説明

移植用軟骨組織

関節軟骨と下に横たわる骨の両方に関与する骨軟骨移植片の組成と、製造方法及び使用方法と、キットとを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節の軟骨と基礎となる骨の両方からなる骨軟骨組織の移植材料及びその製造方法、及び、欠損部に充填するため、又は、損傷を受けた軟骨及び骨の代替とするためにこの移植材を人間の関節に外科的に移植する方法、及び、このような移植のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な人間の関節は、機械的力を伝えるとともに基礎となる骨を保護するために、弾力性と耐久力があり摩擦の少ない関節軟骨により覆われている。軟骨は、血管のない組織であって、広範囲な細胞外基質内に被包された少数の軟骨細胞を有している。関節の軟骨組織と軟骨下骨質の一方又は両方の損傷は、深い外傷や病気に起因して発生する。
【0003】
異なった損傷や疾病に対する生体内における生体組織の能力には顕著な違いが見られる。
【0004】
軟骨下骨質にまで届いていない損傷の場合は制限された修復応答となる。一方、軟骨下骨質にまで及ぶ骨軟骨の損傷の場合は、骨髄から修復細胞が流入することによる修復反応が関与する場合もある。繊維軟骨、及び、ガラス軟骨と繊維組織の混合物の形成が修復反応の特徴である。繊維軟骨は、通常の関節における耐久性あるいは機構的機能に欠け、最終的には通常の関節としての機能を損ねる。多くの骨軟骨の損傷は、繊維軟骨が形成された結果、数年間に渡って臨床的に無症候となる。損傷部分の2次的な変化により、最後に関節機能の劣化、及び、痛み、障害が出て来る場合もある。
【0005】
関節の軟骨及びその基礎となる骨の修復や取替えのために骨軟骨移植が用いられてきた。骨軟骨移植において、負担の少ない部分から軟骨下骨質と共に軟骨を採取し、損傷部分の軟骨と骨組織を機械的に削除し、正確な寸法の穴を作る。そして採取された組織は損傷部分に移植される。骨に移植した骨が回復することにより骨移植が完了することになる。広範囲な損傷の場合は、モザイクプラスティと呼ばれる方法で、いくつもの骨を用いて修復する。しかしながら、ドナー側に自己移植片の採取に起因する疾病の可能性があることが残る大きな欠点となる。さらに、ドナー側に疾病の可能性があることにより、損傷の大きさが増大するにつれて範囲が大きくなる損傷の効果的な治療が制限される。
【0006】
通常の関節機能を回復することができ、現在の骨軟骨移植技術における制限事項を解決する骨軟骨移植のニーズは依然として存在する。
【0007】
【発明の開示】
【0008】
本発明は、多数の孔を有する生物学的適合性のある足場材に付着させた培養軟骨組織から成る移植可能な骨軟骨インプラントであることを特徴とする。この軟骨組織は試験管内で培養された軟骨細胞からできたもので、細胞は細胞間質(CM)を有する。足場材には、天然の海綿骨、脱塩した天然の海綿骨、コラーゲン、及び骨代替材のうち少なくとも1つが含まれる。この細胞は、細胞間質と共に試験管の中で再生される。この細胞は、足場材に導く前に試験管内でアルギナートビーズ中での培養をしておくことができる。
【0009】
骨代替材は、燐酸カルシウム又はヒドロキシアパタイトのうちの少なくともいずれか1つであり、少なくとも約2mmの厚さをもっている。例えば、インプラントを外科的に挿入する関節部の生体構造によって、足場材の厚さは、少なくとも約3mm、少なくとも約5mm、少なくとも約8mm、少なくとも約10mm、あるいはそれ以上とすることができる。さらに、CMには少なくとも、アグリカン、コラーゲンタイプII、IX、及びXI、及びヒアルロナンの内の1つが含まれる。軟骨組織は、例えば、少なくとも約5mg/cmのアグリカン、少なくとも約7mg/cmのアグリカン、又は少なくとも約10mg/cmのアグリカンから成り、組織内のヒアルロナンに対するアグリカンの比率は約10:1から約500:1である。コラーゲンに対するアグリカンの比率は約1:10から約10:1とし、異なった時間で培養された組織に適するようにしておく。インプラントの実施例では、生物学的適合性のある足場材の微細孔には生物学的適合性のある充填材が含まれる。生物学的適合性のある充填材は、精製されたヒアルロナン、コラーゲン、又はアルギナートのうち少なくとも1つを含むことができる。あるいは、培養処理期間中足場材に軟骨細胞が成長する速さを遅らせるのために、骨代替材の微細孔を十分小さくする。別の実施例においては、足場材は大きさに傾斜がある微細孔から成る。例えば、足場材は、上部より底面(インプラントの上面から離れた端)ほうが大きい微細孔の孔サイズを持ち、移植した後の生体内で周囲の組織との関係におけるインプラントの生体機械的な特性を向上させる。さらに、上記実施例における生物学的適合性のある多孔性の足場材の微細孔には培地が含まれる。
【0010】
インプラントは、下部足場材の末端に外側表面を持ち、軟骨形成細胞とCMは実質的にこの外側表面と結びついている。足場内の細胞は外側表面から約1mmより小さい層、又は、表面から2mmより小さい層に位置している。すなわち、細胞は、足場材内に一様に分散しているのではなく、主として外側表面に近接する層と関係している。インプラントは、取り外し可能な半透膜のフィルタを持つ場合がある。
【0011】
軟骨形成細胞は様々な供給源から得られる。軟骨形成細胞は一般に関節軟骨又は繊維軟骨から分離される。さらに、軟骨形成細胞は軟骨細胞又は軟骨形成幹細胞と区別することができる。幹細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、皮膚、筋肉、脂肪、骨膜、及び、軟骨膜のような組織から得られる。繊維軟骨の軟骨形成細胞は、肋骨軟骨、鼻軟骨、耳軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、及び環状軟骨から得られる。あるいは、繊維軟骨の細胞は、腱、靭帯、関節間軟骨、及び椎間板から得ることができる。
