積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法および積層セラミック電子部品用の積層体ユニット
【課題】効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】支持シート4の表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部7aが形成されたスペーサ層7を形成し、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層6を形成し、電極層およびスペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシート2を形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【解決手段】支持シート4の表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部7aが形成されたスペーサ層7を形成し、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層6を形成し、電極層およびスペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシート2を形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法および積層セラミック電子部品用の積層体ユニットに関するものであり、さらに詳細には、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化にともなって、電子機器に実装される電子部品の小型化および高性能化が要求されるようになっており、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品においても、積層数の増加、積層単位の薄層化が強く要求されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサによって代表される積層セラミック電子部品を製造するには、まず、セラミック粉末と、アクリル樹脂、ブチラール樹脂などのバインダと、フタル酸エステル類、グリコール類、アジピン酸、燐酸エステル類などの可塑剤と、トルエン、メチルエチルケトン、アセトンなどの有機溶媒を混合分散して、誘電体ペーストを調製する。
【0004】
次いで、誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターやグラビアコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などによって形成された支持シート上に、塗布し、加熱して、塗膜を乾燥させ、セラミックグリーンシートを作製する。
【0005】
さらに、セラミックグリーンシート上に、ニッケルなどの電極ペーストを、スクリーン印刷機などによって、所定のパターンで、印刷し、乾燥させて、電極層を形成する。
【0006】
電極層が形成されると、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを支持シートから剥離し、所望の数のセラミックグリーンシートを積層して、加圧し、得られた積層体を、チップ状に切断して、グリーンチップを作製する。
【0007】
最後に、グリーンチップからバインダを除去して、グリーンチップを焼成し、外部電極を形成することによって、積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が製造される。
【0008】
電子部品の小型化および高性能化の要請によって、現在では、積層セラミックコンデンサの層間厚みを決定するセラミックグリーンシートの厚さを3μmあるいは2μm以下にすることが要求され、300以上のセラミックグリーンシートを積層することが要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の積層セラミックコンデンサにおいては、セラミックグリーンシートの表面に、所定のパターンで、電極層が形成されるため、各セラミックグリーンシートの表面の電極層が形成された領域と、電極層が形成されていない領域との間に、段差が形成され、したがって、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートを積層することが要求される場合には、多数のセラミックグリーンシートを、所望のように、接着させることが困難になるとともに、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートが積層された積層体が変形を起こすという問題があった。
【0010】
かかる問題を解決するため、誘電体ペーストを、電極層のパターンと相補的なパターンで、セラミックグリーンシートの表面に印刷し、スペーサ層を、隣り合った電極層間に形成して、各セラミックグリーンシートの表面における段差を解消させる方法が提案されている。
【0011】
このように、隣り合った電極層間のセラミックグリーンシートの表面に、印刷によって、スペーサ層を形成した場合には、各セラミックグリーンシートの表面における段差が解消され、電極層が形成された数多くのセラミックグリーンシートを積層して、積層セラミックコンデンサを作製する場合にも、所望のように、多数のセラミックグリーンシートを接着させることが可能になるとともに、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートが積層されて、形成された積層体が変形を起こすことを防止することができるという利点がある。
【0012】
しかしながら、このように、隣り合った電極層間のセラミックグリーンシートの表面に、印刷によって、スペーサ層を形成する場合には、電極層およびスペーサ層を形成するために、2回の印刷工程を繰り返すことが必要になり、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットの作製に要する時間が著しく長くなるという問題があった。
【0013】
ことに、電極層およびスペーサ層が印刷されるべきセラミックグリーンシートは、通常、1000mオーダーの長尺状をなしており、印刷速度は、通常、数m/分にすぎないことを考えると、電極層およびスペーサ層を形成するために、2回の印刷工程を繰り返すことは、積層体ユニットの製造効率を著しく低下させる結果を招き、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる方法の開発が望まれていた。
【0014】
したがって、本発明は、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のかかる目的は、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法によって達成される。
【0016】
本発明によれば、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、電極層およびスペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成するように構成されおり、グラビアコーティング法の塗布速度は、印刷速度に比して、はるかに高速であるから、短時間で、効率よく、スペーサ層と電極層を、実質的に段差が生じないように、支持シート上に形成することができ、したがって、効率よく、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットを作製することが可能になる。
【0017】
また、高速で、電極層やスペーサ層を印刷した場合には、電極層やスペーサ層の印刷領域が変形するため、電極層とスペーサ層を、互いに相補的なパターンで形成しても、段差を解消することが困難になるが、本発明によれば、スペーサ層は、グラビアコーティング法によって形成されているから、印刷に比して、はるかに高速で、変形のないスペーサ層を形成することができ、また、高速で、電極層を印刷する必要がなく、したがって、スペーサ層と電極層とを、所望のように、互いに相補的なパターンで形成することが可能になる。
【0018】
さらに、本発明によれば、電極層は、電極ペーストとの親和力が低いポリエチレンテレフタレートなどによって形成された支持シートの表面上ではなく、電極ペーストとの親和力が高い誘電体ペーストによって、形成されたスペーサ層の凹部の表面上に形成されるように構成されているから、所望のように、電極層を形成することが可能になる。
【0019】
本発明において、好ましくは、スペーサ層および電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、スペーサ層および電極層が形成される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様においては、スペーサ層は、tc≦0.5μmを満たすように、形成される。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様においては、スペーサ層は、ts/tc>2を満たすように、形成される。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、前記セラミックグリーンシートを形成するように構成されている。
【0023】
誘電体ペーストを塗布する方法は、とくに限定されるものではなく、エクストルージョンコーティング法などを用いることができる。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様においては、前記電極層および前記スペーサ層上に、接着層を介して、前記セラミックグリーンシートを形成するように構成されている。
【0025】
セラミックグリーンシートを、接着剤を介して、電極層およびスペーサ層上に形成する場合には、第二の支持シート上に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成しておき、一方で、第三の支持シート上に、接着剤溶液を塗布して、接着層を形成し、接着層の乾燥後に、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写して、第三の支持シートを剥離し、次いで、第二の支持シート上に形成されたセラミックグリーンシートを接着層に接着させ、第二の支持シートを剥離して、電極層およびスペーサ層上に、接着剤を介して、セラミックグリーンシートを形成することが好ましい。
【0026】
本発明の前記目的はまた、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に形成された電極層と、前記電極層および前記スペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えたことを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットによって達成される。
【0027】
本発明によれば、積層セラミック電子部品用の積層体ユニットは、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、スペーサ層の複数の凹部内に形成された電極層と、電極層およびスペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えているから、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、スペーサ層を形成することができ、したがって、グラビアコーティング法の塗布速度は、印刷速度に比して、はるかに高速であるから、短時間で、効率よく、スペーサ層と電極層を、実質的に段差が生じないように、支持シート上に形成することができ、したがって、効率よく、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットを作製することが可能になる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様においては、前記スペーサ層が、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されている。
【0029】
本発明において、好ましくは、スペーサ層および電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、スペーサ層および電極層が形成されている。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記セラミックグリーンシートが、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されている。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記セラミックグリーンシートが、接着剤を介して、前記電極層および前記スペーサ層上に形成されている。
【0032】
本発明において、セラミックグリーンシートを形成するために用いる誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルを混練して、調製される。
【0033】
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、これらを混合して、用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が約0.1μmないし約3.0μm程度の粉末として用いられる。誘電体原料の粒径は、セラミックグリーンシートの厚さより小さいことが好ましい。
【0034】
有機ビヒクルに用いられるバインダは、とくに限定されるものではなく、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いることができるが、セラミックグリーンシートを薄層化するためには、ポリビニルブチラールなどのブチラール系樹脂が、好ましく用いられる。
【0035】
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、とくに限定されるものではなく、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。
【0036】
本発明において、誘電体ペーストは、誘電体原料と、水中に水溶性バインダを溶解させたビヒクルを混練して、生成することもできる。
【0037】
水溶性バインダは、とくに限定されるものではなく、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。
【0038】
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、とくに限定されるものではなく、たとえば、約1重量%ないし約5重量%のバインダと、約10重量%ないし約50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
【0039】
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤の含有量は、バインダ樹脂100重量部に対して、約25重量部ないし約100重量部であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、生成されたセラミックグリーンシートが脆くなる傾向があり、多すぎると、可塑剤が滲み出して、取り扱いが困難になり、好ましくない。
【0040】
本発明において、スペーサ層を形成するために用いる誘電体ペーストは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストと同様にして、調製される。
【0041】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、好ましくは、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体と同一組成の誘電体の粒子を含んでいる。
【0042】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、誘電体粒子以外に、バインダと、任意成分として、可塑剤および剥離剤とを含んでいる。誘電体粒子の粒径は、セラミックグリーンシートに含まれる誘電体粒子の粒径と同じでもよいが、より小さいことが好ましい。
【0043】
バインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体、または、これらのエマルジョンを用いることができる。
【0044】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれているバインダは、セラミックグリーンシートに含まれているバインダと同系であっても、同系でなくてもよいが、同系のバインダであることが好ましい。
【0045】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、誘電体粒子100重量部に対して、好ましくは、約2.5重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約4重量部ないし約15重量部、とくに好ましくは、約6重量部ないし約10重量部のバインダを含んでいる。
【0046】
可塑剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などを挙げることができる。スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートに含まれる可塑剤と同系であっても、同系でなくてもよい。
【0047】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部の可塑剤を含んでいる。
【0048】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれる剥離剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、パラフィン、ワックス、シリコーン油などを挙げることができる。
【0049】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約100重量部、好ましくは、約2重量部ないし約50重量部、より好ましくは、約5重量部ないし約20重量部の剥離剤を含んでいる。
【0050】
本発明において、電極層を形成するために用いられる電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、焼成後に、各種導電性金属や合金からなる導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、または、レジネートなどと、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルとを混練して、調製される。
【0051】
電極ペーストを製造する際に用いる導電体材料としては、Ni、Ni合金あるいはこれらの混合物が、好ましく用いられる。導電体材料の形状は、とくに限定されるものではなく、球状でも、鱗片状でも、あるいは、これらの形状のものが混合されていてもよい。また、導電体材料の平均粒子径は、とくに限定されるものではないが、通常、約0.1μmないし約2μm、好ましくは、約0.2μmないし約1μmの導電性材料が用いられる。
【0052】
有機ビヒクルに用いられるバインダは、とくに限定されるものではなく、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、あるいはは、これらの共重合体などを用いることができるが、とくに、ポリビニルブチラールなどのブチラール系バインダが好ましく用いられる。
【0053】
電極ペーストは、導電体材料100重量部に対して、好ましくは、約2.5重量部ないし約20重量部のバインダを含んでいる。
【0054】
溶剤としては、たとえば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシンなど、公知の溶剤を用いることができる。溶剤の含有量は、電極ペースト全体に対して、好ましくは、約20重量%ないし約55重量%である。
