説明

積層型電子部品およびその製造方法

【課題】積層型電子部品の外部電極を、積層体の端面上に直接めっきを施すことによって形成しようとする場合、端面に露出した内部電極の隣り合うものの端部間の距離が長いと、めっき析出物同士の架橋が生じにくく、連続しためっき膜が形成されにくく、信頼性が低くなる。
【解決手段】外部電極8を形成するに当たって、積層体5の端面6に、粒径が1μm以上の複数の導電性粒子10を、たとえばサンドブラスト法またはブラシ研磨法により付着させた後、電解めっきまたは無電解めっきにより、めっき膜12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層型電子部品およびその製造方法に関するものであり、特に、外部電極が積層体の外表面上に、直接、めっきを施すことにより形成された、積層型電子部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、積層セラミックコンデンサに代表される積層型電子部品101は、一般に、積層された複数の絶縁体層102と、絶縁体層102間の界面に沿って形成された複数の層状の内部電極103および104とを含む、積層体105を備えている。積層体105の一方および他方端面106および107には、それぞれ、複数の内部電極103および複数の内部電極104の各端部が露出していて、これら内部電極103の各端部および内部電極104の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部電極108および109が形成されている。
【0003】
外部電極108および109の形成にあたっては、一般に、金属成分とガラス成分とを含む金属ペーストを積層体105の端面106および107上に塗布し、次いで焼き付けることにより、ペースト電極膜110がまず形成される。次に、ペースト電極膜110上に、たとえばNiを主成分とする第1のめっき膜111が形成され、さらにその上に、たとえばSnを主成分とする第2のめっき膜112が形成される。すなわち、外部電極108および109の各々は、ペースト電極膜110、第1のめっき膜111および第2のめっき膜112の3層構造より構成される。
【0004】
外部電極108および109に対しては、積層型電子部品101が半田を用いて基板に実装される際に、半田との濡れ性が良好であることが求められる。同時に、外部電極108に対しては、互いに電気的に絶縁された状態にある複数の内部電極103を互いに電気的に接続し、かつ、外部電極109に対しては、互いに電気的に絶縁された状態にある複数の内部電極104を互いに電気的に接続する役割が求められる。半田濡れ性の確保の役割は、上述した第2のめっき膜112が果たしており、内部電極103および104相互の電気的接続の役割は、ペースト電極膜110が果たしている。第1のめっき膜111は、はんだ接合時のはんだ食われを防止する役割を果たしている。
【0005】
しかし、ペースト電極膜110は、その厚みが数十μm〜数百μmと大きい。したがって、この積層型電子部品101の寸法を一定の規格値に収めるためには、このペースト電極膜110の体積を確保する必要が生じる分、不所望にも、静電容量確保のための実効体積を減少させる必要が生じる。一方、めっき膜111および112はその厚みが数μm程度であるため、仮に第1のめっき膜111および第2のめっき膜112のみで外部電極108および109を構成できれば、静電容量確保のための実効体積をより多く確保することができる。
【0006】
上述のように、外部電極を、積層体の端面上に、直接、めっきを施すことにより形成するには、積層体の端面に露出した複数の内部電極の端部にめっき析出物を析出させるばかりでなく、これらめっき析出物が相互に架橋されるようにめっき析出物をめっき成長させる必要がある。しかしながら、隣り合う内部電極の端部間の距離が長くなるほど、めっき成長が生じても、上述の架橋が達成されにくくなる。この場合、内部電極とめっき膜との間での接合不良がもたらされたり、水分等の浸入による絶縁抵抗劣化の問題を引き起こしたりする。
【0007】
