説明

積層型熱交換器及びその製造方法

【課題】水に対する耐食性に優れ、しかも熱交換効率の低下も抑制できる積層型熱交換器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層型熱交換器は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体47aの内面に銅又はその合金を主成分とする銅層48を有するクラッド管であり、水の流路となる水用金属管47と、アルミニウム又はその合金を主成分とし、水用金属管47に積層配置されて水用金属管47に接合され、冷媒の流路となる冷媒用金属管45と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と冷媒との間で熱交換させる熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプ給湯機などにおいて水と冷媒との間で熱交換させるための熱交換器が知られている。この熱交換器は、冷媒が流通する流路と水が流通する流路とを備えており、軽量化のために材料として例えばアルミニウムが用いられている。しかし、水が流通する流路がアルミニウムにより形成されている場合には、その流路の内面が腐食しやすい。
【0003】
例えば特許文献1には、壁内を貫通する多数の冷媒流通孔を開設した円筒形の冷媒流通管をアルミ押し出し加工により形成し、銅からなる通水管を冷媒流通管に挿通して拡管加工し、通水管の外周に冷媒流通管を接合した熱交換用二重管を用いた熱交換器が開示されている。この熱交換器では、通水管が銅により形成されているので、水が流通する流路がアルミニウムにより形成されている場合に比べて水に対する耐食性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1における熱交換器のように通水管を冷媒流通管に挿通して拡管加工することにより管同士を接合する方法では、冷媒流通管の内面と通水管の外面との密着度合い(面接触の度合い)を高めるためには、冷媒流通管の内面と通水管の外面が高い面精度で形成されている必要がある。したがって、特許文献1の熱交換器では、管同士の密着性が必ずしも高くなく、場合によっては熱交換効率が十分に得られないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水に対する耐食性に優れ、しかも熱交換効率の低下も抑制できる積層型熱交換器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層型熱交換器は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体(47a)の内面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド管であり、水の流路となる水用金属管(47)と、アルミニウム又はその合金を主成分とし、前記水用金属管(47)に積層配置されて前記水用金属管(47)に接合され、冷媒の流路となる冷媒用金属管(45)と、を備えている。
【0008】
この構成では、前記水用金属管(47)が、金属管本体(47a)と銅層(48)とが強固に接合したクラッド管であるので、金属管本体(47a)に対する銅層(48)の密着度合いが高く、銅層(48)と金属管本体(47a)との間で熱交換効率が低減するのを抑制することができる。しかも、この熱交換器では、水用金属管(47)と冷媒用金属管(45)とを積層して接合するので、その接合方法として、例えばろう付け、はんだ付け、溶接などの種々の方法を用いることができる。しかも、これらの金属管は、共にアルミニウム又はその合金を主成分としているので、同種金属同士の接合であり、上記したろう付け、はんだ付け、溶接などの方法によって高い接合強度を得ることができる。
【0009】
また、前記冷媒用金属管(45)及び前記水用金属管(47)は、厚みよりも幅の方が大きい扁平な形状をそれぞれ有し、厚み方向に積層されていてもよい。
【0010】
この構成では、熱交換器を例えば蛇行した形状、渦巻形状などに容易に曲げ加工することができる。また、扁平な金属管同士が厚み方向に積層されているので、互いの面接触する面積が大きくなり、熱交換効率に優れた熱交換器を得ることができる。
【0011】
また、前記水用金属管(47)は、その内面から突出する複数の凸部(56)を有していてもよい。
【0012】
