説明

積層フィルム

【課題】透明性を有し酸素透過性及び水蒸気透過性が高く、特に青果等の食品包装用に使 用した場合、鮮度保持に優れた包装用フィルムを提供する。
【解決手段】ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とを含むブロック共重合体(I)を少なくとも1種含むスチレン系樹脂組成物層(A)と、
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層(B)と、を含む積層フィルムであって、
前記ブロック共重合体(I)は、
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜95重量%であり、
(2)ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が前記ブロック共重合体(I)中の全ビニル芳香族炭化水素の50〜95重量%である、積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過性、水蒸気透過性に優れる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青果物、鮮魚、鮮肉、惣菜等の食品を直接に又はプラスチックトレー上に載置して、これらをフィルムでストレッチ包装する、いわゆるプリパッケージ用のフィルムとして、環境問題等から従来のポリ塩化ビニルフィルムに代えて、線状低密度ポリエチレンフィルム(例えば特許文献1参照)、または線状低密度ポリエチレンを中間層とし、この表裏面にエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムが積層された三層フィルム(例えば特許文献2、特許文献3参照)、高密度ポリエチレンのフィルムを中間層とし、この表裏面に高圧法低密度ポリエチレンフィルムを積層した三層構造の積層フィルム(例えば特許文献4参照)等のエチレン系樹脂を基材とする包装用フィルムが実用化されている。
【0003】
これらエチレン系樹脂包装用フィルムは、青果物、肉、惣菜の包装に広く利用されている。しかし、食品を熱いうちに包装する団子やコロッケ等の惣菜の場合、あるいは、外気温が低い場合や、水分を放出しやすい食品の場合は、フィルムの水蒸気透過性が低いので、包装体内に水滴が多く発生し、その水滴により、例えば、団子がふやける、コロッケのころもが白化する、水系腐敗菌の増殖による食品の腐敗や内容物が鮮明に見えない等の問題があった。
【0004】
これらの欠点を改良する目的で、曲げ弾性率が10,000Kg/cm2以下のω−ラウロラクタムの単独重合体又は共重合体樹脂より成るフィルムの少なくとも片面に、(A')酢酸ビニル含量が5〜25重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又は1,2ポリブタジエン樹脂を94〜99.8重量%および(B')ソルビタン脂肪酸エステル及びそのエチレンオキサイド付加物、モノ及びポリグリセリン脂肪酸エステル、庶糖脂肪酸エステル、グリセリンリシノール酸エステル及びグリセリルアセチルリシノレートから選ばれたものを0.2〜6重量%含有する樹脂フィルムが積層されたストレッチ包装用積層フィルムが記載されている。(例えば、特許文献5参照)
【0005】
また、スチレン−ブタジエン共重合体を主成分とした鮮度保持性能に優れた包装フィルム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体を積層した包装用フィルムが記載されている。(例えば特許文献6、特許文献7参照)
【0006】
しかし、上記ストレッチ包装用積層フィルムは、包装時に伸ばすと不均一な伸びをしてしまい、極端に薄くなった部分が、被包装食品に鋭利な角がある場合や被包装食品を載置したトレーの角が鋭利な場合には、この接触部分から破れてしまうという欠点があり、また、不均一な伸びによりフィルムにシワが発生して商品価値のある包装ができないという問題があった。また、中間層樹脂は高価である等の問題もある。
【0007】
更に、ストレッチ包装用積層フィルムは、包装物の輸送、店頭陳列時のフィルム面にかかる変形に対してシワを残すことなく回復すること等の変形回復性において、市場の要求に必ずしも充分に対応しきれているものではなかった。
【特許文献1】特開昭64−14018号公報
【特許文献2】特公平2−18953号公報
【特許文献3】特開平3−258542号公報
【特許文献4】特開昭57−210853号公報
【特許文献5】特公昭63−56065号公報
【特許文献6】特開平8−48371号公報
【特許文献7】特開平9−76427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透明性、適度な腰強さを有し、破れ難く、酸素透過性及び水蒸気透過性が高い積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体を含有するスチレン系樹脂組成物層とポリオレフィン系樹脂層からなる積層フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1] ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とを含むブロック共重合体(I)を少なくとも1種含むスチレン系樹脂組成物層(A)と、
前記スチレン系樹脂組成物層(A)に積層させたポリオレフィン系樹脂を主成分とする層(B)と、を含む積層フィルムであって、
前記ブロック共重合体(I)は、
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜95重量%であり、
(2)ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が該前記ブロック共重合体(I)中の全ビニル芳香族炭化水素の50〜95重量%である、積層フィルム、
[2] 前記スチレン系樹脂組成物層(A)が、前記ブロック共重合体(I)10〜99
質量%と熱可塑性樹脂90〜1質量%を含む前項[1]に記載の積層フィルム、
[3] 前記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体(II)及びポリスチレン系樹脂(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む前項[2]に記載の積層フィルム、
[4] 前記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む前項[1]〜[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム、
