説明

積層体、包装用シート、ラベルおよび容器

【課題】 バーコードの読み取り性と内容物の視認性を両立させた積層体、すなわち基材にアルミニウム箔や白着色層を必要とせず、バーコードやその他必要部分以外の外観が透明あるいは半透明な外観を呈する積層体、それを利用したラベル、包装用シート等を提供する。
【解決手段】 本発明の積層体10は、少なくとも、有色のバーコード印刷層3、透明または半透明の基材層1、透明または半透明のビーズ含有コーティング層5から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードを含んだ積層体に関し、さらに当該積層体を利用した包装用シート、ラベル、および容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数多くの物品にバーコードが印刷され、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのレジ(精算場所)で、代金計算、在庫調整のために利用されている。バーコードは消費者にとっては意味のない無味乾燥なデザインであり、商品の供給会社等にとっても広告や宣伝のためのスペースを犠牲にしなければならず、バーコードの印刷面積の縮小化が望まれている。また、使用期限管理、誤飲誤用防止、在庫管理の目的から、カプセルや錠剤等の医薬品にも、個包装あるいは服用単位ないし調剤包装単位等でバーコードを印刷することが要求されている。これらの要求に応えて本発明者等は先にバーコードの読取精度に優れる包装用シートを開発した(特許文献1)。この包装用シートの発明によるとアルミニウム箔とバーコード部との間に白着色層を介在させることで、バーコードの読取精度が向上することを提案し、さらにアルミニウム箔と白着色層との間に透明ないし半透明の下地層を介在させることにより、バーコードの読取精度がより向上することを提案している。
一方、従来のラベルは紙ベースのものが多く、耐水性に劣る上、透明の容器にラベルを貼着した場合、ラベルを貼着した部分からは内容物が見えないという欠点がある。特に、内容物が液体状の薬品、注射液、栄養剤などの場合、内容物が見えにくいことは、(1)内容物中の異物の有無、(2)内容物の変質や変色、(3)内容物の適正量、等を確認できず、防止可能な大きなミスの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−174302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の発明によれば、バーコードの読取精度は向上するものの、アルミニウム箔や白着色層を介在させる必要があり、包装用シート自体を透明あるいは半透明にするのは不可能であった。例えば上記特許文献1の技術によっては、内容物を視認可能とすべき包装用シートを作製することはできない。また、透明または半透明なガラス容器やプラスチック容器にバーコードを印刷したラベルを貼着する際、上記特許文献1の技術を利用すると、アルミニウム箔や白着色層が必要となり、内容物の視認性を大きく低下させることになる。
本発明は、上記の問題点に鑑み、高精度のバーコードの読み取り性(バーコードスキャナー(バーコード読取機等)により、バーコードの情報を誤読、読取不良なしに電子情報としてスムーズに読み取れることを意味する。)と内容物の視認性とを両立させた積層体、すなわちバーコード等の所定部分以外が透明あるいは半透明な積層体、それを利用したラベル、包装用シート、および容器を提供することを目的とする。なお、本発明においては、シュリンクラベルもラベルに含め、以下、単にラベルと称す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層体は、有色のバーコード印刷層、透明または半透明の基材層、透明または半透明のビーズ含有コーティング層からなることを特徴とする。この構成により、高精度のバーコードの読み取り性を確保しながら、使用状態にある積層体の外側から内容物を視認することができる。すなわち、本発明の積層体は、バーコードの読み取り性と内容物の視認性とを両立させることができる。
基材層を透明または半透明にすることで、内容物を外側から視認することは可能になるが、それだけではバーコード読み取り精度は著しく劣化する。本発明前には、透明または半透明な基材層がバーコードの読み取り精度を大きく劣化させることは、知られていなかった。しかし、本発明において、透明または半透明な基材層がバーコードの読み取り精度を大きく劣化させることを確認することができた。そして、透明または半透明な基材層に起因するバーコード読み取り精度の大幅劣化は、透明ビーズまたは半透明ビーズを含有したコーティング層を設けることで避けることができ、十分高い読み取り性を確保できることを確認した。
【0006】
上記の積層体は、基材層、バーコード印刷層、ビーズ含有コーティング層を、順次、積層したものとすることができる。この構成によって、透明または半透明の基材層に予め直接バーコード印刷層を形成(印刷)することができ、さらにビーズ含有コーティング層を積層することで、バーコード印刷層の改ざんを防ぐことができる。また、この積層体はバーコード印刷層のバーコード部分以外は透明または半透明なので、この積層体を使用対象に貼り付け等することで、高精度なバーコード印刷層の読み取り性を維持した上で、使用対象を視認することができる。
【0007】