【0012】
本発明は、移植可能な軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であることを特徴とする。この方法は、分離した軟骨形成細胞を、軟骨形成細胞間質(CM)の形成に有効な一定の時間培地の中に入れて培養し、多孔性の生体適合性のある足場材を、成長因子が存在するCMと共に培養軟骨組織の形成に有効な時間軟骨形成細胞と接触させ、生体適合性のある足場材に培養軟骨組織を付着させるものである。
【0013】
実施の形態において、本方法にはさらに、足場材に接触させる前に、足場材の微細孔に生体適合性のある充填物質を充填する段階が含まれる。微細孔を塞ぐことによって、制限された深さを越えて過度に細胞が足場材に成長するのを防止できる。微細孔を塞ぐために、上部から加圧し充填物質を微細孔に充填するか、あるいは、下部から負圧をかけて(吸引して)充填物質を微細孔に充填する。もしくは、重力による力、あるいは遠心力等により重力を倍増して充填材を微細孔に充填する。ともかく培養期間においてともかく多数の微細孔での細胞の成長を除外するという目的は、微細孔の孔の大きさが小さい足場材を用いることにより達成できる。
【0014】
本方法にはさらに、半透膜を有するプラスティックの支持枠に、培養軟骨組織と足場材を挿入する段階が含まれる。半透膜は約5ミクロン又は約5ミクロン以下の孔径を持つ。例えば約4ミクロン以下、約5ミクロン以下、約2.5ミクロン以下、約1ミクロン以下、約0.5ミクロン以下の直径の孔を持つ。さらに、例えば、0.4ミクロン以下の直径とし、培地が微細孔を通るのに十分な大きさとする。さらに、半透膜は約8×10孔/cmの孔密度又は、微細孔を通って培地が十分流れる密度とする。
【0015】
この半透膜の構成はポリエチレンテレフタート、ポリカーボネイト、又はポリテトラフロールエチレンとすることができる。培地にある成長因子は、骨形成たん白質、トランスフォーミング成長因子-β、及び、インスリン様成長因子 (IGF-I)とすることができ、例えば、成長因子がインスリン様成長因子−1 (IGF-1)であれば、最終濃度が50ng/mlから約200ng/mlになるよう培地に加えることができる。軟骨細胞により形成されたCMは、ヒアルロナンに対するアグリカンの割合を約10:1から約500:1とし、例えば、約20:1、約50:1、又は約100:1、又は約150:1とします。さらに、軟骨細胞により形成されたCMは、コラーゲンに対するアグリカンの割合を約1:10から約10:1とし、例えば、約2:1又は約5:1とする。
【0016】
本発明の他の特徴によれば、損傷を受けた組織の外科的復元のために培養骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であって、外科的に当該組織を切開する段階と、当該切開個所に試験管内で製造した軟骨組織を挿入する段階を具備する。損傷は深刻な場合、部分的な場合、軟骨の全層に及ぶ場合、骨軟骨の損傷の場合、又は変性過程の場合が有り得る。損傷には、軟骨組織の欠陥、離断性骨軟骨炎(OCD)、骨関節炎、リューマチ性関節炎、骨壊死、その他あらゆる軟骨の損傷が含まれる。
【0017】
また、試験管内で製造された骨軟骨組織を関節鏡を使って挿入する段階を具備する、損傷を受けた組織の外科的復元のために培養骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法が提供される。また、試験管内で製造された骨軟骨組織のインプラントを用いて関節を復元するステップを含む、リューマチ性関節炎又は骨関節炎により損傷を受けた関節の治療のための培養骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法が提供される。
【0018】
また、独立に足場材において成長させた骨軟骨組織を関節鏡を使って挿入する段階を具備する、損傷を受けた組織の外科的復元のために培養骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法が提供される。さらに、独立に製造された骨軟骨組織のインプラントを用いて関節を復元する段階を具備する、リューマチ性関節炎又は骨関節炎により損傷を受けた関節の治療のための培養骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法が提供される。
【0019】
本発明の他の実施形態は、試験管内で骨軟骨組織を製造するためのキットであり、本キットは、生体適合性のある足場材と、軟骨形成細胞を培養するための培地と、容器と、使用説明書とからなる。このキットに培養用の適当な軟骨細胞を加えても良い。足場材は、天然の海綿骨、脱塩した天然の海綿骨、コラーゲン、及び骨代替材から成るグループの内の少なくとも1つを含んでも良い。本キットにはさらにアルギナートを含ませることができる。
【0020】
本発明のもう1つの実施の形態は、骨軟骨組織を外科的に移植するためのキットであり、本キットは、生体適合性のある足場材と、アルギナートを用いて再生した、軟骨細胞から成る軟骨(ARC)組織と、容器と、使用説明書とから成る。本実施形態において、ARC組織は、さらに培養することなしに、あるいは、試験管内で最低限の培養を行うことにより、外科的移植に使用できるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
具体的実施例の詳細な説明
本発明は、移植可能な骨軟骨のインプラントとそれを製造する方法に関する。本インプラントは、生体適合性のある足場材に付着した培養軟骨組織を含有する。本方法によれば、骨軟骨のインプラントは、軟骨の細胞間質が形成されるだけの時間、分離した軟骨形成細胞を試験管内で培養することで製造される。細胞間質と一体となった軟骨形成細胞は、培養軟骨組織の形成と培養軟骨組織の生体適合性のある足場材への付着との両方が可能な時間、成長因子の存在する生体適合性のある多孔質の足場材上であらかじめ培養される。
