8】遠距離検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【図9】本実施形態の画像解析装置を構成要素に含む監視システムの機能的構成例を示すブロック図である。
【図10】本実施形態の画像解析装置を構成要素に含むシステムの機能的構成例を示すブロック図である。
【図11】本実施形態の画像解析装置を構成要素に含む他のシステムの機能的構成例を示すブロック図である。
【図12】4つに区分された各探索範囲での処理手法の一例を示す図である。
【図13】画像解析装置の他の機能的構成を示すブロック図である。
【図14】外部入力部を用いた処理手法の切り替えの具体例を説明する図である。
【図15】本発明が適用される移動物体検出装置のハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が適用される移動物体検出装置の実施形態として、2つの実施形態(以下、それぞれ第1実施形態および第2実施形態と称する)について説明する。よって、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態(解析画像の輝度に基づいて処理手法が切り替えられる例)
2.第2実施形態(外部からの切替指示により処理手法が切り替えられる例)
【0016】
<1.第1実施形態>
[画像解析装置の機能的構成]
図1は、本発明が適用される移動物体検出装置の一実施の形態としての画像解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0017】
図1の画像解析装置1は、監視システムの監視カメラの撮像画像を解析画像として、解析画像のデータを解析することにより、当該解析画像内の指定された領域(以下、指定領域と称する)内を移動物体の像が移動したかを検出する。このような一連の処理を、以下、画像解析処理と称する。
【0018】
画像解析装置1は、このような画像解析処理を実行すべく、画像入力処理部11、近距離検出処理部12、遠距離検出処理部13、結果統合部14、及び結果出力部15から構成されている。
【0019】
画像入力処理部11は、外部から解析画像のデータを入力し、当該解析画像のうち、ユーザ等により監視対象として指定された領域を、指定領域FSとして設定する。
【0020】
[解析画像の一例]
図2は、画像解析処理の対象となる解析画像の一例を示す図である。図2に示される解析画像41においては、中央より右側に指定領域FSが設定されている。
【0021】
なお、画像解析装置1が移動物体の像を検出するために、監視対象としては動画像が採用される。動画像は、フレーム、フィールド等を単位画像として、複数の単位画像が所定の順番で配置されて構成される。このような単位画像のデータが、本実施形態では、解析画像のデータとして画像入力処理部11に入力される。即ち、本実施形態では、動画像を構成する各単位画像の各々が入力される毎に、画像解析処理がその都度実行され、移動物体の像の有無が検出される。
【0022】
近距離検出処理部12及び遠距離検出処理部13は、解析画像のデータに基づいて、当該解析画像内の指定領域FSを移動物体の像が移動したかを検出する。
【0023】
[探索範囲の分担の一例]
図3は、近距離検出処理部12及び遠距離検出処理部13の探索範囲の分担の一例を示している。
【0024】
図3に示されるように、監視カメラ61から一定距離以内の近距離(第1の範囲内の距離)の探索範囲D1において、図示せぬ移動物体が監視カメラ61の前を移動して、その移動物体の像が指定領域FS内を移動した場合、当該移動物体の像は第1の検出処理手段としての近距離検出処理部12によって検出される。
【0025】
これに対して、監視カメラ61から一定距離よりも離れた遠距離(第1の範囲の距離より遠い第2の範囲内の距離)の探索範囲D2において、図示せぬ移動物体が監視カメラ61の前を移動して、その移動物体の像が指定領域FS(より正確には後述する検知領域FFの場合もある)内を移動した場合、当該移動物体の像は第2の検出処理手段としての遠距離検出処理部13によって検出される。
【0026】
近距離検出処理部12における手法としては、撮像時点と過去の画像の相関を用いて移動物体の像の有無を判定することによって、当該移動物体の像を検出する手法が好適である。なお、以下、このような手法を、相関判定と呼ぶ。一方、日中等の一定以上の光量を確保できる場合には、遠距離検出処理部13における手法としては、動きベクトルを用いて移動物体の像の有無を判定することによって、当該移動物体の像を検出する手法が好適である。なお、以下、このような手法を、動きベクトル判定と呼ぶ。以下、好適な理由について説明する。
【0027】
つまり、検出すべき移動物体が監視カメラ61の近傍に存在する場合には、その移動物体の像の指定領域FS内のサイズは大きくなり、その移動速度が速いと画像内での単位時間当たりの移動距離も長くなり、動きベクトルを求めることが困難である。従って、このような場合に動きベクトル判定を採用すると、検出漏れが発生するおそれがある。これに対して、相関判定では、現在と過去の指定領域FS内の相関を取るため、このような検出漏れのおそれは少ない。このため、近距離検出処理部12における手法としては、相関判定が好適であり、本実施形態でも相関判定が採用されている。
【0028】
即ち、近距離検出処理部12には、相関判定に従って移動物体の像を検出する相関判定部21が設けられている。
【0029】
相関判定部21は、画像入力処理部11に現時点で入力された解析画像(以下、現在画像と称する)のデータと、画像入力処理部11に過去の時点に入力された解析画像(以下、過去画像と称する)のデータとを用いて、次の式(1)の値Rznccを演算する。
【0030】
【数1】

【0031】
