説明

穀粒選別機

【課題】選別筒で稲糀発病籾と正常な籾とを選別するとともに、選別筒から漏下して排出用ホッパー内に溜まった正常な籾の量に応じて選別筒への籾の供給量を自動制御できるようにする。
【解決手段】筺体2内に選別筒3を横架し、選別始端側に位置する供給用ホッパー6に籾を投入し、選別筒3のスリット4aから正常な籾Mを漏下させ、スリット4aから漏下しない稲糀発病籾mや異物Sを選別終端側から排出する。排出用ホッパー7内の籾Mが所定量溜まると、センサ13によって籾Mを検知する。この検知信号によってソレノイド12を駆動し、自動開閉シャッター板10を押し下げて選別筒3への籾Mの供給を制限又は停止し、センサ13からで籾Mを検知しない位置まで排出用ホッパー7内の籾Mが流下すると、ソレノイド12によって自動開閉シャッター板10を初期位置まで引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類、豆類等の穀粒、特に稲糀発病籾やごみ藁などの夾雑物と籾を選別する穀粒選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から正常な穀粒からごみ藁などの夾雑物や、被害粒、稲糀発病籾等を分離する異物選別装置として、例えば特許文献1、特許文献2で開示される異物選別装置が知られている。これらの異物選別装置は、機筐の底部に終端が揚上経路に連通する横送経路を横設し、該横送経路の上方に、周面に多数の選別孔を穿設した選別筒の一端側を高位に、他端側を低位にとなるように回転可能に横架し、該選別筒の選別始端側から供給した穀粒のうち、正常な籾は該選別孔から漏下させて前記横送経路を介して揚上排出させる一方、粒径の大きい異物は選別終端側に搬送させた後、機筐底部から排出させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6321号公報
【特許文献2】特開2006−26466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1で示す異物選別装置は、選別孔から漏下した正常な籾を選別筒の下部に横架したスクリューコンベアで搬送した後、揚上排出させて正常な籾をタンク部に貯留しており、他方、特許文献2で示す異物選別装置は選別筒で選別した正常な籾をスクリューコンベアで搬送した後、揚上排出させて籾摺機の供給部に供給するように構成しており、何れにしても選別筒で選別した正常な籾は、選別筒の下部に位置したスクリューコンベアで搬送してから、異物選別装置の終端側に配置したスクリューコンベアでさらに揚上して搬送するように構成しており、構造が複雑であり、また、装置自体も大型化する。このため、選別筒で選別した正常な籾を直接、籾摺装置に供給すれば、スクリューコンベアを省略でき、構造もより簡易となり、装置の小型化並びにコスト削減に効果的である。このように、選別装置から籾摺装置などへ正常な籾を供給するには単に選別装置の排出ホッパの下部に籾摺装置を配置するだけで済むため極めて簡単で合理的である。
【0005】
しかし、このように選別装置から漏下した正常な籾を籾摺装置に連続供給する場合、籾摺装置の処理能力が選別装置の処理能力より低い場合、籾摺装置で処理し切れない籾が選別装置の排出ホッパーに溜まってしまう。この場合、選別筒で選別した正常な籾が選別装置の排出ホッパー内において溢れ、選別筒と擦れるなどして籾摺能力に悪影響を与えるばかりでなく、選別装置の故障の原因となるため、頻繁に排出ホッパー内に籾の量を確認しながら選別装置への籾の投入量を調整するといった煩わしい手間がかかり、作業効率が著しく低下してしまう、という課題を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、排出ホッパー内で溜まった籾の残量に応じて選別装置に供給される籾の量を自動的に調整することができる穀粒選別機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の穀粒選別機は、筺体内に横架した網体から成る選別筒と、この選別筒を回転させる回転駆動手段と、選別始端側に位置して前記選別筒内に穀粒を供給する供給用ホッパーと、前記選別筒の下部に位置する排出用ホッパーと、選別終端側に位置する異物排出部とを備え、供給用ホッパーから選別筒内に穀粒を供給し、前記選別筒から漏下選別された穀粒を排出用ホッパーで回収するとともに、選別筒から漏下せず通過した稲糀発病籾を含む異物を異物排出部から排出する穀粒選別機であって、前記選別筒と連通する前記供給用ホッパーの供給路を開閉するシャッター機構と、このシャッター機構の開閉駆動手段と、前記選別筒から漏下して前記排出用ホッパー内に溜まった穀粒の検知手段とを設け、この検