説明

積層シート

【課題】 光学的ドットゲインが抑制され印刷文字が鮮明で、かつ白色度に優れた電子写真印刷方式に好適な積層シートの提供。
【解決手段】 紙基材の片面あるいは両面に1以上の熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、該熱可塑性樹脂層の少なくとも最外層に無機顔料および蛍光増白剤を含有する電子写真印刷用の積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる層が積層された、電子写真印刷方式による記録に適した積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷用の記録シートには、通常、紙が用いられるが、耐水性が要求される場合には、いわゆる合成紙や積層紙が使用される。積層紙は、紙基材に熱可塑性樹脂を積層したもので、例えば、特許文献1(特許第2763011号公報)に記載されているように、紙基材の片面又は両面に押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法等により熱可塑性樹脂を積層して製造される。
近年、カラーレーザープリンター等の電子写真印刷方式による記録においては、銀塩写真と同等の鮮明で高品質な画像が求められており、このような画像を得ようとするためには、用紙が白色性に優れていることも重要である。そのため、積層紙は熱可塑性樹脂層を透明とし、紙基材への蛍光染料の添加により白色度の向上を図っていた。
【0003】
一方、特許文献2(特開2004−299383号公報)には、紙基材と熱可塑性樹脂層との間にブリスターと呼ばれる部分的な空隙(非接着部分)が生じることを改善するために、紙基材の一方の面に積層する熱可塑性樹脂層の全てに酸化チタン等の多孔性填料を含有することが記載されている。
また、特許文献3(特開2003−322990号公報)には、トナーの転写均質性等を課題として、受像層及びそれに隣接する層の少なくともいずれかが有機顔料型蛍光増白剤を含有することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第2763011号公報
【特許文献2】特開2004−299383号公報
【特許文献3】特開2003−322990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真印刷用の記録シートにおいては、より鮮明で高品質、かつシャープな(細かな文字でも潰れずにはっきりと読み取れる)画像を得ることが必要であり、そのためには光学的ドットゲインによる網点太りの抑制が有効である。
光学的ドットゲインについて以下に説明する。従来の積層シートに画像を形成した際、紙基材とトナー画像との間には透明な熱可塑性樹脂層が存在する。このとき、電子写真印刷方式で記録されたトナーはドット(網点)で存在しているが、外部から照射された光のうち、一部はトナー表面で反射して観察者に向かう一方、一部はトナー画像部に入射・透過した後、熱可塑性樹脂層で光が散乱しないため下方の紙基材まで到達し、その境界で反射して観察者に向かう。すなわち、光学的ドットゲインとは、この反射光の位相差(光の拡散)が原因で、印刷で言う光学的ドットゲインと同様の網点太りが発生するのである。
その光学的ドットゲイン抑制には、熱可塑性樹脂層に不透明性を付与することが考えられ、無機顔料を含有させることが有効であった。しかし反面、無機顔料の不透明性により紙基材への光の照射が抑制されることから、紙基材に添加された蛍光染料による白色度向上効果が無くなり、用紙の白色度低下が新たな問題となっている。紙基材への蛍光増白剤添加も、他の薬品等とのバランスから現状以上の増配は困難である。
【0006】
また、トナーの転写性や密着性を上げるために、熱可塑性樹脂層上に無機顔料とバインダーからなるトナー定着層を設けることが知られており、そこで、蛍光染料をトナー定着層に含有させることが考えられる。しかし、通常トナー定着層は薄く塗工量が極微少であるため、十分な白色度向上効果は得られない。
本発明は以上を踏まえ、光学的ドットゲインが抑制され、かつ白色度に優れた電子写真印刷方式に好適な積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂層に無機顔料および蛍光増白剤を含有することで、これら従来技術の問題点である光学的ドットゲインを抑制し、かつ高い白色度を有するという、相反する問題を一度に解決できることを見出した。本発明に係る情報隠蔽用積層シートは、主に次の構成である。
(1)紙基材の片面あるいは両面に1以上の熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、該熱可塑性樹脂層の少なくとも最外層に無機顔料および蛍光増白剤を含有することを特徴とする電子写真印刷用の積層シート。
(2)前記熱可塑性樹脂層の樹脂の融点が180℃以上である(1)記載の積層シート。