式(1)において、値Rznccは、正規化相互相関の係数を示している。値Oは、現在画像の検出領域内の各画素値を示しており、相関判定部21の処理では、現在画像の指定領域FS内の各画素値を示している。値Oavgは、現在画像の検出領域内の各画素値の平均値を示しており、相関判定部21の処理では、現在画像の指定領域FS内の各画素値の平均値を示している。値Pは、過去画像の検出領域内の各画素値を示しており、相関判定部21の処理では、過去画像の指定領域FS内の各画素値を示している。値Pavgは、過去画像の検出領域内の各画素値の平均値を示しており、相関判定部21の処理では、過去画像の指定領域FS内の各画素値の平均値を示している。
【0032】
正規化相互相関の係数Rznccは、移動物体が検出領域内に含まれたときには小さい値となり、移動物体が検出領域内に含まれていないときには大きい値となる。したがって、相関判定部21は、例えば正規化相互相関の係数Rznccが閾値よりも小さい値となった場合、指定領域FS内に移動物体の像が存在し、大きい値となった場合、存在しないと判定することによって、当該移動物体の像を検出する。
【0033】
しかしながら、このような相関判定は、検出すべき移動物体が監視カメラ61から遠方に存在する場合には、不適当である。なぜならば、このような場合、その移動物体の像の指定領域FS内のサイズは小さくなるからである。即ち、このような場合の指定領域FS内の移動物体のサイズは、例えば監視カメラ61の近傍に存在する木々の揺れ等の像のサイズと同程度になる。従って、相関判定では、指定領域FSに含まれる移動物体の像が、検出すべき移動物体の像であるのか、それとも、木々の揺れ等の像により引き起こされる外乱によるものなのかを判断することが困難になる。従って、このような場合に相関判定を採用すると、誤検出が発生するおそれがある。
【0034】
これに対して、動きベクトル判定では、指定領域FSに含まれる移動物体の像の動きベクトルが求められるため、即ち、指定領域FSに含まれる移動物体の像の移動速度や移動方向が容易にわかるため、このような誤検出のおそれは少ない。このため、遠距離検出処理部13における手法としては、原則、動きベクトル判定が好適であり、本実施形態でも動きベクトル判定が採用されている。
【0035】
ここで、「原則、動きベクトル判定が好適」という記載は、日中等の一定以上の光量を確保できることを前提として、この前提では好適であるという意味である。即ち、夜間等で十分な光量が得られない状態で監視カメラ61が撮像すると、その結果得られる撮像画像の輝度は小さいものとなる。このような輝度の小さい撮像画像のデータを用いた場合、移動物体の像の動きベクトルの算出精度は悪化し、その結果、移動物体の像の検出精度も低下してしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、遠距離検出処理部13における手法としては、解析画像の輝度が基準以上の場合には、動きベクトル判定が採用される一方で、解析画像の輝度が基準未満の場合には、相関判定が採用される。
【0037】
なお、解析画像の輝度が基準未満の場合、即ち、夜間等で十分な光量が得られない場合には、木々の揺れ等の外乱となる像は、解析画像に映り込まないか、映り込んだとしても検出すべき移動物体の像よりも遥かに輝度が小さくなる。従って、解析画像の輝度が基準未満の場合には、木々の揺れ等の像により引き起こされる外乱を移動物体の像であると誤検出してしまうおそれはほぼ無くなる。従って、解析画像の輝度が基準未満の場合であれば、遠距離検出処理部13に対して相関判定を採用しても、誤検出のおそれは少ない。
【0038】
このように、遠距離検出処理部13は、動きベクトル判定と相関判定のうち、処理に用いる手法(以下、処理手法と称する)を解析画像の輝度に基づいて決定し、決定した処理手法に従って移動物体の像を検出する。
【0039】
このため、図1に示されるように、遠距離検出処理部13は、輝度判定部31、処理手法決定部32、動きベクトル判定部33、及び相関判定部34から構成されている。
【0040】
輝度判定部31は、画像入力処理部11から出力された解析画像のデータに基づいて、当該解析画像の指定領域FSの輝度が一定の基準以下であるかを判定する。具体的には例えば、輝度判定部31は、指定領域FS内の各画素のうち、輝度値が基準値以下の画素の数をカウントする。輝度判定部31は、カウントした画素の数が閾値より大きい場合に、指定領域FSの輝度が一定の基準以下であると判定する。これに対して、輝度判定部31は、カウントした画素の数が閾値以下の場合に、指定領域FSの輝度が一定の基準を超えていると判定する。
【0041】
処理手法決定部32は、輝度判定部31の判定結果に基づいて、動きベクトル判定と相関判定とのうち何れか一方を、処理手法として決定する。即ち、指定領域FSの輝度が一定の基準を超えていると輝度判定部31により判定された場合、処理手法決定部32は、動きベクトル判定を処理手法として決定し、画像入力処理部11から出力された解析画像のデータを動きベクトル判定部33に供給する。これに対して、指定領域FSの輝度が一定の基準以下であると輝度判定部31により判定された場合、処理手法決定部32は、相関判定を処理手法として決定し、画像入力処理部11から出力された解析画像のデータを相関判定部34に供給する。
【0042】
動きベクトル判定部33は、動きベクトル判定に従って移動物体の像を検出する。例えば、動きベクトル判定部33は、現在画像の指定領域FS内の各画素を注目画素に順次設定し、現在画像の注目画素の周囲のブロック(以下、注目ブロックと称する)を設定する。次に、動きベクトル判定部33は、注目ブロックに対応する過去画像内のブロック(以下、対応ブロックと称する)を探索する。そして、動きベクトル判定部33は、現在画像と過去画像とを重ね合せた場合(同一座標系とした場合)における、対応ブロックから注目ブロックまでのベクトルを、注目画素の動きベクトルとして検出する。
【0043】
[動きベクトルの探索範囲の一例]
図4は、対応ブロックの探索範囲、即ち動きベクトルの探索範囲の一例を示している。図4に示されるように、探索範囲FVは、解析画像41のうち、指定領域FSの周囲であって、指定領域FSよりも大きな範囲が設定される。なお、図4の探索範囲FVは例示であり、解析画像41内の任意の範囲を別途探索範囲として採用してもよい。
