説明

積層コイル部品

【課題】直流抵抗及び浮遊容量を低減できる積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1は、素体2と、コイル3と、外部電極4,5とを備え、コイル3は、並列に接続された螺旋状の第1コイル3Aと螺旋状の第2コイル3Bとを含み、第1導体パターン12a〜12hと第2導体パターン13a〜13hとは、同一形状を有し、第1コイル3A及び第2コイル3Aの周回中心線Cが一致するように周回中心線Cを中心に点対称に配置されており、第1導体パターン12の一端部と絶縁体層L4〜L11を介して配置された他の第1導体パターン12の一端部とが直列に接続され、第2導体パターン13の一端部と絶縁体層L4〜L11を介して配置された他の第2導体パターン13の一端部とが直列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、複数の矩形状の絶縁体層を積層することによって形成される素体と、素体内に形成されるコイルと、素体の積層方向における両端部にそれぞれ形成される一対の外部電極とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この積層コイル部品では、直流抵抗を下げるために、コイルが、並列接続された一対のコイル導体の組を積層方向に複数直列接続することによって構成されている。コイル導体の組は、スルーホール導体によって直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−44038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の積層コイル部品では、コイル導体の組同士を1本のスルーホール導体によって接続しているため、このスルーホール導体において導通路が狭まり(導体の断面積が小さくなり)、直流抵抗がどうしても高くなってしまう。また、同一パターンのコイル導体を積層して組を構成しているため、積層方向で重なるコイル導体間の浮遊容量(静電容量)が大きくなるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、直流抵抗及び浮遊容量を低減できる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層コイル部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、複数のコイル導体が接続されて構成され、素体の内部に配置されたコイルと、素体の両端部にそれぞれ形成され、コイルの両端のそれぞれと接続される一対の外部電極とを備え、コイルは、並列に接続された螺旋状の第1コイルと螺旋状の第2コイルとを含み、複数のコイル導体は、第1コイルを構成する複数の第1コイル導体と、第2コイルを構成する複数の第2コイル導体とを含み、第1コイル導体と第2コイル導体とは、同一形状を有し、第1コイル及び第2コイルそれぞれの周回中心線が一致するように周回中心線を中心に点対称に配置されており、第1コイル導体の一端部と絶縁体層を介して配置された他の第1コイル導体の一端部とが直列に接続され、第2コイル導体の一端部と絶縁体層を介して配置された他の第2コイル導体の一端部とが直列に接続されていることを特徴とする。
【0007】
この積層コイル部品では、並列に接続された第1コイル及び第2コイルによりコイルが構成されており、第1及び第2コイルの周回中心線が一致するように、同一の形状を有する第1コイル導体と第2コイル導体とが、周回中心線を中心に点対称に配置されている。そして、第1コイル導体の一端部と絶縁体層を介して配置された他の第1コイル導体の一端部とが直列に接続され、第2コイル導体の一端部と絶縁体層を介して配置された他の第2コイル導体の一端部とが直列に接続されている。したがって、第1コイル及び第2コイルを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。また、積層方向において第1コイル導体及び第2コイル導体が重なる部分が少ないため、コイル導体間の浮遊容量を低減できる。
【0008】
第1コイル導体の一端部と他の第1コイル導体の一端部とは、第1スルーホール導体によって接続され、第2コイル導体の一端部と他の第2コイル導体の一端部とは、第2スルーホール導体によって接続されていることが好ましい。このような構成によれば、第1コイル導体同士及び第2コイル導体同士を良好に接続できる。
【0009】
第1コイル導体及び第2コイル導体は、同一の前記絶縁体層上に配置することができる。このような構成によれば、素体の大きさを維持したまま、コイルの巻回数を多くすることができる。
【0010】
第1コイル導体及び第2コイル導体のそれぞれは、少なくとも二層の絶縁体層を介して配置することができる。このような構成の場合には、隣接する絶縁体層において第1コイル導体及び第2コイル導体が積層方向で重なり合わないので、第1コイル導体及び第2コイル導体による浮遊容量を更に低減できる。
【0011】
第1コイル導体及び第2コイル導体は、L字状を呈していることが好ましい。このような構成によれば、素体の大きさを維持したまま、コイルの巻回数を多くすることができる。
【0012】
第1コイル導体及び第2コイル導体は、直線状を呈していることが好ましい。このような構成によれば、浮遊容量を更に低減することができる。また、第1コイル導体及び第2コイル導体をスルーホール導体で接続する場合には、スルーホール導体一本当たりの断面積を大きくすることができ、直流抵抗を更に低減できる。
【0013】
素体は、互いに対向する一対の端面と端面同士を連結する四つの側面とを有する直方体をなし、複数の絶縁体層が一対の端面の対向方向に積層されて構成され、第1及び第2コイルの周回中心線が対向方向に延びていることが好ましい。このような構成によれば、コイルが素体の長手方向に巻回されるため、側面の対向方向に絶縁体層が積層される場合に比べて、コイルと外部電極とが対向する部分を少なくでき、コイルと外部電極との間の浮遊容量を低減できる。
【0014】
コイルが素体内部に複数並置された構成とすることもできる。このように、素体内部に上述のコイルが並置されたアレイでは、直流抵抗及び浮遊容量を低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、直流抵抗及び浮遊容量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【図2】図1に示す積層コイル部品の素体の展開斜視図である。