[5] 前記スチレン系樹脂組成物層(A)に、脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の滑剤を含む前項[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム、
[6] 食品用包装用である、前項[1]〜[5]のいずれか一項に記載の積層フィルム、
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性を有し酸素透過性及び水蒸気透過性が高く、特に青果等の食品包装用に使用した場合、鮮度保持に優れた包装用フィルムの提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明に係る積層フィルムは、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とを含むブロック共重合体(I)を少なくとも1種含むスチレン系樹脂組成物層(A)と、該スチレン系樹脂組成物層(A)に積層させたポリオレフィン系樹脂を主成分とする層(B)と、を含む。
【0013】
本発明のスチレン系樹脂組成物層(A)に使用するビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とを含むブロック共重合体(I)(以下、単に「ビニル芳香族炭化水素−共役ジ
エン系ブロック共重合体(I)」という。)を構成するビニル芳香族炭化水素の含有量は
60〜95重量%、好ましくは65〜90重量%、より好ましくは70〜85重量%の範囲である。ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜95重量%の範囲では積層フィルムの柔軟性と透明性に優れる。本発明で使用するブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量は3万〜50万、好ましくは5万〜30万、より好ましくは8万〜20万である。数平均分子量が3万〜50万の範囲では成形加工性に優れる。本発明で使用するブロック共重合体(I)のビカット軟化温度は70〜90℃、好ましくは70〜85℃、より好ましくは75〜80℃である。ビカット軟化温度が70〜90℃の範囲にあっては耐熱性に優れる。
【0014】
本発明で使用するブロック共重合体(I)に組み込まれているビニル芳香族炭化水素のブロック率は50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%である。ブロック率が50〜95重量%の範囲では、本発明に係る積層フィルムの柔軟性が優れる。本発明で使用するブロック共重合体(I)に組み込まれているビニル芳香族炭化水素のブロック率は、ブロック共重合体を、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.ScI.1,429(1946)に記載の方法)で測定でき、該方法により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた値である。
【0015】
【数1】

【0016】
本発明で使用するブロック共重合体(I)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数
平均分子量Mnは、好ましくは1万以上15万以下、より好ましくは2万以上12万以下である。ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量Mnが1万以上では剛性に優れるため好ましく、15万以下では、成形加工性と透明性に優れるため好ましい。
【0017】
本発明で使用するブロック共重合体(I)の数平均分子量の測定は、上記と同様に、四
酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。分子量は、GPC用の単分散ポリスチレンをGPC測定して、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>講談社発行」に従って算出する。
【0018】
本発明に使用するブロック共重合体(I)の好ましいメルトフローレイト(JISK−
6870による測定。条件はG条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工性の点から、0.01〜100g/10min、好ましくは0.05〜50g/10min、より好ましくは0.5〜30g/10minである。数平均分子量とメルトフローレイト(以下、MFRと略すこともある)は、重合に使用する触媒量により任意に調整できる。
【0019】
本発明に使用するビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(I)は、ビ
ニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物からなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つと、共役ジエン系化合物単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物からなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つ有する。ポリマー構造は特に制限は無いが、例えば、一般式、
(A−B)n、A−(B−A)n、B−(A−B)n+1
[(A−B)k]m+1−X、[(A−B)k−A]m+1−X
[(B−A)k]m+1−X、[(B−A)k−B]m+1−X
(上式において、セグメントAはビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物からなる共重合体、セグメントBは共役ジエン系化合物単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物からなる共重合体である。Xは、例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5の整数である。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていてもよい。)で表される線状ブロック共重合体やラジアルブロック共重合体、或いはこれらのポリマー構造の任意の混合物が使用できる。また、上記一般式で表されるラジアルブロック共重合体において、更にA及び/又はBが少なくとも一つXに結合していてもよい。
【0020】