【0044】
以上説明した動きベクトルの検出手法は、一般的にはブロックマッチング法と称されている。当然ながらブロックマッチング法は例示であり、その他の任意の手法、例えば勾配法を採用することもできる。
【0045】
相関判定部34は、相関判定に従って移動物体の像を検出する。即ち、相関判定部34は、近距離検出処理部12の相関判定部21と基本的に同様の処理を実行する。ただし、上述した式(1)の正規化相互相関の係数Rznccを求めるために用いられる検出領域が、遠距離検出処理部13の相関判定部34と、近距離検出処理部12の相関判定部21とでは異なる。
【0046】
[正規化相互相関の係数を求めるために用いられる検出領域の一例]
図5は、正規化相互相関の係数Rznccを求めるために用いられる検出領域の一例を示している。近距離検出処理部12の相関判定部21では、上述したように、指定領域FSがそのまま検出領域として用いられる。これに対して、遠距離検出処理部13の相関判定部34では、指定領域FSよりも小さいサイズの領域FFが検出領域として用いられる。このように検出領域のサイズを小さくすることで、検出すべき移動物体の像の占める割合が大きくなるため、その分だけ、より遠距離に存在する移動物体の像の検出が可能になる。なお、このように検出領域のサイズを小さくしても、遠距離検出処理部13の相関判定部34は輝度が一定の基準以下の場合に動作するため、木々の揺れ等の像が外乱になることに起因して誤検出が発生するおそれはほぼ無くなる。
【0047】
以上、動きベクトル判定と相関判定とを選択可能な遠距離検出処理部13の機能的構成について説明した。図1に示されるように、このような遠距離検出処理部13の検出結果は、近距離検出処理部12の検出結果と共に、結果統合部14に供給される。
【0048】
結果統合部14は、近距離検出処理部12の検出結果と、遠距離検出処理部13の検出結果とを統合して、その統合結果を結果出力部15に供給する。結果出力部15は、統合結果を、画像解析装置1からの最終的な検出結果として出力する。
【0049】
例えば、近距離検出処理部12の検出結果と、遠距離検出処理部13の検出結果のうち少なくとも一方が、移動物体を検出したという結果の場合、「移動物体あり」という統合結果が、結果統合部14によって得られ、結果出力部15から出力される。
【0050】
これに対して、例えば、近距離検出処理部12の検出結果と、遠距離検出処理部13の検出結果との何れもが、移動物体を検出していないという結果の場合、「移動物体なし」という統合結果が、結果統合部14によって得られ、結果出力部15から出力される。
【0051】
[画像解析処理]
次に、図6を参照して、このような機能的構成を有する画像解析装置1の処理として、画像解析処理について説明する。
【0052】
図6は、画像解析処理の一例を説明するフローチャートである。
【0053】
上述したように、画像解析装置1が移動物体の像を検出するために、監視対象としては動画像が採用される。このような動画像は、例えば、図3の監視カメラ61等により所定時間間隔毎に撮像された複数の単位画像から構成される。このため、このような動画像を構成する複数の単位画像の各々のデータが、図3の監視カメラ61等から出力される毎に、画像解析処理はその都度実行される。
【0054】
ステップS1において、図1の画像解析装置1の画像入力処理部11は、監視カメラ61等から出力された単位画像を解析画像として、解析画像のデータを入力して、当該解析画像内に指定領域を設定する。
【0055】
ステップS2及びステップS3において、近距離検出処理部12及び遠距離検出処理部13は、近距離検出処理と遠距離検出処理とを並行して実行する。
【0056】
ここで、近距離検出処理とは、近距離検出処理部12が移動物体の像を検出するまでの一連の処理をいう。近距離検出処理の詳細については、図7のフローチャートを参照して後述する。一方、遠距離検出処理とは、遠距離検出処理部13が移動物体の像を検出するまでの一連の処理をいう。遠距離検出処理の詳細については、図8のフローチャートを参照して後述する。
【0057】
ステップS4において、結果統合部14は、近距離検出処理と遠距離検出処理の結果を統合する。すなわち、近距離検出処理及び遠距離検出処理の両者の検出結果が「移動物体なし」であった場合、統合結果は「移動物体なし」となる。これに対して、近距離検出処理と遠距離検出処理のうちの少なくとも一方の検出結果が「移動物体あり」であった場合、統合結果は「移動物体あり」となる。
【0058】
ステップS5において、結果出力部15は、ステップS4の統合結果を、画像解析装置1の最終的な検出結果として出力する。これにより、画像解析処理は終了する。
【0059】
[近距離検出処理]
次に、図7を参照して、このような画像解析処理のステップS2の処理の一部として、図1の画像解析装置1の近距離検出処理部12により実行される近距離検出処理について説明する。
【0060】
図7は、近距離検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【0061】
ステップS21において、近距離検出処理部12の相関判定部21は、図6のステップS1の処理で入力された解析画像のデータに対して、相関判定を実行する。なお、「相関判定を実行する」とは、相関判定に従って移動物体の像を検出することを意味する。
【0062】
ステップS22において、相関判定部21は、ステップS21の相関判定の処理の結果を出力する。
【0063】
ステップS21の相関判定の処理で移動物体の像が検出されなかった場合、ステップS22において相関判定部21は、「移動物体なし」の結果を出力し、近距離検出処理は終了する。この場合、後述する図8の遠距離検出処理の結果も「移動物体なし」の場合、図6の画像解析処理の最終的な結果としても、ステップS5の処理で「移動物体なし」が出力される。一方、後述する図8の遠距離検出処理により「移動物体あり」の結果が出力されたときには、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の検出結果が出力される。
