説明

移植機

【課題】移植機で植付装置による点植作業と散布作業を同期するには、従来から、植付装置を駆動する駆動軸間に複雑なリンク機構等を組み込む必要があり、これを、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させ圃場の植付溝まで搬送して点植する移植機に適用するには、大きな設計変更が必要で製造コストが増加する、という問題があった。
【解決手段】点植に合わせ散布装置7による散布を開始させる起動信号107を発信する起動信号発信手段109と、散布を停止させる停止信号108を発信する停止信号発信手段110と、前記起動信号107と停止信号108に基づき散布装置7の粒状物繰出部63の駆動を制御する繰出制御手段92を備えて、点植と粒状物散布を同期させ、散布停止時には、粒状物繰出部63で粒状物を移送する搬送部32a又は32bを、次の散布開始まで、粒状物を受入可能な待機位置121aに保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置と、点植した苗の近傍に薬剤や肥料等の粒状物を散布する散布装置とを備えた移植機に関し、特に、点植した苗の近傍に正確な量の粒状物を散布可能な、粒状物の繰出制御構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、苗の植付装置に加えて、薬剤や肥料等の粒状物を散布する散布装置を移植機に搭載し、植付装置による点植作業と同時に、点植した苗の近傍に粒状物を散布する散布作業を並行して行うことによって、作業の効率化を図る技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−51827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、点植作業と散布作業とを同期して行うには、前記の従来技術では、植付装置を駆動するPTO軸等の複数の駆動軸間に複雑なリンク機構や間欠駆動装置等を組み込む必要があり、この技術を、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置を備えた構造の本発明に係わる移植機に適用するには、大きな設計変更が必要となり、製造コストが増加すると共にメンテナンス性も悪化する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置と、点植した苗の近傍に粒状物を散布する散布装置とを備えた移植機において、苗の点植に合わせて散布装置による散布を開始させる起動信号を発信する起動信号発信手段と、散布装置による散布を停止させる停止信号を発信する停止信号発信手段と、前記起動信号と停止信号に基づいて前記散布装置の粒状物繰出部の駆動を制御する繰出制御手段を備えることにより、苗の点植と粒状物の散布を同期可能にすると共に、散布停止時には、前記粒状物繰出部で粒状物を移送する搬送部を、次の散布開始時まで、所定量の粒状物を受け入れ可能な待機位置に保持する繰出制御構成としたものである。
請求項2においては、前記粒状物繰出部は、搬送部として外周に繰出凹部を形成した繰出回転体を有し、粒状物を繰り出し中の繰出凹部は、繰出回転体の最下端近傍に到達すると自動的に停止する繰出制御構成とするものである。
請求項3においては、前記起動信号発信手段は、前記把持ディスク対に設けた起動マーカと、該起動マーカを検知して起動信号を発信する起動センサとを有するものである。
請求項4においては、前記起動マーカは、前記把持ディスク対の苗挟持位置近傍に設けるものである。
請求項5においては、前記起動センサは、前記起動マーカを検知する検知体を有し、該検知体が前記把持ディスク対上の起動マーカの動きに追従可能な検知体支持手段を備えるものである。
請求項6においては、前記検知体は、前記検知体支持手段にガイド体を介して取り付け、該ガイド体は、前記把持ディスク対の外側面に接するガイド部と、該ガイド部に連設され前記起動マーカの回動線上から離間して検知体を収納する収納部とから成るものである。
請求項7においては、前記停止信号発信手段は、散布装置との連動部位に設けた停止マーカと、該停止マーカを検知して停止信号を発信する停止センサとを有するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置と、点植した苗の近傍に粒状物を散布する散布装置とを備えた移植機において、苗の点植に合わせて散布装置による散布を開始させる起動信号を発信する起動信号発信手段と、散布装置による散布を停止させる停止信号を発信する停止信号発信手段と、前記起動信号と停止信号に基づいて前記散布装置の粒状物繰出部の駆動を制御する繰出制御手段を備えることにより、苗の点植と粒状物の散布を同期可能にすると共に、散布停止時には、前記粒状物繰出部で粒状物を移送する搬送部を、次の散布開始時まで、所定量の粒状物を受け入れ可能な待機位置に保持する繰出制御構成としたので、前記把持ディスク対によって搬送される苗の植付溝への点植と、散布装置の粒状物繰出部から繰り出された薬剤や肥料等の粒状物の植付溝への落下とのタイミングの調整が可能となり、該タイミングを略一致させて苗の点植位置近傍に、大きな設計変更、製造コストの増加、メンテナンス性の低下を伴うことなく粒状物を散布することができる。加えて、粒状物がその大きさや形状等のために搬送部に落入・装填されにくい場合でも、搬送部を待機位置に十分な時間止めて該搬送部内に所定量の粒状物を確実に装填させることができ、各点植位置に繰り出す粒状物の量を一定にすることができるため、粒状物が不足して成育促進効果や殺虫効果等が十分に発揮できなかったり、逆に、粒状物が過剰となって苗の成育が阻害されるのを、防止することができる。