本発明において、セグメントA、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物との共重合体中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また該共重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がセグメント中にそれぞれ複数個共存してもよい。セグメントA中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントA中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントA中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン系化合物)}×100)とセグメントB中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントB中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントB中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン系化合物)}×100)との関係は、セグメントAにおけるビニル芳香族炭化水素含有量のほうが、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素含有量より大である。セグメントAとセグメントBの好ましいビニル芳香族炭化水素含有量の差は5重量%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明において、上記のビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(I)は、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエン系化合物を重合することにより得ることができる。本発明に用いるビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどがあるが、特に一般的なものとして、スチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0022】
本発明に用いる共役ジエン系化合物としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0023】
本発明に使用するビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(I)におい
て、(i)イソプレンと1,3−ブタジエンからなる共重合体ブロック、(ii)イソプレンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロック、および(iii)イソプレンと1,3−ブタジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロックの(i)〜(iii)の群から選ばれる少なくとも1つの重合体ブロックが組み込まれていてもよく、ブタジエンとイソプレンの重量比が3/97〜90/10、好ましくは5/95〜85/15、更より好ましくは10/90〜80/20であり、熱成形・加工等におけるゲル生成が少ない。
【0024】
本発明に使用するビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(I)は、例
えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0025】
また、重合開始剤としては、一般的に共役ジエン系化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族または芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0026】
本発明においては、重合速度の調整、重合した共役ジエン部のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)の変更、共役ジエン系化合物とビニル芳香族炭化水素の反応比の調整などの目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0027】
本発明において、ブロック共重合体(I)を製造する際の重合温度は、一般的に−10
℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に、重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する必要がある。
【0028】
本発明において、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(I)の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、前述の極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般に、ビニル結合量は5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜75%の範囲で設定できる。なお、本発明においてビニル結合量とは、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエン系化合物として1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)である。ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により把握することができる。
なお、本発明のブロック共重合体(I)は、2種類以上の混合物であっても構わない。
【0029】
本発明に係る積層フィルムに使用するスチレン系樹脂組成物は、透明性と剛性を維持しつつ、耐熱性あるいは加工性を高めるためにブロック共重合体(I)と熱可塑性樹脂との
組成物とすることもできる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂等が挙げられる。好ましい熱可塑性樹脂として、ビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体、ポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0031】