【0022】
生体適合性のある多孔質の足場材は、天然の海綿骨、脱塩した天然の海綿骨、又は、燐酸カルシウムやコラーゲンやヒドロキシアパタイトやこれらの材料の結合のような骨代替材で構成することができ、2mm以上の厚さを持つ。例えば、インプラントを外科的に挿入する関節組織に応じて、足場材の厚さを最低約3mm、最低約5mm、最低約8mm、最低約10mm、あるいはそれ以上とすることができる。
【0023】
生体適合性のある足場材又は骨代替材の微細孔は、実施の形態において、軟骨形成細胞がこの足場材の微細孔に所定の深さ以上に侵入しないように、軟骨形成細胞を足場材の上部または上部の近傍に残留させる生体適合性のある充填材であらかじめ充填される。この生体適合性のある充填材には、例えば、ヒアルロナンやコラーゲンやアルギナートの精製物、又はこれらの結合物が含まれる。
【0024】
軟骨形成細胞間質(CM)の組成には、例えば、アグリカン、コラーゲンタイプII、IX、及びXI、及びヒアルロナンが含まれる。組織には、例えば、少なくとも約5mg/cmのアグリカン、少なくとも約7mg/cmのアグリカン、又は少なくとも約10mg/cmのアグリカンが含まれる。実施の形態においては、組織を培養する時間の長さと要求される柔軟性又は剛性に応じて、ヒアルロナンに対するアグリカンの比率は約10:1から約500:1であり、コラーゲンに対するアグリカンの比率は約1:10から約1:1、さらには約10:1までとする。
【0025】
移植用骨軟骨の製造に用いられる軟骨は、関節軟骨や繊維軟骨のような様々な供給源から分離される。例えば、関節軟骨、肋骨軟骨、鼻軟骨、耳軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、又は、環状軟骨から細胞が分離される。通常の繊維軟骨には、腱、靭帯、関節間軟骨、及び椎間板が含まれる。
【0026】
ここで提供される試験管で培養された骨軟骨組織は、組織の外科的な修復に用いることができる。このような損傷には軟骨の全部に及ぶ深刻な損傷、骨軟骨の損傷、及び変性過程にある場合が含まれる。外科的修復には、例えば、外科的切開(関節切開)、及び、関節鏡を用いた試験管培養組織の挿入が含まれる。
【0027】
効果的な治療として、機械的な力を分散させるために組織の機能を回復させることが好ましい。機械的な力の分散については、例えば、Mizrahi他、1986年、Biorheol 23:311-330に公開されている。
【0028】
軟骨における異常の修復における問題については、特に、細胞ベースの治療法を使った様々なアプローチで追及されてきた。これらの治療法は、試験管で培養された細胞や組織を移植することにより正常な組織の機能を回復させることを目的とする。移植された細胞や組織は、損傷又は病変した細胞や組織と置き換えるために設計される。しかしながら、これらの多くのアプローチにおいて、細胞が存在する間、組織は形成されない。
【0029】
ということで、本発明は、関節軟骨とその基礎となる骨の両方に起こる欠陥を修復するための移植用骨軟骨の製造方法を提供する。好ましい実施の形態においては、培養された軟骨組織は、培養期間中に生体適合性のある足場材に付着する。
【0030】
一般に、軟骨細胞は分離され、軟骨のCMと共に軟骨細胞を製造するために培養される。次に、軟骨細胞とCMは、骨軟骨のインプラントを製造するだけの時間、1以上の成長因子の存在する生体適合性のある足場材で培養される。
【0031】
軟骨細胞/軟骨形成細胞の分離
この構成と方法に有用な軟骨形成細胞は本質的にはこのタイプの細胞を有するどんな組織からも分離することができる。請求の範囲とここで用いられる用語「軟骨形成細胞」は、適当な刺激に曝されたとき、軟骨組織を特徴付ける成分を生成又は分泌する能力を持つよう分化できる全ての細胞を意味する。軟骨形成細胞は、例えば硝子軟骨、弾性軟骨、又は繊維軟骨のような軟骨組織から事前に直接的に分離することができる。具体的には、関節軟骨(荷重がかかる関節又は荷重がかからない関節のどちらも)、肋骨軟骨、鼻軟骨、耳軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、環状軟骨、腱、靭帯、関節間軟骨と椎間板、及び、線維輪又は髄核のどちらでもから、軟骨形成細胞を分離することができる。腱細胞と靭帯細胞は、前十字検体又はアキレス腱のような具体的な供給源から分離することができる。
【0032】
あるいは、骨髄から軟骨形成細胞を分離することもできる(例えば米国特許5,197,985及び4,642,120;Wakitani 他(1994)J. bone Joint Surg. 76:579-591参照)軟骨形成細胞はまた幹細胞からも抽出することができる(米国特許6,214,369)。
【0033】
適切な軟骨細胞は、制限なく、人、オランウータン、猿、チンパンジーなどの類人猿、犬や猫などの肉食性哺乳動物、ネズミ、ハツカネズミなどのげっ歯類の動物、馬、牛、豚、羊、やぎなどの家畜動物、ゾウ、パンダ、キリンその他の動物園の動物を含む適切な哺乳類のどんな生体組織からも分離することができる。ここでの処置方法は人間の患者、及びどんな動物の対象物に対しても適用できる。
【0034】
軟骨細胞は適切な方法で分離される。種々の出発原料と軟骨細胞の分離方法とが知られている。Freshney著Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Techniques,第2版、A. R. Liss Inc., New York, 137 − 168 ページ(1987);Klagsburn著 “Large Scale Preparation of Chondrocytes,” Methods Enzymol. 58: 560 − 564 ページ(1979)参照のこと。
