説明

積層体の製造方法

【課題】光導波路基板と機能性基板とが積層された積層体を、比較的簡単な工程でかつ優れた精度で製造することができる積層体の製造方法。
【解決手段】積層体の製造方法は、コア部を備える光導波路基板と、機能性基板とを、光導波路基板の第1の辺と、機能性基板の第2の辺とが平行となるように積層してなる積層体を製造する方法であり、光導波路基板に1つの第1の貫通孔を形成し、かつ、第1の貫通孔から第1の距離の箇所で光導波路基板を切断して第1の辺を形成するとともに、機能性基板に1つの第2の貫通孔を形成し、かつ、第2の貫通孔から第2の距離の箇所で機能性基板を切断して第2の辺を形成する工程と、光導波路基板と機能性基板とを、第1の貫通孔と第2の貫通孔とが一致し、かつ第1の辺と第2の辺とが平行となるようにして、重ね合わせた状態で、これら同士を接合することにより積層体を得る工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に伝送(搬送)される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
かかる光導波路を備える装置としては、例えば、光導波路を備える光導波路基板上に、光送信用IC(発光素子)および光受信用IC(受光素子)が搭載された配線基板を配置した構成のものが提案されている。
【0008】
このような装置は、前記光導波路基板と、前記配線基板とを位置合わせして、これら同士を接合することにより得られるが、この位置合わせの方法として、例えば、以下のような方法が開示されている。
【0009】
すなわち、前記光導波路基板および前記配線基板の双方に、予め、レーザー等を用いて2つの貫通孔を形成しておき、これら2つの貫通孔同士が互いに一致するようにして位置合わせした後、前記光導波路基板と前記配線基板とを接合する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかしながら、かかる方法では、貫通孔を形成する際のアライメント精度が低いこと、さらには、貫通孔を形成する際に前記光導波路基板および前記配線基板の基材に熱収縮が生じること等に起因して、2度の貫通孔を形成する工程を経ることから、2つの貫通孔の形成すべき位置からの位置ズレが生じ、その結果、前記光導波路基板と前記配線基板とを優れた精度で接合することができないという問題がある。
【0011】
また、このような問題は、例えば、2つの前記光導波路基板同士を積層して接合する場合についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許4476743公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、光導波路基板と機能性基板とが積層された積層体を、比較的簡単な工程でかつ優れた精度で製造することができる積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、下記(1)〜(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 光を伝送するコア部を備える光導波路基板と、機能性基板とを、前記光導波路基板の第1の辺と、前記機能性基板の第2の辺とが平行となるように積層してなる積層体を製造する積層体の製造方法であって、
前記光導波路基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第1の貫通孔を形成し、かつ、前記第1の貫通孔から第1の距離の箇所で前記光導波路基板を切断して前記第1の辺を形成するとともに、前記機能性基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第2の貫通孔を形成し、かつ、前記第2の貫通孔から第2の距離の箇所で前記機能性基板を切断して前記第2の辺を形成する第1の工程と、
前記光導波路基板と前記機能性基板とを、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが一致し、かつ前記第1の辺と前記第2の辺とが平行となるようにして、重ね合わせた状態で、これら同士を接合することにより前記積層体を得る第2の工程とを有することを特徴とする積層体の製造方法。
【0015】
(2) 前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺に、中心軸がほぼ直交するように配列された前記コア部を複数個備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、複数の前記コア部のうち外側に位置するもの同士の中央部に形成する上記(1)に記載の積層体の製造方法。
【0016】
(3) 前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、各前記コア部の前記第1の辺側の端部と、形成すべき前記第1の辺との間に形成する上記(2)に記載の積層体の製造方法。
【0017】
(4) 前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺とほぼ直交する方向に延在する一対の辺を備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、前記一対の辺の中央部に形成する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0018】
(5) 前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺に、中心軸がほぼ平行となるように配列された前記コア部を複数個備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、複数の前記コア部のうち前記第1の辺側に位置するものと、形成すべき前記第1の辺との間に形成する上記(1)に記載の積層体の製造方法。
【0019】
(6) 前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔は、ともに真円である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0020】
(7) 前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔は、ともに長円であり、それぞれ、前記第1の辺および前記第2の辺と直交する方向に長い上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0021】
(8) 前記第1の工程において、前記光導波路基板に、前記第1の貫通孔を形成した後に、前記第1の辺を形成するとともに、前記機能性基板に、前記第2の貫通孔を形成した後に、前記第2の辺を形成する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0022】
