説明

移動端末及び放送受信方法

【課題】 受信品質を一定に維持しつつ効率的に放送データを受信することを可能とすること。
【解決手段】 この移動端末2は、放送用電波を受信する電波受信部21と、放送用電波から放送用データストリームに復調する電波復調部22と、放送用データストリームに時系列に含まれるRTPパケットを格納するデータ格納部29と、放送用電波の受信品質が所定条件を満たすか否かを判定する受信品質判定部24と、RTPパケットの送信要求を送信する送信要求部26と、RTPパケットをデータ通信によって受信するデータ受信部27と、データ受信部27によって受信されたRTPパケットをデータ格納部29に格納するデータ更新部28と、データ格納部29に格納されたRTPパケットを、放送用電波の受信時刻から所定時間T経過後に伸長して出力するデータ出力部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末及び放送受信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の通信端末の高機能化に伴い、通信端末にテレビ放送やラジオ放送の受信・再生機能が搭載されるようになっている。このような通信端末における電波受信環境は、その移動性から時々刻々変化し、特にマルチパスフェージング(多重波伝搬)により受信レベルが大きく変動する。デジタル変調方式を用いて伝送されたデジタル放送用電波を受信する場合は、電波受信環境の劣化により、再生映像の一部にブロックノイズが発生したり、再生音声の一部が途切れるパルス性雑音が発生したり、データの一部が化けたりするような現象が生じる。
【0003】
このようなデジタルデータの受信品質低下に対処するための技術として、送信側で映像音声データを各フレームに分割して送信し、受信側でフレームの誤り、あるいは欠落が検出された場合に、時間的に1つ前のフレームによって補完するデータ送受信システムが開示されている(下記特許文献1参照)。また、受信側で受信したデータフレーム内のデータ位置毎に受信品質を推定して送信側に通知し、送信側でデータフレーム内のデータの再配置を行う通信システムも開示されている(下記特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−169277号公報
【特許文献2】特開2004−32712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のデータ送受信システムにおいては、ブロックノイズやパルス性雑音はある程度低減されるが、映像が突然静止したり、同じ音声が不自然に連続したりする現象が発生し、放送データの品質を一定に維持することが困難であった。また、下記特許文献2記載の通信システムでは、受信品質の高い位置にデータを再配置させることによって受信品質の向上を図ることは可能であるが、受品品質がある程度確保された位置を用いることで、データ伝送の帯域幅が狭くなってしまい、放送データの効率的な伝送を妨げる結果となる。
【0005】
そこで、本発明はかかる課題に鑑みて為されたものであり、受信品質を一定に維持しつつ効率的に放送データを受信することが可能な移動端末及び放送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の移動端末は、放送用データストリームが変調された搬送波を含む放送用電波を受信する電波受信手段と、放送用電波から搬送波を分離して、搬送波を放送用データストリームに復調する電波復調手段と、放送用データストリームに時系列に含まれるデータを格納するデータ格納手段と、放送用電波の受信品質が所定条件を満たすか否かを判定する受信品質判定手段と、受信品質が所定条件を満たさない場合に、放送用電波に変調されているデータを特定して、データの送信要求を送信する送信要求手段と、送信要求に応じて送信されたデータを、放送用電波を利用した通信手段以外のデータ通信手段によって受信するデータ受信手段と、データ受信手段によって受信されたデータをもって、データ格納手段に格納されているデータを更新するデータ更新手段と、データ格納手段に格納されたデータを、放送用電波の受信時刻から所定時間経過後に伸長して出力するデータ出力手段と、を備える。
【0007】
或いは、本発明の放送受信方法は、移動端末が、放送用データストリームが変調された搬送波を含む放送用電波を受信する電波受信ステップと、移動端末が、放送用電波から搬送波を分離して、搬送波を放送用データストリームに復調する電波復調ステップと、移動端末が、放送用データストリームに時系列に含まれるデータを、データ格納手段に格納するデータ格納ステップと、移動端末が、放送用電波の受信品質が所定条件を満たすか否かを判定する受信品質判定ステップと、移動端末が、受信品質が所定条件を満たさない場合に、放送用電波に変調されているデータを特定して、データの送信要求を送信する送信要求ステップと、移動端末が、送信要求に応じて送信されたデータを、放送用電波を利用した通信手段以外のデータ通信手段によって受信するデータ受信ステップと、移動端末が、データ受信手段によって受信されたデータをもって、データ格納手段に格納されているデータを更新するデータ更新ステップと、移動端末が、データ格納手段に格納されたデータを、放送用電波の受信時刻から所定時間経過後に伸長して出力するデータ出力ステップと、を備える。
