説明

積層型圧電素子

【課題】共通外部電極における抵抗値を低下させることができる積層型圧電素子を提供する。
【解決手段】積層型圧電素子1は、複数の圧電体層30が積層された積層体2と、積層体2の第1部分20に圧電体層30を介して交互に配置される第1内部電極31及び第2内部電極32と、積層体2の第2部分21aに配置される第3内部電極33と、第1側面2eに設けられ、第1内部電極31と接続された第1外部電極3と、第2側面2fに設けられ、第2内部電極32及び第3内部電極33に接続された第2外部電極4と、第1側面2eに設けられ、第3内部電極33に接続された第3外部電極5aと、第2主面2dに設けられ、第2外部電極3と第3外部電極5aとを接続する第4外部電極6とを備え、第1外部電極3と第3外部電極5aとは、第1側面2eにおいて互いに電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型圧電素子として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の積層型圧電素子は、圧電体層と第1及び第2の駆動用内部電極とが交互に積層された駆動部、及び圧電体層と接続用内部電極とが積層された接続部とを有する積層体と、当該積層体の一方の側面に形成され、第1駆動用内部電極と導通する駆動用外部電極と、積層体の一方の側面に形成され、接続用内部電極と導通する接続用外部電極と、積層体の他方の側面に形成され、第2駆動用内部電極及び接続用内部電極のそれぞれと導通する共通外部電極とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−37307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の積層型圧電素子では、接続用内部電極によって接続用外部電極と共通外部電極とが電気的に接続されている。このような積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータでは、この圧電アクチュエータが実装された際、接続用外部電極から共通外部電極に至る導通経路が長い位置に配置されたアクチュエータ部(駆動部)の共通外部電極の抵抗値が、導通経路が短い位置に配置されたアクチュエータ部に比べて大きくなる。これにより、導通経路が長い位置のアクチュエータ部の立ち上がりが導通経路が短い位置のアクチュエータ部よりも遅くなるため、アクチュエータ部において応答にばらつきが生じるといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、共通外部電極における抵抗値を低下させることができる積層型圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層型圧電素子は、複数の圧電体層が積層されると共に、互いに対向する一対の第1及び第2端面と、一対の第1及び第2端面を連結するように伸び且つ複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する一対の第1及び第2主面と、一対の第1及び第2主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の第1及び第2側面とを有する積層体と、積層体の第1及び第2端面の間に位置する第1部分に複数の圧電体層を介して交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極と、積層体の第1端面側に位置する第2部分に配置される第3内部電極と、第1側面に設けられ、第1内部電極と接続された第1外部電極と、第2側面に設けられ、第2内部電極及び第3内部電極に接続された第2外部電極と、第1側面に設けられ、第3内部電極に接続された第3外部電極と、第1主面に設けられ、第2外部電極と第3外部電極とを接続する第4外部電極とを備え、第1外部電極と第3外部電極とは、第1側面において互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0007】
この積層型圧電素子では、第2外部電極及び第3外部電極が第3内部電極及び第4外部電極によって電気的に接続されている。これにより、第3内部電極の抵抗成分と第4外部電極の抵抗成分とが第2外部電極及び第3外部電極に対して並列に接続されることになる。このように、第1主面に設けた第4外部電極を接続用の電極として機能させることにより、共通外部電極における抵抗値を低下させることができる。その結果、積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータにおいて、抵抗値に起因する応答性のばらつきを抑制することができる。
【0008】
