説明

積層包装材料の製造方法

アスコルビン酸などの機能を最大限に発揮させることができ、積層工程を煩雑することがなく、また積層特性を損なうことがない積層包装材料の製造方法を提供する。
【解決手段】積層包装材料の製造方法は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂外側層、基材、塗膜支持層及び、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂内側層を有する、液体食品を充填・包装するための積層包装材料の製造方法であって、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩のアルコール溶液を、塗膜形成成分と蒸発性塗膜形成助要素とからなる塗膜形成液に混合してアスコルビン酸含有塗膜液を得、該塗膜支持層の面にアスコルビン酸含有塗膜液を塗布し、該アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発させて、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳、ジュース等の流動体製品が充填された包装容器を製造する積層包装材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ジュース、清酒、焼酎、ミネラルウォーター及びその他の飲料のための包装容器は、例えば、基材、具体的には、繊維質基材(例えば、紙など)/プラスチック積層体に折目線が付けられたウェブ状包装材料を長手方向の縦線シールによりチューブ状に成形し、チューブ状に成形された包装材料内に被充填物を充填し、チューブ状包装材料の横断方向に横線シールを施し、先ず、クッション形若しくは枕状の一次形状に成形し、包装材料が帯状の場合は一定間隔に個々に切断し、折目線に沿って折畳んで最終形状に成形される。その最終形状には、レンガ状、多角柱状、四面体形状などがある。繊維質基材の材料は厚手の紙であることが多い。
【0003】
更に、ゲーブルトップ状(屋根型)の紙製包装容器では、紙製包装材料を所定の形状に裁断し、容器縦方向にシールしたブランクスを得、充填機内でブランクスの底をシールした後に上部開口から牛乳、ジュース又はその他の飲料の被充填物を充填し、上部をシールして得られる。これらの包装材料には、その表面に包装容器製品の外観デザインが印刷される。
【0004】
紙包装容器製品に用いられている従来の積層包装材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)/印刷インキ層/紙(繊維質)基材層/LDPE/アルミ箔(Al、ガスバリア層)/LDPE/LDPE、LDPE/印刷インキ層/紙基材層/LDPE/LDPE、印刷インキ層/LDPE/紙基材層/LDPE/LDPE、また、LDPE/印刷インキ層/紙基材層/LDPE/Al/ポリエステル(PET)等が知られており、現在も実際に汎用されている。
【0005】
上記のような包装積層材料に加えて、従来から、包装体内部に存在する酸素、あるいは外部から透過、浸入してくる酸素により、中身食品が酸化劣化したり、あるいは微生物が繁殖することを防止するために、包装体内部の酸素を除去する手段が講じられている。
例えば、L−アスコルビン酸と第一鉄イオン化合物を混練した合成樹脂を包装材料に使用して酸素を除去するする技術(実公平4−39241号公報)、アスコルビン酸(誘導体)と反応促進剤の遷移金属化合物とを混合したアンカーコート剤層を備えることのより製造時の酸素吸収剤の熱劣化を防止し更に酸素吸収剤のブリードアウトを防ぐ包装材料(特開平6−190960号公報)、基材シート上のアンカーコート剤層に脱酸素剤及び/又は吸湿剤を散布・付着させその上に保護層被覆して製造時の酸素吸収剤の熱履歴を防止し更に酸素吸収剤のブリードアウトを防ぐ包装材料(実開昭60−10768号公報)などである。
【特許文献1】実公平4ー39241号公報
【特許文献2】特開平6ー190960号公報
【特許文献3】実開昭60ー10768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アスコルビン酸などの酸素吸収剤を含む機能付与材料を微細に粉末化し、その微細粉末材料を支持基材/支持シートの面に散布・付着させることにより、その機能がより有効に付与される。アスコルビン酸などの機能材の持つ機能を最大限に発揮させることができる積層包装材料の製造方法が望まれている。
また、積層包装材料に形成されるために、積層工程を煩雑することがなく、また積層特性を損なうことがない積層包装材料の製造方法であることが必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による積層包装材料の製造方法は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂外側層、基材、塗膜支持層及び、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂内側層を有する、液体食品を充填・包装するための積層包装材料の製造方法であって、
アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩のアルコール溶液を、塗膜形成成分と蒸発性塗膜形成助要素とからなる塗膜形成液に混合してアスコルビン酸含有塗膜液を得、
該塗膜支持層の面にアスコルビン酸含有塗膜液を塗布し、該アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発させて、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜を形成する、
ことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明による積層包装材料の製造方法によって、アスコルビン酸などを含む機能付与材料を微細結晶粉末にし、その微細材料を支持基材/支持シートの面に散布・付着させるので、その機能がより有効に付与される。アスコルビン酸などの機能を最大限に発揮させることができる。
また、積層包装材料の積層工程に、アスコルビン酸含有塗膜液を塗布する付加的な工程を追加し、自然的若しくは準自然的な蒸発ステップを設けることによって、煩雑さがなく、また積層特性を損なうことがない積層包装材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明による積層包装材料の製造方法は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂外側層、基材、塗膜支持層及び、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂内側層を有する、液体食品を充填・包装するための積層包装材料の製造方法である。
この積層材料のポリオレフィン系熱可塑性樹脂内外側層としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒によるポリエチレン系樹脂(mLLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系熱可塑性樹脂がある。
基材としては、紙、人工紙、紙主体積層シートなどの繊維質基材、機械的強度を有するポリアミド樹脂、複合材料の基材などがある。
任意なガスバリア層としては、金属箔(例えば、5〜10ミクロン厚のアルミ箔など)、2軸配向バリアフィルム(例えば、6〜12ミクロン厚の薄いPCVD法によるケイ素酸化物被膜)、EVOH層、ナイロン6及びMXD6などのポリアミドなどがある。
【0010】
この発明による積層包装材料の塗膜支持層としては、液体状アスコルビン酸含有塗膜液を塗布できる固定形状を有する積層包装材料のいずれかの層である。具体的には、例えば、上記のガスバリア層がある。その他の、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂外側層、基材及び、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂内側層がある。