請求項2においては、前記粒状物繰出部は、搬送部として外周に繰出凹部を形成した繰出回転体を有し、粒状物を繰り出し中の繰出凹部は、繰出回転体の最下端近傍に到達すると自動的に停止する繰出制御構成とするので、散布停止時には、粒状物繰り出し中の繰出凹部は常に真下を向いており、前記待機位置にて装填された粒状物を自重で全て落下させて繰出凹部内の粒状物の残留をなくすことができ、簡単な制御構成によって正確な量の粒状物を下方から確実に繰り出すことができるため、散布装置に必要な部品や構造を簡素化し、移植機の製造コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3においては、前記起動信号発信手段は、前記把持ディスク対に設けた起動マーカと、該起動マーカを検知して起動信号を発信する起動センサとを有するので、別途特殊な装置を用いることなく簡単な構成で起動信号を発信することができ、部品数減少による製造コストの低減と、組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項4においては、前記起動マーカは、前記把持ディスク対の苗挟持位置近傍に設けるので、起動マーカを、苗の挟持位置の目安とする挟持マーカと兼用させることができ、部品点数を減少させて部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項5においては、前記起動センサは、前記起動マーカを検知する検知体を有し、該検知体が前記把持ディスク対上の起動マーカの動きに追従可能な検知体支持手段を備えるので、前記把持ディスク対が苗を損なわないようにゴム等の弾性体から成り、回転方向に対して把持ディスク対が左右にぶれやすい場合や、起動マーカが把持ディスク対上に凸状に設けられている場合であっても、前記検知体は接近してくる起動マーカの動きに追従することができ、検知体が、起動マーカから大きく離間することなく、起動マーカを確実に検知して苗の点植タイミングを正確に前記繰出制御手段に伝え、粒状物の散布精度を更に向上させることができる。
請求項6においては、前記検知体は、前記検知体支持手段にガイド体を介して取り付け、該ガイド体は、前記把持ディスク対の外側面に接するガイド部と、該ガイド部に連設され前記起動マーカの回動線上から離間して検知体を収納する収納部とから成るので、起動マーカが接近すると検知体はガイド体と一緒に外方に押し出され、検知体が起動マーカに直接衝突するのを防止することができ、検知体の損傷を防いで検知体の交換寿命を延ばし、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項7においては、前記停止信号発信手段は、散布装置との連動部位に設けた停止マーカと、該停止マーカを検知して停止信号を発信する停止センサとを有するので、別途特殊な装置を用いることなく簡単な構成で停止信号を発信することができ、部品数減少による製造コストの低減と、組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係わる移植機の全体構成を示す移植機の側面図、図2は同じく平面図、図3は移植機前部の斜視図、図4は把持ディスク対周辺の斜視図、図5は起動信号発信装置周辺の斜視図、図6は起動センサ周辺の周方向断面図、図7は別形態の起動センサ周辺の周方向断面図、図8は薬剤繰出装置の側面一部断面図、図9は停止信号発信装置周辺の背面一部断面図、図10は繰出制御機構を示すブロック図、図11はモータの起動・停止手順を示すタイムチャート、図12はモータの回転と繰出ロールの回動との関係を示す説明図である。
【0007】
まず、本発明に係わる移植機1の全体構成について、図1、図2により説明する。
該移植機1においては、前輪3・3と後輪4・4が車体フレーム2の前後に配置され、該車体フレーム2の後部にはエンジン5が搭載され、同じく車体フレーム2の前後略中央部には運転席6が配設されている。該運転席6の前方で、前記車体フレーム2を構成する左右のサイドフレーム2L・2R間には、本発明に係わる薬剤散布装置7と植付装置8とが前後に配設されている。
【0008】
前記エンジン5の下方には、該エンジン5からの動力を変速するトランスミッション9が配設され、該トランスミッション9の出力軸9aには、チェーンケース10の後部が、出力軸9aの軸受け部材を介して揺動自在に支持されている。そして、該チェーンケース10の前部には、図示せぬ軸受けを介して後輪車軸11・11が支持され、該後輪車軸11・11でチェーンケース10からの突出部には、前記後輪4・4が後輪車軸11・11と一体回転可能に装着されている。更にチェーンケース10内には、前記出力軸9aに設けられたスプロケット12と、後輪車軸11・11に設けられたスプロケット14と、これらスプロケット12とスプロケット14間を巻回するチェーン13が内包されている。これにより、前記エンジン5からの動力はトランスミッション9で変速された後、出力軸9aからスプロケット12、チェーン13、スプロケット14を介して、後輪車軸11・11に伝達され、該後輪車軸11・11に固設された前記後輪4を上下揺動自在に駆動できるようにしている。
【0009】
前記エンジン5の更に後方の車体フレーム2には、側面視L字状の取付フレーム15の前端が固設され、該取付フレーム15の後端にはウェイト16が係止されると共に、車体フレーム2の前端には平面視L字状の把手33が突設されている。ここで、移植機1が畝端に到達し方向転換する際には、作業者が前記把手33を持って移植機1前部を持ち上げ、その状態で後輪4・4を回動中心として移植機1を旋回させるようにしているが、前記ウェイト16を配置したことにより、移植機1の重心を後輪4・4側に近づけることができ、方向転換に必要な力が小さくて済み、移植作業の作業効率を高めることができる。なお、前記サイドフレーム2L・2Rの前部は、いずれも前フレーム23の外側面に固設されており、該前フレーム23の上部には、前記ウェイト16の予備のウェイトを置くための補助ウェイト台22が立設されている。
【0010】