【0035】
出発物質が、実質的に軟骨細胞のみが存在する細胞タイプであるような組織の場合、例えば、関節軟骨の場合、細胞は、従来のコラゲナーゼによる消化と組織培養法により得ることができる。あるいは、出発物質内に付加的な細胞タイプを持つ組織から分離することができる。軟骨細胞を分離する既知の方法は、プラスティック組織培養容器に対して異なった粘着力を持たせる。第2の方法において、軟骨細胞の表面マーカにバインドされた抗体が組織培養プレート上に乗せられ、異質の細胞集団から軟骨細胞を選択的にバインドするために用いられる。第3の方法においては、軟骨特有の抗体を用いた蛍光活性化細胞分類法を用いて軟骨を分離する。第4の方法においては、フィコールのような標準勾配を形成する材料からなる密度勾配を用いて遠心力によりボイアント密度を基準に軟骨が分離される。
【0036】
もし必要であれば、分化した軟骨よりむしろ軟骨幹細胞を用いることもできる。分化のための幹細胞又は分化転換に適した分化した細胞を分離することのできる組織の例として、胎盤、臍帯、骨髄、皮膚、筋肉、骨膜、あるいは、軟骨膜が含まれる。細胞は、移植片培養及び/又は一般的な方法を用いて基質を囲む酵素温浸によりこれらの組織から分離される。
【0037】
実施の形態においては、本方法の一部として分離された細胞は、遺伝子学的に変形され、外因性のプロテイン又は、例えば全長プロテイン、融合プロテイン、変異体プロテイン、先端を切断したプロテイン、リン酸化されたプロテインのような変形プロテインのように表現されるか、又は、細胞は変形されて内因性のプロテインの形を取る誘引物質を呈する。遺伝子学的変形には、DNAのような外因性核酸の導入、又は、増量した内因性の核酸の導入が含まれる。組み込まれるDNAは、治療用生成物、軟骨製造用生成物、又は、成長因子やサイトカインや特別の軟骨形態のような培地の要求を軽減することのできる生成物を呈するように選択された構造となる。
【0038】
軟骨細胞CM生成用培地中の細胞培養
分離された軟骨細胞/軟骨形成細胞を、適当な培地内に、例えば少なくとも約10セル/ml、例えば、約2×10セル/ml、約4×10セル/ml、あるいは約6×10セル/mlの濃度で、浮遊させる。適当な培地には、アガロースやアルギン酸ナトリウムを含む溶液が含まれる。細胞は、生体で見られるような薄膜でバインドされたCMの生成を導く、球形構造が効果的に維持される状況で培養される。軟骨細胞は、CMの形成に効果のある期間、例えば、少なくとも5日間アルギナート内で培養される。軟骨細胞がアルギナート内で培養されるとき、軟骨細胞は球形構造(軟骨の典型的構造)を維持し、多量の培地を維持する。軟骨細胞が培養される培地には、ウシ胎仔血清や他の非相同の血清のような促進物質が、CMの生成を促進させるために、含まれていても良い。実施の形態において、外科的移植の予定移植対象者からあらかじめ採血した血液サンプルから作成しておいた、自系の血清を培地に含有させておくことができる。あるいは、移植対象の一卵性双生児のような同級体又は、動物が対象である場合に移植対象と同一の遺伝子型を持つ動物から血清を作成することもできる。移植可能な軟骨基質の生成のためアルギナート内での軟骨の分離生成については、米国特許6,197,061に開示されている。
【0039】
他の実施の形態において、軟骨培養培地には、さらに少なくとも1つの外部から加えられた特定の成長因子が含まれる。例えば、ウシ胎仔血清中には存在しない、骨モルフォジェニックプロテインやトランスフォーミング成長因子や、IGF−1のようなインシュリン様成長因子のような特定の成長因子を加えることにより、基質の形成を促進させる効果が得られる。本発明のこの実施の形態において、細胞に関連する基質の形成を促進するほぼ最大級の効果が得られる量の成長因子が培地に加えられる。この成長因子は、このように形成が促進された細胞のタイプに依存する。一般に軟骨細胞には、約50ng/mlから約200ng/mlの成長因子が用いられる。靭帯や腱や関節間軟骨に対しては、1μg/mlの量を用いることができる。
【0040】
成長培地内での軟骨細胞又は軟骨形成細胞の増殖により、単層培養で増殖がなされるときに起こるような軟骨細胞の表現型の喪失が誘発されることはない。好ましい実施の形態において、軟骨細胞の表現型は一般に関節軟骨で観察されるものであり、そこでは細胞は球形である。実施の形態において、細胞は、加えて、基質内に多量のアグリカンとII型コラーゲンを合成し蓄積すると同時に、基質内に最低限のI型コラーゲンを蓄積する。最低限の量のI型コラーゲンとは、基質内の全てのコラーゲン分子の約10%以下のI型コラーゲンの量を意味する。
【0041】
関節軟骨の軟骨細胞は表現型が安定していることが好ましい。表現型が安定している関節軟骨の軟骨細胞は、主な構造上の巨大分子を軟骨様基質に効果的に組み入れる能力を保持している。
【0042】
表現型が安定している細胞は、ヒアルロナンの少なくとも10倍以上のアグリカンを合成する。さらに、関節軟骨細胞により生成される基質中のヒアルロナンに対するアグリカンの比率は約10以上を維持することができる。
【0043】
CMと軟骨細胞
アルギナート内の軟骨細胞の培養により区画、即ち、元の組織における細胞の周りの領域を定める基質に代謝的に似ているCM区画と元の組織の領域間基質に似た細胞から除去された基質区画、として組織される細胞外液基質(ECM)が生成される。
【0044】
各軟骨細胞の周りに高度に組織化されたCMが形成されることにより、いくつかの利点が生み出される。生体内のCMは、アンコリンCII(コラーゲンにバインドする)及びCD44(プロテオアグリカン集合体内のヒアルロナンにバインドする)のような受容体を介して細胞に固定される。一旦この基質が細胞培養において再建されると、細胞は分化しにくくなる。さらに、軟骨細胞がプロテオアグリカン集合体に変化することにより、比較的急速にこの基質が改造される。
