説明

積層波長板、光ピックアップ装置、偏光変換素子、及び投写型表示装置

【課題】第1及び第2の波長板を光学軸を互いに交差させて重ね合わせた積層波長板において、400〜800nmの広帯域の波長範囲全体で変換効率の劣化を最小限に抑制し、1又は1に近い良好な変換効率を実現する。
【解決手段】第1及び第2の波長板12,13の設計波長λに対する位相差をΓ=Γ=180°、光学軸の面内方位角をθ,θ、積層1/2波長板11に入射する直線偏光の偏光方向と出射する直線偏光の偏光方向とがなす角度をψ、光学軸調整量をaとしたとき、θ=ψ/4+a、θ=3ψ/4−a、0<a<amaxであり、光学軸調整量最大値amaxが、設計波長λに応じて所定の多項式を満足するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水晶のような複屈折性を有する無機結晶材料からなる2枚の波長板を重ねて配置した積層構造の波長板に関し、更にこのような積層波長板を用いた光ピックアップ装置、偏光変換素子及び投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置の記録再生に使用する光ピックアップ装置、偏光変換素子、液晶プロジェクター等の投写型表示装置のような光学装置には、入射光の直線偏光の偏光面を所定の角度、例えば90°回転させた直線偏光の出射光として出射する1/2波長板が広く使用されている。単板の波長板は、その位相差が板厚によって決定されるので、所定の波長についてのみ1/2波長板として機能する。広い波長域に亘って1/2波長板として機能するように、2枚以上の単板波長板を互いに光学軸を交差させて貼り合わせた積層波長板が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
最近、光ディスク装置の記録再生に使用する光ピックアップ装置には、記録の高密度化大容量化を図るために、非常に短波長で高出力の青紫色レーザが採用されている。また、液晶プロジェクターは、光学エンジンの長寿命化に伴って、光学エンジンを構成する光学部品の1つである1/2波長板についても、耐久性、長期信頼性が要求されている。
【0004】
ところが、特許文献1記載の1/2波長板は、ポリカーボネート等の高分子フィルムを延伸処理して1/2波長の位相差を与える延伸フィルムを複数枚積層した構造を有する。そのため、1/2波長板の高分子フィルムが青紫色レーザ光を吸収して発熱し、材質自体が劣化して波長板としての機能を損なう虞がある。これに対し、水晶や方解石等の無機結晶材料は耐光性が極めて高いので、特に青紫色レーザを使用するような光学系には、水晶等からなる波長板が有利である。
【0005】
また、光ディスク記録再生装置は、ブルーレイディスク、DVD、CD等の複数の異なる規格の記録・再生を可能にする機能が要求されている。一般に、ブルーレイディスクの使用波長は405nm、DVDは660nm、CDは785nmである。従って、光ピックアップ装置の1/2波長板は、これら全部又はいずれか2つの波長帯で機能することが好ましい。他方、液晶プロジェクターの偏光変換素子に使用する1/2波長板は、400〜700nmの広波長域で位相差180°を維持することが要求されている。
【0006】
一般に、1/2波長板は、位相差が波長の変化に伴って変化する波長依存性を有するので、目標波長の前後の帯域において位相差が増加又は減少する。そこで、光学軸方位角θ1の第一の波長板と光学軸方位角θ2の第二の波長板とを光軸が互いに交差するように貼り合わせ、θ2=θ1+45°、0<θ1<45°の関係を満足するように構成することにより、全体として400〜700nmの広波長域で1/2波長板として機能する積層波長板が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
また、1/2波長板は、光源からの光が発散して入射すると、波長板の中心付近以外の領域において位相差が変動する入射角依存性の問題を生じる。そのため、1/2波長板の偏光変換効率、即ち入射するP偏光(又はS偏光)の直線偏光をS偏光(又はP偏光)の直線偏光に変換して出射する割合が低下し、出射光量の損失を生じる虞がある。そこで、それぞれ位相差が180°+360°×n(但し、n:正整数)の第1及び第2の波長板とを光軸が互いに交差するように貼り合わせ、各波長板の面内方位角をθ1、θ2、積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と出射する直線偏光の偏光方向とのなす角度をθとして、θ2=θ1+θ/2となるように構成した高次モードの積層波長板が知られている(例えば、特許文献3を参照)。この積層波長板は、更にn=5、θ1=22.5°、θ2=67.5°とすることにより、3つの波長帯405nm帯、660nm帯、785nm帯において、それぞれ波長の変化に対する変換効率をほぼ1にし、出射光量の損失を抑制することができる。
【0008】
