説明

積層セラミック電子部品の実装構造

【課題】サージ耐電圧を効果的に高めることができ、静電気放電に際しての電子部品の破壊が生じ難い、積層セラミック電子部品の実装構造を提供する。
【解決手段】配線基板2の実装面2a上に積層セラミック電子部品6が実装されており、積層セラミック電子部品6の外部電極14,15が、実装面2a上に設けられている第1,第2のランド電極3,4に導電性接合剤16,17により接合されており、セラミック積層体7の実装面2aに対向している第2の主面としての下面7bと実装面2aとの間の距離をd、ランド電極3,4の厚みをtとしたときに、t<t≦dとされている厚みtを有するアース導体5が、配線基板2の実装面2a上において第1,第2のランド電極3,4間に形成されている、積層セラミック電子部品の実装構造1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品が配線基板上に実装されている積層セラミック電子部品の実装構造に関し、より詳細には、サージ電流からの保護機能が備えられている積層セラミック電子部品の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サージ電流による積層コンデンサの絶縁破壊を防止するために、バリスタやサージアブソーバなどの部品が用いられていた。しかしながら、近年、電子機器の軽薄短小化に伴い、実装基板における実装面積を削減することが強く求められている。そのため、積層コンデンサ自体に耐サージ機能を付加することにより、上記サージ吸収用の部品を省略することが提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図8に示す積層コンデンサ501が開示されている。積層コンデンサ501では、ある電位に接続される内部電極が引き出されているセラミック積層体502の第1の端面を覆うように第1の外部電極503が形成されている。そして、第1の端面503と反対側の第2の端面を覆うように第2の外部電極504が形成されている。第2の外部電極504は、複数の内部電極505に電気的に接続されている。内部電極505は、外部電極503に電気的に接続されている内部電極(図示されず)とは異なる電位に接続される内部電極である。
【0004】
外部電極503,505のセラミック積層体502の上面に至っている回り込み部503a,504aに連なるように、放電用電極506,507が形成されている。放電用電極506,507は、セラミック積層体502の上面において所定の距離を隔てて対向されている。
【0005】
上記放電用電極506,507間の距離は、外部電極503,504間の距離よりも小さくされており、従って、放電用電極506,507間で放電を生じさせ、サージを吸収することが可能とされている。
【0006】
他方、特許文献1には、図9に示す積層コンデンサ511も開示されている。ここでは、セラミック積層体512の第1の端面を覆うように、図示されていない内部電極に接続されている第1の外部電極513が形成されている。第1の端面とは反対側の第2の端面を覆うように、第2の外部電極514が形成されている。外部電極514は、複数の内部電極515に電気的に接続されている。他方、セラミック積層体512内には、内部電極515とは異なる電位に接続される複数の内部電極516が形成されており、内部電極516は、セラミック積層体512の側面において、第3の外部電極517に電気的に接続されている。従って、3端子型の積層コンデンサが構成されている。
【0007】
第3の外部電極517は、セラミック積層体512の長さ方向中央において、一対の側面から上面及び下面に至るように設けられている。そして、セラミック積層体512の上面においては、第1の外部電極513,514のセラミック積層体512の上面に至っている回り込み部513a,514aから、第3の外部電極517側に向かって突出された放電電極518,519が、回り込み部513a,514aと連ねられて設けられている。
【0008】
他方、セラミック積層体512の上面において、第1,第2の外部電極513,514側に突出している放電電極520,521が第3の外部電極517に連ねられている。積層コンデンサ511においても、放電電極518,520間及び519,521間の距離が短くされているので、これらの間で放電を生じさせることにより、サージを吸収することができるとされている。
【0009】
他方、サージ電流からの保護機能とは全く別の目的を達成するための構造として、下記の特許文献2には、図10に示すセラミック電子部品の実装構造が開示されている。
【0010】
図10に示す実装構造601では、配線基板602上に、セラミックス素子603が実装されている。配線基板602の上面には、電極ランド604〜606が形成されている。セラミックス素子603は、一方端に電極部607を有し、他方端に電極部608を有する。電極部607,608は、外部と電気的に接続するための電極部分であり、半田609,610を介して、電極ランド604,606に電気的に接続されている。
【0011】
