説明

積層セラミックキャパシタ

【課題】本発明は積層セラミックキャパシタに関する。
【解決手段】本発明による積層セラミックキャパシタは、内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層セラミックキャパシタにおいて、前記内部電極の長さをAとし、前記内部電極が有する気孔を除いた内部電極の長さの総合をBとする場合、B/Aを内部電極の連結性と定義し、前記内部電極のうち一端から一定の長さだけの区間を外側区間、前記外側区間を除いた残りの内部電極区間を内側区間、前記内部電極の一端から前記積層セラミックキャパシタの一面までの誘電体層を縁区間と定義する場合、前記外側区間の長さは前記縁区間の0.1〜0.3倍であり、前記外側区間の内部電極は前記内側区間の内部電極よりも低い連結性を有するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシタに関し、より詳しくは、静電容量を安定して確保しながら、熱衝撃によるクラック及び絶縁破壊を防止することができる積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多層セラミックキャパシタは、複数のセラミック誘電体シートと該複数のセラミック誘電体シートの間に挿入された内部電極とを含む。このような多層セラミックキャパシタは、小型サイズでありながらも、高い静電容量を具現することができ、基板上に容易に実装できるため、多様な電子装置の容量性部品として広く使用されている。
【0003】
最近、電子製品の小型化と多機能化により、チップ部品も小型化及び高機能化される傾向であるため、多層セラミックキャパシタも小型で高容量の製品が要求されている。従って、近年は誘電体層の厚さが2μm以下、かつ積層数が500層以上である積層セラミックキャパシタが製造されている。
【0004】
ところで、このようなセラミック誘電体層の薄膜化及び高積層化により内部電極層が占める体積比率が増加し、焼成及びリフローソルダリング等による回路基板への実装工程等で加えられる熱衝撃によりセラミック積層体にクラック(crack)または絶縁破壊が発生するという問題がある。
【0005】
具体的に、セラミック層と内部電極層を形成する材料の熱膨張係数の差による応力がセラミック積層体に作用して発生することをクラックと言い、これは積層セラミックキャパシタの上部及び下部の両側縁において特に多く発生するようになる。
【0006】
また、熱変化によって誘電体の最上部と最下部に応力が発生するが、この際、電圧が印加されると誘電層の絶縁破壊が発生する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、静電容量を安定して確保しながら、熱衝撃によるセラミック積層体のクラック及び絶縁破壊を効果的に防止することができる積層セラミックキャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタは、内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層セラミックキャパシタにおいて、上記内部電極の長さをAとし、上記内部電極が有する気孔を除いた内部電極の長さの総合をBとする場合、B/Aを内部電極の連結性と定義し、上記内部電極のうち一端から一定の長さだけの区間を外側区間、上記外側区間を除いた残りの内部電極区間を内側区間、上記内部電極の一端から上記積層セラミックキャパシタの一面までの誘電体層を縁区間と定義する場合、上記外側区間の長さは上記縁区間の0.1〜0.3倍であり、上記外側区間の内部電極は上記内側区間の内部電極よりも低い連結性を有するように形成されることができる。
【0009】
本発明の他の実施例による積層セラミックキャパシタにおける上記外側区間の内部電極の連結性は、上記内側区間の内部電極の連結性の0.55〜0.90倍であることができる。
【0010】
本発明のさらに他の実施例による積層セラミックキャパシタの内部電極が有する気孔の一部にはセラミックが満たされることができる。
【0011】
本発明のさらに他の実施例による積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さは10μm以下に形成されることができる。
【0012】
本発明のさらに他の実施例による積層セラミックキャパシタの誘電体層の積層数は100〜1000であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による積層セラミックキャパシタは、内部電極の端部の連結性を調節することによって、内部電極の端部で発生し易いクラック及び絶縁破壊の現象を防止することができる。
【0014】
また、連結性を調節する内部電極区間の長さを調節することによって、静電容量を安定して確保しながら、効果的にクラック及び絶縁破壊の現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的な積層セラミックキャパシタの縦断面である。
【図2】本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタの斜視図である。
【図3】図2のI−I'に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように好ましい実施例を詳しく説明する。但し、本発明を説明するに当たって、関連する公知機能または構成についての具体的な説明が本発明の旨を不明確にする虞があると判断される場合はその詳細な説明を省略する。
【0017】
また、類似した機能及び作用をする部分については、図面全体において同一の符号を使用する。
【0018】
なお、明細書全般において、ある部分が他の部分と「連結」されているというのは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を介して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある構成要素を「含む」というのは、反対の記載が特に無ければ、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0019】
図1は一般的な積層セラミックキャパシタの縦断面図である。
【0020】
図1を参照し、内部電極10の連結性について下記のように定義する。
【0021】
積層セラミックキャパシタの内部に形成される内部電極10は、一般的に、途切れ無く完全には連結されてはいない。内部電極10を形成する工程は、セラミックグリーンシートの一面にニッケル(Ni)等の金属粉末が含まれた導電性ペーストを用いて印刷する方法で行われるため、内部に空き空間が多少残るようになる。
【0022】
従って、積層セラミックキャパシタを一定の方向に切断した断面から見たとき、内部電極10は完全に連結されておらず、あいだに気孔11が存在するようになる。
【0023】
図1を参照すると、気孔を含む内部電極10の長さをAとし、気孔11を除いた内部電極部分の長さの総合をBとするとき、内部電極の連結性はB/Aであると定義することができる。
【0024】
内部電極の連結性による静電容量の変化、及び熱衝撃によるクラックの発生可能性の関係について説明すると、下記の通りである。
【0025】
内部電極が高い連結性を有する場合、途切れがほとんど無く内部電極が形成されたため、連結性が低い場合よりも大きい静電容量を確保することができる。しかし、内部電極を形成する物質(例えば、ニッケル(Ni)等の金属物質であることができる。)とセラミックの熱膨張係数の差から発生する段差により、熱衝撃を受ける場合にクラックまたは絶縁破壊の現象が発生し易い。
【0026】
これに対し、内部電極が低い連結性を有する場合、静電容量の確保面では不利であるが、内部電極を形成する物質とセラミックの熱膨張係数の差から発生する段差を緩和させる効果があり、熱衝撃によるクラック及び絶縁破壊の現象を防止することができる。
【0027】
従って、安定した静電容量の確保と、熱衝撃によるクラック及び絶縁破壊現状の防止という側面から、内部電極の連結性を適切な数値に調節する必要がある。
【0028】
図2は、本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタの斜視図である。
【0029】
図2を参照すると、本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタは、キャパシタ本体1と、外部電極2とを含むことができる。
【0030】
上記キャパシタ本体1は、その内部に複数の誘電体層が積層され、上記複数の誘電体層の間に内部電極が挿入されることができる。この際、誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO)により形成されることができ、内部電極はニッケル(Ni)、タングステン(W)、またはコバルト(Co)等により形成されることができる。
【0031】
上記外部電極2は、上記キャパシタ本体1の両側面に形成されることができる。上記外部電極2は、上記キャパシタ本体1の外表面に露出した内部電極と電気的に連結されるように形成されることによって外部端子の役割をすることができる。この際、上記外部電極2は、銅(Cu)により形成されることができる。
【0032】
図3は、図2のI−I'に沿って切断した断面図である。
【0033】
図3を参照すると、本発明の一実施例による積層セラミックキャパシタは、内部電極10及び誘電体層20が交互に積層されてキャパシタ本体1を形成する。
【0034】
上記内部電極10の一端から一定の長さだけの区間を外側区間14と、上記外側区間14を除いた残りの内部電極区間を内側区間12と定義する。また、上記内部電極10の一端から上記キャパシタ本体1の一面までの誘電体層を縁区間16と定義する。
【0035】
上記外側区間14の内部電極の連結性を上記内側区間12の内部電極よりも低く調節することによって、熱衝撃によるクラック及び絶縁破壊の現象を効果的に防止することができる。これは、一般的に内部電極10と誘電体層20の熱膨張係数の差による応力が集中する内部電極10の端部地点でクラック及び絶縁破壊の現象が発生し易いためである。
【0036】
この際、上記外側区間14の長さと外側区間14の内部電極の連結性の数値は、実験を通じて適切に調節できる。
【0037】
【表1】