同様に偏光変換効率の向上を図るために、位相差Γa=180°の第1の位相差板と位相差Γb=180°の第2の位相差板とを貼り合わせ、第1及び第2の位相差板の光学軸方位角θa、θbがθb=θa+α、0<θa<45°、40°<α<50°であり、位相差Γaの設計目標値とのずれ量ΔΓaと位相差Γbの設計目標値とのずれ量ΔΓbとが所定の関係式を満足するように構成し、1/2波長板として機能する積層位相差板が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。この積層位相差板は、前記所定の関係式によって位相差Γaの設計目標値からのずれ量ΔΓaを位相差Γbの設計目標値からのずれ量ΔΓbで相殺することにより、高い偏光変換効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−149015号公報
【特許文献2】特開2004−170853号公報
【特許文献3】特開2007−304572号公報
【特許文献4】特開2008−268901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図15(A)(B)は、上述した従来の積層1/2波長板の典型例を示している。この積層1/2波長板1は、光の入射方向Liから出射方向Loに向けて配置した、水晶板のような光学的一軸性結晶材料からなる第1及び第2の波長板2,3を備える。第1及び第2の波長板2,3は、いずれも位相差Γ=180°、位相差Γ=180°のシングルモードの1/2波長板であり、それらの結晶光学軸4,5を互いに所定の角度で交差するように貼り合わせる。ここで、第1の波長板2の光学軸方位角θは、結晶光学軸4と積層1/4波長板1に入射する光の直線偏光6の偏光面とのなす角度であり、第2の波長板3の光学軸方位角θは、結晶光学軸5と前記直線偏光の偏光面とのなす角度である。
【0011】
図15の積層1/2波長板1は、第1及び第2の波長板2,3の光学軸方位角をθ=22.5°、θ=67.5°とし、入射する直線偏光6の偏光方向と出射する直線偏光7の偏光方向とのなす角度を90°とする。この場合の偏光状態を図16(A)〜(C)のポアンカレ球を用いて説明する。図16(A)は、積層1/2波長板1に入射した直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。直線偏光4が入射する赤道上の位置をS1軸との交点P0に設定した。図16(B)は、図16(A)のポアンカレ球において、積層1/2波長板1に入射した偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図、即ちS1S3平面への投影図である。図16(C)は、図16(A)に示したポアンカレ球において、積層1/2波長板1に入射した偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図、即ちS1S2平面への投影図である。
【0012】
入射光の基準点をP=(1,0,0)として、第1の波長板2の回転軸RをS1軸から2θ回転した位置に設定し、第2の波長板13の回転軸RをS1軸から2θ回転した位置に設定する。回転軸Rを中心に基準点Pを位相差Γだけ右方向に回転させると、ポアンカレ球の赤道上の点P=(0,1,0)が前記第1の波長板の出射光の位置となる。次に、回転軸Rを中心に点Pを位相差Γだけ右方向に回転させると、ポアンカレ球の赤道上の点P=(−1,0,0)が前記第2の波長板の出射光の位置、即ち積層1/2波長板1の出射光の位置となる。入射光Loの波長が目標値から変化しない限り、出射光の位置は常にポアンカレ球の赤道上にある。
【0013】
しかしながら、ブルーレイ規格の光ディスク記録再生装置に搭載する光ピックアップ装置は、短波長(405nm)の青紫色レーザーが使用されている。青紫色レーザーは、使用時に高熱を発生して膨張すると、発振レーザーの波長がドリフト(変化)するという問題を生じる。そのため、光ピックアップ装置に使用される1/2波長板は、入射するレーザー光の波長ドリフトによって直線偏光の変換効率が劣化するという問題が発生する。
【0014】
また、ブルーレイディスク及びDVD双方の記録・再生を可能にする光ディスク記録再生装置は、使用波長405nm及び660nmのいずれの帯域でもレーザー光の波長ドリフトが発生する虞がある。従って、このような光ディスク記録再生装置に使用する1/2波長板の場合、これら両方の帯域で波長の変動に対する変換効率の劣化を抑制する必要がある。
【0015】
特許文献2は、波長が変化した場合にその影響を解消又は低減させる方法を開示している。この方法によれば、波長の変化による第一及び第二の波長板の位相差のずれ量をΔΓ、ΔΓとしたとき、ΔΓ=ΔΓに設定することによって位相差のずれを相殺できるので、ポアンカレ球上における出射光の位置P2は常に赤道上に到達する。
【0016】
これを図16のポアンカレ球で説明する。第1波長板2の出射光の位置は、回転軸Rを中心に点Pからずれ量ΔΓだけ右方向に回転させた点P´となる。第2波長板3の出射光の位置は、回転軸Rを中心に点P´を位相差Γ+ΔΓだけ右方向に回転させた、ポアンカレ球の赤道上の点P´となる。この点P´が積層1/2波長板1の出射光の位置となる。同図から分かるように、点P´は赤道上で点Pからずれるので、出射光は偏光面の回転が90°からずれてしまう。特許文献2によれば、かかる出射光偏光面の回転ずれは、ΔΓとΔΓが小さいほど影響を少なくすることができ、そのためには、第1及び第2の波長板2,3をシングルモードの波長板にしてその波長依存性を極力小さくすることが望ましい。
【0017】