他方、セラミックス素子603の下面中央には、電極部607,607とは別に、ダミー電極611が形成されている。ダミー電極611は、配線基板602の上面に設けられた電極ランド605に接合されている。ダミー電極611を、電極ランド605に接合することにより、セラミックス素子603の配線基板602に対する接合強度が高められるとされている。
【0012】
他方、下記の特許文献3には、図11に示す実装構造が開示されている。図11に示す実装構造701は、特許文献3において従来技術として示されている構造である。実装構造701では、配線基板702上に、積層セラミックコンデンサ703が実装されている。配線基板702上には、電極ランド704,705と、導電パターン706とが形成されている。積層セラミックコンデンサ703の外部電極707,708が、半田709,710により電極ランド704,705に接続されている。
【0013】
実装構造701では、導電パターン706が積層セラミックコンデンサ703の中央下方に位置している。特許文献3によれば、電子機器の高密度化が進むにつれて、積層セラミックコンデンサ703の下方に、他の電気信号が流れる導電パターン706が配置されることがあると記載されている。この場合、導電パターン706の上面と積層セラミックコンデンサ703との間には隙間が設けられているものの、導電パターン706と、積層セラミックコンデンサ703内の内部電極703aとの間で浮游容量Csが生じがちであるという問題点が指摘されている。
【特許文献1】特開平6−251981号公報
【特許文献2】特開平11−40918号公報
【特許文献3】実開昭56−26940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図8に示した積層コンデンサ501では、例えば放電電極506から放電電極507側に放電した電流は、外部電極504を経て内部電極505側に戻ってくる可能性が存在する。そのため、積層コンデンサ501の絶縁破壊を防止することはできるものの、他の実装部品が破壊されるおそれがあった。
【0015】
図9に示した積層コンデンサ511では、アース電位に接続される外部電極517と、内部電極516とが電気的に接続されているので、例えば放電電極518,519から放電電極520,521に放電した電流が、内部電極516側に流れ、セラミック積層体512が破壊するおそれがあった。すなわち、アース電極に接続される外部電極517を有する3端子型の積層コンデンサ511では、上記放電電極518〜521を設けたとしても、放電電流による積層コンデンサ511の破壊が生じるという問題があった。
【0016】
他方、前述した特許文献2に記載の実装構造601では、サージ吸収機能を果たす構造とは全く異なる目的、すなわちセラミックス素子603の配線基板602への接合強度を高めるために、ダミー電極611が設けられていた。しかしながら、このようなダミー電極611の形成は現実には困難であった。すなわち、電極部607,608は、通常、導電ペーストの塗布・焼き付けにより形成されている。この場合、セラミックス素子603の端面を導電ペーストに浸漬することにより導電ペーストが塗布される。しかしながら、中央に位置しているダミー電極611の形成に際しては、このような浸漬法により導電ペーストを付与することは困難である。従って、ダミー電極611を、電極部607,608と同様にして効率よく形成することは困難であった。
【0017】
なお、スクリーン印刷などの他の方法によりダミー電極611のみを電極部607,608とは別工程で形成することは可能である。しかしながら、そのような場合には、非常に小さなセラミックス素子603を固定し、かつその下面の一部に高精度にダミー電極材料を印刷しなければならない。加えて、ダミー電極611を形成するための工程が別途必要であり、工程数が増加するという問題もある。
【0018】
また、特許文献2では、電極部607,608と、ダミー電極611を同一工程及び同一材料に形成し、しかる後、電極部607,608の外部と電気的に接続される部分及びダミー電極611が形成されている部分を除いてガラスからなる絶縁性材料により被覆する旨が記載されている。しかしながら、このような工法自体、上述した通り現実には困難であった。
【0019】
他方、特許文献3に記載の実装構造701では、導電パターン706は、積層セラミックコンデンサ703の下方において、積層セラミックコンデンサ703の両端の外部電極を結ぶ方向と交差するように位置している。この導電パターン706は、電極ランド704,705と同じ厚みとなるように形成されている。従って、この実装構造701では、沿面放電によるサージ電流が、導電パターン706側に飛び難い。すなわち、導電パターン706は、サージ電流吸収作用を有する部材とは全く別の機能を果たすための電極にすぎない。
【0020】
上記実装構造601,701は、後述する本発明の積層セラミック電子部品の実装構造と外形的に似た構造を有するが、上記のように、目的及び効果において全く異なるものであり、従って、後述する本発明の説明から明らかなように、構造においても本質的に異なるものである。