また、バーコード印刷層、基材層、およびビーズ含有コーティング層が、順次、積層された積層体としてもよい。これによって、フレキソ印刷法などによってバーコード印刷層を後から印刷するのに適した積層体を得ることができる。
【0008】
基材層を少なくとも樹脂フィルムから構成することができる。この構成によると、比較的安価かつ安定して積層体を製造することができる。
【0009】
また、ビーズは、樹脂ビーズおよびガラスビーズから選ばれる少なくとも1種とすることができる。この構成によれば、より安定してバーコードの高精度な読み取り性と、内容物の視認性とを両立させることができる。また、比較的安価かつ安定して積層体を製造することができる。
【0010】
本発明の包装用シート、ラベル、または容器は、上記のいずれかの積層体を用いることを特徴とする。これら本発明の包装用シート、ラベル、または容器は、必要に応じて粘着層あるいは、熱接着層、感圧接着層、感熱接着層等の接着層を、さらに積層することができる。上記の包装用シート、ラベル、または容器は、これによって、読み取り精度の高いバーコード印刷層を担持しながら、用いられる対象物を視認することができる。
【発明の効果】
【0011】
1.本発明の積層体、包装用シート、ラベルは、バーコードの読み取り性に優れ、従来のバーコードよりその印刷面積を小さくすることができる。また、従来と同等の印刷面積であっても、読取不良や誤読を低減することができる。
2.透明または不透明な基材層を用いて使用対象を視認可能にした場合、従来の技術では、バーコードを実用上問題ない再現性および安定性をもって読み取ることは不可能であった。本発明の上記の積層体にしてはじめて、使用対象を外から視認可能にしながら、バーコードについて高い読み取り精度を得ることができる。
3.上記2.を一部繰り返すことになるが、本発明の積層体、包装用シート、ラベルは、バーコード印刷層等の印刷部以外は透明または半透明であるので、透明または半透明の、容器、容器の一部、容器のラベルとして用いた場合、透明あるいは半透明部分を通して容器内の内容物を視認することができる。
4.本発明の積層体、包装用シート、ラベルは、紙や白着色層を用いることなくバーコードが読取可能であるので、より少ない層構成で、コストダウンに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の積層体の一例を示す図であり、バーコード読取側から、基材/バーコード/ビーズ含有コーティング層/粘着剤等、の積層構造を有する。
【図2】本発明の積層体の一例を示す図であり、バーコード読取側から、バーコード/基材/ビーズ含有コーティング層/粘着剤等、の積層構造を有する。
【図3】本発明の積層体の一例を示す図であり、バーコード読取側から、基材/ビーズ含有コーティング層/バーコード/粘着剤等、の積層構造を有する。
【図4】本発明の実施例の評価試験において、上記の積層体を用いたラベルをアンプルに貼り付けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.基材層
本発明の積層体に使用する基材は、透明あるいは半透明であればその材質は制限されない。例えば、樹脂フィルム、ガラスフィルム、蒸着フィルム等を適宜使用することができる。
樹脂フィルムとしては厚み5μm〜500μmの樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムの材質は例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の各種の樹脂から選択することができる。樹脂フィルムは、一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。また、樹脂フィルムとしては、必要ならば、その表面にアンカーコート剤等をコ−ティングして表面平滑化処理等を施すこともできる。
【0014】
蒸着フィルムとしては、例えばアルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等を使用することができる。特にバリアー性が要求される用途では蒸着フィルムを採用するのが好ましい。フィルムの材質は、上記樹脂フィルムと同様のものを採用することができる。
【0015】
基材層は、透明あるいは半透明であれば顔料あるいは染料を用いて着色してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のアンカーコート層、プライマーコート層、紫外線遮蔽層等を積層して使用することもできる。
【0016】
2.バーコード印刷層
バーコード印刷層は、基材層またはビーズ含有コーティング層の一方面に有色のインキを用いてバーコードを印刷することにより得られる。有色のインキとしては顔料、樹脂および溶剤を含むものを使用すればよく、バーコードがバーコードリーダーで読取可能かつ目視可能である限り、公知の顔料を使用することができ、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、銅アゾメチン錯体、ペリレンマルーン、ジオキサジンバイオレット、カーボンブラック、酸化鉄、インダンスレンブルー、キノフタレン系、ペリレン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、それらのカラーチップ顔料等が好適である。有色のバーコードとすることで、目視でバーコードの位置を素早く認識することができ、バーコードリーダー(バーコード読取機)によってバーコードをスキャン(読取)することができる。樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、変性オレフィン樹脂、石油系炭化水素樹脂、ブチラールなどを挙げることができる。溶剤は、樹脂が溶解または分散すれば特に制限されないが、トルエン等の芳香族系炭化水素、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール、変性アルコール等のアルコール系溶剤やこれらの混合溶剤を用いることができ、水溶性インキを用いる場合は水であってもよい。バーコードの印刷法は特に制限されず、例えばグラビアロールコーター、オフセット印刷、フレキソ印刷、UV印刷等の方法により印刷することができる。バーコード印刷の図柄、大きさは顧客の要求に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1次元バーコードでもよいし、2次元バーコードまたはマトリックス方式もしくはコンポジット方式のQRコードであってもよい。
【0017】
なお、図1のような構成の場合、バーコードの印刷層3は、基材1の裏面側にグラビア印刷法等により印刷すればよい。バーコード印刷層3はビーズ5bを含む樹脂層5aであるビーズ含有コーティング層5によって被覆される。ビーズ含有コーティング層5は、対象物に貼り付けるための粘着剤層17等が積層されている。
また、図2のような構成の場合、即ちバーコード印刷層3が積層体10の表面に位置する場合は、基材1あるいはビーズ含有コーティング層5にフレキソ印刷法等により後印刷すればよい。また、図3の場合は、基材1の裏面側にビーズ含有コーティング層5をコートした後、さらにそのコート面にバーコード3を印刷積層すればよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の積層体10には、バーコード3以外の印刷部、例えば、品名、コード番号、製造年月日、メーカー名等の情報を印刷してもよい。
【0018】
3.ビーズ含有コーティング層
本発明のビーズ含有コーティング層に用いるビーズは、特に制限されるものではないが、樹脂ビーズおよびガラスビーズから選ばれる1種以上の透明または半透明のビーズ(粒子)を含有させる。樹脂ビーズを採用する場合は、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリルニトリル、ポリアミド等からなる樹脂ビーズを好適に使用することができる。これらの中でもバーコードの総合的な読み取り性能の点で特にメラミン系樹脂が好ましい。
ガラスビーズを採用する場合は、公知の(市販の)ガラスビーズを採用することができる。
【0019】
ビーズ含有コーティング層を構成するマトリックス樹脂としては、透明または半透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ニトロセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂等を好適に用いることができる。ビーズ含有コーティング層のコート量は、乾燥後重量で1〜5g/m程度が好ましい。
【0020】
ビーズ含有コーティング層中のビーズの含有量は固形分基準で通常1〜40重量%、好ましくは3〜25重量%とするのがよい。ビーズの含有量が1重量%未満では光を屈折・散乱させる効果が乏しくなり、バーコードの読取精度がやや劣る。他方、40重量%を超えるとビーズの分散性が悪くなる上、バーコード自体の鮮明性が阻害され、やはりバーコードの読取精度がやや劣る。
【0021】
上記のビーズの平均粒子径は、0.1〜30μm程度が好ましく、0.5〜20μm程度がさらに好ましく、特に3〜10μmがなおさらに好ましい。ビーズの平均粒子径が0.1μm未満では印刷面の鮮明さが多少損なわれる虞があると考えられる。他方、30μmを超えるとビーズ含有コーティング層中のマトリックスからのはみ出し部分が多くなり脱落の可能性が大きくなるため避けた方が望ましい。なお、平均粒子径の測定は顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscopy)等)による観察を行い、ビーズが球状の場合はその直径を、またビーズが非球状の場合は最長径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最長距離)および最短径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最短距離)を求め、その算術平均値をそのビーズの平均直径とする。さらにビーズ20個程度の直径または平均直径を算術平均し、その値を平均粒子径とすればよい。なお、ビーズ含有コーティング層には、本発明の効果を損なわない範囲、即ち透明性または半透明性を確保できる範囲内で公知の顔料、着色剤等を含有させることもでき、意匠性や識別性を付与することもできる。
【0022】
4.粘着層または接着層
本発明の積層体は、少なくとも有色のバーコード印刷層、透明または半透明の基材層、透明または半透明のビーズ含有コーティング層から構成されるが、必要に応じてさらに透明または半透明の、粘着層あるいは、熱接着層、感圧接着層、感熱接着層等の接着層をさらに積層した上、包装用シート、タグ、ラベル等に利用することができる。
