説明

積層体

【課題】遮熱性、断熱性に優れる多色積層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層体は、(a−1)結合材、(a−2)中空粒子、(a−3)熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下である粉粒体、を含む断熱層(A)と、L値(明度)の差が10以上である少なくとも2色以上の色相部位を有し、最も明度の高い色相部位に、(b−1)比熱容量が1.0kJ/(kg・K)以下である粉粒体を含む多色層(B)とが、積層されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性、断熱性に優れる多色積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物、土木構築物等においては、外壁、屋根、屋上等の外装に断熱材料を積層し、断熱性を高めることによって、省エネルギー化を図ろうとする動きがある。
また、一方では、景観上の観点から美観性が求められており、建築物、土木構築物等の外装面に、多色性に富む材料が施されることが多くなってきている。(例えば、特許文献1、特許文献2等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−16879号公報
【特許文献2】特開平9−208862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多色性に富む材料は、明度の高い箇所、明度の低い箇所が存在し、明度の低い箇所(黒っぽい箇所)においては、太陽光等を吸収し、局部的に温度が上昇しやすくなっている。
このような多色性に富む材料を、上述のような断熱材料の上に積層した場合、熱の逃げ場を失い、局部的に膨れや剥がれ等が発生したり、また、熱による劣化が発生するという問題が起こる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような問題点に対し鑑みなされたものであり、断熱成分である中空粒子と、ある程度の熱伝導率を有する粉粒体を含む断熱層と、明度の高い色相に比熱容量の低い材料を含む多色層とを積層することにより、優れた断熱性を有するとともに、局部的な温度上昇による膨れ・剥がれを防止し、かつ、積層体全体の温度上昇も防止することができる多色性に優れる積層体が得られることを見出し本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.(a−1)結合材、(a−2)中空粒子、(a−3)熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下である粉粒体、を含む断熱層(A)と、
CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)のL表色系におけるL値(明度)の差が10以上である少なくとも2色以上の色相部位を有し、最も明度の高い色相部位に、(b−1)比熱容量が1.0kJ/(kg・K)以下である粉粒体を含む多色層(B)とが、積層されてなることを特徴とする積層体。
2.多色層(B)が、少なくとも最も明度の高い色相部位(L−1)と、最も明度の低い色相部位(L−2)とを有し、(L−1)と(L−2)のL値(明度)の差が10以上であり、(L−1)及び/または(L−2)の色相部位が点在する多色模様を形成していることを特徴とする1.に記載の積層体。
3.断熱層(A)が、(a−1)成分の固形分100重量部に対し、(a−2)成分1重量部以上50重量部以下、(a−3)成分400重量部以上1500重量部以下含むことを特徴とする1.または2.に記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた断熱性を有するとともに、局部的な温度上昇による膨れ・剥がれを防止し、かつ、積層体全体の温度上昇も防止することができる、多色性に優れる積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施の形態について説明する。
【0009】
−断熱層(A)−
本発明の断熱層(A)は、(a−1)結合材(以下、「(a−1)成分」ともいう。)、(a−2)中空粒子(以下、「(a−2)成分」ともいう。)、(a−3)熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下である粉粒体(以下、「(a−3)成分」ともいう。)を含むことを特徴とするものである。
【0010】
(a−1)成分としては、有機質結合材及び/または無機質結合材が使用できる。このうち有機質結合材としては、例えば、合成樹脂エマルション、水溶性樹脂、溶剤型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。具体的に、樹脂の種類としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アスファルト、ゴムアスファルト等が挙げられる。
また、無機質結合材としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等のコロイダル金属酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩、ポルトランドセメント、アルミナセメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント等の各種セメント等が挙げられる。