【0064】
これに対して、ステップS21の相関判定の処理で移動物体の像が検出された場合、ステップS22において相関判定部21は、「移動物体あり」の検出結果を出力し、近距離検出処理は終了する。この場合、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の結果が出力される。
【0065】
ステップS22において、ステップS21の処理の結果が出力されると、処理は図6のステップS4に進む。
【0066】
以上、図7を参照して、図6の画像解析処理のステップS2の処理として、図1の画像解析装置1の近距離検出処理部12により実行される近距離検出処理について説明した。次に、図8を参照して、画像解析処理のステップS3の処理として、図1の画像解析装置1の遠距離検出処理部13により実行される近距離検出処理について説明する。
【0067】
[遠距離検出処理]
図8は、遠距離検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【0068】
ステップS41において、遠距離検出処理部13の輝度判定部31は、図6のステップS1の処理で入力された解析画像のデータに基づいて、当該解析画像の輝度が一定の基準以下であるかを判定する。
【0069】
解析画像の輝度が一定の基準を超えていると輝度判定部31により判定された場合、処理手法決定部32は、動きベクトル判定を処理手法として決定し、ステップS1の処理で入力された解析画像のデータを動きベクトル判定部33に供給する。このような場合、ステップS41の処理でNOであると判定されて、処理はステップS42に進む。
【0070】
ステップS42において、動きベクトル判定部33は、解析画像のデータに対して、動きベクトル判定を実行する。なお、「動きベクトル判定を実行する」とは、動きベクトル判定に従って移動物体の像を検出することを意味する。
【0071】
ステップS44において、動きベクトル判定部33は、ステップS42の動きベクトル判定の処理の結果を出力する。
【0072】
ステップS42の動きベクトル判定の処理で移動物体の像が検出されなかった場合、ステップS44において動きベクトル判定部33は、「移動物体なし」の結果を出力し、遠距離検出処理は終了する。この場合、上述した図7の近距離検出処理の結果も「移動物体なし」の場合、図6の画像解析処理の最終的な結果としても、ステップS5の処理で「移動物体なし」が出力される。一方、上述した図7の近距離検出処理から「移動物体あり」の結果が出力されたときには、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の検出結果が出力される。
【0073】
これに対して、ステップS42の動きベクトル判定の処理で移動物体の像が検出された場合、ステップS44において動きベクトル判定部33は、「移動物体あり」の検出結果を出力し、遠距離検出処理は終了する。この場合、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の検出結果が出力される。
【0074】
以上、解析画像の輝度が一定の基準を超えて、ステップS41の処理でNOであると判定された以降の処理、即ち動きベクトル判定が実行される場合の処理について説明した。
【0075】
これに対して、解析画像の輝度が一定の基準以下であると輝度判定部31により判定された場合、処理手法決定部32は、相関判定を処理手法として決定し、ステップS1の処理で入力された解析画像のデータを相関判定部34に供給する。このような場合、ステップS41の処理YESであると判定されて、処理はステップS43に進む。
【0076】
ステップS43において、相関判定部34は、解析画像のデータに対して、相関判定を実行する。なお、「相関判定を実行する」とは、相関判定に従って移動物体の像を検出することを意味する。
【0077】
ステップS44において、相関判定部34は、ステップS43の相関判定の処理の結果を出力する。
【0078】
ステップS43の相関判定の処理で移動物体の像が検出されなかった場合、ステップS44において相関判定部21は、「移動物体なし」の結果を出力し、遠距離検出処理は終了する。この場合、上述した図7の近距離検出処理の結果も「移動物体なし」の場合、図6の画像解析処理の最終的な結果としても、ステップS5の処理で「移動物体なし」が出力される。一方、上述した図7の近距離検出処理から「移動物体あり」の結果が出力されたときには、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の検出結果が出力される。
【0079】
これに対して、ステップS43の相関判定の処理で移動物体の像が検出された場合、ステップS44において相関判定部21は、「移動物体あり」の検出結果を出力し、遠距離検出処理は終了する。この場合、図6の画像解析処理の最終的な結果として、ステップS5の処理で「移動物体あり」の検出結果が出力される。
【0080】
ステップS44において、ステップS42またはステップS43の処理の結果が出力されると、処理は図6のステップS4に進む。
【0081】
このように、画像解析装置1は、解析画像の指定領域FS内を移動する移動物体の像として、近距離の移動物体の像と、遠距離の移動物体の像とを区別して検出することができる。具体的には、画像解析装置1は、近距離の移動物体の像を検出する処理は、常に相関判定に従って行う。一方、解析画像の輝度が一定の基準を超えている場合、動きベクトル判定に従って遠距離の移動物体の像が検出される。これにより、日中等の明るい環境の場合には、木々の揺れの像等の外乱に対して頑健となり、安定した移動物体の像の検出が可能になる。
【0082】