(9) 前記第2の工程において、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との双方を棒状体に挿通することにより、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを一致させる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0023】
(10) 前記第1の距離と前記第2の距離とが同一であり、
前記第2の工程において、前記第1の辺と前記第2の辺との双方を平坦面に当接することにより、前記第1の辺と前記第2の辺とを一致させる上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0024】
(11) 前記機能性基板は、少なくとも一方の面に金属配線を備える電気配線基板である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光導波路基板と機能性基板とが積層された積層体を、比較的簡単な工程でかつ優れた精度で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の積層体の製造方法が適用された光導波路構造体の概略を示す縦断面図である。
【図2】本発明の積層体の製造方法が適用された光導波路構造体の概略を示す平面図である。
【図3】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図4】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図5】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図6】本発明の積層体の製造方法の第1実施形態に用いられる治具を示す斜視図である。
【図7】本発明の積層体の製造方法の第1実施形態が適用される光導波路基板の平面図である。
【図8】本発明の積層体の製造方法の第1実施形態が適用される配線基板の平面図である。
【図9】本発明の積層体の製造方法の第2実施形態が適用される光導波路基板の平面図である。
【図10】本発明の積層体の製造方法の第2実施形態が適用される配線基板の平面図である。
【図11】本発明の積層体の製造方法の第3実施形態に用いられる治具を示す斜視図である。
【図12】本発明の積層体の製造方法の第3実施形態が適用される光導波路基板の平面図である。
【図13】本発明の積層体の製造方法の第3実施形態が適用される配線基板の平面図である。
【図14】本発明の積層体の製造方法の第4実施形態が適用される光導波路基板の平面図である。
【図15】本発明の積層体の製造方法の第4実施形態が適用される配線基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の積層体の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
<光導波路構造体>
まず、本発明の積層体の製造方法を説明するのに先立って、本発明の積層体の製造方法を適用して製造された光導波路構造体の一例について説明する。
【0029】
図1は、本発明の積層体の製造方法が適用された光導波路構造体の概略を示す縦断面図、図2は、発明の積層体の製造方法が適用された光導波路構造体の概略を示す平面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」といい、下側を「下」という。
【0030】
光導波路構造体1は、主に、光導波路基板2と、この光導波路基板2の上面に接合された配線基板3と、配線基板3上にそれぞれ搭載された発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とを有する。
【0031】
発光素子4からの光Lは、光導波路基板(光回路)2内を伝送され、受光素子5により受光される。すなわち、光導波路基板2を介して、発光素子4と受光素子5との間において、光通信がなされる。
【0032】
光導波路基板2は、光導波路20と、この光導波路20の上下面にそれぞれ設けられた保護層29とを備える。
【0033】
光導波路20は、層状をなすコア層21と、このコア層21の上下面にそれぞれ設けられた層状をなすクラッド層22とを有しており、コア層21の一端に入射された光Lが、その他端にまで伝送(伝搬)されるが、この光導波路20の詳細については、後に詳述する。
【0034】
また、本実施形態では、光導波路基板2は、その下面からコア層21(コア部211)を超えて、上側の保護層29に至るまでの部分を欠損させることにより形成された欠損部28a、28bを備える。少なくともコア層21の欠損部28a、28bに臨む面は、それぞれ、コア層21と欠損部28a、28b内の空気との屈折率差に基づいて光を反射するミラー(光の光路を変更する光路変更部)23a、23bを構成している。
【0035】
かかる構成とすることにより、コア部211のミラー23a、23bが形成された領域が後述するコア部211の端部を構成する。
【0036】
また、欠損部28a、28bは、光導波路基板2の縦断面において直角三角形状をなすように形成されており、ミラー23a、23bは、コア層21の中心軸に対してほぼ45°で傾斜している。したがって、図1中の矢印で示すように、発光素子4から下方に向かって発せられた光Lは、その直下のミラー23aにより、その光路がほぼ90°で変更(屈曲)された後、コア層21(コア部211)内を伝送され、受光素子5の直下のミラー23bで上方に向かって光路がほぼ90°で変更された後、受光素子5に入射する。
【0037】
このようなミラー23a、23bを設けることにより、光導波路基板2の主面(上面および/または下面)を発光素子4および受光素子5を搭載する領域として用いることができるので、光導波路構造体1の小型化を図ることができるとともに、高密度実装にも寄与する。
【0038】
保護層29は、光導波路20の上下面を保護する機能を有する。
保護層29の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、保護層29は、光導波路20を保護する機能を十分に発揮することができる。また、光導波路基板2全体として可撓性を付与する場合には、その可撓性が低下するのを防止することができる。
【0039】
保護層29の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミドおよびポリイミドエーテル等が挙げられる。
【0040】
このような光導波路基板2の上面には、配線基板3が接合され、さらに、配線基板3の上面には、それぞれ、後述するコア部211に対応するように発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とが搭載されている。
【0041】
配線基板3は、平板状の基材31と、この基材31の上に所定のパターンで形成された配線部(導体部)30とを有している。
【0042】
基材31は、光透過性および絶縁性を有する材料で構成されている。この基材31は、可撓性を有していてもよく、剛性を有するもののいずれであってもよい。