粘着層としては、透明性が得られるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤を適宜採用すれば良い。粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、又は、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などのゴム系樹脂等を主成分として使用することができる。粘着層は、このような成分のみからなっていても良く、前述した透明樹脂層の成分に混合して形成されていても良い。粘着層は、これら樹脂等からなる粘着剤組成物を用いて、公知の塗工法で形成することが出来る。
熱接着層としては、透明性が得られるものであれば限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を主成分とする熱接着剤や熱接着性フィルムを積層して使用することができる。熱接着性フィルムを積層する場合は公知の方法によって積層することができ、例えば、ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いたドライラミネート法によって積層することができる。その他、感圧接着層や感熱接着層は公知のものを公知の方法によって積層し使用することができる。
【0023】
5.積層体の構造
図1〜図3を参照して、本発明の積層体10中のバーコード印刷層3、基材層1、ビーズ含有コーティング層5の積層位置は、用途、印刷法、要求特性に応じて適宜選択することができる。例えば図1の積層体10の場合、最外層側(バーコード読取側)から順に基材1、バーコード印刷層3、当該バーコード印刷層3を覆うようにビーズ含有コーティング層5を配置し、さらに用途に応じて粘着層等17を積層することができる。図2の場合は、バーコード印刷層3、基材層1、ビーズ含有コーティング層5を順次配置し、さらに用途に応じて粘着層等17を積層することができる。図3の場合は、基材層1、ビーズ含有コーティング層5、バーコード印刷層3を順次配置し、さらに用途に応じて粘着層等17を積層することができる。前述の通り、図2の構成はバーコードをフレキソ印刷法やインクジェット法等により後印刷する場合に適しており、これらの場合は、先にバーコード印刷層以外の各層を積層し、最後にバーコード印刷層を適宜印刷積層すればよい。
【0024】
6.使用態様
本発明の積層体は、その用途が特に限定されるものではないが、例えば包装用シートに用いることができ、必要に応じて熱接着層等を積層したうえ、容器の蓋材、包装袋、包装箱、包装容器等に用いることができる。また、必要に応じて粘着層等を積層したうえ、ラベル、タグ、封緘ラベル、シュリンクラベル等に用いることができる。ラベル等を貼着する容器は、特に限定されるものではないが、樹脂容器、ガラス容器、紙容器、金属容器、各種袋等を挙げることができ、特に透明または半透明の、樹脂容器、ガラス容器、樹脂製袋に好適である。より具体的には、透明または半透明の、アンプル、バイアル、その他の薬液入り容器、栄養剤入り樹脂製袋、点滴用樹脂製袋、その他の薬液入り袋のラベルとして使用するのがより好適である。図4は、バーコード3を表示する積層体10を含むラベル30をアンプル25に貼り付けた例を示す図である。
また、上記各容器、各袋は、透明または半透明であれば有色および無色のいずれでも採用することができる。また、上記各容器、各袋内の内容物、特に薬液、栄養剤等は、無色および有色のいずれであっても、本発明の効果が発揮できることが実施例により確認された。
【実施例】
【0025】
次に実施例により本発明例の作用効果について検証した結果を説明する。試験体は、本発明例1〜5、および比較例1〜2の7体を用いた。
【0026】
<試験体>
(比較例1):バーコードの読取側から(25μmPET/バーコード印刷/シリカ含有コーティング層):
比較例1では、厚み25μmの透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の裏面側に墨インキ(マトリックス樹脂:ニトロセルロース、固形分基準でカーボンブラック顔料16重量%含有)を用いてバーコードサイズ(公称0.200mm/モジュール(線の太さ最小0.200〜最大0.800mm、スペース最小0.200〜最大0.800mm))のバーコードを、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約1.5μmとなるよう設けた。さらにバーコード印刷部を覆うように、平均粒子径約1μmのシリカ(酸化珪素)を固形分基準で5重量%分散含有したニトロセルロースを乾燥後重量2g/mでコーティングし比較例1の試料を作製した。シリカ含有コーティング層は半透明であった。
(比較例2):バーコードの読取側から(シリカ含有コーティング層/25μmPET/バーコード印刷):
比較例2では、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の表面側(バーコードの読取側)に平均粒子径約1μmのシリカ(酸化珪素)を固形分基準で5重量%分散含有したニトロセルロースを乾燥後重量2g/mでコーティングした。シリカ含有コーティング層は半透明であった。次にPETの裏面側に墨インキ(マトリックス樹脂:ニトロセルロース、固形分基準でカーボンブラック顔料16重量%含有)を用いてバーコードサイズ(公称0.200mm/モジュール)のバーコードを、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約1.5μmとなるよう設け比較例2の試料を作製した。