本発明のビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体(II)に用いるビニル芳香族系炭化水素とは、主としてスチレン系の単量体のことをいい、具体的には、スチレン、α−アルキル置換スチレン、例えばα−メチルスチレン類、核アルキル置換スチレン類、核ハロゲン置換スチレン類等から選ばれたもので、目的により適当なものを少なくとも1種選べばよい。また、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体に用いる脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体とは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数C1〜C12、好ましくはC2〜C12のアルコールとアクリル酸とのエステル誘導体、またはメタアクリル酸、または同様に炭素数C1〜C12、好ましくはC2〜C12、より好ましくは、C3〜C12のアルコールとメタアクリル酸とのエステル誘導体、またα、β不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、マレイン酸等、またはこれらジカルボン酸とC2〜C12のアルコールとのモノ又はジエステル誘導体等から少なくとも1種選ばれるものである。これらは一般にビニル芳香族炭化水素主体のものでその量が好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上のものである。
【0032】
本発明で用いるビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体(II)のメルトフローレート(以後、「MFR」と記す。)[JISK−6870に準拠し、G条件(温度200℃、荷重5Kg)で測定]は成形加工の点から0.1〜20g/10min、好ましくは1〜15g/10minである。
【0033】
本発明で用いるビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体(II)の好ましい配合量は、1〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%である。配合量が90質量%以下では成形性と剛性に優れるために好ましい。
【0034】
本発明で用いるポリスチレン系樹脂(III)は、スチレンもしくはこれと共重合可能なモノマーを重合して得られるもの(但し、上記の脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体を除く)である。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられるが、特に好ましいスチレン系重合体としてはポリスチレンを挙げることができる。
【0035】
本発明で使用するポリスチレン系樹脂(III)としては、特に、MFR([JISK−6870に準拠し、G条件(温度200℃、荷重5Kg)で測定]は、成形加工の点から0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜50g/10min、より好ましくは1〜30g/10minである。
【0036】
本発明で使用するポリスチレン系樹脂(III)の好ましい配合量は、1〜90質量%であり、より好ましくは20〜70質量%である。配合量が90質量%以下では成形性と剛性に優れるために好ましい。
【0037】
本発明の成分(I)/(II)または成分(I)/成分(III)からなるスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、70℃〜105℃、好ましくは75℃〜100℃の範囲である。組成物のビカット軟化温度が70℃〜105℃以下の範囲では耐熱性に優れる。
【0038】
スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、成分(I)、成分(II)、成分(III)のビカット軟化温度を調整する、或いは成分比率を調整することで得ることができる。
【0039】
本発明のスチレン系樹脂組成物層(A)には、滑剤として脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂および脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加することができる。本発明のスチレン系樹脂組成物100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、より好ましくは0.1〜3重量部添加することによって、耐ブロッキング性が良好となる。
【0040】
本発明に用いる脂肪酸アミドとしては、ステアロアミド、オレイル・アミド、エルシル・アミド、ベヘン・アミド、高級脂肪酸のモノ又はビスアミド、エチレンビス・ステアロアミド、ステアリル・オレイルアミド、N−ステアリル・エルクアミド等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。本発明に用いるパラフィン及び炭化水素系樹脂としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレン・ワックス、複合ワックス、モンタン・ワックス、炭化水素系ワックス、シリコーンオイル等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。本発明に用いる脂肪酸としては飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられる。すなわち、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
【0041】
本発明のスチレン系樹脂組成物層(A)には、紫外線吸収剤及び光安定剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダード・アミン系光安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤及び光安定剤を組成物100重量部に対して0.05〜3重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、耐光性が向上する。
【0042】
本発明のスチレン系樹脂組成物層(A)には、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを組成物100重量部に対して、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、ゲル抑制効果を得ることができる。安定剤が0.05重量部未満ではゲルを抑制する効果がなく、3重量部を超えて添加しても本発明以上のゲル抑制効果に寄与しない。
【0043】
本発明で使用するオレフィン系樹脂層(B)を構成するオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独又は共重合体が挙げられる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の炭素数2〜16のα−オレフィン(好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィン、さらに好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィン、特に炭素数2〜4のα−オレフィン)などが挙げられる。これらのオレフィンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィンのうち、エチレン、プロピレン、特に少なくともプロピレンを含むのが好ましい。