【0055】
接着性を改善するために、電極ペーストが、可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0056】
電極ペーストに含まれる可塑剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などを挙げることができる。電極ペーストは、バインダ100重量部に対して、好ましくは、約10重量部ないし約300重量部、さらに好ましくは、約10重量部ないし約200重量部の可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0057】
可塑剤の添加量が多すぎると、電極層の強度が著しく低下する傾向があり、好ましくない。
【0058】
本発明において、電極層は、好ましくは、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、形成される。
【0059】
具体的には、電極層は、約0.1μmないし約5μmの厚さに形成されることが好ましく、より好ましくは、約0.1μmないし約1.5μmである。
【0060】
本発明において、スペーサ層は、グラビアコーティング法によって、支持シートの表面に、誘電体ペーストを、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されるように、塗布して、形成される。
【0061】
本発明において、その表面に、スペーサ層が形成される支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0062】
支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0063】
本発明において、電極層は、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、形成される。
【0064】
本発明において、セラミックグリーンシートと、電極層およびスペーサ層との積層体は、電極層の乾燥後に、電極層およびスペーサ層の表面に、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成することによって、形成してもよいし、第二の支持シートの表面に、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成し、第三の支持シートの表面に、接着剤を塗布して、接着層を形成し、接着層の乾燥後に、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写し、接着層から、第三の支持シートを剥離し、第二の支持シート上に形成されたセラミックグリーンシートを、接着層を介して、電極層およびスペーサ層の表面に接着し、セラミックグリーンシートから、第二の支持シートを剥離して、形成してもよいが、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写して、積層体を形成することが好ましい。
【0065】
本発明において、その表面に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成する第二の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0066】
第二の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0067】
誘電体ペーストを、第二の支持シート上に塗布する方法は、とくに限定されるものではなく、エクストルージョンコーティング法やワイヤーバーコーティング法などを用いることができる。
【0068】
第二の支持シート上に、誘電体ペーストが塗布されて、形成された塗膜は、たとえば、約50℃ないし約100℃の温度で、約1分ないし約20分にわたって、乾燥され、第二の支持シート上に、セラミックグリーンシートが形成される。
【0069】
本発明において、乾燥後におけるセラミックグリーンシートの厚さが3μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5μm以下である。
【0070】
本発明において、その表面に、接着剤溶液を塗布して、接着層を形成するための第三の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0071】
第三の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0072】
本発明において、接着剤溶液は、バインダと、任意成分として、可塑剤、剥離剤および帯電防止剤とを含んでいる。
【0073】
接着剤溶液は、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子と同一組成の誘電体粒子を含んでいてもよい。接着剤溶液が、誘電体粒子を含んでいる場合には、誘電体粒子のバインダ重量に対する割合が、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子のバインダ重量に対する割合より小さいことが好ましい。
【0074】
接着剤溶液に含まれるバインダは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でなくてもよい。
【0075】
接着剤溶液に含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系でなくてもよい。
【0076】
可塑剤の含有量は、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部である。
【0077】
本発明において、好ましくは、接着剤溶液は、バインダの0.01重量%ないし15重量%の帯電防止剤を含み、さらに好ましくは、バインダの0.01重量%ないし10重量%の帯電防止剤を含んでいる。
【0078】
本発明において、接着剤溶液に含まれる帯電防止剤は、吸湿性を有する有機溶剤であればよく、たとえば、エチレングリコール;ポリエチレングリコール;2−3ブタンジオール;グリセリン;イミダゾリン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール誘導体系界面活性剤、カルボン酸アミジン塩系界面活性剤などの両性界面活性剤などが、接着剤溶液に含まれる帯電防止剤として使用することができる。
【0079】
これらの帯電防止剤の中では、少量で、静電気を防止することが可能であるとともに、小さい剥離力で、接着層から、第三の支持シートを剥離することが可能であるため、イミダゾリン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール誘導体系界面活性剤、カルボン酸アミジン塩系界面活性剤などの両性界面活性剤が好ましく、イミダゾリン系界面活性剤は、とくに小さな剥離力で、接着層から、第三の支持シートを剥離することができるため、とくに好ましい。
【0080】
接着剤溶液は、たとえば、バーコータ、エクストルージョンコータ、リバースコータ、ディップコーター、キスコーターなどによって、第三の支持シート上に塗布され、好ましくは、約0.02μmないし約0.3μm、より好ましくは、約0.02μmないし約0.1μmの厚さの接着層が形成される。接着層の厚さが、約0.02μm未満の場合には、接着力が低下し、一方、接着層の厚さが、約0.3μmを越えると、欠陥(隙間)の発生原因となり、好ましくない。
【0081】
接着層は、たとえば、室温(25℃)ないし約80℃の温度で、約1分ないし約5分にわたって、乾燥される。接着層の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0082】
第三の支持シート上に形成された接着層は、支持シート上に形成された電極層およびスペーサ層の表面に転写される。
【0083】
接着層の転写にあたっては、接着層が、支持シート上に形成されたスペーサ層および電極層の表面に接触した状態で、約40℃ないし約100℃の温度下で、接着層と、電極層およびスペーサ層とが、約0.2MPaないし約15MPaの圧力で、好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaの圧力で、加圧されて、接着層が、電極層およびスペーサ層の表面上に転写され、その後、第三の支持シートが接着層から剥離される。
【0084】
接着層を、電極層およびスペーサ層の表面に転写するにあたっては、電極層およびスペーサ層が形成された第二の支持シートと、接着層が形成された第三の支持シートを、プレス機を用いて、加圧しても、一対の加圧ローラを用いて、加圧してもよいが、一対の加圧ローラによって、第二の支持シートと第三の支持シートを加圧することが好ましい。
【0085】
次いで、セラミックグリーンシートと、電極層およびスペーサ層とが、接着層を介して、接着される。
【0086】
セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層は、接着層を介して、約40℃ないし約100℃の温度下で、約0.2MPaないし約15MPaの圧力で、好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaの圧力で、加圧されて、セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層が、接着層を介して、接着される。
【0087】
好ましくは、一対の加圧ローラを用いて、セラミックグリーンシートと、接着層、電極層およびスペーサ層とが加圧されて、セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層が、接着層を介して、接着される。
【0088】
セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層とが、接着層を介して、接着されると、第二の支持シートが、セラミックグリーンシートから剥離される。
【0089】
次いで、電極層およびスペーサ層の表面に、第三の支持シートの表面に形成された接着層を転写したのと同様にして、セラミックグリーンシートの表面に、接着層が転写される。
【0090】
こうして得られた積層体が、所定のサイズに、裁断されて、支持シート上に、スペーサ層、電極層、接着層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットが作製される。
【0091】
一方、支持シートの表面に形成されたスペーサ層および電極層上に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成する場合には、セラミックグリーンシートが乾燥された後に、同様にして、第三の支持シートの表面に形成された接着層が転写されて、積層体が形成され、こうして得られた積層体が、所定のサイズに、裁断されて、支持シート上に、スペーサ層、電極層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットが作製される。
【0092】
以上のようにして、作製された多数の積層体ユニットが積層されて、積層体ブロックが作製される。
【0093】
多数の積層体ユニットの積層にあたっては、まず、支持体が、基板上に固定され、支持体の表面に、セラミックグリーンシート上に形成された接着層が密着するように、積層体ユニットが位置決めされて、積層体ユニット上に圧力が加えられる。
【0094】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。
支持体の厚さは、積層体ユニットを支持可能な厚さであれば、とくに限定されるものではない。
【0095】
支持体の表面に、セラミックグリーンシート上に形成された接着層が接着されると、支持シートがスペーサ層から剥離される。
【0096】
さらに、新たな積層体ユニットが、セラミックグリーンシートの表面に形成された接着層が、支持体に接着された積層体ユニットのスペーサ層に密着するように、支持体に接着された積層体ユニット上に位置決めされて、新たな積層体ユニットが、加圧され、支持体に接着された積層体ユニット上に、新たな積層体ユニットが積層される。
【0097】
次いで、新たに積層された積層体ユニットの支持シートがスペーサ層から剥離される。
【0098】
同様にして、所定の数の積層体ユニットが積層されて、積層体ブロックが作製され、所定の数の積層体ブロックが積層されて、積層セラミック電子部品が製造される。
【発明の効果】
【0099】
本発明によれば、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0101】
積層セラミックコンデンサを製造するにあたっては、まず、セラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストが調製される。
【0102】
誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルを混練して、調製される。
【0103】
調製された誘電体ペーストは、たとえば、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、第一の支持シート上に塗布され、塗膜が形成される。
【0104】
第一の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。第一の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0105】
次いで、塗膜が、たとえば、約50℃ないし約100℃の温度で、約1分ないし約20分にわたって、乾燥され、第一の支持シート上に、セラミックグリーンシートが形成される。
【0106】
乾燥後におけるセラミックグリーンシート2の厚さは3μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5μm以下である。
【0107】
図1は、第一の支持シートの表面上に、セラミックグリーンシートが形成された状態を示す略一部断面図である。
【0108】
実際には、第一の支持シート1は、長尺状をなし、セラミックグリーンシート2は、長尺状の第一の支持シート1の表面に、連続的に形成される。
【0109】
一方、セラミックグリーンシート2とは別に、第二の支持シートが用意されて、第二の支持シート上に、スペーサ層および電極層が、互いに相補的なパターンで、形成される。
【0110】
図2は、その表面上に、スペーサ層5が形成された第二の支持シート4の略一部断面図である。
【0111】
実際には、第二の支持シート4は、長尺状をなし、スペーサ層5は、長尺状の第二の支持シート4の表面に形成される。
【0112】
第二の支持シート4の表面に、スペーサ層5を形成するにあたっては、まず、セラミックグリーンシート2を形成する場合と同様にして、スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストが調製される。
【0113】
スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストは、好ましくは、セラミックグリーンシート2に含まれている誘電体と同一組成の誘電体の粒子を含んでいる。
【0114】
スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストに含まれているバインダは、セラミックグリーンシート2に含まれているバインダを同系であっても、同系でなくてもよいが、同系のバインダであることが好ましい。
【0115】
こうして、誘電体ペーストが調製されると、グラビアコーター(図示せず)を用いて、第二の支持シート4上に、誘電体ペーストが塗布され、後述する電極層のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部5aが形成されたスペーサ層5が形成される。
【0116】
図2に示されるように、スペーサ層5の凹部5aは、それぞれ、略矩形状の断面を有している。
【0117】
スペーサ層5の厚さは、とくに限定されるものではないが、本実施態様においては、スペーサ層5は、スペーサ層5の厚さtsが、スペーサ層5の凹部5aの厚さtcと、スペーサ層5の凹部5a内に形成される電極層の厚さteの和に、実質的に等しくなるように、第二の支持体4上に形成される。
【0118】
第二の支持シート4としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0119】
第二の支持シート4の厚さは、とくに限定されるものではなく、第一の支持シート1の厚さと同じであっても、異なっていてもよいが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0120】
スペーサ層5の形成後、スペーサ層5は、たとえば、約70℃ないし120℃の温度で、約5分ないし約15分にわたって、乾燥される。スペーサ層5の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0121】
スペーサ層5が乾燥された後、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いて、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極ペーストが印刷され、焼成後に、内部電極層を構成する電極層が形成される。
【0122】
図3は、第二の支持シート4上に、スペーサ層5および電極層が形成された状態を示す略一部断面図である。
【0123】
電極層6の厚さteは、とくに限定されるものではないが、本実施態様においては、電極層6は、ts=(te+tc)を実質的に満たすように、スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成される。ここに、tsは、スペーサ層5の厚さ、tcは、スペーサ層5の凹部5aの厚さであり、teは、電極層の厚さである。
【0124】
具体的には、電極層6は、約0.1μmないし約5μmの厚さに形成されることが好ましく、より好ましくは、約0.1μmないし約1.5μmである。電極層6は、単一の層によって、構成されても、組成の異なる複数の層によって、構成されてもよい。
【0125】
電極層6を、スペーサ層5の複数の凹部5a内に形成するに際しては、まず、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、焼成後に、各種導電性金属や合金からなる導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、または、レジネートなどと、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルとを混練して、電極ペーストが調製される。
【0126】
電極ペーストを製造する際に用いる導電体材料としては、Ni、Ni合金あるいはこれらの混合物が、好ましく用いられる。
【0127】
導電体材料の平均粒子径は、とくに限定されるものではないが、通常、約0.1μmないし約2μm、好ましくは、約0.2μmないし約1μmの導電性材料が用いられる。
【0128】
こうして調製された電極ペーストが、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いて、スペーサ層5の多数の凹部5a内に印刷され、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極層6が形成される。
【0129】
スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成された電極層6は、たとえば、約70℃ないし120℃の温度で、約5分ないし約15分にわたって、乾燥される。電極層6の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0130】
こうして形成された電極層6は、スペーサ層5の多数の凹部5aが、電極層6のパターンと相補的なパターンで形成されているため、所定のパターンを有している。
【0131】
本実施態様においては、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6は、接着層を介して、接着されるように構成されており、セラミックグリーンシート2が形成された第一の支持シート1ならびにスペーサ層5および電極層6が形成された第二の支持シート4とは別に、さらに、第三の支持シートが用意され、第三の支持シート上に、接着層が形成されて、接着層シートが作製される。