この構成では、前記水用金属管(47)は、その内面から突出する複数の凸部(56)を有しているので、水との接触面積を増大させて熱交換効率を向上させることができる。また、熱交換器を例えば蛇行した形状、渦巻形状などに容易に曲げ加工する際に、複数の凸部(56)が過度の変形を抑制し、水の流路が塞がれるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の積層型熱交換器の製造方法は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体(47a)の内面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド管である水用金属管(47)を成形する工程と、アルミニウム又はその合金を主成分とし、冷媒の流路となる冷媒用金属管(45)を成形する工程と、前記冷媒用金属管(45)を前記水用金属管(47)の厚み方向の一方側に積層配置して前記冷媒用金属管(45)と前記水用金属管(47)とを接合する工程と、を備えている。
【0014】
また、前記水用金属管(47)を成形する工程は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属板本体の表面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド板を成形する工程と、前記クラッド板の両サイドの端辺同士を接合してクラッド管を成形する工程と、を含んでいてもよい。
【0015】
また、前記水用金属管(47)を成形する工程は、前記クラッド板の表面に複数の凸部(56)を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
【0016】
従来の拡管加工による製法では水用金属管に複数の凸部を形成するのは困難であるが、この構成では、クラッド板の表面に複数の凸部(56)を形成した後、このクラッド板の両サイドの端辺同士を接合して水用金属管(47)を成形できる。
【0017】
また、前記水用金属管(47)を成形する工程において、押出成形により前記金属管本体(47a)の内面に前記銅層(48)を被覆してもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、水に対する耐食性に優れ、しかも熱交換効率の低下も抑制できる積層型熱交換器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ヒートポンプ式給湯機の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる積層型熱交換器を示す斜視図である。
【図3】(a)は前記積層型熱交換器の積層構造を説明するための斜視図であり、(b)は前記積層型熱交換器の変形例1を示す斜視図であり、(c)は前記積層型熱交換器の変形例2を示す斜視図である。
【図4】(a)は前記積層型熱交換器の変形例3を示す斜視図であり、(b)は前記積層型熱交換器の変形例4を示す斜視図であり、(c)は前記積層型熱交換器の変形例5を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、前記変形例3における水用金属管の成形方法を説明するための概略図である。
【図6】(a)〜(c)は、前記変形例4における水用金属管の成形方法を説明するための概略図である。
【図7】前記水用金属管の端部とヘッダーとの接続構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<ヒートポンプ式給湯機>
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機11は、冷媒を循環させる冷媒回路13と、この冷媒回路13の冷媒との熱交換により低温水を沸き上げてタンク15に高温水を貯湯するための貯湯回路17とを備えている。
【0022】
冷媒回路13は、圧縮機19と、熱交換器(水熱交換器)21と、膨張弁23と、蒸発器25と、これらを接続する配管とを有している。冷媒回路13を循環する冷媒としては例えば二酸化炭素などが用いられる。
【0023】
貯湯回路17は、水が貯留されるタンク15と、このタンク15の水を熱交換器21に送る入水配管27と、熱交換器21との熱交換により加熱された水をタンク15に戻す出湯配管29と、貯湯回路17内において水を循環させるポンプ31とを有している。
【0024】
この給湯機11では、冷媒回路13の圧縮機19が駆動するとともに貯湯回路17のポンプ31が駆動することにより、タンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の低温水が入水配管27を通じて熱交換器21に送られる。熱交換器21に送られてきた低温水は、熱交換器21において加熱され、出湯配管29を通じてタンク15の上部に設けられた入水口からタンク15内に戻される。
【0025】
タンク15は、貯湯された高温水をタンク15の上部から取り出して浴槽などへ給湯するための給湯配管35と、タンク15の底部に水道水などの低温水を供給するための給水配管37とを備えている。
【0026】
<積層型熱交換器>