積層体には、第1部分における第1側面と第1主面との角部分に切欠部が形成されており、第1内部電極と第4外部電極とは、切欠部によって互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。このような構成によれば、第1側面の全面に第1外部電極を形成すると共に、第1主面の全面に第4外部電極を形成した後に切欠部を形成することにより、第1外部電極と第4外部電極とが物理的且つ電気的に絶縁される。そのため、第1外部電極及び第4外部電極を形成する際に、互いに電気的に絶縁されるようにマスキングを行うといった作業を省略することができる。したがって、積層型圧電素子を容易に作製することが可能となる。
【0009】
積層体には、第1部分における第1側面と第1主面との角部分に切欠部が形成されており、第1内部電極と第4外部電極とは、切欠部によって互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。このような構成によれば、第1側面の全面に外部電極を形成した後に溝を形成することにより、第1外部電極と第3外部電極とが物理的且つ電気的に絶縁されて形成される。そのため、第1外部電極及び第3外部電極を形成する際に、互いに電気的に絶縁されるようにマスキングを行うといった作業を省略することができる。したがって、積層型圧電素子を容易に作製することが可能となる。
【0010】
積層体の第2端面側に位置する第3部分に配置される第4内部電極と、第1側面に設けられ、第4内部電極に接続された第5外部電極とを更に備え、第4外部電極は、第2外部電極と第3外部電極及び第5外部電極とを接続しており、第1外部電極と第5外部電極とは、第1側面において互いに電気的に絶縁されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共通外部電極における抵抗値を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層型圧電素子の斜視図である。
【図2】(a)は図1におけるa−a線断面図、(b)は図1におけるb−b線断面図である。
【図3】図1に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータの斜視図である。
【図4】(a)は従来の積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は(a)におけるa−a線断面図である。
【図5】図4に示す積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータを含む等価回路図である。
【図6】図3に示す圧電アクチュエータを含む等価回路図である。
【図7】本実施形態に係る積層型圧電素子と従来の積層型圧電素子との共通外部電極における抵抗値を示すグラフである。
【図8】本実施形態に係る積層型圧電素子と従来の積層型圧電素子との共通外部電極における抵抗値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発発明の一実施形態に係る積層型圧電素子を示す斜視図である。図2(a)は、図1におけるa−a線断面図であり、図2(b)は、図1におけるb−b線断面図である。
【0015】
各図に示すように、積層型圧電素子1は、積層体2と、第1内部電極31と、第2内部電極32と、第3内部電極(第4内部電極)33と、第1外部電極3と、第2外部電極4と、第3外部電極(第5外部電極)5a,5bと、第4外部電極6とを備えている。積層型圧電素子1は、例えば、長さが36.95mm〜37.05mm程度に設定され、幅が1.85mm〜1.95mm程度に設定され、厚みが0.95mm〜1.05mm程度に設定されている。
【0016】
積層体2は、積層体2の長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の第1及び第2端面2a,2bと、一対の第1及び第2端面2a,2b間を連結するように伸び且つ圧電体層30(後述)の積層方向において互いに対向する一対の第1及び第2主面2c,2dと、一対の第1及び第2主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の第1及び第2側面2e,2fとを有している。積層体2は、長尺の直方体形状を呈している。
【0017】