【0132】
図4は、第三の支持シートの表面上に、接着層が形成された接着層シートの略一部断面図である。
【0133】
実際には、第三の支持シート9は、長尺状をなし、接着層10は、長尺状の第三の支持シート9の表面に、連続的に形成される。
【0134】
第三の支持シート9としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。第三の支持シート9の厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0135】
接着層10を形成するにあたっては、まず、接着剤溶液が調製される。
【0136】
本実施態様においては、接着剤溶液は、バインダ、可塑剤および帯電防止剤と、任意成分として、剥離剤とを含んでいる。
【0137】
接着剤溶液は、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子と同一組成の誘電体粒子を含んでいてもよい。接着剤溶液が、誘電体粒子を含んでいる場合には、誘電体粒子のバインダ重量に対する割合が、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子のバインダ重量に対する割合より小さいことが好ましい。
【0138】
接着剤溶液に含まれるバインダは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系のバインダであることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でないバインダであってもよい。
【0139】
接着剤溶液に含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系の可塑剤であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でない可塑剤であってもよい。
【0140】
可塑剤の含有量は、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部である。
【0141】
本実施態様において、接着剤溶液は、バインダの0.01重量%ないし15重量%の帯電防止剤を含んでいる。
【0142】
本実施態様においては、帯電防止剤として、イミダゾリン系界面活性剤が用いられている。
【0143】
こうして調製された接着剤溶液は、たとえば、バーコータ、エクストルージョンコータ、リバースコータ、ディップコーター、キスコーターなどによって、第三の支持シート9上に塗布され、好ましくは、約0.02μmないし約0.3μm、より好ましくは、約0.02μmないし約0.1μmの厚さの接着層10が形成される。接着層10の厚さが、約0.02μm未満の場合には、接着力が低下し、一方、接着層10の厚さが、約0.3μmを越えると、欠陥(隙間)の発生原因となり、好ましくない。
【0144】
接着層10は、たとえば、室温(25℃)ないし約80℃の温度で、約1分ないし約5分にわたって、乾燥され、接着シート11が形成される。接着層10の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0145】
図5は、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に接着させ、接着層10から第三の支持シート9を剥離する接着・剥離装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【0146】
図5に示されるように、本実施態様にかかる接着・剥離装置は、約40℃ないし約100℃の温度に保持された一対の加圧ローラ15、16を備えている。
【0147】
図5に示されるように、接着層10が形成された第三の支持シート9は、第三の支持シート9に加えられる引張り力によって、第三の支持シート9が、上方の加圧ローラ15に巻回されるように、斜め上方から、一対の加圧ローラ15、16間に供給され、スペーサ層5および電極層6が形成された第二の支持シート4は、第二の支持シート4が、下方の加圧ローラ16に接触し、スペーサ層5および電極層6が、第三の支持シート9上に形成された接着層10の表面に接触するように、略水平方向に、一対の加圧ローラ15、16間に供給される。
【0148】
第二の支持シート4および第三の支持シート9の供給速度は、たとえば、2m/秒に設定され、一対の加圧ローラ15、16のニップ圧力は、好ましくは、約0.2ないし約15MPa、より好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaに設定される。
【0149】
その結果、第三の支持シート9上に形成された接着層10が、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に接着される。
【0150】
図5に示されるように、接着層10が形成された第三の支持シート9は、一対の加圧ローラ15、16の間から、斜め上方に向けて、搬送され、したがって、第三の支持シート9が、スペーサ層5および電極層6に接着した接着層10から剥離される。
【0151】
接着層10から、第三の支持シート9を剥離する際、静電気が発生し、塵埃が付着したり、接着層10が、第三の支持シートに引き付けられ、所望のように、第三の支持シートを、接着層から剥離することが困難になることがあるが、本実施態様においては、接着層10が、バインダに対して、0.01重量%ないし15重量%のイミダゾリン系界面活性剤を含んでいるから、静電気の発生を効果的に防止することが可能になる。
【0152】
こうして、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に、接着層10が接着され、接着層10から、第三の支持シート9が剥離されると、スペーサ層5および電極層6が、接着層10を介して、第一の支持シート1上に形成されたセラミックグリーンシート2の表面に接着される。
【0153】
図6は、セラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6を接着する接着装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【0154】
図6に示されるように、本実施態様にかかる接着装置は、約40℃ないし約100℃の温度に保持された一対の加圧ローラ17、18を備え、スペーサ層5、電極層6および接着層10が形成された第二の支持シート4は、第二の支持シート4が上方の加圧ローラ17に接触するように、一対の加圧ローラ17、18間に供給され、セラミックグリーンシート2が形成された第一の支持シート1は、第一の支持シート1が下方の加圧ローラ18に接触するように、一対の加圧ローラ17、18間に供給される。
【0155】
本実施態様においては、加圧ローラ17は金属ローラによって構成され、加圧ローラ18はゴムローラによって構成されている。
【0156】
第一の支持シート1および第二の支持シート4の供給速度は、たとえば、2m/秒に設定され、一対の加圧ローラ17、18にニップ圧力は、好ましくは、約0.2ないし約15MPa、より好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaに設定される。
【0157】
本実施態様においては、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とは、接着層10を介して、接着され、従来のように、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6に含まれているバインダの粘着力や、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の変形を利用して、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とを接着してはいないから、低い圧力で、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とを接着することができる。
【0158】
したがって、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の変形を防止することが可能になるから、こうして得られたセラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の積層体を積層して、積層セラミックコンデンサを作製する際の積層精度を向上させることが可能になる。
【0159】
さらに、本実施態様においては、第二の支持シート4上に、形成された電極層6が乾燥した後に、接着層10を介して、セラミックグリーンシート2の表面に接着するように構成されているから、セラミックグリーンシート2の表面に、電極ペーストを印刷して、電極層6を形成する場合のように、電極ペーストが、セラミックグリーンシート2に含まれているバインダを溶解させ、あるいは、膨潤させることがなく、また、電極ペーストがセラミックグリーンシート2中に染み込むこともなく、所望のように、セラミックグリーンシート2の表面に、電極層6を形成することが可能になる。
【0160】
また、本実施態様においては、電極層6のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部5aが形成されたスペーサ層5が、第二の支持シート4上に、スペーサ層5の厚さtsが、凹部5aの厚さtcと電極層6の厚さteの和に等しくなるように形成され、電極層6が、スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成されているから、電極層6とスペーサ層5の表面には、実質的に段差は形成されず、したがって、多数のセラミックグリーンシート2と電極層6を積層して、積層セラミックコンデンサを作製する場合にも、多数のセラミックグリーンシート2と電極層6とが積層された積層体が変形を起こすことを、効果的に防止することが可能になる。
【0161】
以上のようにして、第一の支持シート1上に形成されたセラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6が接着されると、セラミックグリーンシート2から、第一の支持シート1が剥離される。
【0162】
こうして、第二の支持シート4上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10およびセラミックグリーンシート2が積層された積層体が形成される。
【0163】
次いで、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に、接着層シート11の接着層10を転写したのと全く同様にして、接着層シート11の接着層10が、セラミックグリーンシート2の表面に転写される。
【0164】
以上のようにして得られた積層体が、所定のサイズに裁断されて、第二の支持シート4上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10が積層された所定のサイズを有する積層体ユニットが作製される。
【0165】
図7は、こうして、所定のサイズに裁断された積層体ユニットの略断面図である。
【0166】
図7に示されるように、積層体ユニット20は、第二の支持シート4の表面上に形成され、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10を含んでいる。
【0167】
同様にして、第二の支持シート4の表面上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10およびセラミックグリーンシート2を積層し、セラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を転写して、それぞれが、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10を含む多数の積層体ユニット20が作製される。
【0168】
こうして作製された多数の積層体ユニット20を、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、積層することによって、積層セラミックコンデンサが作製される。
【0169】
図8は、積層体ユニット20の積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【0170】
図8に示されるように、積層体ユニット20の積層にあたっては、まず、多数の孔26が形成された基板25上に、支持体28がセットされる。
【0171】
支持体28としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。
【0172】
支持体28は、基板25に形成された多数の孔26を介して、エアにより吸引され、基板25上の所定の位置に固定される。
【0173】
図9は、積層体ユニット20の積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【0174】
次いで、図9に示されるように、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10の表面が、支持体28の表面に接触するように、積層体ユニット20が位置決めされて、積層体ユニット20の第二の支持シート44上に、プレス機などによって、圧力が加えられる。
【0175】
その結果、積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定された支持体28上に接着されて、積層される。
【0176】
図10は、積層体ユニット20の積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【0177】
積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定された支持体28上に接着されて、積層されると、図10に示されるように、第二の支持シート4が、積層体ユニット20のスペーサ層5から剥離される。
【0178】
こうして、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定されている支持シート20上に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5上に、さらに、積層体ユニット20が積層される。
【0179】
図11は、積層体ユニット20の積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【0180】
次いで、図11に示されるように、セラミックグリーンシート2上に転写された接着層10の表面が、基板25に固定された支持体28に接着された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面に接触するように、新たな積層体ユニット20が位置決めされて、新たな積層体ユニット20の第二の支持シート4上に、プレス機などによって、圧力が加えられる。
【0181】
その結果、新たな積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2上に転写された接着層10を介して、基板25上に固定されている支持体28上に接着された積層体ユニット20上に、積層される。
【0182】
図12は、積層体ユニット20の積層プロセスの第五のステップを示す略一部断面図である。
【0183】
新たな積層体ユニット20が、接着層10を介して、基板25上に固定されている支持体28上に接着された積層体ユニット20上に、積層されると、図12に示されるように、新たに積層された積層体ユニット20の第二の支持シート4が、積層体ユニット20のスペーサ層5から剥離される。
【0184】
同様にして、積層体ユニット20が、次々に積層されて、所定の数の積層体ユニット20が、基板25に固定された支持体28上に積層されて、積層体ブロックが作製される。
【0185】
所定の数の積層体ユニット20が、基板25に固定されている支持体28上に積層されて、積層体ブロックが作製されると、基板25に固定されている支持体28上に、所定の数の積層体ユニット20が積層された積層体ブロックが、積層セラミックコンデンサの外層上に積層される。
【0186】
図13は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【0187】
まず、多数の孔31が形成された基台30上に、表面に、接着層32が形成された外層33がセットされる。
【0188】
外層33は、基台30に形成された多数の孔31を介して、エアにより吸引され、基台30上の所定の位置に固定される。
【0189】
次いで、図13に示されるように、多数の孔26を介して、エアによって吸引され、基板25上の所定の位置に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロック40が、最後に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面が、外層33上に形成された接着層32の表面に接触するように、位置決めされる。
【0190】
その後、エアによる支持体28の吸引が停止されて、基板25が、積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られる。
【0191】
基板25が、支持体28から取り去られると、プレス機などによって、支持体28が加圧される。
【0192】
その結果、積層体ブロック40が、接着層32を介して、基台30上に固定された外層33上に接着されて、積層される。
【0193】
図14は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【0194】
積層体ブロック40が、接着層32を介して、基台30上に固定された外層33上に接着されて、積層されると、図14に示されるように、支持体28が、積層体ブロック40の接着層10から剥離される。
【0195】
こうして、接着層32を介して、基台30上に固定されている外層33上に、所定の数の積層体ユニット20が積層された積層体ブロック40が積層される。
【0196】
接着層32を介して、基台30上に固定されている外層33上に、積層体ブロック40が積層されると、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40の最上の積層体ユニット20の接着層10上に、さらに、図8ないし図12に示されたステップにしたがって、基板25に固定されている支持体28上に、所定の数の積層体ユニット20が積層されて、作製された新たな積層体ブロック40が積層される。
【0197】
図15は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【0198】
図15に示されるように、多数の孔26を介して、エアにより吸引され、基板25上の所定の位置に固定されている支持体28上に新たに積層された積層体ブロック40が、最後に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面が、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40の最上の積層体ユニット20の接着層10の表面に接触するように、位置決めされる。
【0199】
次いで、エアによる支持体28の吸引が停止されて、基板25が、積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られる。
【0200】
基板25が、支持体28から取り去られると、プレス機などによって、支持体28が加圧される。
【0201】
その結果、新たに積層された積層体ブロック40が、接着層10を介して、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40に接着されて、積層される。
【0202】
図16は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【0203】