【0045】
好ましい実施の形態において、アルギナート内での培養過程で生成されたECMにおけるCM区画には、アグリカン、コラーゲンタイプII、IX、及びXI、及びヒアルロナンが含まれる。アグリカン分子は、ヒアルロナン分子を介して軟骨細胞膜上の受容体(CD44を含む)に全体としてバインドされて形成される。
【0046】
さらに、(各分子の周りの)CMの分子構成とさらに除去された(細胞間の)基質の分子構成は、具体的な培養条件を変更することにより変えることができる。変更には、培養システムの物理的構成を変えることと、様々な成長因子を使用することが含まれる。基質の生成と組織化のための操作は、軟骨損傷の外科的治療のために試験管内で関節細胞を培養するために用いられる。
【0047】
クロスリンクしたコラーゲンの中身と広がりは、治療用途により変化する。より多くクロスリンクした組織はより成熟した軟骨の模擬計算に対して望ましい。一般に、コラーゲンを含む組織とコラーゲンとクロスリンクしたピリジノリンの範囲は培養時間と共に増大する。特にクロスリンクは2週間の培養の後、濃度の大きな増加を示した。短時間の培養期間内に、細胞基質内のコラーゲン繊維は、過度にクロスリンクされることはない。一般に、良い機能的特性と比較的少ないクロスリンクを持つ組織は取扱が簡単である。
【0048】
他の実施の形態において、軟骨細胞は白又は黄色(弾力性がある)の内の一方の繊維軟骨から分離される。この軟骨細胞は、このように分離した元の繊維軟骨固有のものよりもさらに多くのコラーゲンとプロテオグリカンを有する細胞間質を生成する繊維軟骨の表現型を保持している。この実施の形態では、複製しようとする組織に応じて、タイプIコラーゲンが優勢となり得る。
【0049】
CMと軟骨細胞の復元
溶解性を高めたアルギナートビーズにより、効果的な培養期間を経てCMと培養された軟骨細胞の復元が、既知の技術によりなされる。結果として生じた細胞の懸濁液は遠心分離され、浮遊物中に残った基質成分がさらに取り除かれて、CMと軟骨成分がペレットに移される。
【0050】
生体適合性のある足場材上のCMと軟骨細胞の培養
上述のように分離された軟骨細胞とCMとは、さらに生体適合性のある多孔質の足場材上で培養される(図1)。実施の形態においては、プラスティックの支持枠に支持された生体適合性のある多孔質の足場材を含む培養細胞挿入物は、培養環境を形成するために用いられる。培養媒体は、培養細胞挿入物の内外で培養細胞挿入物の周りに流れる。この実施の形態において、培養細胞挿入物は半透膜を具備する。半透膜は、軟骨細胞とそのCMとを実質的に効果的に浸漬させるだけの量の培地を培養細胞挿入物に浸透させる。
【0051】
生体適合性のある多孔質の足場材には、少なくとも1つの天然の海綿骨、燐酸カルシウムのような(米国特許6,277,151参照)脱塩した天然の海綿骨(米国特許5,904,716参照)、コラーゲン、及び骨代替材が含まれる。足場材は、少なくとも約2mmの厚さ、例えば約3mm、約4mm、約6mm、さらには約10mmの厚さとすることができる。他の実施の形態では、足場材は約1.5mm又は約1.0mmとし、修復すべき関節の生体的な特性に適合するように足場材の厚さが選択される。濃縮した燐酸カルシュウム粒子からなる吸収性の生体材料からなるインプラントは米国特許6,077,989に示されている。
【0052】
生体適合性のある多孔質の足場材は、挿入する培養細胞と似た形と直径になるように形成又は切り取られる。さらに、生体適合性のある多孔質の足場材は、一片の材料、複数の材料を一片の材料として形成した合成物、又は個々の小片をモザイク状に単一の形に形成した物で構成することができる。
【0053】
生体適合性のある多孔質の足場材上に細胞間質と共に軟骨細胞を植え付ける前に、微細孔には、細胞の侵入を妨げ足場材の中に侵入する細胞の深さが約1mm以下になるよう生体適合性のある充填物を充填しておくことができる。細胞の足場材への侵入は(約1mm以下とするが)、足場材に対する軟骨細胞の付属物と結びつく。充填物は、ヒアルロナン、コラーゲン、又はアルギナートの生成物の少なくとも1つからなる。あるいは、約1mm以上の深さに細胞が侵入するのを実質的に抑制するために、足場材を構成する材料の微細孔の大きさを十分小さくする。
【0054】
栄養補給を可能とし細胞の周りに生成される老廃物の量が実質的に増大しないように、半透膜を通って軟骨細胞から生体適合性のある充填物が拡散し、培養培地が軟骨細胞に拡散する。半透膜は、生体適合性のある充填物が微細孔を通って足場材の外に急速に拡散することを実質的に防止するような微細孔の大きさを持つことが好ましい。実施の形態においては、半透膜は約5ミクロン以下の微細孔の大きさを持つ。さらに、半透膜を萎縮させないで培養枠から取り外すことができる十分な強度を持つような、また、半透膜上の組織を取り扱って望ましい大きさに切り取ることができる十分な強度を持つような、半透膜の孔密度とすることが好ましい。典型的な実施の形態において、半透膜は約8×10孔/cmの孔密度を持つ。
【0055】
培養に使用するのに適したどんな材料からでも半透膜を作ることができる。適切な半透膜の例として、これに限定されないが、ファルコン細胞培養インサート(Falcon Cell Culture Insert)(ポリエチレンテレフタレート(PET)半透膜、微細孔の大きさ約0.4ミクロンから3ミクロン、直径約12mmから約25mm)、コスター・トランスウエル・プレート(Coaster Transwell Plate)(ポリカーボネート半透膜、微細孔の大きさ約0.1ミクロンから5ミクロン、直径約12mmから約24.5mm)、ヌンク組織培養インサート(Nunc Tissue Culture Insert)(ポリカーボネート半透膜、微細孔の大きさ約0.4ミクロンから3.0ミクロン、直径約10mmから約25mm)、及びミリセル培養プレートインサート(Millcell Culture Plate Insert)(ポリテトラフロロエチレン(PTFE)半透膜、ポリカーボネート、微細孔の大きさ約0.4ミクロンから3.0ミクロン、直径約27mm)が挙げられる。