【0038】
表1は、本発明による積層セラミックキャパシタの縁区間の長さ(X)及び外側区間の長さ(Y)を変化させながら、熱衝撃によるクラックの発生頻度数及び静電容量に対して実験した結果である。
【0039】
内部電極を形成するための導電性ペーストとして、粒子サイズ0.1〜0.2μmのニッケル(Ni)粉末を使用し、ニッケル(Ni)含量は40〜50%と製作した。
【0040】
各実施例では、縁区間の長さ(X)に対する外側区間の長さ(Y)の比率(Y/X、以下、寸法比率という)を、0から0.5まで変化させながら熱衝撃によるクラックの発生及び静電容量を測定した。この際、熱衝撃試験は320℃の鉛槽に2秒間浸漬させる方式で行われた。
【0041】
また、実施例全体において、内側区間12及び外側区間14の連結性は、それぞれ90及び60と設定した。
【0042】
表1を参照すると、寸法比率が0.1以上であるときに熱衝撃によるクラックが効果的に防止できることが分かった。一方、寸法比率が0.3を超過する場合は静電容量が大幅に減少することが分かった。
【0043】
従って、寸法比率を0.1〜0.3に調節する場合、静電容量を安定して確保しながらクラックを効果的に防止することができる。
【0044】
【表2】

【0045】
表2を参照すると、外側区間の内部電極の連結性が、内側区間の内部電極の連結性の約0.55倍未満である場合に静電容量が急激に低下し、約0.9倍超過である場合にクラックの発生率が増えることが確認できた。
【0046】
従って、外側区間の内部電極の連結性が内側区間の内部電極の連結性の0.55〜0.90倍になるように設定する場合、静電容量を安定して確保しながらクラックを効果的に防止することができる。
【0047】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を外れない範囲内において様々な形態の置換、変形及び変更が可能であることは当技術分野において通常の知識を有する者には自明である。
【符号の説明】
【0048】
1 キャパシタ本体
2 外部電極
10 内部電極
20 誘電体層
11 気孔
12 内側区間
14 外側区間
16 縁区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層セラミックキャパシタにおいて、
前記内部電極の長さをAとし、前記内部電極が有する気孔を除いた内部電極の長さの総合をBとする場合、B/Aを内部電極の連結性と定義し、
前記内部電極のうち一端から一定の長さだけの区間を外側区間、前記外側区間を除いた残りの内部電極区間を内側区間、前記内部電極の一端から前記積層セラミックキャパシタの一面までの誘電体層を縁区間と定義する場合、
前記外側区間の長さは前記縁区間の0.1〜0.3倍であり、
前記外側区間の内部電極は前記内側区間の内部電極よりも低い連結性を有するように形成される積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記外側区間の内部電極の連結性は、前記内側区間の内部電極の連結性の0.55〜0.90倍であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記内部電極が有する気孔の一部にはセラミックが満たされることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体層の厚さは10μm以下に形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記誘電体層の積層数は100〜1000であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−135033(P2011−135033A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163288(P2010−163288)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】