【0008】
このような移動端末及び放送受信方法によれば、移動端末が放送用電波を受信した後、放送用電波から搬送波を分離して復調することにより、映像データや音声データを含む放送用データストリームに復調し、データストリームに含まれるデータをデータ格納手段にいったん格納する。また、移動端末は、放送用電波の受信品質を判定して所定条件を満たさない場合に、その時の放送用電波に変調されているデータを特定して送信要求し、再送されてきたデータを放送用電波以外の通信媒体によって受信して、データ格納手段に格納されているデータと置き換えた後、データ格納手段に格納されているデータを電波受信時刻から一定時間遅延させて出力する。これにより、電波受信環境の劣化により受信品質が所定条件を満たさない場合は、データ通信によって再度データを受信して補完することで、放送用電波の帯域幅を維持して効率的なデータ伝送を実現しながら放送の受信品質の劣化を防止することができる。
【0009】
また、送信要求手段は、放送用電波に変調されているデータを、データに含まれるシーケンス番号により特定し、データの送信要求にシーケンス番号を付加して送信し、データ更新手段は、データ受信手段によって受信されたデータもって、データ格納手段に格納されているシーケンス番号を含むデータを更新することが好ましい。この場合、移動端末は、データを送信側で採番されたシーケンス番号で特定して送信要求を行い、該当シーケンス番号が付されたデータを更新するので、送信側に対して確実に送信要求対象のデータを通知して補完することができる。
【0010】
さらに、送信要求手段は、放送用電波に変調されているデータを、データに含まれる時刻情報により特定し、データの送信要求に時刻情報を付加して送信し、データ更新手段は、データ受信手段によって受信されたデータをもって、データ格納手段に格納されている時刻情報を含むデータを更新することも好ましい。このような構成とすれば、移動端末は、データを送信側で記録された時刻情報で特定して送信要求を行い、該当時刻情報が付されたデータを更新するので、送信側に対して確実に送信要求対象のデータを通知して補完することができる。
【0011】
またさらに、送信要求手段は、移動通信網を介して送信することも好ましい。かかる送信要求手段を備えると、移動端末の送信要求が迅速に伝送されることで、放送用電波受信から放送データ出力までの遅延時間をより短く設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の移動端末によれば、受信品質を一定に維持しつつ効率的に放送データを受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明にかかるデジタル放送受信システムの好適な一実施形態を示す概略構成図である。同図に示すデジタル放送受信システム1は、放送用電波を中継送信する放送用電波中継局3と、放送用電波を受信して出力する移動端末2と、放送用電波に変調されているパケットデータを格納するデータ配信装置4と、移動端末2とデータ配信装置4とを接続する通信ネットワーク5とを含んで構成されている。ここで、移動端末2とデータ配信装置4とは、IMT−2000(International Mobile Telecommunications - 2000)方式、PDC(Personal Digital Cellular Telecommunication System)方式、PHS(Personal Handyphone System)方式等の通信方式が適用された移動通信ネットワークを含む通信ネットワーク5を介して、相互にデータの送受信が可能とされている。なお、図1においては、説明の便宜上、移動端末を1台のみ表示しているが、図示しない他の移動端末を含んでいても良い。
【0015】
以下、移動端末2及びデータ配信装置4の構成について詳細に説明する。
【0016】
移動端末2は、移動体通信方式による音声通信、パケットデータ通信とともに、デジタルテレビ放送の受信、再生、及び録画が可能な通信端末である。このような通信端末の例としては、携帯電話機、PHS、PDA(Personal Digital Assistants)、可搬型パーソナルコンピュータ等が挙げられる。この移動端末2は、データの再生出力手段としてのディスプレイ32及びスピーカ33の他、電波受信部(電波受信手段)21、電波復調部(電波復調手段)22と、レベル測定部23と、受信品質判定部(受信品質判定手段)24と、遅延処理部25と、送信要求部(送信要求手段)26と、データ受信部(データ受信手段)27と、データ更新部(データ更新手段)28と、データ出力部(データ出力手段)30と、データ格納部(データ格納手段)29と、録画データ格納部31とを含んで構成されている。