【0021】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、サージ耐電圧を効果的に高めることが可能とされており、それによって静電気放電に際しての電子部品の破壊が生じ難い、信頼性に優れた積層セラミック電子部品の実装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、対向し合っている第1,第2の主面と、第1,第2の主面を結ぶ複数の側面とを有するセラミック積層体と、前記セラミック積層体内において、前記第1,第2の主面に平行な方向に延びるように配置された第1,第2の内部電極と、前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部を被覆するように前記セラミック積層体の外表面に形成されており、かつ前記第1の内部電極に電気的に接続されている第1の外部電極と、前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部を被覆するように前記セラミック積層体の外表面に形成されており、かつ前記第2の内部電極に電気的に接続されている第2の外部電極とを有する積層セラミック電子部品と、実装面を有する基板本体と、前記基板本体の前記実装面上に形成されている第1,第2のランド電極とを有する配線基板とを備え、前記配線基板の前記実装面上に、前記実装面と前記第2の主面が対向するように前記積層セラミック電子部品が実装されており、前記第1の外部電極と前記第1のランド電極、並びに前記第2の外部電極と前記第2のランド電極とが、それぞれ、導電性接合材を介して電気的に接続されている積層セラミック電子部品の実装構造において、前記配線基板の前記実装面上において、前記第1のランド電極及び前記第2のランド電極間にアース導体が形成されており、前記積層セラミック電子部品の前記第2の主面と前記配線基板の前記実装面との間の距離をdとし、前記第1,第2のランド電極の厚みをt、前記アース導体の厚みをtとしたときに、t<t≦dとされていることを特徴とする、積層セラミック電子部品の実装構造が提供される。
【0023】
本発明に係る積層セラミック電子部品の実装構造では、好ましくは、アース導体として、複数のアース導体が形成され、その場合には、複数のアース導体からサージ電流をより確実に逃がすことができ、サージ耐電圧をより一層高めることができる。
【0024】
本発明においては、好ましくは、前記アース導体が、前記実装面上に形成された下地電極と、前記下地電極上に形成された導電性接着剤とからなる。この場合には、導電性接着剤が接着作用を有するため、アース導体とセラミック積層体の第2の主面とを確実に接触させることができる。従って、サージ電流からの保護を確実に行い得るだけでなく、積層セラミック電子部品の配線基板への接合強度を高めることも可能となる。
【0025】
なお、より好ましくは、上記下地電極は、第1,第2のランド電極と同じ材料で、同じ厚みに形成される。その場合には、第1,第2のランド電極と同一工程で下地電極を効率よく形成することができる。
【0026】
本発明に係る積層セラミック電子部品の実装構造のある特定の局面では、前記第1の内部電極が前記セラミック積層体の複数の側面のうちの第1の側面に引き出されており、前記第2の内部電極が、第1の側面とは反対側に位置している第2の側面に引き出されており、前記第1,第2の外部電極が、それぞれ、前記第1,第2の側面において、前記第1,第2の内部電極に電気的に接続されている。
【0027】
また、本発明の他の特定の局面では、前記第1,第2の内部電極が、前記セラミック積層体内に埋設されており、前記第1の内部電極に電気的に接続され、かつ前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部に至る第1の接続電極と、前記セラミック積層体内において前記第2の内部電極に電気的に接続されており、かつ前記セラミック積層体の第2の主面の一部に引き出されている第2の接続電極とをさらに備え、前記第1,第2の外部電極が、前記第1,第2の接続電極に前記第2の主面上において電気的に接続されている。
【0028】
すなわち、本発明に係る積層セラミック電子部品を実装構造に用いられる積層セラミック電子部品の構造及び第1,第2の内部電極と第1,第2の外部電極との電気的接続構造等は、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る積層セラミック電子部品の実装構造では、配線基板の実装面上において、第1のランド電極及び第2のランド電極間にアース導体が形成されており、t<t≦dとされているため、積層セラミック電子部品の第の外部電極又は第2の外部電極からサージ電流がセラミック積層体の外表面を流れた場合、第1の又は第2の外部電極とアース導体との間で放電が誘発され、サージ電流がアース導体に速やかに逃がされることになる。そのため、積層セラミック電子部品や、積層セラミック電子部品に電気的に接続されている他の電子部品の破壊が生じ難い。よって、積層セラミック電子部品を含む回路部分をサージ電流から確実に保護することができ、耐サージ電圧の高い積層セラミック電子部品の実装構造を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図である。実装構造1は、配線基板2を有する。配線基板2の実装面2a上には、第1のランド電極3と、第1のランド電極3と隔てられて設けられた第2のランド電極4とが形成されている。
