説明

積層体

【課題】調湿性と可とう性を兼ね備えた調湿性建材を提供する。
【解決手段】調湿層の上に装飾層が積層された積層体において、前記調湿層は、吸放湿性粉粒体及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものとし、前記装飾層は、平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものであり、当該装飾層の表面のうち5〜80%を占める領域には、有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が30重量%以下であって、その重量比率が周辺領域よりも相対的に低く設定された粒子凝集型通気体が埋設されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿性を有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、近年、快適な居住空間に対する関心が高まっている。これに関し、壁、天井等の内装面の表面仕上げにおいては、結露防止やカビ発生防止、あるいは湿度の調整による不快感抑制、等の機能を有する調湿性仕上材への期待が高まっている。例えば、特許文献1(特開2003−155786号公報)には、吸放湿性材料と水硬性物質とを含む吸放湿性基材の少なくとも一面に、吸放湿性材料粒粉が添加された塗料による塗膜層が形成されてなる調湿性建材が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の調湿性建材では、結合材として水硬性物質が使用されているため、建材自体の強度はある程度高くなる反面、可とう性に乏しく脆いという欠点がある。そのため、施工面となる基材が不陸、段差等を有する場合には、基材の平滑化処理を厳密に行わなければ良好な仕上げ面が得られ難く、施工作業が煩雑になりやすい。また、基材が湾曲している場合の施工も困難である。
このような問題点に対し、水硬性物質に替えて、比較的軟質の有機質結合材を使用すれば、可とう性を高めることは可能である。しかしながら、単にこのような有機質結合材を採用しただけでは、十分な調湿性能が得られ難くなる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−155786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、調湿性と可とう性を兼ね備えた調湿性建材を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、吸放湿性粉粒体及び有機質結合材を主成分とする調湿層の上に、有色骨材及び有機質結合材を主成分とする装飾層を積層し、当該装飾層内に特定条件で通気領域を設けることに想到し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明積層体は、下記の特徴を有するものである。
【0007】
1.調湿層の上に装飾層が積層された積層体であって、
前記調湿層は、吸放湿性粉粒体及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものであり、
前記装飾層は、平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものであり、
当該装飾層の表面のうち5〜80%を占める領域には、
有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が30重量%以下であって、その重量比率が周辺領域よりも相対的に低く設定された粒子凝集型通気体が埋設されていることを特徴とする積層体。
2.前記装飾層における粒子凝集型通気体が、その周辺領域とは異色であることを特徴とする1.記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調湿性と可とう性を兼ね備えた調湿性建材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明積層体は、調湿層の上に装飾層が積層されたものである。このうち、調湿層は、湿度の変化により水蒸気の吸着及び脱着を繰り返し行うことができる性能を有するものである。このような調湿層としては、水蒸気吸脱着性においてヒステリシス特性を示すものが使用でき、構成成分として、例えば吸放湿性粉粒体、及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を主成分とするもの等が使用できる。
【0011】
吸放湿性粉粒体としては、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が使用できる。吸放湿性粉粒体の平均粒子径は、通常0.001〜1mm、好ましくは0.01〜0.5mm程度である。
【0012】
結合材としては、上記吸放湿性粉粒体を固定化するとともに、調湿層に可とう性、追従性を付与する成分である。このような有機質結合材としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂(樹脂エマルション)から選ばれる1種以上が好適である。樹脂の種類については特に限定されず、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらは架橋反応性を有するものであってもよい。
【0013】
調湿層における有機質結合材のガラス転移温度は、通常−50〜50℃、好ましくは−30〜30℃である。有機質結合材のガラス転移温度がこのような範囲内であれば、適度な可とう性を付与することが可能となる。なお、本発明におけるガラス転移温度はFoxの計算式により求められる値である。
吸放湿性粉粒体と有機質結合材の比率は通常、吸放湿性粉粒体100重量部に対し、有機質結合材が固形分換算で5〜500重量部程度となるように調製すればよい。
【0014】
調湿層の吸放湿量は、特に限定されないが、その厚みにより変化し、通常30g/m以上(好ましくは40g/m以上)である。このような調湿層を使用することによって、室内空間において十分な調湿効果を得ることができる。なお、ここに言う吸放湿量は、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順により、調湿層を対象に測定した値である。調湿層の厚みは、通常0.05〜10.0mm、好ましくは0.1〜5.0mmである。