上記のような問題を解決し得るものとして、たとえば特開2004−40084号公報(特許文献1)に記載された技術がある。特許文献1には、めっきにより外部電極を形成したい領域であるが、内部電極の端部が露出していない位置にダミー電極の端部を露出させることが記載されている。これによって、内部電極の露出した端部が分布しない領域、あるいは分布密度の低い領域でも、前述しためっき析出物の架橋を生じやすくし、したがって、めっきにより、良好な状態で外部電極を形成することができる。また、特許文献1に記載の技術を適用すれば、内部電極の端部が全く露出していない、積層体の側面上にも、めっきにより外部電極を形成することが可能となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を実施しようとする場合、本来の内部電極に加えて、ダミー電極としての内部電極が必要であるため、形成すべき内部電極の合計数が増え、そのため、内部電極形成工程が煩雑となり、その結果、製造コストが増大する。また、ダミー電極の形成位置のずれ、あるいは積層体を得るための積み重ね時にずれが生じたりすると、ダミー電極が積層体の所定の面に適正に露出しなくなることがある。このような場合において、ダミー電極の露出不足が生じると、めっき膜が均一に形成されなくなる。めっき膜が均一に形成されない場合、本来の内部電極との間で接合不良が生じ、積層型電子部品の信頼性の低下を招くことがある。
【特許文献1】特開2004−40084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の目的は、上記のような問題を解決し得る、積層型電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【0010】
この発明の他の目的は、上述した製造方法によって製造される積層型電子部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、相対向する第1および第2の主面と前記第1および第2の主面間を連結する第1および第2の端面ならびに第1および第2の側面とを有する直方体状をなし、積層された複数の絶縁体層と、前記絶縁体層間の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含み、複数の前記内部電極の各端部が互いに絶縁された状態で前記第1および第2の端面のいずれかの所定の面に露出している、積層体を用意する工程と、前記積層体の前記所定の面に露出した複数の前記内部電極の各端部を互いに電気的に接続するように、前記積層体の前記所定の面上に外部電極を形成する工程と、次いで、前記積層体の前記第1および第2の主面ならびに前記第1および第2の側面の各々における、前記第1および第2の端面に隣接する各端縁部に、金属粉末とガラスフリットとを含む導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより、前記外部電極と導通する端縁厚膜電極を形成する工程と、を含む積層型電子部品の製造方法にまず向けられる。
【0012】
この発明では、前述した技術的課題を解決するため、外部電極を形成する工程は、積層体を用意する工程において用意された積層体の所定の面に、粒径が1μm以上の複数の導電性粒子を付着させる工程と、導電性粒子が付着した上記所定の面に直接めっきを施す工程とを備えることを特徴としている。
【0013】
上述した導電性粒子を付着させる工程を実施するにあたっては、たとえば、所定の面に対して、研磨作用を有する研磨用粒子の中に導電性粒子を混在させてサンドブラスト法を実施するようにすることが好ましい。あるいは、所定の面に対して、導電性粒子を含む樹脂製の毛先を有するブラシを用いたブラシ研磨法を実施するようにすることが好ましい。
【0014】
この発明に係る積層型電子部品の製造方法において、めっきを施す工程の前に、積層体の所定の面にガラス粒子を付着させる工程、および、めっきを施す工程の後に、ガラス粒子を構成するガラスを流動または拡散させるように熱処理する工程をさらに備えることが好ましい。
【0015】
さらに、前記端縁厚膜電極および前記外部電極の上に、めっきを施すことによって、めっき膜を形成する工程を備えることも好ましい。
【0016】
上述したこの発明に係る製造方法によって得られた積層型電子部品は、構造的な特徴を有している。この発明は、また、このような構造的な特徴を有する積層型電子部品にも向けられる。
【0017】