【0017】
電波受信部21は、最寄りの放送用電波中継局3からデジタルテレビ放送用電波を受信する部分である。この放送用電波は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式等で多重化された複数の搬送波を含むものである。それぞれの搬送波は、音声データ、映像データ、及び文字データ等が圧縮されたデジタル信号である放送用データストリームを、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式等で変調した状態で搬送するためのものである。この放送用データストリームは、複数のRTP(Real Time Transport Protocol)パケット(パケットデータ)によって時系列に分割されている。また、RTPパケットに含まれる音声データは、MPEG−2 AAC(Moving Picture Experts Group 2 Advanced Audio Coding)方式等で圧縮され、映像データは、MPEG−4(Moving Picture Experts Group 4)方式、H.264方式等で圧縮されている。
【0018】
ここで、電波受信部21は、移動端末2に備えられた操作ボタン等の入力手段からのデジタルテレビ放送の視聴開始指示の受付を契機として、所定周波数帯の放送用電波を受信する。電波受信部21は、受信した放送用電波を連続的に電波復調部22に出力するとともに、放送用電波の受信開始時刻情報を遅延処理部25に送出する。
【0019】
電波復調部22は、電波受信部21から受け取った放送用電波から搬送波を分離して、その搬送波を復調することにより、搬送波から放送用データストリームを取り出す部分である。具体的には、電波復調部22は、OFDM方式によって複数の搬送波が多重化された放送用電波から該当の搬送波を取り出した後、搬送波をベースバンド信号に復調して、ベースバンド信号をデジタルデータである放送用データストリームに変換する。また、電波復調部22は、受け取った放送用電波をレベル測定部23に出力するとともに、放送用電波から取り出した放送用データストリームに時系列に含まれるRTPパケットを、時間T間隔(例えば、1秒間隔)で蓄積して、データ格納部29に格納する。
【0020】
図2には、データ格納部29に格納されたデータの時間的変化を示す。同図によれば、電波受信部21が放送用電波の受信開始時刻T=0から時刻T=Tまでの間に、複数のRTPパケットからなるRTPパケット群D01が搬送された放送用電波を受信すると、電波復調部22は、時刻T=T経過時に放送用電波からRTPパケット群D01を取り出してデータ格納部29に格納する。その後、同様にして電波復調部22は、時刻T=2T,3T,4Tまでの間に、RTPパケット群D02,D03,D04を順次取り出してデータ格納部29に追加する。
【0021】
また、図3は、データ格納部29に格納されたRTPパケットのデータフォーマットを示す図である。同図に示すように、RTPパケットは、RTPパケットの再生順序を特定するための連続番号である“シーケンス番号”を記憶するデータフィールドF01と、RTPパケットに含まれる音声データ、映像データ等の圧縮データの再生時刻又はキャプチャ時刻を表す“タイムスタンプ”を記憶するデータフィールドF02と、音声データ、映像データ等の圧縮データを記憶するデータフィールドF03とを含んで構成されている。
【0022】
図1に戻って、電波復調部22は、時間T間隔でデータ格納部29にRTPパケット群を格納する際に、そのRTPパケット群に含まれる全てのシーケンス番号を抽出して送信要求部26に出力する。併せて、電波復調部22は、そのRTPパケット群に含まれる全てのシーケンス番号を時系列にデータ出力部30に出力する。
【0023】
レベル測定部23は、電波復調部22から出力された放送用電波の受信レベル及びノイズレベルを、電波復調部22によるRTPパケット群格納のタイミングに同期させて測定する部分である。ここでは、放送用電波の受信レベルとして、OFDM方式等で多重化された複数の搬送波を含む受信電波の電力の総和が測定される。また、ノイズレベルとしては、放送用電波に含まれるノイズの受信電力が測定される。レベル測定部23は、放送用電波の受信レベルC[dBm]及びその放送用電波に含まれるノイズのレベルN[dBm]を、RTPパケット群の格納タイミングに同期させるように時間T間隔で測定して、それらのレベルを受信品質判定部24に出力する。
【0024】