(3)前記熱可塑性樹脂の最外層表面にトナー定着層を設けた(1)または(2)記載の積層シート。
【発明の効果】
【0008】
(1)熱可塑性樹脂層の少なくとも最外層に無機顔料および蛍光増白剤を含有することにより、光学的ドットゲイン抑制をしつつ白色度を高めることができる。
(2)熱可塑性樹脂層の樹脂の融点が180℃以上であることにより、電子写真印刷方式に適する高い耐熱性が得られる。
(3)熱可塑性樹脂の最外層表面にトナー定着層を設けることにより、印刷時のトナー転写性及びトナー定着性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.紙基材
本発明において紙基材とは、代表的には、植物繊維又は植物繊維とその他の繊維を絡み合わせ、膠着させて製造した紙を言う。上質紙、嵩高紙、再生紙、コート紙(塗工紙)等を挙げることができる。紙の原料としては、特にパルプの種類等に制限はない。例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙パルプ(DIP)等の木材繊維を主体に、必要に応じてコットンリンター、ケナフ、麻、竹等の非木材繊維が使用可能である。
【0010】
また、配合される填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、水和珪酸、ホワイトカーボン、酸化チタン、合成樹脂填料などの公知の填料を使用することができる。填料の使用量は、パルプ重量あたり、6重量%以上が好ましい。さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色顔料、染料、消泡剤などを含有してもよい。
【0011】
紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した紙のいずれであってもよく、もちろん、メカニカルパルプを含む中質紙も使用できる。さらに表面強度やサイズ性の向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤の塗布を行ってもよい。水溶性高分子としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の、表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子のほかに耐水化、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。表面処理剤は2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、及びシムサイザーなどのフィルム転写型ロールコーター等の塗工機によって塗布することができる。
【0012】
より銀塩写真調の面感を得るには、コート紙、特にキャストコート紙であることが好ましい。コート紙は、一般に原紙上にバインダーと有機又は無機顔料とを主体として含有するコート層を設けたものであり、各種方式による印刷用紙や記録用紙として広く用いられている。コート紙の製造方法も公知であり、通常使用されている種類の材料及び装置が適宜使用される。例えば、バインダーとしてはポリビニルアルコール、スチレン重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などやその誘導体等を挙げることができる。顔料はカオリン、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらのバインダー、顔料、その他必要に応じて各種の添加剤を水系で分散させ塗工液を調製し、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター等を用いて、原紙の表面に塗工することによりコート層を設ける。
【0013】
中でもキャストコート紙は、湿潤状態にあるコート層を加熱した鏡面の金属ドラムに押し当てて乾燥させ、平滑な表面を得た紙であり、表面平滑性を向上させることができる。他の塗工方法で製造されるコート紙の場合、コート層自体としては均一であるものの、原紙が凹凸している場合はそれを受けてしまい、コート紙表面の粗さが必ずしも良好になるとはいえない。これに対し、キャストコート法の場合はコート層が軟らかいうちに鏡面に押し当てられるため、表面が平坦で粗さはの良好になる。
【0014】
キャストコート紙は、次のような製法により製造することができる。塗工液が塗工された紙は、乾燥設備を通らず、塗工面側をキャストドラムに押し当てられる。キャストドラムに押し当てられると、塗工液中の水分は紙の裏側から蒸発する。一方、キャストドラムは鏡面ドラムからなっており、キャストドラムに押し当てられた側の面(塗工面)は、高い光沢を有するようになる。このようにして製造される直接法の他に塗工面の塗液を凝固液でゲル化させた後にキャストドラムに押し当てる凝固法、一度乾燥させた塗工面を再度湿潤させた後にキャストドラムに押し当てるリウェット法があるが、いずれの製法で得られたキャストコート紙でも本発明の基材として使用可能である。
【0015】