また、前記サイドフレーム2L・2Rの前端は外側方に延出され、該延出部分には左右のハンドル部2a・2bが形成されている。そして、前記前フレーム23には垂直軸24が水平方向に左右回動可能に軸支され、該垂直軸24から前方には突軸25が突設され、該突軸25には、正面視門型の揺動アーム26が、左右に横設する連結部26bの左右略中央部のボス部26aを中心にして、上下方向に揺動可能に軸支されている。更に、該揺動アーム26の両端に垂設された車軸支持パイプ26cには、車軸支持コラム27が上下摺動可能に内挿されており、該車軸支持コラム27を上下動させた後にボルト29によって固定することで、車軸支持コラム27の下端に固設された前輪車軸28・28の高さを自由に変更し、移植機1の車高を点植作業に適した高さに設定できるようにしている。
【0011】
前記運転席6より前方のサイドフレーム2L・2Rの両外側には、後述する覆土輪37・37を覆うフェンダ17L・17Rと、左右のステップ18L・18Rとが後から順に連設され、このうちの左ステップ18Lには左旋回ペダル19Lが配置され、右ステップ18Rには右旋回ペダル19Rとクラッチペダル21が配設されている。そして、これら左右の旋回ペダル19L・19Rは、リンク機構30・30を介して前記揺動アーム26の連結部26bに連結されており、作業者が旋回ペダル19L・19Rの一方を踏み込み操作することで、一方の車軸支持コラム27が後方に引かれて、揺動アーム26を垂直軸24を中心に左右に回動させ、踏み込んだ側に前輪3・3が向きを変えるように構成されている。
【0012】
なお、運転席6の右部には主変速レバー20が配設され、該主変速レバー20は図示せぬリンク機構を介して前記ミッションケース9内の変速装置に連結連動されている。サイドフレーム2L・2Rで運転席6の下方からは、左右に支持ステー38・39が突設され、それぞれに苗箱コンテナ40と苗揃え箱41を載置できるようにしている。
【0013】
以上のような構成において、前記主変速レバー20やクラッチペダル21等を操作することにより後輪4・4を駆動し、左右の旋回ペダル19L・19R等を操作することにより前輪3・3を操舵して圃場を移動しながら、苗揃え箱41から取り出した苗を前記植付装置8に供給して点植することができ、同時に、本発明に係わる繰出制御構成により前記薬剤散布装置7から薬剤を自動的に繰り出し、点植作業と薬剤散布作業とを同期して行うことができるのである。
【0014】
次に、前記植付装置8について、図1乃至図3により説明する。
該植付装置8は、前記前フレーム23下部から後方に開いたU字状の支持アーム42によって支持された一対の円板35L・35Rを、平面視で後方に開いた略ハ字状をなすように取り付けて成る作溝ディスク対35と、該作溝ディスク対35の後方に若干の間隔をあけて設けられる把持ディスク対36と、該把持ディスク対36をチェーン機構43を介して駆動する左右の覆土輪37L・37Rとによって構成される。
【0015】
このうちの把持ディスク対36については、ゴム等の弾性体から成る一対の苗搬送円板36L・36Rから構成され、前記作溝ディスク対35の場合とほぼ同様、後方に開いた略ハ字状に配置されている。ここで、前記前フレーム23下部から後方に、左右の支持ステー44L・44Rが互いに平行に延設されており、該支持ステー44L・44R間に支軸45が回動可能に介設され、該支軸45に前記把持ディスク対36が固設され、更に、この支軸45は、前記覆土輪37L・37Rを軸支するためサイドフレーム2L・2Rに回動可能に設けた覆土輪軸51L・51Rと、前記チェーン機構43を介して連結連動されている。これにより、覆土輪37L・37Rの回転動力がチェーン機構43から支軸45に伝達され、該支軸45を中心にして、把持ディスク対36が矢印65の方向に回転駆動される。
【0016】
前記支持ステー44L・44Rからは、機体内方に左右の支持アーム46L・46Rがそれぞれ突設され、該支持アーム46L・46Rの内側端には固定円板47L・47Rがそれぞれ固設されており、該固定円板47L・47Rからは、左右のガイドフック48L・48Rが略上方に放射状に延設されると共に、該ガイドフック48L・48Rよりも前方から把持ディスク対36の略下方にかけては、所定角度をあけて複数本のガイドバー49・49・・・が、前記支軸45を中心にして放射状に延設されている。
【0017】
前記ガイドフック48L・48Rの先端には、鉤状のガイド部48La・48Raが形成され、該ガイド部48La・48Raは、前記苗搬送円板36L・36Rの外周縁が入り込んで通過可能な形状に形成されると共に、左右のガイド部48La・48Ra間は、所定間隔開けて配置されている。そして、前記ガイドバー49の先部には、ガイドローラ50が回動可能に外嵌され、左右に配設されたこれらのガイドローラ50・50・・・によって、前記苗搬送円板36L・36Rの外周縁が、左右から挟み込まれつつ前方に回転されるようにしている。これにより、回転する苗搬送円板36L・36Rの外周縁は、上部ではガイド部48La・48Raによって拡開され、前部ではガイドローラ50・50・・・によって閉じられた状態で、矢印65の方向に回転駆動し、前記拡開部分に作業者が苗を挿入すると、挿入された苗はガイドローラ50・50・・・によって搬送円板36L・36R間に挟持され、この挟持された状態でそのまま略半回転し、下方に搬送される。
【0018】
このような構成において、移植機1が走行していくと、まず、作溝ディスク対35によって畝の頂部中央に植付溝が形成され、更に走行すると、圃場から受ける反力によって覆土輪37L・37Rが回転し、この回転動力によって把持ディスク対36が回転駆動される。上部で把持ディスク対36に挟持された苗は、下方に搬送された後、前記植付溝に根を下にして軽く押し付けられて直立し、その時点で把持ディスク対36から解放される。そして、その直後に、この直立した苗の両側から前記覆土輪37L・37Rが覆土し、植付が完了するのである。
【0019】
次に、前記薬剤散布装置7について、図1乃至図3、図8、図9により説明する。