受信品質判定部24は、レベル測定部23から受け取った放送用電波の受信レベルC[dBm]及びその放送用電波に含まれるノイズのレベルN[dBm]に基づいて、電波復調部22によるRTPパケット群格納のタイミングに同期させて放送用電波の受信品質を判定する部分である。すなわち、受け取った受信レベルがC[dBm]、ノイズレベルがN[dBm]の場合においては、受信レベルC[dBm]及びCN比C/N[dB]と、それぞれの閾値とを比較した結果によって受信品質を判定する。より詳細には、下記式(1)及び(2)を同時に満たす場合、下記式(3)及び(4)を同時に満たす場合、及び下記式(5)及び(6)を同時に満たす場合には、放送用データストリームを良好に再生可能と判断し、受信品質を「強」と判定する。
C≧a1 …(1)
C/N≧b1 …(2)
C<a1 …(3)
C/N>b2 …(4)
C>a2 …(5)
C/N<b1 …(6)
[式(1)〜(6)中、a1,a2,b1,b2は予め設定された閾値を表す]
【0025】
一方、受信品質判定部24は、下記式(7)及び(8)、又は下記式(9)及び(10)を同時に満たす場合には、映像データの再生時にブロックノイズが発生する可能性があると判断し、受信品質を「弱」と判定する。
a2≧C>a1 …(7)
b1>C/N …(8)
a1≧C …(9)
b2≧C/N>b1 …(10)
[式(7)〜(10)中、a1,a2,b1,b2は予め設定された閾値を表す]
【0026】
一方、受信品質判定部24は、上記式(8)及び(9)を同時に満たす場合には、映像データ及び音声データともに再生不可能と判断し、受信品質を「圏外」と判定する。図4は、上述のようにして受信品質判定部24が判定する受信品質と、受信レベル及びCN比との対応関係を示す図である。同図に示すように、受信レベルCの値及びCN比の値の組合せで受信品質が判定される。
【0027】
図1に戻って、さらに、受信品質判定部24は、受信品質を「圏外」と判定した場合は、送信要求部26にRTPパケット要求トリガーを出力する。
【0028】
送信要求部26は、受信品質判定部24によって受信品質が「圏外」と判定された場合に、データ配信装置4に対してRTPパケットの送信要求信号を送信する部分である。この場合、送信要求部26は、電波復調部22から受け取ったシーケンス番号により、受信品質が「圏外」と判定されたタイミングにおける放送用電波に変調されているRTPパケットを特定し、これらのシーケンス番号を送信要求信号に付加して送信する。例えば、電波復調部22によってシーケンス番号「Seq001」〜「Seq010」で特定される10個のRTPパケットを含むRTPパケット群D02がデータ格納部29に格納されるタイミングにおいて、受信品質判定部24によって受信品質が「圏外」と判定された場合は、送信要求部26は、シーケンス番号「Seq001」〜「Seq010」を含む送信要求信号を生成して送信する。
【0029】
また、送信要求部26は、この送信要求信号を移動端末2と通信ネットワーク5との間のデータ通信用の制御チャンネルを用いて送信する。ここで言うデータ通信用の制御チャンネルとは、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式等における移動端末と基地局との間のCプレーン(C−plane)に代表される移動端末2と通信ネットワーク5との間の無線区間の制御信号を転送するための通信チャンネルを意味する。
【0030】
データ受信部27は、送信要求部26による送信要求信号に応じてデータ配信装置4から送信されたRTPパケットを、放送用電波を利用した通信以外のデータ通信によって受信する部分である。具体的には、データ受信部27は通信ネットワーク5を経由してデータ配信装置4から、IMT−2000方式、PDC方式、PHS方式等の移動通信方式を利用したパケットデータ通信によりRTPパケットを受信する。例えば、送信要求部26によりシーケンス番号「Seq001」〜「Seq010」を含む送信要求信号が送信された場合は、データ受信部27は、それぞれのシーケンス番号を含むRTPパケットを受信する。また、データ受信部27は、受信したRTPパケットをデータ更新部28に出力する。
【0031】
データ更新部28は、データ受信部27によって受信されたRTPパケットをもって、電波復調部22によってデータ格納部29に格納されたRTPパケットを更新する部分である。具体的には、データ更新部28は、データ受信部27から受け取ったRTPパケットに含まれるシーケンス番号と同一のシーケンス番号を含むRTPパケットを検索し、読み出されたRTPパケットをデータ受信部27から受け取ったRTPパケットによって更新する。なお、データ更新部28は、データ受信部27から受け取ったRTPパケットに含まれるシーケンス番号と同一のシーケンス番号を含むRTPパケットが存在しない場合は、受け取ったRTPパケットを、シーケンス番号順に並ぶようにデータ格納部29に保存する。
【0032】
遅延処理部25は、電波受信部21による放送用電波の受信開始時刻から所定時間経過後に、その放送用電波に変調されているRTPパケットを出力するように制御する部分である。具体的には、遅延処理部25は、電波受信部21から受け取った受信開始時刻から所定時間Tが経過したタイミングで、データ出力部30に対して、RTPパケットの出力指示を行う。
【0033】
