説明

積層体構造物

【課題】
比較的高い耐衝撃性を有する積層体構造物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る積層体構造物は、第1基板2Aと、該第1基板2Aに対して当接するように重畳して配置された第2基板2Bとを有する積層体2と、該積層体2の側面を取り囲み、積層体の両主面の少なくとも外周領域まで延在された外枠体20とを備え、前記第1基板2Aと前記第2基板2Bは、前記積層体2の前記両主面の前記外周領域に位置し、前記第1基板2A及び前記第2基板2Bを貫通する貫通孔7A、7Bを有し、前記外枠体20は、前記積層体2よりも弾性率が低い材料により形成され、且つ、その一部が前記貫通孔7A、7Bに充填されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板から成る積層体を有した積層体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の基板を積層して成る積層体を備えた積層体構造物が種々の分野で用いられている。
【0003】
例えば、アミューズメントの分野では、複数の基板として円形状のセラミック基板を用いて積層体構造物を形成することにより、該積層体構造物を遊戯用コインとして用いることが検討されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
電波による個体識別(RFID)技術の分野では、複数の基板として樹脂基板を用いて、樹脂基板の間にICタグを内蔵した積層体構造物を形成することにより、該積層体構造物を非接触ICカードであるIDカードやクレジットカード、乗車カード、電子マネー等として用いている。
【0005】
上述した遊戯用コインやIDカードは、ユーザーが使用する際に頻繁に大きな外力が印加される傾向にある。例えば、遊戯用コインの場合、遊戯機にコインを投入すると遊戯機内でコインが落下し、コインに対して大きな物理的衝撃が加わる。また、IDカードの場合、ユーザーが読み取り機にIDカードをかざす際に、ユーザーが読み取り機に対してIDカードを強く押し当てて、IDカードに対して大きな圧力が加わることがある。
【0006】
しかしながら、従来の積層体構造物においては、外部からの衝撃を吸収するような工夫は殆ど施されておらず、積層体に印加された外力によって、積層体自体に欠けが生じたり、内部に保持されたICタグが破損したりするという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−163784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、比較的高い耐衝撃性を有する積層体構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る積層体構造物は、第1基板と、該第1基板に対して当接するように重畳して配置された第2基板とを有する積層体と、該積層体の側面を取り囲み、積層体の両主面の少なくとも外周領域まで延在された外枠体とを備え、前記第1基板と前記第2基板は、前記積層体の前記両主面の前記外周領域に位置し、前記第1基板及び前記第2基板を貫通する貫通孔を有し、前記外枠体は、前記積層体よりも弾性率が低い材料により形成され、且つ、その一部が前記貫通孔に充填されていることを特徴とする。
【0010】
なお、前記第1基板に設けられる前記貫通孔と、前記第2基板に設けられる前記貫通孔とは、互いに連通しており、前記第1基板の貫通孔に充填された前記外枠体と、前記第2基板の貫通孔に充填された外枠体とが互いに接続していることが好ましい。
【0011】
また、前記第1基板は、前記第2基板との当接面に複数の凸部を、前記第2基板は、前記第1基板との当接面に複数の凹部をそれぞれ有しており、該凸部と該凹部は、前記第1基板と前記第2基板の当接面で嵌合されていることが好ましい。
【0012】
更に、前記第1基板は、前記第2基板との当接面に凸部及び凹部を、前記第2基板は、前記第1基板との当接面に凸部及び凹部をそれぞれ有しており、該凸部と該凹部は、前記第1基板と前記第2基板の当接面で嵌合されていることが好ましい。
【0013】
また、前記第1基板と前記第2基板が、互いに略同一形状の線対称体であって、前記第1及び第2基板の前記凸部と前記凹部は各々の基板の線対称軸上に配設されていることが好ましい。
【0014】
更に、前記貫通孔は、前記第1及び第2基板に対して、それぞれ複数個ずつ設けられ、該各基板における複数の貫通孔は、各々の基板の前記凸部と前記凹部を結ぶ線分に垂直で、且つ各々の基板中心を通る、該基板に平行な軸に対して線対称となるような位置関係に配置されていることが好ましい。
【0015】