基板25が、新たに積層された積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られると、図16に示されるように、支持体28が、新たに積層された積層体ブロック40の接着層10から剥離される。
【0204】
こうして、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40上に、接着層10を介して、新たに積層された積層体ブロック40が接着されて、積層される。
【0205】
同様にして、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロック40が、次々に積層されて、所定の数の積層体ブロック40、したがって、所定の数の積層体ユニット20が、積層セラミックコンデンサの外層33上に積層される。
【0206】
こうして、積層セラミックコンデンサの外層33上に、所定の数の積層体ユニット20が積層されると、他方の外層(図示せず)が、接着層を介して、接着されて、所定の数の積層体ユニット20を含む積層体が作成される。
【0207】
次いで、所定の数の積層体ユニット20を含む積層体が、所定のサイズに裁断されて、多数のセラミックグリーンチップが作製される。
【0208】
こうして作製されたセラミックグリーンチップは、還元ガス雰囲気下に置かれて、バインダが除去され、さらに、焼成される。
【0209】
次いで、焼成されたセラミックグリーンチップに、必要な外部電極などが取り付けられて、積層セラミックコンデンサが作製される。
【0210】
本実施態様によれば、スペーサ層5は、第二の支持シート4上に、グラビアコーターを用いて、形成され、電極層6のみが、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極ペーストが印刷されて、形成されているから、1回の印刷操作により、積層体ユニット20を作製することができ、したがって、積層体ユニット20を作製するのに要する時間を大幅に短縮することが可能になるから、積層セラミックコンデンサを、効率よく、製造することが可能になる。
【0211】
また、本実施態様によれば、電極層6は、電極ペーストとの親和力が低いポリエチレンテレフタレートなどによって形成された第二の支持シート4の表面上ではなく、電極ペーストとの親和力が高い誘電体ペーストによって形成されたスペーサ層5の凹部5aの表面上に形成されるように構成されているから、所望のように、電極層6を形成することが可能になる。
【実施例】
【0212】
以下、本発明の効果を、より一層明らかにするため、実施例および比較例を掲げる。
【0213】
実施例
スペーサ層用の誘電体ペーストの調製
以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0214】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する有機ビヒクルを加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合し、スペーサ層用の誘電体ペーストを調製した。
【0215】
ポリビニルブチラール樹脂(バインダ) 6重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 3重量部
(DOP:可塑剤)
エタノール 78重量部
n−プロパノール 78重量部
キシレン 14重量部
ミネラルスピリット 7重量部
分散剤 0.7重量部
【0216】
電極用のペーストの調製
100重量部の平均粒径が0.2μmのNi粒子に対して、以下の組成の溶液を加え、ボールミルによって、20時間にわたり、混合して、スラリーを得た。
【0217】
BaTiO3粉末(堺化学工業株式会社製:商品名「BT−02」)
20重量部
有機ビヒクル 58重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 50重量部
(DOP:可塑剤)
ターピネオール 5重量部
分散剤 1重量部
アセトン 45重量部
【0218】
ここに、有機ビヒクルは、8重量部のポリビニルブチラール樹脂を、92重量部のターピネオールに溶解して、調製した。
【0219】
こうして得られたスラリーを、40℃で、加熱し、攪拌して、余剰のアセトンを揮発させ、電極層用のペーストを調製した。
【0220】
スペーサ層の形成
スペーサ層用のペーストを、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、グラビアコーターを用いて、50m/分の速度で、塗布し、電極層のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部が形成されたスペーサ層を、1000mにわたって、形成した。
【0221】
スペーサ層の形成後、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、スペーサ層を乾燥した。
【0222】
乾燥後のスペーサ層の厚さtsは1.3μmであり、スペーサ層の凹部の厚さtcは0.3μmであった。スペーサ層用のペーストの塗布に要した時間は20分であった。
【0223】
電極層の形成
次いで、電極用のペーストを、スクリーン印刷機によって、スペーサ層の凹部に、1μmの厚さで印刷して、電極層を形成した。印刷速度は、約4m/分であり、電極用のペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0224】
電極用のペーストの印刷後、100℃に保持された乾燥炉内を、5分間にわたり、通過させて、電極層を乾燥した。
【0225】
乾燥後の電極層が形成された部分の厚さは、1.3μmであり、スペーサ層の厚さとほぼ一致していた。
【0226】
セラミックグリーンシート用の誘電体ペーストの調製
以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0227】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する有機ビヒクルを加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合し、セラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを調製した。
【0228】
ポリビニルブチラール樹脂(バインダ) 6重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 3重量部
(DOP:可塑剤)
エタノール 78重量部
n−プロパノール 78重量部
キシレン 14重量部
ミネラルスピリット 7重量部
分散剤 0.7重量部
【0229】
セラミックグリーンシートの形成
次いで、こうして調製したセラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターを用いて、電極層およびスペーサ層上に、0.7μmの厚さで、塗布し、セラミックグリーンシートを生成し、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製した。塗布速度は50m/秒であり、誘電体スラリーの塗布に要した時間は20分であった。
【0230】
セラミックグリーンシートの形成後、積層体ユニットを、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、セラミックグリーンシートを乾燥した。
【0231】
得られた積層体ユニットの厚さは、電極層が形成されている部分も、電極層が形成されていない部分も、ともに、2.0μmであった。
【0232】
セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要した時間は、約5時間であった。
比較例
【0233】
セラミックグリーンシートの形成
実施例と同様にして、調製したセラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、50m/分の速度で、塗布し、セラミックグリーンシートを、1000mにわたって、形成した。
【0234】
セラミックグリーンシート用の誘電体スラリーの塗布に要した時間は20分であった。
【0235】
セラミックグリーンシートの形成後、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、セラミックグリーンシートを乾燥した。
【0236】
乾燥後のセラミックグリーンシートの厚さは、1.0μmであった。
【0237】
電極層の形成
次いで、実施例と同様にして、調製した電極用のペーストを、スクリーン印刷機を用いて、乾燥厚さが1.0μmになるように、セラミックグリーンシート上に、所定のパターンで、印刷して、電極層を形成した。
【0238】
印刷速度は、約4m/分であり、電極用のペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0239】
スペーサ層の形成
さらに、以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0240】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する溶液を加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合して、スラリーを得た。
【0241】
有機ビヒクル 71重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 50重量部
(DOP:可塑剤)
ターピネオール 5重量部
分散剤 1重量部
アセトン 64重量部
【0242】
ここに、有機ビヒクルは、8重量部のポリビニルブチラール樹脂を、92重量部のターピネオールに溶解して、調製した。
【0243】
こうして得られたスラリーを、40℃で、加熱し、攪拌して、余剰のアセトンを揮発させ、スペーサ層用のペーストを調製した。
【0244】
こうして調製したスペーサ層用の誘電体ペーストを、スクリーン印刷機を用いて、電極層のパターンと相補的なパターンで、セラミックグリーンシート上に、1.0μmの厚さで、印刷して、スペーサ層を形成し、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製した。
【0245】
印刷速度は、約4m/分であり、スペーサ層用の誘電体ペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0246】
得られた積層体ユニットの厚さは、電極層が形成されている部分も、電極層が形成されていない部分も、ともに、2.0μmであった。
【0247】
セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要した時間は、約8時間40分であった。
【0248】
実施例および比較例から、本発明にしたがって、グラビアコーターを用いて、スペーサ層を形成した実施例においては、スクリーン印刷機を用いて、スペーサ層を形成した比較例に比して、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要する時間を、40%以上も短縮することができ、きわめて効率的に、積層セラミックコンデンサ用の積層体ユニットを作製し得ることが判明した。
【0249】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0250】
たとえば、前記実施態様においては、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、接着するように構成されているが、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、接着するように構成することは必ずしも必要でなく、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、セラミックグリーンシート2の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、接着するようにしてもよい。
【0251】
さらに、前記実施態様においては、セラミックグリーンシート2が、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6の表面に接着されて、積層体ユニット20が形成されているが、前記実施例と同様に、スペーサ層5および電極層6が乾燥した後に、誘電体ペーストを、スペーサ層5および電極層6の表面に塗布して、セラミックグリーンシート2を形成するようにしてもよい。
【0252】
また、前記実施態様および前記実施例においては、スペーサ層5および電極層6が、電極層6の厚さteとスペーサ層5の凹部5aの厚さtcの和が、スペーサ層5の厚さtsに等しくなるように形成されているが、スペーサ層5および電極層6が、好ましくは、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3、より好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、さらに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように形成されればよく、スペーサ層5および電極層6を、電極層6の厚さteとスペーサ層5の凹部5aの厚さtcの和が、スペーサ層5の厚さtsに等しくなるように形成することは必ずしも必要でない。
【0253】
さらに、前記実施態様においては、図6に示された接着装置を用いて、セラミックグリーンシート2を、接着層10を介して、電極層6およびスペーサ層5の表面に接着させ、しかる後に、第一の支持シート1をセラミックグリーンシート2から剥離しているが、図5に示された接着・剥離装置を用いて、セラミックグリーンシート2を、接着層10を介して、電極層6およびスペーサ層5の表面に接着させるとともに、セラミックグリーンシート2から、第一の支持シート1を剥離するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、その表面上に、セラミックグリーンシートが形成された第一の支持シートの略一部断面図である。
【図2】図2は、その表面上に、スペーサ層が形成された第二の支持シートの略一部断面図である。
【図3】図3は、その表面上に、スペーサ層および電極層が形成された第二の支持シートの略一部断面図である。
【図4】図4は、その表面上に、接着層が形成された第三の支持シートの略一部断面図である。
【図5】図5は、第三の支持シート上に形成された接着層を、第二の支持シート上に形成されたスペーサ層および電極層に接着し、接着層から第三の支持シートを剥離する接着・剥離装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【図6】図6は、セラミックグリーンシートの表面に、接着層を介して、スペーサ層および電極層を接着する接着装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【図7】図7は、第二の支持シート上に、スペーサ層、電極層、接着層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットの略一部断面図である。
【図8】図8は、積層体ユニットの積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【図9】図9は、積層体ユニットの積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【図10】図10は、積層体ユニットの積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【図11】図11は、積層体ユニットの積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【図12】図12は、積層体ユニットの積層プロセスの第五のステップを示す略一部断面図である。
【図13】図13は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【図14】図14は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【図15】図15は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【図16】図16は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【符号の説明】
【0255】
1 第一の支持シート
2 セラミックグリーンシート
4 第二の支持シート
5 スペーサ層
5a スペーサ層の凹部
6 電極層
9 第三の支持シート
10 接着層
11 接着層シート
15、16 加圧ローラ
17、18 加圧ローラ
20 積層体ユニット
25 基板
26 孔
28 支持体
30 基台
31 孔
32 接着層
33 積層セラミックコンデンサの外層
40 積層体ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法および積層セラミック電子部品用の積層体ユニットに関するものであり、さらに詳細には、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化にともなって、電子機器に実装される電子部品の小型化および高性能化が要求されるようになっており、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品においても、積層数の増加、積層単位の薄層化が強く要求されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサによって代表される積層セラミック電子部品を製造するには、まず、セラミック粉末と、アクリル樹脂、ブチラール樹脂などのバインダと、フタル酸エステル類、グリコール類、アジピン酸、燐酸エステル類などの可塑剤と、トルエン、メチルエチルケトン、アセトンなどの有機溶媒を混合分散して、誘電体ペーストを調製する。
【0004】
次いで、誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターやグラビアコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などによって形成された支持シート上に、塗布し、加熱して、塗膜を乾燥させ、セラミックグリーンシートを作製する。
【0005】
さらに、セラミックグリーンシート上に、ニッケルなどの電極ペーストを、スクリーン印刷機などによって、所定のパターンで、印刷し、乾燥させて、電極層を形成する。
【0006】
電極層が形成されると、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを支持シートから剥離し、所望の数のセラミックグリーンシートを積層して、加圧し、得られた積層体を、チップ状に切断して、グリーンチップを作製する。
【0007】
最後に、グリーンチップからバインダを除去して、グリーンチップを焼成し、外部電極を形成することによって、積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が製造される。
【0008】
電子部品の小型化および高性能化の要請によって、現在では、積層セラミックコンデンサの層間厚みを決定するセラミックグリーンシートの厚さを3μmあるいは2μm以下にすることが要求され、300以上のセラミックグリーンシートを積層することが要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の積層セラミックコンデンサにおいては、セラミックグリーンシートの表面に、所定のパターンで、電極層が形成されるため、各セラミックグリーンシートの表面の電極層が形成された領域と、電極層が形成されていない領域との間に、段差が形成され、したがって、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートを積層することが要求される場合には、多数のセラミックグリーンシートを、所望のように、接着させることが困難になるとともに、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートが積層された積層体が変形を起こすという問題があった。