該薬剤散布装置7は、薬剤を繰り出す薬剤繰出装置63と、該薬剤繰出装置63の上部に設けた薬剤ホッパー61とから成る。ここで、前記前フレーム23から後方には支持部材66が延設され、該支持部材66には取付コラム67を上下摺動可能に連結され、更に、該取付コラム67の上部には係止具68が上下高さ調節可能に係止されており、該係止具68を構成する平面視L字状の取付板68aの背面に、前記薬剤繰出装置63の前面が締結固定されている。更に、この薬剤繰出装置63の下部は、作溝ディスク対35の内部に上下方向に配設した薬剤散布パイプ62の上部に連通されており、前記薬剤ホッパー61内から薬剤繰出装置63によって送出される薬剤を、作溝ディスク対35によって形成された植付溝の中に落下させるようにしている。なお、前記薬剤ホッパー61の下部には、繰出ケース54との間にホッパーシャッタ69が開閉可能に介設されており、薬剤散布装置7を使用しない時はホッパーシャッタ69を挿嵌して、薬剤ホッパー61と繰出ケース54との間を遮断し、繰出ケース54内に薬剤が長期に残留して内壁や繰出ロール32の表面に固着したり、外部からの塵挨によって汚染されたりしないようにしている。
【0020】
この薬剤繰出装置63においては、駆動軸83が左右方向に横設され、該駆動軸83の左端は、本発明に関わる繰出制御用のモータ91におけるモータ本体91aからのモータ出力軸91bに、継手94を介して接続されており、これにより、後述する繰出制御用のコントローラ92から給電されてモータ91が作動すると、モータ出力軸91bが回動して駆動軸83が回転駆動され、繰出動力を薬剤繰出装置63に伝達できるようにしている。
【0021】
前記駆動軸83は断面視多角形に構成され、該駆動軸83には回動軸53が外嵌され、該回動軸53には繰出ロール32が外嵌固定されており、該繰出ロール32の外周には、薬剤を薬剤ホッパー61から落入させる二個の繰出凹部32a・32bが側面視で180度反対側に形成されている。該繰出ロール32、回動軸53等は繰出ケース54に嵌装され、該繰出ケース54は図示せぬサイドカバーにて左右両側で回動軸53を軸支している。
【0022】
そして、該繰出ケース54後上部には、ブラシ55がノブネジ56によって固定され、該ブラシ55の先を前記繰出ロール32の外周に接触させると共に、繰出ケース54の下端にはガイドロート58が固設され、該ガイドロート58下部に連通した放出口59が、前記薬剤散布パイプ62に連通されている。更に、前記繰出ケース54前上部からは、スポンジ57が繰出ロール32に向かって後斜め下方に突設され、該スポンジ57の先を前記繰出ロール32の外周に接触させている。
【0023】
このような構成において、前記駆動軸83により繰出ロール32が回動されると、繰出凹部32a・32bが、上方の薬剤ホッパー61に臨む位置から下方のガイドロート58に向かって回動する際に、該繰出凹部32aまたは繰出凹部32bに落入して装填された薬剤が下方に搬送されて繰り出される。この際、前記ブラシ55によって、繰出凹部32a・32bからはみ出た薬剤は掻き落とされ、余分な薬剤を繰り出さないようにすると共に、前記スポンジ57によって、薬剤ホッパー61内の薬剤が、繰出ロール32外周と繰出ケース54前内壁との隙間から下方に誤って落下しないようにしている。なお、この落下防止部材としては、スポンジ以外のゴム片等の弾性体や、繰出ロール32外周との接触部分にのみ弾性体を設けた複合部材であってもよく、繰出ロール32外周と繰出ケース54前内壁との間に大きな隙間を形成せず、しかも、繰出ロール32の回動を妨げないものであれば特には限定されない。
【0024】
次に、このようにして繰り出される薬剤等の粒状物の植付溝内への落下タイミングを制御する繰出制御機構90の構成について、図3乃至図6、図8乃至図10により説明する。
図10に示すように、該繰出制御機構90は、前記モータ91を起動するモータスイッチ93と、モータ91に配線104を介して接続されてモータ91の起動・停止を制御し苗の点植タイミングと薬剤の落下タイミングを同期させるコントローラ92と、該コントローラ92による同期制御の微調整を行う調整スイッチ95と、同じくコントローラ92に配線105を通じて起動信号107を送信する起動信号発信装置109と、同じくコントローラ92に配線106を通じて停止信号108を送信する停止信号発信装置110と、前記コントローラ92やモータ91等に配線111等を介して駆動電力を供給するバッテリー112等から構成されている。
【0025】
図4乃至図6、図10に示すように、このうちの起動信号発信装置109は、前記把持ディスク対36を構成する苗搬送円板36Lの外側方に設けられており、苗搬送円板36Lの外周側面に締結固定され該苗搬送円板36Lと一緒に回転する金属製の起動マーカ113・113・・・と、前記固定円板47Lの側面に固定される起動センサ114とから構成され、更に、該起動センサ114は、物体の接近の有無を非接触で検出する近接型センサであって前記起動マーカ113の存在を検出する検知体97と、該検知体97を収納部98aの内側に固定したセンサガイド98と、該センサガイド98を先端に固定し基部を前記固定円板47Lに固定したセンサ支持ステー99とから成る。なお、この近接型センサとしては、金属の存在を検出する誘導形、金属及び非金属物体の存在を検出する静電容量形、及び音響反射物体を検出する超音波等があり、本実施例では前記起動マーカ113を金属で構成した誘導形を採用しているが、静電容量形の近接型センサや、交換寿命が短いが安価で導入のしやすい接触型のセンサであってもよく、起動マーカを検出可能なセンサであれば、特に限定されるものではない。もちろん、センサの種類に応じて起動マーカや起動センサの種類は変更するものである。
【0026】
この起動マーカ113は、苗搬送円板36Lの回転中心に対し、ガイドローラ50よりも外側であって前記検知体97と同じ半径の円周上を通過する位置にボルト100で締結固定されると共に、該固定位置は、苗搬送円板36L・36R間に苗31を挟持させる苗挟持位置と略一致させており、これにより、作業者が起動マーカ113の位置を目安にして苗31を挟持させ点植作業を行うようにしている。すなわち、前記起動マーカ113は、前記把持ディスク対36の苗挟持位置近傍に設けるので、起動マーカ113を、苗31の挟持位置の目安とする挟持マーカと兼用させることができ、部品点数を減少させて部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0027】