(a−1)成分としては、これら有機質結合材、無機質結合材のうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0011】
(a−2)成分は、主に、断熱性を付与する成分である。
(a−2)成分としては、例えば、中空セラミック粒子、中空樹脂粒子等が挙げられる。中空セラミック粒子を構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、フライアッシュ、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。中空粒子は、これらの成分を公知の方法で発泡させることにより得られる。
【0012】
(a−2)成分の平均粒子径は通常0.1〜200μm(好ましくは1〜150μm)程度である。また、(a−2)成分の密度は通常0.01〜1g/cm(好ましくは0.01〜0.8g/cm)程度である。
(a−2)成分の形状は、特に限定されないが、真球状であるものが好適である。
【0013】
(a−3)成分は、熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下の粉粒体である。
【0014】
(a−3)成分の作用機構は明確でないが、概ね以下のように推測できる。
通常、温度上昇は、最表面の明度の低い色相から起こりやすく、最表面で発生した熱が内部(断熱層側)へと伝わっていく。この時、内部が断熱性の高い材料である場合、最表面で発生した熱が逃げ場を失い、膨れ・剥がれの原因となり、内部が熱伝導性の高い材料である場合、最表面で発生した熱が内側へと伝わってしまい、屋内等の温度が上昇しやすくなる。特に、最表面が多色模様である場合、多色模様のうち最も明度の低い色相部位にで温度が上昇し、局部的な膨れ・剥がれの原因となりやすい。
本発明では、(a−3)成分を用いることによって、最表面で発生した熱を、断熱層表層部へと移動・拡散させ、局部的な膨れ・剥がれを防止することができるとともに、後述する多色層(B)の明度の高い色相部位へと熱を移動させ、(b−1)成分により、熱を放熱させやすくすることができると、推測できる。
【0015】
熱伝導率が、1.0W/(m・K)より小さい場合、熱移動・熱拡散が起こりにくく、局部的な膨れ・剥がれの原因となる場合がある。熱伝導率が、50.0W/(m・K)より大きい場合、熱が移動・拡散しやすく、熱が基材にまで伝わり断熱性能に劣る場合がある。
(a−3)成分としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0016】
本発明の(a−3)成分は、熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下であれば特に限定されないが、好ましくは5.0W/(m・K)以上40.0W/(m・K)以下、より好ましくは10.0W/(m・K)以上30.0W/(m・K)以下、さらに好ましくは15.0W/(m・K)以上25.0W/(m・K)以下)である粉粒体である。
さらに、本発明では、(a−3)成分のうち、熱伝導率が10.0W/(m・K)以上30.0W/(m・K)以下(好ましくは15.0W/(m・K)以上25.0W/(m・K)以下)である粉粒体が、1.0重量%以上(さらには2.0重量%以上、さらには5.0重量%以上)含まれることが好ましく、このような10.0W/(m・K)以上30.0W/(m・K)以下である粉粒体としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0017】
また、(a−3)成分の比熱容量は、1.0kJ/(kg・K)以下(好ましくは0.8kJ/(kg・K)以下、さらに好ましくは0.6kJ/(kg・K)以下)であることが好ましい。
【0018】
(a−3)成分の平均粒子径は、通常0.1μm以上200μm以下(好ましくは0.3μm以上100μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上50μm以下)程度である。
さらに、本発明では、(a−3)成分のうち、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下(好ましくは0.3μm以上30μm以下)である粉粒体が、1.0重量%以上(さらには10.0重量%以上、さらには20.0重量%以上)含まれることにより、本発明の効果をよりいっそう高めることができ、好ましい。
(a−3)成分の平均粒子径が大きすぎると、断熱性に劣る場合がある。
【0019】
(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)成分の混合比率は、(a−1)成分の固形分100重量部に対し、(a−2)成分が1重量部以上50重量部以下、さらには3重量部以上40重量部以下、(a−3)成分が400重量部以上1500重量部以下、400重量部超1300重量部以下、さらには500重量部以上1200重量部以下であることが好ましい。
(a−2)成分が、このような範囲である場合、断熱性と塗膜の強度等が両立可能である。(a−2)成分が、少なすぎると、断熱性が低下する場合がある。また、多すぎると、強度等の塗膜物性が低下する場合がある。