知手段からの検知信号に基いて前記開閉駆動手段を制御し、前記シャッター機構による前記選別筒内への穀粒の供給量を調整可能としたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2の穀粒選別機は、前記シャッター機構が上下動作自在に設けた2枚のシャッター板から成り、一方のシャッター板を手動開閉シャッター板とし、他方のシャッター板を前記開閉駆動手段で上下動させる自動開閉シャッター板としたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3の穀粒選別機は、前記手動開閉シャッター板により前記供給用ホッパーから選別筒へ供給される籾の流入量を手動により調整可能とし、他方、前記自動開閉シャッター板は、前記検知手段からの検知信号に基づいて選別筒への穀粒の供給量を自動調整するように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の穀粒選別機は、前記選別筒から漏下して選別した籾を前記排出用ホッパーから籾摺機に供給するとともに、選別筒から漏下しない稲糀発病籾を含む異物を異物排出部から排出するように構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5の穀粒選別機は、前記回転駆動手段と、前記検知手段と、前記開閉駆動手段に電源を供給するオン・オフスイッチを設け、このスイッチをオンして前記回転駆動手段を駆動するとともに、前記シャッター機構は前記開閉駆動手段によって前記供給路を開放した状態で保持しておき、前記検出手段が籾を検知すると、前記回転駆動手段を停止することなく、前記開閉駆動手段を駆動して前記供給路を塞ぐようにシャッター機構を降下させ、前記検出手段による籾の検知が停止すると、前記開閉駆動手段を駆動して初期位置まで移動するように制御したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、選別筒で穀粒と異物を選別し、特に穀粒として選別機に籾を投入し、籾摺機と連動させて選別機で選別した籾を籾摺機に供給する場合、選別筒によって稲糀発病籾と正常な籾とを選別して正常な籾だけを籾摺機を供給できる。これにより、籾摺機に供給される正常な籾に稲糀発病籾が混入することを防止できる。また、選別機で選別した正常な籾を籾摺機に供給する場合、籾摺機で籾摺処理し切れない籾は、排出用ホッパー内に溜まるが、その籾が所定量に達すると検知手段によって排出用ホッパー内の籾を検知し、その検知手段からの検知信号に基づいて開閉駆動手段を制御してシャッター機構によって選別筒内への籾の供給量を調整することができるため、排出用ホッパー内で籾が溢れて選別筒と接触して擦れることなく、安定して選別処理することができる。これにより、頻繁に排出用ホッパー内の籾の量を確認するといった煩わしい手間も掛からず、供給用ホッパーに籾を投入するだけで良いため、作業効率にも優れる。
【0013】
また、シャッター機構が手動開閉シャッター板と開閉駆動手段で駆動される自動開閉シャッター板とから成り、一方の手動開閉シャッター板は選別機に連動させる籾摺機の処理量などに応じて選別筒への供給する籾の量を予め調整することが可能であり、供給路の目詰まりなどを抑制し、適量の籾を選別筒に供給することができ、他方の自動開閉シャッター板は、排出用ホッパー内の籾を検知する検知手段からの検知信号に基づいて開閉駆動手段によって籾の供給路を自動開閉することよって選別筒内への籾の供給量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す選別装置の概略説明図である。
【図2】同上、籾摺機と連動させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における穀粒選別機の装置全体構成について添付図面を用いて説明する。以下、本発明の全体構成及び実施例の説明においては、選別すべき穀粒として稲糀発病籾を含む籾に限定して説明をするが、その他の穀類や農産物やそれ以外の粒状物に広く適用可能であることは勿論である。
【0016】
図1は、本発明の選別機を、具体的実施例として具現化したものであり、選別する対象物を、稲糀発病籾を含む籾として実現した選別機の概略を示す説明図である。本発明の実施例の選別機1は、筺体2内に横架した選別筒3と、この選別筒3を回転させる回転駆動手段たるモータ5と、選別始端側に位置して前記選別筒3内に籾Mを供給する供給用ホッパー6と、前記選別筒3の下部に位置する排出用ホッパー7と、選別終端側に位置する異物排出部15とから構成されている。
【0017】