前記起動センサ114において、検知体97を取り付けたセンサガイド98には、接近してくる起動マーカ113に対向して上斜め外方に開いた上でその基部を苗搬送円板36L外側面に接したガイド部98bが形成されると共に、前記収納部98aは、このガイド部98bの下端から断面視L字状に下方が開いて形成され、更に、収納部98a内側の検知体97表面と苗搬送円板36L外側面との間には隙間101が設けられている。ここで、前記センサ支持ステー99はプラスチックや金属等の弾性体から成り、その弾性力によって、該センサ支持ステー99先端に固定されたセンサガイド98は、苗搬送円板36L側に向かって常に付勢されており、ゴム等の弾性体から成る苗搬送円板36Lが回転中に左右にぶれたり、起動マーカ113が苗搬送円板36L上に凸状に設けられていても、検知体97が起動マーカ113から遠くに押しやられることなく確実に追従できるようにしている。
【0028】
すなわち、前記起動センサ114は、前記起動マーカ113を検知する検知体97を有し、該検知体97が前記把持ディスク対36上の起動マーカ113の動きに追従可能な検知体支持手段であるセンサ支持ステー99を備えるので、前記把持ディスク対36が苗31を損なわないようにゴム等の弾性体から成り、回転方向に対して把持ディスク対36が左右にぶれやすい場合や、起動マーカ113が把持ディスク対36上に凸状に設けられている場合であっても、前記検知体97は接近してくる起動マーカ113の動きに追従することができ、検知体97が、起動マーカ113から大きく離間することなく、起動マーカ113を確実に検知して苗31の点植タイミングを正確に前記繰出制御手段であるコントローラ92に伝え、粒状物である薬剤の散布精度を更に向上させることができる。
【0029】
更に、前記検知体支持手段であるセンサ支持ステー99は、前記検知体97を前記起動マーカ113側に付勢する弾性体から成るので、たとえ回転方向に対して把持ディスク対36が左右にぶれたり、該把持ディスク対36上の起動マーカ113が凸状であっても、別途特殊な装置を用いることなく簡単な構成で検知体97を起動マーカ113の動きに迅速に追従させることができ、部品数減少による製造コストの低減と、組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0030】
このような構成において、移植機1が移動して覆土輪37L・37Rが回転すると、このうちの覆土輪37Lによって把持ディスク対36が回転駆動されるが、該把持ディスク対36と一緒に回転する起動マーカ113の位置を目安として、作業者は苗31を苗搬送円板36L・36R間に挟持させる。すると、挟持させた苗31と起動マーカ113とが矢印65の方向に一緒に回転して検知体97に接近するが、このうちの起動マーカ113によって、弾性体のセンサ支持ステー99に支持されると共に苗搬送円板36Lの外側面に基部を接したガイド部98bは、外方に押し出され、該ガイド部98bに連設された収納部98aも前記検知体97と一緒に外方に移動する。
【0031】
更に、把持ディスク対36が回転すると、起動マーカ113は収納部98aに達し、該起動マーカ113を前記検知体97が検知して、起動信号107を前記コントローラ92に送信する。この際、前述の如く、検知体97の表面と苗搬送円板36L外側面との間には隙間101が設けられているため、収納部98a内の検知体97の上面97aに、起動マーカ113の下面113aが直接衝突しにくくなっている。これに加え、本実施例では、検知体97の上面97aから収納部98a上縁までの隙間102を、起動マーカ113の円周方向の長さ103よりも小さく設定しており、該隙間102内に前記起動マーカ113が侵入して検知体97に衝突するのを防止するようにしている。
【0032】
すなわち、前記検知体97は、前記検知体支持手段であるセンサ支持ステー99にガイド体であるセンサガイド98を介して取り付け、該センサガイド98は、前記把持ディスク対36の外側面に接するガイド部98bと、該ガイド部98bに連設され前記起動マーカ113の回動線上から離間して検知体97を収納する収納部98aとから成るので、起動マーカ113が接近すると検知体97はセンサガイド98と一緒に外方に押し出され、検知体97が起動マーカ113に直接衝突するのを防止することができ、検知体97の損傷を防いで検知体97の交換寿命を延ばし、部品コストの低減とメンテナンス性の向上を図ることができる。なお、本実施例ではガイド部98bは板状としているが、把持ディスク対36の外側面を転動可能な回転体でもよく、把持ディスク対36の外側面の凹凸に沿うようにして収納部98aが揺動できれば特には限定されない。
【0033】
更に、把持ディスク対36が回転して起動マーカ113が検知体97から離間していくと、起動信号107の送信を中断するように構成している。この後、起動マーカ113と一緒に回転していた苗31は、下方に搬送された後、植付溝に根を下にして軽く押し付けられて直立し、その時点で把持ディスク対36から解放されて、点植が完了する。続いて、移植機1が、隣接する点植位置間の距離(以下、「点植間隔」とする)だけ移動すると、既に次の起動信号107を発信した起動マーカ113の位置に挟持された苗31が、植付溝に根を下にして軽く押し付けられて直立し、その時点で把持ディスク対36から解放されて点植される。これを繰り返すことにより、所定の点植間隔で苗31の植付が行われる。
【0034】
これにより、苗31を把持ディスク対36で挟持して点植するタイミングに合わせて、前記薬剤繰出装置63の駆動を開始させるための起動信号107を、植付装置8に設けた起動マーカ113と該起動マーカ113側方の起動センサ114のみによって、移植機1が点植間隔移動する毎に正確に発信することができるのである。すなわち、前記起動信号発信手段である起動信号発信装置109は、前記把持ディスク対36に設けた起動マーカ113と、該起動マーカ113を検知して起動信号107を発信する起動センサ114とを有するので、別途特殊な装置を用いることなく簡単な構成で起動信号107を発信することができ、部品数減少による製造コストの低減と、組立性・メンテナンス性の向上を図ることができるのである。
