説明

種子用包材および種子用袋

【課題】外観から内容物が観察でき、ガスバリア性に優れる種子用包材および種子用袋を提供する。
【解決手段】種子用包材は、プラスチック基材フィルム10と樹脂バリア層20とヒートシール層30とを積層し、プラスチック基材フィルム10と樹脂バリア層20との間に印刷層50を有し、印刷層50は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有する。該種子用包材からなる種子用袋は、極めて鮮明かつ保存性に優れ、内容物の情報提示性に優れ、かつ水蒸気バリア性を有するため、種子の保存性にも優れ、積層材であって内容物を保護しうる柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から内容物を観察することができる種子用包材および該種子用包材を成型してなる種子用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダにプランターを置き、または貸し農園などを利用して家庭菜園を楽しむ人々が増え、小袋に収納された各種の野菜や花卉の種子が市販されている。このような種子用の包材としては、紙やその表面に樹脂コーティングした袋状物が多用され、その表面に種子や花卉の絵や写真を印刷することが一般的である。
【0003】
また、種子の保存方法として、植物の種子を脱酸素剤と共に非通気性の容器に密封し、30℃以下の温度で保存する方法があり、酸素透過度50ml/m2・atm・d以下のものを包材とした袋に種子を収納する方法が開示されている(特許文献1)。該公報では、上記酸素透過度の包材として、塩化ビニリデンや塩化ビニリデンを積層したフィルムが開示されている。
【0004】
また、種子用包材には、種子の種類や植付け時期、管理方法、収穫時期などの情報を開示する必要があり、通常は、紙基材からなる包材や紙基材に樹脂を被覆した包材、更には酸素の通気を抑制するため紙基材にアルミ箔などを被覆した包材が多用されている。
【特許文献1】特開昭58−220611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種子用袋の表面には、多くの情報を開示する必要があり、紙基材からなる包材や紙基材に樹脂を被覆した包材などは、紙基材上に印刷することで簡便に情報を開示することができる。しかしながら、紙基材を使用するため、包材の外側から内容物を観察することができない。また、家庭菜園で使用する種子用袋は小袋であるため、一般には収穫時期の野菜や花卉が印刷され、種子自体が印刷されることは少なく、たとえ写真があっても縮小されて掲載される場合がある。このため、袋を開封せずに直接種子が観察できれば便利であり、直接内容物を確認できれば家庭菜園の楽しみも増し、消費者の購買意欲も向上する。
【0006】
加えて、種子用袋には、生産地、発芽率、有効期限やロット番号など、各ロット毎の情報を開示する必要がある。したがって、種子の名前、土壌の種類、播種時期、播種量などの一般的情報の印刷とは別個に、ロット毎にこのような情報を簡便に袋に記載できれば便利である。
【0007】
また、種子の保存の際に過度の水蒸気が存在すると、袋内で種子が蒸れ、発酵や腐敗が進行し、種子の品質を維持することが困難となる。このため、種子用袋を製造する際に使用するフィルム状の種子用包材の特性として、水蒸気バリア性も重要な要素である。また、種子用袋として使用するには内容物を物理的に保護しうる強度が必要である。しかしながら、アルミ箔などの金属箔を使用する場合には水蒸気バリア性に優れるがピンホールが発生しやすく、結果としてガスバリア性を著しく損なう場合がある。更に、使用後にゴミとして焼却処理する場合には焼却適性に劣り、使用後の廃棄処理が容易でないという問題点もある。また、上記特許文献1記載の塩化ビニリデンなどは、その構造中に塩素原子を含有することから、使用後、ゴミとして焼却処理する場合、有害な塩素ガスが発生し、環境衛生上好ましくない。したがって、ガスバリア性および使用後の安全性に優れ、内容物を物理的に保護しうる、適度な柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性などを有する種子用包材、このような種子用包材によって製造される種子用袋が望まれる。
【0008】
上記に鑑み、本発明は、印刷適性に優れ、水蒸気バリア性を有し、かつ外部から内容物を見ることができる種子用包材を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、使用後の廃棄処理が容易な種子用包材および種子用袋を提供することを目的とする。
【0010】
更に、本発明は、内容物を保護しうる柔軟性、耐衝撃性、耐摩擦性、印刷適性、開口性、充填包装適性を有する種子用包材および種子用袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種子用包材について詳細に検討した結果、種子用包材をガスバリア性に優れる積層材で構成し、かつ印刷層を積層材を構成する各層の間に設けることで印刷層を外部と接触させずに保護できること、印刷層が白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を形成して印刷したものであれば、種子用袋の外部から内容物を確認でき、かつ該窓あき部が上記透過度であれば、該窓あき部の上にロット情報などの前記印刷層とは異なる印刷をした場合でも該印刷を容易に読み取ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第一は、プラスチック基材フィルムと樹脂バリア層とヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムと前記樹脂バリア層との間、および/または前記樹脂バリア層と前記ヒートシール層の間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ前記窓あき部は、白の反射濃度が0.1〜0.3であることを特徴とする、種子用包材である。
