説明

積層体

【課題】反射防止特性を損なうことなく、優れた耐擦傷性及び耐汚染性を有する反射防止膜を提供する。
【解決手段】下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する第1の硬化性組成物の硬化物からなり屈折率が1.45以下である低屈折率層と、下記成分(B’)及び(D)を含有する第2の硬化性組成物の硬化物からなる5nm以上40nm以下の膜厚を有する表面保護層とを、基材に近い側からこの順に有する積層体であって、前記低屈折率層と前記表面保護層の膜厚比が60:40〜95:5の範囲内であり、かつ、前記低屈折率層と前記表面保護層との膜厚の合計が50〜200nmの範囲内である積層体。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(C)シリカを主成分とする粒子
(B’)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(D)ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として反射防止膜として用いる積層体に関する。より詳細には、反射防止特性、耐擦傷性に優れた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低屈折率性、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化物からなる低屈折率層を含む反射防止膜が求められている。これら表示パネルにおいては、付着した指紋、埃等を除去するため、その表面を、エタノール等を含侵したガーゼで拭くことが多く、耐擦傷性が求められている。特に、液晶表示パネルにおいては、反射防止膜は、偏光板と貼り合わせた状態で液晶ユニット上に設けられている。
【0003】
反射防止膜の低屈折率層用組成物として、例えば、水酸基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂系塗料が知られており、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等に開示されている。しかし、このようなフッ素樹脂系塗料では、塗膜を硬化させるために、水酸基含有含フッ素重合体と、メラミン樹脂等の硬化剤とを、酸触媒下、加熱して架橋させる必要があり、加熱条件によっては、硬化時間が過度に長くなったり、使用できる基材の種類が限定されてしまったりという問題があった。また、得られた塗膜についても、耐候性には優れているものの、耐擦傷性や耐久性に乏しいという問題があった。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決するため、特許文献4では、少なくとも1個のイソシアネート基と少なくとも1個の付加重合性不飽和基とを有するイソシアネート基含有不飽和化合物と水酸基含有含フッ素重合体とを、イソシアネート基の数/水酸基の数の比が0.01〜1.0の割合で反応させて得られる不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を含む塗料用組成物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−34107号公報
【特許文献2】特開昭59−189108号公報
【特許文献3】特開昭60−67518号公報
【特許文献4】特公平6−35559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の低屈折率層用組成物から形成された低屈折率層を最外層として有する反射防止膜では、低屈折率層の耐擦傷性が十分ではなかった。また、耐擦傷性と、指紋拭取り性やマジックハジキ性等の防汚性との両立を図ることは困難であった。
本発明は、以上のような状況を背景としてなされたものであって、その目的は、反射防止特性を損なうことなく、優れた耐擦傷性と防汚性を両立する反射防止膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、低屈折率層の上に、反射防止性を損なわない程度の膜厚を有し、かつ低屈折率層より高硬度かつ防汚性に優れた層を設けることにより、反射防止性を維持したまま、耐擦傷性と防汚性を改善することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記の積層体及び反射防止膜を提供する。
1.下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する第1の硬化性組成物の硬化物からなり屈折率が1.45以下である低屈折率層と、下記成分(B’)及び(D)を含有する第2の硬化性組成物の硬化物からなる5nm以上40nm以下の膜厚を有する表面保護層とを、基材に近い側からこの順に有する積層体であって、
前記低屈折率層と前記表面保護層の膜厚比が、60:40〜95:5の範囲内であり、かつ、前記低屈折率層と前記表面保護層との膜厚の合計が、50〜200nmの範囲内である積層体。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(C)シリカを主成分とする粒子
(B’)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(D)ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物
2.前記第2の硬化性組成物が、さらに(C’)シリカを主成分とする粒子を含有する上記1に記載の積層体。
3.微小硬度計によって測定される前記表面保護層のマンテル硬さ値が、前記低屈折率層の1.2倍以上である上記1又は2に記載の積層体。
4.前記(C)シリカを主成分とする粒子の形状が、球形又は連鎖球状である上記1〜3のいずれかに記載の積層体。
5.前記(C’)シリカを主成分とする粒子の形状が、球形又は連鎖球状である上記2〜4のいずれかに記載の積層体。
6.前記(C)シリカを主成分とする粒子が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する上記1〜5のいずれかに記載の積層体。
7.前記(C’)シリカを主成分とする粒子が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する上記2〜6のいずれかに記載の積層体。
8.前記(B)(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び前記(B’)(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する上記1〜7のいずれかに記載の積層体。
9.前記第1の硬化性組成物が活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する上記1〜8のいずれかに記載の積層体。
10.前記第2の硬化性組成物が活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する上記1〜9のいずれかに記載の積層体。
11.上記1〜10のいずれかに記載の積層体からなる反射防止膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反射率が低く、耐擦傷性及び防汚性が共に優れた積層体を得ることができる。
本発明によれば、耐擦傷性及び防汚性が共に優れた反射防止膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の積層体について具体的に説明する。
【0011】
I.積層体の構造
本発明の積層体は、少なくとも、基材と、屈折率が1.45以下である低屈折率層と、表面保護層とを、この順で有することを特徴とする。低屈折率層は、反射防止膜としての基本性能である低反射率を発現する層であり、表面保護層は、外部からの衝撃、摩耗、摩擦から、低屈折率層を保護し、積層体(反射防止膜)に高い耐擦傷性を付与する層である。さらに表面保護層は、指紋やマジックなのどの汚れ付着を防止又は付着しても拭取りやすい等の防汚性能を付与する役目も担っている。
低屈折率層は、屈折率が1.45以下であることが必要であり、1.40以下であることが好ましく、1.37以下であることがより好ましい。屈折率が1.45より高いと、十分な反射防止性能が得られないおそれがある。尚、本発明における屈折率とは、25℃におけるNa−D線(波長589nm)の屈折率をいう。
【0012】
表面保護層の屈折率は、低屈折率層と同じ屈折率〜1.65の範囲内、好ましくは低屈層と同じ屈折率〜1.60の範囲内、より好ましくは低屈層と同じ屈折率〜1.55の範囲内である。屈折率が1.65より高いと、反射防止効果が損なわれる可能性がある。
【0013】
反射防止膜は、通常、高屈折率層及び低屈折率層の二層からなり、これを基材上に形成することによって、反射防止膜として好適な積層体を形成することができる。本発明の一実施形態である積層体の模式図を図1に示す。本発明の積層体1は、基材10上に、ハードコート層12を設け、その上に後述する第1の硬化性組成物(以下、「低屈折率層形成用組成物」ということがある)を塗布し硬化させてなる低屈折率層14を形成し、さらにその上に後述する第2の硬化性組成物(以下、「表面保護層形成用組成物」ということがある)を硬化させてなる高硬度の表面保護層16が形成される。
【0014】
反射防止膜は、これら以外の層をさらに有していてもよく、例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の組み合わせを複数個設けて広い波長範囲の光に対して比較的均一な反射率特性を有するいわゆるワイドバンドの反射防止膜としてもよく、帯電防止層を設けてもよい。
【0015】
基材としては特に制限はないが、反射防止膜として用いる場合には、例えば前述の、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)等を挙げることができる。
【0016】
後述する表面保護層形成用組成物を基材上に塗布し、UV硬化させて得られた表面保護層は、耐擦傷性(スチールウール耐性)、ヘイズに優れ、高硬度である。
【0017】
本発明の積層体における低屈折率層と表面保護層の膜厚比は、60:40〜95:5の範囲内であることが必要である。この範囲を逸脱すると、反射率特性が損なわれたり、積層体の耐擦傷性に劣るおそれがある。このような理由から、膜厚比は、70:30〜95:5の範囲内であることがより好ましい。
さらに、低屈折率層と表面保護層との膜厚の合計は、50〜200nmの範囲内であることが必要である。膜厚の合計が50nm未満又は200nmを超えると、十分な反射防止性能が得られないおそれがある。このような理由から、膜厚の合計は、70〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
【0018】
本発明の積層体においては、微小硬度計によって測定される表面保護層のマンテル硬さ値が、低屈折率層の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。表面保護層の硬さが低屈折率層の1.2倍以上であることによって、良好な耐擦傷性が発現される。尚、微小硬度の測定に用いる機器としては、ピコインデンター(登録商標)HM500、フィッシャースコープ(登録商標)H100C(いずれもフィッシャー社製)が挙げられる。微小硬度の測定条件は、ビッカース圧子を用い最大荷重を0.1mNとする。
【0019】
II.第1の硬化性組成物(低屈折率層形成用組成物)
本発明で用いる第1の硬化性組成物(低屈折率層形成用組成物)は、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、(B)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物、(C)シリカを主成分とする粒子を含む。
【0020】
1.低屈折率層形成用組成物の各構成成分について具体的に説明する。
【0021】
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、フッ素系オレフィンの重合物である。(A)成分により本発明の組成物は低屈折率、防汚性、耐薬品性、耐水性等の反射防止膜用低屈折率組成物としての基本性能を発現する。
好ましくは、(A)成分は、側鎖水酸基がイソシアネート基や酸クロリド基、カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系化合物で変性されている。このような変性により、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0022】
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、少なくとも1個のエチレン性不飽和基及び水酸基と反応可能な基を含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とを反応させて得られる。
【0023】
(1)少なくとも1個のエチレン性不飽和基及び水酸基と反応可能な基を含有する化合物
このような化合物としては、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有している化合物であって、フッ素重合体の水酸基と反応しうる官能基を有していれば特に制限されるものではない。
また、上記エチレン性不飽和基としては、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、無水(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
尚、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば昭和電工(株)製 商品名 カレンズMOI、カレンズAOI、カレンズBEIが挙げられる。
【0024】
このような化合物は、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0025】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
尚、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、大阪有機化学(株)製 商品名 HEA、日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA、PET−30、東亞合成(株)製 商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
【0026】
(2)水酸基含有含フッ素重合体
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)とを含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b−1)下記式(2−1)で表される構造単位。
(b−2)下記式(2−2)で表される構造単位。
(c)下記式(3)で表される構造単位。
【0027】
【化1】