【0035】
また、図3、図8乃至図10に示すように、前記停止信号発信装置110は、前述の如く、モータ91からのモータ出力軸91bに継手94を介して接続された駆動軸83上に固定され該駆動軸83と一緒に回転する停止マーカ117と、前記繰出ケース54側面に固設される停止センサ118とから構成され、該停止センサ118は、透過型フォトセンサであって発光部118aと受光部118bを有する。一方、停止マーカ117は、前記駆動軸83上に外嵌固定されたボス部117cと、該ボス部117cから半径方向に180度反対側に突出された二個の遮断部117a・117bとから成り、該遮断部117a・117bは、いずれも前記発光部118aと受光部118bとの間を通過するようにしている。
【0036】
このような構成において、前記起動信号107を受信したコントローラ92によってモータ91が駆動されると、モータ出力軸91bが回転し、該モータ出力軸91bに接続された前記駆動軸83上の停止マーカ117も一緒に回転する。そして、該停止マーカ117の遮断部117a・117bのいずれか一方が、前記発光部118aと受光部118bとの間をそれまで通過していた光を遮断すると、停止センサ118中の停止スイッチ118cが「入」となり、前記コントローラ92へ停止信号108の送信を開始する。なお、停止スイッチ118cの前記「入」状態は、コントローラ92が次の起動信号107を再び受信するまでの間、継続して保持されるようにしている。
【0037】
これにより、前記薬剤繰出装置63の駆動を停止させる停止信号108を、モータ91のモータ出力軸91bが半回転する毎に正確に発信することができる。すなわち、前記停止信号発信手段である停止信号発信装置110は、散布装置である薬剤散布装置7の連動部位である駆動軸83に設けた停止マーカ117と、該停止マーカ117を検知して停止信号108を発信する停止センサ118とを有するので、別途特殊な装置を用いることなく簡単な構成で停止信号108を発信することができ、部品数減少による製造コストの低減と、組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。なお、本実施例では、前記停止信号発信装置110に透過型フォトセンサを適用しているが、移植機1の移動や薬剤繰出装置63の駆動を高精度かつ高速に検出可能なセンサであればよく、特に限定されるものではない。もちろん、センサの種類に応じて停止マーカや停止センサの種類は変更するものである。また、本実施例では、連動部位として駆動軸83を用いたが、構成によっては繰出ローラ32側面等も用いることができる。
【0038】
次に、以上のような繰出制御機構90の動作について、図1、図4、図5、図8乃至図12により説明する。
図1、図4、図5、図10、図11に示すように、移植機1が移動すると、覆土輪37L・37Rが土壌を押圧しながら回転し、該覆土輪37L・37Rの回転と同期して支軸45も回転する。すると、苗搬送円板36L・36Rが回転し、このうちの苗搬送円板36Lの外周側面に締結固定された起動マーカ113の一つが起動センサ114に接近すると、起動センサ114の検知体97が起動マーカ113を検知して、前記起動信号107が発信される(時刻T1)。そして、該起動信号107を前記配線105を介して受信したコントローラ92は、配線104を介してモータ91に給電し、それまで停止状態にあったモータ91の回転を開始する(時刻t1)。つまり、起動マーカ113と同じ位置において左右の苗搬送円板36L・36R間に挟持された苗31が、前記検知体97を通過するタイミングで、モータ91が作動を開始して前記薬剤繰出装置63から薬剤の繰出が開始されるのである。
【0039】
ここで、図8乃至図12に示すように、前記停止信号発信装置110においては、停止センサ118の配設位置に、停止マーカ117の第一遮断部117aの回転位置120aを予め設定し、該回転位置120aと、繰出ロール32の第一繰出凹部32aの最上端位置121aとが正確に対応するように、駆動軸83上への停止マーカ117の取付位置を調節しておく。すると、第一遮断部117aが、回転位置120a(時刻t1)から回転位置120b(時刻t2)を通って回転位置120cまで回転すると、この回転にともなって、第一繰出凹部32aも、最上端位置121a(時刻t1)から回転位置121b(時刻t2)を通って最下端位置121cまで回転し、前記最上端位置121aで第一繰出凹部32aに落入・装填されていた薬剤を、第一繰出凹部32aの端から少しずつ落下させ、最下端位置121cに到達した時点で、第一繰出凹部32a内の全ての薬剤の排出を完了するようにしている。
【0040】
前記第一遮断部117aが回転位置120cまで回転すると、逆に、該第一遮断部117aと180度反対側に設けた第二遮断部117bは、前記回転位置120aに到達して、前記発光部118aと受光部118bとの間をそれまで通過していた光を遮断する。すると、停止スイッチ118cが「入」となってコントローラ92への停止信号108の送信を開始し(時刻TS1)、該停止信号108を受信したコントローラ92は、配線104を介した給電を中断して各モータ91を停止状態とする(時刻t3)。該停止状態は、前述の如く、コントローラ92が次の起動信号107を受信するまで継続され、その間は、停止マーカ117は、第一遮断部117aを真下に、第二遮断部117bを真上に向けたままで保持され、同様に、繰出ロール32は、第一繰出凹部32aを真下に、第二繰出凹部32bを真上に向けたままで保持される。該第二繰出凹部32bには、このように真上を向いて待機している間(時刻t3〜時刻t4)に、薬剤ホッパー61内の薬剤が落入して隅々まで装填される。
【0041】
