説明

移送による薬伝達システム

【課題】患者の真皮内へ流体薬剤を移送させることによって人体組織内へ流体薬剤を導入する方法及び装置を提供する。
【解決手段】患者の皮膚の外部表面が複数の微小侵入体60に対して引き込まれ、微小裂が表皮内に切り裂かれ、流体が真皮内での拡散又は吸引のために導入されるようにさせる。薄いシート12の表面に一連の突起を打ち抜くことによって微小侵入体が生成され、それによって表皮内へ侵入する鋭端が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治療物質を体内に伝達するシステムに関する。特に、真皮への侵入が最少で流体を移送する便利な方法及び装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
皮膚を通して治療流体薬剤を伝達するには、表皮の外層である角質層及び皮膚層に侵入することを要する。皮膚層は、微生物及び大抵の他の物質の体内への流入又は流出に対し通常主として不浸透性障壁を与える。表皮層への侵入は、慣習的に中空針又はカニューレ(套管)により行われる。針は、表面及び表皮層を通して真皮内に進む連続侵入過程の双方において皮膚を局部的に切り裂くために鋭い尖端を与えるように侵入端で面取りされる。既知の方法の中には、静脈を通して物質をより効果的に注入するために、下に横たわる血管を膨脹又は拡張させる注入カニューレの回りに吸引を施すものもある。真皮は生きた神経細胞を含むので、針の侵入は患者にとってしばしば不快なものである。
【0003】
薬又は他の治療薬剤を体内へ導入する知られた方法の中には、多重針を用いるものもある。多重針を用いる既知の方法は、製造が難しいために高価な装置を必要とする。
【0004】
当業界では、治療薬剤が循環系によって取り上げられ、臨床的に有利に体内に分配され得るようにそれを真皮内に導入する他の方法が知られている。この様な一方法は、膏薬のような簡単な局所適用で、表皮を通した薬剤のおそい拡散に頼るものである。別の方法では、噴射注入器を用いることによって、外部組織層を機械的にさらに分離することなく、1以上の流体薬剤流が表皮を通して強制的に流入される。流体が表皮を通して通過することを当てにするこれらの方法では、分散率、従って、導入される薬剤の総量が高度に不明確かつ変化し得る。当該物質が所望の濃度を越えることによって治療薬剤が危険若しくは高価になるので、この不確実性は多くの用途で受容できない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態面により、以下に定めるように多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させる方法が与えられる。同方法は、各々が多孔性媒体の第1区域から第1区域に最も近い多孔性媒体の第2区域まで達する少なくとも1経路に沿って圧力勾配を生じさせ、多孔性媒体の外面で第2区域の圧力が周囲の圧力未満になり、少なくとも1つの微小裂を通して多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させるようにすることから成る。「微小裂」の用語は以下に定める。
【0006】
本発明の代わりの実施形態では、物質は多孔性媒体に対して流入又は流出可能な液体又は治療薬剤であり、多孔性媒体は人体組織でもよい。圧力勾配を生じさせる段階は、少なくとも1つの微小侵入体を有する多孔性媒体の外部境界内の少なくとも1つの微小裂に穴をあけること(パンク)を含む。さらに、多孔性媒体区域間の圧力勾配は、多孔性媒体の外面の一部を吸引し、微小侵入体の小部分を吸引し、微小裂の小部分を吸引することによって生じさせ得る。本発明の他の実施形態では、微小侵入体及び多孔性媒体の外部境界間の接点を実質的に囲む多孔性媒体の外部境界の一部分を吸引することによって、少なくとも1つの微小侵入体が多孔性媒体の外面と接触するように吸い込まれる。
【0007】
