説明

積み重ねができる製菓用オーブン

【課題】本発明は、オーブンの後端面の上、下部に排気ダンパーと排気誘導部をそれぞれ設けることによってオーブンの積み重ねが可能となる製菓用オーブンを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、焼成室3の上下部に上火用加熱部9および下火用加熱部10がそれぞれ配設され、菓子生地投入用としての開口部4に開閉扉5が装着される製菓用オーブンにあって、前記製菓用オーブンの後端上部に設けられる排気用ダンパー16と、前記製菓用オーブンの後端下部に形成され、その下端が開放状とされる凹状の排気誘導路19を備え、前記製菓用オーブンを積み重ねたときに、前記排気用ダンパー16の開口端が積み重ねられる製菓用オーブンの排気誘導路19の下方に位置する如き構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブンに関する。詳しくは用途や需要に応じて個別のオーブンを積み重ねることができる製菓用オーブンに係るものである。
【背景技術】
【0002】
製菓用オーブンの殆どは、図8に示すように、オーブン本体101内に数個(図では3個)の焼成室102が設けられ、同焼成室102の開口部103には開閉扉104が装着された構成とされる。(例えば、参考文献1参照。)。このような製菓用オーブンでは、数種の菓子を多量に焼成する洋菓子店やパン屋の場合には適合するものである。
【0003】
いっぽう、レストランや料理学校などでは一度に多量の菓子やパンを焼成する必要がないことから、図9に示すようなオーブンが使用される。このオーブンは、コンパクト化された焼成室102の開口部103に開閉扉104が装着され、該焼成室102の上下部には電熱ヒーター105が配置されると共に、前記焼成室102の奥部には燃焼による熱気を排気するための排気ダンパー106がオーブンの後部上面に向けて開口されている。この排気ダンパー106には、オーブンの前端位置から前後方向に開閉自在とされる排気調整レバーによって行う構成とされるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−132952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら数種の菓子を同時に、あるいは多量に焼成するケ0スが増えた場合には、前記図8に示すような大型のオーブンに替え代えるか、あるいは前記9図に示すような小型のオーブンを追加購入するしかない。
【0006】
前記大型のオーブンに替え代える場合には、店舗内におけるスペースの問題や従来より使用している小型オーブンが不要となる問題があり、また小型オーブンを追加購入して積み重ねた場合には、図10に示すように、個々の小型オーブンの排気ダンパー106が積み重ねられる小型オーブンによって閉塞される、あるいは熱気が小型オーブンの後端面や底面が熱気に晒されて短期間で損傷するなどの問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、オーブンの後端面の上、下部に排気ダンパーと排気誘導部をそれぞれ設けることによってオーブンの積み重ねが可能となる製菓用オーブンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る積み重ねができる製菓用オーブンは、焼成室の上下部に上火用加熱部および下火用加熱部がそれぞれ配設され、菓子生地投入用としての開口部に開閉扉が装着される製菓用オーブンにあって、前記製菓用オーブンの後端上部に設けられる排気用ダンパーと、前記製菓用オーブンの後端下部に形成され、その下端が開放状とされる凹状の排気誘導路を備え、前記製菓用オーブンを積み重ねたときに、前記排気用ダンパーの開口端が積み重ねられる製菓用オーブンの排気誘導路の下方に位置する如き構成とされる。
【0009】
ここで、製菓用オーブンを積み重ねた場合に、排気用ダンパーの開口端が積み重ねられる製菓用オーブンの排気誘導路の下方に位置することにより、排出される蒸気が排気誘導路を通り、製菓用オーブンの後方に排出されることにより分散されることなく、かつ排出量を製菓用オーブンの底面によって規制することなく行うことが可能となる。
【0010】
