説明

積層クッション材

【課題】病院、施設や在宅介護用の床ずれ防止用マット、車椅子、枕、体位変換用クッションや、一般健常者向けのマットレスやベッドパッド等の寝具、或いは座席等のクッションに有効に利用でき、皮膚に対する刺激が少なく、シーツ等のカバー材を上に敷かずに直接寝ることができ、なおかつ、体圧分散性、蒸れ防止性に優れた積層クッション材を提供する。
【解決手段】立体編物が複数層積層され、周囲が接合された積層クッション材であり、厚みが2〜8mm、表面編地の下記に示す総カバーファクター(TCF)が750〜1250、連結糸が15〜170デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が表層を構成し、かつ、厚みが3〜15mm、連結糸が180〜1000デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が下層を構成してい積層クッション材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に対する刺激が少なく、シーツ等のカバー材を上に掛けずに直接寝ることができ、なおかつ、体圧分散性、蒸れ防止性に優れたクッション材に関する。特に病院、施設や在宅介護用の床ずれ防止用マット、車椅子、枕、体位変換用クッションや、一般健常者向けのマットレスやベッドパッド等の寝具、或いは座席等のクッション材として有効に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
立体編物を積層したクッション材は、単層では得られないより良好な体圧分散性が得られることから、ベッドパッド、マットレス等の寝具や、車椅子用クッション等に多く使用されている。
このような積層クッション材として特許文献1には、表裏がハニカム状の編地で構成された立体編物が複数層積層され、回復性と通気性の良好な寝床用シート状物が提案されている。しかしながら特許文献1の積層クッション材は、表層を構成する立体編物が、180デニールの比較的太いナイロンモノフィラメントの連結糸で構成され、かつ、表面が8mmサイズのハニカム状のメッシュ構造で形成されているため肌に対する刺激が非常に強く、直接上に寝ていると肌にメッシュ形状の跡が残ったり、痒みが生じる等の問題点があった。従って、従来の立体編物の積層クッション材は、上にシーツ等の皮膚刺激を低減する素材を掛けて使用するのが一般的であった。
しかし、シーツ等を立体編物の上に掛けて使用すると、立体編物の高い通気性が阻害されることにより、蒸れ防止効果が抑えられ、良好な寝心地が得られなくなるという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平3−242115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解決し、皮膚に対する刺激が少なく、シーツ等のカバー材を上に掛けずに直接寝ることができ、かつ、体圧分散性、蒸れ防止性に優れたクッション材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するため、立体編物を単に積層するだけでなく、積層時に表層及び下層に用いる立体編物の表面カバーファクター、及び連結用モノフィラメントの使用繊度について鋭意検討した結果、肌に対して低刺激性であり、かつ体圧分散性、蒸れ防止性が良好となる条件を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、立体編物が複数層積層され、周囲が接合された積層クッション材であって、厚みが2〜8mm、表面編地の下記に示す総カバーファクター(TCF)が750〜1250、連結糸が15〜170デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が表層を構成し、かつ、厚みが3〜15mm、連結糸が180〜1000デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が下層を構成していることを特徴とする積層クッション材である。
【0006】
総カバーファクター(TCF)=コースカバーファクター(CCF)+ウェールカバーファクター(WCF)
但し、コースカバーファクター(CCF)=(コース数;本/ 2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ウェールカバーファクター(WCF)=(ウェール数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層クッション材は、表層に用いた立体編物が緩衝効果を有し、皮膚に対する刺激を抑えることが可能であるため、マットレスやベッドパッド等の寝具や、座席等のクッションとして、直接肌に接する状況で用いることができる。さらには優れた体圧分散性、蒸れ防止性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう立体編物とは、表裏2層の編地を連結糸で連結した、表層、連結層、裏層の少なくとも3層で形成される立体的な編地のことをいい、ダブルラッセル編機やダブル丸編機等、2列の針列を有する編機で形成される編地を指す。
【0009】