データ出力部30は、データ格納部29に格納されたRTPパケットを、放送用電波受信時刻から所定時間T経過後に伸長して、音声情報、映像情報、及び文字情報として出力する部分である。すなわち、データ出力部30は、遅延処理部25からの指示に伴い、電波復調部22から受け取ったシーケンス番号によって特定されるRTPパケットを、順次データ格納部29から読み出す。さらに、データ出力部30は、読み出したRTPパケットのデータ部(図3参照)に格納されている音声データ、映像データ、又は文字データを伸長処理した後、シーケンス番号順にスピーカ33又はディスプレイ32に出力する。又は、データ出力部30は、読み出したRTPパケットに含まれる音声データ、映像データ、又は文字データを、所定データフォーマットの録画データとして出力した後、シーケンス番号順に録画データ格納部31に記憶することも行う。
【0034】
例えば、図2に示すように、電波復調部22によって時刻T=5TまでにRTPパケット群D01〜D05がデータ格納部29に格納され、データ出力部30における出力遅延時間がT=5Tと設定されている場合を想定する。この場合、データ出力部30は、時刻T=5T(=T)経過後に、RTPパケット群D01に含まれるRTPパケットを順番に伸長出力する。その後、データ出力部30は、時間T間隔で各RTPパケット群D02,D03に含まれるRTPパケットを伸長出力する。つまり、各RTPパケット群D01,D02,D03は、放送用電波として搬送されて電波受信部21によって受信されてから時間T分遅延して出力されることとなる。
【0035】
また、図5は、RTPパケットがデータ更新部28によって更新される場合に、データ格納部29に格納されたデータの時間的変化を示す図である。この場合、時刻T=2T経過時にRTPパケット群D02がデータ格納部29に格納されると同時に受信品質判定部24により受信品質が「圏外」と判定された後、RTPパケット群D02に含まれるRTPパケットに関する送信要求信号が送信要求部26によって送信される。その後、時刻T=4T経過後にデータ受信部27によってRTPパケット群D02が受信され、データ更新部28によってRTPパケット群D02が置換される。ここでは、受信品質判定部24による判定処理時間及び移動端末2とデータ配信装置4との間の通信遅延時間の和が約2Tとなっている。その後、データ出力部30が、データ格納部29に格納された各RTPパケット群D01,D02,D03を、時間T分遅延させて出力する。この際、データ出力部30における出力遅延時間Tは、上記の判定処理時間及び上記の通信遅延時間の和より大きくなるように随時変更可能に設定される。
【0036】
このように、データ出力部30において出力遅延時間Tを設けることで、データ受信部27によってRTPパケットが補完される場合であっても、受信品質の測定からRTPパケットの置換までの処理を出力遅延時間T内に収めることができ、映像データ、音声データ等の放送データを滞り無く時間的に連続して出力させることができる。この方法によれば、電波受信部21で受信される放送用電波がリアルタイムで放送されたものを遅延出力した場合であっても、補正された放送データを滞り無く連続的に出力させることによって、リアルタイムで放送された場合と同様に、視聴者に違和感を与えることなく放送を提供することができる。
【0037】
図1に戻って、データ配信装置4は、放送用電波中継局3から送信される放送用電波によって搬送されるRTPパケットと同一のRTPパケットを格納するコンピュータシステム(又は、コンピュータシステムの集合体)である。このデータ配信装置4は、通信ネットワーク5を介して移動端末2とデータ通信が可能とされている。データ配信装置4は、機能的構成要素として、送信要求受信部41、データ読出部42と、データ送信部43と、データストリーム格納部44とを含んで構成されている。
【0038】
送信要求受信部41は、通信ネットワーク5を介して移動端末2よりRTPパケットを要求するための送信要求信号を受信する部分である。この送信要求信号には、要求するRTPパケットを特定するシーケンス番号が付加されている。送信要求受信部41は、移動端末2から送信要求信号を受信すると、その送信要求信号からシーケンス番号を抽出してデータ読出部42に出力する。
【0039】
データ読出部42は、送信要求受信部41から受け取ったシーケンス番号に基づいてデータストリーム格納部44を参照して、そのシーケンス番号と同一のシーケンス番号を含むRTPパケットを読み出す。なお、データストリーム格納部44には、放送用電波中継局3が中継する放送用電波によって搬送される全てのRTPパケットと同一のRTPパケットが格納されている。また、データ読出部42は、読み出したRTPパケットをデータ送信部43に出力する。
【0040】
データ送信部43は、データ読出部42から受け取ったRTPパケットを、通信ネットワーク5を介したデータ通信によって移動端末2に送信する部分である。
【0041】