また、前記排気用ダンパーの開度調整を、前記製菓用オーブン上面に形成される2重構造の外ケース内にて。その一端が前記排気用ダンパーに連結枢支され、他端が前記菓子用オーブンの開閉扉側へ突出するように、その中途部が前記製菓用オーブン上面に連結枢支された状態で格納される操作ハンドルを左右側に回動させる如き構成とすることにより、製菓用オーブンの正面側より排気用ダンパーによる排気量調整を行うことが可能となり、かつ操作ハンドルを左右側に回動させることで操作ハンドルの位置によって排気量を確認することができる。
【0011】
また、前記排気誘導路の上端を傾斜状に形成することにより、排気誘導路内を通る蒸気はスムーズに前記製菓用オーブンの後方へ排出される。
【0012】
また、前記上火用加熱部を開閉扉側とそれ以外のブロックに分割し、該分割された上火用加熱部の少なくとも一つに温度センサーを配置し、該温度センサーによって分割された上火用加熱部が同時に設定温度に達するように、開閉扉側のブロックとそれ以外のブロックとに電熱出力差を設けることにより、均等な温度状態となるように制御することで、焼ムラの生じない菓子・パンの焼成が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積み重ねができる製菓用オーブンでは、焼成する菓子の増加により1台の製菓用オーブンでは消化しきれなく、さらに製菓用オーブンを購入する必要性が生じた場合には、下部の製菓用オーブンから排出される蒸気が上部の製菓用オーブンの排気誘導路を通り、製菓用オーブンの後方に排出されることにより分散されることなく、かつ排出量を製菓用オーブンの底面によって規制することなく行うことが可能となるために、支障なく製菓用オーブンを積み重ねることが可能となる。
【0014】
また、排気用ダンパーによる排気量調整を製菓用オーブンの正面側より操作ハンドルの左右側への回動操作によって行うことにより操作ハンドルの位置によって排気量を確認することができる。
【0015】
また、開閉扉の開閉により生じる焼成室内の温度降下によって開閉扉側の電熱ヒーターと、これに隣接する電熱ヒーターとの温度差を、電熱ヒーターに出力差を設けることによって均等な温度状態となるように制御することで、焼ムラの生じない菓子・パンの焼成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明を適用した積み重ねができる製菓用オーブンの一例を示す正面図、図2は、図1おける一部断面側面図、図3は、図1における平面説明図である。
【0017】
ここで示すオーブン1は、基台フレーム2上に焼成室3が設置され、この焼成室3の開口部4に開閉扉5が装着される。
【0018】
そこで開閉扉5は、その下端が開口部4の下端縁部に連結枢支され、取っ手部6によって開口部4を密閉状に開閉自在とするものである。
更に、開閉扉5には覗き窓7が設けられ、この覗き窓7は二重による耐熱強化ガラスの断熱構造とされるものである。
【0019】
また、開閉扉5の横側のオーブン1面にはコントロールパネル8が配置されるものであり、このコントロールパネル8によって焼成時間および焼成温度などの制御操作が行われるものである。
【0020】
次に、焼成室3の上下部には上火部には上火用加熱部9および下火用加熱部10が配置されるものであり、この上火用加熱部9および下火用加熱部10はニクロム配線による電熱ヒーターを設け、温度センサーによって温度を検知して焼成室3内の温度制御を行う構成とするものである。
【0021】
ここで、図4および図5に示すように上火用加熱部9は、開閉扉5側のブロックAとその他のブロックB、B1によって構成され、各ブロックにニクロム配線による電熱ヒーター21を設けた構成とするものであり、更にブロックBには温度センサー22が配置され、この温度センサー22によってブロックBにおける温度を感知し、上火用加熱部9全体の温度制御を行う構成とするものである。
また、前記温度センサー22には外気が直接に接触しないように遮蔽板23によって囲むことにより、開閉扉5を開いたときに外気が流入し、直接に接触することによって温度降下を防ぐことが可能となる。
【0022】
そこで前記上火用加熱部9のブロックAとブロックB、B1における電熱ヒーター21の出力に差を設けた構成とするものである。例えば上火用加熱部の出力を2Kwとした場合には、電圧が100Vであるときは、各ブロックのヒーターにおける出力電流は5Aとなる。
【0023】
