説明

移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置の設定領域外での運用を制限する方法、情報処理装置

【課題】 移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置の設定領域外での運用を制限する。
【解決手段】 移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置において、記憶手段に1つ以上の基地局識別子を格納しておき、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれとも一致しない場合、時間をカウントし、そのカウント時間が設定値に達したら通信を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウイルコム、イーモバイル、NTTドコモなどの通信事業者が運営する高速移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置に関し、とくに、当該情報処理装置があらかじめ設定された領域の外で運用されるのを適宜に制限する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速移動通信網が整備され、自動車や電車に乗っていてもパソコンを無線通信によりインターネット接続できるようになった。通信事業者は、利用者がどこにいても高速移動中でも安定に無線インターネット接続できる環境を拡大すべく、通信技術の改良と、基地局網の整備に投資を続けている。
【発明の開示】
【0003】
===発明のきっかけ===
発明者は、高速移動通信技術が想定している本来の用途とは少し相違する移動通信の応用を思いついた。具体的には業務用の可搬型通信カラオケ装置である。これは、たとえば温泉旅館などにおいて用いられる通信カラオケ装置である。コンピュータ・操作パネル・ディスプレイ・スピーカーシステムのすべてが一体化され、車輪とハンドルが付いていて客室への搬入・搬出が簡単に行えるようになっている(特許第3115235号公報)。従来のものは、たとえば週に1回、電話回線を介してホスト装置に接続し、運用履歴をアップロードするとともに新曲データをダウンロードしている。
【0004】
業務用可搬型通信カラオケ装置とホスト装置との通信を上記した移動通信網を利用して行うように構成すれば、温泉旅館などの運用現場においてホスト装置との通信に関する環境整備の煩わしさを完全になくすことができる。この利用形態は、移動通信網を単に無線接続手段として利用しているのみであるが、温泉旅館内に無線LANを設備する場合と比べてもその優位性は明らかである。
【0005】
業務用可搬型通信カラオケ装置については、これが盗難され、他人が他所で使用する心配がある。その対策として、一定期間以上ホスト装置との通信が行われないと、あるいはIPアドレスが代わると、カラオケ装置のコンピュータの制御によりカラオケ装置として機能しない仕組みになっている(特許第3196166号公報、特開平2004−109259号公報)。
【0006】
移動通信網の基地局と無線接続するようにカラオケ装置を構成した場合、これが盗難されてデータ通信カードが取り外され、他人が他所で使用する心配がある。したがって、既存のカラオケ装置と同様に、たとえば一定期間以上ホスト装置との通信が行われないと、カラオケ装置のコンピュータの制御によりカラオケ装置として機能しないように構成すればよいであろう。
【0007】
さらに進んで、発明者は、移動通信網の基地局と無線接続するようにカラオケ装置を構成した場合、いつもの運用場所である温泉旅館から夏場はキャンプ場のロッジに持ち出して利用したり、冬場はスキー場のレストハウスに持ち出して利用するという使い道があることに思い至った。そのような持ち出し期間においても、移動通信網の基地局と無線接続するのであるから、週1回のホスト装置との通信を行うことが可能である。固定電話回線に接続するタイプや旅館内の無線LANに接続するタイプでは実現できないことである。
【0008】
しかしながら、このような積極的な使い道についても、カラオケ装置が盗難されて他人が他所で使用するという不測の事態を想定しておく必要があると考えた。そして、カラオケ装置があらかじめ設定した領域外で運用されることに制限を加える発明を創作した。
【0009】
業務用の可搬型通信カラオケ装置についての上述した課題は、アーケードゲーム装置や写真シール撮影印刷装置あるいは自動販売機などの他の分野の情報処理装置にも当てはまる可能性があり、以下に詳述する本発明は可搬型通信カラオケ装置とは異なるこれらの類似装置にも有用に適用することができる。
【0010】
===発明の核心===
この発明の核心とするところは、移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置において、記憶手段に1つ以上の基地局識別子を格納しておき、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれとも一致しない場合に時間カウンタが停止中であれば時間カウンタを計時開始させ、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれかと一致した場合に時間カウンタをクリアして停止させ、時間カウンタの計時値が設定値に達した場合に通信を禁止することにある。
【0011】
===発明の効果===
この発明によれば、移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置について、あらかじめ設定した領域以外に持ち出して運用する場合、ある程度の間はホスト装置との通信が可能であるものの、限度を超えて継続使用することができなくなり、特定の運用場面において有用性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施例による情報処理装置の概略図である。