【0015】
本発明積層体では、上記調湿層の上に装飾層が積層される。この装飾層は、調湿層の水蒸気吸脱着性を阻害しない効果、積層体表面の美観性を高める効果、積層体全体の可とう性を高める効果等を有するものである。装飾層を構成する必須成分は、平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材と、ガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材である。
【0016】
このうち、有色骨材としては、自然石の粉砕物、陶磁器の粉砕物、及び着色骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用できる。このような有色骨材は、装飾性を付与する成分である。本発明では、色相が異なる2種以上の有色骨材を組み合わせて用いることにより、積層体表面の多彩感を高めることができる。有色骨材の色相は、無彩色、有彩色のいずれであってもよく、本発明の効果が損われない限り、透明性を有するものであってもよい。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂チップ、金属粒、木粉等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0017】
有色骨材の平均粒子径は0.01〜1mm(好ましくは0.02〜0.5mm)である。平均粒子径が0.01mm未満では有色骨材による多彩感が得られず、また通気性の点においても不利となる。平均粒子径が1mm超の場合は、装飾層の隠蔽性が不十分となり調湿層が露出しやすくなる。なお、本発明における平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0018】
装飾層における有機質結合材としては、有色骨材の色彩を活かすため、透明被膜が形成可能な有機質結合材が好適である。このような有機質結合材としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。有機質結合材の形態としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂(樹脂エマルション)から選ばれる1種以上が好適である。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。
【0019】
装飾層における有機質結合材のガラス転移温度は、通常−50〜50℃、好ましくは−30〜40℃である。有機質結合材のガラス転移温度がこのような範囲内であれば、積層体に適度な可とう性、耐汚染性等を付与することが可能となる。ガラス転移温度が50℃を超える場合は、可塑剤の導入により可とう性を付与することはできるが、経時的に可塑剤の染み出し、揮発等が生じるおそれがあるため、内装用としてはあまり好ましいものではない。
装飾層における有色骨材と結合材の比率は、有色骨材100重量部に対して、結合材を固形分換算で3〜100重量部(好ましくは5〜80重量部)とすることが望ましい。装飾層の厚みは、通常0.5〜5mm程度である。
【0020】
本発明の積層体は、装飾層に粒子凝集型通気体が埋設されているものである。この粒子凝集型通気体は、有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が30重量%以下であって、その重量比率が周辺領域よりも相対的に低く設定されたものである。本発明積層体では、このような粒子凝集型通気体が装飾層に埋設されていることにより、十分な調湿性能を発揮することができ、さらに適度な可とう性を付与することができる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、粒子凝集型通気体を除く装飾層の領域において、有機質結合材の比率を比較的高く設計して可とう性を付与しても、装飾層に散在した粒子凝集型通気体の作用により、下層の調湿層の水蒸気吸脱着性が阻害されないこと、また、粒子凝集型通気体以外の装飾層の厚みが変化した状態となることにより、フレキシブルな性能が高まること等が寄与しているものと考えられる。
【0021】
粒子凝集型通気体は、装飾層の表面のうち5〜80%(好ましくは10〜70%)を占める領域に埋設されるようにする。これにより、調湿性と可とう性を兼ね備えた積層体が得られる。粒子凝集型通気体の占める面積が5%よりも小さい場合は、調湿性において十分な性能が得られ難くなり、80%よりも大きい場合は、可とう性、強度等において十分な性能が得られ難くなる。
このような粒子凝集型通気体は、装飾層に複数散在していることが望ましい。粒子凝集型通気体の形状は、特に限定されるものではないが、例えば島状、筋状、亀甲状、幾何学模様状等が挙げられる。
【0022】
粒子凝集型通気体は、有色骨材と有機質結合材を主成分とするものであり、粒子凝集型通気体における有色骨材と有機質結合材の比率は、有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が30重量%以下(好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下)となるように設定する。両成分の比率がこのような範囲内であれば、十分な通気性を有する粒子凝集型通気体を形成することが可能となる。有機質結合材が30重量%よりも多い場合は、下層の調湿性能を阻害するおそれがある。
【0023】
粒子凝集型通気体は、その周辺領域と同様に、有色骨材と有機質結合材を主成分とするものである。そのため、本発明では、装飾層全体として調和のとれた質感を得ることができる。特に、装飾層における粒子凝集型通気体の色調を、その周辺領域とは異なる色に設定した場合は、全体としての調和を保ちつつ種々の色彩を付与することが可能となり、美観性向上の点で好適である。
【0024】
本発明の積層体は、上記調湿層の上に上記装飾層が積層したものであればよく、
例えば、前記調湿層の上に前記装飾層が積層されたシート状の積層体等が挙げられる。
【0025】
上記積層体は、上記調湿層の上に上記装飾層が積層される限り、その製造方法については特に限定されるものではなく、例えば、