本発明のさらなる面によると、多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させる装置が与えられる。同装置はプラテン(圧盤)を有し、プラテンは少なくとも1つの穴と、多孔性媒体の外部境界内の微小裂を分離するためにプラテンと結合される少なくとも1つの微小侵入体とを有する。各々が多孔性媒体の第1区域から第1区域に最も近い多孔性媒体の第2区域まで達する少なくとも1経路に沿って圧力勾配を生じさせ、多孔性媒体の外面で第2区域の圧力が周囲の圧力未満になるようにさせる真空装置を備える。多孔性媒体内に物質を移送するようにさせる、少なくとも1つの微小侵入体に物質を供給する貯蔵器も与えられる。装置の代替実施形態では、少なくとも1つの微小侵入体に対して多孔性媒体の外面を吸い込む部分真空が与えられ、一方、さらなる代替実施形態では、各々が出力を有する、多孔性媒体内に移送される物質の量を監視する少なくとも1つのセンサと、センサ出力に基づいて貯蔵器によって供給される物質の速度を制御する制御器とが与えられる。さらに、多孔性媒体の外部境界を横切る物質の移送に対する生物的応答を監視する少なくとも1つのセンサと、センサ出力に基づいて物質が供給される速度を制御する制御器とが与えられる。
【0008】
本発明のさらなる面によると、多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させる装置を製造する方法が与えられる。同方法は、プラテンに穴を開けるように薄い平らなプラテンの表面に一連の突起をパンチ(打抜き)し、第1充実空間をプラテン穴の第1小部分と結合させ、次いで第2充実空間をプラテン穴の第2小部分と結合させることを含む。本発明の代替実施形態では、薄い平らなプラテンの表面にパンチされた突起は円錐形である。
【0009】
本発明の製造方法面での他の実施形態では、多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送する装置の代替方法が与えられる。同方法は、薄い平らなプラテンの表面に一連の半島形の舌状体をパンチし、プラテンに穴を開けるようにプラテン表面下方に半島形舌状体を押し下げ、第1充実空間をプラテン穴の第1小部分と結合させ、次いで第2充実空間をプラテン穴の第2小部分と結合させることを含む。
【0010】
ここで述べた流体移送システムは、下に横たわる真皮に対する局所的衝撃なしに、表皮を通して十分制御されかつ再現可能な量の液体を効果的に導入する能力を与える。本発明の追加の利点は、表皮を通して液体薬剤を導入する安価な装置を提供することである。本発明の他の目的及び利点の一部は明らかで一部は以下に指摘する。本発明は添付図面と共に以下の記載を参照することによりいっそう容易に理解されるであろう。
【特殊実施形態の詳細な説明】
【0011】
局所適用リドカイン及びインシュリンのような多くの有用な治療薬剤は、真皮上層内への拡散によって体内へ導入され得る。生きた組織から成る真皮は、人体自身のリンパ液のような流体に対し高度な浸透性がある。しかし、外部の薬剤を体外から真皮内に導入するためには、流体に対して極端に低い浸透性を有する表皮の角質層を横切る必要がある。
【0012】
吸引、拡散又は濃度、圧力勾配又はその他の任意の組合せのいずれによるかにかかわらず、液状又はガス状の治療薬剤又は他の物質が、組織を通して流入、流出又は移動する過程は、本明細書及び特許請求の範囲では「移送」と呼ぶ。さらに、本明細書及び特許請求の範囲で用いる「微小侵入体」は、実質的に真皮の敏感な皮内に侵入することなく表皮の枯皮に穴を開けるのに用いられ得る鋭い突起を指す。表皮に穴を開けることによって、多くの治療薬剤を真皮内へ導入するために微小侵入体を有効に用いることができる。特定化合物の侵入を可能にするのに要する表皮の裂け目の大きさは、化合物の特殊な分子構造に依存する。ある場合には、治療薬剤を通すのに要する大きさは顕微鏡的に微小で、ミクロン程度である。本明細書及び特許請求の範囲では「微小裂」の用語は、本発明によりそれを通して治療薬剤が真皮内に到達できる表皮の裂け目を指す。微小裂は、真皮の顕微鏡的裂け目として自然発生するか若しくは、上記のように、微小侵入体の穴開け作用を通して誘発され得る。
【0013】
治療的に有効な量の治療薬剤を真皮内へ通すためには、各々が真皮に対する流体薬剤の小部分を伝える、複数の微小裂を用いることが必要になり得る。表皮を通して真皮内へ流体を導入するために1以上の微小侵入体を用いる方法及び装置並びに同一目的の装置を製造する手段につき、図1−9を参照して以下に述べる。同図では、同一参照番号は本発明の同一又は対応する要素を指す。