2.熱可塑性樹脂層
[樹脂の種類]
本発明において使用可能な熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等、ラミネート加工可能な樹脂であれば良い。
【0016】
[最外層]
上記の熱可塑性樹脂は、単一、複数の樹脂にかかわらず、必要に応じて単層もしくは複数層積層して使用できる。熱可塑性樹脂層が単層の場合はその層が最外層となり、複数層設けられる場合は一番上の層が最外層となる。
【0017】
・樹脂
電子写真印刷方式では、その機構上トナーを用紙に加熱融着させることから、熱可塑性樹脂が変形することを防ぐため、最外層には180℃以上程度と高い融点を有する熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂からなる最外層を設けることにより、熱ロールへの融着を防止でき、また、記録の前後で表面性が悪化せず高光沢で美麗な面調が維持される。融点が180℃以上の熱可塑性樹脂としては、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル)等が好ましい。中でもポリメチルペンテンが好ましい。ポリメチルペンテンは、4-メチルペンテン-1を主原料とする、結晶性のオレフィン系ポリマーであり、融点が220〜240℃で、耐熱性に優れた樹脂である。
【0018】
・無機顔料
本発明では、最外層の熱可塑性樹脂層は、不透明性、筆記性等を持たせる目的で酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛等の白色の無機顔料を含有する。無機顔料の配合量は、最外層に対して25重量%以下、できれば15重量%以下とすることが好ましい。配合量が多いと、成膜性を含めたラミネーション加工性の悪化や、積層シートの平滑性、光沢などの表面性を悪化させることがある。無機顔料の粒径としては0.1〜20μmのものが好ましい。
【0019】
・蛍光増白剤
本発明では、最外層の熱可塑性樹脂層に蛍光増白剤を含有する。蛍光増白剤を上記の無機顔料とともに含有することにより、白色度を維持しながら熱可塑性樹脂層の不透明度を高めることができ、光学的ドットゲインが抑制される。本発明で使用される蛍光増白剤としては、前記樹脂に溶融し成膜する際に300℃程度に加熱されるため、この温度に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限は無く、公知のものの中から少なくとも一種を適宜選択して用いることが出来る。前記蛍光増白剤としては例えば、スチルベン系、クマリン系、ピラゾリン系、イミダゾロン系、イミダゾール系、トリアゾール系、オキサゾール系、ナフタルイミド系、チオフェン系、スチリル系等が挙げられる。これらの中でも、ビス(ベンゾオキサゾリル)スチルベン系蛍光増白剤、ビス(ベンゾオキサゾリル)ナフタレン系蛍光増白剤、ビス(ベンゾオキサゾリル)チオフェン系蛍光増白剤、クマリン系蛍光増白剤、ピラゾリン系蛍光増白剤が好ましい。配合量としては、熱可塑性樹脂層に対して1000ppm以下、好ましくは500ppm以下である。多すぎるとダイリップ汚れの発生が顕著になること、蛍光増白剤の光等による分解が発生することがあり、少なすぎると白色度が低下する。
【0020】
[その他の熱可塑性樹脂層]
本発明では必要に応じて、上記の最外層以外に、1層以上の他の熱可塑性樹脂からなる層を適宜設けてもよい。このような層を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等、ラミネート加工可能な樹脂を挙げることができる。また、最外層を形成する熱可塑性樹脂と基材、あるいは熱可塑性樹脂層を2以上設けたときの樹脂層間の密着性が不良な場合には、基材に予め接着層を塗工又は積層することも可能であり、また最外層あるいは他の層に使用する熱可塑性樹脂と接着性樹脂を共押出しラミネーションすることも可能である。接着性樹脂も熱可塑性樹脂の一種であり、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用される。
【0021】
最外層に融点が180℃以上の熱可塑性樹脂を用いる場合には、その直下に、中間層として接着性を有する熱可塑性樹脂を積層すると、基材あるいは最外層とその下に積層される熱可塑性樹脂層等との密着性をより高めることができる。基材がコート紙である場合や最外層の下に他の熱可塑性樹脂層が存在する場合は、最外層が剥離しやすい傾向があるため、中間に挟まれる接着性樹脂は、最外層及び基材あるいは最外層の下に位置する熱可塑性樹脂層の双方への接着性が良好なものを選択する。
【0022】
接着性を有する樹脂としては、変性ポリオレフィン、アイオノマー、あるいはこれらと融点180℃以上の熱可塑性樹脂との混合物からなる樹脂組成物等を挙げることができる。また、同じ種類あるいは異なる種類を選び1層又は2層以上積層してもよい。
【0023】