【0032】
また、第1のランド電極3と、第2のランド電極4との間に、アース導体5が設けられている。アース導体5の厚みtは、第1,第2のランド電極3,4の厚みtよりも厚くされている。
【0033】
上記配線基板2を構成する材料は特に限定されない。すなわち、配線基板2としては、様々な合成樹脂もしくは、ガラスエポキシなどの樹脂複合材料からなる樹脂基板、または様々な絶縁性セラミックスやガラスセラミックスなどからなるセラミック基板を用いることができる。
【0034】
第1,第2のランド電極3,4は、適宜の導電性材料からなり、例えばCu、Agまたはこれらの合金などにより形成することができる。第1,第2のランド電極3,4の厚みは、特に限定されないが、通常10〜50μm程度とされる。
【0035】
上記ランド電極3,4は、適宜の方法で形成することができ、例えば金属箔を形成した後エッチングする方法、導電ペーストを印刷した後焼き付ける方法などにより形成することができる。
【0036】
アース導体5は、適宜の導電性材料からなり、例えばCu、Agまたはこれらを含む合金により形成することができる。好ましくは、アース導体5は、ランド電極3,4と同じ材料で形成され、その場合には、実装構造1を形成するに際しての電極材料の種類を少なくすることができる。アース導体5の形成方法についても特に限定されず、例えば、金属箔をエッチングする方法、導電ペーストを塗布し、焼き付ける方法などが挙げられ、好ましくは、上記ランド電極3,4と同一方法により同時に形成される。その場合には、アース導体5の形成作業を効率よく行うことができる。
【0037】
もっとも、アース導体5の厚みtは、ランド電極3,4の厚みtよりも厚いため、必要に応じて、厚めの金属箔を用いたり、導電ペーストを二度塗りしたり、感光性ペーストを用いたりする方法などを適宜用いることによりアース導体5を形成することが望ましい。
【0038】
上記配線基板2上に、積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ6が実装されている。積層セラミックコンデンサ6は、適宜の誘電体セラミックスからなる直方体状のセラミック積層体7を有する。誘電体セラミックスとしては、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどの適宜の誘電体セラミックスを用いることができる。
【0039】
セラミック積層体7は、複数のセラミックグリーンシートを積層し、焼成することにより得られているため、複数のセラミック層を積層した構造を有する。そして、セラミック積層体7の上面7aを第1の主面、下面7bを第2の主面とした場合、第1,第2の主面に平行な方向に延びるように、セラミック積層体7a内には、第1の内部電極8〜10と、第2の内部電極11〜13とが配置されている。第1の内部電極8〜10と、第2の内部電極11〜13とは、セラミック層を介して、セラミック積層体7の長さ方向中央において重なり合うように配置されている。
【0040】
なお、セラミック積層体7の長さ方向とは、第1,第2の主面である上面7a,7bを結ぶ4つの側面のうち、図1において図示されている一方端側の第1の側面7cと、反対側の第2の側面7dとを結ぶ方向をいうものとする。また、セラミック積層体7の幅方向とは、図1の紙面−紙背方向をいうものとする。また、セラミック積層体7の厚み方向とは、上面7aと、下面7bとを結ぶ方向をいうものと異なる。
【0041】
第1の内部電極8〜10は、セラミック積層体7の上記第1の側面7cに引き出されており、複数の第2の内部電極11〜13が、第2の側面7dに引き出されている。
【0042】
内部電極8〜13は、適宜の金属により構成することができる。このような金属としては、特に限定されないが、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd、Auなどを挙げることができる。
【0043】
第1の側面7cを覆うように、第1の外部電極14が形成されており、第2の側面7dを覆うように、第2の外部電極15が形成されている。第1の外部電極14は、第1の内部電極8〜10に電気的に接続されており、第2の外部電極15は、第2の内部電極11〜13に、第2の側面7dにおいて電気的に接続されている。
【0044】
上記外部電極14,15は、側面7c,7dを覆い、かつセラミック積層体7の上面7a及び下面7b上に至る電極回り込み部14a,15aを有する。電極回り込み部14a,15aは、セラミック積層体7の幅方向両側に位置する側面上にも至るように形成されている。
【0045】