さらに、画像解析装置1は、解析画像の輝度が一定の基準以下になると、遠距離の移動物体の像を検出するために用いる処理手法を、動きベクトル判定から相関判定に切り替える。輝度変化に対しての頑健性は、相関判定の方が動きベクトル判定よりも優れている。一方で、相関判定が苦手とする木々の揺れ等の外乱は、夜間等の暗い環境のため解析画像の輝度が一定の基準以下の場合には、そもそも解析画像に映り込まないか、映り込んでも輝度が非常に小さくなっているため、誤検出のおそれも少ない。従って、夜間等の暗い環境のため解析画像の輝度が一定の基準以下となっても、安定した移動物体の像の検出を維持することが可能になる。
【0083】
このような画像解析装置1は、上述した監視システムに適用できることは勿論のこと、その他各種各様の分野に適用することが可能である。以下、図9乃至図11を参照して、画像解析装置1の適用の例を幾つか説明する。
【0084】
[画像解析装置1の適用の例1]
図9は、本実施形態の画像解析装置を構成要素に含む監視システムの機能的構成例を示すブロック図である。
【0085】
図9の監視システム81は、撮像部91、撮像信号処理部92、撮像データ処理部93、上述した本実施形態の画像解析装置1からなる画像解析部94、及び伝送部95から構成されている。
【0086】
撮像部91は、主にCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子やレンズからなり、具体的には例えば図3の監視カメラ61からなり、移動物体等を撮像し、その結果得られる撮像信号を出力する。
【0087】
撮像信号処理部92は、撮像信号に対して、各種画像処理、例えば、適切な諧調に補正する処理、ノイズ除去処理、カラー化処理等を施す。その結果、撮像信号処理部92からは、デジタルの撮像信号、即ち、撮像画像のデータが出力されて、撮像データ処理部93と画像解析部94とに供給される。
【0088】
撮像データ処理部93は、撮像画像のデータをネットワークに流すための形態に変換する処理、例えば、撮像画像のデータの圧縮符号化処理を施す。
【0089】
画像解析部94は、画像解析装置1の説明として上述したように、撮像信号処理部92から出力される撮像画像のデータを解析画像のデータとして解析することによって、当該解析画像の指定領域FS内を移動する移動物体の像を検出する。
【0090】
伝送部95は、撮像データ処理部93により符号化された画像データ及び画像解析部94の解析結果を多重化してネットワークに伝送する。
【0091】
[画像解析装置1の適用の例2]
図10は、本実施形態の画像解析装置を構成要素に含むシステムであって、監視カメラ以外の外部からの画像信号をネットワーク上のストリームに変更するシステムの機能的構成例を示すブロック図である。
【0092】
図10のシステム111は、画像入力部121、画像信号処理部122、画像データ処理部123、上述した本実施形態の画像解析装置1からなる画像解析部124、及び伝送部125から構成されている。
【0093】
画像入力部121は、監視カメラ以外の外部からの画像信号、例えばアナログカメラからの画像信号を入力する。
【0094】
画像信号処理部122は、撮像信号処理部92と同様に、画像信号に対して、各種画像処理、例えば、適切な諧調に補正する処理、ノイズ除去処理、カラー化処理等を施す。その結果、画像信号処理部122からは、デジタルの画像信号、即ち、画像のデータが出力されて、画像データ処理部123と画像解析部124とに供給される。
【0095】
画像データ処理部123は、撮像データ処理部93と同様に、画像のデータをネットワークに流すための形態に変換する処理、例えば、画像のデータの圧縮符号化処理を施す。
【0096】
画像解析部124は、画像解析装置1の説明として上述したように、画像信号処理部122から出力される画像のデータを解析画像のデータとして解析することによって、当該解析画像の指定領域FS内を移動する移動物体の像を検出する。
【0097】
伝送部125は、伝送部95と同様に、画像データ処理部123により符号化された画像データ及び画像解析部124の解析結果を多重化してネットワークに伝送する。
【0098】
[画像解析装置1の適用の例3]
図11は、本実施形態の画像解析装置を構成要素に含む他のシステムの機能的構成例を示すブロック図である。
【0099】
図11のシステム141は、アナログ信号とデータ(デジタルの信号)との形態の違いによらず、処理した信号を保存するレコーダや、処理した信号に基づいてアラームを出力する専用装置やパーソナルコンピュータを含むシステムである。
【0100】
図11のシステム141は、画像入力部151、画像信号処理部152、上述した本実施形態の画像解析装置1からなる画像解析部153、及び伝送部154から構成されている。
【0101】
画像入力部151は、画像入力部121と同様に、監視カメラ以外の外部からの画像信号を入力する。
【0102】
画像信号処理部152は、撮像信号処理部92や画像信号処理部122と同様に、画像信号に対して、各種画像処理、例えば、適切な諧調に補正する処理、ノイズ除去処理、カラー化処理等を施す。その結果、画像信号処理部152からは、デジタルの画像信号、即ち、画像のデータが出力されて、画像解析部153に供給される。
【0103】
画像解析部153は、画像解析装置1の説明として上述したように、画像信号処理部152から出力される画像のデータを解析画像のデータとして解析することによって、当該解析画像の指定領域FS内を移動する移動物体の像を検出する。
【0104】
伝送部154は、画像解析部153の解析結果をネットワークに伝送する。
【0105】
このような各種各様の分野に適用可能な本発明の実施形態は、上述した実施形態に特に限定されず、様々な実施の形態を取ることが可能である。
【0106】
例えば、上述した実施形態では、移動物体の像の探索範囲は、図3に示されるように、近距離の探索範囲D1と遠距離の探索範囲D2との2種類であった。しかしながら、移動物体の像の探索範囲の種類数は、特に2種類に限定されず、任意でよい。