変性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα-オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、ポリメチルペンテン樹脂との接着性が良好なことから、無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0024】
単独重合体あるいは共重合体の例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・ペンテン-1共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体及びエチレン-ブテン-1共重合体等を挙げることできる。このような単独重合体あるいは共重合体のASTM-D-1238により測定したメルトフローレートは、通常は0.1〜30g/10分、多くの場合1〜20g/10分の範囲内にあり、ASTM-D-2117により測定した融点は、通常は50〜170℃、多くの場合80〜150℃の範囲内にある。さらに、ASTM-D-1505により測定した密度は、通常は0.88〜0.96g/cm、多くの場合0.89〜0.96g/cmの範囲内にある。
【0025】
単独重合体あるいは共重合体の変性剤として使用される極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のようなカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、無水クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の酸無水物及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の酸無水物のような無水カルボン酸類;(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、テトラヒドロフタル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、マレイン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、イタコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、フマル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、クロトン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、ノルボルネンジカルボン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)のアルキルエステル及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のアルキルエステルのようなエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートのようなヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステル類; 10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール及びグリセリンモノアルコールのような水酸基含有化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、イタコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、アリルコハク酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン及びビニルシクロヘキセンモノオキシドのようなエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル及びメタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートモノメタノールアミノハーフソルのような(メタ)アクリル酸のアルキルアミノエステル;N-ビニルジエチルアミン及びN-アセチルビニルアミンのようなビニルアミン類;アリルアミン、メタクリルアミン、N-メチルアクリルアミン、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアリルアミン類;アクリルアミド及びN-メチルアクリルアミドのようなアクリルアミド類;p-アミノスチレンのようなアミノスチレン化合物;並びに6-アミノヘキシルコハク酸イミド及び2-アミノエチルコハク酸イミドのようなアミノアルキルコハク酸イミド類を挙げることができる。これらの変性剤は、単独で使用することもできるし、また変性剤の特性が損なわれない範囲内で組み合わせて使用することもできる。これらの変性剤の中では(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0026】