1.型枠の内面に、有色骨材の集合体を島状、筋状、亀甲状、幾何学模様状等の状態で散在させた後、装飾層形成用組成物を塗付し、次いで調湿層形成用組成物を積層し、乾燥後に脱型する方法、
2.シート状基材に調湿層形成用組成物を塗布し、次いで装飾層形成用組成物を積層し、その表面に有色骨材の集合体を島状、筋状、亀甲状、幾何学模様状等の状態で散在させる方法、
等により製造できる。
【0026】
なお、装飾層形成用組成物としては、有色骨材及び有機質結合材を含むペースト状混合物が使用でき、調湿層形成用組成物としては、吸放湿性物質及び有機質結合材等を含むペースト状混合物が使用できる。ここでの装飾層形成用組成物、調湿層形成用組成物においては、必要に応じ、例えば顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、光触媒、吸着剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、撥水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
このような製造方法では、島状、筋状等の状態で散在させた有色骨材集合体の部分に、装飾層形成用組成物の有機質結合材が一部流入することにより、有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が周辺領域よりも相対的に低い粒子凝集型通気体が形成される。ここで、装飾層形成用組成物の粘度を3〜100Pa・s(5〜80Pa・s)程度に設定しておけば、目的とする粒子凝集型通気体が容易に得られる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度であり、測定温度は23℃である。
【0027】
上記製造方法1.において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。この場合、型枠側が装飾材表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、装飾材表面に所望の凹凸模様を付与することもできる。
【0028】
上記製造方法2.において使用するシート状基材としては、可とう性を有するものであれば特に限定はないが、例えば、合成紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の繊維からなる織布又は不織布、セラミックペーパー、ガラスクロス、メッシュ等が挙げられる。また、有色骨材の集合体を散在させた後、本発明の効果を阻害しない範囲内で有色骨材を圧着することができる。圧着することで、有色骨材と装飾層形成用組成物をより強固に固定することができる。圧着方法としては、ローラー、こて、プレス機等を用いる方法が挙げられる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、装飾性等を高める目的で、模様層形成用組成物塗付後に凹凸模様を形成させることができ、有色骨材の圧着と同時に凹凸模様を形成させることもできる。
【0029】
また、各材料を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。装飾層形成用組成物や調湿層形成用組成物を乾燥させる際には、加熱することもできる。
【0030】
また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、装飾層の美観性等を高める目的で、装飾層に対し、平均粒子径1mm超の骨材を混合したり、散布することもできる。このような骨材としては、例えば前述の有色骨材と同材質のものの他、マイカ、貝殻片、植物片等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、表面撥水性等を高める目的で、上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、公知の水性型あるいは溶剤型塗料の塗付によって形成することができる。これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【0032】
積層体の製造時には、本発明の効果を阻害しない限り、例えば、補強材(織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、ガラスクロス、メッシュ等)を積層することができる。その他、当業者の知識に基づき種々の変更を加えることもできる。
【0033】
本発明積層体は、主に建築物の内装仕上げに適用できる。すなわち、流通時には、調湿層と装飾層を有するシート状成形体として取り扱い、これを建築物内装面の各部位に施工して内装仕上げを行うことができる。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、等が挙げられる。これら基材は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明積層体は、このような基材に対し、装飾層が室内側を向くようにして施工する。
【0034】
本発明積層体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。また、本発明積層体は、施工時に積層体を任意の形状に切断することも可能であり、切断面の小口処理等を適宜行うこともできる。
【0035】
また、本発明では前記装飾層を有する成形体を調湿性の接着剤、粘着剤、粘着テープ等で直接基材に接着することにより、積層体を形成することもできる。例えば、通気性シート状基材に装飾層形成用組成物を積層し、その表面に有色骨材の集合体を島状、筋状、亀甲状、幾何学模様状等の状態で散在させて得られるシート状成形体を、調湿層形成用組成物を接着剤として前記基材に接着する方法等が挙げられる。
本発明では、下層の調湿層による吸放湿性が、最終的な仕上面においても発揮される。最終的な仕上面における吸放湿量は、このような性能が発揮される限り特に限定されないが、通常は、30g/m以上であればよい。本発明では、複数の調湿層を用いたり、あるいは装飾層に調湿性能を付与する等の手段により、70g/m以上(さらには100g/m以上)とすることも可能である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0037】