図2は本発明の一実施形態にかかる熱交換器21を示す斜視図である。図2に示すように、この積層型熱交換器21は、長手方向の一端41が内側に配置され、長手方向の他端43が外側に配置されるように渦巻き状に巻かれた構造を有している。
【0027】
この熱交換器21は、図1の給湯機11において冷媒回路13を循環する冷媒と貯湯回路17を循環する水との間で熱交換を行う。熱交換器21内を冷媒および水がそれぞれ通過する間に水と冷媒との間で熱交換されて水の温度調節を行うことができる。
【0028】
図3(a)は積層型熱交換器21の積層構造を説明するための斜視図である。図3(a)に示すように、熱交換器21は、冷媒用金属管45、水用金属管47および冷媒用金属管49がこの順に厚み方向に積層配置された構造を有している。冷媒用金属管45の外面65は、水用金属管47の外面61と接合され、冷媒用金属管49の外面67は、水用金属管47の外面63と接合されている。
【0029】
冷媒用金属管45および冷媒用金属管49は、厚みよりも幅の方が大きい扁平な形状をそれぞれ有している。これらの冷媒用金属管45,49の内部には、長手方向に延びる冷媒流路51が複数形成されている。複数の冷媒流路51は互いに独立しており、幅方向に一列に並んで配列されている。各冷媒流路51には、冷媒回路13を循環する冷媒が流れる。冷媒用金属管45および冷媒用金属管49は、前記のような多穴管であるので、冷媒流路51を流れる冷媒の偏流を抑制することができる。冷媒用金属管45および冷媒用金属管49を構成する材料は、アルミニウム又はその合金を主成分としている。
【0030】
水用金属管47は、厚みよりも幅の方が大きい扁平な形状を有している。この水用金属管47の内部には、長手方向に延びる流体流路53が形成されている。この流体流路53には、貯湯回路17を循環する水が流れる。
【0031】
水用金属管47は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体47aと、この金属管本体47aの内面に形成された銅又はその合金を主成分とする銅層48とを有するクラッド管である。銅層48は、金属管本体47aの内面全体を被覆している。銅層48の膜厚は、特に限定されるものではないが、50〜100μm程度であるのが好ましい。
【0032】
<積層型熱交換器の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る積層型熱交換器21の製造方法について説明する。この製造方法は、アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体47aの内面に銅又はその合金を主成分とする銅層48を有する水用金属管(クラッド管)47を成形する工程と、アルミニウム又はその合金を主成分とし、冷媒の流路となる冷媒用金属管45を成形する工程と、冷媒用金属管45を水用金属管47の厚み方向の一方側に積層配置し、冷媒用金属管49を水用金属管47の厚み方向の他方側に積層配置して冷媒用金属管45,49と水用金属管47とを接合する工程と、を備えている。
【0033】
水用金属管47を成形する工程において、例えば押出成形により金属管本体47aを成形するとともに金属管本体47aの内面に銅層48を被覆することができる。すなわち、水用金属管47の金属管本体47aと銅層48とは押出成形により一体的に成形することができる。冷媒用金属管45,49は、例えば押出成形により成形することができる。水用金属管47と冷媒用金属管45,49とは、例えばろう付け、はんだ付け、溶接などの方法により接合することができる。
【0034】
[変形例1]
図3(b)は積層型熱交換器21の変形例1を示す斜視図である。この変形例1の熱交換器21では、水用金属管47は幅方向Wに並ぶ2つの扁平な金属管を含む。一方の金属管は、アルミニウム又はその合金を主成分とする第1金属管本体47aと、この第1金属管本体47aの内面に形成された銅層48とを有するクラッド管である。他方の金属管は、アルミニウム又はその合金を主成分とする第2金属管本体47bと、この第2金属管本体47bの内面に形成された銅層48とを有するクラッド管である。これらのクラッド管は、例えば押出成形により金属管本体47a(又は金属管本体47b)を成形するとともにその内面に銅層48を形成することにより得ることができる。
【0035】
水用金属管47の流体流路53は、一方の金属管の筒内の第1流体流路53aと、他方の金属管の筒内の第2流体流路53bとからなる。この水用金属管47は、第1金属管本体47aの側壁55aと第2金属管本体47bの側壁55bとからなる支持部55によって厚み方向の剛性が高められている。支持部55は、長手方向Lに連続して形成されており、第1流体流路53aと第2流体流路53bとを仕切っている。
【0036】
変形例1では、押出成形などの方法によってクラッド管を簡単に成形できるので、製造コストを低減することができ、しかも支持部55により厚み方向の変形を抑制することができる。なお、変形例1において、幅方向Wに並べる扁平管の個数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0037】