アイオノマーは、イオン含有高分子で、特に金属イオンあるいは第4級アンモニウムにより部分的にあるいは完全に中和された高分子であり、特にエチレン系高分子鎖に少量の(メタ)アクリル酸をグラフトし、その(メタ)アクリル酸の一部を、Na+、K+、Zn++、Mg++などで中和したものが好ましく使用できる。中でもZnを有すると光沢性が良好で好ましい。
【0027】
このようなエチレン系アイオノマー樹脂とは、エチレン/α,β-不飽和カルボン酸共重合体(I)、あるいはエチレン/α,β-不飽和カルボン酸/α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体(II)のカルボン酸基の一部、通常5〜80%を、金属イオンにより中和したものである。中和前の上記(I)又は(II)のエチレン共重合体成分のうち、エチレン単位の占める割合は通常約75〜99.5モル%、好ましくは88〜98モル%であり、α,β-不飽和カルボン酸単位の占める割合は通常約0.5〜15モル%、好ましくは1〜6モル%である。また、α,β-不飽和カルボン酸エステル単位の占める割合は通常0〜10モル%、好ましくは0〜6モル%である。さらに、上記(I)又は(II)の共重合体中におけるカルボン酸基のうち、金属イオンにより中和されるカルボン酸基の割合(中和度)は通常5〜80%、好ましくは10〜75%である。
【0028】
また、上記の変性ポリオレフィン又はアイオノマーと、融点180℃以上の熱可塑性樹脂との混合物からなる樹脂組成物としては、変性ポリオレフィンと融点180℃以上の熱可塑性樹脂、又はアイオノマーと融点180℃以上の熱可塑性樹脂とを共押出ししたり、混合後に押出しして使用することができる。
【0029】
さらに、基材に接する層としては、密着性が良好なことから、シングルサイト系触媒で合成された直鎖状低密度ポリエチレン(SS−LLDPE)層を設けることも可能である。SS−LLDPEは、活性点が均一なシングルサイト系触媒により合成されるため、汎用されるチーグラー触媒を用いて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と比べ、シャープな分子量分布を示す。シングルサイト系触媒の代表的なものとしては、メタロセン系触媒を挙げることができる。これは、2個のシクロペンタジエン環に、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン等の遷移金属原子が、サンドイッチ状に挟まれた構造を有する触媒である。なお、シングルサイト系触媒を用いたLLDPEの合成は、気相法、高圧法、溶液法のいずれの方法で行っても構わない。
【0030】
[他面の構成]
基材の上記熱可塑性樹脂層を設けた面の反対面は任意であり、用途によって何も設けない、粘着剤を塗布する、熱可塑性樹脂層をラミネートするなどの場合がある。基材の両面に熱可塑性樹脂層が存在する場合、これらの熱可塑性樹脂層の種類及び積層順序等は、一方の面と他方の面とで同一であっても異なっていてもよいが、本発明では、表面と同様に最外層として融点が180℃以上の熱可塑性樹脂層を用いることが望ましい。電子写真印刷方式に使用されるとき、積層シートはその記録面側を熱ロールに接触させながら熱ロールとニップロールとの間を通過する。従って、ニップロールもまた熱ロールの影響を受けて同程度に高温になっているため、非記録面側の最外層も融点が180℃以上の熱可塑性樹脂からなることにより、ロールへの融着が一層効果的に防止される。
【0031】
[熱可塑性樹脂層の形成方法]
・積層方法
基材に熱可塑性樹脂層を積層する方法としては、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法以外に、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等のフィルムと基材を貼合する方法がある。但し、ウェットラミネート法では片面加工は可能であるが、両面にフィルムを貼合する場合は、溶剤の乾燥時に裏面もフィルムで覆われているために基材から蒸発した水分の逃げ場が遮られ、これらが膨張してフィルムを押し上げてしまい、ブリスターと呼ばれる空隙(非接着部分)が発生しやすい。また、ドライラミネート法では基材とフィルムとの密着性が甘く、電子写真印刷方式で印刷や記録をする場合、トナーを定着させるための熱ロールでの加熱によって基材中の水分が蒸発、膨張しブリスターを発生させやすく、加工が困難となる。従って、本発明の積層シートを電子写真印刷方式での印刷や記録に用いる場合には、加工法として、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法が好ましい。
【0032】