本発明では、(a−3)成分が、400重量部以上1500重量部以下と多く含むことが好ましく、このような範囲である場合、断熱層(A)内部は、(a−3)成分どうしの空隙が多数存在し、また、(a−2)成分の中空部とあわせて、多数の空隙部・中空部による断熱層が形成される。また、断熱層(A)表層部では、(a−3)成分が連結した形態となりやすく、後述する多色層(B)の明度の低い色相に溜まる熱を、断熱層(A)表層部で効率よく移動させることができる。
(a−3)成分が少なすぎると、断熱層(A)表層部で熱移動し難くなり、明度の低い色相部位で局部的な膨れ・剥がれが起こりやすく、また、積層体全体の温度も上昇しやすくなる。また、断熱層(A)内部では、空隙部が不十分となり、断熱性が低下する恐れがある。
【0020】
本発明の断熱層(A)を形成する成分は、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に必要に応じその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、多孔質粒子や、熱伝導率が1.0W/(m・K)未満、または、50.0W/(m・K)超である粉粒体、また、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0021】
−多色層(B)−
本発明の多色層(B)は、CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)のL表色系におけるL値(明度)の差が10以上である少なくとも2色以上の色相を有し、最も明度の高い色相に、比熱容量(定圧比熱容量)が1.0kJ/(kg・K)以下の粉粒体(b−1)を含むことを特徴とするものである。
【0022】
多色層(B)は、少なくとも2色以上色相を有し、最も明度の高い色相部位と最も明度の低い色相部位のL値(明度)の差が10以上(好ましくは15以上)であれば特に限定されず、a値、b値が異なるものでもよいし、また、3色以上有するものでもよい。
このような多色層(B)により、美観性を向上させることができる。
値(明度)の差が10未満であれば、多色模様を施すことが困難であり、また、局部的な温度上昇が起こり難く、本発明技術を特に必要とはしない。
なお、CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)のL表色におけるL値、a値、b値は、色差計を用いて測定することができる。
【0023】
本発明では、多色層(B)のうち、最も明度の高い色相部位に、比熱容量が1.0kJ/(kg・K)以下(好ましくは0.8kJ/(kg・K)以下、さらに好ましくは0.6kJ/(kg・K)以下)の粉粒体(以下、「(b−1)成分」ともいう。)を含むことを特徴とする。
このような(b−1)成分を含むことにより、局部的な温度上昇、また、積層体の温度上昇を抑制することができる。このような効果の作用機構は明らかではないが、特に最も明度の低い色相部位の熱を、断熱層(A)表層部を介して、(b−1)成分を有する最も明度の高い色相部位へと移動させ、該熱を放熱させることができるため、明度の低い色相部位で発生しやすい膨れ・剥がれを防止するとともに、積層体の温度上昇も抑制することができるものと思われる。比熱容量が1.0kJ/(kg・K)よりも大きいと、放熱効果が低下し、温度上昇抑制効果が期待できない。
なお、本発明の最も明度の高い色相部位とは、最も高いL値を基準とし、該L値から5を超えない範囲のL値を有する部位のことをいう。また、本発明の最も明度の低い色相部位とは、最も低いL値を基準とし、該L値から5を超えない範囲のL値を有する部位のことをいう。本発明では、最も高いL値として、特に限定されないが、40以上、さらには50以上であることが好ましい。
【0024】
また、(b−1)成分は、最も明度の高い色相部位に含んでいれば特に限定されず、暗色部分やその他の色相に含まれていても温度上昇抑制効果が期待できる。本発明では、特に限定されないが、最も明度の高い色相部位中に、(b−1)成分が0.1重量%以上50重量%以下、さらには0.5重量%以上40重量%以下含むことが好ましい。
【0025】
(b−1)成分としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、二酸化ケイ素、ガラス等が挙げられる。(b−1)成分の平均粒子径は、通常0.1〜5000μm(好ましくは0.5〜3000μm)程度である。形状としては、球状、板状、針状等特に限定されない。また、(b−1)成分としては、熱伝導率が10.0W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0026】
また、多色層(B)を形成する成分としては、(b−1)成分の他に、(b−2)結合材、着色材等を含有する。
【0027】
(b−2)成分としては、有機質結合材及び/または無機質結合材が使用できる。このうち有機質結合材としては、例えば、合成樹脂エマルション、水溶性樹脂、溶剤型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等を使用することができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。具体的に、樹脂の種類としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アスファルト、ゴムアスファルト等が挙げられる。このうち、アクリル樹脂エマルションが好適に用いられる。