[変形例2]
図3(c)は積層型熱交換器の変形例2を示す斜視図である。この変形例2の熱交換器21の水用金属管47は、第1流体流路53aと第2流体流路53bとが支持部55により仕切られた一体の扁平管からなる。支持部55は、長手方向Lに連続して形成されており、第1流体流路53aと第2流体流路53bとを仕切っている。
【0038】
この水用金属管47は、金属管本体47aの幅方向Wに並ぶ第1流体流路53aと第2流体流路53bの内面に銅層48がそれぞれ形成されたクラッド管である。このクラッド管は、例えば押出成形により金属管本体47aを成形するとともにこの金属管本体47aの内面に銅層48を形成することにより得ることができる。
【0039】
変形例2では、押出成形などの方法によってクラッド管を簡単に成形できるので、製造コストを低減することができ、しかも支持部55により厚み方向の変形を抑制することができる。なお、変形例2において、幅方向Wに並べる流体流路の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0040】
[変形例3]
図4(a)は積層型熱交換器の変形例3を示す斜視図である。この変形例3の熱交換器21の水用金属管47は、金属管本体47aと、この金属管本体47aの内面に形成された銅層48とを有するクラッド管である。
【0041】
この水用金属管47は、その流体流路53内に複数の凸部(支持部)56を有している。各凸部56は、水用金属管47の厚み方向の一方側の内面又は他方側の内面から厚み方向に突出している。一方側の内面に形成された凸部56と他方側の内面に形成された凸部56とは、厚み方向に対向している。対向する凸部56の先端部同士は、当接又は近接している。これらの凸部56が設けられていることにより、水用金属管47はその厚み方向の変形が抑制される。
【0042】
各凸部56は、長手方向Lに連続して形成されていてもよい。また、各凸部56を長手方向Lに断続的に形成して、複数の凸部56を長手方向Lに点在させた形態であってもよい。
【0043】
各凸部56が長手方向Lに連続して形成された形態の場合には、水用金属管47は、例えば押出成形により金属管本体47aを成形するとともにこの金属管本体47aの内面に銅層48を形成することにより得ることができる。各凸部56は前記押出成形時に形成される。
【0044】
一方、各凸部56を長手方向Lに断続的に形成して、複数の凸部56を長手方向Lに点在させた形態の場合には、例えば次のようにして水用金属管47を得ることができる。
【0045】
まず、図5(a)に示すように、例えば押出成形などによりアルミニウム又はその合金を主成分とする金属板本体の表面に銅又はその合金を主成分とする銅層48を有するクラッド板Mを成形する。
【0046】
ついで、図5(b)に示すように、クラッド板Mの表面の所定の位置に複数の凸部56を形成する。複数の凸部56は、例えばプレス成形などにより形成することができる。
【0047】
ついで、図5(c)に示すように、クラッド板Mを長手方向Lに沿った折り曲げ位置B1及び位置B2でそれぞれ折り曲げて、クラッド板Mの幅方向Wの一方の端辺E1と他方端辺E2とが対向するようにクラッド板Mを管状に折り曲げ加工する。最後に、クラッド板Mの端辺E1,E2同士を接合してクラッド管である水用金属管47を成形する。端辺E1,E2同士の接合方法としては、例えば溶接などが挙げられる。
【0048】
[変形例4]
図4(b)は積層型熱交換器21の変形例4を示す斜視図である。この熱交換器21における金属管47は、流体流路53と支持部55とを備えている。流体流路53は、幅方向Wに並設されて長手方向Lに延びる第1流体流路53aと第2流体流路53bとを有している。支持部55は、幅方向Wに並設された第1流体流路53aと第2流体流路53bとの間に設けられている。
【0049】
水用金属管47の第1流体流路53aは、次のようにして形成される。まず、例えば押出成形などによりアルミニウム又はその合金を主成分とする金属板本体の表面に銅又はその合金を主成分とする銅層48を有するクラッド板Mを成形する。
【0050】
ついで、図6(a),(b)に示すように、得られたクラッド板Mを長手方向Lに沿った折り曲げ位置B1で折り曲げてクラッド板Mの幅方向Wの一方の端辺E1が金属板Mの一方の表面Sに当接するように金属板Mを管状に曲げ加工する。ついで、前記端辺E1が長手方向Lに沿って表面Sに例えば溶接などの方法によって接合されることにより、第1流体流路53aが形成される。
【0051】
