説明

移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および、伝搬状況収集方法

【課題】基地局(マクロ基地局であるかホーム基地局であるかを問わない)内に在圏する移動局により周辺基地局(マクロ基地局であるかホーム基地局であるかを問わない)からの無線信号の伝搬状況と測定地点の位置情報とを取得することのできる、伝搬状況の遠隔測定に適した移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および、伝搬状況収集方法を提供する。
【解決手段】任意の基地局装置の通信エリアに在圏する移動局装置に周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況を測定させて測定結果を収集する手段と、上記移動局装置の位置情報を取得する手段とを備え、上記任意の基地局装置は上記周辺の基地局装置および上記移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、上記移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および、伝搬状況収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおける通信エリアの構築および管理には、通信エリア内の各地点での周辺基地局からの電波(無線信号)の到来状況(伝搬状況)を把握し、これらの測定地点の位置情報と対応付けられた伝搬状況データをもとに基地局パラメタを設定・変更する必要がある。なお、「伝搬状況」には、周辺基地局からの電波の受信強度、周波数、偏波、波形等の電波の状態およびそれらの時間的変動等を含めた各種の特性等、移動局側で測定できるあらゆる電波の状態を含むことができる。
【0003】
また、基地局間のハンドオーバを円滑に行う等の要請から通信エリアの周辺部は隣接する基地局の通信エリアと若干オーバーラップしており、複数の基地局からの無線信号が到来していることから、測定地点での周辺基地局としては、移動局が存在するとしたならば受信品質が最も高いものとして選択される通信エリア中心の単一の基地局のみではなく、隣接する単一もしくは複数の基地局が含まれる。更に、環境によっては隣接しない基地局からの無線信号が到来していることもある。
【0004】
従来、基地局の設置および管理は通信事業者側のオペレータが行っており、専用の測定装置を測定車に乗せて各地点で測定を行い、その測定結果に基づいて基地局パラメタを設定・変更していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TSG RAN #35 RP-070209 Lemesos, Cyprus, 6-9 March 2007(http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_35/Docs/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、基地局の設置および管理は通信事業者側のオペレータが行っており、全ての基地局が通信事業者の管理下にある場合には特に問題はなかったが、ホーム基地局(Home eNodeB)(非特許文献1等を参照。)と呼ばれるようなユーザが設置する基地局の出現により状況が変わってきている。ホーム基地局は、「Home NodeB」、「Femto Cell」「Access Point」等の名称で呼ばれることもある。
【0007】
すなわち、このようなホーム基地局は例えば一家に1台程度の導入が見込まれており、管理すべき通信エリアの数が膨大なものとなるため、従来のように通信事業者側のオペレータが巡回して伝搬状況を測定することは困難となる。
【0008】
また、ホーム基地局は家庭内等に設置されるものであるため、通信事業者側のオペレータがその中に立ち入って伝搬状況を測定することは困難である。そのため、ホーム基地局の通信エリアを覆うマクロ基地局(通信事業者側が設置する比較的規模の大きい基地局)がホーム基地局およびその通信エリア内の移動局に及ぼす影響を予測することができず、干渉等により受信品質の劣化等を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、基地局(マクロ基地局であるかホーム基地局であるかを問わない)内に在圏する移動局により周辺基地局(マクロ基地局であるかホーム基地局であるかを問わない)からの無線信号の伝搬状況と測定地点の位置情報とを取得することのできる、伝搬状況の遠隔測定に適した移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および、伝搬状況収集方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、任意の基地局装置の通信エリアに在圏する移動局装置に周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況を測定させて測定結果を収集する手段と、上記移動局装置の位置情報を取得する手段とを備え、上記任意の基地局装置は上記周辺の基地局装置および上記移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、上記移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定する移動通信システムを要旨としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移動通信システム、基地局装置、移動局装置、および、伝搬状況収集方法にあっては、基地局内に在圏する移動局により周辺基地局からの無線信号の伝搬状況と測定地点の位置情報とを取得することができ、伝搬状況の遠隔測定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかる移動通信システムの構成例を示す図である。