【0107】
[各探索範囲での処理手法の一例]
図12は、移動物体の像の探索範囲として4つに区分された場合の、各探索範囲での処理手法の一例を示している。
【0108】
図12に示されるように、監視カメラ61から一定距離以内の近距離の探索範囲D1は図3と同様である。一方で、図3の遠距離の探索範囲D2と同一の範囲が、監視カメラ61から近い方の順に、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23といった3つの探索範囲に区分されている。第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23の各々では、相互に独立して移動物体の像の検出が行われる。この場合、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23の各々では、解析画像の輝度が一定の基準以下であるかが相互に独立して判定される。そして、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23のうち、輝度が一定の基準を超えている探索範囲の各々では、処理手法として動きベクトル判定が採用される。これに対して、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23のうち、輝度が一定の基準以下の探索範囲の各々では、処理手法として相関判定が採用される。
【0109】
また、上述したように、近距離の探索範囲D1では、指定領域FSがそのまま検出領域として用いられる。これに対して、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23のうち、輝度が一定の基準以下の探索範囲で、処理手法として相関判定が採用された場合、指定領域FSよりも小さいサイズの領域FFが検出領域として用いられる。このとき、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23で検出領域として用いられる領域FFは、それぞれ領域FF1、領域FF2、及び領域FF3とされ、検出領域のサイズは、この順に次第に小さくなる。このように、監視カメラ61からより遠い範囲ほど、検出領域のサイズを小さくすることで、より遠距離に存在する移動物体の像の検出が可能になる。
【0110】
換言すると、図示はしないが、図1の遠距離検出処理部13と基本的に同様の機能と構成を有する機能ブロックが、第2探索範囲D21、第3探索範囲D22、及び第4探索範囲D23の各々の移動物体の検出用として相互に独立してそれぞれ設けられる。
【0111】
なお、この場合、別の移動物体の像の検出手法を組み合わせて採用してもよい。例えば、探索範囲に応じて解像度を変える手法を採用することができる。当該手法を採用した場合、例えば第2探索範囲D21では低解像度を用いるのに対して、第3探索範囲D22及び第4探索範囲D23では高解像度を用いるといったことが可能になる。また例えば、探索範囲に応じてフレームレートを変える手法を採用することができる。当該手法を採用した場合、例えば第2探索範囲D21及び第3探索範囲D22では高フレームレートを用いるのに対して、第4探索範囲D23では低フレームレートを用いるといったことが可能になる。
【0112】
このように、別の移動物体の像の検出手法を適宜組み合わせることで、木々などの外乱に対してより一段と頑健になると共に、屋内だけでなく屋外においても移動物体の像の検出が可能になる。
【0113】
また例えば、上述した実施形態では、遠距離に存在する移動物体の像を検出する場合に用いる処理手法の切り替えは、解析画像の輝度に基づいて行われた。しかしながら、遠距離に存在する移動物体の像を検出する場合に用いる処理手法の切り替えの指標は、解析画像の輝度に特に限定されず、任意の指標を採用することができる。
【0114】
<2.第2実施形態>
[画像解析装置の他の機能的構成]
図13は、本発明が適用される移動物体検出装置の一実施の形態としての画像解析装置であって、遠距離に存在する移動物体の像を検出する場合に用いる処理手法の切り替えの指標が図1の例とは異なる場合の画像解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0115】
図13の画像解析装置161は、画像入力処理部181、近距離検出処理部182、外部入力部183、遠距離検出処理部184、結果統合部185、及び結果出力部186から構成されている。
【0116】
近距離検出処理部182は、相関判定部191から構成されている。
【0117】
遠距離検出処理部184は、処理手法決定部201、動きベクトル判定部202、及び相関判定部203から構成されている。
【0118】
図13の画像解析装置161と、図1の画像解析装置1との機能的構成を比較すると、図13の画像入力処理部181、近距離検出処理部182、結果統合部185、及び結果出力部186の各々は、図1の画像入力処理部11、近距離検出処理部12、結果統合部14、及び結果出力部15の各々と基本的に同様の構成と機能を有している。また、図13の遠距離検出処理部184の構成要素、即ち、処理手法決定部201、動きベクトル判定部202、及び相関判定部203の各々は、図1の遠距離検出処理部13のうち、処理手法決定部32、動きベクトル判定部33、及び相関判定部34の各々と基本的に同様の構成と機能を有している。即ち、図13の画像解析装置161の、この段落に記載している構成が、図1の画像解析装置1の構成と一致している。これらの一致した構成の説明は繰り返しになるので省略する。
【0119】
これに対して、次の点で、図13の画像解析装置161は、図1の画像解析装置1と異なっている。即ち、図1の処理手法決定部32が処理手法を決定する場合の指標は、輝度判定部31から与えられるのに対して、図13の処理手法決定部201が処理手法を決定する場合の指標は、外部入力部183から与えられる点が異なる。換言すると、図13の画像解析装置161では、図1の輝度判定部31の代わりに外部入力部183が設けられている点が異なる。