立体編物の連結糸に用いる繊維素材としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の合成繊維を用いることができるが、目標の圧縮変位量とし、かつ良好なクッション性とするために、連結糸はモノフィラメントが好ましい。特に連結糸がポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントであると、立体編物の厚み方向及び長さ、幅方向の寸法安定性が良好となると共に、立体編物がシワになり難くなり、かつ、繰り返し圧縮耐久性が良好となり好ましい。
【0010】
又、表裏の編地を形成する繊維素材としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維
、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の任意の繊維を用いることができる。尚、立体編物表面の肌触りをより良好にするには、表面の編地を構成する繊維に嵩高糸を用いることが好ましく、例えば、仮撚加工糸、ジェットスタッファー加工糸、押し込み加工糸、紡績糸、ループ状毛羽を有する流体噴射加工糸等、嵩高性が付与された糸が好ましい。又、綿、レーヨン等の吸湿性の高い繊維を用いると、蒸れ防止性を改善する上で好ましい。特に吸放湿性の高いキュプラレーヨンを用いると、蒸れ防止性がより良好となる。
【0011】
さらには、連結糸のモノフィラメントが表面に突出するざらざらとした肌触りを防止するために、表側編地のモノフィラメントの現出面積Aと表側編地に用いる繊維の現出面積Bの比はA/B≦0.15であることが好ましい。より好ましくは0≦A/B≦0.10、さらに好ましくは0≦A/B≦0.05で0に近いほど好ましい。
ここで、表側編地のモノフィラメント糸の現出面積Aと表側編地に用いる繊維の現出面積Bの比とは、編地表面の単位面積中に見えるそれぞれの糸の面積比を意味し、以下の方法により測定される。
【0012】
立体編物において1cm角の編地表面の拡大写真(5〜50倍)を直角方向から撮影し、写真をイメージスキャーナーでコンピューターに読み込み、高精細画像解析システムIP1000PC(商品名、旭化成(株)社製)の画像解析ソフトを用いて、編地表面に見えるモノフィラメント糸とマルチ糸の面積をそれぞれ領域指定し、領域指定したそれぞれの面積比を画素数の比で計算する。
尚、モノフィラメントの現出面積を低く抑えるには、表側編地の同一編目における表側編地用のマルチ糸の総繊度D(dtex)と、連結糸のモノフィラメントの繊度d(dtex)の関係であるD/dが1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜
15.0である。
【0013】
本発明では、表層を構成する立体編物は、下層の立体編物の硬さや肌への刺激性に対する緩衝効果を働かせるために、厚みを2〜8mmとし、連結糸に15〜170デシテックスのモノフィラメントを用いることが必要である。厚みが2mm未満、あるいは連結糸の繊度が15デシテックス未満の場合は、下層の立体編物の硬さや刺激に対する緩衝効果がなくなる。又、連結糸の繊度が170デシテックスを超えると表層の立体編物の肌への刺激性が強過ぎるものとなる。尚、厚みが8mmを超えると、表層の立体編物が適度な硬さを維持できずにつぶれ易くなり、蒸れ防止性が低下する。
表層の立体編物の連結糸繊度は好ましくは20〜120デシテックス、より好ましくは30〜100デシテックスである。
【0014】
又、表層の立体編物における表面の編地は、肌への刺激を低く抑え、柔らかい風合いとするために、総カバーファクター(TCF)を750〜1250とする必要がある。総カバーファクターが750未満の場合、表面がざらつき易く肌への刺激が強すぎる物となる。又、総カバーファクターが1250を超えると通気性が阻害され、蒸れ防止性能が低下すると共に、風合いが硬く良好な肌触りが得られない。総カバーファクターのより好ましい範囲は、800〜1150、さらに好ましくは850〜1100である。
【0015】
ここで、総カバーファクター(TCF)とは、下記式で計算されるものである。
総カバーファクター(TCF)=コースカバーファクター(CCF)+ウェールカバーファクター(WCF)
但し、コースカバーファクター(CCF)=(コース数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ウェールカバーファクター(WCF)=(ウェール数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
【0016】
尚、表面の編地を構成する糸条の太さとは、表面の編地2.54cm平方(6.45cm2 )の面積中に存在する編目を構成する糸条の太さをいう。例えば2枚筬から同一の針に2本の表糸が供給されて一つの編目を構成する場合は、2本の表糸の太さを合計した太さをいい、表裏面を連結する連結糸を除いたものである。
編目を構成する糸条の太さが異なる場合は、先ず表面の編地2.54cm平方(6.45cm2 )の面積中に存在する編目の総数(n)と、各編目を構成する糸条の太さ(D1、D2、D3、・・・、Dn;dtex)を測定する。次いで、各編目を構成する糸条の太さの合計(D1+ D2+D3+・・・Dn;dtex)を編目の総数(n)で割ったもので表す。
【0017】
本発明において、コースカバーファクター(CCF)は400〜800が好ましく、特に450〜750が好ましく、さらに500〜700が好ましく、又、ウェールカバーファクター(WCF)は250〜550が好ましく、特に300〜500が好ましく、さらに350〜450が好ましい。