【図3】図2に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
【図4】従来の積層コイル部品のコイルを示す斜視図である。
【図5】周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る積層コイル部品の素体の展開斜視図である。
【図7】図6に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
【図8】図7に示すコイルの変形例に係るコイルを示す斜視図である。
【図9】第3実施形態に係る積層コイルアレイを示す図である。
【図10】変形例に係るコイルを示す斜視図である。
【図11】変形例に係るコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。図2は、図1に示す積層コイル部品の素体の展開斜視図である。図3は、図2に示す導体パターンによって構成されるコイルを示す斜視図である。
【0019】
各図に示すように、積層コイル部品1は、回路基板(図示しない)の表面に実装される積層ビーズインダクタであり、複数の絶縁体層L1〜L14を積層することによって形成される直方体状の素体2と、積層方向に向かって周回中心線Cが延びるように素体2内で巻回されたコイル3と、絶縁体層L1〜L14の積層方向における素体2の両端部にそれぞれ形成される一対の外部電極4,5とを備えて構成されている。
【0020】
外部電極4は、素体2の一方の端面2aを覆うように設けられている。また、外部電極4は、端面2aから回り込んで、端面2aに隣接する四方の側面2c,2d,2e,2fの一部も覆うように形成されている。外部電極5は、素体2の一方の端面2bを覆うように設けられている。また、外部電極5は、端面2bから回り込んで、端面2bに隣接する四方の側面2c,2d,2e,2fの一部も覆うように形成されている。外部電極4の端面2aから側面2c,2d,2e,2fへ回り込んだ部分、及び外部電極5の端面2bから側面2c,2d,2e,2fへ回り込んだ部分は、回路基板の端子部分と接触して半田付けが行われる部分である。これによって、側面2c,2d,2e,2fのいずれかが回路基板の表面と対向するように配置され、コイル3の周回中心線Cが回路基板の表面と平行になる。外部電極4,5は、素体2の焼成後、ディップ法などによってAgやガラスを主成分とした導電性ペーストを塗布し、焼成後、メッキ処理を施すことによって形成される。
【0021】
素体2は、複数(ここでは14枚)の矩形状の絶縁体層L1〜L14を積層することによって構成されている。具体的には、Fe、Ni、Cu、Znを主成分としたフェライト材からなるフェライトグリーンシートの表面にコイル導体などの所定の導体パターンを印刷すると共にスルーホールを形成する。その後、複数のフェライトグリーンシートを積層すると共に積層方向に圧力をかけることによって圧着し、シート積層体を得る。そして、当該シート積層体を素体2の単位形状にカットした後、焼成することによって素体2が形成される。素体2の焼成後の大きさは、積層方向における長さが0.35〜1.55mmとされ、積層方向と直交する辺の大きさが0.18〜0.75mmとされている。また、焼成後の絶縁体層L1〜L14の厚みは、0.005〜0.015mmとされている。積層コイル部品1の寸法(L×W×T)は、例えば0.4mm×0.2mm×0.2mm、0.6mm×0.3mm×0.3mmなどとなっている。なお、実際の積層コイル部品1では、絶縁体層L1〜L14の各層同士は、視認できない程度に一体化されている。
【0022】
図2に示すように、素体2の内部には、フェライトグリーンシート上に印刷された導体パターンが積層されることによってコイル3を積層方向に引き出して外部電極4,5とコイル3とを電気的に接続する引出部6,7と、コイル3と引出部6,7とをそれぞれ電気的に接続する第1接続導体パターン8及び第2接続導体パターン9とが配置されている。また、各導体同士は積層方向にスルーホール導体によって接続されている。コイル3は、第1コイル3Aと、第2コイル3Bとから構成されている。
【0023】
引出部6は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L1,L2が積層されて構成されている。絶縁体層L1の表面には、引出導体10が形成されている。引出導体10は、外部電極4と電気的に接続される。絶縁体層L2の表面には、引出導体11が形成されている。引出導体11は、絶縁体層L2を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H2と電気的に接続されている。引出導体11は、積層された状態でスルーホール導体H2を介して隣接する第1接続導体パターン8と電気的に接続されている。引出導体10と引出導体11とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部6を構成している。
【0024】
絶縁体層L3の表面には、第1接続導体パターン8が形成されている。第1接続導体パターン8は、第1コイル3Aと第2コイル3Bを並列に接続する部分であり、絶縁体層L3上で絶縁体層L3の対角線に沿って直線状(I字状)に形成されている。第1接続導体パターン8の両端は、絶縁体層L3を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H3,H4と電気的に接続されている。第1接続導体パターン8は、積層された状態でスルーホール導体H3,H4を介して隣接する第1導体パターン12aの一端及び第2導体パターン13aの一端と電気的に接続される。第1接続導体パターン8の中央部は、積層された状態でスルーホール導体H2と電気的に接続される領域となっている。この領域は、略円形を呈しており、導体パターンの幅よりも幅広に形成されている。以下、スルーホール導体と電気的に接続される領域は、同様の構成を有している。
【0025】
絶縁体層L4の表面には、第1導体パターン(第1コイル導体)12a及び第2導体パターン(第2コイル導体)13aが形成されている。第1導体パターン12aは、第1コイル3Aを構成しており、絶縁体層L4上で略L字状に形成されている。第1導体パターン12aは、第1コイル3Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン12aの一端は、絶縁体層L4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体(第1スルーホール導体)H5と電気的に接続されている。第1導体パターン12aは、積層された状態でスルーホール導体H5を介して隣接する第1導体パターン12bの一端と電気的に接続される。第1導体パターン12aの他端は、積層された状態でスルーホール導体H3と電気的に接続される領域となっている。