【0014】
図1を参照すると、概して参照番号10で示される微小侵入体を並べたものが透視図で示される。微小侵入体列10は、薄い箔から成るシート12で構成される。望ましい実施形態では、シート12はステンレス鋼のような硬化金属で、厚さが約0.0005−0.003インチ(0.5−0.3ミル又は約13−75ミクロン)である。他の材料もシートの被覆及び処理材として用いられ得る。これらはすべて請求された本発明の範疇に属する。本明細書及び特許請求の範囲ではシート12は「プラテン」としても同様に言及される。プラテン12の面積は、概して1平方センチ程度である。しかし、以下に詳述するように、体内へ導入される流体量及び必要な拡散深さを達成するために流体が有効的に導入される速度に依存して大小の寸法が用いられる。プラテン12は、以下に述べるように、容易に製造されかつ表皮を通して伝染性又は毒性物質の導入を防止するために容易に殺菌される。
【0015】
微小侵入体は、一連の切込み、スロット14(図7)又は突起によってプラテン12の連続性を中断させることによって作られる。本発明の実施形態を示す図2では、プラテン12を貫通して穿孔(パンチ)することにより微小侵入体60が作られてぎざぎざの端62が残され、それにより角質層を通した流体が導入される。さらに以下述べるように、他の形状の微小侵入体も本発明の範囲内にある。円錐又は噴火口状の形状が例示されているが、他の形状の切込み又はスロットを用いてもよい。望ましい実施形態では、概して10×10微小侵入体がプラテン12内にパンチされる。再び図1を参照すると、微小侵入体60間の間隔は0.10インチ(2.5mm)程度であるが、正確な絶対及び相対的寸法は、以下に述べる物質及び治療パラメータに依存する。望まし実施形態では、配列の間隔は図示の通り一定であるか若しくは必要とされる拡散深度輪郭に依存して任意でもよい。望まし実施形態では、表皮組織を切離すために鋭い、ぎざぎざのある、非常に強い微小侵入体60の端62が以下に述べる製造方法で作られる。プラテン12が患者の皮膚に対してしっかり押付けられると、微小侵入体60は、近似的に標準表皮層の厚さだけ又は1ミル(25ミクロン)程度真皮に向けて侵入する。
【0016】
図3−5を参照して真皮内に流体を導入する機構につき以下に述べる。そこでは患者の皮膚が断面で示され、皮膚20が表皮22及び周囲環境間の境界面を構成する。境界面24は、真皮から表皮22を分離する。既に定めたように微小裂26は、微小侵入体の切離し動作によって生じる表皮の裂け目である。一定の流体薬剤導入に対しては、微小侵入体がプラテン面の外側に突出する必要はない。それは表皮がスロット端の厳密な曲率半径の回りで真空により吸引されているからである。微小裂26の正確な形状は円筒状又は不規則でよく、それは本論議では重大ではない。微小侵入体は完全なカニューレでよいが、これは多くの場合において不必要である。流体の表面張力及び表皮における毛管作用が微小裂26内への流体流入の案内となるからである。
【0017】
慣用的に流体は体内の内部圧力より高い圧力を流体に与えることによって体内へ注入されるが、本発明の望ましい実施形態では2つの他の原理が採用される。その1つは拡散で、液体が高濃度から低濃度の場所へ流れる性質である。初等物理学で良く知られている通り、流れJは液体の濃度勾配ρに比例する、即ち、

J=−a▽ρ

ここで、aは拡散定数であり、皮膚組織を通る流体の浸透、特に組織の多孔性と比例した注入される薬剤の分子寸法について説明する。比例の意味は、液体が高濃度から低濃度の領域へ流れることを反映する。微小裂30を介して系内へ導入される流体28が保存されるので下式が成り立つ。
【0018】

∂ρ/∂t=−▽・J

同式は、各微小容量要素を囲む表面から流出する流れは、同要素内に含まれる流体の減分と等しいことを表す。拡散のみを考慮すると、上記2式の組合せは下記拡散式で与えられる真皮内の流体に対する空間的分布に帰着する。
【0019】

∂ρ/∂t=aρ

この性質は皮膚の「はじき出し」動作を反映する。3次元拡散式の解は、真皮内の正確な流体分布、特に微小裂の底面32から放射する流体28の等濃度線を与え、濃度は真皮内へ向けて殆ど指数的に減少する。従って、もし等値線34が組織の半飽和の等値線を表すなら、1/4飽和等値線36は微小裂の底面32からの等値線34よりさらに半飽和だけ真皮内にある。