積層体2は、複数の圧電体層30が積層されており、第1部分20と、第2部分21aと、第3部分21bとを含んでいる。第1部分20は、圧電的に活性な活性部(活性領域)を含む部分であり、積層体2において第1及び第2端面2a,2bの間に位置している。具体的には、第1部分20は、積層体2の中央部分に位置している。第1部分20は、第1内部電極31と第2内部電極32とが複数の圧電体層30を介して交互に積層されている。各圧電体層30は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti1−x)O)を主成分とする圧電セラミックス材料からなる。実際の積層型圧電素子1では、各圧電体層30は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態では、各圧電体層30の厚みは、10μm〜50μm程度である。
【0018】
第1内部電極31は、圧電体層30の積層方向において所定の間隔をあけて複数(ここでは4層)配置されている。第1内部電極31は、一端が第1側面2eに引き出されており、第1側面2eに露出している。第2内部電極32は、圧電体層30の積層方向において所定の間隔をあけて複数(ここでは5層)配置されている。第2内部電極32は、一端が第2側面2fに引き出されており、第2側面2fに露出している。第1内部電極31及び第2内部電極32は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を主成分とする導電材料からなる。本実施形態では、第1内部電極31及び第2内部電極32の厚みは、0.5μm〜3μm程度である。
【0019】
第1内部電極31と第2内部電極32とは、圧電体層30を挟んで互いに対向するように、圧電体層30の対向方向に沿って交互に配置されている。積層方向で見て、第1主面2c側及び第2主面2d側には、第2内部電極32が位置している。
【0020】
第2部分21a及び第3部分21bは、圧電的に不活性な不活性部(不活性領域)を含む部分であり、積層体2の第1端面2a側、第2端面2b側にそれぞれ位置している。すなわち、第2部分21a及び第3部分21bは、積層体2の長手方向(第1及び第2端面2a,2bの対向方向)において、第1部分20を挟むように一対設けられている。第2部分21a及び第3部分21bは、複数の圧電体層30と第3内部電極33とが交互に積層されている。第2部分21aと第3部分21bとは、同様の構成を有している。
【0021】
第3内部電極33は、圧電体層30の積層方向において所定の間隔をあけて複数(ここでは9層)配置されている。第3内部電極33は、一端が第1側面2eに引き出されていると共に、他端が第2側面2fに引き出されており、第1側面2e及び第2側面2fに露出している。第3内部電極33は、第1内部電極31及び第2内部電極32と物理的且つ電気的に絶縁されている。第3内部電極33は、第2外部電極4と第3外部電極5a,5bとを接続する接続用電極である。第3内部電極33は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を主成分とする導電材料からなる。本実施形態では、第3内部電極33の厚みは、0.5μm〜3μm程度である。
【0022】
第1外部電極3は、第1側面2eに設けられている。第1外部電極3は、第1側面2eにおいて第1部分20に対応する位置に形成されており、第1内部電極31の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第1外部電極3は、Cr,Cu/Ni,Auの3層の金属膜からなる。第1外部電極3の厚みは、0.3μm〜5.0μm程度である。以下、第2〜第4外部電極4〜6についても同様である。
【0023】
第2外部電極4は、第2側面2fに設けられている。第2外部電極4は、第2側面2fの全面に亘って形成されており、第2内部電極32及び第3内部電極33の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第2外部電極4は、第2内部電極32及び第3内部電極33のいずれにも接続される共通外部電極である。
【0024】
第3外部電極5a,5bは、第1側面2eに設けられている。第3外部電極5a,5bは、第1側面2eにおいて第2部分21a及び第3部分21bに対応する位置、すなわち第1側面2eの長手方向の両端側に形成されており、第3内部電極33の一端に物理的且つ電気的に接続されている。第3外部電極5a,5bと第1外部電極3とは、第1側面2e上において互いに電気的に絶縁されている。
【0025】
第4外部電極6は、第2主面2dに設けられている。第4外部電極6は、第2主面2dの全面に亘って形成されており、第2外部電極4及び第3外部電極5a,5bに物理的且つ電気的に接続されている。すなわち、第4外部電極6は、第2外部電極4及び第3外部電極5a,5bを電気的に接続している。第4外部電極6は、第1外部電極3と電気的に絶縁されている。第4外部電極6は、第2外部電極4と第3外部電極5a,5bとを接続する接続用電極である。また、第4外部電極6は、基板(支持体)等に導電性接着剤にて接続される際の接続面となる。