続いて、本実施形態にかかるデジタル放送受信システム1の動作について説明し、併せて、本発明の実施形態にかかる放送受信方法について説明する。
【0042】
図6は、デジタル放送受信システム1の放送用電波受信時の動作を示すシーケンス図である。
【0043】
まず、放送用電波中継局3から放送用電波が送信されると、移動端末2の電波受信部21が受信する(ステップS1)。その後、移動端末2は、放送用電波から放送用データストリームを取り出す電波受信処理(詳細は、後述する。)を行う(ステップS2)。さらに、電波受信処理において放送用電波の受信品質を「圏外」と判定した場合、移動端末2はデータ配信装置4に対して直前の放送用電波に復調されていたRTPパケットに関する送信要求信号を送信する(ステップS3)。
【0044】
データ配信装置4の送信要求受信部41によって送信要求信号が受信されると、データ読出部42によってデータストリーム格納部44から該当RTPパケットが読み出される(ステップS4)。読み出されたRTPパケットは、データ配信装置4のデータ送信部43から移動端末2に送信される(ステップS5)。
【0045】
そして、移動端末2は、データ配信装置4からRTPパケットを受信すると、データ格納部29のRTPパケットの置換処理、及びデータ格納部29からのRTPパケットの出力処理を行う(ステップS6)。
【0046】
以上説明したステップS1〜S6までの処理は、放送用電波が移動端末2において受信されている間において、時間T間隔で繰り返し行われる。
【0047】
以下、図7を用いて移動端末2の動作についてより詳細に説明する。図7は、移動端末2の放送用電波受信からデータ出力までの動作を示すシーケンス図である。
【0048】
最初に、移動端末2においてデジタルテレビ放送の視聴開始指示が受け付けられると、電波受信部21が放送用電波中継局3からの放送用電波の受信を開始する(ステップS101)。その後、電波復調部22は、放送用電波からその放送用電波に多重化された搬送波を分離する(ステップS102)。同時に、レベル測定部23が放送用電波の受信レベル及びノイズレベルを測定し、受信品質判定部24に出力する(ステップS103)。また、電波復調部22は、分離した搬送波を復調することにより放送用データストリームを取り出す(ステップS104)。その後、電波復調部22は、放送用データストリームに時系列に含まれるRTPパケットを分割してデータ格納部29に格納する(ステップS105)。
【0049】
そして、受信品質判定部24は、レベル測定部23によって測定された放送用電波の受信レベル及びノイズレベルに基づいて、放送用電波の受信品質を判定する(ステップS106)。その後、受信品質判定部24は、判定した受信品質が「圏外」であるか否かを判断する(ステップS107)。判断の結果、判定した受信品質が「圏外」でない場合(ステップS107;NO)は、処理をステップS112に移行させる。
【0050】
一方、判定した受信品質が「圏外」である場合(ステップS107;YES)は、送信要求部26は、電波復調部22から受け取ったシーケンス番号によって、データ配信装置4に送信を要求するRTPパケットを特定する(ステップS108)。そして、送信要求部26は、電波復調部22から受け取ったシーケンス番号を含む送信要求信号をデータ配信装置4に向けて送信する(ステップS109)。
【0051】
その後、データ受信部27によってデータ配信装置4からRTPパケットが受信される(ステップS110)。そして、データ更新部28は、受信されたRTPパケットをもって、データ格納部29に格納されている同一のシーケンス番号を含むRTPパケットを更新する(ステップS111)。
【0052】
さらに、データ出力部30は、電波受信部21によってRTPパケットが変調された放送用電波が受信されているか否かを判定する(ステップS112)。判定の結果、RTPパケットが変調された放送用電波が受信されている場合(ステップS112;NO)、データ出力部30は、データ格納部29に格納されているRTPパケットを所定時間T遅延させて伸長処理を行った後、ディスプレイ32、スピーカ33、又は録画データ格納部31に対して出力し(ステップS113)、処理をステップS101に戻す。一方、RTPパケットが変調された放送用電波が受信されていない場合(ステップS112;YES)、データ出力部30は、データ格納部29に格納されている全てのRTPパケットを所定時間T遅延させて伸長出力した後(ステップS114)、放送用電波の受信処理を終了する。
【0053】
次に、図8を参照して、移動端末2において放送用電波として受信されたRTPパケット群が、遅延出力されるまでのデータの受信状態についてより具体的に説明する。図8において、(a)は、電波受信部21によるRTPパケット群の受信経過の一例、(b)は、データ受信部27によるRTPパケット群の受信経過の一例、(c)は、データ出力部30によるRTPパケット群の出力経過の一例を示す図である。
【0054】