特許文献4は、第1の位相差板の厚みの加工精度が設計値からずれた場合に、同様にポアンカレ球上において第1の位相差板の出射光の位置がずれる問題を生じることを示している。この問題を解決するために、同文献では、第1の位相差板の出射光位置のずれを相殺するように第2の位相差板の厚さを加工する方法を開示している。他方、特許文献3記載の積層1/2波長板は、第1及び第2の波長板が高次モードであるため、その次数nを大きくしすぎると、変換効率が1に近い波長帯域幅が狭くなり、積層1/2波長板としての使用を難しくする、という問題が生じる。
【0018】
ここで、変換効率とは、同文献に記載されるように、2枚の波長板を貼り合わせた積層1/2波長板の出射光の偏光状態を正確に判定するための評価値として、入射光に対する出射光の光量を所定の計算手法に従って算出したものである。以下に簡単に説明する。
【0019】
積層1/2波長板1において、第1の波長板2のミューラ行列をR、第2の波長板3のミューラ行列をR、入射光の偏光状態をベクトルI、出射光の偏光状態をベクトルEで表すと、積層1/2波長板1を透過した後の偏光状態は、次式を用いて表すことができる。
E=R・R・I …(1)
ここで、R、Rはそれぞれ次式で表される。
【0020】
【数1】

…(2)
【0021】
【数2】

…(3)
【0022】
第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数n、位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角度θ1、θ2を設定して式(2)、(3)からミューラ行列R1、R2を求め、入射光の偏光状態Iを設定すると、式(1)より出射光の偏光状態Eが算出される。出射光の偏光状態Eは、ストークスベクトルと呼ばれ、次式で表される。
【0023】
【数3】

…(4)
ここで、Eの行列要素S01、S11、S21、S31はストークスパラメータと呼ばれ、偏光状態を表している。次に、偏光子の行列Pの透過軸を所定の角度に設定し、前記光射光の偏光状態Eを表わす行列Eと偏光子の行列Pとの積をTとすると、Tは次式で表される。
T=P・E …(5)
【0024】
この行列Tが変換効率を表し、その要素のストークスパラメータで表すと次式のようになる。
【数4】

…(6)
【0025】
ここで、ベクトルTのストークスパラメータS02が光量を表し、入射光量を1に設定すると、ストークスパラメータS02が変換効率となる。従って、積層1/2波長板1の変換効率Tは、第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数n、所定の波長(例えば波長405nm)での位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角θ1、θ2を様々に変化させて、シミュレーションすることができる。
【0026】
図17は、この計算手法を用いて、図15の積層1/2波長板1の設計波長λを400,500,600,700,800nmとした場合に、それぞれ入射光の波長に関する変換効率Tの変化をシミュレーションした結果を示している。同図から、いずれの設計波長の場合も、変換効率がそれぞれ設計波長付近を中心としてほぼ1の高い値を示し、設計波長から離れるに連れて劣化していくことが分かる。この積層1/2波長板を光ピックアップ装置に使用した場合、入射する直線偏光の変換効率がレーザー光の波長ドリフトによって劣化する虞がある。
【0027】
図18は、同様に上記計算手法を用いて、図15の積層1/2波長板1の使用波長帯域を405±30,660±30,785±30nmとした場合に、それぞれ波長板の設計波長に関する変換効率Tの変化をシミュレーションした結果を示している。同図から、いずれの波長帯域で使用する場合も、変換効率が、それぞれ目標の波長帯域付近を中心としてほぼ1の高い値を示し、設計波長が目標の波長帯域から離れるに連れて劣化していくことが分かる。これは、従来の積層1/2波長板では、複数の離れた波長帯域でいずれも変換効率を1にすることが困難であることを示している。
【0028】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1及び第2の波長板を光学軸を互いに交差させて重ね合わせた積層波長板において、より広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制すること、更に約400〜800nmの広帯域の波長範囲全体で良好な変換効率を実現することにある。
【0029】
また、本発明の目的は、かかる積層波長板を用いることにより、波長ドリフト等による波長変動の影響を受け難く、従来よりも広帯域の波長範囲で安定して良好な性能を発揮し得る光ピックアップ装置、偏光変換素子、投写型表示装置等の光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本願発明者は、波長の変動と変換効率との関係に着目して様々に検討した結果、第1及び第2の波長板の光学軸方位角θ、θの差を小さくし、ポアンカレ球において回転軸Rと回転軸Rとを互いに近付けるように設定すれば、より広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を抑制し得ることに想到した。そこで、図15の積層1/2波長板1において設計波長λを500nmとし、第1及び第2の波長板2,3の光学軸方位角θ=22.5°、θ=67.5°とした従来の場合と、22.5°<θ<45.0°、45.0°<θ<67.5°で変化させた場合とについて、前記計算手法を用いて変換効率をシミュレーションした。ここで、aは、光学軸方位角θ,θの22.5°,67.5°からの調整量(角度:deg)である。