【0013】
また、本発明の第二は、上記種子用包材を袋状に成型してなる種子用袋である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の種子用包材には、外周よりも淡色で印刷された白の反射濃度が0.1〜0.3の窓あき部を有するため、該窓あき部によって内容物を直接目視することができる。しかも該窓あき部は白の反射濃度が0.1〜0.3であるため、種子用袋の外部からロット番号などを印刷した場合でも、印刷内容を容易に読み取ることができ、種子用包材に設けられた1つの窓によって内容物の確認とロット情報の取得とを同時に行うことができる。
【0015】
また、本発明の種子用包材は、樹脂バリア層にプラスチック基材フィルムが積層されるため、ガスバリア性に優れると共に機械的強度、化学的強度などにも優れる。
【0016】
また、本発明の種子用包材は、印刷層が、種子用包材を構成する層と層との間に設けられるため、印刷層が直接外部と接触することが無く、鮮明な印刷面の保護性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の種子用包材および種子用袋を詳細に説明する。
【0018】
(1)種子用包材
本発明で使用する種子用包材は、少なくとも樹脂バリア層とヒートシール層とが積層され、かつ樹脂バリア層にプラスチック基材フィルムが積層されたものである。プラスチック基材フィルムを最外層に有することで、種子用包材としての機械的、物理的、化学的強度を確保することができ、これによって上記強度を確保することができる。
【0019】
本発明では、上記構成層以外に、他の層を含んでいてもよい。このような他の層としては、表面処理層であり、例えば各層をドライラミネート積層法で積層するためのラミネート用接着剤層や、ヒートシール層を溶融押出し法で積層する場合の、プライマー層やアンカーコート層、その他、アンダーコート剤層などがある。
【0020】
本発明で使用する種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムおよび/もしくは前記樹脂バリア層、またはこれらの表面処理層上に印刷層を有する。鮮明な印刷を行うに好適な表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理などがあり、プライマー、アンカーコート、アンダコート、ラミネート用接着剤の塗布によって形成された層に印刷層を形成することもできる。
【0021】
したがって、プラスチック基材フィルムを含む本発明の種子用包材としては、例えば、(a)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/樹脂バリア層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(b)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/樹脂バリア層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(c)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/樹脂バリア層/プラズマ処理層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>、(d)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/樹脂バリア層/プライマー層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<ヒートシール層>、(e)<プラスチック基材フィルム/コロナ処理層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/樹脂バリア層/プライマー層/印刷層>/ラミネート用接着剤層/<コロナ処理層/ヒートシール層>などが例示できる。なお、上記ラミネート用接着剤層を形成する前に、予めプライマー層を形成してもよく、ラミネート用接着剤層に代えてアンカーコート剤層を設け、ヒートシール層を溶融押出し法で形成してもよい。
【0022】
図1にプラスチック基材フィルムと樹脂バリア層とヒートシール層とを積層した種子用包材であって、前記プラスチック基材フィルムと前記樹脂バリア層との間に印刷層を有する種子用包材の横断面図を示す。
【0023】
図1は、プラスチック基材フィルム(10)にコロナ処理層(80)を設けた後に印刷層(50)と、樹脂バリア層(20)と、コロナ処理層(80)を有するヒートシール層(30)とがそれぞれラミネート接着剤層(70)を介して接着されてなる種子用包材の横断面図である。
【0024】
本発明において、上記印刷層(50)は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部(120)が形成されるように印刷されている。図2に上記種子用包材(100)を用いて調製した種子用袋を示すが、種子用袋の表面または裏面のいずれかに該窓あき部(120)が設けられ、この窓あき部(120)を介して内容物を観察することができる。
【0025】
(2)プラスチック基材フィルム
本発明で使用しうるプラスチック基材としては、本発明の種子用包材の用途に足る機械的、物理的、化学的強度に優れ、特に耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などに優れ、窓あき部の白の反射濃度が0.1〜0.3の範囲を確保でき、かつその表面に印刷することができる樹脂を広く使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明においては、特にポリプロピレン系樹脂を好適に使用することができる。種子用袋は、市販の際に自立できることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂であれば機械的、化学的強度に優れ、かつこのような腰を付与することができる。しかも、表面が光沢を有するため、種子用袋の外観を向上させることができる。更に、印刷による印字等を容易に行うこともできる。
