説明

移動農機

【課題】マフラやエンジンの排熱を燃料タンクに対して遮蔽することができる移動農機を提供することを課題としている。
【解決手段】燃料タンク16をエンジン6の上方に取り付けるブラケット18を、エンジン6に固定された状態において上部に燃料タンク16を取り付ける構造とし、ブラケット18に外側に向かって上昇傾斜した遮蔽板37を一体的に設け、該遮蔽板37を、マフラ12からの排熱を燃料タンク16に対して遮蔽するように、燃料タンク16とマフラ12との間に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの上方に燃料タンクが配置され、燃料タンクの側方にマフラが配置された移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来エンジンの上方に燃料タンクが配置され、燃料タンクの側方にマフラーが配置された管理機が移動農機として公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−2083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンジン及びマフラーからは排熱が発生する。上記管理機は、エンジンの上方且つマフラの側方に燃料タンクが取り付けられているため、上記排熱により燃料タンクの温度が上昇する場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移動農機は、エンジン6の上方に燃料タンク16が配置され、燃料タンク16の側方にマフラ12が配置された移動農機において、燃料タンク16をエンジン6に取り付けるブラケット18を設け、該ブラケット18がエンジン6に固定され、該ブラケット18を、エンジン6に固定された状態において上部に燃料タンク16を取り付ける構造とし、該ブラケット18に外側に向かって上昇傾斜した遮蔽板37を一体的に設け、該遮蔽板37を、マフラ12からの排熱を燃料タンク16に対して遮蔽するように、燃料タンク16とマフラ12との間に配置したことを第1の特徴としている。
【0005】
第2にマフラ12の後端位置に対応するエンジン6の後方における側端上方部分を覆う補助遮蔽板38をブラケット18に一体的に設け、補助遮蔽板38を燃料タンク16の下方に配置したことを特徴としている。
【0006】
第3にマフラ12の外周を覆うマフラカバー13を設け、遮蔽板37を、平面視において外側端がマフラカバー13と重複するように配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成された本発明の構造によると、ブラケットによってエンジンの上方に燃料タンクを配置して取り付けることができる他、ブラケットに一体的に設けられた遮蔽板によって、マフラから発生する排熱が燃料タンクに対して遮蔽され、該排熱による燃料タンクの温度上昇を抑制することができるという効果がある。遮蔽板はブラケットに一体的に設けられるため、専用の遮蔽板を設ける必要がなく部品点数が少なくて済む。
【0008】
マフラの後端位置に対応するエンジンの後方における側端上方部分を覆う補助遮蔽板をブラケットに一体的に設けると、補助遮蔽板が燃料タンクの下方に配置されるため、エンジンの排熱が補助遮蔽板により燃料タンクに対して遮蔽され、エンジンの排熱による燃料タンクの温度上昇を抑制することができるという利点がある。専用の補助遮蔽板を設ける必要がないため、部品点数が少なくて済む。
【0009】
マフラの外周を覆うマフラカバーを設け、遮蔽板を、平面視において外側端がマフラカバーと重複するように配置することによって、遮蔽板の端部から排出される排熱が外側に案内される。これにより該排熱のボンネット側への排出が規制され、ボンネット側の温度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1,図2は本発明を採用した移動農機である歩行型の管理機の後方斜視図及び側面図である。ミッションケース1が機体フレームの一部を構成している。ミッションケース1から突出する車軸2に車輪3が取り付けられている。車輪3の後方には、耕耘用の耕耘装置であるロータリ4が設けられている。
【0011】
ミッションケース1の上方には、機体フレーム側にエンジン6が搭載されている。エンジン6からミッションケース1内に構成されるトランスミッションには伝動部7を介して駆動力が伝動される。
【0012】
ミッションケース1には、後方斜め上方に向かって突出するハンドル8が取り付けられている。ハンドル8には、クラッチ操作レバー9が揺動自在に設けられている。クラッチ操作レバー9の揺動操作により、伝動部7に設けられたクラッチが操作され、エンジン6からトランスミッションへの駆動力の入り切りが操作される。エンジン6からトランスミッションへの駆動力の伝動によって、車輪3及びロータリ4が回転駆動される。
【0013】
ミッションケース1からは、後方に向かって操作レバー11が突設されている。変速レバー11の揺動操作によって走行速度(車輪3の駆動速度)の変速操作と、ロータリ4の駆動速度及び回転方向の変速操作を行うことができる。