同様に、水用金属管47の第2流体流路53bは、次のようにして形成される。まず、クラッド板Mを長手方向Lに沿った折り曲げ位置B2で折り曲げてクラッド板Mの幅方向Wの他方の端辺E2が前記一方の端辺E1に隣接する位置で表面Sに当接するようにクラッド板Mを管状に曲げ加工する。ついで、前記端辺E2が長手方向Lに沿って表面Sに接合されることにより、第2流体流路53bが形成される。
【0052】
図6(c)に示すように、支持部55は、クラッド板Mの一部、すなわち端辺E1と端辺E2から高さ方向(金属管47の厚み方向)の上方に延びる部分により構成されている。この支持部55は、端辺E1と端辺E2の近傍が互いに当接している。また、この支持部55は、前記高さ方向の中央付近から幅方向Wの両側にそれぞれ分岐している。支持部55の分岐した各部分は、前記高さ方向から左右に傾斜した方向にそれぞれ延びている。
【0053】
この変形例4における水用金属管47は、クラッド板Mを用いて上記のように成形することにより、略B字の断面形状を有している。このように長手方向Lに沿って延びる支持部55を簡単な製造方法により形成できる。また、この水用金属管47の支持部55は、長手方向Lに沿って連続して延びているので、厚み方向の変形を抑制する効果に優れている。
【0054】
[変形例5]
図4(c)は積層型熱交換器の変形例5を示す斜視図である。図4(c)に示すように、この水用金属管47は、第1流体流路53a内及び第2流体流路53b内に複数の凸部56をそれぞれ有している。複数の凸部56は、図6(a)の工程と図6(b)の工程との間に、プレス加工によってクラッド板Mに形成される。
【0055】
<水用金属管とヘッダーとの接続構造>
図7は、水用金属管47の端部とヘッダー71との接続構造を示す概略図である。図7に示すように、ヘッダー71は、内部に水が流通可能な流路71aが形成された円筒形状を有している。ヘッダー71を構成する材料は、例えばアルミニウム又はその合金を主成分とする。
【0056】
ヘッダー71の側部には、水用金属管47の端部47c,47d,47eが接続される3つの挿入口71c,71d,71eが形成されている。水用金属管47は、図7に示すように3つの端部47c,47d,47eに分岐している。端部47c,47d,47eは、挿入口71c,71d,71eにそれぞれ挿入されて、ろう材などにより互いに接合されている。
【0057】
ヘッダー71の流路71aを構成する内面には、耐食性を向上させるための被覆層73が形成されている。この被覆層73は、例えば樹脂をコーティングすることにより形成できる。この樹脂コーティングは、ヘッダー71の流路71a内に配置された水用金属管47の端部47c,47d,47eの端面にも施すのが好ましい。これらの端部47c,47d,47eへの樹脂コーティングには、例えば吐出口の径が細いスプレーなどを用いることができる。これにより、アルミニウムと銅が隣接して露出した端部47c,47d,47eの端面を樹脂により覆うことができる。
【0058】
また、この被覆層73は、めっきにより形成してもよい。このめっきについても同様にヘッダー71の流路71a内に配置された水用金属管47の端部47c,47d,47eの端面にも施すのが好ましい。これにより、アルミニウムと銅が隣接して露出した端部47c,47d,47eの端面をめっきにより覆うことができる。
【0059】
さらに、ヘッダー71としては、その内面が予め銅層(被覆層)73などによりコーティングされたクラッド管を用いてもよい。この場合、水用金属管47の端部47c,47d,47eの端面には、上記した樹脂やめっきにより別途コーティングするのが好ましい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、水用金属管47が、金属管本体47aと銅層48とが強固に接合したクラッド管であるので、金属管本体47aに対する銅層48の密着度合いが高く、銅層48と金属管本体47aとの間で熱交換効率が低減するのを抑制することができる。しかも、この熱交換器では、水用金属管47と冷媒用金属管45,49とを積層して接合するので、その接合方法として、例えばはんだ付け、溶接などの種々の方法を用いることができる。しかも、これらの金属管は、共にアルミニウム又はその合金を主成分としているので、同種金属同士の接合であり、上記したはんだ付け、溶接などの方法によって高い接合強度を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、冷媒用金属管45及び水用金属管47は、厚みよりも幅の方が大きい扁平な形状をそれぞれ有し、厚み方向に積層されている。この構成では、熱交換器を例えば蛇行した形状、渦巻形状などに容易に曲げ加工することができる。また、扁平な金属管同士が厚み方向に積層されているので、互いの面接触する面積が大きくなり、熱交換効率に優れた熱交換器を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、水用金属管47がその内面から突出する複数の凸部56を有している場合には、水との接触面積を増大させて熱交換効率を向上させることができる。