【0043】
可撓性を有する基材31は、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の各種樹脂材料で構成することができるが、なかでもポリイミド系樹脂を主材料として構成するのが好ましい。この場合、耐熱性が高く、優れた可撓性を有する基材31が得られる。
【0044】
一方、剛性を有する基材31は、例えば、紙、ガラス布、樹脂フィルム等のコア材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させて構成することができる。
【0045】
基材31の平均厚さは、特に限定されないが、光導波路構造体1の薄型化の観点から、好ましくは1μm〜5mm程度、より好ましくは5μm〜2mm程度とされる。
【0046】
配線部30の構成材料としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属材料が挙げられる。各配線部30の平均厚さは、特に限定されないが、通常、3〜120μm程度が好ましく、5〜70μm程度がより好ましい。
【0047】
また、発光素子(光素子)4は、発光部を備える素子本体41とバンプ42とを備え、バンプ42が、配線部30が備える端子に接合されている。また、発光素子用IC40は、所定の回路が形成された素子本体401とバンプ402とを備え、バンプ402が、配線部30が備える端子に接合されている。これにより、発光素子4は、発光素子用IC40と配線基板3を介して電気的に接続され、その動作が発光素子用IC40により制御される。
【0048】
さらに、受光素子(光素子)5は、受光部を備える素子本体51とバンプ52とを備え、バンプ52が、配線部30が備える端子に接合されている。また、受光素子用IC50は、所定の回路が形成された素子本体501とバンプ502とを備え、バンプ502が、配線部30の端子に接合されている。これにより、受光素子5は、受光素子用IC50と配線基板3を介して電気的に接続され、受光素子用IC50は、受光素子5による検出信号を増幅するよう動作する。
【0049】
これにより、光導波路構造体1内に、電気回路が構築され、光導波路構造体1では、これらの光素子(発光素子4および受光素子5)と電気素子(発光素子用IC40および受光素子用IC50)とが協調して動作することにより、光信号と電気信号の相互変換が確実に行われ、高速かつ低ノイズでの信号処理を容易に行うことができる。
【0050】
なお、このような配線基板3における、発光素子4からの光Lの光路に対応する部分、および、受光素子5への光Lの光路に対応する部分は、それぞれ、光Lの透過が許容されるように光透過性を有する部材で構成される。
【0051】
さて、光導波路20は、前述したように、層状をなすコア層21と、このコア層21の上下面にそれぞれ設けられた層状をなすクラッド層22とを有している。
【0052】
コア層21は、図2に示すように、帯状(層状)をなす光導波路20の長手方向に沿って設定された複数個(本実施形態では4つ)の細長い長方形状をなすコア部211と、このコア部211を取り囲むように設けられたクラッド部212とを有している。
【0053】
すなわち、隣接するコア部211同士の間には、これらの双方に接触するようにクラッド部212が設けられている。
【0054】
クラッド部212は、クラッド層22と同様の機能を果たす部分であり、クラッド部212およびクラッド層22は、コア部211と比較して、その平均屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が低くなっている。
【0055】
これにより、クラッド部212およびクラッド層22で取り囲まれて形成されたコア部211は、欠損部28aから入射された光Lを、コア部211とクラッド部212およびクラッド層22との界面で反射させて、欠損部28bまで伝送(伝搬)する光路を構成する。
【0056】
また、コア部211とクラッド部212およびクラッド層22との屈折率の差は、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝送する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0057】
なお、前記屈折率差とは、コア部211の屈折率をA、クラッド部212およびクラッド層22の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0058】
コア層21、クラッド層22の各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
【0059】
また、コア部211は、その平面視において、その幅が、5〜200μm程度であるのが好ましく、30〜100μm程度であるのがより好ましい。
【0060】
なお、本実施形態では、複数個の光Lを伝送するコア部211は、隣接するもの同士で、その中心軸がほぼ並列(平行)に設けられ、かつ伝送する光Lの光路が逆方向となっている。かかる構成とすることで、隣接するコア部211から漏れ出た信号がコア部211に混入してクロストークが生じたとしても、このクロストークによる信号のノイズの発生を的確に抑制または防止することができる。これは、クロストークの原因となる漏れ出た信号の光路が逆方向であるため、この信号は、混入したコア部211において、発光素子4側に到達することに起因するものと考えられる。
【0061】
さらに、本実施形態では、隣接するコア部211の端部が、光Lの光路の方向においいて、互いにずれている。そのため、隣接するコア部211の端部に対応して形成する欠損部28aの形成領域と欠損部28bの形成領域とも、互いにずれることとなる。その結果、隣接するコア部211同士を接近させたとしても、欠損部28aの形成領域と欠損部28bの形成領域とが重なり合うのを的確に防止することができるため、光導波路20の小型化および高集積化が実現可能となる。
【0062】
なお、図2に示した、各コア部211の長さは、いずれも同程度であるが、それぞれの長さを異なるようにしてもよい。
【0063】
以上説明したような光導波路構造体1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0064】
なお、以下では、感光用光の作用により屈折率が低くなる感光性樹脂組成物70を用いて光導波路基板2が備えるコア層21を形成する場合を一例に説明する。
【0065】
図3〜5は、それぞれ、光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【0066】
<1> まず、光導波路基板2を形成する。
<1−1> まず、感光用光EL(活性放射線)の作用により屈折率が低くなるよう変化する感光性樹脂組成物70を用意する。
【0067】
かかる感光性樹脂組成物70としては、例えば、特殊な配合の樹脂組成物を用いることができる。
【0068】