さらにコースカバーファクター(CCF)/ウェールカバーファクター(WCF)の比(CCF/WCF)は1.0〜2.5が好ましく、特に1.3〜2.0が好ましい。
【0018】
カバーファクターを適正範囲とするには、使用する編機のゲージ、表面の編地を構成する繊維の繊度、編組織、仕上加工時の幅出し、オーバーフィード率を十分考慮して、表層の立体編物を作製する必要がある。編機は18〜24ゲージものを用い、立体編物の表側の編地に用いる繊維の繊度を100〜280デシテックスとし、仕上後の立体編物のコース数を25〜40コース/2.54cm、ウエール数を16〜25ウエール/2.54cmとすることが好ましい。
【0019】
本発明の積層クッション材において、下層に用いる立体編物は良好な体圧分散性を保持するために、180〜1000デシテックスのモノフィラメントからなる連結糸で構成され、厚み3〜15mmである必要がある。
厚みが3mm未満では体圧分散性が不十分となり、15mmを超えると立体編物の端部の加工が困難となると共に、長時間使用する際の耐久性が低下しヘタリ易くなる。
又、連結糸は180デシテックス未満であると体重を十分支えきれずに立体編物が押し潰され、良好な体圧分散性が得られなくなると共に、空気層を確保できなくなり、蒸れ防止性が大きく低下する。連結糸が1000デシテックスを超えると、立体編物が硬くなりすぎ、良好な体圧分散性が得られなくなる。下層に用いる立体編物の連結糸は好ましくは180〜900デシテックスであり、さらに好ましくは190〜700デシテックスである。
【0020】
尚、本発明の積層クッション材は、体圧分散性をより良好にするために、50N(/78.5cm2)負荷時の圧縮変位量が3〜30mmであることが好ましく、より好ましくは4〜25mmである。
ここで、本発明における50N/(78.5cm2)負荷の意味は、直径100mmの円形の圧縮板により50Nの荷重を掛けた状態を意味し、仙骨部や臀部が良好な耐圧分散性を示している状態の荷重に相当する。又、圧縮変位量とは立体編物が50N/(78.5cm2)の負荷で押し潰される厚みを意味する。
積層クッション材の50N(/78.5cm2)負荷時の圧縮変位量が30mmを超えると人が上に寝る際に立体編物の連結層が押し潰され、良好な体圧分散性が得られなくなると共に、空気層を確保できなくなり、蒸れ防止性が低下する。又、圧縮変位量が3mm未満であると、硬くなり過ぎて良好な体圧分散性が得られない。
【0021】
積層クッション材の50N(/78.5cm2)負荷時の圧縮変位量を適正な範囲とするには、表層及び下層に用いる立体編物の連結糸の繊度、編密度、連結糸の傾斜角、厚みを十分考慮して生機を作成し、ヒートセット仕上げ時の幅出し等により、圧縮硬さを調整する必要がある。特に、立体編物2.54cm平方(6.45cm2)の面積中にある連結糸の本数をN(本/2.54cm平方)、連結糸のデシテックスをT(g/1×106cm)、連結糸の比重をρ0(g/cm3)とした時に、立体編物2.54cm平方の面積中にある連結糸の総断面積(N・T/1×106・ρ0)を、表層に用いる立体編物は0.02〜0.25cm2とし、下層に用いる立体編物は0.03〜0.3cm2とすることが好ましい。尚、積層クッション材の圧縮回復性を良好にするために、表層及び/又は下層の立体編物の連結糸の構造を見掛け状、クロス構造や、トラス構造、筋交い構造とすることが好ましく、さらに、編み始め方向から見た断面における、裏面編地と連結糸とで形成される角度(鋭角側)を、少なくとも20%以上の連結糸において40〜80度とすることが好ましい。
【0022】
本発明の積層クッション材は表層の立体編物及び下層の立体編物がそれぞれ少なくとも1枚以上積層されて構成されるが、下層の立体編物は少なくとも2枚以上であることが好ましい。尚、積層クッション材トータルの厚みは7〜60mmであることが好ましい。トータルの厚みが7mm未満では体圧分散性が不良となり、60mmを超えると縫製加工時の取扱性が不良となる。
【0023】
本発明の積層クッション材は、表層及び下層の立体編物を積層し、周囲が接合されて構成される。積層方法は何ら限定されるものではなく、周囲は部分的に接合されていても良く、全周囲が接合されていても良いが、好ましくは全周囲が縁部カバー材により被覆されて縫製されていることが好ましい。又、積層した立体編物の中央部が部分的にキルティング等により上下に接合されていると、積層クッション材の上下層のズレや形態崩れを防止
できて好ましい。尚、周囲を接合する際に用いる縁部カバー材は、突き刺し強度が2〜20Nの範囲であると、立体編物のカット端部のモノフィラメントの切れ端が、縁部カバー材を突き抜けて飛び出すのを防止できるため好ましい。
【0024】
尚、縁部カバー材は突き刺し強度は、ミシン針(オルガン株式会社製;TV×7#19)をテンシロンのチャックに取り付け、縁部カバー材を直径30mmの円形のピン枠に固定した状態で、ミシン針を50mm/minの速度で突き刺し、貫通時の最大応力を求める方法で測定されるものである。
尚、本発明の積層クッション材は表層の立体編物と下層の立体編物が積層されてなるが、上層の立体編物と下層の立体編物の間、あるいは下層の立体編物の更に下層に立体編物以外の織編物、不織布、中綿入りのキルティング布等のシート状物が積層されていても良い。