【0026】
本発明において、プラスチック基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。本発明では、特に延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0027】
本発明において、プラスチック基材フィルムの厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はないが、好ましくは6〜100μm、より好ましくは9〜50μmである。
【0028】
(3)印刷層
本発明では、プラスチック基材フィルムもしくは樹脂バリア層、またはこれらの表面処理層に印刷層が設けられる。印刷方法に限定はないが、グラビア印刷によることが好ましい。グラビア印刷は、原版のインクの付く部分が凹状に彫り込まれているタイプの印刷方式であり、近年は、この凹部が、ダイヤモンドヤレーザーをつけたエッチング機でデジタルに形成されている。インクはこの凹部からでてくるので、その深さと大きさ、印刷層への凹部の圧力などによって色の濃度を調整することがきる。グラビア印刷機は、色ごとに1つの印刷ユニットを有し、写真など階調を持つ画像の再現性に優れる。このようなグラビア印刷機によってプラスチックフィルムへ印刷するには、印刷層の剥がれ落ちを防止するため文字を見る面の反対側に裏面印刷が行われることが一般的であり、濃色インクから淡色インクの順、例えば墨、藍、紅、黄の順に刷り始め、最後に全面に白色インクなどの淡色インクによる印刷がなされる。白色インクなどの淡色インクによる全面印刷を最後に行うことで内容物が透けて見えるのを防止し、かつ白色インクなどの淡色インクとプラスチックフィルムとの間に設けたカラー印刷層を鮮明にできるからである。本発明では、印刷層は、上記裏面印刷と同様に、印刷層の最上層を淡色インクのなかでも、特に白色インク印刷とすることが好ましい。淡色インクであれば、窓あき部に外部からロット番号などの個別の印刷を行った場合にも、その印刷内容の判読を容易に行うことができる。また、紫外線を含む全光線をカットする効果に優れ、種子の保存性にも優れる。この際、他の色インクの順は問わないが、好ましくは黒、藍、紅、黄の順に印刷し、黄の後に特定の割合で配合した特色インクによる印刷を重ねてもよい。なお、本発明において、淡色インクとは明度の高いものを意味し、白色インクを主成分として他の色インクを配合したものを意味する。
【0029】
図3に、プラスチック基材フィルム(10)のコロナ処理層(80)に、上記印刷順で、印刷層に外周よりも淡色で印刷された窓あき部を形成する方法を説明する。まず、図3に、窓あき部(58)以外の外周部(57)に黒(51)、藍(52)、紅(53)、黄(54)および特定インク(55)にて印刷し、窓あき部(58)には黒、藍、紅、黄および特色インクによる印刷がなされていない窓あき部(58)を形成する。ついで、この窓あき部(58)と外周部(57)との双方に白色インク(56)による印刷を行う。これによって、窓あき部(58)にも白色インク(56)による印刷層が形成される。なお、図3では、各色インクを層状に図示したが、各層内ではインクはドット状に存在し、各色のドットの集合によって特定の文字や絵などが表現される。
【0030】
本発明では、前記窓あき部(58)の白の反射濃度が0.1〜0.3、より好ましくは0.15〜0.25である。0.1を下回ると、該種子用包材を用いて製造した種子用袋において、窓あき部の上面に外部から印刷をおこなっても、印刷面を判読しづらい場合がある。一方、0.3を超えると、種子用袋に収納した内容物が観察しづらい場合がある。なお、本発明における上記透過度は、後記する実施例で記載する方法で測定するものとする。
【0031】
本発明において、上記透過度に調整するには、グラビア印刷機の白色インクによる前記凹部のサイズを、調整したり、印刷層の単位面積当たりの凹部の数を調整したり、または窓あき部(58)を白色インクの複数の細線で構成するなど、本発明の趣旨を損なわない範囲で模様を形成してもよい。
【0032】
本発明において、窓あき部のサイズには限定がなく、本発明の種子用包材を用いて製造する種子用袋のサイズや収納する種子の種類、窓あき部の上面に印刷する内容量などによって適宜選択することができる。
【0033】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0034】
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
【0035】
(4)樹脂バリア層
本発明で好適に使用できる樹脂バリア層としては、ガスバリア性に優れ、かつ透明または半透明の樹脂層であり、その表面または後記する表面処理後に印刷層を形成しうるものである。
【0036】
例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン系樹脂(HDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂(PP)、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−α・β不飽和カルボン酸及びそのエステル化合物共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール(EVOH)、ナイロン6フィルム、ナイロン66フィルム、ナイロン12フィルム、ナイロンMXD6フィルム、Cナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PETなど)、ポリブチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PBTなど)、塩化ビニリデン−メチルアクリレート共重合体(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)がある。特に、酸素バリア性のある結晶性ポリアミドであるMXD6ナイロン(NY)が好適である。ここに、酸素バリア性のある結晶性ポリアミドとしてのナイロンMXD6フィルムは、メタキシレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合反応から得られる結晶性のポリアミドであり、ナイロン6、ナイロン66などとは異なり、主鎖中に芳香族環を有するため、ガスバリア性が良く、強度があり、2次加工適性が良好である特性がある。本発明では、EVOHやMXD6を好適に使用することができる。