外部電極14,15は適宜の金属により形成することができ、前述した内部電極材料として例示したものと同様の金属もしくは合金を用いて形成することができる。なお、積層セラミックコンデンサ7を半田により実装する場合には、Cuの厚膜電極上に、Niメッキ膜及びSnのメッキ膜を順に形成することにより外部電極14,15を形成することが望ましい。Snメッキ膜により半田付性を高めることができ、Niメッキ膜により下地のCu電極の半田食われを防止することができる。
【0046】
また、導電性接着剤を用いて積層セラミックコンデンサ6が実装される場合には、外部電極14,15は、Ag、PdまたはAg−Pd合金などからなることが好ましい。それによって、導電性接着剤による接合強度を高めることができる。
【0047】
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ6は、導電性接合剤16,17により、配線基板2上のランド電極3,4に接合されている。導電性接合剤16,17は、半田もしくは導電性接着剤などの導電性及び機械的接合性を有する適宜の材料により形成することができる。
【0048】
導電性接合剤16,17は、外部電極14,15の側面7c,7d上に位置している部分及び下面7b上に位置している電極回り込み部14a,15aと、ランド電極3,4とをそれぞれ接合している。
【0049】
本実施形態の実装構造1の特徴は、積層セラミックコンデンサ6のセラミック積層体7の第2の主面としての7bと配線基板2の実装面2aとの間の距離をd、外部電極14と実装面2aとの間の距離及び外部電極15と実装面2aとの間の距離のうち短い方の距離をdとし、第1,第2のランド電極の厚みをt、アース導体5の厚みをtとしたとき、t<t≦dとされていることにある。それによって、外部電極14,15間において、セラミック積層体7の外表面を流れるサージ電流が、アース導体5から速やかに逃がされ、積層セラミックコンデンサ6の破壊を防止することができる。加えて、積層セラミックコンデンサ6が挿入されている回路部分へのサージ電流の流入を確実に抑制することができ、サージ電流をアース導体5から速やかに外部に逃がすことができる。これをより具体的に説明する。
【0050】
沿面放電によりサージ電流がセラミック積層体7の表面を流れ、アース導体5に流れていくには、アース導体5の厚みtは、tよりも厚いことが必要である。すなわち、厚みtがt以下の場合には、アース導体5と下面7bとの間の距離が大きくなり、下面7bを流れるサージ電流が、アース導体5側に流れにくくなる。
【0051】
他方、アース導体5の厚みtが、dよりも大きくなることはあり得ない。もっとも、t=dであってもよい。すなわち、アース導体5の上面が、セラミック積層体7の下面2bに接触していてもよい。図1では、t=dとされており、アース導体5の上面がセラミック積層体7の下面7bに接触している。
【0052】
もっとも、アース導体7は、積層セラミックコンデンサ6の電気的回路部分に電気的に接続されてはならない。すなわち、アース導体5は、内部電極7〜13や外部電極14,15と電気的に接続されてはならない。
【0053】
なお、好ましくは、外部電極14と実装面2aとの間の距離及び外部電極15と実装面2aとの距離の内、短い方の距離をdとしたとき、d≦tとされ、それによって、サージ電流をアース導体5により一層逃がしやすくすることができる。すなわち、沿面放電によりサージ電流がセラミック積層体7の表面を流れ、アース導体5に流れていくには、アース導体5の厚みtは、d以上であることが望ましい。
【0054】
アース導体5の厚みtは、tより厚く、d以下であるため、厚みtは、15〜120μm程度の大きさとすることが好ましい。
【0055】
なお、上記導電性接合剤16,17の厚み、すなわち外部電極14,15の下端と、ランド電極3,4との間の距離は5〜20μm程度であることが十分な接合強度を得る上で望ましい。
【0056】
従って、上記距離dは、25〜120μm程度、距離dは15〜70μm程度であることが望ましい。
【0057】
上記のように、本実施形態の実装構造1では、アース導体5に信号電流が流れることはなく、アース導体5が上記のように形成されているため、例えば、第1の外部電極14側から第2の外部電極15側にサージ電流が流れようとした場合、第1の外部電極14とアース導体5との間でセラミック積層体7の表面における放電が生じる。それによって、サージ電流がアース導体5側に速やかに流れることになる。そして、アース導体5にサージ電流が流れることになるため、セラミックコンデンサ6内の破壊が生じ難い。また、積層セラミックコンデンサ6が接続されている回路部分へのサージ電流の影響も確実に抑制することができる。
【0058】
ところで、上記第1の外部電極14とアース導体5との間の放電をより確実に誘発させるには、第1の外部電極14とアース導体5との間の距離、より具体的には、第1の外部電極14の電極回り込み部14aのアース導体5側端部と、アース導体5との間の距離A1が短いことが望ましい。これを、図2を参照して説明する。図2の横軸は放電距離を示し、ここでは、長さ3.2mm、幅1.6mm×厚み1.6mmの寸法のセラミック積層体7を用いた積層セラミックコンデンサ6を有する実装構造1において、電極回り込み部14a,15aの端部とアース導体5との間の距離A1,A2をA1=A2=0.1〜1.0mmの範囲で変化させ、アース導体5のセラミック積層体7の長さ方向に沿う寸法Bを0.4mmとした場合の上記放電距離である距離A1と放電電圧との関係を示す図である。
