説明

積層板の製造方法

【課題】積層板材料を供給する装置部位の空間制約による設置領域の不足と材料供給作業の困難さを解消し、生産効率を高める。
【解決手段】本発明の積層板の製造方法において、ロール状多層ワーク5を複数形成する工程では、ポリイミドフィルム4b表面に帯電ロール2a,21bを接触させることによりポリイミドフィルム4b表面を摩擦によって帯電させ、帯電したポリイミドフィルム4b表面に銅箔4a,4cを接触させることにより銅箔4a,4cとポリイミドフィルム4bとを予備接着する。帯電ロール2a,21bの材質は、ポリイミドフィルム4bに対して帯電列が離れている材質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダブルベルトプレス機を用いた積層板の製造工程は、(1)ロール状の長尺物の積層板材料を用意し、(2)ダブルベルトプレス機の挿入口手前に設けられた複数のシャフトに積層板材料を個別にセットし、(3)ダブルベルトプレス機のライン速度に合わせてシャフトから積層板材料を個別に巻き出し、(4)個別に巻き出された積層板材料を上下対称に配置されたダブルベルトプレス機の連続ベルト間に連続的に挿入することにより行われていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−42555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の製造工程では、シャフト等の装置部位が少なくとも積層板材料の数以上必要になる。また、積層板材料の数だけ材料の先端部をダブルベルトプレス機に挿入する作業が必要になる。従って、従来の製造工程によれば、積層板材料を供給する装置部位を設置するための広い空間領域が必要となる。またこの結果、空間領域が不足することから積層板材料の先端部をダブルベルトプレス機に挿入する作業が困難になる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、積層板材料を供給する装置部位の空間制約による設置領域の不足と材料供給作業の困難さを解消し、生産効率を高める積層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層板の製造方法は、金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法であって、前記金属箔と前記フィルム状基材を分離しない程度に予備接着させながらロール状に巻き取ることによりロール状の積層体を複数形成する工程と、複数の前記ロール状の積層体から先端部を巻き出し、巻き出された先端部をダブルベルトプレス機に供給する工程とを有し、ロール状の前記積層体を複数形成する工程では、前記フィルム状基材表面に帯電ロールを接触させることにより前記フィルム状基材表面を摩擦によって帯電させ、帯電した前記フィルム状基材表面に前記金属箔を接触させることにより前記金属箔と前記フィルム状基材とを予備接着し、前記帯電ロールの材質は、前記フィルム状基材に対して帯電列が離れている材質である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る積層板の製造方法によれば、積層板を構成する材料を供給する装置部位の数を削減することができるので、積層板を構成する材料を供給する装置部位の空間制約による設置領域の不足と材料供給作業の困難さを解消し、生産効率を高めることができる。また、本発明に係る積層板の製造方法によれば、金属箔とフィルム状基材とを分離しない程度に予備接着した後にダブルベルトプレス機に供給するので、金属箔とフィルム状基材の搬送経路を簡略化することができる。特に、帯電ロールの材質をフィルム状基材に対して帯電列が離れている材質にすることにより、フィルム状基材の帯電量が得られやすなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態となる積層板の製造システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す積層巻取装置の構成を示す模式図である。
【図3】図1に示す巻出装置及びダブルベルトプレス装置の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態となる予備接着方法を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となる予備接着方法を示す模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態となる予備接着方法を示す模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態となる予備接着方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る積層板の製造方法は、例えば銅箔により熱圧着性又はエポキシ樹脂等の接着剤付きのポリイミドフィルムを挟持した両面銅箔積層板をダブルベルトプレス機を用いて複数同時に製造する工程に適用することができる。以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる積層板の製造システムについて説明する。なお、上記銅箔はアルミニウム箔やステンレス箔等の銅箔以外の金属箔であってもよく、また、ポリイミドフィルムは液晶ポリマーやアラミドフィルム等のポリイミドフィルム以外のフィルム状基材であってもよい。
【0010】
本発明の実施形態となる積層板の製造システムは、図1に示すように、積層巻取装置1と、巻出装置2と、ダブルベルトプレス装置3とを備える。積層巻取装置1は、図2に示すように、ロール状の長尺物の形態で用意された積層板材料としての銅箔4a,ポリイミドフィルム4b、及び銅箔4cがセットされたシャフトと、各シャフトから材料を巻き取ることによりロール状の積層体(以下、ロール状態多層ワークと表記)を形成するシャフトとを主な構成要素として備える。巻出装置2は、図3に示すように、ロール状多層ワーク5がセットされる複数のシャフト6を備え、各シャフトから巻き出されたロール状多層ワーク5をダブルベルトプレス装置3のワーク挿入口に供給する。ダブルベルトプレス装置3は、公知のダブルベルトプレス装置3により構成され、巻出装置2の各シャフトから供給されたロール状多層ワーク5に対しラミネート成形(加熱圧着処理)を施すことにより複数の両面銅箔積層板を同時に製造する。なお、上記加熱圧着処理は、圧力20〜80[bar],温度180〜250[℃],時間1〜10[分]の範囲内で行うことが望ましい。
【0011】