更に、移植機1が点植間隔だけ移動すると、覆土輪37L・37Rの回転と同期して前記支軸45が回転し、次の起動マーカ113が起動センサ114に接近する。すると、起動センサ114の検知体97が起動マーカ113を再び検知して、起動信号107が再び発信される(時刻T2)。そして、該起動信号107を受信したコントローラ92は、配線104を介して各モータ91に給電して回転を再開する(時刻t4)。
【0042】
すると、停止信号発信装置110においては、それまで停止状態にあった前記停止マーカ117と繰出ロール32とが再び回転を開始する。停止マーカ117の第一遮断部117aは、回転位置120c(時刻t4)から回転位置120d(時刻t5)を通って回転位置120aまで回転するが、この回転にともない、真上を向いていた第二繰出凹部32bは、最上端位置121a(時刻t4)から回転位置121b(時刻t5)を通って最下端位置121cまで回転し、前記最上端位置121aで落入・装填された薬剤を、前記第一繰出凹部32aの場合と同様に、第二繰出凹部32bの端から少しずつ落下させ、最下端位置121cに到達した時点で、第二繰出凹部32b内の全ての薬剤の排出を完了するようにしている。前記第一繰出凹部32aについては、最下端位置121c(時刻t4)から回転位置121d(時刻t5)を通って最上端位置121aまで回転する。
【0043】
前記第一遮断部117aが回転位置120aまで回転すると、発光部118aと受光部118bとの間をそれまで通過していた光を再び遮断し、停止スイッチ118cが「入」となってコントローラ92への停止信号108の送信を開始する(時刻TS2)。該停止信号108を受信したコントローラ92は、配線104を介した給電を中断して各モータ91を再び停止状態とする(時刻t6)。該停止状態も、コントローラ92が次の起動信号107を受信するまで継続され、その間は、停止マーカ117は、第一遮断部117aを真上に、第二遮断部117bを真下に向けたまま、繰出ロール32は、第一繰出凹部32aを真上に、第二繰出凹部32bを真下に向けままの初期状態に復帰・維持される。そして、この第一繰出凹部32aにも、このように真上を向いて待機している間に、薬剤ホッパー61内の薬剤が落入して隅々まで装填される。
【0044】
以上の繰出プロセスを繰り返すことにより、苗31の点植と薬剤や肥料等の散布とを、点植位置で略同期させて行うことができ、しかも、繰出凹部32a・32bのうち所定の粒状物を繰り出した方は、最下端位置121cで自動的に停止し、しばらくの間、保持されるようにしている。なお、苗31の植付溝への点植タイミングと、薬剤や肥料の植付溝やその近傍への落下タイミングとの間における同期制御の微調整は、起動信号107を受信して実際にモータ91が起動するまでの時間に相当するタイムラグ75(時刻T1〜時刻t1、時刻T2〜時刻t4)を前記調整スイッチ95を操作して変更したり、モータ91の回転速度や苗31と薬剤・肥料の落下経路長等を変更することによって行うことができる。
【0045】
すなわち、回転する把持ディスク対36の外周に苗31を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置8と、点植した苗31の近傍に粒状物である薬剤を散布する散布装置である薬剤散布装置7とを備えた移植機1において、苗31の点植に合わせて薬剤散布装置7による散布を開始させる起動信号107を発信する起動信号発信手段である起動信号発信装置109と、薬剤散布装置7による散布を停止させる停止信号108を発信する停止信号発信手段である停止信号発信装置110と、前記起動信号107と停止信号108に基づいて前記薬剤散布装置7の粒状物繰出部である薬剤繰出装置63の駆動を制御する繰出制御手段であるコントローラ92を備えることにより、苗31の点植と薬剤の散布を同期可能にすると共に、散布停止時には、前記薬剤繰出装置63で薬剤を移送する搬送部である繰出凹部32a・32bを、次の散布開始時まで、所定量の薬剤を受け入れ可能な待機位置である最上端位置121aに保持する繰出制御構成としたので、前記把持ディスク対36によって搬送される苗31の植付溝への点植と、薬剤散布装置7の薬剤繰出装置63等から繰り出された薬剤や肥料等の粒状物の植付溝への落下とのタイミングの調整が可能となり、該タイミングを略一致させて苗31の点植位置近傍に、大きな設計変更、製造コストの増加、メンテナンス性の低下を伴うことなく粒状物を散布することができる。加えて、粒状物がその大きさや形状等のために繰出凹部32a・32bに落入・装填されにくい場合でも、繰出凹部32a・32bを待機位置である最上端位置121aに十分な時間止めて該繰出凹部32a・32b内に所定量の薬剤や肥料等を確実に装填させることができ、各点植位置に繰り出す薬剤や肥料等の量を一定にすることができるため、薬剤や肥料等が不足して成育促進効果や殺虫効果等が十分に発揮できなかったり、逆に、薬剤や肥料等が過剰となって苗31の成育が阻害されるのを、防止することができる。
【0046】
更に、前記粒状物繰出部である薬剤繰出装置63は、搬送部として外周に繰出凹部32a・32bを形成した繰出回転体である繰出ロール32を有し、繰出凹部32a・32bのうち薬剤を繰り出し中のものは、繰出ロール32の最下端近傍に設定した最下端位置121cに到達すると自動的に停止する繰出制御構成とするので、散布停止時には、薬剤繰り出し中の繰出凹部は常に真下を向いており、前記待機位置である最上端位置121aにて装填された薬剤や肥料等を自重で全て落下させて繰出凹部32a・32b内の薬剤や肥料等の残留をなくすことができ、簡単な制御構成によって正確な量の薬剤や肥料等を下方から確実に繰り出すことができるため、散布装置である薬剤繰出装置63等に必要な部品や構造を簡素化し、移植機1の製造コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0047】
次に、前記センサガイドの別形態について、図7により説明する。
本形態のセンサガイド76は、前記センサガイド98とは異なり、センサガイド76に収納された検知体96が起動マーカ113と衝突しないのはもちろんのこと、検知体96と接触すらしないようにできるものである。