また、熱交換器を例えば蛇行した形状、渦巻形状などに容易に曲げ加工する際に、複数の凸部56が厚み方向の過度の変形を抑制し、水の流路が塞がれるのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、水用金属管47を成形する工程が、クラッド板Mの表面に複数の凸部56を形成する工程を含んでいる。従来の拡管加工による製法では水用金属管47に複数の凸部56を形成するのは困難であるが、この構成では、クラッド板Mの表面に複数の凸部56を形成した後、このクラッド板Mの両サイドの端辺同士を接合して水用金属管47を成形できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、前記積層型熱交換器をヒートポンプ式給湯機に用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明の積層型熱交換器はヒートポンプ式給湯機以外の用途に適用することもできる。
【0065】
また、前記実施形態では、前記積層型熱交換器が渦巻き状に巻かれた構造を有している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。前記積層型熱交換器は、前記実施形態のように曲げ加工せずに直線状の構造のまま用いてもよく、また、例えば蛇行した構造に曲げ加工するなどして用いてもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、前記積層型熱交換器が3層構造である場合を例に挙げて説明したが、一つの冷媒用金属管と一つの水用金属管とからなる2層構造であってもよく、4層以上の多層構造であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
45,49 冷媒用金属管
47 水用金属管
48 銅層
51 冷媒流路
53 流体流路
55 支持部
56 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体(47a)の内面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド管であり、水の流路となる水用金属管(47)と、
アルミニウム又はその合金を主成分とし、前記水用金属管(47)に積層配置されて前記水用金属管(47)に接合され、冷媒の流路となる冷媒用金属管(45)と、を備えた積層型熱交換器。
【請求項2】
前記冷媒用金属管(45)及び前記水用金属管(47)は、厚みよりも幅の方が大きい扁平な形状をそれぞれ有し、厚み方向に積層されている、請求項1に記載の積層型熱交換器。
【請求項3】
前記水用金属管(47)は、その内面から突出する複数の凸部(56)を有している、請求項1又は2に記載の積層型熱交換器。
【請求項4】
アルミニウム又はその合金を主成分とする金属管本体(47a)の内面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド管である水用金属管(47)を成形する工程と、
アルミニウム又はその合金を主成分とし、冷媒の流路となる冷媒用金属管(45)を成形する工程と、
前記冷媒用金属管(45)を前記水用金属管(47)の厚み方向の一方側に積層配置して前記冷媒用金属管(45)と前記水用金属管(47)とを接合する工程と、を備えた積層型熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記水用金属管(47)を成形する工程は、
アルミニウム又はその合金を主成分とする金属板本体の表面に銅又はその合金を主成分とする銅層(48)を有するクラッド板を成形する工程と、
前記クラッド板の両サイドの端辺同士を接合してクラッド管を成形する工程と、を含む、請求項4に記載の積層型熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記水用金属管(47)を成形する工程は、
前記クラッド板の表面に複数の凸部(56)を形成する工程をさらに含む、請求項5に記載の積層型熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記水用金属管(47)を成形する工程において、押出成形により前記金属管本体(47a)の内面に前記銅層(48)を被覆する、請求項4に記載の積層型熱交換器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−174649(P2011−174649A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38472(P2010−38472)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】