【0056】
軟骨の細胞は、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)とハムF12培地(Ham's F12 medium)とをほぼ等分にしたもの、さらに20%のウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, UT)、25μg/mlのアスコルビン酸塩、及び50μg/mlのゲンタマイシン(Gibco)のような抗生物質を含む適切な成長培地内で培養される。関連する実施の形態において、培地を連続的に排出する閉じられた容器内で細胞が培養される。培地には、内因性のインシュリン様成長因子−1(IGF−1)を含むウシ胎仔血清が、例えば少なくとも10ng/mlの濃度で含まれる。この実施の形態において、ウシ胎仔血清もまた、成長因子とみなすことができる。1以上の適切な成長因子を細胞間質の形成を刺激するために培地に外部から加えることもできる。このような付加的な成長因子には、これらに限定されないが、例えば、骨形成たん白質、TGFβのような転換成長因子、及びインシュリン様成長因子、例えば、IGF−1のような、軟骨による基質の合成を刺激する1以上の種々の成長因子が含まれる。
【0057】
本発明の他の特徴によれば、再生成されたCMを含む細胞は、粘着性のある軟骨基質を形成するのに効果的な時間、生体適合性のある足場材上の培地でさらに培養される。培養に効果的な時間とは、一般的な培養条件下で普通少なくとも約3日である。移植前の基質における部分的に成長を阻害することにより、成熟した軟骨ほども硬くはなく、取り扱い中に形状と構造を維持できるだけの引張り強さを持つ基質を生成することができる(図2および3)。
【0058】
更なるステップにおいて、少なくとも約3日の期間の後、または、軟骨組織が取り扱うのに十分成長する3日以上の期間の後、組織培養インサートから骨軟骨のインプラントが取り出される。培養インサートから取り出すことにより、生体適合性のある充填材がもし存在していた場合、それを効率的に取り出すことができ、軟骨組織に効率的に栄養を分配することができ、軟骨組織から老廃物を効率的に排除することができる。この骨軟骨のインプラントは、外科的移植を実施するのに十分成熟するまで培養しておくことができる。
【0059】
米国特許出願2003/0077821A1に記載の方法を用いた、1層または2層またはそれ以上の層を持つ軟骨組織も本発明の実施の形態に含まれる。細胞は必要に応じて異なった層から取得することができ、または、2以上の単分子層を階層化した軟骨組織の再構成に用いるために、細胞を単分子層として培養することもできる。
【0060】
軟骨基質
一般に、生体適合性のある足場材上に形成される軟骨基質は、少なくとも約5mg/cmの濃度のアグリカンを有し、プロテオグリカン集合体に組み込まれる分子を新たに合成するのに効果的な量のヒアルロナンを含んでいる。本発明による方法で培養された軟骨は、物理化学的性質が、生来的に生成される軟骨に非常に似ており、通常約14日という短い期間で生成することができる。培養軟骨は半透膜から取り出される。
【0061】
詳述した上記発明は、さらに以下の特許請求の範囲に示されるが、これに限定されるものと解釈すべきではない。個々に引用された前内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】アルギン酸ビーズから解放した後、牛の海綿骨の上部に2週間培養させた、牛のARC軟骨組織の断面を示すヘマトキシリン・エオジン染色した組織の光学顕微鏡写真である。
【図2】培養ビーズから解放した後2週間培養させた、牛のARC軟骨組織の骨軟骨インプラントを上部から見た写真であって、インプラントの大きさを示すために、一般の定規を並べて撮影した写真である。
【図3】培養ビーズから解放した後2週間培養させた、牛のARC軟骨組織の骨軟骨インプラントを側面から見た写真であって、インプラントの大きさを示すために、一般の定規を並べて撮影した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な骨軟骨インプラントであって、
生物学的適合性のある足場材に付着させた培養軟骨組織を具備し、前記軟骨組織は、細胞間質(CM)を有する軟骨細胞を具備し、前記CMは、試験管内で軟骨形成細胞を培養することにより形成され、生体内で見られる細胞膜に類似し、
前記足場材は、多数の微細孔を具備し、天然の海綿骨、脱塩した天然の海綿骨、コラーゲン、及び骨代替材のうち少なくとも1つを具備するグループから選択される、移植可能な骨軟骨インプラント。
【請求項2】
前記細胞は、試験管内のアルギナートビーズ中で培養される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記骨代替材は、燐酸カルシウム又はヒドロキシアパタイトのうちの少なくともいずれか1つである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記骨代替材は、少なくとも約2mmの厚さをもつ、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記CMは、アグリカン、コラーゲンタイプII、IX、及びXI、及びヒアルロナンのうちの少なくとも1つを具備する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記軟骨組織は、少なくとも約5mg/cmのアグリカンを具備する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