無機質結合材としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等のコロイダル金属酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩、ポルトランドセメント、アルミナセメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント等の各種セメント等が挙げられる。
(b−2)成分としては、これら有機質結合材、無機質結合材のうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
着色材としては、例えば、有機顔料、無機顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等の顔料や染料等、また、顔料や染料等で着色された着色骨材等が挙げられる。
なお、本発明の(b−1)成分単独でも着色材としての機能を果たす。
【0029】
本発明の多色層(B)を形成する成分は、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に必要に応じその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、比熱容量が1.0kJ/(kg・K)未満である粉粒体や、また、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の多色層(B)は、前記条件を満たす少なくとも2色以上の色相を有するものであれば特に限定されない。
例えば、(イ)色相の異なる2種以上の着色塗料を用いて多色層(B)を得る方法、(ロ)色相の異なる2種以上の有色粒子を含む多色塗料を用いて多色層(B)を得る方法等が挙げられる。
(イ)の方法は、着色材、結合材を含む少なくとも色相の異なる2種以上の着色塗料を用いて多色層(B)を形成する方法であり、例えば、1種の第(1)着色塗料を塗装し、該第(1)着色塗料と色相の異なる1種以上の第(2)着色塗料を、第(1)着色塗料の色相が目視できる範囲で、塗布する方法等が好適である。このような方法では、第(1)着色塗料を全面または一部に、刷毛、ローラー、こて、スプレーガン等の塗装器具、フローコーター塗装装置等によって塗布した後、第(1)着色塗料の色相が目視できる範囲で、第(2)着色塗料を刷毛、ローラー、こて、スプレーガン等の塗装器具、フローコーター塗装装置等によって塗布し、乾燥硬化させて多色層(B)を得ることができる。本発明では、最終的に、最も明度の高い色相となる色相部位に(b−1)成分が含まれる多色層(B)が得られるものであり、第(1)着色塗料及び/または第(2)着色塗料に(b−1)成分が含まれていればよい。また着色材自体が(b−1)成分であってよい。
(ロ)の方法は、色相の異なる2種以上の有色粒子を含む多色塗料を用いて多色層(B)を形成する方法である。例えば、色相の異なる2種以上の有色粒子と、結合材(b−2)、溶剤等を含む多色塗料を塗布する方法等が好適である。有色粒子としては、例えば、前述の着色骨材、また、顔料や染料と結合材を含むゲル状、ゾル状の粒子であるものが好適である。また多色塗料としては、このような有色粒子が、結合材(b−2)、溶剤等を含む媒体に分散してなるものが好適である。このような方法では、多色塗料を、全面または一部に、刷毛、ローラー、こて、スプレーガン等の塗装器具、フローコーター塗装装置等によって塗布し、乾燥硬化させて多色層(B)を得ることができる。
本発明では、最終的に、最も明度の高い色相となる色相部位に(b−1)成分が含まれる多色層(B)が得られるものであり、少なくも1種以上の有色粒子中に(b−1)成分が含まれていればよいし、また有色粒子以外の多色塗料中に(b−1)成分が含まれていてもよい。
また、(イ)、(ロ)の他に、(ハ)異なる2色以上の着色材を用い、これら着色材を多色模様となるように分布させ、その後、結合材等によって固形化させて、多色層(B)を得る方法等も挙げられる。(ハ)の方法では、例えば、異なる2色以上の着色材を散布し、次いで、結合材等によって固形化する方法、また、結合材等を塗布してから異なる2色以上の着色材を散布し、乾燥させて固形化する方法等が挙げられる。結合材等を塗布する方法としては、刷毛、ローラー、こて、スプレーガン等の塗装器具、フローコーター塗装装置等によって塗布すればよい。また塗布後、へら、刷毛、ローラー、ナイフ、カッター等を用いて表面を処理することもできる。(ハ)の方法においても、最終的に、最も明度の高い色相となる色相部位に(b−1)成分が含まれる多色層(B)が得られるものであり、少なくも1種以上の着色材として(b−1)成分が含まれていればよい。
【0031】
また、多色層(B)のうち、(b−1)成分を含む明色部分の占める面積が全面積に対し20%以上80%以下(さらには30%以上70%以下)であることが好ましい。
例えば、多色層(B)の模様としては、特に限定されないが、斑点模様、まだら模様、木材調模様、石材調模様、その他多彩模様等が挙げられる。