【0037】
また、本発明で使用できる樹脂バリア層としては、上記樹脂の1種からなる単層に限られず、2種以上の樹脂を共押出しした多層フィルムであってもよい。このような多層フィルムとしては、バリアーONY(MXD6)を共押出しした2軸延伸ナイロンフィルムやEVOHを共押出しした15μmの2軸延伸ナイロンフィルムなどがある。これらは、市販品を使用することもできる。
【0038】
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0039】
なお、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0040】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0041】
本発明において、樹脂バリア層の厚さとしては、10〜30μm、より好ましくは、12〜25μm位が好ましい。
【0042】
なお、本発明において、樹脂バリア層は、フィルムとしてプラスチック基材フィルムやヒートシール層にラミネート用接着剤を介して積層してもよく、樹脂バリア層を構成する樹脂をプラスチック基材フィルムやヒートシール層に溶融押出しなどによって積層してもよい。
【0043】
(5)表面処理
本発明において、印刷層を形成する際にプラスチック基材フィルムや樹脂バリア層に予め表面処理を行ってから印刷層を形成することが好ましい。これにより、印刷層と他の層との密着性を向上させることができる。また、プラスチック基材フィルムと樹脂バリア層との接着、樹脂バリア層とヒートシール層との接着の際に、予め表面処理を行うと、層間の密着性を向上させることができる。
【0044】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。なお、コロナ放電処理は、対象物表面にコロナ放電を行うことにより、処理表面の物理的な凹凸化や、表面付近の化学構造の酸化といった現象を起こすことで、接着や熱溶着の強度を増すことを目的に行うものである。コロナ放電処理の加工条件は、放電ギャップが1〜15mm、基材送り速度が100〜1000cm/min、処理強さが300〜1000W/m2/minである。
【0045】
また、本発明で使用する各種フィルムの表面に、予め、プライマー、アンダコート、アンカーコート等を任意に塗布し、表面処理することもできる。
【0046】
例えば、樹脂バリア膜にプラズマ処理を行い、ついで印刷層を形成し、この印刷層上にラミネート用接着剤を介してヒートシール層を積層したり、樹脂バリア層にプライマー、ラミネート用接着剤を介してヒートシール層をドライラミネート積層法で積層し、または樹脂バリア層にプライマー、アンカーコートを介して上記ヒートシール層を構成しうる溶融樹脂を溶融押出しにより積層してもよい。
【0047】
(6)プライマー層
本発明では、プライマー層を設けることで、樹脂バリア層とその上に積層しうる、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層、ヒートシール層などとの密着性を高め、積層強度を向上させることができる。
【0048】
プライマー層を構成するプライマーとしては、ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂などをビヒクルの主成分とし、該ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂1〜30質量%に対して、シランカップリング剤0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、充填剤0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の割合で配合し、その他、溶媒や希釈剤を含むプライマー組成物を使用することができる。このプライマー組成物には、必要に応じて、更に安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を配合してもよい。本発明において、プライマー層の厚さは、0.1〜10.0g/m2(乾燥状態)である。上記プライマー組成物は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法などによりコーティングし、該コーティング膜を乾燥させて溶媒や希釈剤を除去し、更に必要に応じてエージング処理などを行ってプライマー層とすることができる。
【0049】
上記ポリウレタン系樹脂としては、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリウレタン系樹脂を使用することができる。例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られる1液ないし2液硬化型のポリウレタン系樹脂などを例示できる。
【0050】