このような構成を有する積層板の製造システムでは、両面銅箔積層板は、(1)銅箔4a,ポリイミドフィルム4b,及び銅箔4cを積層させながらロール状に巻き取ることにより銅箔4a,4cによりポリイミドフィルム4bを挟持したロール状多層ワーク5を形成し、(2)巻出装置2の各シャフト6にロール状多層ワーク5をセットし、(3)ダブルベルトプレス装置3のライン速度に合わせてシャフト6からロール状多層ワーク5を引き出し、(4)引き出されたロール状多層ワーク5を連続的にダブルベルトプレス装置3の連続ベルト間に挿入し、(5)ロール状多層ワーク5をラミネート成形することにより製造される。
【0012】
ダブルベルトプレス機を利用してフレキシブルな金属箔付積層板を製造する場合、金属箔付積層板を構成する積層板材料が薄厚であるので、複数組の積層板材料を同時にダブルベルトプレス機に供給することにより複数の金属箔付積層板を同時に生産する方法が生産効率を上げる上で有効である。しかしながら、従来の製造工程によれば、複数の金属箔付積層板を同時に生産する場合、シャフト等の装置部位が少なくとも積層板材料の数以上必要になる。また、積層板材料の数だけ積層板材料の先端部をダブルベルトプレス機に挿入する作業が必要になる。従って、従来の製造工程により複数の金属箔付積層板を同時に生産する場合、積層板材料を供給するための装置部位を設置するための広い空間領域が必要となる。またこの結果、空間領域が不足することから積層板材料の先端部をダブルベルトプレス機に挿入する作業が困難になる。
【0013】
これに対して、本発明の実施形態となる製造方法によれば、上述の通り、ダブルベルトプレス装置3に材料を供給する装置部位の数を大幅に削減することができるので、材料を供給する装置部位の空間制約による設置領域の不足と材料供給作業の困難さを解消し、生産効率を高めることができる。また積層体を形成する層相互の相対的な横位置合わせを外段取りで行うことができる。
【0014】
なお、ロール状多層ワーク5を形成する際、以下に示す方法(1)〜(4)により、ポリイミドフィルム4bの一方又は両面に銅箔を分離しない程度に予備接着させすることが望ましい。ポリイミドフィルム4bに銅箔を予備接着することにより、ダブルベルトプレス装置3への積層板材料の搬送経路をより簡略化することができる。なお、この作業は、積層板材料を分離しない程度に接着するものであるので、高速に行うことができる。
【0015】
(1)図4に示すように、液体供給11を介してポリイミドフィルム4bの表面に液体12(例えば水やアルコール等)を噴霧し、噴霧された液体12の表面張力を利用してポリイミドフィルム4bの両面に銅箔4a,4cを予備接着する。なお、ダブルベルトプレス装置3内は十分に高温であるので、ポリイミドフィルム4bに液体12を吹き付けた場合であっても液体はラミネート成形加工の間に蒸発する。
【0016】
(2)図5に示すように、ポリイミドフィルム4bの表面に帯電ロール21a,21bに接触させることによりポリイミドフィルム4b表面を摩擦によって帯電させ、帯電したポリイミドフィルム4b表面と銅箔4a,4cとを接触させることによりポリイミドフィルム4b表面に銅箔4a,4cを分離しない程度に予備接着する。なお、帯電ロール21a,21bの材質をポリイミドフィルム4bに対して帯電列が離れている材質にすることにより、ポリイミドフィルム4bの帯電量が得られやすい。
【0017】
(3)図6に示すように、高温加熱ロール31a,31bにより銅箔4a,ポリイミドフィルム4b,及び銅箔4cを高圧で挟み込むことによりポリイミドフィルム4b表面に銅箔4a,4cを分離しない程度に予備接着する。なおこの場合、高温加熱ロールの圧力は挟み込んだ部分のみの線圧となるが、分離しない程度に予備接着する際にはワーク送りを高速することができる。
【0018】
(4)図7に示すように、ロール状多層ワーク5をオートクレーブ機(加熱炉)41内に導入,を加熱することによりポリイミドフィルム4b表面に銅箔4a,4cを分離しない程度に予備接着する。具体的には、ロール状多層ワーク5をオートクレーブ機41内に導入した後、10[Torr]程度の真空状態を30分間保持し、銅箔の酸化防止のため窒素ガスを導入する。次に、ポリイミドフィルムの軟化温度以上の温度に昇温して加熱,加圧する。そしてこの状態を30分程度保持した後、段階的に冷却,減圧することによりポリイミドフィルム表面に銅箔を分離しない程度に予備接着する。
【0019】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、銅箔4a,4cによりポリイミドフィルム4bを挟持したロール状多層ワーク5と一対の銅箔とをダブルベルトプレス装置3に供給することによりポリイミドフィルム4bの両面に銅箔を2重に形成してもよい。また、本実施形態は6枚の両面銅箔付積層板を同時にラミネート成形するものであったが、ポリイミドフィルム1枚と銅箔1枚とでロール状多層ワークを形成し、このロール状多層ワークを巻き出してラミネート成形することにより片面銅箔付積層板を得るようにしてもよい。さらに、銅箔のロールを用意し、ロール状多層ワークと銅箔のロールを巻きだしてラミネート成形することにより両面銅箔付積層板を得るようにしてもよい。このような場合であっても、積層板材料を供給するシャフト等の装置部位が半数になり、装置構成を簡単にすることができる。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0020】
1…積層巻取装置
2…巻出装置
3…ダブルベルトプレス装置
4a,4c…銅箔
4b…ポリイミドフィルム
5…ロール状多層ワーク
6…シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法であって、
前記金属箔と前記フィルム状基材を分離しない程度に予備接着させながらロール状に巻き取ることによりロール状の積層体を複数形成する工程と、複数の前記ロール状の積層体から先端部を巻き出し、巻き出された先端部をダブルベルトプレス機に供給する工程とを有し、
ロール状の前記積層体を複数形成する工程では、前記フィルム状基材表面に帯電ロールを接触させることにより前記フィルム状基材表面を摩擦によって帯電させ、帯電した前記フィルム状基材表面に前記金属箔を接触させることにより前記金属箔と前記フィルム状基材とを予備接着し、
前記帯電ロールの材質は、前記フィルム状基材に対して帯電列が離れている材質であることを特徴とする積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240714(P2011−240714A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194011(P2011−194011)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2006−348296(P2006−348296)の分割
【原出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】