【0026】
第2導体パターン13aは、第2コイル3Bを構成しており、絶縁体層L4上で略L字状に形成されている。第2導体パターン13aは、第2コイル3Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン13aの一端は、絶縁体層L4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体(第2スルーホール導体)H6と電気的に接続されている。第2導体パターン13aは、積層された状態でスルーホール導体H6を介し隣接する第2導体パターン13bの一端と電気的に接続される。第2導体パターン13aの他端は、積層された状態でスルーホール導体H4と電気的に接続される領域となっている。
【0027】
第1導体パターン12aと第2導体パターン13aとは、同一形状を有しており、絶縁体層L4上において、コイル3(3A,3B)の周回中心線C(コイル軸中心線)を中心に点対称に配置されている。具体的には、第1導体パターン12aの長辺部分と第2導体パターン13aの長辺部分とが対向して配置されており、第1導体パターン12aの短辺部分と第2導体パターン13aの短辺部分とが対向して配置されている。第1導体パターン12aの長辺部分及び第2導体パターン13aの長辺部分は、絶縁体層L4の対向する一対の辺S1,S2に沿うように形成されており、第1導体パターン12aの短辺部分と第2導体パターン13aの短辺部分は、絶縁体層L4の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。
【0028】
絶縁体層L5の表面には、第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bが形成されている。第1導体パターン12bは、第1コイル3Aを構成しており、絶縁体層L5上で略L字状に形成されている。第1導体パターン12bは、第1コイル3Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン12bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H5と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン12bの他端は、絶縁体層L5を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H7と電気的に接続されている。第1導体パターン12bは、積層された状態でスルーホール導体H7を介して隣接する第1導体パターン12cの他端と電気的に接続されている。
【0029】
第2導体パターン13bは、第2コイル3Bを構成しており、絶縁体層L5上で略L字状に形成されている。第2導体パターン13bは、第2コイル3Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン13bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H6と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン13bの他端は、絶縁体層L5を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H8と電気的に接続されている。第2導体パターン13bは、積層された状態でスルーホール導体H8を介して隣接する第2導体パターン13cの他端と電気的に接続されている。
【0030】
第1導体パターン12bと第2導体パターン13bとは、同一形状を有しており、絶縁体層L5上において、コイル3(3A,3B)の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。また、第1導体パターン12bは、絶縁体層L5の一対の辺S3,S4の対向方向で周回中心線Cを通る線に対して、第1導体パターン12aと線対称となる配置となっている。同様に、第2導体パターン13bは、絶縁体層L5の一対の辺S3,S4の対向方向で周回中心線Cを通る線に対して、第2導体パターン13aと線対称となる配置となっている。
【0031】
絶縁体層L6の表面には、第1導体パターン12c及び第2導体パターン13cが形成されている。第1導体パターン12cは、第1コイル3Aを構成しており、絶縁体層L6上で略L字状に形成されている。第1導体パターン12cは、第1コイル3Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン12cの一端は、絶縁体層L6を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H9と電気的に接続されている。第1導体パターン12cは、積層された状態でスルーホール導体H9を介して隣接する第1導体パターン12dの一端と電気的に接続されている。第1導体パターン12cの他端は、積層された状態でスルーホール導体H7と電気的に接続される領域となっている。
【0032】
第2導体パターン13cは、第2コイル3Bを構成しており、絶縁体層L6上で略L字状に形成されている。第2導体パターン13cは、第2コイル3Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン13cの一端は、絶縁体層L6の厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H10と電気的に接続されている。第2導体パターン13cは、積層された状態でスルーホール導体H10を介して隣接する第2導体パターン13dの一端と電気的に接続されている。第2導体パターン13cの他端は、積層された状態でスルーホール導体H8と電気的に接続される領域となっている。
【0033】