【図2】基地局(マクロ基地局、ホーム基地局)の構成例を示す図である。
【図3】移動局の構成例を示す図である。
【図4】実施形態の処理例を示す図(その1)である。
【図5】実施形態の処理例を示す図(その2)である。
【図6】実施形態の処理例を示す図(その3)である。
【図7】実施形態の処理例を示す図(その4)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0014】
<システム構成>
図1は本発明の一実施形態にかかる移動通信システムの構成例を示す図である。
【0015】
図1において、ネットワーク(NW:Network)1は、ユーザデータの制御を行うユーザ制御装置(S−GW:Serving GatewayもしくはUPE:User Plane Entity)、基地局の制御を行う基地局制御装置(MME:Mobility Management Entity)および更に上位のノードを含むものである。
【0016】
ネットワーク1には、有線インタフェース(S1 Interface)を介して複数のマクロ基地局(Macro eNodeB)2#1、2#2が接続されるとともに、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の有線回線を介してホーム基地局(Home eNodeB)3が接続されている。ここで、マクロ基地局2#1、2#2は通信事業者が設置する比較的規模の大きい基地局であり、ホーム基地局3は個人等が設置する小規模の基地局である。マクロ基地局2#1、2#2は設置地点を通信事業者側で把握することが可能であるが、ホーム基地局3はどこに設置されるかが不確定である。
【0017】
マクロ基地局2#1のセクタのカバーするエリアがマクロセル(Macro Cell)4#1であり、マクロ基地局2#2のセクタのカバーするエリアがマクロセル4#2である。隣接するマクロセル4#1とマクロセル4#2の間にはハンドオーバを円滑に行うために若干のオーバーラップ部分が設けられている。ホーム基地局3のカバーするエリアがホームセル(Home Cell)5である。
【0018】
ホームセル5には、ユーザの携帯する移動局(UE:User Equipment)6が在圏しているものとする。ここでは、移動局6はホーム基地局3から無線信号を受信可能であるとともに、マクロ基地局2#1から無線信号を受信可能であるものとする。
【0019】
図2はマクロ基地局2(2#1、2#2)およびホーム基地局3の構成例を示す図である。
【0020】
図2において、マクロ基地局2およびホーム基地局3は、隣接する基地局(マクロ基地局、ホーム基地局)もしくは上位のノードとネットワーク1を介して通信を行うネットワーク通信部21と、このネットワーク通信部21を介して他の基地局もしくは上位のノードから伝搬状況測定の要求を受けた場合に移動局6に対する報知信号を生成する報知信号生成部22と、生成された報知信号を空中線24を介して移動局6に向けて送信するとともに、移動局6から空中線24を介して測定結果である伝搬状況データ(移動局6に位置測定機能が存在する場合には位置データを伴う)を受信する移動局対向通信部23とを備えている。
【0021】
ここで、移動局6に対する報知信号には次のものが含まれる。
(1)どの基地局(接続基地局/他基地局)の伝搬状況を測定するのかを示す情報(例:基地局を特定するためのセルID)。なお、セル情報(セルID等)で指定する代わりに、周辺セルリストに乗っているすべてのセル情報について報告させるようにしてもよい。
(2)測定した伝搬状況データをどの基地局(接続基地局/他基地局/複数の基地局)に報告するのかを示す情報(例:基地局を特定するためのセルID)。
(3)隣接基地局への上りリンク(UL:Up Link)による伝搬状況データ(移動局に位置測定機能が存在する場合には位置データを伴う)の直接送信の可否。なお、上りリンクによる伝搬状況データの直接送信は位置推定が主たる目的であり、伝搬状況データに変えて所定パターンのデータとしてもよい。
(4)移動局が測定した伝搬状況データ(移動局に位置測定機能が存在する場合には位置データを伴う)を報告するトリガ(基地局からの指示/時間間隔/受信レベル閾値)。なお、測定タイミングと報告タイミングを別々に報知することで移動局6の負荷を分散させることもできる。
(5)隣接エリア測定用の特殊信号による測定の可否および必要なタイミング情報。
【0022】
また、図2において、マクロ基地局2およびホーム基地局3は、移動局対向通信部23で受信した伝搬状況データ(移動局6に位置測定機能が存在する場合には位置データを伴う)を保持する情報メモリ25と、移動局6に位置測定機能が存在しない場合に対応すべく、移動局6からの上りリンクの送信信号から位置推定を行い、推定した位置データを情報メモリ25に格納する位置推定部26と、情報メモリ25に格納された測定結果(伝搬状況データ、位置データ)をネットワーク通信部21を介して要求元に送信する測定結果送信部27とを備えている。
【0023】
図3は移動局6の構成例を示す図である。
【0024】
図3において、移動局6は、空中線61を介して基地局との間で通信を行う基地局対向通信部62と、この基地局対向通信部62で受信した信号から報知信号を読み出す報知信号読み出し部63と、報知信号で指示された内容に従って測定結果の報告先の基地局を切り替える報告先切り替え部64とを備えている。
【0025】