(本発明例1):バーコードの読取側から(25μmPET/バーコード印刷/ビーズ含有コーティング層):
本発明例1では、厚み25μmの透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の裏面側に墨インキ(マトリックス樹脂:ニトロセルロース、固形分基準でカーボンブラック顔料16重量%含有)を用いてバーコードサイズ(公称0.200mm/モジュール)のバーコードを、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約1.5μmとなるよう設けた。さらにバーコード印刷部を覆うように、平均粒子径5μmのメラミンビーズを固形分基準で15重量%分散含有したニトロセルロースを乾燥後重量1g/mでコーティングし本発明例1の試料を作製した。ビーズ含有コーティング層はほぼ透明であった。
(本発明例2):バーコードの読取側から(25μmPET/バーコード印刷/ビーズ含有コーティング層):
本発明例1において、ビーズ含有コーティング層のコート量を乾燥後重量2g/mとした以外は、本発明例1と同様に本発明例2の試料を作製した。
(本発明例3):バーコードの読取側から(バーコード印刷/25μmPET/ビーズ含有コーティング層):
本発明例3では、厚み25μmの透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の表面側(バーコードの読取側)に墨インキ(マトリックス樹脂:ニトロセルロース、固形分基準でカーボンブラック顔料16重量%含有)を用いてバーコードサイズ(公称0.200mm/モジュール)のバーコードを、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約1.5μmとなるよう設けた。次にPETの裏面側に平均粒子径5μmのメラミンビーズを固形分基準で15重量%分散含有したニトロセルロースを乾燥後重量1g/mでコーティングし本発明例3の試料を作製した。ビーズ含有コーティング層はほぼ透明であった。
(本発明例4):バーコードの読取側から(バーコード印刷/25μmPET/ビーズ含有コーティング層):
本発明例3において、ビーズ含有コーティング層のコート量を乾燥後重量2g/mとした以外は、本発明例3と同様に本発明例4の試料を作製した。
(本発明例5):バーコードの読取側から(25μmPET/ビーズ含有コーティング層/バーコード印刷):
本発明例5では、厚み25μmの透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の裏面側(バーコードの読取側と反対側の面)に平均粒子径5μmのメラミンビーズを固形分基準で15重量%分散含有したニトロセルロースを乾燥後重量2g/mでコーティングし、乾燥後、さらにそのコート面に、墨インキ(マトリックス樹脂:ニトロセルロース、固形分基準でカーボンブラック顔料16重量%含有)を用いてバーコードサイズ(公称0.200mm/モジュール)のバーコードを、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約1.5μmとなるよう設け、本発明例5の試料を作製した。ビーズ含有コーティング層はほぼ透明であった。
【0027】
(評価試験1)
上記の試験体について、バーコード検証機により読み取り容易性の評価試験を行った。
バーコードの読み取り易さを評価するためのバーコード検証機(バーコードの読み取り性評価装置)には、ムナゾウ株式会社製TruCheck 401-RLを用いた(スキャン回数は10回とした)。本発明例1〜5、比較例1、2の各試料をバーコードの読取側が外面になるよう空のアンプル(無色透明ガラス製の注射液用容器:φ14mm×長さ76mm)に胴巻き(図4参照)し、上記評価装置で各バーコード部をスキャニングすることにより、SC値(シンボルコントラスト(Rmax-Rmin)、単位%)、EDGE(エッジ判定)、Rl(最大反射率)、Rd(最小反射率)、MinEC(最小エッジコントラスト、単位%)、MOD(モジュレーション、単位%)、Def(欠陥、単位%)、DCD(デコード)、DEC(デコードの容易性、単位%)、MinQZ(最小クワイエットゾーン)の各評価項目を測定した。これらの項目の評価および総合評価の結果を表1に示す。また、表1における総合評価クラス(段階)の評価点範囲(The American National Standards Institute=ANSI規格に準拠)を表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1によれば、ビーズを含まない比較例1、2では、SC値10〜20、総合評価Fであり、読取精度は不可であった。本発明例1〜5の結果は、SC値111〜118、評価クラスA〜Bであり、比較例と比べて非常に大きな読取精度の向上が認められ、本発明に基づくバーコードの読み取り易さの向上は歴然としている。また、バーコード部以外の積層体はほぼ透明であるので、アンプルの中身を目視することができ、視認性に優れていた。
【0030】
【表2】

【0031】
(評価試験2)