第1導体パターン12cと第2導体パターン13cとは、同一形状を有しており、絶縁体層L6上において、コイル3(3A,3B)の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。また、第1導体パターン12c及び第2導体パターン13cは、第1導体パターン12a及び第2導体パターン13aを周回中心線Cを中心に反時計周りに略90°回転させた配置となっている。すなわち、第1導体パターン12cの長辺部分及び第2導体パターン13cの長辺部分は、絶縁体層L6の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されており、第1導体パターン12cの短辺部分と第2導体パターン13cの短辺部分は、絶縁体層L6の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。
【0034】
絶縁体層L7の表面には、第1導体パターン12d及び第2導体パターン13dが形成されている。第1導体パターン12dは、第1コイル3Aを構成しており、絶縁体層L7上で略L字状に形成されている。第1導体パターン12dは、第1コイル3Aの略3/8ターンに相当する。第1導体パターン12dの一端は、積層された状態でスルーホール導体H9と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン12dの他端は、絶縁体層L7を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H11と電気的に接続されている。第1導体パターン12dは、積層された状態でスルーホール導体H11を介して隣接する第1導体パターン12eの他端と電気的に接続されている。
【0035】
第2導体パターン13dは、第2コイル3Bを構成しており、絶縁体層L7上で略L字状に形成されている。第2導体パターン13dは、第2コイル3Bの略3/8ターンに相当する。第2導体パターン13dの一端は、積層された状態でスルーホール導体H10と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン13dの他端は、絶縁体層L7を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H12と電気的に接続されている。第2導体パターン13dは、積層された状態でスルーホール導体H12を介して隣接する第2導体パターン13eの他端と電気的に接続されている。
【0036】
第1導体パターン12dと第2導体パターン13dとは、同一形状を有しており、絶縁体層L7上において、コイル3(3A,3B)の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。また、第1導体パターン12d及び第2導体パターン13dは、第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bを周回中心線Cを中心に時計周りに略90°回転させた配置となっている。
【0037】
絶縁体層L8の表面には、第1導体パターン12e及び第2導体パターン13eが形成されており、第1導体パターン12e及び第2導体パターン13eは、第1導体パターン12a及び第2導体パターン13aと同様の構成を有している。絶縁体層L9の表面には、第1導体パターン12f及び第2導体パターン13fが形成されており、第1導体パターン12f及び第2導体パターン13fは、第1導体パターン12b及び第2導体パターン13bと同様の構成を有している。絶縁体層L10の表面には、第1導体パターン12g及び第2導体パターン13gが形成されており、第1導体パターン12g及び第2導体パターン13gは、第1導体パターン12c及び第2導体パターン13cと同様の構成を有している。絶縁体層L11の表面には、第1導体パターン12h及び第2導体パターン13hが形成されており、第1導体パターン12h及び第2導体パターン13hは、第1導体パターン12d及び第2導体パターン13dと同様の構成を有している。
【0038】
第1導体パターン12eと第1導体パターン12fとは、スルーホール導体H13によって電気的に接続されており、第2導体パターン13eと第2導体パターン13fとは、スルーホール導体H14によって電気的に接続されている。第1導体パターン12fと第1導体パターン12gとは、スルーホール導体H15によって電気的に接続されており、第2導体パターン13fと第2導体パターン13gとは、スルーホール導体H16によって電気的に接続されている。第1導体パターン12gと第1導体パターン12hとは、スルーホール導体H17によって電気的に接続されており、第2導体パターン13gと第2導体パターン13hとは、スルーホール導体H18によって電気的に接続されている。
【0039】
絶縁体層L12の表面には、第2接続導体パターン9が形成されている。第2接続導体パターン9は、第1コイル3Aと第2コイル3Bを並列に接続する部分であり、絶縁体層L12上で絶縁体層L12の対角線に沿って直線状(I字状)に形成されている。第2接続導体パターン9の両端は、積層された状態でスルーホール導体H19,H20と電気的に接続される領域となっている。第2接続導体パターン9の中央部は、絶縁体層L12を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H21と電気的に接続されている。第2接続導体パターン9は、積層された状態でスルーホール導体H21を介して隣接する引出導体14と電気的に接続される。
【0040】
引出部7は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L13,L14が積層されて構成されている。絶縁体層L13の表面には、引出導体14が形成されている。引出導体14は、積層された状態でスルーホール導体H21と電気的に接続される領域となっている。絶縁体層L14の表面には、引出導体15が形成されている。引出導体15は、外部電極5と電気的に接続されている。引出導体14と引出導体15とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部7を構成している。
【0041】
上記絶縁体層L1〜L14が積層されることにより、第1導体パターン12a〜12hが直列に接続されると共に、第2導体パターン13a〜13hが直列に接続され、素体2の内部にコイル3(第1コイル3A及び第2コイル3B)が形成される。図3に示すように、コイル3は、第1コイル3Aと、第2コイル3Bとにより構成されている。第1コイル3A及び第2コイル3Bは、第1接続導体パターン8及び第2接続導体パターン9により、並列に接続されている。第1コイル3A及び第2コイル3Bは、螺旋状をなして互いに交差しており、それぞれの周回中心線が一致している。これにより、コイル3は、周回中心線Cを中心に螺旋状をなしている。スルーホール導体H2,H21の中心軸線は、周回中心線Cと一致している。