【0120】
外部入力部183は、処理手法の切替指示を外部から入力し、処理手法決定部201に通知する。
【0121】
処理手法決定部201は、外部入力部183から通知された切替指示に基づいて、動きベクトル判定と相関判定とのうち何れか一方を、処理手法として決定する。即ち、外部入力部183から動きベクトル判定への切替指示が通知された場合、処理手法決定部201は、動きベクトル判定を処理手法として決定し、画像入力処理部181から出力された解析画像のデータを動きベクトル判定部202に供給する。これに対して、外部入力部183から相関判定への切替指示が通知された場合、処理手法決定部201は、相関判定を処理手法として決定し、画像入力処理部181から出力された解析画像のデータを相関判定部203に供給する。
【0122】
[処理手法の切り替えの具体例]
図14は、このような外部入力部183を用いた処理手法の切り替えの具体例を説明する図である。
【0123】
図14に示すように、監視カメラ61のレンズの前方にライト等の光源211が存在するとする。即ち、監視カメラ61の奥から手前に向けた配置で光源211が存在するとする。
【0124】
このような場合、監視カメラ61から出力される撮像画像の指定領域FSの輝度は一定の基準以上となる。この場合、図1の画像解析装置1の遠距離検出処理部13の処理手法としては、動きベクトル判定が用いられる。
【0125】
しかしながら、光源211による光の像が撮像画像の背景となっているため、木々の揺れの像等の外乱はほぼ存在しない状態となっており、外部の他の状況から判断して、動きベクトル判定よりも相関判定の方が好適な場合もある。このような場合、図13の画像解析装置161では、相関判定への切替指示が外部入力部183に入力されて、遠距離検出処理部184の処理手法としては、相関判定が用いられる。
【0126】
また、例えば、光源211による光の像が遮られた時、移動物体が光源211の前を通過したと判断し、動きベクトル判定よりも相関判定の方が好適であるとする。このような場合、図13の画像解析装置161では、相関判定への切替指示が外部入力部183に入力されて、遠距離検出処理部184の処理手法としては、相関判定が用いられる。
【0127】
[本発明のプログラムへの適用]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることができる。
【0128】
この場合、上述した移動物体検出装置の少なくとも一部として、例えば、図15に示されるパーソナルコンピュータを採用してもよい。
【0129】
図15において、CPU(Central Processing Unit)301は、ROM(Read Only Memory)302に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。または記憶部308からRAM(Random Access Memory)303にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM303にはまた、CPU301が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0130】
CPU301、ROM302、およびRAM303は、バス304を介して相互に接続されている。このバス304にはまた、入出力インタフェース305も接続されている。
【0131】
入出力インタフェース305には、キーボード、マウスなどよりなる入力部306、ディスプレイなどよりなる出力部307が接続されている。また、ハードディスクなどより構成される記憶部308、および、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部309が接続されている。通信部309は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0132】
入出力インタフェース305にはまた、必要に応じてドライブ310が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア311が適宜装着される。そして、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部308にインストールされる。
【0133】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0134】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図15に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)311により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM302や、記憶部308に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0135】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0136】