この樹脂組成物には、ベースポリマーと、このベースポリマーより屈折率の低いモノマーとを含み、感光用光ELを照射させた照射領域内において、モノマーの反応を進行させることにより、感光用光ELを照射させない未照射領域から、未反応のモノマーを照射領域に拡散させ、結果として、未照射領域の屈折率が照射領域の屈折率より高くなるようなものがある。
【0069】
ベースポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0070】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ベースポリマーとして環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア部211を形成することができる。
【0071】
さらに、環状オレフィン系樹脂としては、耐熱性、透明性等の観点から、ノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア部211を形成することができる。
【0072】
一方、モノマーとしては、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等のうち、ベースポリマーより屈折率が低いものが選択され、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。
【0074】
具体的には、オキセタニル基を有し、かつ、ベースポリマーより屈折率が低いモノマーとしては、例えば、下記式(1)で表わされる単官能オキセタン(3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタン;CHOX)等が挙げられる。
【0075】
【化1】

【0076】
<1−2> 次に、予め形成したクラッド層22上に、図3(A)に示すように、感光性樹脂組成物70を必要に応じてワニス状として供給して、液状被膜を形成する。
【0077】
なお、感光性樹脂組成物70をワニス状とする場合、感光性樹脂組成物70を溶媒または分散媒中に溶解または分散させることにより得られるが、この溶媒または分散媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)などのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンなどの芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒が挙げられる。
【0078】
ここで、感光性樹脂組成物70をクラッド層22上に供給する方法としては、各種塗布法を用いることができ、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられる。
【0079】
なお、クラッド層22としては、例えば、後述するコア部211よりも屈折率が低いシート材が使用され、特に限定されるものではないが、例えば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシート材が使用される。
【0080】
<1−3> 次に、クラッド層22上に形成した液状被膜を乾燥することにより、図3(B)に示すように、光導波路形成用のフィルム210を形成する。
【0081】
このフィルム210は、後述する感光用光(活性放射線)ELの照射により、コア部211とクラッド部212とを備えるコア層21となるものである。
【0082】
<1−4> 次に、フィルム210のクラッド部212を形成すべき領域に対して、選択的に感光用光EL(例えば、紫外線)を照射する。
【0083】
この際、図4(A)に示すように、フィルム210の上方に形成すべきクラッド部212の形状に対応した開口部を備えるマスクMを配置する。このマスクMを介して、フィルム210に対し、感光用光ELを照射する。
【0084】
用いられる感光用光ELとしては、例えば、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものが挙げられる。これにより、フィルム210の感光用光ELが照射された領域における屈折率を、比較的容易に低くすることができる。
【0085】
また、感光用光ELの照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm程度であるのがさらに好ましい。
【0086】
なお、レーザー光のように指向性の高い感光用光ELを用いる場合には、マスクMの使用を省略することもできる。
【0087】
ここで、フィルム210のうち、感光用光ELが照射された照射領域では、モノマーの反応(ペースポリマーの架橋、モノマーの重合等)が開始する。また、感光用光ELが照射されていない未照射領域では、モノマーの反応は生じない。
【0088】
そのため、照射領域では、モノマーの反応の進行に応じて、モノマーの残存量が少なくなる。これに応じて、未照射領域のモノマーが照射領域側に拡散し、これにより、照射領域と未照射領域とで屈折率差が生じる。
【0089】
ここで、本実施形態では、モノマーの屈折率が、ベースポリマーの屈折率よりも低いため、未照射領域のモノマーが照射領域に拡散することで、照射領域の屈折率が連続的に低くなるとともに、未照射領域の屈折率は連続的に高くなる。
【0090】
かかる過程を経て、図4(B)に示すように、フィルム210の未照射領域および照射領域がそれぞれコア部211およびクラッド部212となったコア層21が形成される。
【0091】
なお、図3に示すように、隣接する形成すべきコア部211同士間の離間距離が、その全体に亘ってほぼ一定である場合、上記のようにモノマーの拡散によりコア部211とクラッド部212とを形成する方法を適用することで、照射領域に拡散してくるモノマーの量を照射領域の各部においてより均一なものとすることができる。その結果、形成されたコア部211とクラッド部212との間の屈折率の差は、コア部211およびクラッド部212の各部においてほぼ均一なものとなる。
【0092】
<1−5> 次に、コア層21上に、コア層21の下側に形成したクラッド層22と同様のフィルムを貼り付けることで、クラッド層22を形成する。
【0093】
これにより、一対のクラッド層22は、クラッド部212とは異なる方向すなわちコア部211の上下方向から、コア部211を挟むように配置され、その結果、図5(A)に示すような光導波路20が形成される。
【0094】
なお、上側のクラッド層22は、フィルム状のものを貼り付けるのではなく、コア層21上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によっても形成することができる。
【0095】
<1−6> 次に、双方のクラッド層22に、保護層29を形成する。
この保護層29の形成には、前記工程<1−5>で説明したクラッド層22の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0096】
以上のような工程を経て、図5(B)に示すような光導波路基板2が製造される。