本発明では、斑点模様のような、(L−1)及び/または(L−2)の色相部位が点在する多色模様であることが好ましい。斑点模様の場合、(b−1)成分を含む色相の大きさが0.1mm以上5.0cm以下(好ましくは0.3mm以上3.0cm以下)の斑点模様であることが好ましい。このような斑点模様に、(b−1)成分を含むことによって、積層体から熱を効率よく放熱することができる。
【0032】
また、本発明では、多色層(B)の上に保護層を積層してもよい。
保護層としては、透明性を有し、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されない。
保護層を積層することにより、耐久性、耐候性、汚れ防止性等の機能を付与することも可能であるし、保護層の厚みによる奥行き感によりいっそう優れた美観性を引き出すこともできるし、放熱効果や遮熱効果を付与することもできる。
【0033】
保護層としては、結合材を含むものが使用できる。例えば、上記(a−1)成分で挙げられた結合材を用いることができ、これらのうち、1種または2種以上を混合して用いることができる。
特に、(a−1)成分として挙げられた有機質結合材、無機質結合材のうち、屈折率の異なる(a−1)成分を共重合及び/またはブレンドさせて用いることにより、よりいっそう美観性、遮熱効果等を高めることができる。
また、保護層としては、本発明の効果を損なわない程度に、粒体を含むこともできる。
粒体としては、例えば、上記(a−3)成分、(b−1)成分で挙げられた粉粒体等を用いることができる。特に、屈折率の異なる粒体どうしをブレンド、さらに、屈折率の異なる樹脂と粒体を混合することにより、よりいっそう美観性、遮熱効果等を高めることができる。
また、その他、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0034】
本発明の積層体は、上記断熱層(A)、多色層(B)(必要に応じ保護層)を乾式、湿式等特に限定されず、公知の方法で積層させて得ることができ、このような積層体を建築物基材(単に、「基材」ともいう。)に積層させて用いる。
例えば、予め断熱層(A)・多色層(B)からなる積層体を作製しておき、該積層体を建築物基材に貼着する方法、または、建築物基材に断熱層(A)形成成分を塗布積層させるか、または予め作製しておいた断熱層(A)を貼着することによって、建築物基材に断熱層(A)を形成させ、該断熱層(A)の上に、多色層(B)形成成分を塗布積層させるか、または予め作製しておいた多色層(B)を貼着することによって、本願発明の積層体を得ることができる。また、保護層を必要に応じて積層することもできる。
【0035】
予め断熱層(A)、多色層(B)、また、断熱層(A)・多色層(B)からなる積層体を得る方法は、特に限定されないが、フローコーター法や型枠工法等を用いればよい。このような層を貼着する方法としては、公知の接着剤、粘着剤等を用いて貼着すればよい。また、断熱層(A)形成成分、多色層(B)形成成分を塗布積層する方法としては、刷毛、ローラー、こて、スプレーガン等の塗装器具を用いて塗布すればよく、また必要であれば、被塗面となる基材、断熱層(A)表面を公知のシーラー、プライマー等で処理しておいてもよい。なお、多色層(B)については、前記(イ)〜(ロ)の方法で得ることが好ましい。
また、積層体の断熱層(A)側には、織布、不織布、合成紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、セラミックペーパー、ガラスクロス、メッシュ等の補強材を積層することが好ましく、このような補強材を積層することにより、積層体の強度等が向上し、また、温度上昇による膨れ・剥がれがより防止できる。
【0036】
このようにして得られた積層体の厚さは、特に限定されないが、通常0.5mm以上30mm以下(好ましくは0.8mm以上20mm以下)である。
このうち、断熱層(A)の厚さは、通常、0.4mm以上25mm以下(好ましくは0.5mm以上20mm以下)である。断熱層(A)の厚さが薄すぎると、断熱効果が発揮されにくい。
また、多色層(B)の厚さは、通常、0.1mm以上10mm以下(好ましくは0.3mm以上8mm以下)である。
また保護層の厚さは、通常、0.01mm以上3mm以下(好ましくは0.02mm以上2mm以下)である。
【0037】
本発明の積層体は特に、外壁、屋根、屋上等の建築物基材に積層して用いるものであり、例えば、コンクリート、モルタル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、石膏ボード、磁器タイル、木材、合板、有機フォーム板、押出成形板、金属板等の建築物基材に対し、好適に適用できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0039】
(断熱層形成成分の製造)
表1に示す材料を用い、表2に示す配合にて混合し、断熱層形成成分を得た。
【0040】
(多色層形成成分の製造)
<有色粒子分散液1の製造>
容器内に結合材2を85.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤8.3重量部、水5.7重量部、ゲル化剤として硫酸アルミニウム0.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより、水性媒体1を製造した。
次に、別の容器内に結合材2を40.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、粒子3の60重量%分散液(白色顔料分散液)12.0重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより水性塗料1を製造した。