また、移動局6は、報知信号で指示された内容に従って所定の基地局の伝搬状況を測定する伝搬状況データ測定部65と、GPS(Global Positioning System)等により自装置の位置を測定する位置データ測定部66と、測定した伝搬状況データおよび位置データを保持する情報メモリ67と、報知信号で指示されたトリガの条件が満たされた場合に情報メモリ67に格納された測定結果(伝搬状況データ、位置データ)を基地局対向通信部62を介して報告先の基地局に送信する測定結果送信部68とを備えている。なお、測定結果送信部68は、報告するトリガが「基地局からの指示」である場合には、基地局からの指示を待って測定結果を送信する。また、報告するトリガが「時間間隔」である場合には、指定された時間間隔でイベント(Event)を内部的に発生させ、このイベントが発生したタイミングで測定結果を送信する。この場合、イベントが発生しても通信中である等により高負荷下にある状況では、報告タイミングをずらすことで負荷分散を図ることができる。また、報告するトリガが「受信レベル閾値」である場合、受信レベルが閾値に達した場合にイベントを内部的に発生させ、このイベントが発生したタイミングで測定結果を送信する。
【0026】
<処理例>
以下、上記の実施形態の処理例について説明する。なお、マクロ基地局2#1からホーム基地局3に対して測定の要求を行い、ホーム基地局3に在圏する移動局6によりマクロ基地局2#1からの伝搬状況を測定する場合を例にして説明するが、要求する側および要求を受ける側の基地局はいずれのタイプであってもよい。また、他の基地局を介さずに、上位のノードからの要求に応じて、もしくは自発的に、自基地局に在圏する移動局により任意の基地局の伝搬状況を測定することもできる。
【0027】
<処理例その1>
図4は実施形態の処理例その1を示す図である。
【0028】
図4において、マクロ基地局2#1側でホーム基地局3の通信エリア内でのマクロ基地局2#1からの無線信号の伝搬状況を知りたい場合、マクロ基地局2#1はネットワーク1を介してその旨をホーム基地局3に要求する(ステップS101、S102)。
【0029】
これを受け、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに在圏する移動局6に対してマクロ基地局2#1に関する測定データを送るよう報知する(ステップS103)。
【0030】
移動局6は、マクロ基地局2#1から送信されるパイロット信号のパスロス(Path loss)等の伝搬状況データを取得するとともに、GPS等により自装置の位置情報の測定を行い(ステップS104)、測定結果をホーム基地局3に送信する(ステップS105)。
【0031】
ホーム基地局3は受信した測定結果をネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に送信する(ステップS106、S107)。なお、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに複数の移動局が在圏する場合には、それらの全てから測定結果が収集された際にネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に測定結果を送信するようにすることができる。
【0032】
以上の処理により、マクロ基地局2#1側において、ホーム基地局3の通信エリア内のどの地点でマクロ基地局2#1からの電波がどの程度届いているかを把握することができる。
【0033】
<処理例その2>
図5は実施形態の処理例その2を示す図であり、移動局6に位置測定機能が存在しない場合の処理例である。
【0034】
図5において、マクロ基地局2#1側でホーム基地局3の通信エリア内でのマクロ基地局2#1からの無線信号の伝搬状況を知りたい場合、マクロ基地局2#1はネットワーク1を介してその旨をホーム基地局3に要求する(ステップS111、S112)。
【0035】
これを受け、ホーム基地局3は了解の旨(ACK:Acknowledge)をネットワーク1を介してマクロ基地局2#1に返送する(ステップS113、S114)。
【0036】
次いで、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに在圏する移動局6に対してマクロ基地局2#1に関する測定データを送るよう報知する(ステップS115)。この際、隣接するマクロ基地局2#1に対する上りリンクによる伝搬状況データの直接送信も指示する。
【0037】
移動局6は、先ず、マクロ基地局2#1から送信されるパイロット信号のパスロス等の伝搬状況データを取得する(ステップS116)。
【0038】
次いで、測定結果データを隣接基地局であるマクロ基地局2#1に上りリンクにより直接送信する(ステップS117)。マクロ基地局2#1では移動局6から直接送信される無線信号の到来角および受信強度等から移動局6の位置を推定する。直接送信が正常にマクロ基地局2#1で受信された場合には、マクロ基地局2#1から移動局6に了解の旨(ACK)が返される(ステップS118)。なお、移動局6は了解の旨(ACK)が返されなくても処理を続行する。
【0039】
次いで、移動局6は測定結果をホーム基地局3に送信し(ステップS119)、ホーム基地局3は受信した測定結果をネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に送信する(ステップS120、S121)。なお、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに複数の移動局が在圏する場合には、それらの全てから測定結果が収集された際にネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に測定結果を送信するようにすることができる。
【0040】
なお、移動局6からマクロ基地局2#1に対して上りリンクにより測定結果を直接送信した上に、更にホーム基地局3およびネットワーク1を介して測定結果をマクロ基地局2#1に送信するのは、上りリンクによる直接送信が正常に届くとは限らないため、測定結果の伝達を確実にするためである。また、上りリンクによる伝搬状況データの直接送信は位置推定が主たる目的であるため、伝搬状況データに変えて所定パターンのデータとしてもよく、その場合は移動局6からホーム基地局3およびネットワーク1を介して測定結果をマクロ基地局2#1に送信することは必須となる。