[式(1)中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
【0028】
【化2】

[式(2−1)中、R3は水素原子又はメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を、dは0又は1の数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
【0029】
【化3】

[式中、Rは式(2−1)で定義した通りであり、R24はフルオロアルキル基を示し、xは0〜2の数を示す]
【0030】
【化4】

[式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を、R7は水素原子又はヒドロキシアルキル基を、vは0又は1の数を示す]
【0031】
(i)構造単位(a)
上記式(1)において、R1及びR2のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基が挙げられる。また、R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0032】
構造単位(a)は、含フッ素ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような含フッ素ビニル単量体としては、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。このような例としてはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン等のフルオロレフィン類;アルキルパーフルオロビニルエーテル又はアルコキシアルキルパーフルオロビニルエーテル類;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、ヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)がより好ましく、これらを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0033】
尚、構造単位(a)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、30〜65モル%である。この理由は、含有率が30モル%未満になると、本発明が意図するところのフッ素含有材料の光学的特徴である、低屈折率の発現が困難となる場合があるためであり、一方、含有率が65モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性、透明性、又は基材への密着性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(a)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、35〜60モル%とするのがより好ましく、40〜55モル%とするのがさらに好ましい。
【0034】
(ii)構造単位(b−1)
式(2−1)において、R4又はR5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0035】
構造単位(b−1)は、上述の置換基を有するビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0036】
(iii)構造単位(b−2)
また、本発明の共重合体において構造単位(b−1)と共に、又は構造単位(b−1)の代わりに構造単位(b−2)を用いることができる。構造単位(b−2)は、式(2−2)で示されるビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このようなビニル単量体の具体例としては、以下の構造式を有するものが挙げられる。
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、xは0〜2の数を表す。また、上記式中、芳香環の中にFと記した基は、5つの水素の全てがフッ素原子で置換されていることを示す。)
【0037】
尚、構造単位(b−1)及び/又は(b−2)の含有率は、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、1〜50モル%である。この理由は、含有率が1モル%未満になると、水酸基含有含フッ素共重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が50モル%を超えると、水酸基含有含フッ素共重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(b−1)及び/又は(b−2)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、1〜45モル%とすることがより好ましい。また、上記に示した(b−1)及び/又は(b−2)の含有率とは、構造単位(b−1)又は(b−2)が単独で用いられた場合には、構造単位(b−1)又は(b−2)のいずれかの含有率を意味し、構造単位(b−1)と(b−2)を併用した場合には、両者の合計の含有率を意味する。
【0038】
(iv)構造単位(c)
式(3)において、R7のヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0039】
構造単位(c)は、水酸基含有ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、アリルアルコール等が挙げられる。
また、水酸基含有ビニル単量体としては、上記以外にも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0040】
尚、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜60モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が5モル%未満になると、フッ素重合体の水酸基含有量が低下し、硬化塗膜の十分な硬度が得られない場合があるためであり、一方、含有率が60モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、及び低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(c)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計を100モル%としたときに、5〜55モル%とするのがより好ましく、10〜50モル%とするのがさらに好ましい。
【0041】
(iv)構造単位(d)及び構造単位(e)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(d)を含んで構成することも好ましい。
【0042】
(d)下記式(4)で表される構造単位。
【化6】

[式(4)中、R8及びR9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示す]
【0043】
式(4)において、R8又はR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が、ハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基等が、アリール基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等がそれぞれ挙げられる。
【0044】
構造単位(d)は、前記式(4)で表されるポリシロキサンセグメントを有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物を用いることにより導入することができる。このようなアゾ基含有ポリシロキサン化合物の例としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化7】

[式(5)中、R10〜R13は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はシアノ基を示し、R14〜R17は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示し、p、qは1〜6の数、s、tは0〜6の数、yは1〜200の数、zは1〜20の数を示す。]
【0046】
式(5)で表される化合物を用いた場合には、構造単位(d)は、構造単位(e)の一部として水酸基含有含フッ素重合体に含まれる。
【0047】
(e)下記式(6)で表される構造単位。
【化8】

[式(6)中、R10〜R13、R14〜R17、p、q、s、t及びyは、上記式(5)と同じである。]
【0048】
式(5),(6)において、R10〜R13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、R14〜R17のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0049】
本発明において、上記式(5)で表されるアゾ基含有ポリシロキサン化合物としては、下記式(7)で表される化合物が特に好ましい。
【0050】
【化9】

[式(7)中、y及びzは、上記式(5)と同じである。]
【0051】
尚、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜10モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部未満になると、硬化後の塗膜の表面滑り性が低下し、塗膜の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が10モル部を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性に劣り、コート材として使用する際に、塗布時にハジキ等が発生し易くなる場合があるためである。
また、このような理由により、構造単位(d)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とするのがより好ましく、0.1〜3モル部とするのがさらに好ましい。同じ理由により、構造単位(e)の含有率は、その中に含まれる構造単位(d)の含有率を上記範囲にするよう決定することが望ましい。
【0052】
(v)構造単位(f)
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(f)を含んで構成することも好ましい。
【0053】
(f)下記式(8)で表される構造単位。
【化10】

[式(8)中、R18は乳化作用を有する基を示す]
【0054】
式(8)において、R18の乳化作用を有する基としては、疎水性基及び親水性基の双方を有し、かつ、親水性基がポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル構造である基が好ましい。
【0055】
このような乳化作用を有する基の例としては下記式(9−1)又は(9−2)で表される基が挙げられる。
【化11】

[式(9−1)中、nは1〜20の数、mは0〜4の数、uは3〜50の数を示す]
【化12】

[式(9−2)中、n、m及びuは、上記式(9−1)と同様である]
【0056】
構造単位(f)は、反応性乳化剤を重合成分として用いることにより導入することができる。このような反応性乳化剤としては、下記式(10−1)又は(10−2)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化13】