【0025】
本発明に用いる立体編物は、生機を精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができ、精練や染色工程を省いて生機をヒートセットのみで仕上げることもできる。
また仕上げセット時には本発明の目的を損なわない範囲であれば、通常、繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工、難燃加工などの仕上げ加工を適用できる。
仕上げセットで用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファードライヤー、ドラムドライヤー、連続およびバッチ式タンブラー等が使用できる
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。尚、例中の各特性の評価および測定は下記の方法で行った。
(1)50N(/78.5cm2)負荷時の圧縮変位量
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの円形の圧縮板により、剛体面上に置いた20cm角の積層クッション材を、10mm/minの速度で50Nの荷重になるまで圧縮し、50N負荷時の圧縮変位量(mm)を測定する。測定は5点のサンプルで行い平均値を求める。
(2)体圧分散性
介護用ベッドの上に積層クッション材を置き、上に体圧分布測定装置Xセンサー(型式X2:XSENSER、Technology社製)を配置する。この上に伸長170〜175cm、65〜70kgの4人の男性が仰臥位で寝て、仙骨部の体圧(kPa)を測定し、4人の平均値を求める。
【0027】
(3)蒸れ防止性
28±1℃、65±5%RHの環境下の人工気候室内に積層クッション材を置き、積層クッション材の上に伸長170〜175cm、65〜70kgの4人の男性が仰臥位で寝て60分間安静にした後、蒸れ感を下記の点数で官能評価し、4人の平均点を求める。尚、試験中は綿パイルのタオルケット(良品計画社製)を首から足先まで掛けて行う。
3点:蒸れ感がない
2点:蒸れ感をやや感じる
1点:蒸れ感を非常に感じる
【0028】
(4)肌への刺激性
介護用ベッドの上に積層クッション材を置き、伸長170〜175cm、65〜70kgの4人の男性が上半身裸で仰臥位で寝て60時間安静にした後、皮膚に対する刺激を下
記の点数で官能評価し、4人の平均点を求めた。
3点:メッシュの跡も痒みも全くなし。
2点:メッシュの跡あるいは痒みが若干ある。
1点:メッシュの跡あるいは痒みが非常にある。
【0029】
[実施例1、比較例1、2]
6枚筬を装備した22ゲージのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する筬(L1、L2)から167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚糸をオールインの配列で供給し、連結糸用の筬(L3)から56dtexのナイロンモノフィラメントをオールインの配列で供給し、又、裏面の編地を形成する筬(L5、L6)から、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、L5の筬に3イン1アウトの配列で、L6の筬に(1イン)1アウト3インの配列で供給した。
この際、編機の釜間を2.5mm、4.5mm、12mmに変更し、(編組織1)に示す編組織で、機上コース30コース/2.54cmの密度で生機を編成した。
得られた生機を70℃で精錬後、機上幅と同一の仕上幅で180℃×2分の乾熱ヒートセットを行い、釜間2.5mmによる立体編物A、釜間4.5mmによる立体編物B、釜間12mmによる立体編物Cを得た。
【0030】
又、6枚筬を装備した18ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する筬(L1、L2)から167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、連結糸用の筬(L3、L4)から200dtexのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント(ソロテックス社製)を、又、裏面の編地を形成する筬(L5、L6)から、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、L1、L3、L5の筬に1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6の筬に1アウト1インの配列で供給した。(編組織2)に示す編組織で、機上コース22コース/2.54cmの密度で生機を編成し、得られた生機を70℃で精錬後、機上幅に対し1.4倍の幅出し率で180℃×2分の乾熱ヒートセットを行い、立体編物Dを得た。
【0031】
(編組織1)
L1:2022/2422/
L2:4644/2022/
L3:2020/2424/
L5:4420/2224/2220/2224/4468/6664/
6668/6664/
L6:4468/6664/6668/6664/4420/2224/
2220/2224/
【0032】
(編組織2)
L1:4644/4244/4644/4244/4644/4222/
2022/2422/2022/2422/2022/2444/