【0059】
図2から明らかなように、距離A1に相当する放電距離が短いほど、放電電圧が低くなり、サージ電流をより速やかに吸収し得ることが分かる。
【0060】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る積層セラミミック電子部品の実装構造を示す正面断面図である。図3に示す変形例では、アース導体5の厚みtが、距離dよりも小さくされている。従って、アース導体5の上面が、セラミック積層体7の第2の主面としての下面7bと隔てられている。この場合であっても、tが、tより大きく、d以下であるため、第1の実施形態の場合と同様に、サージ電流をアース導体5に速やかに流し、実装構造における耐サージ電圧を確実に高めることができる。
【0061】
図4は、図1に示した実施形態の実装構造の他の変形例を示す正面断面図である。図4に示す変形例では、複数のアース導体5A,5Bが配置されている。すなわち、セラミック積層体7の長さ方向に沿って複数のアース導体5A,5Bが設けられている。この場合には、サージ電流が複数のアース導体5A,5Bから逃がされ得るため、サージ電流に対する保護効果をより一層高めることができる。すなわち、アース導体5Aと、第1の外部電極14の電極回り込み部14aとの間の距離が短くなり、同様に第2の外部電極15の電極回り込み部15aとアース導体5Bとの間の距離も短くされ得る。従って、表面放電が起こり易く、しかも、第1の外部電極14側からサージ電流が流れた場合、あるいは第2の外部電極15側からサージ電流が流れた場合のいずれにおいても、サージ電流を確実に逃がすことができ、積層セラミックコンデンサ6の破壊をより確実に防止することができる。
【0062】
図5は、第1の実施形態のさらに他の変形例に係る実装構造の正面断面図である。ここでは、アース導体15は、下地電極15aと、下地電極15a上に形成された導電性接着剤層15bとからなる。このように、アース導体15は、単一の金属もしくは合金で形成される必要は必ずしもなく、複数の導電性材料を積層した構造を有していてもよい。この場合、積層セラミックコンデンサ6を実装するための導電性接合剤16,17が導電性接着剤である場合、上記アース導体15における導電性接着剤層15bを同じ導電性接着剤で形成することが望ましい。その場合には、導電性接合剤16,17を付与する工程において、同時に、下地電極15a上に、導電性接着剤を付与することにより導電性接着剤層15bを形成することができる。
【0063】
また、下地電極15aは、ランド電極3,4と同じ材料で同じ厚みに形成されることが望ましい。その場合には、ランド電極3,4を形成する工程において同時に下地電極15aを形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0064】
また、上記のように、導電性接着剤層15bを用いた場合には、アース導体15と、セラミック積層体7の第2の主面としての下面7bと確実に接触させることができる。すなわち、硬化前の比較的柔軟性を有する導電性接着剤を下地電極15a上に厚めに塗布し、積層セラミックコンデンサ6を上方から載置した場合、上記導電性接着剤が押しつぶされ、確実に導電性接着剤層15bをセラミック積層体7の下面7bに接触させることができる。それによって、サージ電流からの保護を確実に行い得るだけでなく、積層セラミックコンデンサ6の配線基板2への接合強度を高めることも可能となる。
【0065】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図である。本実施形態では、積層セラミックコンデンサ6に代えて、積層セラミックコンデンサ21が配線基板2上に実装されている。積層セラミックコンデンサ21は、セラミック積層体22を有する。セラミック積層体22内には、セラミック積層体22の第1の主面としての上面22a及び第2の主面としての下面22bと平行な方向に延びるように、複数の第1の内部電極23〜25と、複数の第2の内部電極26〜28とが形成されている。もっとも、内部電極23〜28は、セラミック積層体22内に埋設されている。すなわち、直方体状のセラミック積層体22において、長さ方向中央において、第1の内部電極23〜25と、第2の内部電極26〜28とがセラミック層を介して重なり合っている。第1の内部電極23〜25は、第1の側面22c側に延ばされているものの、第1の側面22cには至っていない。同様に、第2の内部電極26〜28は、第2の側面22d側に延ばされているものの、第2の側面22dには至っていない。
【0066】
第1,第2の内部電極23〜28が重なり合っている部分と、第1の側面22cとの間において、セラミック積層体22を貫通するように設けられている第1の接続電極29により複数の第1の内部電極23〜245が電気的に接続されている。第1の接続電極29の上端は、セラミック積層体22の上面22aに至っており、下端は下面22bに至っている。
【0067】