【0026】
第1外部電極3と第3外部電極5a,5bとの間には、溝34,35がそれぞれ形成されている。すなわち、溝34,35は、第1部分20と第2部分21a及び第3部分21bとの境界部分に形成されている。溝34,35は、積層体2の第1側面2eにおいて、圧電体層30の積層方向に沿って形成されている。この溝34,35により、第1外部電極3と第3外部電極5a,5bとは、物理的且つ電気的に絶縁されている。
【0027】
積層体2の第1部分20において、側面2eと主面2dとの角部分には、切欠部36が設けられている。切欠部36は、側面2eと主面2dとの角部分において積層体2の長手方向に沿って形成されており、溝34と溝35との間に設けられている。切欠部36は、側面2e及び主面2dに対して傾斜する傾斜面となっている。この切欠部36により、第1外部電極3と第4外部電極6とは、物理的且つ電気的に絶縁されている。
【0028】
続いて、以上のように構成された積層型圧電素子1から構成される圧電アクチュエータについて説明する。図3は、図1に示す積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータを示す斜視図である。図3に示すように、圧電アクチュエータ50は、積層型圧電素子1の第1部分20が溝34,35と平行に延びるスリットSにより複数(ここでは8つ)のアクチュエータ部51a〜51hに分割されている。圧電アクチュエータ50は、例えばインクジェットプリンタの液体吐出ヘッドとして用いられる。
【0029】
圧電アクチュエータ50では、第1外部電極3と第2外部電極4との間に電圧を印加すると、第1内部電極31と第2内部電極32との間にも電圧が印加される。そして、アクチュエータ部51a〜51h(第1部分20)では、圧電体層30において、第1内部電極31と第2内部電極32との間の領域に電界が生じ、当該領域が変位する。このとき、第2部分21a及び第3部分21bでは、圧電体層30において第3内部電極33の間に電界が生じないため、変位が生じない。
【0030】
続いて、積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
【0031】
まず、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電セラミックス材料に有機バインダや有機溶剤等を混合して基体ペーストを作製し、その基体ペーストを用いて圧電体層30となるグリーンシートをドクターブレード法により成形する。また、所定比率の銀とパラジウムとからなる金属材料に有機バインダや有機溶剤等を混合して電極パターン形成用の導電ペーストを作製する。
【0032】
次に、導電ペーストを用いて、第1〜第3内部電極31〜33に対応する電極パターンのそれぞれをグリーンシート上にスクリーン印刷法により形成する。そして、第1内部電極31及び第3内部電極33に対応する電極パターンが形成されたグリーンシート、第2内部電極32及び第3内部電極33に対応する電極パターンが形成されたグリーンシート、及び圧電体層30となるグリーンシートを積層して、積層体グリーンを作製する。
【0033】
続いて、積層体グリーンを所定の温度(例えば、60℃程度)で加熱しながら、積層方向に所定の圧力でプレスした後、積層体グリーンを所定の大きさに切断する。そして、積層体グリーンを所定の温度(例えば、400℃程度)で脱脂した後、所定の温度(例えば、1100℃程度)で所定時間焼成して、積層体2を得る。
【0034】
続いて、積層体2の側面2e,2f及び主面2dに対応する面に、Cr,Cu/Ni,Auの順に3層の金属膜をスパッタリング法により形成して外部電極を形成する。そして、積層体2において側面2eに対応する面において積層方向に沿って溝34,35を形成することにより、外部電極を分断して第1外部電極3及び第3外部電極5a,5bを形成する。また、積層体2の側面2eと主面2dとの角部分に切欠部36を形成することにより、外部電極を分断して第1外部電極3と第4外部電極6とを形成する。以上により、積層型圧電素子1が得られる。
【0035】
続いて、上述した積層型圧電素子1の作用効果について説明する。
【0036】
図4(a)は、従来の積層型圧電素子を示す斜視図であり、図4(b)は、(a)におけるa−a線断面図である。図4に示すように、従来の積層型圧電素子60は、積層体2Aの第1部分20Aと第2部分21Aa及び第3部分21Abとにわたって第1側面2eと第1主面2dとの角部分に切欠部36Aが形成されている。すなわち、積層型圧電素子60では、第1外部電極3及び第3外部電極5Aa,5Abと第4外部電極6Aとが物理的且つ電気的に絶縁されている。そのため、積層型圧電素子60では、第3内部電極33により第2外部電極4と第3外部電極5Aa,5Abとが電気的に接続されている。このような積層型圧電素子60から構成される圧電アクチュエータには、以下のような問題がある。