すなわち、この発明に係る積層型電子部品は、相対向する第1および第2の主面と前記第1および第2の主面間を連結する第1および第2の端面ならびに第1および第2の側面とを有する直方体状をなし、積層された複数の絶縁体層と、前記絶縁体層間の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含み、複数の前記内部電極の各端部が互いに絶縁された状態で前記第1および第2の端面のいずれかに露出している、積層体と、前記積層体の前記第1および第2の端面の各々から露出した複数の前記内部電極の各端部を互いに接続するように前記第1および第2の端面上に形成された、実質的にめっき析出物からなる外部電極と、前記積層体の前記第1および第2の主面ならびに前記第1および第2の側面の各々における、前記第1および第2の端面に隣接する各端縁部に前記外部電極と導通するように形成された、金属粉末とガラスフリットとを含む端縁厚膜電極とを備える、積層型電子部品であって、前記所定の面と前記めっき膜との境界部分には、粒径1μm以上の複数の導電性粒子が分布していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、隣り合うめっき析出物同士が成長し、架橋しようとする際に、導電性粒子が橋渡し作用を果たす。そのため、めっき析出物同士が架橋しやすくなり、架橋に必要なめっき成長力が低減される。このようなことから、隣り合う内部電極の各端部間の距離が長い場合であっても、積層体の所定の面に、良好な状態でめっき膜を形成することが可能となる。
【0019】
また、この発明によれば、内部電極の端部が露出しない領域にも、導電性粒子を付着させることにより、良好な状態でめっき膜を形成することができる。
【0020】
また、導電性粒子の粒径が1μm以上と大きくされているので、めっき析出物の架橋現象をより確実に促進することできる。
【0021】
さらに、特許文献1に記載のようなダミー電極が不要であるので、ダミー電極を形成するためのコストを不要なものとすることができるとともに、ダミー電極のずれなどの不良の発生確率を低減することができる。
【0022】
この発明において、導電性粒子を付着させるため、研磨用粒子の中に導電性粒子を混在させてサンドブラスト法を実施するようにすれば、この導電性粒子を付着させる工程において、内部電極の端部を積層体の所定の面に十分に露出させるための工程を同時に実施することができる。また、導電性粒子が金属からなる場合、導電性粒子は、積層体の所定の面にめり込んだ状態で付着するため、研磨粉による洗浄を実施しても、導電性粒子が簡単に除去されてしまうことはない。
【0023】
導電性粒子を付着させるため、導電粒子を含む樹脂製の毛先を有するブラシを用いたブラシ研磨法を実施するようにした場合にも、上述のサンドブラスト法を実施した場合と同様の利点が奏される。また、ブラシ研磨法によれば、サンドブラスト法に比べて、その後に形成されるめっき膜の固着力を向上させることができる。
【0024】
なお、積層体の主面および側面の各々における、端面に隣接する各端縁部に外部電極と導通するように端縁厚膜電極が確実に形成されるので、はんだ付けによる実装時の接合信頼性が高められるとともに、めっきによって形成された外部電極の周囲から積層体内部への水分等の浸入が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1および図2を参照して、この発明の第1の実施形態による積層型電子部品1およびその製造方法について説明する。
【0026】
まず、図1に示すように、積層型電子部品1は、部品本体となる積層体5を備えている。積層体5は、相対向する第1および第2の主面31および32とこれら第1および第2の主面31および32間を連結する第1および第2の端面6および7ならびに第1および第2の側面(図1では図示されない。)とを有する直方体状をなしている。
【0027】
積層体5は、積層された複数の絶縁体層2と、絶縁体層2間の界面に沿って形成された複数の層状の内部電極3および4とを含む。積層型電子部品1が積層セラミックコンデンサを構成するとき、絶縁体層2は、誘電体セラミックから構成される。積層体5の一方および他方端面6および7には、それぞれ、複数の内部電極3および複数の内部電極4の各端部が露出していて、これら内部電極3の各端部および内部電極4の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部電極8および9が形成されている。
【0028】
外部電極8および9の各々は、電解めっきまたは無電解めっきのような湿式めっきによるめっき析出物からなるめっき膜12から構成される。すなわち、外部電極8および9は、導電性ペースト膜、真空蒸着膜、スパッタ膜などを含むものではない。めっき膜12は、たとえばCuを主成分としている。
【0029】
積層型電子部品1は、さらに、積層体2の第1および第2の主面31および32ならびに第1および第2の側面の各々における、第1および第2の端面6および7に隣接する各端縁部に第1および第2の外部電極8および9とそれぞれ導通するように形成された、第1および第2の端縁厚膜電極21および22を備えている。これら端縁厚膜電極21および22は、金属粉末とガラスフリットとを含む焼結体から構成される。