【0010】
かかる問題を解決するため、誘電体ペーストを、電極層のパターンと相補的なパターンで、セラミックグリーンシートの表面に印刷し、スペーサ層を、隣り合った電極層間に形成して、各セラミックグリーンシートの表面における段差を解消させる方法が提案されている。
【0011】
このように、隣り合った電極層間のセラミックグリーンシートの表面に、印刷によって、スペーサ層を形成した場合には、各セラミックグリーンシートの表面における段差が解消され、電極層が形成された数多くのセラミックグリーンシートを積層して、積層セラミックコンデンサを作製する場合にも、所望のように、多数のセラミックグリーンシートを接着させることが可能になるとともに、電極層が形成された多数のセラミックグリーンシートが積層されて、形成された積層体が変形を起こすことを防止することができるという利点がある。
【0012】
しかしながら、このように、隣り合った電極層間のセラミックグリーンシートの表面に、印刷によって、スペーサ層を形成する場合には、電極層およびスペーサ層を形成するために、2回の印刷工程を繰り返すことが必要になり、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットの作製に要する時間が著しく長くなるという問題があった。
【0013】
ことに、電極層およびスペーサ層が印刷されるべきセラミックグリーンシートは、通常、1000mオーダーの長尺状をなしており、印刷速度は、通常、数m/分にすぎないことを考えると、電極層およびスペーサ層を形成するために、2回の印刷工程を繰り返すことは、積層体ユニットの製造効率を著しく低下させる結果を招き、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる方法の開発が望まれていた。
【0014】
したがって、本発明は、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のかかる目的は、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法によって達成される。
【0016】
本発明によれば、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、電極層およびスペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成するように構成されおり、グラビアコーティング法の塗布速度は、印刷速度に比して、はるかに高速であるから、短時間で、効率よく、スペーサ層と電極層を、実質的に段差が生じないように、支持シート上に形成することができ、したがって、効率よく、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットを作製することが可能になる。
【0017】
また、高速で、電極層やスペーサ層を印刷した場合には、電極層やスペーサ層の印刷領域が変形するため、電極層とスペーサ層を、互いに相補的なパターンで形成しても、段差を解消することが困難になるが、本発明によれば、スペーサ層は、グラビアコーティング法によって形成されているから、印刷に比して、はるかに高速で、変形のないスペーサ層を形成することができ、また、高速で、電極層を印刷する必要がなく、したがって、スペーサ層と電極層とを、所望のように、互いに相補的なパターンで形成することが可能になる。
【0018】
さらに、本発明によれば、電極層は、電極ペーストとの親和力が低いポリエチレンテレフタレートなどによって形成された支持シートの表面上ではなく、電極ペーストとの親和力が高い誘電体ペーストによって、形成されたスペーサ層の凹部の表面上に形成されるように構成されているから、所望のように、電極層を形成することが可能になる。
【0019】
本発明において、好ましくは、スペーサ層および電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、スペーサ層および電極層が形成される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様においては、スペーサ層は、tc≦0.5μmを満たすように、形成される。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様においては、スペーサ層は、ts/tc>2を満たすように、形成される。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、前記セラミックグリーンシートを形成するように構成されている。
【0023】
誘電体ペーストを塗布する方法は、とくに限定されるものではなく、エクストルージョンコーティング法などを用いることができる。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様においては、前記電極層および前記スペーサ層上に、接着層を介して、前記セラミックグリーンシートを形成するように構成されている。
【0025】
セラミックグリーンシートを、接着剤を介して、電極層およびスペーサ層上に形成する場合には、第二の支持シート上に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成しておき、一方で、第三の支持シート上に、接着剤溶液を塗布して、接着層を形成し、接着層の乾燥後に、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写して、第三の支持シートを剥離し、次いで、第二の支持シート上に形成されたセラミックグリーンシートを接着層に接着させ、第二の支持シートを剥離して、電極層およびスペーサ層上に、接着剤を介して、セラミックグリーンシートを形成することが好ましい。
【0026】
本発明の前記目的はまた、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に形成された電極層と、前記電極層および前記スペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えたことを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットによって達成される。
【0027】
本発明によれば、積層セラミック電子部品用の積層体ユニットは、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、スペーサ層の複数の凹部内に形成された電極層と、電極層およびスペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えているから、支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、スペーサ層を形成することができ、したがって、グラビアコーティング法の塗布速度は、印刷速度に比して、はるかに高速であるから、短時間で、効率よく、スペーサ層と電極層を、実質的に段差が生じないように、支持シート上に形成することができ、したがって、効率よく、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を含む積層体ユニットを作製することが可能になる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様においては、前記スペーサ層が、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されている。
【0029】
本発明において、好ましくは、スペーサ層および電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、スペーサ層および電極層が形成されている。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記セラミックグリーンシートが、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されている。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記セラミックグリーンシートが、接着剤を介して、前記電極層および前記スペーサ層上に形成されている。
【0032】
本発明において、セラミックグリーンシートを形成するために用いる誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルを混練して、調製される。
【0033】
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、これらを混合して、用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が約0.1μmないし約3.0μm程度の粉末として用いられる。誘電体原料の粒径は、セラミックグリーンシートの厚さより小さいことが好ましい。
【0034】
有機ビヒクルに用いられるバインダは、とくに限定されるものではなく、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いることができるが、セラミックグリーンシートを薄層化するためには、ポリビニルブチラールなどのブチラール系樹脂が、好ましく用いられる。
【0035】
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、とくに限定されるものではなく、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。
【0036】
本発明において、誘電体ペーストは、誘電体原料と、水中に水溶性バインダを溶解させたビヒクルを混練して、生成することもできる。
【0037】
水溶性バインダは、とくに限定されるものではなく、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。
【0038】
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、とくに限定されるものではなく、たとえば、約1重量%ないし約5重量%のバインダと、約10重量%ないし約50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
【0039】
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤の含有量は、バインダ樹脂100重量部に対して、約25重量部ないし約100重量部であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、生成されたセラミックグリーンシートが脆くなる傾向があり、多すぎると、可塑剤が滲み出して、取り扱いが困難になり、好ましくない。
【0040】
本発明において、スペーサ層を形成するために用いる誘電体ペーストは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストと同様にして、調製される。
【0041】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、好ましくは、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体と同一組成の誘電体の粒子を含んでいる。
【0042】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、誘電体粒子以外に、バインダと、任意成分として、可塑剤および剥離剤とを含んでいる。誘電体粒子の粒径は、セラミックグリーンシートに含まれる誘電体粒子の粒径と同じでもよいが、より小さいことが好ましい。
【0043】
バインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体、または、これらのエマルジョンを用いることができる。
【0044】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれているバインダは、セラミックグリーンシートに含まれているバインダと同系であっても、同系でなくてもよいが、同系のバインダであることが好ましい。
【0045】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、誘電体粒子100重量部に対して、好ましくは、約2.5重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約4重量部ないし約15重量部、とくに好ましくは、約6重量部ないし約10重量部のバインダを含んでいる。
【0046】
可塑剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などを挙げることができる。スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートに含まれる可塑剤と同系であっても、同系でなくてもよい。
【0047】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部の可塑剤を含んでいる。
【0048】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストに含まれる剥離剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、パラフィン、ワックス、シリコーン油などを挙げることができる。
【0049】
スペーサ層を形成するための誘電体ペーストは、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約100重量部、好ましくは、約2重量部ないし約50重量部、より好ましくは、約5重量部ないし約20重量部の剥離剤を含んでいる。
【0050】
本発明において、電極層を形成するために用いられる電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、焼成後に、各種導電性金属や合金からなる導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、または、レジネートなどと、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルとを混練して、調製される。
【0051】
電極ペーストを製造する際に用いる導電体材料としては、Ni、Ni合金あるいはこれらの混合物が、好ましく用いられる。導電体材料の形状は、とくに限定されるものではなく、球状でも、鱗片状でも、あるいは、これらの形状のものが混合されていてもよい。また、導電体材料の平均粒子径は、とくに限定されるものではないが、通常、約0.1μmないし約2μm、好ましくは、約0.2μmないし約1μmの導電性材料が用いられる。
【0052】
有機ビヒクルに用いられるバインダは、とくに限定されるものではなく、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、あるいはは、これらの共重合体などを用いることができるが、とくに、ポリビニルブチラールなどのブチラール系バインダが好ましく用いられる。
【0053】
電極ペーストは、導電体材料100重量部に対して、好ましくは、約2.5重量部ないし約20重量部のバインダを含んでいる。
【0054】
溶剤としては、たとえば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシンなど、公知の溶剤を用いることができる。溶剤の含有量は、電極ペースト全体に対して、好ましくは、約20重量%ないし約55重量%である。
【0055】
接着性を改善するために、電極ペーストが、可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0056】
電極ペーストに含まれる可塑剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などを挙げることができる。電極ペーストは、バインダ100重量部に対して、好ましくは、約10重量部ないし約300重量部、さらに好ましくは、約10重量部ないし約200重量部の可塑剤を含んでいることが好ましい。
【0057】
可塑剤の添加量が多すぎると、電極層の強度が著しく低下する傾向があり、好ましくない。
【0058】
本発明において、電極層は、好ましくは、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、スペーサ層の厚さ、tcは、スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、電極層の厚さである。)を満たすように、形成され、さらに好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、とくに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように、形成される。
【0059】
具体的には、電極層は、約0.1μmないし約5μmの厚さに形成されることが好ましく、より好ましくは、約0.1μmないし約1.5μmである。
【0060】
本発明において、スペーサ層は、グラビアコーティング法によって、支持シートの表面に、誘電体ペーストを、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されるように、塗布して、形成される。
【0061】
本発明において、その表面に、スペーサ層が形成される支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0062】
支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0063】
本発明において、電極層は、スペーサ層の複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、形成される。
【0064】
本発明において、セラミックグリーンシートと、電極層およびスペーサ層との積層体は、電極層の乾燥後に、電極層およびスペーサ層の表面に、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成することによって、形成してもよいし、第二の支持シートの表面に、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成し、第三の支持シートの表面に、接着剤を塗布して、接着層を形成し、接着層の乾燥後に、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写し、接着層から、第三の支持シートを剥離し、第二の支持シート上に形成されたセラミックグリーンシートを、接着層を介して、電極層およびスペーサ層の表面に接着し、セラミックグリーンシートから、第二の支持シートを剥離して、形成してもよいが、接着層を、電極層およびスペーサ層上に転写して、積層体を形成することが好ましい。
【0065】
本発明において、その表面に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成する第二の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0066】
第二の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0067】
誘電体ペーストを、第二の支持シート上に塗布する方法は、とくに限定されるものではなく、エクストルージョンコーティング法やワイヤーバーコーティング法などを用いることができる。
【0068】
第二の支持シート上に、誘電体ペーストが塗布されて、形成された塗膜は、たとえば、約50℃ないし約100℃の温度で、約1分ないし約20分にわたって、乾燥され、第二の支持シート上に、セラミックグリーンシートが形成される。
【0069】
本発明において、乾燥後におけるセラミックグリーンシートの厚さが3μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5μm以下である。
【0070】
本発明において、その表面に、接着剤溶液を塗布して、接着層を形成するための第三の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0071】