上述の水性媒体1(100重量部)に対し、水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;900rpm)することにより、粒径約1mmの有色粒子1(水性塗料1)が分散した有色粒子1分散液を得た。
有色粒子1のL値、a値、b値は、それぞれ、96、−0.5、0.5であった。
なお、L値、a値、b値は、色差計で測定した値である。
<有色粒子分散液2の製造>
表1に示す原料を用い、表3に示す配合量以外は、有色粒子分散液1と同様の方法で有色粒子分散液2を製造した。
有色粒子2のL値、a値、b値は、それぞれ、85、−0.2、4.3であった。
粒子1分散液は、粒子1の60重量%分散液のことである。
<有色粒子分散液3の製造>
表1に示す原料を用い、表3に示す配合量以外は、有色粒子分散液1と同様の方法で有色粒子分散液3を製造した。
有色粒子3のL値、a値、b値は、それぞれ、23、0.8、−0.7であった。
粒子8分散液は、粒子8の60重量%分散液のことである。
<有色粒子分散液4の製造>
表1に示す原料を用い、表3に示す配合量以外は、有色粒子分散液1と同様の方法で有色粒子分散液4を製造した。
有色粒子4のL値、a値、b値は、それぞれ、96、−0.5、0.5であった。
粒子9分散液は、粒子9の60重量%分散液のことである。
【0041】
<多色層形成成分1の製造>
得られた有色粒子分散液1と有色粒子分散液3とを、50:50の重量比率にて、混合し、多色層形成成分1を製造した(多色層1)。
<多色層形成成分2の製造>
得られた有色粒子分散液2と有色粒子分散液3とを、50:50の重量比率にて、混合し、多色層形成成分2を製造した(多色層2)。
<多色層形成成分3の製造>
得られた有色粒子分散液4と有色粒子分散液3とを、50:50の重量比率にて、混合し、多色層形成成分3を製造した(多色層3)。
【0042】
なお、比較として、次の単色層形成成分1(単色層1)も製造した。
<単色層形成成分1の製造>
容器内に結合材2を125.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤12.3重量部、水5.7重量部、粒子3の60重量%分散液12.0重量部、粒子8の60重量%分散液12.0重量部、分散剤1.0重量部、消泡剤1.0重量部を均一に混合することにより、単色層形成成分1を製造した(単色層1)。
【0043】
<保護層形成成分1の製造>
表1に示す原料を用い、表4に示す配合量にて、原料を均一に混合し、保護層形成成分1を製造した(保護層1)。
<保護層形成成分2の製造>
表1に示す原料を用い、表4に示す配合量にて、原料を均一に混合し、保護層形成成分2を製造した(保護層2)。
【0044】
(実施例1)
ガラス不織布(目付け:60g/m)の上に、表2に示す断熱層形成成分1を、乾燥膜厚が1.0mm〜2.0mmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度65%で乾燥させた。
その後、多色層形成成分1を、乾燥膜厚が0.5mm〜1.0mmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度65%で乾燥させ、積層体(600mm×300mm×4mm)を得た。
得られた積層体表面は、明色部分、暗色部分が1mm〜2mm斑点状の模様となる多色模様となっており、明色部分はL値が96、暗色部分はL値が23であり、明色部分の占有面積は、40%であった。
【0045】
(遮熱性試験1)
石膏ボード(600mm×300mm)の上に、積層体を接着剤を介して貼り付け、試験体を得た。
この試験体の多色層に対し、赤外線ランプ(出力250W)を40cmの距離から照射し、試験体表面(暗色部分)の温度、及び、試験体裏面の温度を測定した。結果は、表5に示す。
【0046】
(遮熱性試験2)
遮熱性試験1と同様の方法で得られた試験体について、赤外線ランプ(出力250W)を60cmの距離から8時間照射した後、23℃の水に16時間浸漬するサイクルを、合計10サイクル行った後、その外観変化を目視にて観察した。評価は、異常(膨れ、剥れ、浮き等)が認められないものを「◎」、異常(膨れ、剥れ、浮き等)がほとんど認められないものを「○」、一部に異常が認められたものを「△」、明らかに異常が認められたものを「×」として行った。結果は、表5に示す。
【0047】
(実施例2)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分2に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0048】
(実施例3)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分3に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0049】
(実施例4)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分4に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0050】