特に、熱可塑性樹脂層間の密着性、生産効率の点から、2台以上の押出機を用い、各熱可塑性樹脂を溶融状態でTダイに導き、各Tダイから同時に押出して積層接着する共押出しラミネーション法が適している。共押出しラミネーション法は、2台以上の押出機を用い、各熱可塑性樹脂を溶融状態でTダイに導き、各Tダイから同時に押出して積層接着するもので、例えば特開平11−207882号公報等に開示されているように、多層フィルム等の製造方法としても知られている。Tダイとしては、例えばシングルTダイ、共押しTダイを挙げることができるが、共押しTダイを用いれば、2種以上の樹脂を同時に押出すことができるので、基材上に2層以上の樹脂を積層する場合に好ましい。共押しTダイには、ダイ内接着、ダイ外接着の2種があり、中でも共押しダイ外接着Tダイは、2種以上の樹脂を、温度条件を代えて同時に積層することができる点で優れている。
【0033】
外観が重視され高光沢が必要とされる用途の場合には、押出しラミネーションや共押出しラミネーションにあたり、溶融した樹脂と接するクーリングロールとして周面を鏡面仕上げとしたものを用い、さらに、ニップロールとして硬度の大きいものを用いて、高い線圧で樹脂と基材等との押圧・圧着を行うことで、積層された樹脂表面を高光沢とすることができる。この目的のため、ニップロールとしては硬度80度(JIS K−6253)以上のものを用い、線圧は15kgf/cm以上で押圧・圧着を行うことが好ましい。
【0034】
また、前記したように不透明性等を目的として酸化チタン等の無機填料を最外層に配合すると、ラミネーション加工性は悪化することがある。かかる場合には、この無機填料が配合された樹脂を、無機填料を含まない樹脂と共押出しラミネートすれば、樹脂層の厚さを薄くしても、いわゆる膜切れ等のトラブルの発生を押さえて、安定した積層操作を行うことができる。
【0035】
・層厚
熱可塑性樹脂層の各層及び全体の厚さは、片面10〜80μm好ましくは15〜40μmの範囲にあることが好ましい。樹脂層全体の厚さが薄すぎる場合、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法による各層の積層が困難となる。また、厚すぎると製造コストが高くなり、しかも静電気が発生しやすくなるので、その必要がある場合には導電剤の使用などの対応が好ましい。また、最外層の厚みは2〜30μm、好ましくは10〜20μmであることが好ましい。最外層の厚さが薄すぎると、熱可塑性樹脂層が1層の場合は基材との接着性が不足しブリスターが発生したり、2層以上の場合は耐熱性が不足し、熱ロール部分で紙詰まりが発生した際に熱ロールに融着するトラブルが発生しやすくなる。一方、厚さが30μm程度あれば本発明の効果は十分に達成できるため、これを超える厚さとしてもよいが経済的に引き合わない。
【0036】
また、最外層以外にも融点が180℃以上の熱可塑性樹脂からなる層を設けてもよいが、最外層と接する場合はその合計の厚みが上記の範囲内であることが適当である。最外層の下に位置して接着性樹脂層を設ける場合は、2〜20μm、好ましくは3〜10μmであることが好ましい。
【0037】
・その他
最外層及び他の熱可塑性樹脂層には、上記した以外にも、本発明の目的を害さない限り、種々の添加剤を添加したり、塗工剤を塗工したりすることができる。例えば、これらの添加剤や塗工剤として、最外層、他の熱可塑性樹脂層には耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ等)、記録時のトナー定着剤、接着性向上剤など、一般的に使用される添加剤や塗工剤を使用することができる。
【0038】
3.トナー定着層
・バインダー成分
本発明において、トナー定着層は、電子写真印刷方式による記録を行う塗工層として、積層シートの最上層に設けられる。
バインダー成分としては特に制限されないが、トナー定着性や筆記性に加え積層されている熱可塑性樹脂層との接着性等を考慮して選択する。例えば、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、各種アクリル酸、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体及び/又はこれらの変性物を、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等と混合して、あるいは混合せずに用いることができる。
【0039】
また、80℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する親水性高分子物質(A)と、50℃以下のガラス転移温度を有する親水性高分子物質(B)など、Tgの異なる2種類の親水性高分子物質を使用することもできる。80℃は印刷後排出時のシート温度に近く、50℃は塗工層の成膜性を良好に保てる温度である。より好ましくは、(A)は印刷シートの排出温度より高い90℃以上、(B)は成膜温度より低い40℃以下が好ましい。
【0040】