なお、本実施形態では、ベースポリマーよりも屈折率の低いモノマーを含有する感光性樹脂組成物70を用いて、コア部211とクラッド部212とを備えるコア層21を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、ベースポリマーよりも屈折率の高いモノマーを含有する樹脂組成物を用いて、前記コア層21を形成するようにしてもよい。
【0097】
このような樹脂組成物を用いる場合、感光用光ELの照射によりモノマーが拡散するフィルム210の照射領域において、フィルム210の未照射領域よりも屈折率が高くなる。そのため、かかる形態では、フィルム210の照射領域および未照射領域がそれぞれコア部211およびクラッド部212となったコア層21が形成される。
【0098】
<2> 次に、光導波路基板2に、例えば、レーザー加工、研削加工等を施すことで、所定の位置に欠損部28a、28bを形成する。
【0099】
<3> 次に、配線基板3を用意する。
【0100】
配線基板3は、例えば、平板状の基材31を用意し、この基材31上に金属層が設けられた積層板(例えば、銅張り板)を形成した後、エッチング、レーザ加工等を施して、金属層を所定形状にパターニングして配線部(金属配線)30を形成することにより製造される。
なお、配線部30は、必要に応じて基材31の双方の面に形成されていてもよい。
【0101】
<4> 次に、発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とを、それぞれ用意し、これらを配線基板3の所定の位置に搭載(接合)する。
【0102】
<5> 次に、発光素子4が有する発光部が欠損部28aのミラー23aに、受光素子5が有する受光部が欠損部28bのミラー23bにそれぞれ対応するように、配線基板3を位置決めしつつ、光導波路基板2の上面に接着剤等を用いて接合する。
以上のような工程を経て、光導波路構造体1が製造される。
【0103】
<積層体の製造方法>
このような光導波路構造体1の製造方法において、前記工程<5>における配線基板3と光導波路基板2との位置合わせに、本発明の積層体の製造方法が適用される。
【0104】
本発明の積層体の製造方法は、光を伝送するコア部を備える光導波路基板と、配線基板(機能性基板)とを、光導波路基板の第1の辺と、前記機能性基板の第2の辺とが平行となるように積層してなる積層体を製造する方法であり、前記光導波路基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第1の貫通孔を形成し、かつ、前記第1の貫通孔から第1の距離の箇所で前記光導波路基板を切断して前記第1の辺を形成するとともに、前記機能性基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第2の貫通孔を形成し、かつ、前記第2の貫通孔から第2の距離の箇所で前記機能性基板を切断して前記第2の辺を形成する第1の工程と、前記光導波路基板と前記機能性基板とを、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが一致し、かつ前記第1の辺と前記第2の辺とが平行となるようにして、重ね合わせた状態で、これら同士を接合することにより前記積層体を得る第2の工程とを有することを特徴とする
かかる方法によれば、光導波路基板と配線基板(電気配線基板)とが積層された積層体を、比較的簡単な工程でかつ優れた精度で製造することが可能となる。
【0105】
以下、本発明の積層体の製造方法の詳述を、前述した配線基板3と光導波路基板2との位置合わせに適用した場合を一例にして行う。
【0106】
<<第1実施形態>>
まず、本発明の積層体の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0107】
図6は、本発明の積層体の製造方法の第1実施形態に用いられる治具を示す斜視図、図7は、本発明の積層体の製造方法の第1実施形態が適用される光導波路基板の平面図、図8は、本発明の積層体の製造方法の第1実施形態が適用される配線基板の平面図である。なお、以下の説明では、図7、8中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。
【0108】
まず、本発明の積層体の製造方法の第1実施形態の各工程を説明するのに先立って、この第1実施形態に用いられる治具6について説明する。
【0109】
治具6は、本体部61と、当接部62と、棒状体64とを有する。
本体部61は、平板状をなし、光導波路基板2と配線基板3とを、この順で積層して光導波路構造体(積層体)1とする際に、これらを載置するためのものである。
【0110】
当接部62は、本実施形態では、平坦面63を備える四角柱状をなしており、本体部61の縁部に接合されている。これにより、当接部62は、平坦面63が本体部61の上面とほぼ垂直をなす位置で固定される。
【0111】
また、棒状体64は、円柱状をなし、本体部61の上面とほぼ垂直をなすように、平坦面63からの離間距離が距離Xとなる位置で固定されている。
【0112】
かかる構成の治具6を用いて、光導波路基板2と配線基板3とが積層された光導波路構造体(積層体)1が、以下のようにして製造される。
【0113】
[1] まず、光導波路基板2に、その厚さ方向に貫通する1つの第1の貫通孔25を形成する。
【0114】
ここで、本実施形態では、図1、2に示す光導波路基板2および配線基板3の紙面右側に位置する辺を、それぞれ第1の辺26および第2の辺36と言うこととする。
【0115】
このとき、複数のコア部211は、第1の辺26に対して、その中心軸がほぼ直交することとなる。
【0116】
かかる位置関係である際に、本実施形態では、第1の貫通孔25を、コア部211の第1の辺26側の端部と、形成すべき第1の辺26との間に形成する。これにより、第1の貫通孔25の形成によるコア部211の損傷を確実に防止することができる。
【0117】
さらに、本実施形態では、光導波路基板2は、第1の辺26とほぼ直交する方向に延在する一対の辺261を備える構成をなし、第1の貫通孔25を、一対の辺261の中央部に形成する。
【0118】
第1の貫通孔25を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザーを用いて光導波路基板2を第1の貫通孔25の形状に貫通する方法や、第1の貫通孔25の形状に対応した型を用いて光導波路基板2を打ち抜く方法、ドリルなどを用いて機械的に光導波路基板2を第1の貫通孔25の形状に穿孔する方法等が挙げられる。
【0119】
[2] 次に、第1の貫通孔25から距離(第1の距離)Xの箇所で切断線DLに沿って光導波路基板2を切断することにより第1の辺26を形成する。
【0120】
[3] 次に、配線基板3に、その厚さ方向に貫通する1つの第2の貫通孔35を形成する。
【0121】
ここで、第2の貫通孔35を、第1の貫通孔25と第2の貫通孔35とを重ね合わせた(一致させた)際に、発光素子4が有する発光部が欠損部28aのミラー23aに、受光素子5が有する受光部が欠損部28bのミラー23bにそれぞれ対応する位置となるように形成する。
【0122】