同様に、内部電極23〜28が重なり合っている部分と第2の側面22dとの間において、第2の接続電極30がセラミック積層体22を貫通しており、かつ第2の内部電極26〜28を電気的に接続している。第2の接続電極30は、上端がセラミック積層体22の上面22aに至っており、下端がセラミック積層体22の下面22bに至っている。
【0068】
第1の外部電極31が、セラミック積層体22の上面22aから図示されていない一対の側面を得て下面22bに至るように設けられている。この第1の外部電極31は、上記第1の接続電極29の上端及び下端に電気的に接続されている。そして、第1の外部電極31が、導電性接合剤16を介して第1のランド電極3に電気的に接続されている。
【0069】
他方、第2の接続電極30に電気的に接続されるように、セラミック積層体22の上面22aから図示されていない一対の側面を得て下面に至る第2の外部電極32が形成されている。第2の外部電極32が、セラミック積層体22の下面22b上に至っているが、導電性接合剤17を介して第2のランド電極4に電気的に接続されている。
【0070】
このように、本発明で用いられる積層セラミック電飾品は、第1,第2の外部電極31,32が、セラミック積層体の側面に至るように設けられておらずともよい。また、第1,第2の内部電極についても、セラミック積層体内に埋設されており、接続電極29,30のようなビアホール電極により電気的に接続されていてもよい。
【0071】
本実施形態においても、アース導体5が配線基板2上に設けられており、アース導体5の厚みtが、tより厚く、距離d以下とされているため、第1の実施形態と同様に、サージ電流をアース導体5に確実に流すことができ、サージ電流からの保護を確実に図ることが可能である。
【0072】
図7は、本発明の実施形態の積層セラミック電子部品が備えられた回路モジュールを説明するための模式的正面断面図である。回路モジュールでは、セラミック多層基板52上に、積層コンデンサ53と、IC54とが実装されている。セラミック多層基板52は、複数のセラミック層が積層されたセラミック焼結体を用いて構成されており、セラミック層間に、配線導体55〜57が設けられている。特に限定される訳ではないが、上記セラミック多層基板52は、例えば、Alとガラスとを混合したガラスセラミックスから成る。配線導体55,56は、ビア導体58,59の下端に接続されている。ビア導体58,59の上端は、セラミック多層基板52の上面に露出しており、ICチップ54の下面に設けられたバンプ60,61に接合されている。
【0073】
他方、配線導体57は、グラウンド電位に接続される導体であり、ビア導体62の下端に接続されている。ビア導体62の上端は、セラミック多層基板52の上面に至っている。また、セラミック多層基板52の上面には、第1,第2のランド電極3,4及びアース導体5が形成されている。このアース導体5の厚みtが、ランド電極3,4の厚みtよりも厚くされている。アース導体5に、ビア導体62の上端が電気的に接続されている。他方、ランド電極3,4に、積層コンデンサ53の両端の端子電極が接合されている。
【0074】
上記配線導体55〜57及びビア導体58,59,62は、例えば、CuやAg等の適宜の金属もしくは合金から成る積層コンデンサ53の第2の主面としての下面と、配線基板としてのセラミック多層基板52の上面との間の距離をdとしたとき、t<t≦dとされている。それによって、第1の実施形態と同様に、積層コンデンサ53の外表面を流れるサージ電流がアース導体5から速やかに逃がされ、より具体的には、ビア導体62を介して配線導体57に逃がされることになる。
【0075】
上述してきた実施形態及び変形例では、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを示したが、本発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層セラミックインダクタ、積層セラミック圧電素子のような様々な積層セラミック電子部品に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図。
【図2】図1に示した実施形態において、外部電極とアース導体との間の距離に相当する放電距離と放電電圧との関係を示す図。
【図3】第1の実施形態の変形例に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図。
【図4】第1の実施形態の他の変形例に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図。
【図5】第1の実施形態のさらに他の変形例に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る積層セラミック電子部品の実装構造を示す正面断面図。
【図7】本発明の実施形態の積層セラミック電子部品を有する回路モジュールを示す正面断面図。
【図8】従来の積層コンデンサの一例を説明するための斜視図。
【図9】従来の積層コンデンサの他の例を説明するための斜視図。
【図10】従来のセラミック電子部品の実装構造の一例を示す模式的正面図。