L2:2022/2422/2022/2422/2022/2444/
4644/4244/4644/4244/4644/4222/
L3:4242/4646/4242/810810/4242/4646/
6868/6464/6868/2020/6868/6464/
L4:6868/6464/6868/2020/6868/6464/
4242/4646/4242/810810/4242/4646/
L5:4446/4442/4446/4442/4446/4442/
2220/2224/2220/2224/2220/2224/
L6:2220/2224/2220/2224/2220/2224/
4446/4442/4446/4442/4446/4442/
【0033】
実施例1として、立体編物Bを表層とし(表面の編地が最表面)、立体編物Dを下層に2枚重ね、周囲を突き刺し強度が15Nの縁部カバー材でカバーしながら縫製し、ベッドパッド状の積層クッション材を作製した。比較例1として、立体編物Aを表層に用いた以外は実施例1と同様にして積層クッション材を作製した。又、比較例2として、立体編物Cを表層に用いた以外は実施例1と同様にして積層クッション材を作製した。得られた多層クッション材の各種特性を表1に示す。
【0034】
[実施例2]
立体編物Bの連結糸を110デシテックスのポリトリメチンテレフタレートモノフィラメント(ソロテックス社製)とした以外は、立体編物Bと同様にして立体編物Eを得た。
立体編物Eを表層に用いた以外は実施例1と同様にして、積層クッション材を作製した。得られた多層クッション材の各種特性を表1に示す。
[実施例3]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.5mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する筬(L1、L2)から110dtex/60フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚糸をL1の筬に3イン1アウトの配列で、L2の筬に(1イン)1アウト3インの配列で供給し、連結糸用の筬(L3)から56dtexのナイロンモノフィラメントをオールインの配列で供給し、又、裏面の編地を形成する筬(L5)から、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸をオールインの配列で供給した。
(編組織3)に示す編組織で、機上コース33コース/2.54cmの密度で生機を編
成し、得られた生機を70℃で精錬後、機上幅から1.1倍の幅出し率で180℃×2分の乾熱ヒートセットを行い、立体編物Fを得た。
【0035】
(編組織3)
L1:2022/2422/2022/2444/6866/6466/6866/6
444/
L2:6866/6466/6866/6444/2022/2422/2022/2
444/
L3:2020/0202/
L4:2220/2224/
立体編物Fを表層に用いた以外は実施例1と同様にして、積層クッション材を作製した。得られた多層クッション材の各種特性を表1に示す。
[比較例3]
表層及び下層の2枚の立体編物を全て立体編物Dとした以外は実施例1と同様にして、積層クッション材を作製した。得られた多層クッション材の各種特性を表1に示す。
[比較例4]
立体編物Bを3層積層して積層クッション材を作製した。得られた多層クッション材の各種特性を表1に示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の積層クッション材は、病院、施設や在宅介護用の床ずれ防止用マット、車椅子、枕、体位変換用クッションや、一般健常者向けのマットレスやベッドパッド等の寝具、或いは座席等のクッションに有効に利用でき、皮膚に対する刺激が少なく、シーツ等のカバー材を上に敷かずに直接寝ることができ、なおかつ、体圧分散性、蒸れ防止性に優れたクッション材となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体編物が複数層積層され、周囲が接合された積層クッション材であって、厚みが2〜8mm、表面編地の下記に示す総カバーファクター(TCF)が750〜1250、連結糸が15〜170デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が表層を構成し、かつ、厚みが3〜15mm、連結糸が180〜1000デシテックスのモノフィラメントからなる立体編物が下層を構成していることを特徴とする積層クッション材。
総カバーファクター(TCF)=コースカバーファクター(CCF)+ウェールカバーファクター(WCF)
但し、コースカバーファクター(CCF)=(コース数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ウェールカバーファクター(WCF)=(ウェール数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2

【公開番号】特開2006−204661(P2006−204661A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22486(P2005−22486)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】