第2の貫通孔35を形成する方法としては、第1の貫通孔25を形成する方法として挙げたのと同様の方法を用いることができる。
【0123】
[4] 次に、第2の貫通孔35から第1の距離と同一の距離(第2の距離)Xの箇所で切断線DLに沿って配線基板3を切断することにより第2の辺36を形成する。
【0124】
なお、前記工程[1]〜[4]により、本発明の積層体の製造方法の第1の工程が構成される。また、前記工程[3]、[4]は、前記工程[1]、[2]に先立って行うようにしてもよい。
【0125】
ここで、本実施形態のように、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35をそれぞれ形成した後、光導波路基板2および配線基板3をそれぞれ切断して第1の辺26および第2の辺36を形成することで以下のような利点が得られる。
【0126】
すなわち、本実施形態では、アライメント精度が低い貫通孔の形成工程を1度に制限し、この貫通孔の形成工程よりもアライメント精度が高い、貫通孔25、35から距離Xが保たれるようにして基板2、3を切断して辺26、36を形成する工程を経る構成としたため、後工程[5]、[6]における光導波路基板2と配線基板3との位置合わせを優れた精度で行うことができる。
【0127】
さらに、本実施形態では、第1の貫通孔25を、一対の辺261の中央部に形成することで以下のような利点が得られる。
【0128】
ここで、仮に、切断線DLに沿って光導波路基板2を切断する際に、本来、切断すべき位置から、図7に示すように角度θのズレが生じた状態で第1の辺26が形成されたとする。このような角度θのズレが生じたとしても、第1の貫通孔25が一対の辺261の中央部に形成されているため、次工程[5]において、第1の貫通孔25を棒状体64に挿通した際に、例えば、第1の貫通孔25が一対の辺261の一方の辺側に形成されている場合と比較して、他方の辺側における位置ズレを小さくすることが可能となる。
【0129】
[5] 次に、第1の貫通孔25および第1の辺26が形成された光導波路基板2を、治具6上に配置する。
【0130】
このとき、第1の貫通孔25を、棒状体64に挿通する。この際、棒状体64と平坦面63との離間距離および第1の貫通孔25と第1の辺26との離間距離がともに距離Xに設定されているため、第1の辺26が平坦面63に当接することとなる。その結果、平坦面63により、光導波路基板2の第1の貫通孔25を中心とする回動が規制される。換言すれば、平坦面63は、第1の辺26に当接することで、光導波路基板2の第1の貫通孔25を中心とする回動を規制する当接面としての機能を発揮する。
【0131】
[6] 次に、第2の貫通孔35および第2の辺36が形成された配線基板3を、治具6上の光導波路基板2上に積層する。
【0132】
このとき、第2の貫通孔35を、棒状体64に挿通する。この際、棒状体64と平坦面63との離間距離および第2の貫通孔35と第2の辺36との離間距離がともに距離Xに設定されているため、第2の辺36が平坦面63に当接することとなる。その結果、平坦面63により、配線基板3の第2の貫通孔35を中心とする回動が規制される。換言すれば、平坦面63は、第2の辺36に当接することで、配線基板3の第2の貫通孔35を中心とする回動を規制する当接面としての機能を発揮する。
【0133】
以上のような工程[5]、[6]により、本発明の積層体の製造方法の第2の工程が構成される。
【0134】
ここで、これら工程[5]、[6]を経ることで、棒状体64に、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の双方が挿通されることになり、その結果、第1の貫通孔25と第2の貫通孔35とが一致する(重なり合う)。さらに、平坦面63に、第1の辺26および第2の辺36の双方が当接することになり、その結果、第1の辺26と第2の辺36とが一致する。
【0135】
したがって、以上のようにして治具6を用いて積層した光導波路基板2と配線基板3とを、例えば、接着剤等を用いて接合することで、光導波路基板2と配線基板3とが優れた精度で接合された光導波路構造体(積層体)1を製造することができる。
【0136】
そして、上述した工程[1]〜[6]のような比較的簡単な工程で、光導波路構造体1を確実に製造することができる。
【0137】
なお、本実施形態では、前記工程[1]、[3]においてそれぞれ形成される、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35は、ともに真円とされる。これにより、前記工程[4]、[5]において、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の双方を棒状体64に挿通した際に、これらが、第1の辺26が延在する方向および第1の辺26と直交する方向の双方に対して位置ズレが生じてしまうのを確実に規制することができる。
【0138】
また、この場合、貫通孔25、35の直径φは、棒状体64の直径とほぼ同一の大きさに設定され、具体的には、好ましくは100〜1000μm程度、より好ましくは300〜800μm程度に設定される。
【0139】
また、本実施形態では、前記工程[1]〜[4]において、光導波路基板2に、第1の貫通孔25を形成した後に、第1の辺26を形成するとともに、配線基板3に、第2の貫通孔35を形成した後に、第2の辺36を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、例えば、光導波路基板2に、第1の貫通孔25と第1の辺26とを同時に形成するとともに、配線基板3に、第2の貫通孔35と第2の辺36とを同時に形成するようにしても良い。これら、基板2、3に対する貫通孔25、35と辺26、36との同時形成は、例えば、貫通孔25、35および辺26、36の形状に対応した型を用意し、この型を用いて基板2、3を打ち抜くことで容易に行うことができる。
【0140】
なお、本実施形態では、第1の貫通孔25は、一対の辺261の中央部に形成されているものとして説明したが、これに限らず、第1の貫通孔25は、複数のコア部211のうち外側に位置するもの同士の中央部に形成されているものとしてとられることもできる。
【0141】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の積層体の製造方法の第2実施形態について説明する。
【0142】
図9は、本発明の積層体の製造方法の第2実施形態が適用される光導波路基板の平面図、図10は、本発明の積層体の製造方法の第2実施形態が適用される配線基板の平面図である。なお、以下の説明では、図9、10中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。
【0143】
以下、第2実施形態の積層体の製造方法について、第1実施形態の積層体の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0144】
第2実施形態の積層体の製造方法では、第1の貫通孔25、第2の貫通孔35、第1の辺26および第2の辺36の位置が異なること以外は、前記第1実施形態の積層体の製造方法と同様である。