前記選別筒3は、多数のスリット4a,4a・・・を有する円筒状の網体4で構成され、スリット4a,4aから漏下選別された正常の籾Mが排出用ホッパー7に流下し、スリット4a,4aから漏下しない稲糀発病籾mや藁,ごみなどの異物Sが異物排出部15から排出される。また、前記選別筒3を駆動するモータ5が筺体2の側面に固定され、そのモータ5の下部にスイッチ16、モータ5の上部には前記供給用ホッパー6が設けられている。この供給用ホッパー6の下部が前記選別筒3に連通する供給路8となっており、この供給路8を2枚のシャッター9,10からなるシャッター機構11で開閉するように構成している。また、図2において符号13は筺体2を支持する脚部、14はモータ5、ソレノイド12、センサ13の電源である。前記スイッチ16は前記モータ5、ソレノイド12、センサ13への電源14の電力の供給又は停止を切り換えるオン・オフスイッチであり、これらソレノイド12、センサ13、電源14、スイッチ16の閉回路を構成する。
【0018】
前記シャッター機構11を構成する2枚のシャッター9,10は、それぞれ重ね合わせるようにして供給用ホッパー6の背面側に設けた図示しないガイド機構によって上下動自在に組み付けられている。その一方が手動開閉シャッター板9であり、他方は開閉駆動手段たるソレノイド12によって駆動される自動開閉シャッター板10である。この自動開閉シャッター板10が前記ソレノイド12によって駆動され、このソレノイド12は前記排出用ホッパー7内に取り付けた籾Mの検知手段たるセンサ13からの検知信号に基づいて制御される。
【0019】
以上のように構成される選別機1は、図2に示すように排出用ホッパー7を籾摺機20の投入口(図示しない)の上部に配置し、スイッチ16をオンしてモータ5によって選別筒3を回転させるとともに、ソレノイド12,センサ13に電源14の電力を供給する。このように選別機1を起動して供給用ホッパー6に選別する籾Mを投入する。この時、手動操作するシャッター9を上下動して選別筒3に供給するおよその籾Mの量を調整することができる。すなわち、手動開閉シャッター板9を降ろせば供給路8が狭まり、選別筒3内への籾Mの供給量は少なくなり、手動開閉シャッター板9を上げれば選別筒3内への籾Mの供給量が多くなる。このように、予め手動開閉シャッター板9によって籾Mの供給量を調整することによって、供給路8の目詰まりなどを抑制し、適量の籾Mを選別筒3に供給することができる。また、初期状態においては選別筒3によって選別される籾Mが排出用ホッパー7内に排出されないため、センサ13から籾Mを検知する信号は出力されず、自動開閉シャッター板10はソレノイド12によって初期位置の上限位置で待機する。
【0020】
供給用ホッパー6の供給路8から選別筒3内に供給された籾Mは、選別筒3の回転によって攪拌され、選別筒3のスリット4a,4aから漏下選別された正常の籾Mが排出用ホッパー7に流下し、スリット4a,4aから漏下しない稲糀発病籾mや藁,ごみなどの異物Sが選別筒3の終端側に搬送され、選別筒3の終端から流下した稲糀発病籾mや異物Sが異物排出部15から排出される。また、選別筒3のスリット4a,4aから漏下選別された正常の籾Mは、排出用ホッパー7から籾摺機20の投入口に連続供給され、籾摺機20によって籾摺処理される。ここで、籾摺機20による処理量より選別機1からの籾Mの供給量が多いと、籾摺機20の投入口から溢れて排出用ホッパー7内で籾Mが溜まることになる。そして、排出用ホッパー7内の籾Mが所定量溜まると、センサ13によって籾Mを検知する。この検知信号によってソレノイド12を駆動し、自動開閉シャッター板10を押し下げて自動開閉シャッター板10によって供給路8を狭めるかあるいは完全に遮断する。これにより、選別筒3への籾Mの供給が制限又は停止される。一方、モータ5は電源14の電力が供給され、モータ5が停止することなく回転し、選別筒3による選別処理は続行されるが、前記自動開閉シャッター板10によって籾Mの供給が制限又は停止されているため、選別筒3から漏下選別される正常の籾Mの量は少なくなる。これにより、籾摺機20の処理によって排出用ホッパー7内の籾Mが流下して少なくなると、センサ13からの籾Mの検知信号が停止し、ソレノイド12は自動開閉シャッター板10を引き上げて自動開閉シャッター板10を初期位置(上限位置)に復帰させる。以後、同様な制御を繰り返し、籾摺機20の処理量、すなわち、排出用ホッパー7内に溜まる籾Mの量に応じて自動開閉シャッター板10によって、選別筒3への籾Mの供給量を制御する。
【0021】