ヒアルロナンに対するアグリカンの比率は約10:1から約500:1である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
コラーゲンに対するアグリカンの比率は約1:10から約10:1である、請求項6に記載のインプラント。
【請求項9】
前記生物学的適合性のある足場材の微細孔には生物学的適合性のある充填材が含まれ、当該充填材は、細胞が過度に成長して所定の制限深さを越えて前記足場材に入り込むことを防止する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記生物学的適合性のある多孔性の足場材の微細孔には培地が含まれる、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
基礎となる前記足場材の末端に外側表面を持つ、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記足場材の微細孔は、前記外側表面から離れるにつれて孔の径が漸減又は漸増する、請求項11に記載のインプラント。
【請求項13】
前記外側表面から離れた微細孔のほうが、前記外側表面に近い微細孔より大きい、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
軟骨形成細胞とCMは実質的に前記外側表面と結びついている、請求項11に記載のインプラント。
【請求項15】
前記足場材内の細胞は、実質的に前記外側表面と結びついている、請求項11に記載のインプラント。
【請求項16】
取り外し可能な半透膜のフィルタを持つ、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記生物学的適合性のある充填材は、精製されたヒアルロナン、コラーゲン、又はアルギナートのグループから選択されたもののうち少なくとも1つを具備する、請求項9に記載のインプラント。
【請求項18】
前記生体適合性のある充填材は、粘度の高い液体又はゲルを具備する、請求項9に記載のインプラント。
【請求項19】
前記軟骨形成細胞は、関節軟骨又は繊維軟骨から分離される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項20】
前記軟骨形成細胞は、軟骨細胞又は軟骨形成幹細胞が分化したものである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項21】
前記幹細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、皮膚、筋肉、骨膜、脂肪、及び、軟骨膜から成るグループから選択された組織から得られる、請求項20に記載のインプラント。
【請求項22】
前記軟骨形成細胞は、肋骨軟骨、鼻軟骨、耳軟骨、気管軟骨、喉頭軟骨、甲状軟骨、披裂軟骨、及び環状軟骨から成るグループから選択された繊維軟骨から得られる、請求項20に記載のインプラント。
【請求項23】
前記繊維軟骨は、腱、靭帯、関節間軟骨、及び椎間板のグループから選ばれる請求項19に記載のインプラント。
【請求項24】
移植可能な骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であって、
分離した軟骨形成細胞を、軟骨形成細胞間質(CM)の形成及びCMを含む培地から細胞を再生するのに有効な一定の時間培地の中に入れて培養する段階と、
多孔性の生体適合性のある足場材を、成長因子が存在するCMと共に培養軟骨組織の形成に有効な時間前記軟骨形成細胞と接触させ、前記生体適合性のある足場材に前記培養軟骨組織を付着させる段階と、
を具備する、移植可能な軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項25】
前記足場材を接触させる前に、前記足場材の微細孔に生体適合性のある充填物質を充填する段階を具備する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
半透膜を有するプラスティックの支持枠に、培養軟骨組織と足場材を挿入する段階を具備する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記半透膜は、約5ミクロン又は約5ミクロン以下の孔径を持つ、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記半透膜は、少なくとも約8×10孔/cmの孔密度を持つ、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記半透膜の構成は、ポリエチレンテレフタート、ポリカーボネイト、及びポリテトラフロールエチレンのグループから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記成長因子は、骨形成たん白質、トランスフォーミング成長因子、及び、インスリン様成長因子 のグループから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記成長因子は、インスリン様成長因子−1 (IGF-1)である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記IGF-1が約50ng/mlから約200ng/ml存在する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CMは、ヒアルロナンに対するアグリカンの割合が約10:1から約200:1である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記CMは、コラーゲンに対するアグリカンの割合が約1:10から約10:1である、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