【0048】
起動マーカ113が検知体96に直接接触しないようにするには、前記隙間101を大きくすることが考えられるが、この隙間101が大きすぎると検知体96が起動マーカ113の存在を検出できない場合がある。そこで、センサガイド76は、前記センサガイド98と同様に、起動マーカ113によって外方に押し出されるガイド部76bと、該ガイド部76bに連設され起動マーカ113の回動線上から離間して検知体96を収納する収納部76aとから構成し、該収納部76a内側の検知体96表面と苗搬送円板36L外側面との間には前記センサガイド98と同様な隙間101を設け、その上で、収納部76aを前記ガイド部76bの下端から断面視コ字状にて苗搬送円板36L側のみが開いた形状に形成すると共に、この開口76cの内径77を起動マーカ113の円周方向の長さ103よりも短く設定している。これにより、収納部76a内に起動マーカ113の侵入が困難な構造としている。
【0049】
すなわち、前記収納部76aは、前記起動マーカ113に向かって開いた開口76cを備え、該開口76cは、前記起動マーカ113よりも小さく形成するので、起動マーカ113が開口76cから収納部76a内に侵入して検知体96に接触するのを防止することができ、検知体97の交換寿命を更に延ばすことができる。なお、ガイド部76bについても板状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置と、点植した苗の近傍に粒状物を散布する散布装置とを備えた全ての移植機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係わる移植機の全体構成を示す移植機の側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】移植機前部の斜視図である。
【図4】把持ディスク対周辺の斜視図である。
【図5】起動信号発信装置周辺の斜視図である。
【図6】起動センサ周辺の周方向断面図である。
【図7】別形態の起動センサ周辺の周方向断面図である。
【図8】薬剤繰出装置の側面一部断面図である。
【図9】停止信号発信装置周辺の背面一部断面図である。
【図10】繰出制御機構を示すブロック図である。
【図11】モータの起動・停止手順を示すタイムチャートである。
【図12】モータの回転と繰出ロールの回動との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 移植機
7 散布装置
8 植付装置
31 苗
32 繰出回転体
32a・32b 搬送部、繰出凹部
36 把持ディスク対
63 粒状物繰出部
76・98 ガイド体
76a・98a 収納部
76b・98b ガイド部
83 連動部位
92 繰出制御手段
96・97 検知体
99 検知体支持手段
107 起動信号
108 停止信号
109 起動信号発信手段
110 停止信号発信手段
113 起動マーカ
114 起動センサ
117 停止マーカ
118 停止センサ
121a 待機位置
121c 最下端近傍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する把持ディスク対の外周に苗を挟持させて圃場の植付溝まで搬送し点植する植付装置と、点植した苗の近傍に粒状物を散布する散布装置とを備えた移植機において、苗の点植に合わせて散布装置による散布を開始させる起動信号を発信する起動信号発信手段と、散布装置による散布を停止させる停止信号を発信する停止信号発信手段と、前記起動信号と停止信号に基づいて前記散布装置の粒状物繰出部の駆動を制御する繰出制御手段を備えることにより、苗の点植と粒状物の散布を同期可能にすると共に、散布停止時には、前記粒状物繰出部で粒状物を移送する搬送部を、次の散布開始時まで、所定量の粒状物を受け入れ可能な待機位置に保持する繰出制御構成としたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記粒状物繰出部は、搬送部として外周に繰出凹部を形成した繰出回転体を有し、粒状物を繰り出し中の繰出凹部は、繰出回転体の最下端近傍に到達すると自動的に停止する繰出制御構成とすることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記起動信号発信手段は、前記把持ディスク対に設けた起動マーカと、該起動マーカを検知して起動信号を発信する起動センサとを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の移植機。
【請求項4】
前記起動マーカは、前記把持ディスク対の苗挟持位置近傍に設けることを特徴とする請求項3記載の移植機。
【請求項5】
前記起動センサは、前記起動マーカを検知する検知体を有し、該検知体が前記把持ディスク対上の起動マーカの動きに追従可能な検知体支持手段を備えることを特徴とする請求項3または請求項4記載の移植機。
【請求項6】
前記検知体は、前記検知体支持手段にガイド体を介して取り付け、該ガイド体は、前記把持ディスク対の外側面に接するガイド部と、該ガイド部に連設され前記起動マーカの回動線上から離間して検知体を収納する収納部とから成ることを特徴とする請求項5記載の移植機。
【請求項7】
前記停止信号発信手段は、散布装置との連動部位に設けた停止マーカと、該停止マーカを検知して停止信号を発信する停止センサとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちのいずれか一項に記載の移植機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−136418(P2008−136418A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325804(P2006−325804)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】