また、前記貫通孔は、前記凸部に対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第1の貫通孔群と、前記凹部に対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第2の貫通孔群とに分類され、前記第1及び第2の貫通孔群における貫通孔の配列密度は、前記凸部及び前記凹部の近傍の領域の方が、前記凸部と前記凹部の離間した領域よりも高いことが好ましい。
【0016】
更に、前記積層体と前記外枠体との接続領域に位置する前記積層体の前記両主面に、それぞれ段差を有することが好ましい。
【0017】
また、前記第1基板と前記第2基板がセラミックから成ることが好ましい。
【0018】
更に、前記積層体の重量分布と前記外枠体の重量分布を合算して得られる全体の重量分布のばらつきを低減するバランス部材を別途積層体又は外枠体に設けることが好ましい。
【0019】
また、前記積層体の内部に保持されるICタグを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、積層体構造物が積層体と外枠体とを備え、外枠体は積層体の側面を取り囲み、積層体の両主面の少なくとも外周領域まで延在し、更に積層体よりも弾性率が低い材料としたことから、積層体構造物に印加される衝撃が外枠体によって良好に吸収され、積層体に伝わる衝撃を緩和することができ、積層体構造物の欠けや破損が良好に防止される。
【0021】
しかも、積層体は基板を貫通する貫通孔を有し、外枠体の一部がこの積層体の貫通孔に充填されることから、外枠体に横方向に力が印加された場合でも、貫通孔に充填された外枠体の一部が止め具の役割をすることにより、外枠体が積層体より剥離することを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の積層体構造物の第1の実施形態であるコイン10の平面図であり、(b)は(a)のA0−A1線における断面図であり、(c)は(b)に示すコイン10の断面分解図である。
【図2】図2は線対称な形状に形成された基板に配設される凸部、凹部及び貫通孔の配置を説明する図である。
【図3】図3はコイン10に含まれるICタグ30について説明する図であり、(a)はICタグ30の平面図であり、(b)はICタグ30の断面図である。
【図4】図4はコイン10に含まれるICタグ30の他の実施形態である。
【図5】図5はコイン10の製造方法を説明する図である。
【図6】(a)は本発明の積層体構造物の第2の実施形態であるコイン50の平面図であり、(b)は(a)のD0−D1線における断面図である。
【図7】図7は本発明の積層体構造物の第2の実施形態であるコイン50の貫通孔の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の積層体構造物について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態(以下、本実施形態という)に係る積層体構造物として図1に示す遊戯用コインを例に説明する。
【0025】
同図に示すコイン10は、積層体2と、積層体2の外周を被覆する外枠体20と、積層体2に内蔵されるICタグ30とを備えている。
【0026】
コイン10は、アミューズメント施設等で使用される貨幣代用のチップとして機能するとともに、ICタグ30を内部に保持するICタグ保持体としての機能も有しており、ICタグ30にコインが使用されるアミューズメント施設の情報や、コインの種類、コインの使用履歴等の種々の情報を記憶させることによって、種々の用途に応じた適切なコインの管理や情報収集を行うことができる。
【0027】
積層体2は、一方主面12aに開口4Aを有する第1の基板2Aと、一方主面8aに開口4Bを有する第2の基板2Bとを有しており、該開口4Aと該開口4BとでICチップ18を収容するための空間19を形成するように第1及び第2の基板2A、2Bの一方主面同士を重畳させて構成されている。
【0028】
また、積層体2を構成する第1及び第2の基板2A,2Bは、図2に示すように、互いに略同一形状で、且つ対称軸B0−B1について線対称な形状に形成されており、各々の外周部、具体的には開口4A、開口4Bよりも外側の領域に、凸部3A,3Bと、凸部3A,3Bに対応して設けられる凹部5A,5Bと、第1及び第2の基板2A、2Bを厚み方向に貫通する複数の貫通孔7A、7Bを有している。
【0029】