この場合、トナー定着層の造膜時には、低Tg親水性高分子物質の中に、高Tg親水性高分子物質が溶融せずに粒子形状を維持した状態で存在する、いわゆる海島構造が形成されて存在し、レーザープリンター印刷時などには200℃近くのロールでトナーを定着させるため、高Tg親水性高分子物質も溶融状態となり、塗工層とトナーとの密着性が非常に高まって良好なトナー定着性が得られる。トナー定着後、高Tg親水性高分子物質は速やかにガラス状態になるので、その粒子間空隙に入り込んだトナーによるアンカー効果によっても、トナー定着性が向上すると考えられる。同様に、トナー定着後にガラス状態となった高Tg親水性高分子物質の存在は、定着ロール等の高温部の搬送ロールからの剥離性が高く、搬送性も向上する。
【0041】
親水性の高分子物質は、親水性官能基を有するエマルジョンであることが好ましい。ここでいう親水性とは、水、又は水と少量の有機溶剤から成る媒体中で樹脂が分散又は溶解し、安定化していることを意味する。これら樹脂は、塗工液中では粒子となって分散している、又は溶解しているが、塗工し乾燥した際に造膜し塗工層を形成する。
【0042】
親水性高分子物質としては、スチレン、ブタジエン、各種アクリル酸、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体及び/又はこれらの変性物と、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を混合して、あるいは混合せず各々単独で使用することが挙げられる。これらの親水性高分子物質は、例えば乳化重合やソープフリー乳化重合、懸濁重合といった従来公知の重合方法により製造され、重量平均分子量は10万以上の高分子であることが望ましい。
【0043】
中でも、アクリル系ポリマーがトナー定着性の理由から好ましい。アクリル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。(A)と(B)ともアクリル系ポリマーであることが望ましく、特に、80℃以上のガラス転移温度を有するコア部と50℃以下のガラス転移温度を有するシェル部とからなる、コアシェル構造を有するアクリル系ポリマーは、1つの物質で2つの性能を発揮するため、作業性も良好となり好ましく用いられる。このようなコアシェル構造を有するアクリル系ポリマーは、例えば、特開2001−323004号公報等に記載された方法によって製造される。この場合、シェル部は、コアを被覆する膜として形成されているのではなく、コアの周囲に保護コロイドのように存在するものとなっていると考えられる。
【0044】
親水性高分子物質の使用割合としては、(A)/(B)=80/20〜30/70が好ましい。(A)が多すぎると成膜性、トナー定着性に劣り、(B)が多すぎると搬送性が悪くなる。従って、両者のバランスが重要であり、より好ましくは、(A)/(B)=65/35〜45/55である。
【0045】
・無機顔料
本発明では、白色性や用紙搬送性の点から顔料は含有しないことが望ましいが、印刷時のロール密着性や筆記性改善等のために使用することができ、バインダー100重量部に対し5重量部程度使用する。また、無機顔料の平均粒径は2.5μm以下のものが好ましく、より好ましくは2.0〜0.1μmである。大きすぎるとかぶりを引き起こす原因となり、小さすぎても十分な筆記性が得られない。なお、この平均粒径は、コールターカウンターで測定した値である。無機填料の種類としては、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられるがこれに限定されない。
【0046】
・その他の成分
必要に応じて、例えば帯電防止剤、滑剤、シリコーン系離型剤、架橋剤、接着性向上剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料等を添加しても良い。
【0047】
・形成方法
トナー定着層を設けるにあたっては、公知の種々の方法を採用することができる。例えば、上記バインダーを含有する塗料を、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター等、公知の塗工方式を使用して、基材上に設けた熱可塑性樹層表面に塗工する。塗工量は特に制限されるものではないが、0.5〜7.5g/m(乾燥重量)、好ましくは1〜5g/m(乾燥重量)となるよう塗工すればよい。塗工量が0.5g/m(乾燥重量)よりも少ない場合には、十分なトナー定着性、印字後筆記性を付与することが難しく、塗工量が7.5g/m(乾燥重量)を超える場合には、トナー定着層が熱可塑性樹脂層表面から脱落するおそれがある。また、このトナー定着層は、作業者の健康面、環境への負荷の観点から、水系塗料であることが好ましい。このとき、トナー定着層の形成を容易にするため、熱可塑性樹脂層表面にコロナ処理等を施すことが望ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また特にことわらない限り、部または%は重量部または重量%を表す。
[評価方法]
作製したサンプルを次の基準で評価し、結果を表1に示した。
<光学的ドットゲイン評価>