【0041】
以上の処理により、マクロ基地局2#1側において、ホーム基地局3の通信エリア内のどの地点でマクロ基地局2#1からの電波がどの程度届いているかを把握することができる。
【0042】
<処理例その3>
図6は実施形態の処理例その3を示す図であり、隣接エリア測定用の特殊信号を用いることにより伝搬状況測定の精度を高めたものである。すなわち、移動局は測定を主目的としたものではなく、通信事業者側のオペレータが使用する専用の測定装置に比べて伝搬状況データの測定精度は低いため、通信エリアの管理に使用するには十分でない場合がある。そこで、測定される側の基地局が協調し、隣接エリア測定用の特殊信号を送信することにより測定の精度を高めている。
【0043】
図6において、マクロ基地局2#1側でホーム基地局3の通信エリア内でのマクロ基地局2#1からの無線信号の伝搬状況を知りたい場合、マクロ基地局2#1はネットワーク1を介してその旨をホーム基地局3に要求する(ステップS131、S132)。
【0044】
これを受け、ホーム基地局3は測定のタイミング情報をネットワーク1を介してマクロ基地局2#1に通知する(ステップS133、S134)。
【0045】
次いで、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに在圏する移動局6に対してマクロ基地局2#1に関する測定データを送るよう報知する(ステップS135)。この際、隣接エリア測定用の特殊信号による測定である旨とタイミング情報も指示する。
【0046】
マクロ基地局2#1は、ホーム基地局3から通知されたタイミング情報に従って、送信電力を上げた隣接エリア測定用の特殊なパイロット信号を複数回送信する(ステップS136)。移動局6は、ホーム基地局3から通知されたタイミング情報に合わせて、マクロ基地局2#1から送信されるパイロット信号を受信し(ステップS137)、その際のパスロス等の統計データから伝搬状況データを取得する。送信電力が通常より大きい上に複数回の測定が可能であるため、測定精度を高めることができ、通常では測定できない低いレベルの基地局情報も測定できるようになる。また、移動局6はGPS等により自装置の位置情報の測定を行う。そして、測定結果をホーム基地局3に送信する(ステップS138)。
【0047】
ホーム基地局3は受信した測定結果をネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に送信する(ステップS139、S140)。なお、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに複数の移動局が在圏する場合には、それらの全てから測定結果が収集された際にネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に測定結果を送信するようにすることができる。
【0048】
以上の処理により、マクロ基地局2#1側において、ホーム基地局3の通信エリア内のどの地点でマクロ基地局2#1からの電波がどの程度届いているかを高い精度で把握することができる。
【0049】
<処理例その4>
図7は実施形態の処理例その4を示す図であり、処理例その3と同様に隣接エリア測定用の特殊信号により伝搬状況測定の精度を高めたものである。ただし、隣接エリア測定用の特殊なパイロット信号を複数回送信するのではなく、所定期間にわたって特別なコードを連続して送信し続けるようにしたものである。
【0050】
図7において、マクロ基地局2#1側でホーム基地局3の通信エリア内でのマクロ基地局2#1からの無線信号の伝搬状況を知りたい場合、マクロ基地局2#1はネットワーク1を介してその旨をホーム基地局3に要求する(ステップS141、S142)。
【0051】
これを受け、ホーム基地局3は了解の旨(ACK)をネットワーク1を介してマクロ基地局2#1に通知する(ステップS143、S144)。
【0052】
次いで、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに在圏する移動局6に対してマクロ基地局2#1に関する測定データを送るよう報知する(ステップS145)。この際、隣接エリア測定用の特殊信号による測定である旨も指示する。
【0053】
マクロ基地局2#1は、送信電力を上げた隣接エリア測定用の特別なコードを連続して送信する(ステップS146)。移動局6は、マクロ基地局2#1から送信される信号を複数回受信し(ステップS147)、その際のパスロス等の統計データから伝搬状況データを取得する。送信電力が通常より大きい上に複数回の測定が可能であるため、測定精度を高めることができ、通常では測定できない低いレベルの基地局情報も測定できるようになる。更に、マクロ基地局2#1からの信号は連続して送信されるため、タイミングを合わせる必要はなく、移動局6側の自由なタイミングで受信を行うことができる。また、移動局6はGPS等により自装置の位置情報の測定を行う。そして、測定結果をホーム基地局3に送信する(ステップS148)。
【0054】
ホーム基地局3は受信した測定結果をネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に送信する(ステップS149、S150)。なお、ホーム基地局3は、自基地局の通信エリアに複数の移動局が在圏する場合には、それらの全てから測定結果が収集された際にネットワーク1を介して要求元のマクロ基地局2#1に測定結果を送信するようにすることができる。
【0055】
以上の処理により、マクロ基地局2#1側において、ホーム基地局3の通信エリア内のどの地点でマクロ基地局2#1からの電波がどの程度届いているかを高い精度で把握することができる。
【0056】
<総括>
以上説明したように、本発明の実施形態によれば次のような利点がある。