以上のように、本実施例においては、排出用ホッパー7内に溜まる籾Mの量に応じて自動開閉シャッター板10によって、選別筒3への籾Mの供給量を制御することが可能であるから、排出用ホッパー7内の籾Mが溢れて回転する選別筒3と接触して擦れたりすることなく、安定して選別処理することができる。また、頻繁に排出用ホッパー7内の籾Mの量を確認するといった煩わしい手間も掛からず、供給用ホッパー6に籾Mを投入するだけで良いため、作業効率も優れる。また、連動させる籾摺機20の処理量に応じて手動開閉シャッター板9によって選別筒3に供給する籾Mの量を予め調整することが可能であるから、より一層、選別筒3の選別処理を安定化させることができる。加えて、籾Mに混入する稲糀発病籾mは稲糀菌によって肥大化し、選別筒3のスリット4a,4aから漏下することなく、確実に異物排出部15から排出され、稲糀発病籾mが正常な籾Mと混じって籾摺機20に供給されることもない。
【0022】
以上、本発明の一実施例について詳述したが、本発明は前記一実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例では、選別機1と籾摺機20とを連動させた例を示したが、籾摺用に限らず各種の選別用途として広く、適用可能である。また、選別機1の基本的構成や自動開閉シャッター板10の開閉駆動手段もソレノイド12に限らず、モータや各種のアクチェータなど適宜選定すればよい。
【符号の説明】
【0023】
1 選別機
2 筺体
3 選別筒
4 網体
4a スリット
5 モータ(回転駆動手段)
6 供給用ホッパー
7 排出用ホッパー
8 供給路
9 手動開閉シャッター板
10 自動開閉シャッター板
11 シャッター機構
12 ソレノイド(開閉駆動手段)
13 センサ(検知手段)
15 異物排出部
20 籾摺機
M 籾
m 稲糀発病籾
S 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体内に横架した網体から成る選別筒と、この選別筒を回転させる回転駆動手段と、選別始端側に位置して前記選別筒内に穀粒を供給する供給用ホッパーと、前記選別筒の下部に位置する排出用ホッパーと、選別終端側に位置する異物排出部とを備え、供給用ホッパーから選別筒内に穀粒を供給し、前記選別筒から漏下選別された穀粒を排出用ホッパーで回収するとともに、選別筒から漏下せず通過した稲糀発病籾を含む異物を異物排出部から排出する穀粒選別機であって、前記選別筒と連通する前記供給用ホッパーの供給路を開閉するシャッター機構と、このシャッター機構の開閉駆動手段と、前記選別筒から漏下して前記排出用ホッパー内に溜まった穀粒の検知手段とを設け、この検知手段からの検知信号に基いて前記開閉駆動手段を制御し、前記シャッター機構による前記選別筒内への穀粒の供給量を調整可能としたことを特徴とする穀粒選別機。
【請求項2】
前記シャッター機構が上下動作自在に設けた2枚のシャッター板から成り、一方のシャッター板を手動開閉シャッター板とし、他方のシャッター板を前記開閉駆動手段で上下動させる自動開閉シャッター板としたことを特徴とする請求項1記載の穀粒選別機。
【請求項3】
前記手動開閉シャッター板により前記供給用ホッパーから選別筒へ供給される籾の流入量を手動により調整可能とし、他方、前記自動開閉シャッター板は、前記検知手段からの検知信号に基いて選別筒への穀粒の供給量を自動調整するように構成しことを特徴とする請求項2記載の穀粒選別機。
【請求項4】
前記選別筒から漏下して選別した籾を前記排出用ホッパーから籾摺機に供給するとともに、選別筒から漏下しない稲糀発病籾を含む異物を異物排出部から排出するように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の穀粒選別機。
【請求項5】
前記回転駆動手段と、前記検知手段と、前記開閉駆動手段に電源を供給するオン・オフスイッチを設け、このスイッチをオンして前記回転駆動手段を駆動するとともに、前記シャッター機構は前記開閉駆動手段によって前記供給路を開放した状態で保持しておき、前記検出手段が籾を検知すると、前記回転駆動手段を停止することなく、前記開閉駆動手段を駆動して前記供給路を塞ぐようにシャッター機構を降下させ、前記検出手段による籾の検知が停止すると、前記開閉駆動手段を駆動して初期位置まで移動するように制御したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の穀粒選別機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194293(P2011−194293A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61890(P2010−61890)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000132792)株式会社タイガーカワシマ (48)
【Fターム(参考)】