図8(a)に示す例においては、時刻T=T〜7Tまでの間にRTPパケット群D01〜D07が放送用電波に変調された状態(放送系統)で受信されており、各時刻における放送用電波の受信品質を判定するための値(C又はC/N)が実線L01で示されている。この場合、RTPパケット群D02,D05,D06受信時の受信品質を判定するための値が閾値以下であるので、送信要求部26によってRTPパケット群D02,D05,D06を再度取得するための送信要求信号が、データ配信装置4に向けて送信される。その結果、図8(b)に示すように、RTPパケット群D02,D05,D06が、遅延時間ΔT1,ΔT2,ΔT3後に、通信ネットワーク5を介したパケットデータ通信(通信系統)により受信されることとなる。
【0055】
さらに、図8(c)に示すように、遅延処理部25の遅延処理によって、RTPパケット群D01〜D07が、時間Tだけ遅延した状態で順にデータ出力部30から出力される。その際には、RTPパケット群D02,D05,D06が、通信系統により受信されたものと置換された状態で出力される。
【0056】
以上説明したデジタル放送受信システム1によれば、移動端末2が放送用電波を受信した後、放送用電波から搬送波を分離して復調することにより、映像データや音声データを含む放送用データストリームに復調し、データストリームに含まれるRTPパケットをデータ格納部29にいったん格納する。また、移動端末2は、放送用電波の受信品質を判定して所定条件を満たさない場合に、その時の放送用電波に変調されているRTPパケットを特定してデータ配信装置4に送信要求し、再送されてきたRTPパケットを放送用電波以外の通信媒体によって受信して、データ格納部29に格納されているRTPパケットと置き換えた後、データ格納部29に格納されているRTPパケットを電波受信時刻から時間T遅延させて出力する。これにより、電波受信環境の劣化により受信品質が所定条件を満たさない場合は、データ通信によって再度RTPパケットを受信して補完することで、放送用電波の帯域幅を維持して効率的なデータ伝送を実現しながら放送の受信品質の劣化を防止することができる。
【0057】
また、移動端末2は、RTPパケットを放送用電波の送信側で採番されたシーケンス番号で特定して送信要求を行い、該当シーケンス番号が付されたRTPパケットを更新するので、RTPパケット送信側に対して確実に送信要求対象のパケットデータを通知して補完することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、移動端末2は、複数のRTPパケットを含むRTPパケット群を受信する時間T間隔で放送用電波の受信品質を判定しているが、1以上の所定数のRTPパケットを受信するタイミング毎に受信品質を判定して、データ配信装置4にRTPパケットの送信を要求してもよい。
【0059】
また、移動端末2は、データ配信装置4にRTPパケットの送信要求信号を送信する際に、RTPパケットのデータフィールドF02に記憶される“タイムスタンプ”(時刻情報)によって送信を要求するRTPパケットを特定し、タイムスタンプを送信要求信号に付加するようにしてもよい。この場合、データ更新部28は、データ受信部27から受け取ったRTPパケットに含まれるタイムスタンプと同一のタイムスタンプを含むRTPパケットをデータ格納部29から検索し、読み出されたRTPパケットをデータ受信部27から受け取ったRTPパケットによって更新するようにしてもよい。
【0060】
また、移動端末2は、放送用電波の受信品質が「圏外」の場合に、データ配信装置4に対してRTPパケットの送信を要求しているが、RTPパケットの送信要求の条件は、適宜変更してもよい。例えば、移動端末2は、放送用電波の受信品質が「弱」の場合にもRTPパケットの送信を要求してもよい。
【0061】
また、移動端末においては、受信レベルとして移動端末2における放送用電波の電界強度、及びノイズレベルとしてノイズの電界強度を測定し、これらに基づいて受信品質を判定するように動作しても良い。
【0062】
また、移動端末において、受信レベルとして、1つの放送用データストリームが搬送される複数搬送波の一定時間内の受信電力Sを測定しても良い。この場合、これらの複数搬送波に含まれるノイズの一定時間内の受信電力N(ノイズレベル)を測定した後、この受信電力の比(S/N比)に基づいて受信品質を判定するように動作しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明にかかるデジタル放送受信システムの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のデータ格納部に格納されたデータの時間的変化を示す図である。
【図3】図1のデータ格納部に格納されたRTPパケットのデータフォーマットを示す図である。
【図4】図1の受信品質判定部が判定する受信品質と、受信レベル及びCN比との対応関係を示す図である。
【図5】図1のデータ更新部によってRTPパケットが更新される場合に、データ格納部に格納されたデータの時間的変化を示す図である。