請求項24乃至34のいずれか1項に記載の方法で生成された、移植可能な骨軟骨インプラント。
【請求項36】
足場材を接触させる前記段階の後に、対象に外科的に前記インプラントを挿入する段階を具備する、請求項25乃至35のいずれか1項に記載の方法
【請求項37】
対象を人間とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
足場材を接触させる前記段階の前に、前記軟骨形成細胞及びCMを一定時間保存して安定させる段階を具備する、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
保存して安定させる前記段階の後に、前記軟骨形成細胞及び前記CMを医療施設に移送する段階を具備する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
移植可能な骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であって、
軟骨形成細胞間質(CM)の形成に有効な一定の時間培地の中に入れて培養し分離した軟骨形成細胞を提供する段階と、
多孔性の生体適合性のある足場材を、成長因子が存在するCMと共に培養軟骨組織の形成に有効な時間前記軟骨形成細胞と接触させ、生体適合性のある足場材に当該培養軟骨組織を付着させる段階と、
を具備する、移植可能な軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項41】
足場材を接触させる前記段階の前に、培養された軟骨形成細胞及びCMを医療施設に移送する段階を具備する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
足場材を接触させる前記段階は、医療施設にてなされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
損傷を受けた組織を外科的に復元して患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であって、
外科的に組織を切開する段階と、
前記試験管内で製造した請求項1に記載の培養軟骨組織を当該切開部に挿入する段階と、
を具備する、損傷を受けた組織を外科的に復元して患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項44】
損傷を受けた組織を外科的に復元して患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法であって、
外科的に組織を切開する段階と、
前記試験管内で製造した請求項41に記載の培養軟骨組織を当該切開部に挿入する段階と、
を具備する、損傷を受けた組織を外科的に復元して患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項45】
前記損傷は、深刻な軟骨の損傷、軟骨の全層に及ぶ損傷、軟骨の部分的な損傷、骨軟骨の損傷、及び変性過程から成るグループから選択される、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記試験管内で製造した請求項1に記載の骨軟骨組織を関節鏡を使って挿入する段階を具備する、損傷を受けた組織を外科的に復元して患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項47】
前記試験管内で製造した請求項1に記載の骨軟骨組織のインプラントで関節を治療する段階を具備する、骨関節炎、リューマチ性関節炎、離断性骨軟骨炎、又はその他の軟骨損傷により関節に障害を受けた患者を治療するための骨軟骨のインプラントを試験管内で製造する方法。
【請求項48】
試験管内で骨軟骨組織を製造するためのキットであって、
生体適合性のある足場材と、
細胞が細胞間質を形成するのに適した軟骨形成細胞を培養するための培地と、
容器と、
使用説明書と
を具備する、試験管内で骨軟骨組織を製造するためのキット。
【請求項49】
前記足場材は、天然の海綿骨、脱塩した天然の海綿骨、コラーゲン、及び骨代替材から成るグループのうちの少なくとも1つが選択される、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
さらにアルギナートを含む、請求項48に記載のキット。
【請求項51】
外科手術用に整えられた骨軟骨組織を製造するためのキットであって、
生体適合性のある足場材と、
細胞間質を含む培養軟骨形成細胞を具備するインプラントと、
容器と、
を具備する、外科手術用に整えられた骨軟骨組織を製造するためのキット。
【請求項52】
さらに、使用説明書を具備する、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
さらに前記細胞を培養するための培地を具備する、請求項51に記載のキット


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−514839(P2006−514839A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−502803(P2004−502803)
【出願日】平成15年5月13日(2003.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/014996
【国際公開番号】WO2003/094703
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(504419829)アーティキュラー・エンジニアリング・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】