このような状況において、開閉扉5を開くことによりブロックAとブロックB、B1とに温度差が生じることとなり、ブロックB1における温度センサー22による加熱制御である場合には、ブロックAでは温度設定に到達する前にOFF制御されてブロックAとブロックB、B1とに温度差が生じることとなる。
【0024】
また、前記上火用加熱部9のブロックAに温度センサー22を配置した場合には、ブロックAが設定温度に到達する前に、ブロックB,B1が設定温度以上に上昇して温度ムラが生じることとなる。
【0025】
そこで、予めブロックAとブロックB、B1における温度差を考慮し、例えば上火用加熱部の出力を2Kwと設定した場合に、ブロックAにおける出力電流を6AとしブロックB、B1における出力電流3.7Aとすることにより、ブロックB、B1が設定温度に到達すると同時にブロックAにおける温度が均等になるように設定するものである。
従ってブロックAおよびブロックB、B1における電熱ヒーター全体により温度制御を行うことにより均一な温度ムラを生じない温度制御が可能となる。
【0026】
なお、焼成室3の幅および奥行きによっては2ブロックや3ブロック又は5ブロックに分割する場合も考えられ、状況に応じて最も適した分割とすることが望ましい。
【0027】
そこで前記排気用ダンパー16は、オーブン1の上面に形成される二重構造の外ケース14内に格納される操作ハンドル15の一端に取り付けられることによって開閉自在な機構とするものである。
【0028】
すなわち、図6に示すように、オーブン1の側面長さと略同長さとされる操作ハンドル15の一端が排気用ダンパー16の一端に連結枢支され、その中途部がオーブン1の上面略中央に取り付けられる枢支部17によって連結枢支される。そして前記操作ハンドル15の他端には球体形状の握り部18が装着され、前記オーブン1の外ケース14より突出した状態とされる。
【0029】
したがって、前記操作ハンドル15の握り部18を左右方向に移動させることにより前記枢支部17を支点として操作ハンドル15の一端に連結枢支される排気用ダンパー16が逆方向へ移動することになり、ダクト13の開口部を開閉させることになる。
【0030】
いっぽう、図2に示すように、オーブン1の背面下部には排気誘導路19が形成される。この排気誘導路19は、オーブン1を積み重ねた場合に、下側のオーブン1の排気用ダンパー16から排気される熱気を分散させることなく、オーブン1の後方へ排出させるために、排気用ダンパー16の上方位置となる上側のオーブン1の背面下端を開放状とするために凹部形状に形成し、更にその上端を傾斜状に形成するものである。
【0031】
以上の構成よりなる本発明の積み重ねができる製菓用オーブンでは図6に示すように、オーブン1の上面にオーブン1Aを同じ向きとなるように載置するものであり、これにより下側のオーブン1のダクト13の上端開口が、該オーブン1の上側に積み重ねられるオーブン1Aの排気誘導路19の下方に位置することになる。
【0032】
ここで、前記下側のオーブン1のダクト13から排出される熱蒸気は、上側のオーブン1Aの排気誘導路19内を通り、該排気誘導路19の上部に形成される傾斜面20によってオーブン1Aの後方へ放出される。
【0033】
また、排気用ダンパー16による排気量の調整は、操作ハンドル15の握り部18を左右方向に移動させることにより、排気用ダンパー16が左右方向へ移動する。このような排気量の調整機構とすることにより、握り部18の位置によって排気量を確認することができ、目盛等を付すことによって確実な排気量調整が可能となる。
【0034】
更に、前記操作ハンドル15は二重構造の外ケース14内に格納されることにより外部からの圧力を受けることなく操作することができ、かつオーブン1の上面がフラットな状態となるために、支障なくオーブン1の積み重ねを行うことができる。
【0035】
また、開閉扉5を開くことによる焼成室3内の温度降下をブロックBに設置される温度センサー22が検知し、設定温度までON制御する場合に、ブロックBとブロックAにおける電熱ヒーターの温度差を、これらのブロックAおよびブロックB、B1における電熱ヒーターの出力差によってON時間内に解消することにより焼成室3内を均等な温度状態となるように制御することが可能となる。
【0036】
なお、本発明ではブロック毎にヒーター出力を変更することで温度ムラを抑えているが、出力値が固定されたままでは、長期間使用することにより生じる開閉扉のパッキンの損耗などにより温度ムラを生じる可能性がでてくる。