第三の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0072】
本発明において、接着剤溶液は、バインダと、任意成分として、可塑剤、剥離剤および帯電防止剤とを含んでいる。
【0073】
接着剤溶液は、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子と同一組成の誘電体粒子を含んでいてもよい。接着剤溶液が、誘電体粒子を含んでいる場合には、誘電体粒子のバインダ重量に対する割合が、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子のバインダ重量に対する割合より小さいことが好ましい。
【0074】
接着剤溶液に含まれるバインダは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でなくてもよい。
【0075】
接着剤溶液に含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系でなくてもよい。
【0076】
可塑剤の含有量は、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部である。
【0077】
本発明において、好ましくは、接着剤溶液は、バインダの0.01重量%ないし15重量%の帯電防止剤を含み、さらに好ましくは、バインダの0.01重量%ないし10重量%の帯電防止剤を含んでいる。
【0078】
本発明において、接着剤溶液に含まれる帯電防止剤は、吸湿性を有する有機溶剤であればよく、たとえば、エチレングリコール;ポリエチレングリコール;2−3ブタンジオール;グリセリン;イミダゾリン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール誘導体系界面活性剤、カルボン酸アミジン塩系界面活性剤などの両性界面活性剤などが、接着剤溶液に含まれる帯電防止剤として使用することができる。
【0079】
これらの帯電防止剤の中では、少量で、静電気を防止することが可能であるとともに、小さい剥離力で、接着層から、第三の支持シートを剥離することが可能であるため、イミダゾリン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール誘導体系界面活性剤、カルボン酸アミジン塩系界面活性剤などの両性界面活性剤が好ましく、イミダゾリン系界面活性剤は、とくに小さな剥離力で、接着層から、第三の支持シートを剥離することができるため、とくに好ましい。
【0080】
接着剤溶液は、たとえば、バーコータ、エクストルージョンコータ、リバースコータ、ディップコーター、キスコーターなどによって、第三の支持シート上に塗布され、好ましくは、約0.02μmないし約0.3μm、より好ましくは、約0.02μmないし約0.1μmの厚さの接着層が形成される。接着層の厚さが、約0.02μm未満の場合には、接着力が低下し、一方、接着層の厚さが、約0.3μmを越えると、欠陥(隙間)の発生原因となり、好ましくない。
【0081】
接着層は、たとえば、室温(25℃)ないし約80℃の温度で、約1分ないし約5分にわたって、乾燥される。接着層の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0082】
第三の支持シート上に形成された接着層は、支持シート上に形成された電極層およびスペーサ層の表面に転写される。
【0083】
接着層の転写にあたっては、接着層が、支持シート上に形成されたスペーサ層および電極層の表面に接触した状態で、約40℃ないし約100℃の温度下で、接着層と、電極層およびスペーサ層とが、約0.2MPaないし約15MPaの圧力で、好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaの圧力で、加圧されて、接着層が、電極層およびスペーサ層の表面上に転写され、その後、第三の支持シートが接着層から剥離される。
【0084】
接着層を、電極層およびスペーサ層の表面に転写するにあたっては、電極層およびスペーサ層が形成された第二の支持シートと、接着層が形成された第三の支持シートを、プレス機を用いて、加圧しても、一対の加圧ローラを用いて、加圧してもよいが、一対の加圧ローラによって、第二の支持シートと第三の支持シートを加圧することが好ましい。
【0085】
次いで、セラミックグリーンシートと、電極層およびスペーサ層とが、接着層を介して、接着される。
【0086】
セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層は、接着層を介して、約40℃ないし約100℃の温度下で、約0.2MPaないし約15MPaの圧力で、好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaの圧力で、加圧されて、セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層が、接着層を介して、接着される。
【0087】
好ましくは、一対の加圧ローラを用いて、セラミックグリーンシートと、接着層、電極層およびスペーサ層とが加圧されて、セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層が、接着層を介して、接着される。
【0088】
セラミックグリーンシートと、スペーサ層および電極層とが、接着層を介して、接着されると、第二の支持シートが、セラミックグリーンシートから剥離される。
【0089】
次いで、電極層およびスペーサ層の表面に、第三の支持シートの表面に形成された接着層を転写したのと同様にして、セラミックグリーンシートの表面に、接着層が転写される。
【0090】
こうして得られた積層体が、所定のサイズに、裁断されて、支持シート上に、スペーサ層、電極層、接着層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットが作製される。
【0091】
一方、支持シートの表面に形成されたスペーサ層および電極層上に、誘電体ペーストを塗布して、セラミックグリーンシートを形成する場合には、セラミックグリーンシートが乾燥された後に、同様にして、第三の支持シートの表面に形成された接着層が転写されて、積層体が形成され、こうして得られた積層体が、所定のサイズに、裁断されて、支持シート上に、スペーサ層、電極層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットが作製される。
【0092】
以上のようにして、作製された多数の積層体ユニットが積層されて、積層体ブロックが作製される。
【0093】
多数の積層体ユニットの積層にあたっては、まず、支持体が、基板上に固定され、支持体の表面に、セラミックグリーンシート上に形成された接着層が密着するように、積層体ユニットが位置決めされて、積層体ユニット上に圧力が加えられる。
【0094】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。
支持体の厚さは、積層体ユニットを支持可能な厚さであれば、とくに限定されるものではない。
【0095】
支持体の表面に、セラミックグリーンシート上に形成された接着層が接着されると、支持シートがスペーサ層から剥離される。
【0096】
さらに、新たな積層体ユニットが、セラミックグリーンシートの表面に形成された接着層が、支持体に接着された積層体ユニットのスペーサ層に密着するように、支持体に接着された積層体ユニット上に位置決めされて、新たな積層体ユニットが、加圧され、支持体に接着された積層体ユニット上に、新たな積層体ユニットが積層される。
【0097】
次いで、新たに積層された積層体ユニットの支持シートがスペーサ層から剥離される。
【0098】
同様にして、所定の数の積層体ユニットが積層されて、積層体ブロックが作製され、所定の数の積層体ブロックが積層されて、積層セラミック電子部品が製造される。
【発明の効果】
【0099】
本発明によれば、効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを製造することができる積層体ユニットの製造方法および効率よく、表面の段差が解消された積層セラミック電子部品用の積層体ユニットを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0101】
積層セラミックコンデンサを製造するにあたっては、まず、セラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストが調製される。
【0102】
誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルを混練して、調製される。
【0103】
調製された誘電体ペーストは、たとえば、エクストルージョンコーターやワイヤーバーコーターなどを用いて、第一の支持シート上に塗布され、塗膜が形成される。
【0104】
第一の支持シートとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。第一の支持シートの厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0105】
次いで、塗膜が、たとえば、約50℃ないし約100℃の温度で、約1分ないし約20分にわたって、乾燥され、第一の支持シート上に、セラミックグリーンシートが形成される。
【0106】
乾燥後におけるセラミックグリーンシート2の厚さは3μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5μm以下である。
【0107】
図1は、第一の支持シートの表面上に、セラミックグリーンシートが形成された状態を示す略一部断面図である。
【0108】
実際には、第一の支持シート1は、長尺状をなし、セラミックグリーンシート2は、長尺状の第一の支持シート1の表面に、連続的に形成される。
【0109】
一方、セラミックグリーンシート2とは別に、第二の支持シートが用意されて、第二の支持シート上に、スペーサ層および電極層が、互いに相補的なパターンで、形成される。
【0110】
図2は、その表面上に、スペーサ層5が形成された第二の支持シート4の略一部断面図である。
【0111】
実際には、第二の支持シート4は、長尺状をなし、スペーサ層5は、長尺状の第二の支持シート4の表面に形成される。
【0112】
第二の支持シート4の表面に、スペーサ層5を形成するにあたっては、まず、セラミックグリーンシート2を形成する場合と同様にして、スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストが調製される。
【0113】
スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストは、好ましくは、セラミックグリーンシート2に含まれている誘電体と同一組成の誘電体の粒子を含んでいる。
【0114】
スペーサ層5を形成するための誘電体ペーストに含まれているバインダは、セラミックグリーンシート2に含まれているバインダを同系であっても、同系でなくてもよいが、同系のバインダであることが好ましい。
【0115】
こうして、誘電体ペーストが調製されると、グラビアコーター(図示せず)を用いて、第二の支持シート4上に、誘電体ペーストが塗布され、後述する電極層のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部5aが形成されたスペーサ層5が形成される。
【0116】
図2に示されるように、スペーサ層5の凹部5aは、それぞれ、略矩形状の断面を有している。
【0117】
スペーサ層5の厚さは、とくに限定されるものではないが、本実施態様においては、スペーサ層5は、スペーサ層5の厚さtsが、スペーサ層5の凹部5aの厚さtcと、スペーサ層5の凹部5a内に形成される電極層の厚さteの和に、実質的に等しくなるように、第二の支持体4上に形成される。
【0118】
第二の支持シート4としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。
【0119】
第二の支持シート4の厚さは、とくに限定されるものではなく、第一の支持シート1の厚さと同じであっても、異なっていてもよいが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0120】
スペーサ層5の形成後、スペーサ層5は、たとえば、約70℃ないし120℃の温度で、約5分ないし約15分にわたって、乾燥される。スペーサ層5の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0121】
スペーサ層5が乾燥された後、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いて、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極ペーストが印刷され、焼成後に、内部電極層を構成する電極層が形成される。
【0122】
図3は、第二の支持シート4上に、スペーサ層5および電極層が形成された状態を示す略一部断面図である。
【0123】
電極層6の厚さteは、とくに限定されるものではないが、本実施態様においては、電極層6は、ts=(te+tc)を実質的に満たすように、スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成される。ここに、tsは、スペーサ層5の厚さ、tcは、スペーサ層5の凹部5aの厚さであり、teは、電極層の厚さである。
【0124】
具体的には、電極層6は、約0.1μmないし約5μmの厚さに形成されることが好ましく、より好ましくは、約0.1μmないし約1.5μmである。電極層6は、単一の層によって、構成されても、組成の異なる複数の層によって、構成されてもよい。
【0125】
電極層6を、スペーサ層5の複数の凹部5a内に形成するに際しては、まず、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、焼成後に、各種導電性金属や合金からなる導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、または、レジネートなどと、有機溶剤中にバインダを溶解させた有機ビヒクルとを混練して、電極ペーストが調製される。
【0126】
電極ペーストを製造する際に用いる導電体材料としては、Ni、Ni合金あるいはこれらの混合物が、好ましく用いられる。
【0127】
導電体材料の平均粒子径は、とくに限定されるものではないが、通常、約0.1μmないし約2μm、好ましくは、約0.2μmないし約1μmの導電性材料が用いられる。
【0128】
こうして調製された電極ペーストが、スクリーン印刷機やグラビア印刷機などの印刷機を用いて、スペーサ層5の多数の凹部5a内に印刷され、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極層6が形成される。
【0129】
スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成された電極層6は、たとえば、約70℃ないし120℃の温度で、約5分ないし約15分にわたって、乾燥される。電極層6の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0130】
こうして形成された電極層6は、スペーサ層5の多数の凹部5aが、電極層6のパターンと相補的なパターンで形成されているため、所定のパターンを有している。
【0131】
本実施態様においては、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6は、接着層を介して、接着されるように構成されており、セラミックグリーンシート2が形成された第一の支持シート1ならびにスペーサ層5および電極層6が形成された第二の支持シート4とは別に、さらに、第三の支持シートが用意され、第三の支持シート上に、接着層が形成されて、接着層シートが作製される。
【0132】
図4は、第三の支持シートの表面上に、接着層が形成された接着層シートの略一部断面図である。
【0133】
実際には、第三の支持シート9は、長尺状をなし、接着層10は、長尺状の第三の支持シート9の表面に、連続的に形成される。
【0134】
第三の支持シート9としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、その表面に、シリコン樹脂、アルキド樹脂などがコーティングされる。第三の支持シート9の厚さは、とくに限定されるものではないが、好ましくは、約5μmないし約100μmである。
【0135】
接着層10を形成するにあたっては、まず、接着剤溶液が調製される。
【0136】
本実施態様においては、接着剤溶液は、バインダ、可塑剤および帯電防止剤と、任意成分として、剥離剤とを含んでいる。
【0137】
接着剤溶液は、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子と同一組成の誘電体粒子を含んでいてもよい。接着剤溶液が、誘電体粒子を含んでいる場合には、誘電体粒子のバインダ重量に対する割合が、セラミックグリーンシートに含まれている誘電体粒子のバインダ重量に対する割合より小さいことが好ましい。
【0138】
接着剤溶液に含まれるバインダは、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系のバインダであることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でないバインダであってもよい。
【0139】
接着剤溶液に含まれる可塑剤は、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれる可塑剤と同系の可塑剤であることが好ましいが、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストに含まれるバインダと同系でない可塑剤であってもよい。
【0140】
可塑剤の含有量は、バインダ100重量部に対して、約0重量部ないし約200重量部、好ましくは、約20重量部ないし約200重量部、さらに好ましくは、約50重量部ないし約100重量部である。
【0141】
本実施態様において、接着剤溶液は、バインダの0.01重量%ないし15重量%の帯電防止剤を含んでいる。
【0142】
本実施態様においては、帯電防止剤として、イミダゾリン系界面活性剤が用いられている。
【0143】
こうして調製された接着剤溶液は、たとえば、バーコータ、エクストルージョンコータ、リバースコータ、ディップコーター、キスコーターなどによって、第三の支持シート9上に塗布され、好ましくは、約0.02μmないし約0.3μm、より好ましくは、約0.02μmないし約0.1μmの厚さの接着層10が形成される。接着層10の厚さが、約0.02μm未満の場合には、接着力が低下し、一方、接着層10の厚さが、約0.3μmを越えると、欠陥(隙間)の発生原因となり、好ましくない。
【0144】
接着層10は、たとえば、室温(25℃)ないし約80℃の温度で、約1分ないし約5分にわたって、乾燥され、接着シート11が形成される。接着層10の乾燥条件は、とくに限定されるものではない。
【0145】
図5は、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に接着させ、接着層10から第三の支持シート9を剥離する接着・剥離装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【0146】
図5に示されるように、本実施態様にかかる接着・剥離装置は、約40℃ないし約100℃の温度に保持された一対の加圧ローラ15、16を備えている。
【0147】
図5に示されるように、接着層10が形成された第三の支持シート9は、第三の支持シート9に加えられる引張り力によって、第三の支持シート9が、上方の加圧ローラ15に巻回されるように、斜め上方から、一対の加圧ローラ15、16間に供給され、スペーサ層5および電極層6が形成された第二の支持シート4は、第二の支持シート4が、下方の加圧ローラ16に接触し、スペーサ層5および電極層6が、第三の支持シート9上に形成された接着層10の表面に接触するように、略水平方向に、一対の加圧ローラ15、16間に供給される。