【0020】
しかし、効果的に皮下導入される薬剤の中には、拡散のみでは真皮内へ有効量の薬剤を導入させるのに不十分なものもある。真皮のような多孔性媒体内への流体の流れJも、同様に下式による圧力勾配によって支配される。
【0021】

∂J/∂t+RJ=F−▽ρ

ここでRは、導入される特定の流体によって流れる真皮の有効抵抗(皮膚の構造的輪郭を考慮した張筋かもしれない)、Fは、もしあるとすれば、流体を皮膚内へ注入するために加えられる力、ρは真皮内で圧力を特性づける場(フィールド)である。圧力勾配▽ρは、微小裂26の小部分に真空又は部分真空を適用することにより真皮内に生成される。その代わりに、圧力勾配▽ρは、表皮22に外部からの真空又は部分真空を当てることにより生成され得る。それは表皮が真皮からの外向きの空気流に浸透性があるからである。微小裂40において真空又は部分真空を適用することによる効果は図4に示される。底面42は、当てられた部分真空の圧力P2になり、一方等圧線43、45、47は連続的に増加する圧力を示し、表皮の透過性のためにその外面で周囲圧力、即ち、概して周囲大気圧と実質的に平衡状態にある、真皮の内部圧力P0になる傾向がある。等圧線43、45、47は、両者間に圧力勾配が存在する任意の多孔性媒体の区域を示す。
【0022】
時間の関数としての真皮内の流体分布を得るために、微小侵入体が適用されている皮膚領域の一部に真空が適用されかつ微小侵入体を通して流体が真皮に加えられる時、浸透式は圧力抑制下で解かれる。真空又は部分真空を適用することによる効果は図5に示される。真空は、微小裂40又は、その代わりに、表皮を 通して適用され、微小裂40底面42において低圧表面を生成する。隣接微小裂44は、表皮22を通して流体28の通過を可能にする。真皮内に生じる圧力勾配のために等圧線48、50、52は、より深い侵入に加えて、真空が適用されない状態よりは一層一様な流体の真皮内への侵入を示す。多孔性媒体内への流体 28の移送経路、即ち、等圧線48、50、52に対して直角で、微小裂44から流体28内へ向けられるものは経路54で示され、部分真空が適用される微小裂40に向けて導入される。高圧区域から低圧区域に向けて等圧線48、50、52を横切る経路54の筋書きは多数回繰り返され、経路は高圧の各微小裂44から発して低圧の各微小裂40に向けられ得る。
【0023】
拡散定数は深さ当りの容積と時間との積である尺度を定め、それによって微小穴の大きさ及び間隔並びに液体及び真空充実空間間に適用される差動圧力が最適化され、処与の分子構造の治療薬剤に対する必要な深さの侵入が与えられるようにされる。
【0024】
液体及び真皮間に処与の境界面領域を与えるために、中央間隔に対する微小裂直径の比が微小裂の合計数に対して兼ね合わされなければならない。これは、組織内の特定薬剤の拡散定数a及び有効抵抗Rを含むシステムの物質パラメータに対する上記式の解を必要とする。
【0025】
図6は、図1及び2の微小侵入体の形状を輪郭で示す。微小侵入体の代わりの形状が図7について理解されよう。本発明のこの代替実施形態では、微小侵入体は一連の切込み又はスロット14によりプラテン12の連続性を中断させることによって生成される鋭端である。多くの他の形状の切込み又はスロットが用いられ得るが、山形又は半月形状のものが例示される。本実施例のスロットは直線寸法で0.050インチ(1.3mm)程度である。
【0026】
表皮組織を切離すための本実施形態の微小侵入体は、舌状体16をプラテン12平面から外方に僅かに曲げることによって生成され、プラテン12が患者の皮膚にしっかり押し付けられると、微小侵入体が約標準表皮層の厚さ、即ち、1ミル(25ミクロン)だけ真皮に向けて侵入するようにされる。図8には、図7の舌状体がプラテン12平面の外へ押し出されたものが断面で示される。
【0027】