凸部3A及び凹部5Aは、第1の基板2Aの一方主面12aの外周部に、凸部3B及び凹部5Bは、第2の基板2Bの一方主面8aの外周部に、それぞれ設けられており、各々の基板2A,2Bの第1対称軸B0−B1上に配設されている。そして、凸部3Aが凹部5Bに、凸部3Bが凹部5Aにそれぞれ嵌合されることにより、第1及び第2の基板2A、2B同士は固定される。それ故、第1及び第2の基板2A、2Bの相対位置関係を安定させることが可能となり、例え一方主面12a及び一方主面8aの面方向の捻れの外力が加わった場合でも、第1及び第2の基板2A、2Bの位置ずれは比較的起こりにくくなる。
【0030】
一方、複数の貫通孔7A、7Bは、例えば、円柱状等、種々の形状に形成されており、各基板に複数個(本実施形態においては、12個)ずつ設けられ、第1の基板2Aに設けられる貫通孔7Aと、第2の基板2Bに設けられる貫通孔7Bとが互いに連通するように配置されている。
【0031】
また、本実施形態における貫通孔7A、7Bは、各基板2A、2B内で凸部3A及び凹部5Aを結ぶ線分並びに凸部3B及び凹部5Bを結ぶ線分に対して垂直で、且つ基板2A、2Bの中心を通る、基板2A、2Bに平行な軸を第2対称軸C0−C1と仮定した場合に、該第2対称軸C0−C1に対して線対称となる位置関係に配置されている。しかも、上述したように、凸部3A及び凹部5Aや凸部3B及び凹部5Bは、第1対称軸B0−B1に対して線対称となる位置関係に配置されている。従って、略同一のデザインを有する基板を第1及び第2の基板2A、2Bとして使用したとしても、互いの凸部と凹部、互いの貫通孔同士が、それぞれ同じ位置に配置されることとなり、第1及び第2の基板2A、2Bの生産性を向上させることができる。なお、厳密にいえば、開口4A、4Bのパターンも第1及び第2の基板2A、2B同士で略同一デザインであることが望ましいが、かかる開口4A、4Bは、凸部、凹部及び貫通孔に比して十分な大きさを備えており、許容されるずれ量が大きいことから、後述するICチップを収容する空間19を形成できる程度に開口4A、4Bが重複していれば開口4A、4Bの形状や位置は互いに異なっていても構わない。
【0032】
本実施形態における第1の基板2A及び第2の基板2Bは、セラミック焼結体から成り、例えばアルミナ、ジルコニア、アルミナ/ジルコニア複合体等から成る。アルミナ、ジルコニア、アルミナ/ジルコニア複合体は、セラミック焼結体の中でも耐衝撃性が比較的高く、コイン10の積層体を構成する材質として好ましい。
【0033】
そして、上述した積層体2には外枠体20が取着されている。
【0034】
外枠体20は、コイン10に印加された衝撃を吸収するためのものであり、積層体2よりも弾性率の低い材料により形成されている。例えば、本実施形態のように積層体2がセラミック材料で形成されている場合、外枠体20はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene))共重合樹脂(Copolymer Resin)等の樹脂材料で構成されている。なお、材料の弾性率は、セラミック材料や金属材料の場合、超音波パルス法、樹脂材料の場合にはDMA法によって測定される。
【0035】
また、外枠体20は比較的積層体2に衝撃が印加され易い積層体の側面と両主面の外周領域を覆うとともに積層体2の中央領域を露出させるように積層体2に取着されている。このため、コイン10を落下させたり遊戯機に投入する等してコイン10に物理的衝撃が印加された場合でも、コイン10にかかる衝撃は外枠体20によって良好に吸収され、コインが割れたり、コイン端部が欠けたりすることが少ないだけでなく、積層体2ひいては積層体2に収容されるICチップ18に伝わる物理的衝撃は比較的小さい。
【0036】
更に、外枠体20は、その一部が第1及び第2基板2A、2Bに設けられた貫通孔7A、7Bに充填されるように延在されており、貫通孔7A内の延在部と貫通孔7B内の延在部とが互いに接続されている。よって、一方主面12b側に位置する外枠体20と一方主面8b側に位置する外枠体20との接合強度を比較的高くすることができる。従って、外枠体20に対して積層体2に平行な外力や、積層体2から引き剥がすような外力が印加されたとしても、貫通孔7A、7Bに充填された外枠体20の一部が止め具の役割をし、外枠体20を良好に積層体2に取着させることができる。その結果、コイン10の表面、すなわち、積層体2の中央領域から外枠体20の表面にかけ図柄や文字が施されている場合に、その図柄や文字の位置ずれが抑制され、図柄や文字の視認性やコインの美観を高く維持することが可能となる。
【0037】
一方、積層体2に内蔵されたICタグ30は、図3に示すように基体16と基体16に実装されたICチップ18と基体16に形成されたアンテナ14を備えており、第1の基板2Aと第2の基板2Bによって挟持されている。
【0038】