【0148】
第二の支持シート4および第三の支持シート9の供給速度は、たとえば、2m/秒に設定され、一対の加圧ローラ15、16のニップ圧力は、好ましくは、約0.2ないし約15MPa、より好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaに設定される。
【0149】
その結果、第三の支持シート9上に形成された接着層10が、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に接着される。
【0150】
図5に示されるように、接着層10が形成された第三の支持シート9は、一対の加圧ローラ15、16の間から、斜め上方に向けて、搬送され、したがって、第三の支持シート9が、スペーサ層5および電極層6に接着した接着層10から剥離される。
【0151】
接着層10から、第三の支持シート9を剥離する際、静電気が発生し、塵埃が付着したり、接着層10が、第三の支持シートに引き付けられ、所望のように、第三の支持シートを、接着層から剥離することが困難になることがあるが、本実施態様においては、接着層10が、バインダに対して、0.01重量%ないし15重量%のイミダゾリン系界面活性剤を含んでいるから、静電気の発生を効果的に防止することが可能になる。
【0152】
こうして、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に、接着層10が接着され、接着層10から、第三の支持シート9が剥離されると、スペーサ層5および電極層6が、接着層10を介して、第一の支持シート1上に形成されたセラミックグリーンシート2の表面に接着される。
【0153】
図6は、セラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6を接着する接着装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【0154】
図6に示されるように、本実施態様にかかる接着装置は、約40℃ないし約100℃の温度に保持された一対の加圧ローラ17、18を備え、スペーサ層5、電極層6および接着層10が形成された第二の支持シート4は、第二の支持シート4が上方の加圧ローラ17に接触するように、一対の加圧ローラ17、18間に供給され、セラミックグリーンシート2が形成された第一の支持シート1は、第一の支持シート1が下方の加圧ローラ18に接触するように、一対の加圧ローラ17、18間に供給される。
【0155】
本実施態様においては、加圧ローラ17は金属ローラによって構成され、加圧ローラ18はゴムローラによって構成されている。
【0156】
第一の支持シート1および第二の支持シート4の供給速度は、たとえば、2m/秒に設定され、一対の加圧ローラ17、18にニップ圧力は、好ましくは、約0.2ないし約15MPa、より好ましくは、約0.2MPaないし約6MPaに設定される。
【0157】
本実施態様においては、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とは、接着層10を介して、接着され、従来のように、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6に含まれているバインダの粘着力や、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の変形を利用して、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とを接着してはいないから、低い圧力で、セラミックグリーンシート2と、スペーサ層5および電極層6とを接着することができる。
【0158】
したがって、セラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の変形を防止することが可能になるから、こうして得られたセラミックグリーンシート2、スペーサ層5および電極層6の積層体を積層して、積層セラミックコンデンサを作製する際の積層精度を向上させることが可能になる。
【0159】
さらに、本実施態様においては、第二の支持シート4上に、形成された電極層6が乾燥した後に、接着層10を介して、セラミックグリーンシート2の表面に接着するように構成されているから、セラミックグリーンシート2の表面に、電極ペーストを印刷して、電極層6を形成する場合のように、電極ペーストが、セラミックグリーンシート2に含まれているバインダを溶解させ、あるいは、膨潤させることがなく、また、電極ペーストがセラミックグリーンシート2中に染み込むこともなく、所望のように、セラミックグリーンシート2の表面に、電極層6を形成することが可能になる。
【0160】
また、本実施態様においては、電極層6のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部5aが形成されたスペーサ層5が、第二の支持シート4上に、スペーサ層5の厚さtsが、凹部5aの厚さtcと電極層6の厚さteの和に等しくなるように形成され、電極層6が、スペーサ層5の多数の凹部5a内に形成されているから、電極層6とスペーサ層5の表面には、実質的に段差は形成されず、したがって、多数のセラミックグリーンシート2と電極層6を積層して、積層セラミックコンデンサを作製する場合にも、多数のセラミックグリーンシート2と電極層6とが積層された積層体が変形を起こすことを、効果的に防止することが可能になる。
【0161】
以上のようにして、第一の支持シート1上に形成されたセラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6が接着されると、セラミックグリーンシート2から、第一の支持シート1が剥離される。
【0162】
こうして、第二の支持シート4上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10およびセラミックグリーンシート2が積層された積層体が形成される。
【0163】
次いで、第二の支持シート4上に形成されたスペーサ層5および電極層6の表面に、接着層シート11の接着層10を転写したのと全く同様にして、接着層シート11の接着層10が、セラミックグリーンシート2の表面に転写される。
【0164】
以上のようにして得られた積層体が、所定のサイズに裁断されて、第二の支持シート4上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10が積層された所定のサイズを有する積層体ユニットが作製される。
【0165】
図7は、こうして、所定のサイズに裁断された積層体ユニットの略断面図である。
【0166】
図7に示されるように、積層体ユニット20は、第二の支持シート4の表面上に形成され、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10を含んでいる。
【0167】
同様にして、第二の支持シート4の表面上に、スペーサ層5、電極層6、接着層10およびセラミックグリーンシート2を積層し、セラミックグリーンシート2の表面に、接着層10を転写して、それぞれが、スペーサ層5、電極層6、接着層10、セラミックグリーンシート2および接着層10を含む多数の積層体ユニット20が作製される。
【0168】
こうして作製された多数の積層体ユニット20を、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、積層することによって、積層セラミックコンデンサが作製される。
【0169】
図8は、積層体ユニット20の積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【0170】
図8に示されるように、積層体ユニット20の積層にあたっては、まず、多数の孔26が形成された基板25上に、支持体28がセットされる。
【0171】
支持体28としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。
【0172】
支持体28は、基板25に形成された多数の孔26を介して、エアにより吸引され、基板25上の所定の位置に固定される。
【0173】
図9は、積層体ユニット20の積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【0174】
次いで、図9に示されるように、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10の表面が、支持体28の表面に接触するように、積層体ユニット20が位置決めされて、積層体ユニット20の第二の支持シート44上に、プレス機などによって、圧力が加えられる。
【0175】
その結果、積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定された支持体28上に接着されて、積層される。
【0176】
図10は、積層体ユニット20の積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【0177】
積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定された支持体28上に接着されて、積層されると、図10に示されるように、第二の支持シート4が、積層体ユニット20のスペーサ層5から剥離される。
【0178】
こうして、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、基板25上に固定されている支持シート20上に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5上に、さらに、積層体ユニット20が積層される。
【0179】
図11は、積層体ユニット20の積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【0180】
次いで、図11に示されるように、セラミックグリーンシート2上に転写された接着層10の表面が、基板25に固定された支持体28に接着された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面に接触するように、新たな積層体ユニット20が位置決めされて、新たな積層体ユニット20の第二の支持シート4上に、プレス機などによって、圧力が加えられる。
【0181】
その結果、新たな積層体ユニット20が、セラミックグリーンシート2上に転写された接着層10を介して、基板25上に固定されている支持体28上に接着された積層体ユニット20上に、積層される。
【0182】
図12は、積層体ユニット20の積層プロセスの第五のステップを示す略一部断面図である。
【0183】
新たな積層体ユニット20が、接着層10を介して、基板25上に固定されている支持体28上に接着された積層体ユニット20上に、積層されると、図12に示されるように、新たに積層された積層体ユニット20の第二の支持シート4が、積層体ユニット20のスペーサ層5から剥離される。
【0184】
同様にして、積層体ユニット20が、次々に積層されて、所定の数の積層体ユニット20が、基板25に固定された支持体28上に積層されて、積層体ブロックが作製される。
【0185】
所定の数の積層体ユニット20が、基板25に固定されている支持体28上に積層されて、積層体ブロックが作製されると、基板25に固定されている支持体28上に、所定の数の積層体ユニット20が積層された積層体ブロックが、積層セラミックコンデンサの外層上に積層される。
【0186】
図13は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【0187】
まず、多数の孔31が形成された基台30上に、表面に、接着層32が形成された外層33がセットされる。
【0188】
外層33は、基台30に形成された多数の孔31を介して、エアにより吸引され、基台30上の所定の位置に固定される。
【0189】
次いで、図13に示されるように、多数の孔26を介して、エアによって吸引され、基板25上の所定の位置に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロック40が、最後に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面が、外層33上に形成された接着層32の表面に接触するように、位置決めされる。
【0190】
その後、エアによる支持体28の吸引が停止されて、基板25が、積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られる。
【0191】
基板25が、支持体28から取り去られると、プレス機などによって、支持体28が加圧される。
【0192】
その結果、積層体ブロック40が、接着層32を介して、基台30上に固定された外層33上に接着されて、積層される。
【0193】
図14は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【0194】
積層体ブロック40が、接着層32を介して、基台30上に固定された外層33上に接着されて、積層されると、図14に示されるように、支持体28が、積層体ブロック40の接着層10から剥離される。
【0195】
こうして、接着層32を介して、基台30上に固定されている外層33上に、所定の数の積層体ユニット20が積層された積層体ブロック40が積層される。
【0196】
接着層32を介して、基台30上に固定されている外層33上に、積層体ブロック40が積層されると、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40の最上の積層体ユニット20の接着層10上に、さらに、図8ないし図12に示されたステップにしたがって、基板25に固定されている支持体28上に、所定の数の積層体ユニット20が積層されて、作製された新たな積層体ブロック40が積層される。
【0197】
図15は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【0198】
図15に示されるように、多数の孔26を介して、エアにより吸引され、基板25上の所定の位置に固定されている支持体28上に新たに積層された積層体ブロック40が、最後に積層された積層体ユニット20のスペーサ層5の表面が、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40の最上の積層体ユニット20の接着層10の表面に接触するように、位置決めされる。
【0199】
次いで、エアによる支持体28の吸引が停止されて、基板25が、積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られる。
【0200】
基板25が、支持体28から取り去られると、プレス機などによって、支持体28が加圧される。
【0201】
その結果、新たに積層された積層体ブロック40が、接着層10を介して、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40に接着されて、積層される。
【0202】
図16は、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【0203】
基板25が、新たに積層された積層体ブロック40を支持している支持体28から取り去られると、図16に示されるように、支持体28が、新たに積層された積層体ブロック40の接着層10から剥離される。
【0204】
こうして、基台30上に固定されている外層33上に積層された積層体ブロック40上に、接着層10を介して、新たに積層された積層体ブロック40が接着されて、積層される。
【0205】
同様にして、基板25に固定されている支持体28上に積層された積層体ブロック40が、次々に積層されて、所定の数の積層体ブロック40、したがって、所定の数の積層体ユニット20が、積層セラミックコンデンサの外層33上に積層される。
【0206】
こうして、積層セラミックコンデンサの外層33上に、所定の数の積層体ユニット20が積層されると、他方の外層(図示せず)が、接着層を介して、接着されて、所定の数の積層体ユニット20を含む積層体が作成される。
【0207】
次いで、所定の数の積層体ユニット20を含む積層体が、所定のサイズに裁断されて、多数のセラミックグリーンチップが作製される。
【0208】
こうして作製されたセラミックグリーンチップは、還元ガス雰囲気下に置かれて、バインダが除去され、さらに、焼成される。
【0209】
次いで、焼成されたセラミックグリーンチップに、必要な外部電極などが取り付けられて、積層セラミックコンデンサが作製される。
【0210】
本実施態様によれば、スペーサ層5は、第二の支持シート4上に、グラビアコーターを用いて、形成され、電極層6のみが、スペーサ層5の多数の凹部5a内に、電極ペーストが印刷されて、形成されているから、1回の印刷操作により、積層体ユニット20を作製することができ、したがって、積層体ユニット20を作製するのに要する時間を大幅に短縮することが可能になるから、積層セラミックコンデンサを、効率よく、製造することが可能になる。
【0211】
また、本実施態様によれば、電極層6は、電極ペーストとの親和力が低いポリエチレンテレフタレートなどによって形成された第二の支持シート4の表面上ではなく、電極ペーストとの親和力が高い誘電体ペーストによって形成されたスペーサ層5の凹部5aの表面上に形成されるように構成されているから、所望のように、電極層6を形成することが可能になる。
【実施例】
【0212】
以下、本発明の効果を、より一層明らかにするため、実施例および比較例を掲げる。
【0213】
実施例
スペーサ層用の誘電体ペーストの調製
以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0214】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する有機ビヒクルを加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合し、スペーサ層用の誘電体ペーストを調製した。
【0215】
ポリビニルブチラール樹脂(バインダ) 6重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 3重量部
(DOP:可塑剤)
エタノール 78重量部
n−プロパノール 78重量部
キシレン 14重量部
ミネラルスピリット 7重量部
分散剤 0.7重量部
【0216】
電極用のペーストの調製
100重量部の平均粒径が0.2μmのNi粒子に対して、以下の組成の溶液を加え、ボールミルによって、20時間にわたり、混合して、スラリーを得た。
【0217】
BaTiO3粉末(堺化学工業株式会社製:商品名「BT−02」)
20重量部
有機ビヒクル 58重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 50重量部
(DOP:可塑剤)
ターピネオール 5重量部
分散剤 1重量部
アセトン 45重量部
【0218】
ここに、有機ビヒクルは、8重量部のポリビニルブチラール樹脂を、92重量部のターピネオールに溶解して、調製した。
【0219】
こうして得られたスラリーを、40℃で、加熱し、攪拌して、余剰のアセトンを揮発させ、電極層用のペーストを調製した。
【0220】
スペーサ層の形成
スペーサ層用のペーストを、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、グラビアコーターを用いて、50m/分の速度で、塗布し、電極層のパターンと相補的なパターンで、多数の凹部が形成されたスペーサ層を、1000mにわたって、形成した。
【0221】
スペーサ層の形成後、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、スペーサ層を乾燥した。
【0222】
乾燥後のスペーサ層の厚さtsは1.3μmであり、スペーサ層の凹部の厚さtcは0.3μmであった。スペーサ層用のペーストの塗布に要した時間は20分であった。
【0223】
電極層の形成