【0044】
本発明で用いるオレフィン系樹脂は、オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル];ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);環状オレフィン類(ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンタジエン等);ジエン類(ブタジエン、イソプレン等)等が例示できる。共重合性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。共重合性モノマーの使用量は、オレフィン100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜25重量部程度の範囲から選択できる。
【0045】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂[例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン)共重合体など]、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等のプロピレン含有80重量%以上のプロピレン系樹脂など)、ポリ(メチルペンテン)樹脂等が挙げられる。共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等が例示できる。
【0046】
前記共重合体(オレフィン同士の共重合体及びオレフィンと共重合性モノマーとの共重合体)には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体が含まれる。
【0047】
これらのオレフィン系樹脂のうち、水蒸気透過性等の点からエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、具体的には、酢酸ビニル含量5〜40重量%、エチレン含量95〜60重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であり、酢酸ビニル含量は、好ましくは5〜25重量%である。酢酸ビニル含量5〜40重量%の範囲にあっては、包装体のシワ発生や耐ブロッキングの観点から好ましい。
【0048】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のMFR(JIS K−7210;190℃、2.16Kg荷重)は0.1〜10g/10分のものが外観、包装適性上好ましい。
【0049】
ポリオレフィン樹脂層(B)には、防曇性、および適度の滑り性、自己粘着性、帯電防止性を付与するために、例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレエート、ポリグリセリンオレエート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレエート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリプロピレングリコールオレエート、ソルビタンオレエート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイルより選ばれた化合物の少なくとも1種を0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%配合させるのがよい。また、これらの添加剤を、スチレン系樹脂組成物層(A)にも0.1〜10重量%配合してもよい。
【0050】
本発明に係る積層フィルムは、スチレン系樹脂組成物層(A)を構成する樹脂、及びポリオレフィン系樹脂層(B)を構成する樹脂を、複数の押出機を用いて、インフレーション成形又はTダイ成形による共押出法、又は押出ラミネート法等の公知の方法で積層して成形することができる。
【0051】
中でも縦方向と横方向の引裂強度等機械的強度を充分にバランスさせた積層フィルムとするために、インフレーション成形による共押出法が好ましく、その際のブロー比は、2〜20倍、好ましくは2〜15倍である。ここでのブロー比とは、ダイのダイスリット円周長に対する最終インフレーションフィルムの円周長との比をいう。更に、前述のようにして得られた積層フィルムを、樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用して、フィルムの縦方向に1.2〜5倍延伸しても構わない。この積層フィルムの厚みは、全体の厚さが10〜500μmである。
【0052】
本発明に係る積層フィルムは、その特性を活かして種々の用途、例えば青果、生鮮食品、菓子類の包装、衣類、文具等の包装等に利用できる。特に好ましい用途としては、水蒸気透過性、酸素透過性に優れるため食品の鮮度を保持することが必要である青果等の包装用フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
(測定・評価方法)
実施例及び比較例に記載した測定、評価は以下の方法で行った。
【0054】
(A)評価
(1)ブロック率及びブロック共重合体(1)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量
四酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法〔I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法〕により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分を定量し、下記の式から求めた。
【0055】
【数2】

【0056】
また、この手法にて得られたビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分を、GPCを用いて数平均分子量を得た。
【0057】
(2)ビニル芳香族炭化水素含量
紫外分光光度計(島津製作所製 UV−2450)を用いて測定した。
【0058】
(3)引張弾性率
ASTM D638に準拠し、ミネベア株式会社製TG−5KN型試験機を用い、試験速度5mm/minでMDとTDについて測定した。
【0059】
(4)全光線透過率及びヘイズ
JIS K7105に準拠し、日本電色株式会社製ヘイズメータ(1001DP)を用いた。測定においては、流動パラフィン塗布により行った。