【0030】
次に、図1に示した積層型電子部品1の製造方法について、外部電極8および9の形成方法を中心に、図2をも参照しながら説明する。図2は、図1に示した積層体5の一部であって、内部電極3が露出する一方の端面6付近を拡大して示す図である。なお、他方の端面7およびそこに露出する内部電極4の状態については、上述した端面6および内部電極3の場合と実質的に同様である。
【0031】
まず、積層された複数の絶縁体層2および絶縁体層2間の界面に沿って形成された複数の内部電極3および4を含み、内部電極3および4の各端部が端面6および7にそれぞれ露出している、積層体5が用意される。
【0032】
次に、積層体5の端面6および7に露出した内部電極3および4の各端部を互いに電気的に接続するように、積層体5の端面6および7上に外部電極8および9をそれぞれ形成する工程が実施される。
【0033】
次いで、積層体2の第1および第2の主面31および32ならびに第1および第2の側面の各々における、第1および第2の端面5および6に隣接する各端縁部に第1および第2の外部電極8および9とそれぞれ導通するよう、ガラスフリット入りの厚膜ペーストが塗布され、熱処理されることにより、第1および第2の端縁厚膜電極21および22が形成される。
【0034】
ここで、上記外部電極8および9を形成する方法について詳細に説明する。
【0035】
まず、図2(1)に示すように、積層体5の端面6および7に、粒径が1μm以上の複数の導電性粒子10を付着させる工程が実施される。上述の導電性粒子10としては、たとえば、銅粒子、錫粒子、金粒子などの金属粒子が用いられることが好ましい。
【0036】
導電性粒子10を付着させるに当たっては、たとえばサンドブラスト法が適用される。すなわち、研磨作用を有する研磨用粒子の中に導電性粒子10を混在させた状態で、積層体5の端面6および7に対して、サンドブラスト法が実施される。このサンドブラスト法によれば、用意された積層体において、内部電極3および4が端面6および7より引っ込んでいて、十分に露出していない場合であっても、絶縁体層2を削り、内部電極3および4を端面6および7に十分に露出させることができる。また、導電性粒子10として金属粒子を用いた場合には、導電性粒子10を端面6および7にめり込んだ状態とすることができるので、研磨用粒子の除去のための洗浄時において簡単に除去されてしまう不都合を回避することができる。
【0037】
導電性粒子10を付着させるため、上述のサンドブラスト法に代えて、ブラシ研磨法が適用されてもよい。すなわち、導電性粒子10を含む樹脂製の毛先を有するブラシを用いながら、積層体5の端面6および7に対してブラシ研磨が施される。このブラシ研磨法によっても、前述したサンドブラスト法の場合と同様、絶縁体層2を削り、内部電極3および4を端面6および7に十分に露出させた状態とすることができ、また、金属からなる導電性粒子10を端面6および7にめり込んだ状態とすることができる。さらに、ブラシ研磨法によれば、後述するように、めっき膜の固着力を高めることができる。
【0038】
次に、導電性粒子10が付着した端面6および7に直接めっきを施す工程が実施される。めっき工程では、まず、図2(2)に示すように、内部電極3および4の露出した部分ならびに導電性粒子10を覆うようにめっき析出物11が析出し、さらにめっき処理を続けると、めっき析出物11が成長し、隣り合うめっき析出物11同士が架橋して、図2(3)に示すように、隣り合うめっき析出物11が互いに一体化し、連続しためっき膜12となる。導電性粒子10は、隣り合うめっき析出物11同士の架橋をより促進するように作用する。
【0039】
以上のようにして、図1に示すように、めっき膜12からなる外部電極8および9が形成された積層型電子部品1が得られる。この積層型電子部品1において、端面6および7とめっき膜12との境界部分には、図2(3)に示すように、粒径1μm以上の複数の導電性粒子10が分布している。
【0040】
なお、導電性粒子10を付着させるためのサンドブラスト法またはブラシ研磨法において、導電性粒子に加えてガラス粒子を混在させておくなどして、めっきを施す工程の前に、積層体5の端面6および7にガラス粒子を付着させておき、めっき工程の後に、ガラス粒子を構成するガラスを流動または拡散させるように熱処理するようにすれば、めっき膜12の固着力をより向上させることができる。
【0041】