次いで、電極用のペーストを、スクリーン印刷機によって、スペーサ層の凹部に、1μmの厚さで印刷して、電極層を形成した。印刷速度は、約4m/分であり、電極用のペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0224】
電極用のペーストの印刷後、100℃に保持された乾燥炉内を、5分間にわたり、通過させて、電極層を乾燥した。
【0225】
乾燥後の電極層が形成された部分の厚さは、1.3μmであり、スペーサ層の厚さとほぼ一致していた。
【0226】
セラミックグリーンシート用の誘電体ペーストの調製
以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0227】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する有機ビヒクルを加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合し、セラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを調製した。
【0228】
ポリビニルブチラール樹脂(バインダ) 6重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 3重量部
(DOP:可塑剤)
エタノール 78重量部
n−プロパノール 78重量部
キシレン 14重量部
ミネラルスピリット 7重量部
分散剤 0.7重量部
【0229】
セラミックグリーンシートの形成
次いで、こうして調製したセラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターを用いて、電極層およびスペーサ層上に、0.7μmの厚さで、塗布し、セラミックグリーンシートを生成し、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製した。塗布速度は50m/秒であり、誘電体スラリーの塗布に要した時間は20分であった。
【0230】
セラミックグリーンシートの形成後、積層体ユニットを、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、セラミックグリーンシートを乾燥した。
【0231】
得られた積層体ユニットの厚さは、電極層が形成されている部分も、電極層が形成されていない部分も、ともに、2.0μmであった。
【0232】
セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要した時間は、約5時間であった。
比較例
【0233】
セラミックグリーンシートの形成
実施例と同様にして、調製したセラミックグリーンシート用の誘電体ペーストを、エクストルージョンコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、50m/分の速度で、塗布し、セラミックグリーンシートを、1000mにわたって、形成した。
【0234】
セラミックグリーンシート用の誘電体スラリーの塗布に要した時間は20分であった。
【0235】
セラミックグリーンシートの形成後、80℃に保持された乾燥炉内を、2分間にわたって、通過させて、セラミックグリーンシートを乾燥した。
【0236】
乾燥後のセラミックグリーンシートの厚さは、1.0μmであった。
【0237】
電極層の形成
次いで、実施例と同様にして、調製した電極用のペーストを、スクリーン印刷機を用いて、乾燥厚さが1.0μmになるように、セラミックグリーンシート上に、所定のパターンで、印刷して、電極層を形成した。
【0238】
印刷速度は、約4m/分であり、電極用のペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0239】
スペーサ層の形成
さらに、以下の組成を有する誘電体粉末を調製した。
【0240】
こうして調製した誘電体粉末100重量部に対して、以下の組成を有する溶液を加え、ボールミルを用いて、20時間にわたって、混合して、スラリーを得た。
【0241】
有機ビヒクル 71重量部
フタル酸ビス(2エチルヘキシル) 50重量部
(DOP:可塑剤)
ターピネオール 5重量部
分散剤 1重量部
アセトン 64重量部
【0242】
ここに、有機ビヒクルは、8重量部のポリビニルブチラール樹脂を、92重量部のターピネオールに溶解して、調製した。
【0243】
こうして得られたスラリーを、40℃で、加熱し、攪拌して、余剰のアセトンを揮発させ、スペーサ層用のペーストを調製した。
【0244】
こうして調製したスペーサ層用の誘電体ペーストを、スクリーン印刷機を用いて、電極層のパターンと相補的なパターンで、セラミックグリーンシート上に、1.0μmの厚さで、印刷して、スペーサ層を形成し、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製した。
【0245】
印刷速度は、約4m/分であり、スペーサ層用の誘電体ペーストの印刷に要した時間は4時間10分であった。
【0246】
得られた積層体ユニットの厚さは、電極層が形成されている部分も、電極層が形成されていない部分も、ともに、2.0μmであった。
【0247】
セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要した時間は、約8時間40分であった。
【0248】
実施例および比較例から、本発明にしたがって、グラビアコーターを用いて、スペーサ層を形成した実施例においては、スクリーン印刷機を用いて、スペーサ層を形成した比較例に比して、セラミックグリーンシート、電極層およびスペーサ層を備えた積層体ユニットを作製するのに要する時間を、40%以上も短縮することができ、きわめて効率的に、積層セラミックコンデンサ用の積層体ユニットを作製し得ることが判明した。
【0249】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0250】
たとえば、前記実施態様においては、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、接着するように構成されているが、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、接着するように構成することは必ずしも必要でなく、第三の支持シート9上に形成された接着層10を、セラミックグリーンシート2の表面に転写し、セラミックグリーンシート2の表面と、スペーサ層5および電極層6の表面を、セラミックグリーンシート2の表面に転写された接着層10を介して、接着するようにしてもよい。
【0251】
さらに、前記実施態様においては、セラミックグリーンシート2が、スペーサ層5および電極層6の表面に転写された接着層10を介して、スペーサ層5および電極層6の表面に接着されて、積層体ユニット20が形成されているが、前記実施例と同様に、スペーサ層5および電極層6が乾燥した後に、誘電体ペーストを、スペーサ層5および電極層6の表面に塗布して、セラミックグリーンシート2を形成するようにしてもよい。
【0252】
また、前記実施態様および前記実施例においては、スペーサ層5および電極層6が、電極層6の厚さteとスペーサ層5の凹部5aの厚さtcの和が、スペーサ層5の厚さtsに等しくなるように形成されているが、スペーサ層5および電極層6が、好ましくは、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3、より好ましくは、0.8≦ts/(te+tc)≦1.2、さらに好ましくは、0.9≦ts/(te+tc)≦1.1を満たすように形成されればよく、スペーサ層5および電極層6を、電極層6の厚さteとスペーサ層5の凹部5aの厚さtcの和が、スペーサ層5の厚さtsに等しくなるように形成することは必ずしも必要でない。
【0253】
さらに、前記実施態様においては、図6に示された接着装置を用いて、セラミックグリーンシート2を、接着層10を介して、電極層6およびスペーサ層5の表面に接着させ、しかる後に、第一の支持シート1をセラミックグリーンシート2から剥離しているが、図5に示された接着・剥離装置を用いて、セラミックグリーンシート2を、接着層10を介して、電極層6およびスペーサ層5の表面に接着させるとともに、セラミックグリーンシート2から、第一の支持シート1を剥離するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、その表面上に、セラミックグリーンシートが形成された第一の支持シートの略一部断面図である。
【図2】図2は、その表面上に、スペーサ層が形成された第二の支持シートの略一部断面図である。
【図3】図3は、その表面上に、スペーサ層および電極層が形成された第二の支持シートの略一部断面図である。
【図4】図4は、その表面上に、接着層が形成された第三の支持シートの略一部断面図である。
【図5】図5は、第三の支持シート上に形成された接着層を、第二の支持シート上に形成されたスペーサ層および電極層に接着し、接着層から第三の支持シートを剥離する接着・剥離装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【図6】図6は、セラミックグリーンシートの表面に、接着層を介して、スペーサ層および電極層を接着する接着装置の好ましい実施態様を示す略断面図である。
【図7】図7は、第二の支持シート上に、スペーサ層、電極層、接着層、セラミックグリーンシートおよび接着層が積層された積層体ユニットの略一部断面図である。
【図8】図8は、積層体ユニットの積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【図9】図9は、積層体ユニットの積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【図10】図10は、積層体ユニットの積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【図11】図11は、積層体ユニットの積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【図12】図12は、積層体ユニットの積層プロセスの第五のステップを示す略一部断面図である。
【図13】図13は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第一のステップを示す略一部断面図である。
【図14】図14は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第二のステップを示す略一部断面図である。
【図15】図15は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第三のステップを示す略一部断面図である。
【図16】図16は、基板に固定されている支持シート上に積層された積層体ブロックを、積層セラミックコンデンサの外層上に積層する積層プロセスの第四のステップを示す略一部断面図である。
【符号の説明】
【0255】
1 第一の支持シート
2 セラミックグリーンシート
4 第二の支持シート
5 スペーサ層
5a スペーサ層の凹部
6 電極層
9 第三の支持シート
10 接着層
11 接着層シート
15、16 加圧ローラ
17、18 加圧ローラ
20 積層体ユニット
25 基板
26 孔
28 支持体
30 基台
31 孔
32 接着層
33 積層セラミックコンデンサの外層
40 積層体ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記スペーサ層および前記電極層を、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、前記スペーサ層の厚さ、tcは、前記スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、前記電極層の厚さである。)を満たすように、形成することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記スペーサ層を、tc≦0.5μmを満たすように、形成することを特徴とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記スペーサ層を、ts/tc>2を満たすように、形成することを特徴とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、前記セラミックグリーンシートを形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記電極層および前記スペーサ層上に、接着層を介して、前記セラミックグリーンシートを形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項7】
電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に形成された電極層と、前記電極層および前記スペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えたことを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項8】
前記スペーサ層が、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されていることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項9】
前記スペーサ層および前記電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、前記スペーサ層の厚さ、tcは、前記スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、前記電極層の厚さである。)を満たすように、形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項10】
前記スペーサ層が、tc≦0.5μmを満たすように、形成されていることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項11】
前記スペーサ層が、ts/tc>2を満たすように、形成されていることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項12】
前記セラミックグリーンシートが、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項13】
前記セラミックグリーンシートが、接着剤を介して、前記電極層および前記スペーサ層上に形成されていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項14】
前記スペーサ層と、前記セラミックグリーンシートが実質的に同じバインダを含んでいることを特徴とする請求項7ないし13のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項1】
支持シートの表面に、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布して、電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成されたスペーサ層を形成し、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に、電極ペーストを印刷して、電極層を形成し、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを形成することを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記スペーサ層および前記電極層を、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、前記スペーサ層の厚さ、tcは、前記スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、前記電極層の厚さである。)を満たすように、形成することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記スペーサ層を、tc≦0.5μmを満たすように、形成することを特徴とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記スペーサ層を、ts/tc>2を満たすように、形成することを特徴とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、前記セラミックグリーンシートを形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記電極層および前記スペーサ層上に、接着層を介して、前記セラミックグリーンシートを形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニットの製造方法。
【請求項7】
電極層のパターンと相補的なパターンで、複数の凹部が形成された誘電体材料を含むスペーサ層と、前記スペーサ層の前記複数の凹部内に形成された電極層と、前記電極層および前記スペーサ層上に形成された誘電体材料を含むセラミックグリーンシートを備えたことを特徴とする積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項8】
前記スペーサ層が、グラビアコーティング法によって、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されていることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項9】
前記スペーサ層および前記電極層が、0.7≦ts/(te+tc)≦1.3(tsは、前記スペーサ層の厚さ、tcは、前記スペーサ層の前記複数の凹部の厚さであり、teは、前記電極層の厚さである。)を満たすように、形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項10】
前記スペーサ層が、tc≦0.5μmを満たすように、形成されていることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項11】
前記スペーサ層が、ts/tc>2を満たすように、形成されていることを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項12】
前記セラミックグリーンシートが、前記電極層および前記スペーサ層上に、誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布することによって、形成されていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項13】
前記セラミックグリーンシートが、接着剤を介して、前記電極層および前記スペーサ層上に形成されていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【請求項14】
前記スペーサ層と、前記セラミックグリーンシートが実質的に同じバインダを含んでいることを特徴とする請求項7ないし13のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品用の積層体ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−288206(P2007−288206A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150919(P2007−150919)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【分割の表示】特願2003−96056(P2003−96056)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【分割の表示】特願2003−96056(P2003−96056)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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