【0042】
次に、本実施形態に係る積層コイル部品1の作用・効果について、図4を参照して説明する。
【0043】
図4は、従来の積層コイル部品のコイルを示す斜視図である。図4に示すように、従来の積層コイル部品のコイル100では、絶縁体層を挟んで並列に接続される導体パターン101,102の組110、導体パターン103,104の組111、導体パターン105,106の組112、導体パターン107,108の組113が、積層方向に直列に接続されている。同一形状(コ字状)を呈する複数(ここでは2つ)導体パターン101,102、導体パターン103,104、導体パターン105,106、導体パターン107,108同士は、それぞれ二本のスルーホール導体H120〜123によってそれぞれ電気的に接続されており、組110〜113同士は、一本のスルーホール導体130〜132によって電気的に接続されている。
【0044】
そのため、従来の積層コイル部品100では、組110〜113同士を接続するスルーホール導体130〜132において導通路が狭くなる、つまり導体の断面積が小さくなり、直流抵抗が高くなるといった問題があった。また、同一形状の導体パターン101,102、導体パターン103,104、導体パターン105,106、導体パターン107,108が絶縁体層を挟んで配置されているため、絶縁体層を挟んで隣り合う導体パターンにおいて浮遊容量が大きくなるといった問題もあった。
【0045】
これに対して、本実施形態の積層コイル部品1では、並列に接続された第1コイル3A及び第2コイル3Bによりコイル3が構成されており、第1及び第2コイル3A,3Bの周回中心線Cが一致するように、同一の形状を有する第1導体パターン12a〜12hと第2導体パターン13a〜13hとが、周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。そして、第1コイル3Aは、第1導体パターン12の一端部と絶縁体層L4〜L11を介して配置された他の第1導体パターン12の一端部とがスルーホール導体H5,H7,H9,H11,H13,H15,H17によって直列に接続されて構成され、第2コイル3Bは、第2導体パターン13の一端部と絶縁体層L4〜L11を介して配置された他の第2導体パターン13の一端部とがスルーホール導体H6,H8,H10,H12,H14,H16,H18によって直列に接続されて構成されている。
【0046】
したがって、積層コイル部品1では、第1コイル3A及び第2コイル3Bを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。また、積層コイル部品1では、絶縁体層L4〜L11の積層方向において第1導体パターン12a〜12h及び第2導体パターン13a〜13hの重なる部分が従来の積層コイル部品100よりも少ないため、第1導体パターン12a〜12h及び第2導体パターン13a〜13hによる浮遊容量を低減できる。
【0047】
このような積層コイル部品1では、上述のように浮遊容量を低減できるため、以下のような特性を得ることができる。図5は、周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。図5において、実線は従来の積層コイルの特性を示し、一点鎖線は本実施形態の積層コイルの特性を示している。図5に示すように、本実施形態の積層コイル1では、浮遊容量(C値)を低減することにより、従来の積層コイルに比べて、高周波帯域に特性をシフトさせることができる。
【0048】
また、積層コイル部品1では、第1コイル3Aを構成する第1導体パターン12a〜12h及び第2コイル3Bを構成する第2導体パターン13a〜13hがL字状を呈しているため、第1コイル3A及び第2コイル3B(コイル3)の巻回数を確保することができる。
【0049】
更に、積層コイル部品1では、絶縁体層L1〜L14が素体2の長手方向(端面2a,2bの対向方向)に積層されているため、コイル3の周回中心線Cが長方体の素体2の内長手方向に延在している。このように、コイル3が素体2内において長手方向に螺旋状に形成された構成となっているため、側面2c,2dの対向方向に絶縁体層L1〜L14が積層される構成に場合に比べて、コイル3の巻回数を多くすることができる。また、コイルと外部電極とが対向する部分を少なくでき、コイルと外部電極との間の浮遊容量を低減できる。その結果、側面2c,2dの対向方向に延びるコイルを有する積層コイル部品に比べて、図5に示すように、高周波帯域に特性をシフトさせることができる。
【0050】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係る積層コイル部品の素体の展開斜視図である。図7は、図6に示すコイル導体によって構成されるコイルを示す斜視図である。
【0051】
図6に示すように、素体20は、複数(ここでは10枚)の矩形状の絶縁体層L20〜L29を積層することによって構成されている。素体20の内部には、フェライトグリーンシート上に印刷された導体パターンが積層されることによってコイル21を積層方向に引き出して外部電極4,5(図1参照)とコイル21とを電気的に接続する引出部22,23と、コイル21と引出部22,23とをそれぞれ電気的に接続する第1接続導体パターン24及び第2接続導体パターン25とが配置されている。また、各導体同士は積層方向にスルーホール導体によって接続されている。コイル21は、第1コイル21Aと、第2コイル21Bとから構成されている。
【0052】
引出部22は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L20,L21が積層されて構成されている。絶縁体層L20の表面には、引出導体30が形成されている。引出導体30は、外部電極4と電気的に接続されている。絶縁体層L21の表面には、引出導体31が形成されている。引出導体31は、絶縁体層L21を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H31と電気的に接続されている。引出導体31は、積層された状態でスルーホール導体H31を介して隣接する第1接続導体パターン24と電気的に接続されている。引出導体30と引出導体31とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部22を構成している。
【0053】
