説明

積層インダクタ

【課題】1ターンの長さで周回するコイル電極により構成されているコイルを内蔵する積層インダクタの構成を用いて、磁束の回らない領域の内側に引出ビアホールを形成することで、コイル電極の形成面積を大きくとり、その結果インダクタンス及び直流重畳特性の良い積層インダクタを提供する。
【解決手段】本発明に係る積層インダクタは、複数の絶縁体層からなる積層体と、1ターンの長さで周回しているコイル電極からなる螺旋状のコイルと、前記螺旋状のコイルの両端に接続されるとともに、前記積層体の底面に形成されている外部電極を備える。前記螺旋状のコイルと前記外部電極は、1ターンの長さで周回するコイル電極において、磁束の回らないスペースに形成された引出ビアホールによって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層インダクタに関し、より特定的には、外部電極を素子底面(積層体の底面)に形成するようにした積層インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層インダクタとしては、例えば、特許文献1に記載の積層インダクタが知られている。以下に、図5を参照しながら、特許文献1に記載の積層インダクタについて説明する。図5は積層インダクタの内部構造を示す概略説明図である。
【0003】
積層インダクタ101において、非磁性電気絶縁層と導体パターンが交互に積層され導体パターンが順次接続されることで、積層体102の内部で積層方向に巻回したコイル103が形成されている。積層体102の底面には、一対の短辺近傍に外部電極106、107が形成されている。コイル103の両端部がそれぞれ引出導体104、105によって積層体底面の外部電極106、107に接続されている。この引出導体104、105は、上記短辺側の側面に埋設され且つ導体表面が露出した状態で積層形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260925号公報
【発明の概要】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成の積層インダクタは、コイル103の外側に引出導体104、105が形成されているので、コイル電極の形成面積が小さくなり、インダクタンスの取得効率や直流重畳特性が悪くなるという問題があった。また、内部電極の先端が露出されているので、信頼性が低いという問題もあった。
【0007】
本発明は、これらの状況を鑑み、1ターンの長さで周回するコイル電極により構成されているコイルを内蔵する積層インダクタの構成を用いて、磁束の回らない領域の内側に引出ビアホールを形成することで、コイル電極の形成面積を大きくとり、その結果インダクタンス及び直流重畳特性の良い積層インダクタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る積層インダクタは、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、前記絶縁体層上において1ターンの長さで環状に周回しているコイル電極であって、環状の軌道上に位置している第1の端部及び該環状の軌道外に位置している第2の端部を有しているコイル電極と、積層方向に隣り合う所定の前記第1の端部同士を接続している第1のビアホール導体と、積層方向に隣り合う所定の前記第2の端部同士を接続している第2のビアホール導体とからなる螺旋状のコイルと、前記螺旋状のコイルの両端に接続されるとともに、前記積層体の底面に形成されている第1及び第2の外部電極と、を備える電子部品において、前記積層体の積層方向から平面視したときに、前記複数のコイル電極において前記第1の端部及び前記第2の端部を構成している部分により囲まれている領域を備え、その領域の内側に前記外部電極から遠い方のコイル電極の端部からビアホール導体が引き出され、そのコイル電極の端部と前記第1の外部電極とが前記ビアホール導体で接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層体底面に外部電極が形成されているような積層インダクタであっても、コイル電極の形成面積を大きくとることができる。この結果、インダクタンス取得効率を向上させることができる。また、コイル電極の形成面積が大きいため、磁束が飽和しにくくなる。この結果、直流重畳特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層インダクタの外観を示す概略斜視図である。
【図2】図1の積層インダクタの積層体の分解斜視図である。
【図3】図1の積層インダクタのA−Aにおける断面構造図である。
【図4】図1の積層インダクタを積層方向から平面視した透視図である。
【図5】従来の積層インダクタの内部構造を示す一部破断概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る積層インダクタについて図1〜図4を参照して説明する。
【0012】
積層インダクタ1は、図1に示すように、内部に螺旋状のコイルを含む直方体の積層体2と、前記積層体2の底面に形成された2つの外部電極10及び11とを備えている。
【0013】
積層体2は、図2に示すように、磁性体層3a〜3l及びコイル電極4a〜4fが積層されて構成されている。磁性体層3a〜3lは、磁性を有するフェライト(例えばNi−Cu−Znフェライト又はNi−Znフェライト等)からなる長方形状の絶縁体層である。コイル電極は磁性体層3d〜3iの上にAgペーストを印刷塗布して形成されている。
【0014】
以下では、個別の磁性体層3a〜3l、コイル電極4a〜4f、該コイル電極の端部5a〜5f及び端部6a〜6fを指す場合には、参照符号の後ろにアルファベットを付し、これらを総称する場合には、参照符号の後ろのアルファベットを省略する。
【0015】
コイル電極4a〜4fは、積層体2内において後述のビアホール導体で電気的に接続されることによりコイルを構成している。コイル電極4のうち、コイル電極4b〜4eは、積層方向から平面視したときに、磁性体層3e〜3hにおいて1ターンの長さで周回するように構成されている。