以上説明したような積層型電子部品1では、外部電極8および9の各々は、単層のめっき膜12から構成されていたが、さらに少なくとも1層のめっき膜が形成されていてもよい。このような複数層のめっき膜をもって外部電極が形成された積層型電子部品の一例について、図3を参照して説明する。
【0042】
図3は、この発明の第2の実施形態による積層型電子部品1aを示す、図1に対応する図である。図3において、図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図3に示した積層型電子部品1aの外部電極8aおよび9aに注目すると、積層体5の端面6および7上に形成されためっき膜12を下地として、第2のめっき膜としての中間めっき膜13および外側めっき膜14が、めっき膜12の場合と同様、電解めっきまたは無電解めっきによって形成されている。
【0044】
外側めっき膜14は、はんだに対し濡れ性が良好であることが求められるため、たとえばSnやAuなどを主成分とすることが望ましい。この実施形態では、下地となるめっき膜12は、たとえばCuを主成分としている。この場合、中間めっき膜13は、はんだ接合時のはんだ食われを防止する役割を果たすことが求められるため、たとえばNiを主成分とすることが望ましい。なお、下地となるめっき膜12がNiを主成分とする場合、中間めっき膜13は省略されてもよい。
【0045】
なお、中間めっき膜13および外側めっき膜14は、下地めっき膜12の形成後に端縁厚膜電極21および22が形成された後に形成されるのが好ましい。これは、端縁厚膜電極の形成時に加わった熱処理が、下地めっき膜12と内部電極3、4とを相互に拡散させ、下地めっき膜12の端面6および7に対する密着性を高めることにより、その後の工程におけるめっき液の浸入を抑制するためである。なおこの現象は、下地めっき膜12の主成分がCuであり、内部電極3、4の主成分がNiであり、熱処理温度が800℃以上であるときに顕著となる。
【0046】
以上、この発明を、図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0047】
たとえば、この発明が適用される積層型電子部品としては、積層チップコンデンサが代表的であるが、その他、積層チップインダクタ、積層チップサーミスタなどにも適用可能である。
【0048】
したがって、積層型電子部品に備える絶縁体層は、電気的に絶縁する機能を有していればよく、その材質は特に問われるものではない。すなわち、絶縁体層は、誘電体セラミックからなるものに限らず、その他、圧電体セラミック、半導体セラミック、磁性体セラミック、樹脂などからなるものであってもよい。
【0049】
また、上記形態では、めっき膜12が端面6、7の全面を覆うよう設計されているが、必ずしも全面を覆わない設計にも適用することができる。たとえば、端面に対し内部電極の露出部分が複数の領域に分割されており、この複数の露出部分に対してそれぞれめっき膜12を被覆するような場合である。
【0050】
以下、この発明による効果を確認するために実施した実施例について説明する。
【実施例】
【0051】
実施例では、導電性粒子を付着させるため、サンドブラスト法を適用した。
【0052】
試料となる積層型電子部品の積層体として、長さ1.90mm、幅1.05mmおよび高さ1.05mmの積層セラミックコンデンサ用積層体であって、絶縁体層がチタン酸バリウム系誘電体セラミックからなり、内部電極がNiを主成分とするものを用意した。この積層体において、絶縁体層の各厚みは10μmであり、内部電極の各厚みは2μmであり、内部電極が形成されない上下の各外層部の厚みは200μmであった。
【0053】
次に、上記積層体における内部電極が露出した端面に対してサンドブラストを実施した。このサンドブラストにおいて、直径1μmのアルミナからなる研磨用粒子を用い、表1に示すように、試料1〜3については、研磨用粒子の中に直径1μmの「導電性粒子の材料」に示された金属からなる導電性粒子を研磨用粒子に対して1体積%混在させ、試料4、5については、導電性粒子を混在させなかった。
【0054】
次に、上述のようにサンドブラストを実施した後の積層体の端面での導電化率を求めた。導電化率は、EDX(エネルギー分散型X線マイクロアナライザ)により、積層体の端面全体を元素マッピング分析し、
導電化率[%]={(内部電極のNiが占める面積+導電性粒子の占める面積)/端面全体の面積}×100
の式から求めた。なお、仮にセラミック成分に導電性粒子と同じ成分が含まれていたとしても、導電性粒子はそれを構成する金属100%と濃度が高いため、明確に判別することができる。このようにして求められた導電化率が表1に示されている。