[式(10−1)中、n、m及びuは、上記式(9−1)と同様である]
【化14】

[式(10−2)中、n、m及びuは、上記式(9−1)と同様である]
【0058】
尚、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜5モル部とすることが好ましい。この理由は、含有率が0.1モル部以上になると、水酸基含有含フッ素重合体の溶剤への溶解性が向上し、一方、含有率が5モル部以内であれば、硬化性樹脂組成物の粘着性が過度に増加せず、取り扱いが容易になり、コート材等に用いても耐湿性が低下しないためである。
また、このような理由により、構造単位(f)の含有率を、構造単位(a)と、(b−1)及び/又は(b−2)と、(c)との合計100モル部に対して、0.1〜3モル部とするのがより好ましく、0.2〜3モル部とするのがさらに好ましい。
【0059】
(vi)分子量
水酸基含有含フッ素重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、後述する硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる場合があるためである。
また、このような理由により、水酸基含有含フッ素重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
【0060】
(A)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常5〜80質量%である。この理由は、添加量が5質量%未満となると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためであり、一方、添加量が80質量%を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(A)成分の添加量を5〜70質量%とするのがより好ましく、5〜60質量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0061】
(B)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「(メタ)アクリレート化合物」ということがある)は、第1の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物及びそれを用いた反射防止膜の耐擦傷性を高める機能を有する。
【0062】
(メタ)アクリロイル基を1個含有する化合物としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの市販品としては、アロニックス M−101、M−102、M−111、M−113、M−114、M−117(以上、東亜合成(株)製);ビスコート LA、STA、IBXA、2−MTA、#192、#193(大阪有機化学(株)製);NK エステル AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G(以上、新中村化学工業(株)製);ライトアクリレート L−A、S−A、IB−XA、PO−A、PO−200A、NP−4EA、NP−8EA(以上、共栄社化学(株)製);FA−511、FA−512A、FA−513A(以上、日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0063】
1個の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を添加することにより、下地ハードコートとの密着性を改善することができる。具体的には、上記化合物のうち、(メタ)アクリロイルモルホリン、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。これらの化合物うち(メタ)アクリロイルモルホリン、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらの化合物の市販品としては、例えばMMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、MEDOL10、MIBDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、ビスコート150、ビスコート160(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ACMO(以上、(株)興人製)等を挙げることができる。
【0064】
(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0065】
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物が好ましい。かかる2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうちペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、これら(メタ)アクリレート化合物はフッ素を含んでいてもよい。このような化合物の例として、パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタン−1,6−ジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートとの付加、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(LINC−3A、共栄社化学製)物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0067】
(B)成分の添加量については、特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常5〜50質量%である。この理由は、添加量が5質量%未満となると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が得られない場合があるためであり、一方、添加量が50質量%を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためである。
また、このような理由から、(B)成分の添加量を5〜40質量%とするのがより好ましく、10〜40質量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0068】
(C)シリカを主成分とする粒子
シリカを主成分とする粒子(以下、「シリカ粒子」ということがある)として、中実又は中空粒子を用いることができる。当該粒子は低屈折率層の塗膜強度を発現させる機能を有する。また、中空粒子を用いた場合、低屈折率化を図ることができる。さらに、連鎖球状粒子等不定形粒子を用いることで、内部空隙及び表面凹凸によりこれも低屈折率化を図ることができる。
【0069】
また、シリカ粒子の分散媒は、水あるいは有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
シリカを主成分とする中実球状粒子の市販品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MEK−ST−S、MEK−ST−L、IPA−ZL、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また、不定形粒子としては、日産化学工業(株)製 商品名:スノーテックス−PS−M、PS−S、PS−SO、UP、OUP、芙蓉化学工業(株)製 商品名:PL−1、PL−2、PL−3、PL−3H等を挙げることができる。また、中空粒子としては、触媒化成工業(株)製 商品名:JX1008SIV、JX1009SIV、JX1010SIV、JX1011SIV等を挙げることができる。
【0070】
また、これらコロイダルシリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1個以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1―トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1−トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましい化合物として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0071】
シリカを主成分とする粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物(以下、「特定有機化合物」ということがある。)によって表面処理がなされたものであることが好ましい。かかる表面処理により、UV硬化系アクリルモノマーと共架橋化することができ、耐擦傷性が向上する。
【0072】
(2)特定有機化合物
本発明に用いられる特定有機化合物は、分子内に重合性不飽和基含む重合性の化合物である。この化合物は、分子内に、さらに下記式(11)に示す基を含む化合物であること及び分子内にシラノ−ル基を有する化合物又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する化合物であることが好ましい。
【0073】
【化15】

[式(11)中、XはNH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、YはO又はSを示す。]
【0074】
(i)重合性不飽和基
特定有機化合物に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0075】
(ii)式(11)に示す基
特定有機化合物は、分子内に前記式(11)に示す基をさらに含むものであることが好ましい。前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1とを併用することが好ましい。
前記式(11)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
【0076】
(iii)シラノ−ル基又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する基
特定有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物(以下、「シラノール基含有化合物」ということがある)又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物(以下、「シラノール基生成化合物」ということがある)であることが好ましい。このようなシラノール基生成化合物としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する化合物を挙げることができるが、ケイ素原子上にアルコキシ基又はアリールオキシ基を含む化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基生成化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子と結合する構成単位である。
【0077】
(iv)好ましい態様
特定有機化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(12)に示す化合物を挙げることができる。
【0078】
【化16】