【0016】
より詳細には、コイル電極4b〜4eは、長方形状の環状の軌道上を周回していると共に、該環状の軌道上にある端部5及び該環状の軌道外(該環状の軌道の内側)に引き出されている端部6を有している。コイル電極4b及び4dは、磁性体層3e及び3gの長辺側に沿う電極部分の端部が内側に引き出されている端部6を有している。また、コイル電極4c及び4eは、磁性体層3f及び3hの短辺側に沿う電極部分の端部が内側に引き出されている端部6を有している。コイル電極4b、4dは、同じ形状を有し、コイル電極4c、4eは同じ形状を有している。すなわち、コイル電極4b〜4eは、積層方向に2種類のコイル電極が交互に並んで配置されている。
【0017】
図2、3、4に示す領域Eは、磁性体層3d〜3lにおいて、積層方向から平面視したときに、コイル電極4a〜4fの端部5及びコイル電極4b〜4eの端部6b〜6eを構成している部分により囲まれている領域のことである。
【0018】
コイル電極4の第1の端部5及び第2の端部6に流れる電流が、各磁性体層3で同じ方向に流れているため、領域E内で見たときに、第1の端部5に流れる電流による磁束と、第2の端部6に流れる電流による磁束の向きが反対になる。その結果、この領域Eは磁束の回らない領域となっている。
【0019】
また、コイル電極4aは、コイル電極4b〜4fよりも、前記外部電極10及び11から最も遠い側に設けられ、その端部5aがコイル電極4bに電気的に接続されている。コイル電極4aは、積層方向から平面視したときに、磁性体層3d上において1ターンの長さで周回するように構成されている。コイル電極4aの端部6aは、図2に示すように、磁性体層3dを積層方向から平面視したときに、前記領域Eの内側に引き出され、後述の引出ビアホール9により、積層体2の底面に形成された外部電極10に接続されている。
【0020】
また、コイル電極4fは、コイル電極4a〜4eよりも、前記外部電極10及び11に最も近い側に設けられ、その端部5eがコイル電極4eに電気的に接続されている。コイル電極4fは、積層方向から平面視したときに、磁性体層3i上において1/2ターンの長さで周回するよう構成されている。コイル電極4fの端部6fは、図2に示すように、磁性体層3iの短辺方向に引き出されている。これにより、コイル電極4fは、その端部6fが積層体2の側面を経て、前記外部電極11と接続されている。
【0021】
引出ビアホール9は、図3(磁性体層3のハッチングは省略)及び図4に示すように、コイル電極4aの端部6aから前記領域Eの内側(図3上の下側)に引き出され、積層体2の底面に形成された外部電極10に接続されている。
【0022】
より詳細には、磁性体層3d〜3lの各層の前記領域Eの内側に形成された穴にAgペーストが充填され、各層ごとにビアが形成されている。これらの磁性体層3d〜3lが順次積層されることにより各層のビアが接続されて、引出ビアホール9が構成されている。これにより、コイル電極4aの端部6aから引き出された引出ビアホール9は、積層体2の底面に形成された外部電極10と接続されている。
【0023】
コイル電極4a〜4fは、ビアホール導体7及び8により電気的に接続されることにより螺旋状のコイルが構成されている。
【0024】
より詳細には、第1のビアホール導体7aは、磁性体層3dの穴に、コイル導体4aの印刷と同時にAgペーストが充填され、形成されている。この第1のビアホール導体7aにより、積層方向に隣り合っている端部5aと5bは接続されている。
【0025】
第1のビアホール導体7b〜7cと、第2のビアホール導体8a〜8bは、7aと同様に形成されている。そして、環状の軌道上の端部5を接続する第1のビアホール導体7と、環状の軌道外の端部6b〜6eを接続する第2のビアホール導体8とは、積層方向に交互に並ぶように設けられている。これにより、複数のコイル導体4は、途切れることなく連続的に互いに接続されている。
【0026】
なお、第2の外部電極11は、上記実施形態において、積層体2の側面を経てコイル電極4fに接続されているが、本発明は積層体2の内部に形成するビアホールでもって接続するようにしてもよい。このような構成なら、内部電極の全てが露出することはないので、信頼性の高い物が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1:積層インダクタ
2:積層体
3:磁性体層(絶縁体層)
4:コイル電極
5:第1の端部
6:第2の端部
7:第1のビアホール
8:第2のビアホール
9:引出ビアホール
10:第1の外部電極
11:第2の外部電極
E:領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記絶縁体層上において1ターンの長さで環状に周回しているコイル電極であって、環状の軌道上に位置している第1の端部及び該環状の軌道外に位置している第2の端部を有しているコイル電極と、積層方向に隣り合う所定の前記第1の端部同士を接続している第1のビアホール導体と、積層方向に隣り合う所定の前記第2の端部同士を接続している第2のビアホール導体とからなる螺旋状のコイルと、
前記螺旋状のコイルの両端に接続されるとともに、前記積層体の底面に形成されている第1及び第2の外部電極と、
を備える電子部品において、
前記積層体の積層方向から平面視したときに、前記複数のコイル電極において前記第1の端部及び前記第2の端部を構成している部分により囲まれている領域を備え、その領域の内側に前記外部電極から遠い方のコイル電極の端部からビアホール導体が引き出され、そのコイル電極の端部と前記第1の外部電極とが前記ビアホール導体で接続されていることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−14834(P2011−14834A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159863(P2009−159863)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】