【0145】
すなわち、本実施形態では、図1、2に示す光導波路基板2および配線基板3の紙面下側に位置する辺を、それぞれ第1の辺26および第2の辺36とする。
【0146】
このとき、複数のコア部211は、第1の辺26に対して、その中心軸がほぼ平行となる。
【0147】
かかる位置関係である際に、本実施形態では、第1の貫通孔25を、複数のコア部211のうち第1の辺26側に位置するものと、第1の辺26との間に形成する。
【0148】
さらに、本実施形態においても、第1の辺26とほぼ直交する方向に延在する一対の辺261を備える構成となっており、第1の貫通孔25を、一対の辺261の中央部、すなわち、複数のコア部211の中央部に形成する。
【0149】
かかる構成の第2実施形態においても、前記第1実施形態で説明した工程[5]、[6]を経ることで、棒状体64に、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の双方が挿通されることになり、その結果、第1の貫通孔25と第2の貫通孔35とが一致する(重なり合う)。さらに、平坦面63に、第1の辺26および第2の辺36の双方が当接することになり、その結果、第1の辺26と第2の辺36とが一致する。
【0150】
したがって、以上のようにして治具6を用いて積層した光導波路基板2と配線基板3とを、例えば、接着剤等を用いて接合することで、光導波路基板2と配線基板3とが優れた精度で接合された光導波路構造体(積層体)1を製造することができる。
【0151】
<<第3実施形態>>
次に、本発明の積層体の製造方法の第3実施形態について説明する。
【0152】
図11は、本発明の積層体の製造方法の第3実施形態に用いられる治具を示す斜視図、図12は、本発明の積層体の製造方法の第3実施形態が適用される光導波路基板の平面図、図13は、本発明の積層体の製造方法の第3実施形態が適用される配線基板の平面図である。なお、以下の説明では、図12、13中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。
【0153】
以下、第3実施形態の積層体の製造方法について、第1実施形態の積層体の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0154】
第3実施形態の積層体の製造方法では、治具6の構成、第1の辺26および第2の辺36の位置が異なること以外は、前記第1実施形態の積層体の製造方法と同様である。
【0155】
すなわち、本実施形態では、治具6において、平坦面63は、階段状の段差形状をなし、これにより、第1の平坦面631と第2の平坦面632との2つの平坦面により構成される。また、これら第1の平坦面631と第2の平坦面632とは、本体部61の上面とほぼ垂直をなし、かつ、本体部61の上面の平面視において互いに平行となるように設定される。
【0156】
平坦面63をかかる構成のものとすることで、第1の平坦面631から棒状体64までの離間距離は距離X1となり、第2の平坦面632から棒状体64までの離間距離は距離X2(X2>X1)となる。
【0157】
そのため、かかる構成の治具6を用いて、光導波路基板2と配線基板3とが積層された光導波路構造体(積層体)1を得られるように、本実施形態では、前記工程[2]において、第1の貫通孔25から距離(第1の距離)X1の箇所で切断線DLに沿って光導波路基板2を切断することにより第1の辺26を形成し、さらに、前記工程[4]において、第2の貫通孔35から距離(第2の距離)X2の箇所で切断線DLに沿って配線基板3を切断することにより第2の辺36を形成する。
【0158】
かかる構成の第3実施形態において、前記第1実施形態で説明した工程[5]、[6]を経ることで、棒状体64に、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の双方が挿通されることになり、その結果、第1の貫通孔25と第2の貫通孔35とが一致する(重なり合う)。さらに、第1の平坦面631に第1の辺26が、第2の平坦面632に第2の辺36が、それぞれ、当接することになり、その結果、第1の辺26と第2の辺36とが平行となる。
【0159】
したがって、以上のようにして治具6を用いて積層した光導波路基板2と配線基板3とを、例えば、接着剤等を用いて接合することで、光導波路基板2と配線基板3とが優れた精度で接合された光導波路構造体(積層体)1を製造することができる。
【0160】
<<第4実施形態>>
次に、本発明の積層体の製造方法の第4実施形態について説明する。
【0161】
図14は、本発明の積層体の製造方法の第4実施形態が適用される光導波路基板の平面図、図15は、本発明の積層体の製造方法の第4実施形態が適用される配線基板の平面図である。なお、以下の説明では、図14、15中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。
【0162】
以下、第4実施形態の積層体の製造方法について、第1実施形態の積層体の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0163】
第4実施形態の積層体の製造方法では、形成する第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の形状が異なること以外は、前記第1実施形態の積層体の製造方法と同様である。
【0164】
すなわち、本実施形態では、図14、15に示す通り、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35を長円とし、この長円を、それぞれ、第1の辺26および第2の辺36と直交する方向に長くなるように形成する。
【0165】
かかる構成の第4実施形態においても、前記第1実施形態で説明した工程[5]、[6]を経ることで、棒状体64に、第1の貫通孔25および第2の貫通孔35の双方が挿通されることになり、その結果、第1の貫通孔25と第2の貫通孔35とが一致する(重なり合う)。さらに、平坦面63に、第1の辺26および第2の辺36の双方が当接することになり、その結果、第1の辺26と第2の辺36とが一致する。
【0166】
したがって、以上のようにして治具6を用いて積層した光導波路基板2と配線基板3とを、例えば、接着剤等を用いて接合することで、光導波路基板2と配線基板3とが優れた精度で接合された光導波路構造体(積層体)1を製造することができる。
【0167】
また、貫通孔25、35を、図14、15に示したような長円とすることで、前記工程[5]、[6]における貫通孔25、35の棒状体64への挿通を容易に行うことができるようになる。
【0168】
なお、この際、貫通孔25、35の第1の辺26と直交する方向への位置ズレが許容されることになるが、この位置ズレは、辺26、36の平坦面63への当接により規制される。そのため、貫通孔25、35を長円とした本実施形態においても、前記第1実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0169】