比較例1、本発明例2および本発明例4の試験体をバーコードの読取側が外面になるよう水を充満したアンプル(評価試験1と同様のアンプル)に胴巻きし、上記評価装置で各バーコード部をスキャニングすることにより、SC値等の各評価項目を測定した。結果を表3に示す。本発明の効果は歴然としている。水を充満した容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。また、水中に異物等が無いことを容易に観察できた。
【0032】
【表3】

【0033】
(評価試験3)
評価試験2において、アンプル内の水をお茶(薄緑色)にした以外は、評価試験2と同様に各評価項目を測定した。試験体は比較例1、本発明例2および本発明例4である。結果を表4に示す。本発明の効果は歴然としている。お茶を充満した容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。また、お茶中に存在する茶カスを容易に観察できた。
【0034】
【表4】

【0035】
(評価試験4)
評価試験2において、アンプル内の水を市販の流動性ヨーグルト(白色)にした以外は、評価試験2と同様に各評価項目を測定した。試験体は比較例1、本発明例2および本発明例4である。結果を表5に示す。本発明の効果は歴然としている。ヨーグルトを充満した容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。
【0036】
【表5】

【0037】
(評価試験5)
評価試験2において、アンプル内の水を市販のコーラ(ほぼ黒色)にした以外は、評価試験2と同様に各評価項目を測定した。試験体は比較例1、本発明例2および本発明例4である。結果を表6に示す。本発明の効果は歴然としている。コーラを充満した容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。
【0038】
【表6】

【0039】
(評価試験6)
評価試験2において、アンプル内の水を市販のうがい薬(商品名「イソジン」)(濃茶色)にした以外は、評価試験2と同様に各評価項目を測定した。試験体は比較例1、本発明例2および本発明例4である。結果を表7に示す。本発明の効果は歴然としている。うがい薬を充満した容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。
【0040】
【表7】

【0041】
(評価試験7)
評価試験1において、無色透明ガラス製のアンプルを褐色のガラス製アンプルにした以外は、評価試験1と同様に各評価項目を測定した。試験体は比較例1、本発明例2および本発明例4である。結果を表8に示す。本発明の効果は歴然としている。褐色の容器であっても問題なくバーコードの読取を行うことができた。
【0042】
【表8】

【0043】
上記のいずれの評価試験においても、本発明例以外は、たとえ使用対象を外側から視認することはできても、バーコードの読み取り性は劣悪であり、本発明にしてはじめて、バーコードの読み取り性と、使用対象の視認性とを、ともに確保できることが分かる。
【0044】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、対象物に積層体に配置しながら、積層体の外側から対象物を視認することができ、かつ積層体に設けたバーコードを十分に高い精度で読み取ることができる。従来の技術の延長で、積層体の外側から対象物を視認するように構成できても、バーコードを実用上問題ない精度で読み取ることは不可能であった。本発明にしてはじめて、対象物の視認性と、バーコードの高い読み取り精度とを、ともに確保することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基材、3 バーコード、5 ビーズ含有コーティング層、5a 樹脂、5b ビーズ、10 積層体、17 粘着剤等、25 アンプル、30 ラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色のバーコード印刷層、透明または半透明の基材層、透明または半透明のビーズ含有コーティング層からなる積層体。
【請求項2】
前記基材層、前記バーコード印刷層、および前記ビーズ含有コーティング層が、順次、積層された請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記バーコード印刷層、前記基材層、および前記ビーズ含有コーティング層が、順次、積層された請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層は少なくとも樹脂フィルムからなる請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記ビーズは、樹脂ビーズおよびガラスビーズから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層体からなる包装用シート。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層体にさらに粘着層または接着層を積層したラベル。
【請求項8】
請求項7に記載のラベルを貼着した透明または半透明の容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167937(P2011−167937A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33947(P2010−33947)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】