(実施例5)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分5に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0051】
(実施例6)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分6に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0052】
(実施例7)
多色層形成成分1を多色層形成成分2に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0053】
(実施例8)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分7に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0054】
(実施例9)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分8に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0055】
(実施例10)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分11に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0056】
(実施例11)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分3、多色層形成成分1を多色層形成成分3に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0057】
(実施例12)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分3、多色層形成成分1を多色層形成成分4に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製した後、多色層4表面に、保護層形成成分1を、乾燥膜厚が1.0mm〜2.0mmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度65%で乾燥させ、積層体を得、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0058】
(実施例13)
実施例1と同様の方法で積層体を作製した後、多色層1表面に、保護層形成成分2を、乾燥膜厚が1.0mm〜2.0mmとなるように塗布し、温度23℃、相対湿度65%で乾燥させ、積層体を得、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0059】
(比較例1)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分9に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0060】
(比較例2)
断熱層形成成分1を断熱層形成成分10に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
【0061】
(比較例3)
多色層形成成分1を単色層形成成分1に代えた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、実施例1と同様の遮熱性試験1、2を行った。
単色層1は、グレー(L値、a値、b値は、それぞれ、69、−0.1、4.2)の単一色であり、多色性に欠けていた。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a−1)結合材、(a−2)中空粒子、(a−3)熱伝導率が1.0W/(m・K)以上50.0W/(m・K)以下である粉粒体、を含む断熱層(A)と、
CIE(国際照明委員会)1976(JIS Z8729)のL表色系におけるL値(明度)の差が10以上である少なくとも2色以上の色相部位を有し、最も明度の高い色相部位に、(b−1)比熱容量が1.0kJ/(kg・K)以下である粉粒体を含む多色層(B)とが、積層されてなることを特徴とする積層体。
【請求項2】
多色層(B)が、少なくとも最も明度の高い色相部位(L−1)と、最も明度の低い色相部位(L−2)とを有し、(L−1)と(L−2)のL値(明度)の差が10以上であり、(L−1)及び/または(L−2)の色相部位が点在する多色模様を形成していることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
断熱層(A)が、(a−1)成分の固形分100重量部に対し、(a−2)成分1重量部以上50重量部以下、(a−3)成分400重量部以上1500重量部以下含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。


【公開番号】特開2010−167778(P2010−167778A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291284(P2009−291284)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】