【0055】
次に、上記積層体を、容積300mLの水平回転バレル中に投入し、それに加えて、直径0.7mmの鉄製メディアを100mL投入した。そして、回転バレルを、pHを8.5に調整した浴温25℃のCuめっき用ストライク浴に浸漬させ、2.6m/minにて回転させながら、電流密度0.11A/dm2にて60分間通電して、内部電極の露出する積層体の端面に、直接、Cuめっき膜を形成した。なお、上記Cuめっき用ストライク浴は、14g/Lのピロリン酸銅、120g/Lのピロリン酸、および10g/Lの蓚酸カリウムを含むものであった。
【0056】
次いで、上記Cuめっき膜を形成した積層体の入った回転バレルを、pHを8.8に調整した浴温55℃のCuめっき用ピロリン酸浴(上村工業社製ピロブライトプロセス)に浸漬させ、2.6m/minにて回転させながら、電流密度0.30A/dm2にて、60分間通電した。このようにして、上記Cuめっき膜の上に、さらにCuめっき膜を形成し、Cuめっき膜の合計厚みは10μmとなった。
【0057】
次に、各試料に係る積層体の端面全体の面積に対して、Cuめっき膜が被覆する面積の比率、すなわちめっき被覆率を求めた。めっき被覆率は、前述の導電化率の場合と同様、EDXによる元素マッピング分析を用い、
めっき被覆率[%]={めっき金属の被覆面積/端面全体の面積}×100
の式から求めた。このめっき被覆率は表1の「被覆率」の欄に示されている。
【0058】
次いで、表1に示す試料1、2、および5のみに、次のようにして、端縁厚膜電極を形成した。まず、Cu粉末と、ZnO−B23−SiO2系ガラスを主成分とするガラスフリットとを混合した後、有機ビヒクルを適量加え、得られた混合物を三本ロールで混合、分散させることによって、導電性ペーストを得た。次いで、この導電性ペーストを、試料1、2、および5の各々に係る積層体の主面および側面の各々における、端面に隣接する各端縁部に塗布し、窒素雰囲気中において、800℃の温度で5時間保持する条件の下で焼き付けることにより、Cuめっき膜と導通する端縁厚膜電極を形成した。
【0059】
次に、上記Cuめっき膜を形成した積層体を再度水平回転バレルに戻し、水平回転バレルを、電解Niめっき用ワット浴(温度60℃、pH4.2)に浸漬し、2.6m/minにて回転させながら、電流密度0.15A/dm2にて、60分間通電した。このようにして、Cuめっき膜および端縁厚膜電極の上に、厚み 4μmのNiめっき膜が形成された。
【0060】
次いで、水平回転バレルを、温度33℃、pH5.0に調整された電解Snめっき用めっき浴(ディップソール社製Sn−235)に浸漬し、2.6m/minにて回転させながら、電流密度0.10A/dm2にて、60分間通電した。このようにして、Niめっき膜の上に、4μmの厚みのSnめっき膜が形成された。この後、水洗した後、80℃にて10分間乾燥を行った。このようにして、試料1〜5に係る積層コンデンサの試料を得た。
【0061】
そして、試料1〜5に係る積層コンデンサ100個において、圧力1気圧、温度125℃および湿度95%RHの環境下にて、6.3Vの電圧を72時間印加する、といったかなり厳しい条件によるPCBT(Pressure Cooker Bias Test)を実施し、試料数100個にて、不良個数を計数した。この結果が表1に示されている。
【0062】
【表1】

【0063】
表1において、試料1〜3と試料4、5とを比較すれば、まず、サンドブラスト工程において導電性粒子を研磨用粒子の中に混在させた試料1〜3によれば、導電性粒子を混在させていない試料4、5に比べて、高い導電化率が得られることがわかる。そして、試料1〜3によれば、100%の被覆率が得られた。これに対して、試料4、5では、被覆率が低かった。
【0064】
さらに、導電性粒子を付着させ、かつ端縁厚膜電極を形成した試料1および2は、PCBT試験における不良率がゼロであった。これは、Cuめっき膜の被覆率が向上したのに加えて、端縁厚膜電極により、Cuめっき膜の端部からの水分浸入が抑制されたこと、および熱処理によりCuめっき膜の積層体端面に対する固着力が増し、水分浸入がより抑制されたことによると考えられる。これは、導電性粒子を付着させ、かつ端縁厚膜電極を形成しなかった試料番号3の試料において若干の不良が出た結果にも現れている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の第1の実施形態による積層型電子部品1を示す断面図である。
【図2】図1に示した積層体5の一部を拡大して示す断面図であり、外部電極8の形成工程を順次示している。