【0014】
本歩行型管理機は、上記構造により、車輪3を接地させて作業者がハンドル8を持ち、エンジン6を作動させ、クラッチ操作レバー9によりエンジン6からトランスミッションに駆動力を伝動させ、変速レバー11により走行速度の変速操作と、ロータリ4の駆動速度及び回転方向の変速を行うことによって、車輪3の駆動により機体を走行させ、この機体の走行に伴って回転するロータリ4により耕耘作業を行うことができる。
【0015】
図3,図4に示されるように、エンジン6の側方にはマフラ12が設けられている。該マフラ12はエンジン6からの排気の導入管15によってエンジン6に支持されて取り付けられている。該マフラ12はマフラカバー13に覆われている。該マフラカバー13の前方からマフラ12の排気パイプ14が突出している。
【0016】
図3,図4に示されるように、エンジン6の上方には、燃料タンク16が設けられている。燃料タンク16は、エンジン6にボルト17を介して一体的に固定されたブラケット18の上部に取り付けられている。
【0017】
燃料タンク16の上方はボンネット19によって覆われている。該ボンネット19は、ブラケット18に取り付けられている。燃料タンク16の上面にはキャップ21を備えた給油口22が設けられている。キャップ21を外すことによって給油口22から燃料を供給することができる。
【0018】
上記ブラケット18は、図5,図6に示されるようにプレートからなる。ブラケット18は、燃料タンク16の底面を受けるタンク受け部23を備えている。該タンク受け部23は燃料タンク16の底面に概ね沿うように湾曲した平板からなる。
【0019】
タンク受け部23の左右両端部分には、下方に突出するエンジン取付部24が設けられている。各エンジン取付部24には取付孔26が設けられている。該取付孔26にボルト17を挿入し、該ボルト17をエンジン6のケースに螺合させることによって、図3,図4に示されるようにブラケット18がエンジン6に固定される。
【0020】
タンク受け部23の後端には、上方に向かって突出するタンク後端固定部27が設けられている。タンク受け部23の前端には、斜め下方に向かって延出するタンク前端固定部28が設けられている。タンク前端固定部28には、上方に向かって突出する取付ブラケット29が溶接等によって一体的に固定されている。
【0021】
図3,図4に示されるように、タンク後端固定部27に、燃料タンク16の後方に設けられたフランジ16aがボルト31によって固定される。図3,図4に示されるように、取付ブラケット29に燃料タンク16の前方に設けられたフランジ16bがボルト32によって固定される。
【0022】
上記のようにタンク前端固定部28とタンク後端固定部27とに固定されて、燃料タンク16がブラケット18におけるタンク受け部23の上面側に取り付け配置される。タンク受け部23には、燃料タンク16内の燃料の量を検出するフロート用の突出部を避けるように切欠部33が形成されている。タンク受け部23には、燃料タンク16における燃料の送出部をエンジン6側に向けて裸出させる孔部34が形成されている。
【0023】
ブラケット18のタンク受け部23には、左側に突出する略水平な排熱案内板36が溶接等によって一体的に設けられている。該排熱案内板36の左側には、図7に示されるように、マフラカバー13と燃料タンク16との間に位置する遮蔽板37が上昇傾斜しながら左側(外側)に突出して一体的に設けられている。
【0024】
図7に示されるように、遮蔽板37は、マフラカバー13より僅かに上方に突出し、平面視において外側端がマフラカバー13と重複する。ボンネット19のマフラ12側の端部は、遮蔽板37より機体中央側(内側)に位置している。これにより平面視においてマフラカバー13とボンネット19との間の隙間をブラケット18(遮蔽板37)が埋め、外観上の美観が向上する他、隙間からのゴミ等の混入が防止される。
【0025】
遮蔽板37の前部37A及び後部37Bは僅かに下方に折り曲げられている。前部37Aの前端部分37Fは、斜め前方に向かって突出するように折り曲げられている。後部37Bの後端部分37Rは、略垂直下方に向かって突出するように折り曲げられている。
【0026】
図7に示されるように、マフラ12の排熱は遮蔽板37に沿って外側に排出され、燃料タンク16に対して遮蔽される。またマフラ12の排熱は、遮蔽板37の前端部分37Fに沿って斜め前方に、後端部分37Rに沿って略鉛直下向きにも排出され、これによっても燃料タンク16に対して遮蔽される。特に前端部分37Fに沿って斜め前方に排出されることによって、排熱がボンネット19の前側に当たるという不都合が防止される。
【0027】
上記排熱案内板36の後方位置には、排熱案内板36の後端縁から所定距離離れた位置に補助遮蔽板38が配置されている。補助遮蔽板38は、遮蔽板37の後方右端部に一体的に設けられている。排熱案内板36と補助遮蔽板38との間に形成されるスペース35によってボルト17の締緩を容易に行うことができ、ブラケット18のエンジン6に対する脱着を容易に行うことができる。