上述した光導波路構造体は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であるが、例えば、ルータ装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の積層体の製造方法を適用して製造された光導波路構造体を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0170】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度が高められるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0171】
以上、本発明の積層体の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0172】
例えば、本発明の積層体の製造方法では、前記第1〜第4実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0173】
また、前記各実施形態では、機能性基板として配線基板を用意し、これを光導波路基板に積層して積層体を得る場合について示したが、これに限定されず、例えば、機能性基板として光導波路基板を用意し、光導波路基板同士を積層して積層体を得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0174】
1 光導波路構造体
2 光導波路基板
20 光導波路
21 コア層
210 フィルム
211 コア部
212 クラッド部
22 クラッド層
23a、23b ミラー
25 第1の貫通孔
26 第1の辺
261 一対の辺
28a、28b 欠損部
29 保護層
3 配線基板
30 配線部
31 基材
35 第2の貫通孔
36 第2の辺
4 発光素子
41 素子本体
42 バンプ
40 発光素子用IC
401 素子本体
402 バンプ
5 受光素子
51 素子本体
52 バンプ
50 受光素子用IC
501 素子本体
502 バンプ
6 治具
61 本体部
62 当接部
63 平坦面
631 第1の平坦面
632 第2の平坦面
64 棒状体
70 感光性樹脂組成物
M マスク
L 光
EL 感光用光
DL、DL 切断線
X、X1、X2 距離
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝送するコア部を備える光導波路基板と、機能性基板とを、前記光導波路基板の第1の辺と、前記機能性基板の第2の辺とが平行となるように積層してなる積層体を製造する積層体の製造方法であって、
前記光導波路基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第1の貫通孔を形成し、かつ、前記第1の貫通孔から第1の距離の箇所で前記光導波路基板を切断して前記第1の辺を形成するとともに、前記機能性基板に、その厚さ方向に貫通する1つの第2の貫通孔を形成し、かつ、前記第2の貫通孔から第2の距離の箇所で前記機能性基板を切断して前記第2の辺を形成する第1の工程と、
前記光導波路基板と前記機能性基板とを、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが一致し、かつ前記第1の辺と前記第2の辺とが平行となるようにして、重ね合わせた状態で、これら同士を接合することにより前記積層体を得る第2の工程とを有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺に、中心軸がほぼ直交するように配列された前記コア部を複数個備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、複数の前記コア部のうち外側に位置するもの同士の中央部に形成する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、各前記コア部の前記第1の辺側の端部と、形成すべき前記第1の辺との間に形成する請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺とほぼ直交する方向に延在する一対の辺を備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、前記一対の辺の中央部に形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記光導波路基板は、該光導波路基板に形成すべき前記第1の辺に、中心軸がほぼ平行となるように配列された前記コア部を複数個備え、
前記第1の工程において、前記第1の貫通孔を、複数の前記コア部のうち前記第1の辺側に位置するものと、形成すべき前記第1の辺との間に形成する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔は、ともに真円である請求項1ないし5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔は、ともに長円であり、それぞれ、前記第1の辺および前記第2の辺と直交する方向に長い請求項1ないし5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の工程において、前記光導波路基板に、前記第1の貫通孔を形成した後に、前記第1の辺を形成するとともに、前記機能性基板に、前記第2の貫通孔を形成した後に、前記第2の辺を形成する請求項1ないし7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程において、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との双方を棒状体に挿通することにより、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを一致させる請求項1ないし8のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の距離と前記第2の距離とが同一であり、
前記第2の工程において、前記第1の辺と前記第2の辺との双方を平坦面に当接することにより、前記第1の辺と前記第2の辺とを一致させる請求項1ないし9のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記機能性基板は、少なくとも一方の面に金属配線を備える電気配線基板である請求項1ないし10のいずれかに記載の積層体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−78608(P2012−78608A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224413(P2010−224413)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】