【0037】
図5は、積層型圧電素子から構成される圧電アクチュエータを含む等価回路を示す図である。図5に示すように、積層型圧電素子60から構成される圧電アクチュエータ61では、各アクチュエータ部61a,61b,61e,61f,61hに電源D1,D2から電力が供給され、スイッチの切り替えを行うことでアクチュエータ部61a,61b,61e,61f,61hの駆動が制御される。このような構成においては、電源D1,D2からの線路長(導通経路)が長い部分、つまり積層体2Aの中央部分に位置する例えばアクチュエータ部61eは、電源D1,D2からの線路長が短い部分、つまり積層体2Aの両端側に位置する例えばアクチュエータ部61a,61hに比べて抵抗成分が直列に接続されている(R1+R2+…+R3,R4+…+R5+R6)分だけ抵抗値が大きくなるため、立ち上がりが遅くなることで応答が遅くなる。そのため、従来の積層型圧電素子60から構成される圧電アクチュエータ61では、応答にばらつきが生じるといった問題があった。
【0038】
これに対して、本実施形態に係る積層型圧電素子1では、第2外部電極4と第3外部電極5a,5bとが第3内部電極33及び第4外部電極6によって電気的に接続されている。したがって、第3内部電極33と共に第4外部電極6が接続用の電極として機能する。そのため、積層型圧電素子1から構成される圧電アクチュエータ50では、図6に示すように、第3内部電極33の抵抗成分R2〜R5と第4外部電極6の抵抗成分R11〜R14とが第2外部電極4及び第3外部電極5a,5bに対して並列に接続される構成となる。これにより、例えば積層体2の中央部分に位置する例えばアクチュエータ部51eにおける共通外部電極の抵抗値(コモン抵抗)を小さくすることができる。したがって、立ち上がりの遅れを解消でき、その結果、応答のばらつきを抑制することができる。
【0039】
図7は、本実施形態に係る積層型圧電素子と従来の積層型圧電素子との共通外部電極における抵抗値を示すグラフであり、図8は、本実施形態に係る積層型圧電素子と従来の積層型圧電素子との共通外部電極における抵抗値を示す表である。図7及び図8に示すように、積層型圧電素子1では、図4に示す従来の積層型圧電素子60に比べて、Au膜厚(外部電極の厚み)を変えたいずれの場合であっても、抵抗値が小さくなっている。具体的には、積層型圧電素子1では、従来の積層型圧電素子60に比べて、Au膜厚が0.74μmでは抵抗値が−8.8%、Au膜厚が0.94μmでは抵抗値が−10.4%、Au膜厚が1.15μmでは抵抗値が−15.3%低減している。したがって、Au膜厚が厚くなるにつれて、効果が顕著となっている。
【0040】
ここで、共通外部電極における抵抗値を低下させるために、積層体2の第1及び第2端面2a,2bに外部電極を設けることが考えられる。しかしながら、そのような構成の場合には以下のような問題が生じる。すなわち、積層体2の第1及び第2端面2a,2bに外部電極が形成されている場合では、積層型圧電素子から構成された圧電アクチュエータを実装基板等にはんだによって実装する際、端面に形成された外部電極側にはんだが回り込んで端面側に凹凸が生じることがある。積層体の端面は、実装する際の位置決めに用いられている。そのため、圧電アクチュエータを実装するときに端面に凹凸が生じていると、位置決めが不確実になるおそれがある。
【0041】
また、圧電アクチュエータを実装する際、端面側に外部電極が形成されていると、隣接する金属製の部材等との間で短絡が発生するおそれがある。そのため、金属製の部材等を積層体の端面側において近接して配置することができない。したがって、限られたスペースにおいて圧電アクチュエータを実装しなければならない場合、スペースを有効に活用できないといった問題が発生する。
【0042】
これに対して、積層型圧電素子1では、積層体2の端面2a,2bに外部電極が形成されていないため、はんだが第1及び第2端面2a,2b側に回り込むことがなく、はんだの回り込みによる位置決めの不具合を防止できる。また、積層型圧電素子1の長手方向の両側に金属製の部品、部材を配置することができるため、限られたスペースにおいて効率よく部品を配置することが可能となり、スペースを有効活用することができる。
【0043】
また、第4外部電極6によって導通経路が確保されることで共通外部電極の抵抗値を低下させることができるため、第2部分21a及び第3部分21bにおいて第3内部電極33の幅を狭くすることができる。これにより、第2部分21a及び第3部分21bの長さ寸法を小さくすることができる。したがって、第1部分20の長さ寸法を維持しつつ、積層型圧電素子1の長さ寸法を小さくすることができる。その結果、積層型圧電素子1の小型を図ることができる。