基体16は、ICチップ18やアンテナ14を支持するためのものであり、PET(ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate))等の樹脂材料により形成されている。この基体16は、第1の基板2Aと第2の基板2Bによって直接挟持される挟持領域と、空間19内に配置される非挟持領域とを有している。本実施形態においては、挟持領域にアンテナ14が、非挟持領域にICチップ18がそれぞれ配置されている。
【0039】
また、基体16に形成されるアンテナ14は、外部からの電波信号を受信したり、あるいは外部へ電波信号を送信したりする機能を有しており、ICチップ18に接続されている。
【0040】
かかるアンテナ14は、例えば、銅、金、銀、アルミニウム、パラジウム等を主成分とする金属材料により形成された電気配線から成り、該電気配線は、基体16の外周領域を所定の間隔を空けて渦巻状に配設されている。
【0041】
ところで、アンテナの方式は、一般的に、外部の送受信器のアンテナコイルと磁束結合させてエネルギーや信号を送受信する電磁誘導方式や、外部の送受信器のアンテナと電波のやり取りを行いエネルギーや信号を送受信したりする電波方式等に分類され、本実施形態のアンテナ14は、電磁誘導方式を採用している。しかも、アンテナ14は、上述のように、セラミックから成る第1及び第2の基板2A、2Bに挟持されている。その結果、セラミックが有する高い誘電率によって電波が良好に透過されることとなり、例えば外部の電波送受信器からの電波を良好に受信できるとともに、外部の電波送受信器に対して電波を良好に送信することができる。
【0042】
また、アンテナ14の方式として電波方式を採用した場合は、アンテナ14が誘電率の高いセラミックの第1及び第2の基板2A、2Bに挟持されていることにより、波長短縮の効果によりアンテナ14は電気配線を短くできるなどの小型化が可能となる。
【0043】
一方、アンテナ14に接続されているICチップ18は、シリコンなどから成る半導体基板上にEEPROMなどのメモリと、該メモリに対して情報の読み書きを行う集積回路と、アンテナ14を介して送受信される電波を電気信号に変換したり、電気信号を電波に変換したりする変調器とを有している。前記メモリは、上述したような、コインが使用されるアミューズメント施設の情報や、コインの種類、コインの使用履歴等の種々の情報が格納されており、該格納された情報はアンテナより変調機を介して受信した外部からの信号に基づいて集積回路を駆動することにより適宜更新されたり、変調機及びアンテナ14を介して電波として外部に送信されたりする。
【0044】
また、ICチップ18は、第1及び第2の基板2A、2Bのそれぞれの開口4A、4Bが対向して形成された空間19に配置されており、第1及び第2の基板2A、2Bには直接接合も接触もされていない。従って、例えばコイン10を落下させたり遊戯機に投入したりして、コイン10ひいては積層体2に物理的衝撃が加わった場合でも、該衝撃のエネルギーは空間19内の基体16が振動するエネルギー等として吸収されることから、基体16を介してICチップ18に到達する物理的衝撃は比較的小さい。
【0045】
なお、ICチップ18は、アンテナ14の電気配線に半田バンプやボンディングワイヤー、導電性樹脂等の接合材を介して接続させることにより、基体16上に実装される。
【0046】
また、電波の送受信感度を比較的高くするためには、ICチップ18は図4に示すようにシート状の基体16の中心を避け、中心から離れた位置に配置することが好ましい。具体的にはアンテナ配線14に近く、つまり第1及び第2の基板2A、2Bに形成された開口4A、4Bとで形成される空間19の外周領域に開口4A、4Bの壁面に接触しないように配置する。このような構成とすることで、アンテナ配線14によって形成される電磁波が比較的集中する領域(基体16の中心)から離れた位置にICチップ18を配置することで、ICチップ18による電磁波の減衰を抑制し、電波の送受信感度は比較的高くできるからである。
【0047】
次に、上述したコイン10の製造方法について一例を説明する。
【0048】
(1)まず、第1及び第2の基板2A、2Bを準備する。
【0049】
第1及び第2の基板2A、2Bは、例えば、従来周知の一軸プレス成形によって製作される。具体的には、所望する第1及び第2の基板2A、2Bの形状に対応した形状を有する超硬製のプレス用金型に、セラミック原料とバインダーなどを混合、粉砕、造粒したセラミック粉末を充填し、常温で加圧することにより所望の形状をしたプレス成形体を製作する。該プレス成形体を1400〜1700℃で1〜10時間焼成することにより第1及び第2の基板2A、2Bは得られる。
【0050】