【0079】
19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基であり、aは1、2又は3の数を示す。
19、R20の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。
【0080】
[(R19O)a203-aSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
【0081】
21は炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
【0082】
また、R22は2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記式(11)に示す基を含むこともできる。
【0083】
23は(b+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
【0084】
Zは活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。例えば、アクリロイル(オキシ)基、メタアクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基等を挙げることができる。これらの中でアクリロイル(オキシ)基及びメタアクリロイル(オキシ)基が好ましい。また、bは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
【0085】
本発明で用いられる特定有機化合物の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。即ち、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
【0086】
前記式(12)に示す化合物を合成するためには、これらの方法のうち(イ)が好適に用いられる。より詳細には、例えば、
(a)法;まずメルカプトアルコキシシランとポリイソシアネート化合物とを反応させることで、分子中にアルコキシシリル基、[−S−C(=O)−NH−]基及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、次に中間体中に残存するイソシアネートに対して活性水素含有重合性不飽和化合物を反応させて、この不飽和化合物を[−O−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
(b)法;まずポリイソシアネート化合物と活性水素含有重合性不飽和化合物とを反応させることで分子中に重合性不飽和基、[−O−C(=O)−NH−]基、及びイソシアネート基を含む中間体を形成し、これにメルカプトアルコキシシランを反応させてこのメルカプトアルコキシシランを[−S−C(=O)−NH−]基を介して結合させる方法、
等を挙げることができる。さらに両者の中では、マイケル付加反応による重合性不飽和基の減少がない点で(a)法が好ましい。
【0087】
前記式(12)に示す化合物の合成において、イソシアネ−ト基との反応により[−S−C(=O)−NH−]基を形成することができるアルコキシシランの例としては、アルコキシシリル基とメルカプト基を分子中にそれぞれ1個以上有する化合物を挙げることができる。このようなメルカプトアルコキシシランとしては、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、メルカプトプロピルトリフェノキシシシラン、メルカプトプロピルトリブトキシシシラン等を挙げることができる。これらの中では、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。また、アミノ置換アルコキシシランとエポキシ基置換メルカプタンとの付加生成物、エポキシシランとα,ω−ジメルカプト化合物との付加生成物を利用することもできる。
【0088】
特定有機化合物を合成する際に用いられるポリイソシアネ−ト化合物としては鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネ−ト化合物の中から選ぶことができる。
【0089】
このようなポリイソシアネ−ト化合物の例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を挙げることができる。これらの中で、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、等が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
特定有機化合物の合成において、前記ポリイソシアネ−ト化合物と付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を介し結合できる活性水素含有重合性不飽和化合物の例としては、分子内にイソシアネ−ト基との付加反応により[−O−C(=O)−NH−]基を形成できる活性水素原子を1個以上有しかつ重合性不飽和基を1個以上含む化合物を挙げることができる。
【0091】
これらの活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェ−ト、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルエタンジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスルト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト等を挙げることができる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレ−ト等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることができる。これらの化合物の中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト等が好ましい。
これらの化合物は1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0092】
(3)特定有機化合物によるシリカを主成とする粒子(以下、粒子ともいう。)の表面処理方法
特定有機化合物による粒子の表面処理方法としては特に制限はないが、特定有機化合物と粒子とを混合し、加熱、攪拌処理することにより製造することも可能である。尚、特定有機化合物が有するシラノール基生成部位と、粒子とを効率よく結合させるため、反応は水の存在下で行われることが好ましい。ただし、特定有機化合物がシラノール基を有している場合は水はなくてもよい。従って、粒子及び特定有機化合物を少なくとも混合する操作を含む方法により表面処理できる。
【0093】
粒子と特定有機化合物の反応量は、粒子及び特定有機化合物の合計を100質量%として、好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。0.01質量%未満であると、組成物中における粒子の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。
【0094】
以下、特定有機化合物として、前記式(12)に示すアルコキシシリル基含有化合物(アルコキシシラン化合物)を例にとり、表面処理方法をさらに詳細に説明する。
表面処理時においてアルコキシシラン化合物の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量であればよい。好ましくは加水分解の際に添加、又は存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下でアルコキシシラン化合物と粒子とを混合して得られる生成物は、粒子表面にアルコキシシラン化合物が物理吸着した生成物であり、そのような成分から構成される粒子を含有する組成物の硬化物においては、高硬度及び耐擦傷性の発現の効果は低い。
【0095】
表面処理時においては、前記アルコキシシラン化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体粒子又は粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法;又は、他の成分、例えば、重合開始剤等の存在下、粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができる。この中では、前記アルコキシシラン化合物の加水分解を粒子の存在下で行う方法が好ましい。表面処理時、その温度は、好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。また、処理時間は通常5分から24時間の範囲である。
【0096】
表面処理時において、粉体状の粉体を用いる場合、前記アルコキシシラン化合物との反応を円滑にかつ均一に行わせることを目的として、有機溶剤を添加してもよい。そのような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、Y−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0097】
粒子として溶剤分散ゾルを用いる場合、溶剤分散ゾルと、特定有機化合物とを少なくとも混合することにより製造することができる。ここで、反応初期の均一性を確保し、反応を円滑に進行させる目的で、水と均一に相溶する有機溶剤を添加してもよい。
【0098】