【図2】同上実施例におけるコントローラ4の動作のフローチャートである。
【実施例】
【0013】
以上の説明から明らかなように、この発明の本質は、たとえば業務用の可搬型通信カラオケ装置におけるカラオケ機能を実現するための固有なシステム構成とは関係しないものである。また、アーケードゲーム装置や写真シール撮影印刷装置あるいは自動販売機などの他の分野の情報処理装置に本発明を適用する場合においても、それら装置固有のシステム構成と本発明とは格別な結びつきはない。そこで説明の冗長性を回避するために、この発明の実施例は「移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置」として抽象化したレベルで説明することとする。
【0014】
図1はこの発明に係る情報処理装置を示している。この装置は、通信装置1と、コンピュータ2とからなる。通信装置1は、コンピュータ2の制御下において、ウイルコム、イーモバイル、NTTドコモなどの通信事業者が運営する高速移動通信網の基地局と無線接続し、インターネットやVPNを通じて外部のホスト装置(図示していない)とコンピュータ2とのデータ通信を仲介する。
【0015】
通信装置1は、不揮発性のメモリ3を有し、このメモリ3に複数個の基地局識別子ID1〜IDnが格納されている。この発明においては、ある特定の地理的領域内において情報処理装置が通常運用されることを前提としている(その領域が複数の異なる領域である場合も排除しない)。この通常運用される領域において通信装置1が通信可能な基地局は限られている。その限定された基地局の識別子がメモリ3に格納された基地局識別子ID1〜IDnである。もちろんメモリ3に1つしか基地局識別子が格納されない場合もあり得る。
【0016】
通信装置1がこれら限定された領域内の基地局と通信する場合、基地局からの受信パケットには基地局識別子ID1〜IDnのいずれかが付されていることになる。しかし、実施例の情報処理装置が想定した領域の外に持ち出され、高速移動通信網の基地局と通信する場合、受信パケットに付されている基地局識別子は、メモリ3に格納された基地局識別子ID1〜IDnのいずれとも異なる。
【0017】
図2のフローチャートに通信装置1のコントローラ4が行う処理の概要を示している。コントローラ4は、基地局からパケットを受信した際、受信パケットに付された基地局識別子がメモリ3に格納された基地局識別子ID1〜IDnのいずれかと一致するか、いずれとも一致しないかを逐次判断している。基地局識別子ID1〜IDnのいずれとも一致しない場合、メモリ3に設定された日時レジスタ5に現在日時が書き込まれているか否かを確認し、書き込まれていない場合にのみ現在日時を日時レジスタ5に書き込む。また基地局識別子ID1〜IDnのいずれかと一致した場合、日時レジスタ5をクリアする。
【0018】
つまり、コントローラ4は、一般的なマイコンと同様に周知慣用のカレンダー時計を備えており、つねに日時をカウントしている。そして、コントローラ4は、受信パケットの基地局識別子が基地局識別子ID1〜IDnのいずれかと一致した場合に日時レジスタ5をクリアするところ、これは前述した「時間カウンタをクリアして停止させる」ことに相当する処理である。また、コントローラ4は、受信パケットの基地局識別子が基地局識別子ID1〜IDnのいずれとも一致しない場合、メモリ3に設定された日時レジスタ5に現在日時が書き込まれているか否かを確認し、書き込まれていない場合にのみ現在日時を日時レジスタ5に書き込むところ、これは前述した「時間カウンタが停止中であれば時間カウンタを計時開始させる」ことに相当する処理である。
【0019】
コントローラ4は、上記の処理と並列的に、日時レジスタ5に日時が書き込まれている場合(すなわち時間カウンタが経時中である場合)、現在日時が更新されるごとに、現在日時と日時レジスタ5の書き込み日時とを差分に相当する時間と設定値とを比較し、差分時間が設定値に達した場合は、その時点で基地局との通信を停止し、コンピュータ2に通信を停止したことを通知する。前記の設定値は、コントローラ4のプログラム中に記述しておいたり、あるいはメモリ3に格納しておく。以上の時間計測の処理については、実施例として説明した処理と実質的に同一の機能をいろいろな回路方式やマイコン処理により容易に実現可能であり、当業者に自明のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置において、記憶手段に1つ以上の基地局識別子を格納しておき、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれとも一致しない場合に時間カウンタが停止中であれば時間カウンタを計時開始させ、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれかと一致した場合に時間カウンタをクリアして停止させ、時間カウンタの計時値が設定値に達した場合に通信を禁止することを特徴とする方法。
【請求項2】
移動通信網を通じてホスト装置と無線通信する情報処理装置であって、1つ以上の基地局識別子を格納した記憶手段と、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれとも一致しない場合に時間カウンタが停止中であれば時間カウンタを計時開始させる手段と、受信パケットに付された基地局識別子が記憶手段に格納された基地局識別子のいずれかと一致した場合に時間カウンタをクリアして停止させる手段と、時間カウンタの計時値が設定値に達した場合に通信を禁止する手段を備えたことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114812(P2011−114812A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271967(P2009−271967)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】