一方、ポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸などのベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸の一種または2種以上と、飽和二価アルコールの一種またはそれ以上との重縮合により生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂を例示できる。ベンゼン核を有する芳香族飽和ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルエーテル、4,4−ジカルボン酸などがある。また、飽和二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプリピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール、シクロヘキササンジメタノールなどの脂環族グリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ナフタレンジオールその他の芳香族ジオールが例示できる。
【0051】
上記ポリエステル系樹脂としては、より具体的には、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とテトラメチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、その他等がある。
【0052】
なお、ベンゼン核を有する飽和芳香族ジカルボン酸に、更にマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸の一種以上を添加して共重縮合してもよく、その際の使用量としては、芳香族ジカルボン酸の1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂によれば、無機酸化物、特には前記有機含有酸化珪素層と印刷層、ヒートシール層などとの密着性を向上させることができ、プライマー層の伸長度を向上させて、ラミネート加工などの後加工適性を向上させ、後加工時における前記有機含有酸化珪素層のクラックなどの発生を防止することができる。
【0054】
プライマー組成物を構成するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能基シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの水溶液などの1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0055】
上記プライマー組成物を構成する充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末などがある。充填剤を配合すると、上記ポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂を含む溶液の粘度を調整し、コーティング適性を向上させることができ、かつバインダー樹脂としてポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂とシランカップリング剤を介してコーティング膜の凝集力を向上させることができる。
【0056】
(7)アンカーコート
本発明では、例えばヒートシール層を押出し形成する際に、前記プライマー層上にアンカーコートを介してヒートシール層を形成することができる。使用するアンカーコートとしては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、ラミネート強度を向上させることができる。上記アンカーコートFからなるアンカーコート層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0057】
(8)アンダーコート
アンダーコートとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロ−ス系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0058】
(9)プラズマ処理
本発明では、上記印刷層や樹脂バリア層に対し、前記表面処理の中でプラズマ処理を行うことが好ましく、これによってより鮮明な印刷層を形成することができる。
【0059】
プラズマ処理としては、プラズマガスとして、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができ、特に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのように、酸素ガスを含む無機ガスをプラズマガスとして使用してプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能であり、これにより、特に樹脂バリア層の表面の変色等もない。更に、上記プラズマ処理により、酸素ガスに対するガスバリア性は勿論のこと、水蒸気に対するバリア性も向上し、相対的に、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性を安定して維持することを可能とし、更にまた、樹脂バリア層の面に、真空中で、酸素ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスを使用してプラズマ処理を施してプラズマ処理層を形成することにより、該プラズマ処理層に、例えば、印刷層、接着剤層、アンカーコート層、ヒートシール性樹脂層、その他等の基材を積層する場合、その密接着性等を向上させ、その積層強度等を著しく高めることを可能とすることができる。
【0060】