また、表面処理時において、反応を促進するため、触媒として酸、塩又は塩基を添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸を、塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を、また、塩基としては、例えば、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級又は3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類等を挙げることができる。
これらの中で好ましい例は、酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドである。これらの酸、塩又は塩基の添加量は、アルコキシシラン化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部から1.0質量部、さらに好ましくは0.01質量部から0.1質量部である。
【0099】
また、反応を促進するため、脱水剤を添加することも好ましい。
脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ、無水アルミナ等の無機化合物や、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、テトラエトキシメタン、テトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。中でも、有機化合物が好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等のオルトエステル類がさらに好ましい。
尚、粒子に結合したアルコキシシラン化合物の量は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、空気中で110℃から800℃までの熱質量分析により求めることができる。
【0100】
(C)成分の配合量は、中実粒子の場合は有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜50質量%配合され、1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がさらに好ましい。1質量%未満では膜強度の改善効果が発現しないおそれがあり、50質量%以上では屈折率が上昇し、反射防止能が十分でない場合がある。また、用いる粒子が中空粒子の場合、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜90質量%配合され、10〜80質量%が好ましく、20〜80質量%がさらに好ましい。尚、本発明において中実粒子と中空粒子を併用することもできる。
尚、粒子の量は、固形分を意味し、粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。
【0101】
(E)活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射又は熱により活性種を発生する化合物は、第1の硬化性組成物を効率よく硬化させるために用いることができる。
【0102】
(1)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物
活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点で、紫外線を使用することが好ましい。
【0103】
(i)種類
光ラジカル発生剤の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0104】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等を挙げることができる。
【0105】
(ii)添加量
光重合開始剤の添加量は特に制限されるものではないが、第1の硬化性組成物の固形分(有機溶剤以外の成分(A)〜(C)の合計)100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下したり、耐擦傷性が不十分となる場合があるためである。
また、このような理由から、光重合開始剤の添加量を1〜10質量部とすることがより好ましい。
【0106】
(2)熱により活性種を発生する化合物
熱により活性種を発生する化合物(以下「熱重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0107】
(i)種類
熱ラジカル発生剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アセチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルパーアセテート、クミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0108】
(ii)添加量
熱重合開始剤の添加量についても特に制限されるものではないが、第1の硬化性組成物の固形分100質量部に対して0.1〜20質量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が0.1質量部未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性、アルカリ水溶液浸漬後の耐擦傷性が低下する場合があるためである。一方、光重合開始剤の添加量が20質量部を超えると、硬化物の屈折率が増加し反射防止効果が低下する場合があるためである。
また、このような理由から、熱重合開始剤の添加量を1〜10質量部とするのがより好ましい。
【0109】
(F)有機溶剤
硬化性樹脂組成物は、さらに有機溶剤で希釈することが好ましい。有機溶剤によって希釈することにより、薄膜の反射防止膜を均一に形成することができる。このような有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、メチルアミルケトン等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、t−ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0110】
有機溶剤による希釈量についても特に制限されるものではないが、全固形分100質量部に対し、100〜100,000質量部の有機溶剤を添加するのが好ましい。この理由は、添加量が100質量部未満又は100,000質量部以上となると、塗布性が悪化し反射防止膜に適した光学薄膜を得ることができない。
【0111】
(G)その他の成分
低屈折率層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合できる。
【0112】
2.低屈折率層形成用組成物の製造方法
本発明で用いる第1の硬化性組成物は、上記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、上記(B)(メタ)アクリル基を含有する化合物成分、上記(C)シリカ粒子及び(E)成分、(F)有機溶剤、及び(G)添加剤をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、熱重合開始剤の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0113】
3.低屈折率層形成用組成物の塗布(コーティング)方法
低屈折率層形成用組成物は反射防止膜や被覆材を形成する用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0114】
4.低屈折率層形成用組成物の硬化方法
低屈折率層形成用組成物は、放射線(光)によって硬化させることができる。その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0115】
本発明の積層体の低屈折率層は、第1の硬化性組成物を硬化させて得られる。
第1の硬化性組成物の硬化条件については特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、このような理由により、露光量を0.05〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.1〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
さらに酸素による重合阻害を防ぐために硬化雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることが望ましい。不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらの不活性ガスの雰囲気としては、残存酸素濃度が5000ppm以下となることが好ましく、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。残存酸素濃度が5000ppmを超えると硬化不良が生じることがある。
【0116】
また、第1の硬化性組成物を、加熱して硬化させる場合には、30〜200℃の範囲内の温度で、1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、基材等を損傷することなく、より効率的に耐擦傷性に優れた反射防止膜を得ることができる。
また、このような理由から、50〜180℃の範囲内の温度で、2〜120分間加熱するのがより好ましく、80〜150℃の範囲内の温度で、5〜60分間加熱するのがさらに好ましい。
【0117】
III.第2の硬化性組成物(表面保護層形成用組成物)
本発明で用いられる第2の硬化性組成物(表面保護層形成用組成物)は、(B’)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物及び(D)ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物を含む。また、本発明で用いる第2の硬化性組成物(低屈折率層形成用組成物)は、(C’)シリカを主成分とする粒子を含むことも好ましい。