低圧の小領域と注入された流体の小領域が交互に存在する構成を生成するためには各種の実施形態が用いられ得る。図9を参照すると、望ましい実施形態では粘着物質70によりプラテン12が患者の皮膚領域に固定される。2重マニホールド72が、スロット14の小部分と充実空間74との結合及び充実空間74と連通することなく充実空間76と相補的スロット14の小部分との間に空気を吸い込み得る貫通経路82を与える。真空が充実空間76のホース80を通して引き込まれ、それによって患者の皮膚上の相互接続スロット14を介して引き込まれる。真空又は部分真空を生成するために、当業界では機械ポンプ又は化学反応のような手段がよく知られている。真空が充実空間76を介して引き込まれる一方で、ホース78又は、より一般的に、任意の種類の貯蔵器から充実空間74、さらに相互接続されたスロット14を介して流体が真皮内に導入され得る。通常流体は周囲圧力のものであるが、皮膚内へのより早い注入が指示される場合には、ホース78及び充実空間74を介して流体に追加の圧力が加えられ得る。移送の量及び速度は、皮膚内の流体の容量又は濃度センサによるか若しくは、その代わりに、移送装置内の流速又は容量センサで監視され得る。さらなる実施形態においては、例えば、血糖レベルのようなある生物反応を監視することによって監視され得る。用途によってこれが望ましい場合には、任意の上記センサによって測定される量に応答して、真皮内への流体導入速度が閉ループ式制御器によって制御され得る。
【0028】
さらなる代替実施形態では、貫通スロット14以外のすべての空気通路に対してプラテン12を密閉する、単一充実空間が用いられる。この実施形態では、プラテン12が患者の皮膚領域に隣接して配置され、粘着物質、真空吸引又は直接加圧によって固定される。真空は、真空ホース80を通して空気を引き出すことによって、従来のポンプ装置を用いてプラテン12のスロットを通して引き込まれる。真空によりプラテン12に対して皮膚表面が引上げられるのみならず、追加的に患者の真皮以内に圧力勾配が生成される。それは空気に対する真皮の透過性が有限であるために表皮を通して空気も同様に引き込まれるからである。さらに、スロット14の端15である微小浸入体は、皮膚がプラテン12に対して引も込まれていることによって表皮内に導入される。外部バルブ(図示せず)操作によって流体はホース80内に導入され、充実空間76を埋め戻し、スロット14及び微小浸入体16を通して真皮内へ引き込まれる。
【0029】
本明細書で述べた方法は臨床用途につき記載されているが、それ以外の用途にも適用され得る。概して本発明は、媒体が一方側のみから接近可能な多孔性媒体内で流体を特定な形で分配させることに適用され得る。本発明の記載された実施形態は単なる例を意図するものであり、当業者にとって多くの改変、修正が行えることは明らかである。この様な改変、修正は添付した特許請求の範囲の範囲内に入るものであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施形態による微小侵入体列の透視図である。
【図2】図2は、図1の発明の実施形態による円錐状微小侵入体の透視図である。
【図3】図3は、皮膚に侵入する、図1の一連の微小侵入体の断面及び拡散のみによる薬剤の等濃度線を示す断面図である。
【図4】図4は、皮膚に侵入する、図1の一連の微小侵入体の断面及び吸引中の皮膚内の等圧線を示す断面図である。
【図5】図5は、皮膚に侵入する、図1の一連の微小侵入体の断面及び拡散及び吸引の双方による薬剤の等濃度線を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による一連の微小侵入体の断面図である。
【図7】図7は、本発明の代替実施形態による微小侵入体列の透視図である。
【図8】図8は、本発明の代替実施形態による図7の一連の微小侵入体の断面図である。
【図9】図9は、吸引及び液体薬剤の同時適用のための2つの実空間を示した、本発明の実施形態の展開図である。
【符号の説明】
【0031】
10 微小侵入体列
12 プラテン(シート)
14 スロット
16 舌状体
20 皮膚
22 表皮
24 境界面
26 微小裂
30 微小裂
40 微小裂
60 微小侵入体
74 充実空間
76 充実空間
80 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの微小裂を有する多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させる方法であって、
該多孔性媒体の第1区域から該第1区域に最も近い該多孔性媒体の第2区域まで達する少なくとも1つの経路に沿って圧力勾配を生じさせ、該多孔性媒体の該外面で該第2区域の圧力が周囲の圧力未満になるようにさせ、