しかしオーブンには上火用加熱部のブロック単位で制御パネル側から出力を1%単位で任意に調整する機能が付いている。
従って制御パネルからの出力値のパーセンテージを変更することによって温度ムラを無くすことができる。
【0037】
例えば、開閉扉に面したブロックAと該ブロックAに隣接するブロックBの出力のパーセンテージは初期値は100%であるが、長期間使用することにより開閉扉のパッキンの劣化などにより、ブロックAにおける温度降下が大きくなった場合、ブロックBの出力パーセンテージを温度降下に応じて下げることで、ブロックAとブロックBの温度ムラをなくすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した積み重ねができる製菓用オープンの一例を示す正面図である。
【図2】図1における一部断面側面図である。
【図3】図1における平面説明図である。
【図4】本発明を適用した積み重ねができる製菓用オープンの上火用加熱部の一例を示す説明図である。
【図5】図4における断面側面図である。
【図6】本発明の操作ハンドルによる排気量調整機構の一例を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した積み重ねができる製菓用オーブンの使用例を示す説明図である。
【図8】従来の多段式オーブンの一例を示す説明図である。
【図9】従来の小型式オーブンの一例を示す説明図である。
【図10】従来の小型式オーブンを積み重ねた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 オーブン
2 基台フレーム
3 焼成室
4 開口部
5 開閉扉
6 取っ手部
7 覗き窓
8 コントロールパネル
9 上火用加熱部
10 下火用加熱部
11 排気穴
13 ダクト
14 外ケース
15 操作ハンドル
16 排気用ダンパー
17 枢支部
18 握り部
19 排気誘導路
20 傾斜面
21 電熱ヒーター
22 温度センサー
23 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成室の上下部に上火用加熱部および下火用加熱部がそれぞれ配設され、菓子生地投入用としての開口部に開閉扉が装着される製菓用オーブンにあって、
前記製菓用オーブンの後端上部に設けられる排気用ダンパーと、
前記製菓用オーブンの後端下部に形成され、その下端が開放状とされる凹状の排気誘導路を備え、
前記製菓用オーブンを積み重ねたときに、前記排気用ダンパーの開口端が積み重ねられる製菓用オーブンの排気誘導路の下方に位置する如き構成とされる
ことを特徴とする積み重ねができる製菓用オーブン。
【請求項2】
前記排気用ダンパーの開度調整を、前記製菓用オーブン上面に形成される2重構造の外ケース内にて、その一端が前記排気用ダンパーに連結枢支され、他端が前記製菓用オーブンの開閉扉側へ突出するように、その中途部が前記製菓用オーブン上面に連結枢支された状態で格納される操作ハンドルを左右側に回動させる如き構成とする
ことを特徴とする請求項1記載の積み重ねができる製菓用オーブン。
【請求項3】
前記排気誘導路の上端を傾斜状に形成する
ことを特徴とする請求項1または2記載の積み重ねができる製菓用オーブン。
【請求項4】
前記上火用加熱部を開閉扉側とそれ以外のブロックに分割し、該分割された上火用加熱部の少なくとも一つに温度センサーを配置し、該温度センサーによって分割された上火用加熱部が同時に設定温度に達するように、開閉扉側のブロックとそれ以外のブロックとに電熱出力差を設ける
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の積み重ねができる製菓用オーブン。
【請求項5】
前記温度センサーに、直接に外気が当たらないように遮蔽板を設けた
ことを特徴とする請求項4記載の積み重ねができる製菓用オーブン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−76036(P2008−76036A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287457(P2006−287457)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(595099225)株式会社七洋製作所 (10)
【Fターム(参考)】