(調湿層形成用組成物の製造)
吸放湿性物質100重量部、有機質結合材35重量部(固形分)、骨材A140重量部、造膜助剤3重量部、及び水100重量部を均一に攪拌・混合することにより、調湿層形成用組成物1を製造した。この調湿層形成用組成物1の硬化膜(乾燥厚み1.5mm)の吸放湿量を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ、150g/mであった。
【0038】
(装飾層形成用組成物の製造)
骨材B100重量部、有機質結合材30重量部(固形分)、造膜助剤2重量部及び水25重量部を均一に攪拌・混合することにより、装飾層形成用組成物1を製造した。
【0039】
なお、調湿層形成用組成物及び装飾層形成用組成物の製造においては、以下の原料を使用した。
・有機質結合材:アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度15℃、固形分50重量%)
・吸放湿性物質:ベーマイト(平均粒子径150μm)
・骨材A:珪砂(平均粒子径120μm)
・骨材B:着色珪砂(淡黄色、平均粒子径120μm)
・骨材C:着色珪砂(茶色、平均粒子径120μm)
・骨材D:着色珪砂(茶色、平均粒子径800μm)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
【0040】
(実施例1)
離型剤を塗布した型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に、骨材Cを約50mm間隔で筋状に散布した後、水希釈により粘度を12Pa・sに調製した装飾層形成用組成物1を流し込み、24時間後、調湿層形成用組成物1を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体を得た。この積層体の調湿層の厚みは1.5mm、装飾層の厚みは0.5mmであり、骨材Cを主成分とする粒子凝集型通気体が占める面積は装飾層表面の38%であった。得られた積層体は、適度な可とう性を有するものであり、またその積層体のみの調湿性能を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ146g/mであった。
【0041】
(実施例2)
粒子凝集型通気体が占める面積が装飾層表面の12%となるように骨材Cを散布した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。得られた積層体は適度な可とう性を有するものであり、その積層体のみの調湿性能は138g/mであった。
【0042】
(実施例3)
粒子凝集型通気体が占める面積が装飾層表面の68%となるように骨材Dを散布した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。得られた積層体は適度な可とう性を有するものであり、その積層体のみの調湿性能は148g/mであった。
【0043】
(実施例4)
ガラス不織布(縦300mm×横300mm×厚さ0.3mm)上に、水希釈により粘度を12Pa・sに調製した装飾層形成用組成物1を塗付し、骨材Cを約50mm間隔で筋状散布した。23℃下で24時間乾燥後、積層体を得た。この積層体の厚みは0.7mmであり、骨材Cを主成分とする粒子凝集型通気体が占める面積が装飾層表面の38%であった。得られた積層体は、十分な可とう性を有するものであり、この積層体を調湿性を有する接着剤(調湿層形成用組成物成分)を用いて、ステンレス板に貼り付けた。このときの積層体の調湿性能は146g/mであった。(なお、このときの接着剤の乾燥後の厚みは1.5mmであった。)
【0044】
(比較例1)
粒子凝集型通気体が占める面積が装飾層表面の2%となるように骨材Cを散布した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。得られた積層体は、実施例1に比べ可とう性に乏しく、その調湿性能は96g/mであった。
【0045】
(比較例2)
粒子凝集型通気体が占める面積が装飾層表面の95%となるように骨材Cを散布した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。得られた積層体は、実施例1に比べ可とう性に乏しく、その調湿性能は149g/mであった。
【0046】
(比較例3)
離型剤を塗布した型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に、装飾層形成用組成物1を流し込み、24時間後、調湿層形成用組成物1を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体を得た。この積層体の調湿層の厚みは1.5mm、装飾層の厚みは0.5mmであった。得られた積層体は、実施例1に比べ可とう性に乏しく、その調湿性能は93g/mであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿層の上に装飾層が積層された積層体であって、
前記調湿層は、吸放湿性粉粒体及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものであり、
前記装飾層は、平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、及びガラス転移温度−50〜50℃の有機質結合材を含有するものであり、
当該装飾層の表面のうち5〜80%を占める領域には、
有色骨材に対する有機質結合材の重量比率が30重量%以下であって、その重量比率が周辺領域よりも相対的に低く設定された粒子凝集型通気体が埋設されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記装飾層における粒子凝集型通気体が、その周辺領域とは異色であることを特徴とする請求項1記載の積層体。

【公開番号】特開2008−143164(P2008−143164A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180208(P2007−180208)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】