【0044】
また、積層体2の側面2e及び主面2dの角部分に切欠部36を形成するため、第1外部電極3及び第4外部電極6を形成する際に、第1外部電極3と第4外部電極6とを電気的に絶縁するためのマスキング等を必要としない。つまり、第1外部電極3を第1側面2eの全面に形成すると共に、第4外部電極6を第2主面2dの全面に形成した後に、切欠部36を形成することにより、第1外部電極3と第4外部電極6とを物理的且つ電気的に絶縁することができる。したがって、積層型圧電素子1を容易に作製することができる。
【0045】
更には、積層型圧電素子1では、従来の積層型圧電素子60のように第2部分21Aa及び第3部分21Abにおいて切欠部36Aが形成されていないため、従来の積層型圧電素子60に比べて基板と第4外部電極6との接触面積を大きくすることができる。これにより、基板(支持体)との接着をより確実なものとすることができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1部分20を挟むように第2部分21a及び第3部分21bが設けられた積層体2としているが、積層体2は、第1部分20と第2部分21a又は第3部分21bとを少なくとも一つ備えていればよい。
【符号の説明】
【0047】
1…積層型圧電素子、2…積層体、2a,2b…端面、2c,2d…側面、2e,2f…主面、3…第1外部電極、4…第2外部電極、5a,5b…第3外部電極(第5外部電極)、6…第4外部電極、20…第1部分、21a…第2部分、21b…第3部分、31…第1内部電極、32…第2内部電極、33…第3内部電極(第4内部電極)、34,35…溝、36…切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電体層が積層されると共に、互いに対向する一対の第1及び第2端面と、前記一対の第1及び第2端面を連結するように伸び且つ前記複数の圧電体層の積層方向において互いに対向する一対の第1及び第2主面と、前記一対の第1及び第2主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の第1及び第2側面とを有する積層体と、
前記積層体の前記第1及び第2端面の間に位置する第1部分に前記複数の圧電体層を介して交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極と、
前記積層体の前記第1端面側に位置する第2部分に配置される第3内部電極と、
前記第1側面に設けられ、前記第1内部電極と接続された第1外部電極と、
前記第2側面に設けられ、前記第2内部電極及び前記第3内部電極に接続された第2外部電極と、
前記第1側面に設けられ、前記第3内部電極に接続された第3外部電極と、
前記第1主面に設けられ、前記第2外部電極と前記第3外部電極とを接続する第4外部電極とを備え、
前記第1外部電極と前記第3外部電極とは、前記第1側面において互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項2】
前記積層体には、前記第1部分における前記第1側面と前記第1主面との角部分に切欠部が形成されており、
前記第1内部電極と前記第4外部電極とは、前記切欠部によって互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電素子。
【請求項3】
前記積層体には、前記第1側面において前記第1外部電極と前記第3外部電極との間に溝が形成されており、
前記第1外部電極と前記第3外部電極とは、前記溝によって互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型圧電素子。
【請求項4】
前記積層体の前記第2端面側に位置する第3部分に配置される第4内部電極と、
前記第1側面に設けられ、前記第4内部電極に接続された第5外部電極とを更に備え、
前記第4外部電極は、前記第2外部電極と前記第3外部電極及び前記第5外部電極とを接続しており、
前記第1外部電極と前記第5外部電極とは、前記第1側面において互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の積層型圧電素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178462(P2012−178462A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40607(P2011−40607)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】