一軸プレス成形法により得られる第1及び第2の基板2A、2Bは、プレス用金型へのセラミック粉体の充填度合いや、焼成時の温度分布を制御することによりセラミック焼成時の収縮を制御することができ、図2のように基板をある一軸B0−B1線に対して比較的高精度な線対称の形状にすることができる。また、プレス用金型へのセラミック粉体の充填度合いや、焼成時の温度分布の制御が困難な場合は、セラミック焼成時の収縮を予め考慮したプレス用金型の形状とすることで焼成後に比較的高精度な線対称や真円などの所望の形状の基板を得ることができる。
【0051】
なお、一軸プレス成形の場合には、第1及び第2の基板2A、2Bの端部にはバリが発生し易いため、あらかじめ端部にはC面を取る設計としておくことが好ましい。また、焼結後の第1及び第2の基板2A、2Bは、必要に応じてバレル研磨を行い焼結体端部のバリを除去してもよい。
【0052】
(2)次に、ICタグを準備する。
【0053】
ICタグ30は、PET(ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate))製の樹脂シートを用意し、該樹脂シートに例えば、従来周知技術であるフォトリソ法により銅から成る導体配線を形成してアンテナ14とするとともに、該導体配線に対して従来周知の半導体製造技術を用いて製作されたICチップ18を導電性のエポキシ接着剤によって接合することにより、製作される。
【0054】
(3)第1の基板、第2の基板及びICタグを用いて積層体を組み立てる。
【0055】
第1の基板2Aと第2の基板2Bの間にICタグ30を介在させ、各基板2A、2Bが有する前記凸部と前記凹部を互いに嵌合させることにより、ICタグ30が基板2A、2Bによって挟持される。このとき、第1の基板2Aの一方主面12aの外周部に設けられた凸部3A並びに凹部5A、及び一方主面8aの外周部に設けられた凸部3B並びに凹部5Bは、図5(a)に示すようにそれぞれ凸部3Aと凹部5B、又凹部5Aと凸部3Bが嵌合するように組み立てられる。このように本実施形態では凹凸嵌合を利用して組み立てを行うため、組み立て時の位置合わせが比較的容易に行える。
【0056】
なお、第1及び第2の基板2A、2Bの外周部、具体的には開口4A、開口4Bよりも外側の領域で各々の基板の対向する領域にエポキシ樹脂等の耐熱性接着剤を塗布してICタグを接合しても良く、この場合、凸部、凹部は必ずしも必要ない。
【0057】
また、第1及び第2の基板2A、2Bは、上述したように、略同一形状で、且つ線対称な形状に形成されており、更に各基板に設けられた凸部3A並びに凹部5Aは及び凸部3B並びに凹部5Bは、各々の基板の第1対称軸B0−B1上に配設され、更に、貫通孔7A、7Bについても、各基板に複数個ずつ設けられ、第2対称軸C0−C1に対して線対称となる位置関係に配置されている。従って、第1の基板2Aと第2の基板2Bとを位置合わせすることが容易となり、例えば、貫通孔7A及び貫通孔7Bは、図5(b)に示すように略同じ位置に配置されるように精度良く連通している。
【0058】
(4)外枠体を形成し、コイン10を完成させる。
【0059】
外枠体20は、従来周知技術の射出成形法により形成される。外枠体20は、得られた積層体2を射出成形機の金型内に配置して積層体2の外周領域を露出させ、該外周領域にABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene))共重合樹脂の溶融樹脂を注入することにより、外周領域に位置する積層体2の両面及び側面並びに図5(c)に示すように連通した貫通孔7A及び貫通孔7B内に溶液樹脂が被着され、これを硬化させることで製作される。
【0060】
ここで、貫通孔7A,7Bは、図5(b)のように、略同じ位置に配置されるように精度良く連通しているため、ABS樹脂を射出成形する際に、貫通孔7A、7BにABS樹脂のボイド等が多量に発生することなく良好に充填される。それ故、積層体2と外枠体20の接合強度を高くすることができ、外枠体20が積層体2に対して良好に取着され、積層体2が外枠体20に対して回転する等の問題の発生を低減することが可能となる。
【0061】
なお、外枠体20と積層体2の露出部分に印刷法や溶射法等により図柄や文字等を装飾しても良いし、該装飾を射出成形工程で同時に行っても良い。
【0062】
以上の工程を経てコイン10が完成する。
【0063】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の積層体構造物の第2の実施形態を説明する図であり、図1とは異なる形態のコイン50の概略図である。図6において、図1と同様の構成については、図1と同じ符号で示し、詳細な説明を省略する。
【0064】