【0060】
(5)水蒸気透過性
JIS Z−0208に準拠して測定した。
【0061】
(6)二酸化炭素透過性
東洋精機製作所株式会社製の気体透過率測定装置を用い、差圧法にて測定した。
【0062】
(7)酸素透過性
MODERN−CONTROLS社製 OX−TRAIN 100型を用い、ASTM D−3985に準拠して等圧法にて測定した。
【0063】
(8)保存性
延伸ポリスチレン製のトレー上に、表面温度60℃のコロッケを載せた後、積層フィルムでストレッチ包装し、1時間後のコロッケの状態を肉眼で観察した結果を、次のように評価した。
○:特に変化のない場合
×:コロッケのころもが水滴により白化した場合。
【0064】
(9)シワ発生状況
直径10cmの球体を縦横25cmの積層フィルムで包装し、1時間後に包装したフィルム取り外し、フィルムのシワの有無を肉眼で観察した。
【0065】
(B)使用した原材料
1)ブロック共重合体(a−1)
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で、
i)スチレン25質量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウム0.080質量部を添加し、80℃で20分間重合した。
次に、ii)スチレン15質量部と1,3−ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液を60分間連続的に添加して80℃で重合した。
次いで、iii)スチレン36質量部を含むシクロヘキサン溶液を25分間連続的に添加して80℃で重合した後、80℃で10分間保持した。その後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.9倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.5質量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体(a−1)を得た。ブロック共重合体a−1は、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックA、スチレン/1,3−ブタジエン=38.5/61.5質量比である重合体ブロックB、スチレン/1,3−ブタジエン=100/0質量比である重合体ブロックAよりなるA−B−A型ブロック重合体である。また、得られたブロック共重合体a−1は、数平均分子量85000、スチレン含有量は77.5質量%、ブロック率は79質量%、また、メルトフローレートは7g/10分(ASTM D1238に準拠、200℃、荷重5kg)であった。
【0066】
(2)ブロック共重合体(a−2〜a−4)
ブロック共重合体(a−1)と同様の手法を用い、(a−1)のi)、ii)、iii)にて添加するスチレン、1,3−ブタジエンの添加量及び、n−ブチルリチウムの添加量を適宜コントロールすることで、ブロック共重合体(a−2〜a−4)を作成した(表1参照)。
なお、n−ブチルリチウムの添加量を少なくすると分子量は大きくなる。i)、iii)で添加するスチレン量に対し、ii)で添加するスチレン量を増やすとスチレンブロック率は低下した。
【0067】
【表1】

【0068】
(3)ポリスチレン
ポリスチレンとしてポリスチレン685(PSジャパン株式会社製)を用いた(b−1)。
【0069】
(4)ビニル芳香族炭化水素−アクリル酸エステル共重合体
SC004(PSジャパン株式会社製)を用いた(b−2)。
【0070】
(5)ポリエチレン
ポリエチレンとして、サンテックM1920(旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いた(c−1)。
【0071】
(6)エチレン−酢酸ビニル共重合体
市販のエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量15重量%)を使用した(c −2)。
【0072】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
多層用T−ダイ及び単軸押出機を組み合わせた多層フィルム押出成形機を用いて、厚さ100μm、層の構成比率が50%/50%である2層フィルムを作成した。このフィルムの評価結果を表2に示した。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示す結果から、本発明に係る積層フィルムは、透明性、酸素透過性及び水蒸気透過性等に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る積層フィルムは、透明性、酸素透過性及び水蒸気透過性に優れ、包装材料に用いたときに皺になりにくい特徴を有することから、青果物、鮮魚、鮮肉、惣菜等の食品を包装するフィルムに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とを含むブロック共重合体(I)を少なくとも1種含むスチレン系樹脂組成物層(A)と、
前記スチレン系樹脂組成物層(A)に積層させたポリオレフィン系樹脂を主成分とする層(B)と、を含む積層フィルムであって、
前記ブロック共重合体(I)は、
(1)ビニル芳香族炭化水素の含有量が60〜95重量%であり、
(2)ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が該前記ブロック共重合体(I)中の全ビニル芳香族炭化水素の50〜95重量%である、積層フィルム。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂組成物層(A)が、前記ブロック共重合体(I)10〜99質量%
と熱可塑性樹脂90〜1質量%を含む請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体(II)及びポリスチレン系樹脂(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物層(A)に、脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の滑剤を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
食品用包装用である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2008−221776(P2008−221776A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67013(P2007−67013)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】