(1)各基地局の通信エリア内に在圏する移動局により伝搬状況の測定が行えるため、通信事業者側の負担が軽減できる。
(2)家庭内等に設置されるホーム基地局の通信エリア内においても伝搬状況の測定が可能となる。
(3)測定される側の基地局が協調することで測定の精度を高めることができる。
(4)総じて、周辺セルを含めた伝搬状況やエリアの重なりを効率的に把握することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0058】
本国際出願は2007年4月27日に出願された日本国特許出願第2007-120264号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0059】
1 ネットワーク
2、2#1、2#2 マクロ基地局
21 ネットワーク通信部
22 報知信号生成部
23 移動局対向通信部
24 空中線
25 情報メモリ
26 位置推定部
27 測定結果送信部
3 ホーム基地局
4#1、4#2 マクロセル
5 ホームセル
6 移動局
61 空中線
62 基地局対向通信部
63 報知信号読み出し部
64 報告先切り替え部
65 伝搬状況データ測定部
66 位置データ測定部
67 情報メモリ
68 測定結果送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の基地局装置の通信エリアに在圏する移動局装置に周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況を測定させて測定結果を収集する手段と、
上記移動局装置の位置情報を取得する手段とを備え、
上記任意の基地局装置は上記周辺の基地局装置および上記移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、上記移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動通信システムにおいて、
上記移動局装置に自装置の位置を測定させ、上記伝搬状況の測定結果とともに収集することを特徴とする移動通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動通信システムにおいて、
上記移動局装置から上りリンクによる直接送信を行わせ、隣接する基地局装置においてその無線信号により上記移動局装置の位置推定を行うことを特徴とする移動通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の移動通信システムにおいて、
隣接する基地局装置のうちの一方の第1の基地局装置から他方の第2の基地局装置に対し、当該第2の基地局装置の通信エリアに在圏する移動局装置に上記第1の基地局装置からの無線信号の伝搬状況の測定を行わせ、測定結果を自装置に報告するよう指示する手段と、
上記第2の基地局装置から測定結果を上記第1の基地局装置において取得する手段とを備えたことを特徴とする移動通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の移動通信システムにおいて、
上記第1の基地局装置は、上記移動局装置から上りリンクによる直接送信で測定結果を取得する手段を備えたことを特徴とする移動通信システム。
【請求項6】
自装置の通信エリアに在圏する移動局装置に周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況の測定を命じる報知信号を生成して送信する手段と、
上記移動局装置から伝搬状況の測定結果を受信する手段とを備え、
自装置から上記周辺の基地局装置および上記移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、上記移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定することを特徴とする基地局装置。
【請求項7】
所定の基地局装置から周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況の測定を命じる報知信号を受信する手段と、
周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況の測定を行う手段と、
上記基地局装置に対して伝搬状況の測定結果を送信する手段とを備え、
上記所定の基地局装置は上記周辺の基地局装置および当該移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、当該移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定することを特徴とする移動局装置。
【請求項8】
任意の基地局装置の通信エリアに在圏する移動局装置に周辺の基地局装置からの無線信号の伝搬状況を測定させて測定結果を収集する工程と、
上記移動局装置の位置情報を取得する工程とを備え、
上記任意の基地局装置は上記周辺の基地局装置および上記移動局装置に対してタイミング信号を通知し、上記周辺の基地局装置は通知されたタイミング信号に基づいて測定用のパイロット信号を複数回送信し、上記移動局装置は上記パイロット信号から伝搬状況を測定することを特徴とする伝搬状況収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253811(P2012−253811A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182662(P2012−182662)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2009−512983(P2009−512983)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】