第2実施形態コイン50が第1実施形態と異なる点は、第2実施形態に係るコイン50が、一方主面12a及び一方主面8aに開口は設けられておらず、一方主面12a及び一方主面8aは略平面状となっている点、並びに、外枠体20は積層体2の全体を覆うように一括成形されている。このような構成とすることで、外観や手触り感は古くから使用されている遊戯用樹脂コインと同様でありながら、比較的耐衝撃性良くICタグ30を積層体2の内部に保持し、かつセラミックを積層体2に使用することで重量感があり、遊戯用コインとしての高級感を出すことが可能となる。
【0065】
また、積層体2と外枠体20との接合強度を上げるためには、図6(b)に示すように、第1及び第2の基板2A、2Bの外枠体20との接続領域に位置する他方主面12b及び他方主面8bに少なくとも1つの段差を設けることが有効である。段差の形状的アンカー効果により基板と外枠体との接合強度が改善される。
【0066】
なお、基板と外枠体との接合強度を改善するためには、上述のように単純な段差を設ける以外に、他方主面12b及び他方主面8bの表面に多数の錘状突起を成形したり、又は加工したりすることも有効である。
【0067】
更に、第1の実施形態との相違点としては、貫通孔の配列及び配列密度である。本実施形態における複数の貫通孔は、図7に示すように、凸部3A、3Bに対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第1の貫通孔群9Aと、凹部5A、5Bに対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第2の貫通孔群9Bとに分類され、該第1及び第2の貫通孔群9A、9Bにおける貫通孔の配列密度は凸部3A、3B及び凹部5A、5Bの近傍の領域のほうが、凸部3A、3B及び凹部5A、5Bの離間した領域よりも高くなっている。
【0068】
上述のように一軸プレス成形法により成形されており、線対称の形状で、且つ線対称軸E0−E1に向かう方向に収縮している基板の場合には、凸部3Aと凹部5A、凸部3Bと凹部5Bを線対称軸上に配設し、凸部3A、3Bと凹部5A、5Bに近い場所により多くの貫通孔を配置することで基板の重量バランスを取ることが可能となる。
【0069】
また、コイン10では、コインとしての重量バランスを取るために、積層体2の重量分布と外枠体20の重量分布を合算して得られる全体の重量分布のばらつきを低減するバランス部材を別途積層体2又は外枠体20に設けることも有効である。
【0070】
本発明は上述した第1及び第2の実施形態に示したものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更することができることは言うまでもない。
【0071】
例えば、本実施形態においては、積層体2を構成する基板2A、2Bをセラミックにより形成したが、金属や熱可塑性樹脂によって形成しても良い。ただし、金属により基板2A,2Bを形成する場合であって、上述の実施形態と同様に、第1及び第2の基板によってアンテナを挟持する場合、金属とアンテナとが接触することを防ぐため、第1及び第2の基板のうち、アンテナに近接する一方の基板の一方主面に絶縁層を形成したり、あるいは、アンテナを絶縁性の保護膜で被覆する等してアンテナと基板とを絶縁する必要がある。
【0072】
また、上述の実施形態においては、第1及び第2の基板を互いに略同一形状であって、線対称の形状としたが、異なる形状であってもよいし、非線対称の形状であっても構わない。
【0073】
また、本実施形態においては、第1及び第2の基板2A、2Bの各々に凸部及び凹部の双方を設けるようにしたが、いずれか一方を凸部のみ、他方を凹部のみ設けるようにしても良いし、凸部、凹部の数も問わない。
【0074】
更に、上述の実施形態においては、貫通孔7A、7Bは略同じ位置に配置されるように連通しているが、貫通孔同士が多少位置ずれした形で異なった位置に配置されて連通していても良いし、貫通孔同士が互いに連通していなくても良い。
【0075】
更に、本実施形態においては、ICタグ30を積層体2に内蔵するようにしたが、ICタグ30は無くても良い。
【0076】
また、本実施形態では遊技用コインを一例として説明したが、例えば本発明の積層体構造物は、物品の配送ルートでの移動を管理する荷札や、物品の流通過程での履歴管理用タグ、センサーを様々な場所に取り付けることで意味のあるデータを得ようとするセンサーネットワークでのセンサー収容部品など、用途は特に限定されない。
【符号の説明】
【0077】
2 積層体
2A 第1の基板
2B 第2の基板
3A 凸部(第1の基板)
3B 凸部(第2の基板)
4A 開口(第1の基板)
4B 開口(第2の基板)
5A 凹部(第1の基板)
5B 凹部(第2の基板)
7A 貫通孔(第1の基板)
7B 貫通孔(第2の基板)
8a 第1の基板の一方主面、