【図6】デジタル放送受信システムの放送用電波受信時の動作を示すシーケンス図である。
【図7】図1の移動端末の放送用電波受信からデータ出力までの動作を示すシーケンス図である。
【図8】(a)は、図1の電波受信部によるRTPパケット群の受信経過の一例、(b)は、図1のデータ受信部によるRTPパケット群の受信経過の一例、(c)は、図1のデータ出力部によるRTPパケット群の出力経過の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1…デジタル放送受信システム、2…移動端末、3…放送用電波中継局、4…データ配信装置、5 通信ネットワーク、21…電波受信部、22…電波復調部、23…レベル測定部、24…受信品質判定部、25…遅延処理部、26…送信要求部、27…データ受信部、28…データ更新部、29…データ格納部、30…データ出力部、31…録画データ格納部、32…ディスプレイ、33…スピーカ、41…送信要求受信部、42…データ読出部、43…データ送信部、44…データストリーム格納部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送用データストリームが変調された搬送波を含む放送用電波を受信する電波受信手段と、
前記放送用電波から搬送波を分離して、前記搬送波を放送用データストリームに復調する電波復調手段と、
前記放送用データストリームに時系列に含まれるデータを格納するデータ格納手段と、
前記放送用電波の受信品質が所定条件を満たすか否かを判定する受信品質判定手段と、
前記受信品質が所定条件を満たさない場合に、前記放送用電波に変調されているデータを特定して、前記データの送信要求を送信する送信要求手段と、
前記送信要求に応じて送信されたデータを、前記放送用電波を利用した通信手段以外のデータ通信手段によって受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段によって受信されたデータをもって、前記データ格納手段に格納されているデータを更新するデータ更新手段と、
前記データ格納手段に格納されたデータを、前記放送用電波の受信時刻から所定時間経過後に伸長して出力するデータ出力手段と、
を備えることを特徴とする移動端末。
【請求項2】
前記送信要求手段は、前記放送用電波に変調されているデータを、前記データに含まれるシーケンス番号により特定し、前記データの送信要求に前記シーケンス番号を付加して送信し、
前記データ更新手段は、前記データ受信手段によって受信されたデータをもって、前記データ格納手段に格納されている前記シーケンス番号を含むデータを更新する、
請求項1記載の移動端末。
【請求項3】
前記送信要求手段は、前記放送用電波に変調されているデータを、前記データに含まれる時刻情報により特定し、前記データの送信要求に前記時刻情報を付加して送信し、
前記データ更新手段は、前記データ受信手段によって受信されたデータをもって、前記データ格納手段に格納されている前記時刻情報を含むデータを更新する、
請求項1記載の移動端末。
【請求項4】
前記送信要求手段は、前記送信要求を移動通信網を介して送信する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動端末。
【請求項5】
移動端末が、放送用データストリームが変調された搬送波を含む放送用電波を受信する電波受信ステップと、
前記移動端末が、前記放送用電波から搬送波を分離して、前記搬送波を放送用データストリームに復調する電波復調ステップと、
前記移動端末が、前記放送用データストリームに時系列に含まれるデータを、データ格納手段に格納するデータ格納ステップと、
前記移動端末が、前記放送用電波の受信品質が所定条件を満たすか否かを判定する受信品質判定ステップと、
前記移動端末が、前記受信品質が所定条件を満たさない場合に、前記放送用電波に変調されているデータを特定して、前記データの送信要求を送信する送信要求ステップと、
前記移動端末が、前記送信要求に応じて送信されたデータを、前記放送用電波を利用した通信手段以外のデータ通信手段によって受信するデータ受信ステップと、
前記移動端末が、前記データ受信手段によって受信されたデータをもって、前記データ格納手段に格納されているデータを更新するデータ更新ステップと、
前記移動端末が、前記データ格納手段に格納されたデータを、前記放送用電波の受信時刻から所定時間経過後に伸長して出力するデータ出力ステップと、
を備えることを特徴とする放送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−13960(P2006−13960A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188758(P2004−188758)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】