具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜10−10Torr位、より好ましくは、1×10-2〜1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が望ましく、更に、そのプラズマ出力としては、100〜2500W位、より好ましくは、500〜1500W位が望ましく、更にまた、その処理速度としては、100〜600m/min位、より好ましくは、200〜500m/min位が望ましい。上記の酸素ガスとアルゴンガスとの分圧比において、アルゴンガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスが還元性ガスとして働き、水酸基の導入が阻害されることから好ましくないものである。また、上記のプラズマ出力が、100W未満、更には、500W未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくいことから好ましくなく、また、1500Wを越えると、更には、2500Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるので、樹脂バリア層等の劣化により、そのものの物性が低下するという問題を引き起こすことから好ましくないものである。
【0061】
更に、上記の処理速度が、100m/min未満、更には、250m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また、600m/minを越えると、更には、500m/minを越えると、樹脂バリア層の酸化が急速に進み、透明性は高くなるが、バリア性が低下して好ましくないものである。
【0062】
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロ−放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の3通りの装置を利用して行うことができる。本発明においては、3.56MHzの高周波(AF)放電装置を利用して行うことができる。
【0063】
(10)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0064】
ヒートシール層は、予めフィルムを使用して他の層と積層してもよく、ヒートシール層を構成する樹脂を溶融押出しして他の層と積層してもよい。
【0065】
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。
【0066】
(11)ラミネート用接着剤
本発明では、プラスチック基材フィルムと樹脂バリア層との積層、プラスチック基材フィルムとヒートシール層との積層などにラミネート用接着剤を使用することができる。この際、上記樹脂バリア層にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、ついで該プライマー層の面にラミネート用接着剤を介してヒートシール層などの基材をドライラミネート積層法を用いて積層してもよい。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
【0067】
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0068】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0069】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0070】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0071】
(12)種子用包材の製造方法
本発明の種子用包材は、予めプラスチック基材フィルム、樹脂バリア層のいずれか1以上に上記印刷層を形成したものを、ヒートシール層が最内層となるように、適宜、ラミネート用接着剤層を介して接着などして製造することができる。フィルムとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。また、前記樹脂バリア層が市販されている場合には、市販品を使用することもできる。
【0072】
印刷層は、濃色から淡色の順に、プラスチック基材フィルム、樹脂バリア層のいずれか1以上に直接印刷してもよいが、好ましくはプラスチック基材フィルム、樹脂バリア層にコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を行うか、またはプライマーを塗布してプライマー層を形成した後に行うことが好ましい。これによって鮮明な印刷層を形成することができる。本発明では、印刷層の最上層は、淡色、特に好ましくは白色であり、この白色印刷層はラミネート用接着剤を介してヒートシール層、樹脂バリア層の基材フィルム層のいずれかと積層される。
【0073】
また、本発明においては、いずれかのフィルムや層の積層を行う際に、必要ならば、前記したように、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知の前処理のほか、アンカーコートなどを使用することができる。
【0074】
(13)種子用袋
本発明の種子用袋は、上記種子用包材のヒートシール層を対向するように重ね合わせ、端部を袋状にヒートシールして製造することができる。本発明では、印刷層の最上層が白色インクなどの淡色インクで印刷される場合には、ヒートシール層から最上層の白色インクなどの淡色インク層が肉眼視できる。
【0075】
前記種子用包材は印刷層に窓あき部を有するため、種子用袋のいずれかに白の反射濃度が0.1〜0.3である窓あき部が形成される。本発明では、窓あき部の形成箇所に限定はないが、たとえば図2に示すように、種子用袋(100)の表面または裏面のいずれかの下部に窓あき部(120)が形成することが好ましい。この窓あき部(120)を通して、収納された内容物を容易に確認することができる。しかも、窓あき部(120)の透過度が白色インクなどの淡色インクによって特定範囲に調整されている場合には、この窓あき部の上から、種子用袋の外部から濃色インクで印刷を行うことができ、その印刷内容を容易に判読することができる。なお、上記したように、印刷層の最上層が白色インクなどの淡色インクで印刷される場合には、ヒートシール層側は白色などの淡色であり、窓あき部(120)の背景は、この白色ないし淡色となる。このため、より窓あき部(120)の上面での印刷の判読を容易にすることができる。