【0118】
1.表面保護層形成用組成物の各構成成分について具体的に説明する。
本発明で用いる表面保護層形成用組成物は、少なくとも、(B’)(メタ)アクリル基を含有する化合物のうち2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(多官能(メタ)アクリレート化合物)を含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することにより、表面保護層としての硬度を発現することができる。本化合物の具体例は、低屈折率層形成用組成物の成分(B)の説明で記載した通りである。
【0119】
表面保護層形成用組成物中における化合物(B’)の含有量は、有機溶剤を除く組成物全量に対して、通常10〜99質量%の範囲内、好ましくは20〜99質量%の範囲内、より好ましくは20〜95質量%の範囲内である。化合物(B’)の含有量が20質量%未満では、目的とする硬度を有する硬化膜が得られないおそれがある。
【0120】
表面保護層形成用組成物は、(D)ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物を含有する。当該化合物を含有することにより、得られる硬化膜(表面保護層)の滑り性、防汚性、撥油性等の反射防止膜としての実用性を改善することができる。
ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物の具体例としては、チッソ(株) 商品名:イラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM0711、FM0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T、ビックケミー・ジャパン(株)製 商品名:UV3500、UV3510、UV3530、BY16−004、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 商品名:SF8428、和光純薬製 商品名:VPS−1001等が挙げられる。
【0121】
(D)成分の添加量は、有機溶剤を除く組成物全量に対して通常0.01〜50質量%である。この理由は、添加量が0.01質量%未満となると、滑り性改善効果が十分に得られず、一方、添加量が50質量%を超えると、過剰量の成分により塗工性悪化が起こるからである。また、このような理由から、(D)成分の添加量を0.5〜40質量%とするのがより好ましく、1.0〜30質量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0122】
表面保護層形成用組成物は、さらに、(C’)シリカを主成分とする粒子(以下、シリカ粒子ということがある)を含有することもできる。シリカを主成分とする粒子を含有させることにより、表面保護層の硬度を高め、積層体の耐擦傷性をさらに高めることができる。
また、シリカ粒子は、前記重合性不飽和基を有する有機化合物(特定有機化合物)と結合していることが好ましい。重合性不飽和基を粒子表面に有していることにより、上記化合物(B’)と架橋を形成することができ、耐擦傷性がさらに改善される。
シリカ粒子の具体例及び反応性シリカ粒子については、低屈折率層形成用組成物の成分(C)の説明で記載した通りである。
【0123】
表面保護層形成用組成物中におけるシリカ粒子の含有量は、シリカ粒子そのものである場合も、反応性シリカ粒子である場合も、有機溶剤を除く組成物全量に対して、通常0〜70質量%、好ましくは0〜60質量%、より好ましくは0〜50質量%である、シリカ粒子の含有量が70質量%を超えると、塗膜強度の低下のおそれがある。
【0124】
本発明で用いる表面保護層形成用組成物には、上記成分の他、上記低屈折率層形成用組成物で用いる(E)光ラジカル重合開始剤、(F)有機溶剤及び(G)添加剤を含有させることができる。
【0125】
表面保護層形成用組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、有機溶剤を除く組成物全量に対し、通常0.5〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。光ラジカル重合開始剤が0.5質量%より少ないと、硬化不良を起こすおそれがあり、20質量%を超えると、可塑化効果により塗膜強度低下のおそれがある。
【0126】
表面保護層形成用組成物中における有機溶剤による希釈量についても特に制限されるものではないが、全固形分100質量部に対し、100〜100,000質量部の有機溶剤を添加するのが好ましい。この理由は、添加量が100質量部未満又は100,000質量部以上となると、塗布性が悪化し反射防止膜に適した光学薄膜を得ることができない。
【0127】
2.表面保護層形成用組成物の製造方法
本発明で用いる表面保護層形成用組成物は、例えば、次のようにして製造する。
(B’)成分、(C’)成分、(D)成分、及び必要に応じて、光重合開始剤、有機溶剤、その他添加剤等を攪拌機付きの反応容器に入れ35℃〜45℃で2時間程度攪拌し表面保護層形成用組成物とすることができる。
【0128】
3.表面保護層形成用組成物の塗布(コーティング)方法
表面保護層形成用組成物は、前記低屈折率層の上に塗布される。コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0129】
4.表面保護層形成用組成物の硬化方法
表面保護層形成用組成物の硬化方法は、前記低屈折率層形成用組成物の硬化方法と同様である。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、実施例中、各成分の配合量は特に記載のない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を意味している。
【0131】
(製造例1)
水酸基含有含フッ素重合体の合成
内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル11544g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)3464g、エチルビニルエーテル938g、ヒドロキシエチルビニルエーテル1145g、過酸化ラウロイル37.5g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)225g及びノニオン性反応性乳化剤(ER−30(商品名)、旭電化工業(株)製を予め溶媒をすべて留去した固体組成としたもの)1125gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0132】
次いでヘキサフルオロプロピレン1953gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い約5kgの水酸基含有含フッ素重合体を得た。使用した単量体と溶剤の仕込量みを表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
得られた水酸基含有含フッ素重合体に付き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量を測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果及び元素分析結果から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
尚、VPS1001は、数平均分子量が7〜9万、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000の、上記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサンである。ER−30は、上記式(10−2)において、nが10〜14、mが1、uが14〜45であるノニオン性反応性乳化剤である。
さらに、表2において、単量体と構造単位との対応関係は以下の通りである。
単量体 構造単位
ヘキサフルオロプロピレン (a)
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル) (a)
エチルビニルエーテル (b−1)
ヒドロキシエチルビニルエーテル (c)
ER−30 (f)
ポリジメチルシロキサン骨格 (d)
【0137】
(製造例2)
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(メタアクリル変性フッ素重合体)((A)成分)の合成
電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体を120g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.02g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)862gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート32.1gを添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.3gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を得た。
この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.0質量%であった。
【0138】
(製造例3)
特定有機化合物(Cb)の製造