文書作成ソフト『ワード』で、『鷺』という文字を、フォント『MS P明朝』、サイズ『8』で作成した後、カラーレーザープリンター(CASIO SPEEDIA N5300)にて印刷し、印刷文字の鮮明度合いを目視評価した。また、拡大顕微鏡にてトナーが潰れた状態でないことを確認した。
◎:非常に鮮明で、文字の潰れ無く判読できる。
○:若干の文字の潰れは見られるものの、判読するには支障無し。
×:文字が潰れた状態に見え、判読不能。
<ISO白色度>
印刷前の白紙サンプルを、白色度用高速分光光度計CMS−35SPX(村上色彩技術研究所製)を用い、ISO白色度[紫外光成分を含む]にて測定。
◎:90%以上
○:87%以上90%未満
×:87%未満
【0049】
[実施例1]
(熱可塑性樹脂層の形成)
上質紙(坪量157g/m)を基材としてその片面に、ポリメチルペンテン100重量部に無機顔料として酸化チタンを10重量部、蛍光増白剤としてビス(ベンゾオキサゾリル)スチルベン系蛍光増白剤を500ppmとなるように添加し、Tダイを用いて320℃で押出しラミネートを行い、直ちに、これらの溶融樹脂と上質紙とを、鏡面仕上げのクーリングロールと硬度95度のニップロールを用いて、線圧15kgf/cmで押圧・圧着し、基材シートとした。ラミネート樹脂の厚さは20μmとした。なお、基材の他方の面も片面と同様にラミネート加工を行った。また、熱可塑性樹脂層表面にはコロナ放電処理を行った。
(トナー定着層の形成)
続いてバインダーとして、カチオン性コアシェル型アクリル樹脂の水系分散液(濃度34.5重量%、コア部Tg:50℃、シェル部Tg:40℃、コア部/シェル部=50/50)50重量部、カチオン性スチレンアクリル酸エステル共重合樹脂の水系分散液(濃度28重量%、Tg:102℃)2.5重量部に、帯電防止剤を表面電気抵抗率が1.0×1010Ω/□となるように混合した後、固形分濃度6重量%の塗工液を調製した。この塗工液を7g/mの塗工量となるようグラビアコーターを用いて、上記基材シートの両面に塗工して、積層シートを得た。
【0050】
[実施例2〜4]
無機顔料および蛍光増白剤の含有量が表1に示されるようにした以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0051】
[比較例1]
無機顔料および蛍光増白剤を含有しない以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
[比較例2]
蛍光増白剤を含有しない以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
[比較例3]
無機顔料を含有しない以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1から、熱可塑性樹脂層の最外層に無機顔料と蛍光増白剤を含有した本発明の実施例では、印刷された文字が鮮明で潰れが無い、あるいは少々潰れがあっても十分に判読可能であり、光学的ドットゲインの抑制に優れていることがわかる。また、白色度も高い。
特に、無機顔料と蛍光増白剤との配合割合が最適な範囲にある実施例1は、成膜性、耐光性にも優れ非常に有用な積層シートとなる。実施例2は実施例1よりも無機顔料を多めに用いた場合であるが、無機顔料の使用量が増加していくとラミネーション加工時の膜切れやダイリップの汚れが発生し、成膜性の低下を招く傾向がある。実施例3は実施例1よりも蛍光増白剤を多めに用いた場合であるが、蛍光増白剤の使用量が増加していくと光などにより蛍光増白剤が分解して黄変し、十分な耐光性が得られにくくなる傾向がある。また、樹脂としてPP(ポリプロピレン)を使用した実施例4は、ポリメチルペンテンを使用した実施例1に比べれば耐熱性に劣る傾向がある。
一方、表2から、無機顔料および蛍光増白剤の両方とも含有しない比較例1は、ISO白色度が低く、さらに印刷文字の判読ができないほど光学的ドットゲイン抑制に著しく劣り、蛍光増白剤を含有しない比較例2は、ISO白色度が低く、酸化チタンを含有しない比較例3は、光学的ドットゲイン抑制に著しく劣り印刷文字の判読が不可能であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の片面あるいは両面に1以上の熱可塑性樹脂層を形成した積層シートであって、該熱可塑性樹脂層の少なくとも最外層に無機顔料および蛍光増白剤を含有することを特徴とする電子写真印刷用の積層シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層の樹脂の融点が180℃以上である請求項1記載の積層シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の最外層表面にトナー定着層を設けた請求項1または2記載の積層シート。

【公開番号】特開2007−271797(P2007−271797A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95719(P2006−95719)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】