【0076】
一般に、種子用袋には、商品名、収納した種子に関する情報や栽培方法など、その種子に共通した情報が印刷されることが多い。このような印刷は、図2の外周部(125)に従来通り行うことができる。一方、本発明の種子用袋では、前記窓あき部(120)を設けることで内容物を肉眼によって確認することができ、かつこの窓あき部(120)の上面に種子用袋本体とは異なる印刷を行うことができる。このような窓あき部(120)への印刷内容としては、ロット番号や製造日、品質保持期限、生産地、発芽率などの個別の情報が例示できる。
【0077】
本発明では、種子用包材の窓あき部の位置に応じて、種々の方法で本発明の種子用袋を製造することができる。例えば、本発明のプラスチック基材フィルム(10)を最外層に有し、最内層にヒートシール層(30)を有する種子用包材を使用する場合、例えば図6に示すように窓あき部(120)を種子用袋の表面または裏面のいずれかの下部に位置させ、種子用包材のヒートシール層(30)が対向するように袋状に折り返し、切り離しの2枚の側部を重ね合わせ、その側部と底部とをヒートシールする方法がある。
【0078】
また、本発明では、窓あき部(120)は、種子用袋(100)に少なくとも一箇所設けられていればよい。したがって、例えば種子用袋の表面または裏面のいずれかに上記窓あき部が形成されるように本発明の種子用包材を使用し、他の面には、本発明の種子用包材の窓あき部がない部分を使用することが好ましい。また、複数の窓あき部(120)を形成する場合には、種子用袋を製造する際に、窓あき部が重複しないようにすればよい。
【0079】
また、種子用包材の最内層に位置するヒートシール層の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールしてヒートシール部を形成すると共にその上部に開口部を形成して、三方シール型の種子用袋を製造することができる。これらの種子用袋を使用し、その上部の開口部から、各種の種子を充填し、次いで、その開口部をヒートシールすれば、本発明の種子用袋を使用した包装製品を製造することができる。その他、本発明の種子用袋の形状としては、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った種々の形態からなる包装用袋を製造し得る。なお、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0080】
また、本発明の種子用袋には、例えば図2に示すように、四隅の角(113)を丸くカットし、容易に開封できるように、切り込み(115)を設けてもよい。このような切り込みは使用するプラスチック基材フィルムの延伸方向などを勘案して適宜選択することができる。
【0081】
本発明の種子用袋に収納できる種子としては、野菜や花卉の種子、その他、果物などがある。
【実施例】
【0082】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0083】
実施例1
厚さ40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム:東洋紡績株式会社製、商品名「P2161」)のコロナ処理層の上に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により印刷を行った。印刷は、上記コロナ処理層に、濃色から淡色に、墨、藍、紅、黄、白となるように刷り始め、白色以外は縦27mm、横63mmの方形の窓あき部が形成しうる範囲に印刷し、窓あき部は、グラビアダイレクト版の線数、版深、編み掛けの設定により、薄い白の半透明の印刷層を形成した。
【0084】
上記の印刷層上に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアロールコート法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、厚さ12μmのEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)フィルム(株式会社クラレ製、商品名「エバール」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、更に上記貼り合せ積層フィルムのEVOH面に、2液硬化型のラミネート用接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、商品名「主剤A969/硬化剤A5」)をグラビアコートロール法によりコーティングし、このラミネート用接着剤層の面に、厚さ60μmのポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名「LC−21」)を重ね合わせ、両者をドライラミネートして積層し、本発明の種子用包材を製造した。
【0085】
得られた種子用包材の層構成は、OPPフィルム40μm/絵柄印刷層+半透明窓あき印刷層1μm/ドライラミネート用接着剤層3μm/EVOH12μm/ドライラミネート接着剤層3μm/ポリエチレンフィルム60μmである。
【0086】
上記種子用包材の反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。結果を表1〜4に示す。
【0087】
実施例2
厚さ12μmのEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)フィルム(株式会社クラレ製、商品名「エバール」)に代えて、バリアーONY(MDX6)を共押出しした15μmの2軸バリアーナイロンフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「スーパーニール」を使用した以外は、実施例1と同様にして種子用包材を製造した。
【0088】