絶縁体層L22の表面には、第1接続導体パターン24が形成されている。第1接続導体パターン24は、第1コイル21Aと第2コイル21Bを並列に接続する部分であり、絶縁体層L22上で絶縁体層L22の対角線に沿って直線状(I字状)に形成されている。第1接続導体パターン24の両端は、絶縁体層L22を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H32,H33と電気的に接続されている。第1接続導体パターン24は、積層された状態でスルーホール導体H32,H33を介して隣接する第1導体パターン32aの一端及び第2導体パターン33aの一端と電気的に接続される。第1接続導体パターン24の中央部は、積層された状態でスルーホール導体H31と電気的に接続される領域となっている。この領域は、略円形を呈しており、導体パターンの幅よりも幅広に形成されている。以下、スルーホール導体と電気的に接続される領域は、同様の構成を有している。
【0054】
絶縁体層L23の表面には、第1導体パターン32a及び第2導体パターン33aが形成されている。第1導体パターン32aは、第1コイル21Aを構成しており、絶縁体層L23上で直線状(I字状)に形成されている。第1導体パターン32aは、第1コイル21Aの略1/4ターンに相当する。第1導体パターン32aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H32と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン32aの他端は、絶縁体層L23を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H34と電気的に接続されている。第1導体パターン32aは、積層された状態でスルーホール導体H34を介して隣接する第1導体パターン32bの一端と電気的に接続される。
【0055】
第2導体パターン33aは、第2コイル21Bを構成しており、絶縁体層L23上で直線状(I字状)に形成されている。第2導体パターン33aは、第2コイル21Bの略1/4ターンに相当する。第2導体パターン33aの一端は、積層された状態でスルーホール導体H33と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン33aの他端は、絶縁体層L23を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H35と電気的に接続されている。第2導体パターン33aは、積層された状態でスルーホール導体H35を介し隣接する第2導体パターン33bの一端と電気的に接続される。
【0056】
第1導体パターン32aと第2導体パターン33aとは、同一形状を有しており、絶縁体層L23上において、コイル21の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。具体的には、第1導体パターン32a及び第2導体パターン33aは、対向して配置されており、絶縁体層L23の対向する一対の辺S1,S2に沿うように配置されている。
【0057】
絶縁体層L24の表面には、第1導体パターン32b及び第2導体パターン33bが形成されている。第1導体パターン32bは、第1コイル21Aを構成しており、絶縁体層L24上で直線状に形成されている。第1導体パターン32bは、第1コイル21Aの略1/4ターンに相当する。第1導体パターン32bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H34と電気的に接続される領域となっている。第1導体パターン32bの他端は、絶縁体層L24を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H36と電気的に接続されている。第1導体パターン32bは、積層された状態でスルーホール導体H36を介して隣接する第1導体パターン32cの一端と電気的に接続される。
【0058】
第2導体パターン33bは、第2コイル21Bを構成しており、絶縁体層L24上で直線状に形成されている。第2導体パターン33bは、第2コイル21Bの略1/4ターンに相当する。第2導体パターン33bの一端は、積層された状態でスルーホール導体H35と電気的に接続される領域となっている。第2導体パターン33bの他端は、絶縁体層L24を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H37と電気的に接続されている。第2導体パターン33bは、積層された状態でスルーホール導体H37を介し隣接する第2導体パターン33cの一端と電気的に接続される。
【0059】
第1導体パターン32bと第2導体パターン33bとは、同一形状を有しており、絶縁体層L24上において、コイル21の周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。具体的には、第1導体パターン32b及び第2導体パターン33bは、対向して配置されており、絶縁体層L24の対向する一対の辺S3,S4に沿うように配置されている。
【0060】
絶縁体層L25の表面には、第1導体パターン32c及び第2導体パターン33cが形成されており、第1導体パターン32c及び第2導体パターン33cは、第1導体パターン32a及び第2導体パターン33aと同様の構成を有している。絶縁体層L26の表面には、第1導体パターン32d及び第2導体パターン33dが形成されており、第1導体パターン32d及び第2導体パターン33dは、第1導体パターン32b及び第2導体パターン33bと同様の構成を有している。第1導体パターン32cと第1導体パターン32dとは、スルーホール導体H38によって電気的に接続されており、第2導体パターン33cと第2導体パターン33dとは、スルーホール導体H39によって電気的に接続されている。
【0061】
絶縁体層L27の表面には、第2接続導体パターン25が形成されている。第2接続導体パターン25は、第1コイル21Aと第2コイル21Bを並列に接続する部分であり、絶縁体層L27上で絶縁体層L27の対角線に沿って直線状に形成されている。第2接続導体パターン25の両端は、積層された状態で、第1導体パターン32dの他端に形成されたスルーホール導体H40、及び第2導体パターン33dの他端に形成されたスルーホール導体H41と電気的に接続される領域となっている。第2接続導体パターン25の中央部は、絶縁体層L27を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール導体H42と電気的に接続されている。第2接続導体パターン25は、積層された状態でスルーホール導体H42を介して隣接する引出導体34と電気的に接続される。