本発明は、監視カメラ、パーソナルコンピュータ、アラームを出力する専用装置等、画像データを解析する解析部を備えた装置であって、移動物体の像を検出可能な装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 画像解析装置, 11 画像入力処理部, 12 近距離検出処理部, 13 遠距離検出処理部, 14 結果統合部, 15 結果出力部, 21 相関判定部, 31 輝度判定部, 32 処理手法決定部, 33 動きベクトル判定部, 34 相関判定部, 41 解析画像, 61 監視カメラ, 81 監視システム, 91 撮像部, 92 撮像信号処理部, 93 撮像データ処理部, 94 画像解析部, 95 伝送部, 111 システム, 121 画像入力部, 122 画像信号処理部, 123 画像データ処理部, 124 画像解析部, 125 伝送部, 141 システム, 151 画像入力部, 152 画像信号処理部, 153 画像解析部, 154 伝送部, 161 画像解析装置, 181 画像入力処理部, 182 近距離検出処理部, 183 外部入力部, 184 遠距離検出処理部, 185 結果統合部, 186 結果出力部, 191 相関判定部, 201 処理手法決定部, 202 動きベクトル判定部, 203 相関判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラにより撮像された画像である解析画像のデータを入力し、前記解析画像内で指定領域を設定する処理を実行する画像入力処理手段と、
前記画像入力処理手段により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像を検出する第1の検出処理手段と、
前記画像入力処理手段により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラから前記第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する第2の検出処理手段と
を備え、
前記第2の検出処理手段は、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて前記移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて前記移動物体の有無を判定する相関判定とを選択的に切り替えて使用する
移動物体検出装置。
【請求項2】
前記第2の検出処理手段は、
所定の指標に基づいて、前記動きベクトル判定と前記相関判定とのうち何れか一方を、処理手法として決定する処理手法決定手段と、
前記処理手法決定手段により前記処理手法として前記動きベクトル判定が決定された場合には、前記動きベクトル判定に従って、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する動きベクトル判定手段と、
前記処理手法決定手段により前記処理手法として前記相関判定が決定された場合に、前記相関判定に従って、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する相関判定手段と
を有する請求項1に記載の移動物体検出装置。
【請求項3】
前記第2の検出処理手段は、
前記処理手法決定手段が用いる前記指標として、前記指定領域の輝度が一定の基準以下であるかを判定する輝度判定手段をさらに有し、
前記処理手法決定手段は、
前記指定領域の輝度が一定の基準を超えていると前記輝度判定手段により判定された場合、前記動きベクトル判定を前記処理手法として決定し、
前記指定領域の輝度が一定の基準以下であると前記輝度判定手段により判定された場合、前記相関判定を前記処理手法として決定する
請求項2に記載の移動物体検出装置。
【請求項4】
前記処理手法決定手段が用いる前記指標を、外部から入力する外部入力手段をさらに備え、
前記処理手法決定手段は、前記外部入力手段に入力された前記指標に基づいて、前記動きベクトル判定と前記相関判定とのうち何れか一方を、前記処理手法として決定する
請求項2に記載の移動物体検出装置。
【請求項5】
前記第2の検出処理手段によって探索される前記移動物体の像の距離の範囲が複数段階設定されており、
前記第2の検出処理手段は、前記複数段階の距離の範囲毎に相互に独立して、前記処理手法として、前記動きベクトル判定と前記相関判定とを選択的に切り替えて使用する
請求項3に記載の移動物体検出装置。
【請求項6】
カメラにより撮像された画像である解析画像のデータを入力し、前記解析画像内で指定領域を設定する処理を実行する画像入力処理ステップと、
前記画像入力処理ステップの処理により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像を検出する第1の検出処理ステップと、
前記画像入力処理ステップの処理により設定された前記指定領域を移動する、前記カメラから前記第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する第2の検出処理手段と
を含み、
前記第2の検出処理ステップの処理は、前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて前記移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて前記移動物体の有無を判定する相関判定とを選択的に切り替えて使用する
移動物体検出方法。
【請求項7】
カメラにより撮像された画像である解析画像のデータを入力し、前記解析画像内で指定領域を設定する処理を実行し、
設定された前記指定領域を移動する、前記カメラからの第1の範囲の距離の移動物体の像を検出し、
設定された前記指定領域を移動する、前記カメラから前記第1の範囲より遠い第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する
ステップを含み、
前記第2の範囲の距離の移動物体の像を検出する際の処理手法として、動きベクトルを用いて前記移動物体の有無を判定する動きベクトル判定と、過去の画像との相関を用いて前記移動物体の有無を判定する相関判定とを選択的に切り替えて使用する
制御処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−210179(P2011−210179A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79652(P2010−79652)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】