12a 第2の基板の一方主面
8b 第1の基板の他方主面、
12b 第2の基板の他方主面
9A 貫通孔群(第1の基板)
9B 貫通孔群(第2の基板)
10、50 コイン
14 アンテナ
16 基体
18 ICチップ
19 空間
20 外枠体
30 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、該第1基板に対して当接するように重畳して配置された第2基板とを有する積層体と、該積層体の側面を取り囲み、積層体の両主面の少なくとも外周領域まで延在された外枠体とを備え、
前記第1基板と前記第2基板は、前記積層体の前記両主面の前記外周領域に位置し、前記第1基板及び前記第2基板を貫通する貫通孔を有し、
前記外枠体は、前記積層体よりも弾性率が低い材料により形成され、且つ、その一部が前記貫通孔に充填されていることを特徴とする積層体構造物。
【請求項2】
前記第1基板に設けられる前記貫通孔と、前記第2基板に設けられる前記貫通孔とは、互いに連通しており、
前記第1基板の貫通孔に充填された前記外枠体と、前記第2基板の貫通孔に充填された外枠体とが互いに接続していることを特徴とする請求項1に記載の積層体構造物。
【請求項3】
前記第1基板は、前記第2基板との当接面に複数の凸部を、前記第2基板は、前記第1基板との当接面に複数の凹部をそれぞれ有しており、該凸部と該凹部は、前記第1基板と前記第2基板の当接面で嵌合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体構造物。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第2基板との当接面に凸部及び凹部を、前記第2基板は、前記第1基板との当接面に凸部及び凹部をそれぞれ有しており、該凸部と該凹部は、前記第1基板と前記第2基板の当接面で嵌合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体構造物。
【請求項5】
前記第1基板と前記第2基板が、互いに略同一形状の線対称体であって、前記第1及び第2基板の前記凸部と前記凹部は各々の基板の線対称軸上に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の積層体構造物。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記第1及び第2基板に対して、それぞれ複数個ずつ設けられ、該各基板における複数の貫通孔は、各々の基板の前記凸部と前記凹部を結ぶ線分に垂直で、且つ各々の基板中心を通る、該基板に平行な軸に対して線対称となるような位置関係に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の積層体構造物。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記凸部に対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第1の貫通孔群と、前記凹部に対応して設けられ、3個以上の貫通孔から成る第2の貫通孔群とに分類され、前記第1及び第2の貫通孔群における貫通孔の配列密度は、前記凸部及び前記凹部の近傍の領域の方が、前記凸部と前記凹部の離間した領域よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の積層体構造物。
【請求項8】
前記積層体と前記外枠体との接続領域に位置する前記積層体の前記両主面に、それぞれ段差を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の積層体構造物。
【請求項9】
前記第1基板と前記第2基板がセラミックから成る、請求項1乃至8のいずれかに記載の積層体構造物。
【請求項10】
前記積層体の重量分布と前記外枠体の重量分布を合算して得られる全体の重量分布のばらつきを低減するバランス部材を別途積層体又は外枠体に設けることを特徴とする請求項1乃至9に記載の積層体構造物。
【請求項11】
前記積層体の内部に保持されるICタグを更に備えたことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の積層体構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−170592(P2011−170592A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33437(P2010−33437)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】