【0062】
引出部23は、複数(ここでは2層)の絶縁体層L28,L29が積層されて構成されている。絶縁体層L28の表面には、引出導体34が形成されている。引出導体34は、積層された状態でスルーホール導体H42と電気的に接続される領域となっている。絶縁体層L29の表面には、引出導体35が形成されている。引出導体35は、外部電極5と電気的に接続されている。引出導体34と引出導体35とは、図示しないスルーホール導体によって電気的に接続されており、引出部23を構成している。
【0063】
上記絶縁体層L20〜L29が積層されることにより、第1導体パターン32a〜32dが直列に接続されると共に、第2導体パターン33a〜33dが直列に接続され、素体20の内部にコイル21(第1コイル21A及び第2コイル21B)が形成される。図7に示すように、コイル21は、第1コイル21Aと、第2コイル21Bとにより構成されている。第1コイル21A及び第2コイル21Bは、第1接続導体パターン24及び第2接続導体パターン25により、並列に接続されている。第1コイル21A及び第2コイル21Bは、螺旋状をなして互いに交差しており、それぞれの周回中心線が一致している。これにより、コイル21は、周回中心線Cを中心に螺旋状をなしている。スルーホール導体H31,H42の中心軸線は、周回中心線Cと一致している。
【0064】
以上説明したように、コイル21が内部に配置された素体20を備える積層コイル部品では、積層コイル部品1と同様に、並列に接続された第1コイル21A及び第2コイル21Bによりコイル21が構成されており、第1及び第2コイル21A,21Bの周回中心線Cが一致するように、同一の形状を有する第1導体パターン32a〜32dと第2導体パターン33a〜33dとが、周回中心線Cを中心に点対称に配置されている。そして、第1コイル21Aは、第1導体パターン32の一端部と絶縁体層L23〜L26を介して配置された他の第1導体パターン32の一端部とがスルーホール導体H34,H36,H38,H40によって直列に接続されて構成され、第2コイル21Bは、第2導体パターン33の一端部と絶縁体層L23〜L26を介して配置された他の第2導体パターン33の一端部とがスルーホール導体H35,H37,H39,H41によって直列に接続されて構成されている。
【0065】
したがって、この積層コイル部品では、第1コイル21A及び第2コイル21Bを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。また、この積層コイル部品では、絶縁体層L23〜L26の積層方向において第1導体パターン32a〜32d及び第2導体パターン33a〜33dの重なる部分が従来の積層コイル部品よりも少ないため、第1導体パターン32a〜32d及び第2導体パターン33a〜33dによる浮遊容量を低減できる。
【0066】
また、コイル21は、第1コイル21Aを構成する第1導体パターン32a〜32d及び第2コイル21Bを構成する第2導体パターン33a〜33dがI字状を呈しており、隣り合う絶縁体層L23〜L26において導体パターンが互いに略90°回転して配置されているため、絶縁体層L23〜L26を挟んで対向する第1導体パターン32a〜32d及び第2導体パターン33a〜33dによる浮遊容量をより効果的に低減できる。
【0067】
更に、コイル21では、第1導体パターン32a〜32d及び第2導体パターン33a〜33dがI字状を呈しているため、スルーホール導体H31〜H42の断面積を大きくすることができる。
【0068】
なお、上記コイル21では、第1導体パターン32a〜32dと第2導体パターン33a〜33dとを同一の絶縁体層L22〜L26上にそれぞれ配置しているが、第1導体パターン32a〜32dと第2導体パターン33a〜33dとのそれぞれは、必ずしも同一の絶縁体層上に配置される必要はない。
【0069】
図8は、図7に示すコイルの変形例に係るコイルを示す斜視図である。図8に示すコイル40は、第1導体パターン41a〜41d及び第2導体パターン42a〜42dの積層形態が上記コイル21と異なっている。すなわち、コイル40では、絶縁体層上に第1導体パターン41a〜41d及び第2導体パターン42a〜42dそれぞれが一つずつ配置されて構成されており、積層方向において第1導体パターン41a〜41dと第2導体パターン42a〜42dとが互い違いに配置されている。つまり、積層方向において、第1導体パターン41a、第2導体パターン42a、第1導体パターン41b、第2導体パターン42b、第1導体パターン41c、第2導体パターン42c、第1導体パターン41d、第2導体パターン42dの順で各絶縁体層にそれぞれ配置されている。第1導体パターン41a〜41dは、第1コイル40Aを形成しており、第2導体パターン42a〜42dは、第2コイル40Bを構成している。なお、各導体パターンは、スルーホール導体で接続されている。
【0070】
このような構成により、コイル40が素体内に配置される積層コイル部品では、第1導体パターン41a〜41d及び第2導体パターン42a〜42dが一層の絶縁体層を挟んで積層方向において重なり合わない、言い換えれば、第1導体パターン41a〜41d及び第2導体パターン42a〜42dが少なくとも二層の絶縁体層を挟んで配置されているので、第1導体パターン41a〜41d及び第2導体パターン42a〜42dによる浮遊容量の低減が更に図られる。もちろん、導通路が狭まる(接続導体の断面積が小さくなる)ことを抑制できるので、直流抵抗も低減される。なお、L字状を呈する導体パターンでも、コイル40と同様の構成とすることができる。
【0071】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る積層コイルアレイを示す図である。図9に示すように、積層コイルアレイ50は、複数の絶縁体層を積層することによって形成される直方体状の素体51と、素体2の両側面に形成される複数の外部電極52,53とを備えている。
【0072】
素体51の内部には、上述のコイルが外部電極52,53のそれぞれに接続されて複数並置されている。すなわち、素体51の内部には、図3に示すコイル3、図7に示すコイル21及び図8に示すコイル40のいずれかのコイルが4つ配置されている。
【0073】