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン23.0部、ジブチルスズジラウレート0.5部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート60.0部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)202.0部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌することで特定有機化合物(Cb)を得た。
生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550cm−1の吸収ピーク及びイソシアネート基に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たに、[−O−C(=O)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基中のカルボニルに特徴的な1660cm−1のピーク及びアクリロイル基に特徴的な1720cm−1のピ−クが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロイル基と[−S−C(=O)−NH−]基、[−O−C(=O)−NH−]基を共に有する特定有機化合物が生成していることを示した。
【0139】
(製造例4)
アクリル変性中実シリカ粒子((C’)成分)の製造
製造例3で合成した特定有機化合物(Cb)8.7部、メチルエチルケトンシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST(数平均粒子径0.022μm、シリカ濃度30%))91.3部(固形分27.4部)、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液C’−1を得た。C’−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレ−ト上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35質量%であった。
このシリカ系粒子の平均粒子径は、20nmであった。ここで、平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定した。
【0140】
(製造例5)
表面保護層形成用組成物の製造
製造例4で合成したアクリル変性中実シリカ粒子C’−1 129g(固形分として45g)、ジペンタエリスリトールヘキサクリレート41g、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン4g、ポリジメチルシロキサン化合物(チッソ製FM0725)10g、MIBK9816質量部を室温で2時間攪拌することで均一な溶液の表面保護層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、1質量%であった。
TACフィルム上に、調製した表面保護層用組成物をワイヤーバーコータで膜厚100nmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射した。この硬化塗膜の押込み深さ10nmでのマンテル硬さ値をフィッシャーインストルメンツ製HS100で測定したところ3000N/mmであった。
【0141】
(製造例6)
低屈折率層形成用組成物の製造
製造例2で得たエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を33.5g((A)成分の固形分として5g)、中空シリカ粒子のMIBKゾル(触媒化成工業製JX1009SIV)375g((C1)成分の固形分として75g)、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(LINC−3A、共栄社化学製)17g、光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)3g及びMIBK1000g、t−ブタノール1100gを、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌し均一な硬化性樹脂組成物(低屈折率層形成用組成物)を得た。また、製造例2の方法により固形分濃度を求めたところ4.0質量%であった。
TACフィルム上に、調製した低屈折率層形成用組成物をワイヤーバーコータで膜厚100nmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射した。この硬化塗膜の押込み深さ10nmでのマンテル硬さ値をフィッシャーインストルメンツ製HS100で測定したところ1500N/mmであった。また、得られた硬化塗膜を、反射分光光度計を用いて測定された反射率より推定される屈折率は1.33であった。
【0142】
(製造例7)
ハードコート層形成用組成物の調製
紫外線を遮蔽した容器中において、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート95質量部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン5質量部、MIBK100質量部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液のハードコート層形成用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0143】
(製造例8)
硬化性組成物塗工用基材の作製
TACフィルム(厚さ50μm)に、製造例7で調製したハードコート層形成用組成物をワイヤーバーコータで膜厚6μmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、空気下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、硬化性組成物塗工用基材を作製した。
【0144】
実施例1
(1)低屈折率層の形成
製造例8で得られた塗工用基材のハードコート層の上に、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて、上記製造例6で得られた低屈折率層形成用組成物を塗工した後、オーブン中80℃で1分間乾燥した。続いて、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cmの光照射条件で紫外線を照射することにより、膜厚が90nmの硬化膜層を形成した。
【0145】
(2)表面保護層の形成
上記(1)で得られた低屈折率層の上に、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて、上記製造例6で得られた表面保護層形成用組成物を塗工した後、オーブン中80℃で1分間乾燥した。続いて、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cmの光照射条件で紫外線を照射することにより、膜厚が10nmの硬化膜層を形成した。
【0146】
実施例2〜3及び比較例1〜3
低屈折率層と表面保護層の膜厚比を表3に記載のように変えた以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0147】
<積層体の評価>
上記実施例及び比較例で得られた積層体の下記特性を評価した。結果を表3に示す。
【0148】
(評価例1)
外観の評価
前記手法により得られた積層体の外観を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
○:塗布ムラなし
△:若干塗布ムラあり
×:全面に塗布ムラあり
【0149】
(2)ヘーズ
得られた積層体における濁度(ヘーズ値)を、カラーヘーズメーターで測定し、下記基準に従って評価した。
○:ヘーズ値が1%以下である。
△:ヘーズ値が1%を超え3%以下である。
×:ヘーズ値が3%を超える。
【0150】
(3)反射率
得られた積層体の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、波長340〜700nmの範囲で反射率を基材側から測定し、下記基準に従って評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止用積層体(反射防止膜)の反射率を測定し、その反射率曲線より光源D65、視野角10°における視感反射率を算出した。
◎:反射率が1.0%以下
○:反射率が1.0%を超え1.5%以下
△:反射率が1.5%を超え2.0%以下
×:反射率が2.0%超
【0151】
(4)耐擦傷性(スチールウール耐性)
得られた積層体表面の硬化膜のスチールウール耐性テストを次に示す方法で実施した。即ち、スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)社製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB−301、テスター産業(株)製)に取りつけ、硬化膜の表面を荷重500gの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
◎:硬化膜に傷が発生しない。
○:硬化膜の剥離や傷の発生がほとんど認められないか、あるいは硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
△:硬化膜全面に筋状の傷が認められる。
×:硬化膜の剥離が生じる。
【0152】
(5)耐汚染性
得られた積層体の硬化膜表面に指紋をつけ、不織布(旭化成製、商品名:ベンコットS−2)にて塗膜表面を拭き取った。耐汚染性を、下記基準に従って評価した。
○:塗膜表面の指紋が完全に拭取れた。
△:塗膜表面の指紋がわずかに残る。
×:拭き取られずに指紋跡が試料表面に残存した。
【0153】
【表3】