【0011】
この発明による積層包装材料の製造方法は、次の工程を含む。
アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩のアルコール溶液を、塗膜形成成分と蒸発性塗膜形成助要素とからなる塗膜形成液に混合してアスコルビン酸含有塗膜液を得る工程及び、
該塗膜支持層の面にアスコルビン酸含有塗膜液を塗布し、該アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発させて、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜を形成する工程。
この発明における方法において、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩を溶かすアルコールとしては、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノールなどがあり、好ましくは、エタノールである。
アルコールに対するアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩の溶解量は、実質的に全て溶解できる使用量であり、未溶解固形成分が残らないことが必要となる。
【0012】
この発明における方法において、塗膜形成成分と蒸発性塗膜形成助要素とは、一般的に塗料として使用されている材料を含む。ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、アクリル樹脂などの合成樹脂などの塗膜形成成分、アルコール、エステル、ケトン、エーテル及び水などの蒸発性塗膜形成助要素などがある。塗膜形成液には、具体的には、ラッカー及びアンカーコート剤などがある。
【0013】
塗膜形成液としてアンカーコート剤を使用する場合は、積層材料間を積層するためのアンカーコート剤としても使用することができる。使用できるアンカーコート剤は既知の任意のものであるが、水性溶媒による希釈が可能なアンカーコート剤を使用することが好ましい。また、ドライラミネート用アンカーコート剤として、例えば、シリコーン系、速硬化型ウレタン系、エポキシアミン系などが使用できる。
なお、積層材料間を積層するための接着性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びアイオノマーから選ばれたものからなり、押出しラミネート加工法により金属と接着性を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)や、エチレン−メタクリル酸ビニル共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー(IO)の合成樹脂を用いることができる。
【0014】
この発明における方法において、塗膜支持層の面にアスコルビン酸含有塗膜液を塗布し、アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発させて、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜を形成する。
上記塗膜形成工程は、全体の包装積層体製造工程のいずれかに追加されて行われる。通常の雰囲気下で、ウェブ状包装材料をローラなどで搬送する積層過程において、アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とが容易に蒸発する。従って、追加的な加熱装置、送風装置等を設ける必要が無く、積層工程を煩雑にすることがない。
【0015】
アスコルビン酸含有塗膜液には、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が溶解し、すなわち、均一に分子レベルで分散している。積層時に、アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発することによって、塗膜に残るアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が微細に結晶化し、しかも均一に塗膜に分散する。
その結果、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜が得られる。理論的に必ずしも明らかでは無いが、固体結晶状のアスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩粉末を、微細に粉砕し得られた粉末を、塗膜液に添加し均一分散して得た塗膜と比べて、この発明によって得た塗膜の機能は、より優れている。
しかも、塗膜本来の機能、すなわち、接着性ラッカーやアンカーコート剤であれば、その接着性を、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が損なうことが無い。
【0016】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明による積層包装材料を用いて、牛乳、ジュース等の流動体製品が充填された包装容器を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂外側層、基材、塗膜支持層及び、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂内側層を有する、液体食品を充填・包装するための積層包装材料の製造方法であって、
アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩のアルコール溶液を、塗膜形成成分と蒸発性塗膜形成助要素とからなる塗膜形成液に混合してアスコルビン酸含有塗膜液を得、
該塗膜支持層の面にアスコルビン酸含有塗膜液を塗布し、該アルコール溶剤と揮発性塗膜形成助要素とを蒸発させて、微細な結晶性アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸塩が均一に分散した塗膜を形成する、
ことを含む積層包装材料の製造方法。
【請求項2】
前記塗膜支持層が、前記積層包装材料の構成層のうち、液体状アスコルビン酸含有塗膜液を塗布できる固定形状を有するいずれかの層である、請求項1記載の積層包装材料の製造方法。
【請求項3】
前記積層包装材料の構成層に、金属箔、ケイ素酸化物被膜バリアフィルム、EVOH層及びポリアミドフィルムから選ばれたバリア層を含む、請求項2記載の積層包装材料の製造方法。
【請求項4】
前記塗膜形成成分が接着性樹脂である、請求項1記載の積層包装材料の製造方法。
【請求項5】
前記塗膜形成液がアンカーコート剤である、請求項1記載の積層包装材料の製造方法。
【請求項6】
前記アルコール溶液のアルコールが、エタノールである、請求項1記載の積層包装材料の製造方法。
【請求項7】
前記基材が、紙、人工紙、紙主体積層シート、ポリアミド、これらの複合材料から選ばれる、請求項1記載の積層包装材料の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/025864
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513815(P2005−513815)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009531
【国際出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(391053799)テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ (13)
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH−1009 Pully,Switzerland
【Fターム(参考)】