このような積層コイルアレイ50では、素体51内部の各コイルにおいて、第1コイルを構成する第1導体パターンがスルーホール導体によって接続されていると共に、第2コイルを構成する第2導体パターンがスルーホール導体によってそれぞれ電気的に接続されている。そのため、コイルを構成する接続導体において、導通路が狭くなる(断面積が小さくなる)部分がほとんど存在しないため、直流抵抗の低減が図れる。また、第1導体パターン及び第2導体パターンが絶縁体層の積層方向において重なる部分が従来の積層コイルアレイよりも少ないため、第1導体パターン及び第2導体パターンによる浮遊容量を低減できる。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、コイルは、図10に示す構成であってもよい。図10は、変形例に係るコイルを示す斜視図である。図10に示すように、コイル60は、第1導体パターン61a〜61hから構成される第1コイル60A、第2導体パターン62a〜62hから構成される第2コイル60B、第3導体パターン63a〜63hから構成される第3コイル60C及び第4導体パターン64a〜64hから構成される第4コイル60Dを含んで構成されている。第1導体パターン61a〜61h及び第2導体パターン62a〜62hは、絶縁体層上において周回中心線Cを中心に点対称をなしており、第3導体パターン63a〜63h及び第4導体パターン64a〜64hは、絶縁体層上において周回中心線Cを中心に点対称をなしている。各導体パターンは、スルーホール導体によって電気的に接続されている。
【0075】
また、図11に示すように、コイル70は、略コ字状を呈する導体パターン70a〜70dによって形成されたコイル70Aと、導体パターン71a〜71dによって形成されたコイル70Bとの間に、コイル21と同様の構成を有するコイル70Cが形成されてもよい。つまり、上述の構成を有するコイル3,20,40,60のいずれかがコイル70の一部分を構成している構成であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1引出導体パターン8,24及び第2引出導体パターン9,25によって第1コイル3A,21A及び第2コイル3B,21Bを接続して引出部6,7,22,23に接続しているが、第1コイル3A,21A及び第2コイル3B,21Bが外部電極4,5に直接接続される構成であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態の積層コイル部品では、導体パターン及びスルーホール導体が形成された絶縁体層を複数積層して形成しているが、積層コイル部品は、絶縁体グリーンシートの上に直接導体ペーストと絶縁体ペーストとを交互に印刷して積層する印刷工法などによって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,50…積層コイル部品、2,20,51…素体、3,21,40,60,70…コイル、3A,21A,40A,60A…第1コイル、3B,21B,40B,60B…第2コイル、2a,2b…端面、2c〜2f…側面、4,5…外部電極、12a〜12h,32a〜32d,41a〜41d,61a〜61h…第1導体パターン(第1コイル導体)、13a〜13h,33a〜33d,42a〜42d,61a〜61h…第2導体パターン(第2コイル導体)、C…周回中心線、H3〜H17、H32〜H41…スルーホール導体、L1〜L14,L20〜L29…絶縁体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる素体と、
複数のコイル導体が接続されて構成され、前記素体の内部に配置されたコイルと、
前記素体の両端部にそれぞれ形成され、前記コイルの両端のそれぞれと接続される一対の外部電極とを備え、
前記コイルは、並列に接続された螺旋状の第1コイルと螺旋状の第2コイルとを含み、
前記複数のコイル導体は、前記第1コイルを構成する複数の第1コイル導体と、前記第2コイルを構成する複数の第2コイル導体とを含み、
前記第1コイル導体と前記第2コイル導体とは、同一形状を有し、前記第1コイル及び前記第2コイルそれぞれの周回中心線が一致するように前記周回中心線を中心に点対称に配置されており、
前記第1コイル導体の一端部と前記絶縁体層を介して配置された他の前記第1コイル導体の一端部とが直列に接続され、
前記第2コイル導体の一端部と前記絶縁体層を介して配置された他の前記第2コイル導体の一端部とが直列に接続されていることを特徴とする積層コイル部品。
【請求項2】
前記第1コイル導体の一端部と前記他の前記第1コイル導体の一端部とは、第1スルーホール導体によって接続され、
前記第2コイル導体の一端部と前記他の前記第2コイル導体の一端部とは、第2スルーホール導体によって接続されていることを特徴とする請求項1記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第1コイル導体及び前記第2コイル導体は、同一の前記絶縁体層上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第1コイル導体及び前記第2コイル導体のそれぞれは、少なくとも二層の前記絶縁体層を介して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記第1コイル導体及び前記第2コイル導体は、L字状を呈していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記第1コイル導体及び前記第2コイル導体は、直線状を呈していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【請求項7】
前記素体は、互いに対向する一対の端面と前記端面同士を連結する四つの側面とを有する直方体をなし、前記複数の絶縁体層が前記一対の端面の対向方向に積層されて構成され、
前記第1及び第2コイルの前記周回中心線が前記対向方向に延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の積層コイル部品。
【請求項8】
前記コイルが素体内部に複数並置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の積層コイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−227225(P2012−227225A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91307(P2011−91307)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】