得られた種子用包材の層構成は、OPPフィルム40μm/絵柄印刷層+半透明窓あき印刷層1μm/ドライラミネート用接着剤層3μm/MXD共押出しONYフィルム15μm/ドライラミネート接着剤層3μm/ポリエチレンフィルム60μmである。
【0089】
上記種子用包材の反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。結果を表1〜4に示す。
【0090】
実施例3
厚さ12μmのEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)フィルム(株式会社クラレ製、商品名「エバール」)に代えて、EVOHを共押出しした15μmの2軸バリアーナイロンフィルム(グンゼ株式会社製、商品名「ヘプタックス」を使用した以外は、実施例1と同様にして種子用包材を製造した。
【0091】
得られた種子用包材の層構成は、OPPフィルム40μm/絵柄印刷層+半透明窓あき印刷層1μm/ドライラミネート用接着剤層3μm/EVOH共押出しONYフィルム15μm/ドライラミネート接着剤層3μm/ポリエチレンフィルム60μmである。
【0092】
上記種子用包材の反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。結果を表1〜4に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

なお、反射濃度、ヘーズ、全光線透過率、酸素透過度、水蒸気透過度は、以下の方法で測定した。
【0097】
(i) 反射濃度
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、反射濃度計(ATECH LTD社製、X−RITE model 810)を使用して測定した。
【0098】
(ii) ヘーズ
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、ヘーズメータ(スガ試験機製 110M−2K)を使用して測定した。
【0099】
(iii) 全光線透過率
種子用包材の印刷層の外周部と窓あき部について、全光線透過率測定機(スガ試験機製 110M−2K)を使用して測定した。
【0100】
(iv) 酸素透過度
種子用包材について、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
【0101】
(v) 水蒸気透過度
種子用包材について、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る種子用包材は、印刷層に窓あき部が設けられているため外部から内容物を観察することがで、かつ該窓あき部には外部から印刷を行うことができるため、ロットなどの個別の情報を印字することができ、美観に優れると共に機能的であり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明で使用する種子用包材を説明する横断面図である。
【図2】本発明で使用する種子用袋の外観を示す図である。
【図3】本発明の種子用包材における、印刷層を有するプラスチック基材フィルムの横断面図であり、プラスチック基材フィルムに窓あき部を有する印刷層を形成する方法を説明する図である。
【図4】本発明の種子用包材を使用して、種子用袋を製造する際の説明図である。
【符号の説明】
【0104】
10・・・プラスチック基材フィルム、
20・・・樹脂バリア層、
30・・・ヒートシール層、
50・・・印刷層、
57・・・外周部、
58・・・窓あき部、
60・・・プライマー層、
70・・・ラミネート用接着剤層、
80・・・コロナ処理層、
100・・・種子用包材、
110・・・ヒートシール部、
113・・・角部、
115・・・切込み、
120・・・窓あき部、
125・・・外周部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材フィルムと樹脂バリア層とヒートシール層とを積層した種子用包材であって、
前記種子用包材は、前記プラスチック基材フィルムと前記樹脂バリア層との間、および/または前記樹脂バリア層と前記ヒートシール層の間に印刷層を有し、前記印刷層は、外周よりも淡色で印刷された窓あき部を有し、かつ前記窓あき部は、白の反射濃度が0.1〜0.3であることを特徴とする、種子用包材。
【請求項2】
前記印刷層は、前記プラスチック基材フィルムおよび/もしくは前記樹脂バリア層、またはこれらの表面処理層上に形成されたものである、請求項1記載の種子用包材。
【請求項3】
前記表面処理が、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理またはグロー放電処理のいずれかである、請求項2記載の種子用包材。
【請求項4】
前記表面処理が、プライマー、アンカーコートおよび/またはアンダコートの塗布によるものである、請求項2記載の種子用包材。
【請求項5】
前記印刷層はグラビア印刷によって形成され、前記印刷層の最上層を構成するインクは白色インクであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の種子用包材。
【請求項6】
前記プラスチック基材フィルムは、延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、厚さ6〜100μmである、請求項1〜5のいずれかに記載の、種子用包材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の種子用包材を袋状に成型してなる種子用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−56277(P2008−56277A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234611(P2006−234611)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】