【図11】従来の積層セラミック電子部品の実装構造の他の例を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0077】
1…実装構造
2…配線基板
2a…実装面
3,4…第1,第2のランド電極
5…アース導体
5a,5b…アース導体
6…積層セラミックコンデンサ
7…セラミック積層体
7a…上面(第1の主面)
7b…下面(第2の主面)
7c,7d…側面
8〜10…第1の内部電極
11〜13…第2の内部電極
14…第1の外部電極
14a,15a…電極回り込み部
15…第2の外部電極
15…アース導体
15a…下地電極
15b…導電性接着剤
16,17…導電性接合剤
21…実装構造
22…セラミック積層体
22a…上面(第1の主面)
22b…下面(第2の主面)
22c,22d…側面
23〜25…第1の内部電極
26〜28…第2の内部電極
29,30…第1,第2の接続電極
31,32…第1,第2の外部電極
51…回路モジュール
52…セラミック多層基板
53…積層コンデンサ53
54…IC
55〜57…配線6
58,59…ビア導体
60,61…バンプ
62…ビア導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向し合っている第1,第2の主面と、第1,第2の主面を結ぶ複数の側面とを有するセラミック積層体と、前記セラミック積層体内において、前記第1,第2の主面に平行な方向に延びるように配置された第1,第2の内部電極と、前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部を被覆するように前記セラミック積層体の外表面に形成されており、かつ前記第1の内部電極に電気的に接続されている第1の外部電極と、前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部を被覆するように前記セラミック積層体の外表面に形成されており、かつ前記第2の内部電極に電気的に接続されている第2の外部電極とを有する積層セラミック電子部品と、
実装面を有する基板本体と、前記基板本体の前記実装面上に形成されている第1,第2のランド電極とを有する配線基板とを備え、
前記配線基板の前記実装面上に、前記実装面と前記第2の主面が対向するように前記積層セラミック電子部品が実装されており、
前記第1の外部電極と前記第1のランド電極、並びに前記第2の外部電極と前記第2のランド電極とが、それぞれ、導電性接合材を介して電気的に接続されている積層セラミック電子部品の実装構造において、
前記配線基板の前記実装面上において、前記第1のランド電極及び前記第2のランド電極間にアース導体が形成されており、
前記積層セラミック電子部品の前記第2の主面と前記配線基板の前記実装面との間の距離をdとし、前記第1,第2のランド電極の厚みをt、前記アース導体の厚みをtとしたときに、t<t≦dとされていることを特徴とする、積層セラミック電子部品の実装構造。
【請求項2】
複数の前記アース導体が形成されている、請求項1に記載の積層セラミック電子部品の実装構造。
【請求項3】
前記アース導体が、前記実装面上に形成された下地電極と、前記下地電極上に形成された導電性接着剤とからなる、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品の実装構造。
【請求項4】
前記下地電極が、前記第1,第2の電極ランドと同じ材料で、同じ厚みに形成されている、請求項3に記載の積層セラミック電子部品の実装構造。
【請求項5】
前記第1の内部電極が前記セラミック積層体の複数の側面のうちの第1の側面に引き出されており、前記第2の内部電極が、第1の側面とは反対側に位置している第2の側面に引き出されており、前記第1,第2の外部電極が、それぞれ、前記第1,第2の側面において、前記第1,第2の内部電極に電気的に接続されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の実装構造。
【請求項6】
前記第1,第2の内部電極が、前記セラミック積層体内に埋設されており、前記第1の内部電極に電気的に接続され、かつ前記セラミック積層体の前記第2の主面の一部に至る第1の接続電極と、前記セラミック積層体内において前記第2の内部電極に電気的に接続されており、かつ前記セラミック積層体の第2の主面の一部に引き出されている第2の接続電極とをさらに備え、
前記第1,第2の外部電極が、前記第1,第2の接続電極に前記第2の主面上において電気的に接続されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の実装構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−60214(P2008−60214A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233417(P2006−233417)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】