【図3】この発明の第2の実施形態による積層型電子部品1aを示す断面図である。
【図4】従来の積層型電子部品101を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,1a 積層型電子部品
2 絶縁体層
3,4 内部電極
5 積層体
6,7 端面
8,9,8a,9a 外部電極
10 導電性粒子
11 めっき析出物
12 めっき膜
13 中間めっき膜
14 外側めっき膜
21,22 端縁厚膜電極
31,32 主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する第1および第2の主面と前記第1および第2の主面間を連結する第1および第2の端面ならびに第1および第2の側面とを有する直方体状をなし、積層された複数の絶縁体層と、前記絶縁体層間の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含み、複数の前記内部電極の各端部が互いに絶縁された状態で前記第1および第2の端面のいずれかの所定の面に露出している、積層体を用意する工程と、
前記積層体の前記所定の面に露出した複数の前記内部電極の各端部を互いに電気的に接続するように、前記積層体の前記所定の面上に外部電極を形成する工程と、次いで、
前記積層体の前記第1および第2の主面ならびに前記第1および第2の側面の各々における、前記第1および第2の端面に隣接する各端縁部に、金属粉末とガラスフリットとを含む導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより、前記外部電極と導通する端縁厚膜電極を形成する工程と、を含む積層型電子部品の製造方法であって、
前記外部電極を形成する工程は、
前記積層体を用意する工程において用意された前記積層体の前記所定の面に、粒径が1μm以上の複数の導電性粒子を付着させる工程と、
前記導電性粒子が付着した前記所定の面に直接めっきを施す工程と
を備える、積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記導電性粒子を付着させる工程は、前記所定の面に対して、研磨作用を有する研磨用粒子の中に前記導電性粒子を混在させてサンドブラスト法を実施する工程を備える、請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記導電性粒子を付着させる工程は、前記所定の面に対して、前記導電性粒子を含む樹脂製の毛先を有するブラシを用いたブラシ研磨法を実施する工程を備える、請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記めっきを施す工程の前に、前記積層体の前記所定の面にガラス粒子を付着させる工程、および、前記めっきを施す工程の後に、前記ガラス粒子を構成するガラスを流動または拡散させるように熱処理する工程をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記端縁厚膜電極および前記外部電極の上に、めっきを施すことによって、めっき膜を形成する工程を備える、請求項1ないし4に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
相対向する第1および第2の主面と前記第1および第2の主面間を連結する第1および第2の端面ならびに第1および第2の側面とを有する直方体状をなし、積層された複数の絶縁体層と、前記絶縁体層間の界面に沿って形成された複数の内部電極とを含み、複数の前記内部電極の各端部が互いに絶縁された状態で前記第1および第2の端面のいずれかに露出している、積層体と、
前記積層体の前記第1および第2の端面の各々から露出した複数の前記内部電極の各端部を互いに接続するように前記第1および第2の端面上に形成された、実質的にめっき析出物からなる外部電極と、
前記積層体の前記第1および第2の主面ならびに前記第1および第2の側面の各々における、前記第1および第2の端面に隣接する各端縁部に前記外部電極と導通するように形成された、金属粉末とガラスフリットとを含む端縁厚膜電極と
を備える、積層型電子部品であって、
前記所定の面と前記めっき膜との境界部分には、粒径1μm以上の複数の導電性粒子が分布している、
積層型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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