【0028】
補助遮蔽板38は、マフラカバー13の後端部分に対応するエンジン6の後方における側端の上方部分を覆い、エンジン6と燃料タンク16との間に配置される。エンジン6の後方におけるマフラ12側の排熱は、図7に示されるように、補助遮蔽板38によって遮蔽板37側に案内され、マフラ12の排熱とともに燃料タンク16に対して遮蔽されて排出される。
【0029】
補助遮蔽板38がブラケット18に一体的に設けられるため、専用の補助遮蔽板を設ける必要がなく、部品点数が少なくて済む。なお排熱案内板36は、補助遮蔽板38より前方位置でエンジン6の側端上方部分を覆い、エンジン6からの排熱を遮蔽板37に向かって案内し、燃料タンク16に対して遮蔽する。
【0030】
図7に示されるようにブラケット18と燃料タンク16との間にはエア流通路39が形成される。図3に示されるように、エア流通路39を冷却用のエアが流通することによって燃料タンク16は下方側から冷却される。なおエア流通路39とマフラ12の排熱の流通路とは、遮蔽板37,排熱案内板36,補助遮蔽板38によって区切られる。
【0031】
このため上記燃料タンク16の冷却用のエアと排熱との混合が防止され、冷却効率が向上する。上記排熱の流通路にも図3に示されるようにエアが流通する。このエアによって前述のような排熱の排出が案内されるとともに、マフラ12等からの排熱や輻射熱の冷却が行われる。
【0032】
以上のようにブラケット18を介して燃料タンク16をエンジン6の上方に取り付けることによって、遮蔽板37,補助遮蔽板38,排熱案内板36によりエンジン6やマフラ12からの排熱が燃料タンク16に対して遮蔽され、且つエア流通路39によって燃料タンク16の冷却が効率よく行われる。これにより上記排熱による燃料タンク16の温度上昇が抑制される。
【0033】
なお上記のように遮蔽板37の外側端がマフラカバー13と重複し、ボンネット19のマフラ側の端部が、遮蔽板37より機体中央側(内側)に位置しているため、燃料タンク16に燃料を給油する際に、燃料が漏れた場合、ボンネット19を伝いマフラ側に流れる燃料は、遮蔽板37によって案内され、該燃料がマフラ12側(マフラカバー13)にかかることが防止される。
【0034】
上記のように遮蔽板37及び補助遮蔽板38は、排熱案内板36によってタンク受け部23に一体的に連接されている。このため図5,図6に示されるように、排熱案内板36にはプレス加工等によってリブ41が形成されている。該リブ41によって排熱案内板36の強度が向上し、ブラケット18の形状が安定する他、振動等を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】管理機の斜視図である。
【図2】管理機の側面図である。
【図3】エンジン,燃料タンク,マフラ,ボンネット部分の平面図である。
【図4】エンジン,燃料タンク,マフラ,ボンネット部分の側面図である。
【図5】ブラケットの平面斜視図である。
【図6】ブラケットの底面斜視図である。
【図7】図3のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0036】
6 エンジン
16 燃料タンク
12 マフラ
18 ブラケット
37 遮蔽板
38 補助遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)の上方に燃料タンク(16)が配置され、燃料タンク(16)の側方にマフラ(12)が配置された移動農機において、燃料タンク(16)をエンジン(6)に取り付けるブラケット(18)を設け、該ブラケット(18)がエンジン(6)に固定され、該ブラケット(18)を、エンジン(6)に固定された状態において上部に燃料タンク(16)を取り付ける構造とし、該ブラケット(18)に外側に向かって上昇傾斜した遮蔽板(37)を一体的に設け、該遮蔽板(37)を、マフラ(12)からの排熱を燃料タンク(16)に対して遮蔽するように、燃料タンク(16)とマフラ(12)との間に配置した移動農機。
【請求項2】
マフラ(12)の後端位置に対応するエンジン(6)の後方における側端上方部分を覆う補助遮蔽板(38)をブラケット(18)に一体的に設け、補助遮蔽板(38)を燃料タンク(16)の下方に配置した請求項1の移動農機。
【請求項3】
マフラ(12)の外周を覆うマフラカバー(13)を設け、遮蔽板(37)を、平面視において外側端がマフラカバー(13)と重複するように配置した請求項1又は2の移動農機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−302138(P2007−302138A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133528(P2006−133528)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】