【0154】
表3の結果から、表面保護層を有しない比較例1に比べて、実施例1〜3では、良好な耐擦傷性及び耐汚染性が得られることがわかる。
表面保護層のみである比較例2では、反射率特性が悪く、反射防止膜としての基本性能を有しないのに対し、低屈折率層の上に表面保護層を有する実施例1〜3では、反射防止性を損なうことなく、耐擦傷性が改善されることがわかる。
表面保護層と低屈折率層との膜厚比が50:50となる比較例3では、反射率特性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の積層体は、特に反射防止膜用途に適している。
また、本発明の積層体は、反射防止膜の他にも、例えば、レンズ、選択透過膜フィルター等の光学用部品に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の積層体の一実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0157】
1:反射防止膜積層体
10:基材
12:ハードコート層
14:低屈折率層
16:表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する第1の硬化性組成物の硬化物からなり屈折率が1.45以下である低屈折率層と、下記成分(B’)及び(D)を含有する第2の硬化性組成物の硬化物からなる5nm以上40nm以下の膜厚を有する表面保護層とを、基材に近い側からこの順に有する積層体であって、
前記低屈折率層と前記表面保護層の膜厚比が、60:40〜95:5の範囲内であり、かつ、前記低屈折率層と前記表面保護層との膜厚の合計が、50〜200nmの範囲内である積層体。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(C)シリカを主成分とする粒子
(B’)(メタ)アクリロイル基を含有する化合物
(D)ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物
【請求項2】
前記第2の硬化性組成物が、さらに(C’)シリカを主成分とする粒子を含有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
微小硬度計によって測定される前記表面保護層のマンテル硬さ値が、前記低屈折率層の1.2倍以上である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記(C)シリカを主成分とする粒子の形状が、球形又は連鎖球状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記(C’)シリカを主成分とする粒子の形状が、球形又は連鎖球状である請求項2〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記(C)シリカを主成分とする粒子が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記(C’)シリカを主成分とする粒子が、表面に(メタ)アクリロイル基を有する請求項2〜6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記(B)(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び前記(B’)(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記第1の硬化性組成物が活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第2の硬化性組成物が活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体からなる反射防止膜。


【図1】
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【公開番号】特開2008−30286(P2008−30286A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205763(P2006−205763)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】