該圧力勾配の生じた1つの経路に沿い、少なくとも1つの微小裂を通して該多孔性媒体の該外部境界を横切って物質を移送させるようにすること
から成る物質移送方法。
【請求項2】
該物質が該多孔性媒体内に引き込まれる、請求項1の方法。
【請求項3】
該物質が該多孔性媒体外に引き出される、請求項1の方法。
【請求項4】
該物質が流体である、請求項1の方法。
【請求項5】
該物質が治療薬剤である、請求項1の方法。
【請求項6】
該多孔性媒体が人体組織である、請求項1の方法。
【請求項7】
該多孔性媒体の区域間で伸びる少なくとも1つの経路に沿って圧力勾配を生じさせる該段階が、少なくとも1つの微小侵入体を有する該多孔性媒体の該外部境界内の少なくとも1つの微小裂に穴をあけることを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
該多孔性媒体の区域間で伸びる少なくとも1つの経路に沿って圧力勾配を生じさせる該段階が、該多孔性媒体の該外部境界の一部を吸引することを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
該多孔性媒体の区域間に圧力勾配を生じさせる該段階が、複数の微小侵入体で該多孔性媒体の複数の微小裂に穴をあけて該微小侵入体の小部分を吸引することを含む、請求項1の方法。
【請求項10】
該多孔性媒体の区域間に圧力勾配を生じさせる該段階が、複数の微小侵入体で該多孔性媒体の複数の微小裂に穴をあけて該微小裂の小部分を吸引することを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
該多孔性媒体の区域間に圧力勾配を生じさせる該段階が、少なくとも1つの微小侵入体で該多孔性媒体の該外部境界に少なくとも1つの微小裂をあけて、少なくとも1つの微小侵入体及び該多孔性媒体の該外部境界間の接点を実質的に囲む該多孔性媒体の該外部境界の一部分を吸引することを含む、請求項1の方法。
【請求項12】
多孔性媒体の外部境界を横切って物質を移送させる装置であって、
少なくとも1経路に沿って圧力勾配を生じさせる真空装置であって、各経路が微小裂から該多孔性媒体の第1区域まで及び該第1区域から該第1区域に最も近い該多孔性媒体の第2区域まで達し、該第2区域での圧力が該多孔性媒体の外部境界での周囲圧力未満になるようにさせる真空装置と、
該圧力勾配の少なくとも1つの経路に沿って、該微小裂を通して該多孔性媒体内に該物質を移送するようにさせるために、少なくとも1つの微小侵入体に物質を供給する貯蔵器と
から成る物質移送装置。
【請求項13】
該多孔性媒体の該外部境界を横切って移送される物質の量を監視する出力を有する少なくとも1つのセンサと、
各センサの該出力に基づいて該貯蔵器によって供給される該物質の速度を制御する制御器とをさらに含む、請求項12の装置。
【請求項14】
該多孔性媒体の該外部境界を横切って移送される物質に対する生物的応答を監視する出力を有する少なくとも1つのセンサと、
各センサの該出力に基づいて該貯蔵器によって供給される該物質の速度を制御する制御器とをさらに含む、請求項12の装置。
【請求項15】
該多孔性媒体の該外面に侵入する少なくとも1つの微小侵入体をさらに含む、請求項12の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの微小侵入体に対して該多孔性媒体の該外面を引き込む部分真空をさらに含む、請求項15の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−325955(P2007−325955A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216091(P2007−216091)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【分割の表示】特願平10−514833の分割
【原出願日】平成9年9月15日(1997.9.15)
【出願人】(507247092)デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ (15)
【Fターム(参考)】