【0031】
このシミュレーション結果を図19に示す。同図から分かるように、従来の場合(a=0°)には、変換効率が、設計波長を中心とする比較的狭い範囲でほぼ1の高い値を示し、設計波長から離れるに連れて劣化している。これに対し、光学軸方位角の調整量aを徐々に大きくすると、変換効率が、設計波長λ=500nm付近では徐々に劣化するが、その両側には、変換効率が1となる波長位置が2個所に分かれて徐々に離れるように移動している。その結果、全体としてより広い波長範囲で良好な変換効率が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0032】
本発明の積層波長板は、入射する直線偏光の偏光面を所定の角度ψ回転させた直線偏光に変換して出射するために、設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置して積層し、入射する直線偏光の偏光面と第1及び第2の波長板の光学軸とがそれぞれなす面内方位角をθ,θとし、光学軸調整量をaとしたとき、
θ=ψ/4+a、
θ=3ψ/4−a
を満足することを特徴とする。
【0033】
このように第1及び第2の波長板の光学軸の面内方位角θ,θの差を従来よりも小さくすることによって、広帯域の波長範囲全体で変換効率の劣化を最小限に抑制し、1又は1に近い良好な変換効率が得られる。従って、広帯域で入射光の波長が変動しても、安定して光の利用効率が非常に高い積層波長板を実現することができる。
【0034】
また、本発明の積層波長板は、設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置し、第1及び第2の波長板の光学軸の面内方位角をθ,θ、積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と出射する直線偏光の偏光方向とがなす角度をψ、光学軸調整量をaとしたとき、
θ=θ+ψ/2、
θ=ψ/4+a、
θ=3ψ/4−a、
0<a≦amaxであり、
光学軸調整量最大値amaxが、設計波長400≦λ≦490nmの場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00001548
=0.0427887
=−0.000385
=1.723×10−6
=−4.19×10−9
=4.086×10−12
を満足し、
設計波長490≦λ≦520nmの場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00006705
=17.699248
=−0.16963
=0.0006754
=−1.4×10−6
=1.68×10−9
=−1.1×10−12
=2.72×10−16
を満足し、
設計波長520≦λ≦800nmの場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00003014
=5.4681617
=−0.038557
=0.0001094
=−1.56×10−7
=1.106×10−10
=−3.13×10−14
を満足することを特徴とする。
【0035】
このように第1及び第2の波長板の光学軸の面内方位角θ,θの差を従来よりも小さくすることによって、400〜800nmのより広帯域の波長範囲全体で変換効率の劣化を最小限に抑制し、1又は1に近い良好な変換効率が得られる。従って、この広帯域で入射光の波長が変動しても、安定して光の利用効率が非常に高い積層波長板を実現することができる。
【0036】
或る実施例では、積層波長板の設計波長をλ=500nmとしかつ光学軸調整量を2.8°≦a≦3°に設定する。これによって、ブルーレイディスク及びDVDの規格に使用される波長帯である405nm及び660nmの双方において、積層波長板の変換効率をほぼ1にすることができる。
【0037】
別の実施例では、積層波長板の設計波長をλ=510nmとしかつ光学軸調整量を0°<a≦2.2°に設定する。これによって、特に液晶プロジェクターに適した400〜700nmの波長範囲全体に亘って、1又は1に近い高い変換効率を得ることができる。
【0038】
また、別の実施例では、第1及び第2の波長板が水晶板であることによって、非常に高い耐光性が得られるので、特に短波長で高出力の青紫色レーザーを使用するような光学系に用いる場合にも、高い信頼性が発揮される。
【0039】
また、本発明によれば、入射する直線偏光の偏光面を所定の角度90°回転させた直線偏光に変換して出射するために、設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置して積層し、入射する直線偏光の偏光面と第1及び第2の波長板の光学軸とがそれぞれなす面内方位角をθ,θとしたとき、
22.5°<θ<45.0°、
45.0°<θ<67.5°
を満足する積層波長板が提供される。
【0040】
同様に、第1及び第2の波長板の光学軸の面内方位角θ,θの差を従来よりも小さくすることによって、広帯域の波長範囲全体で変換効率の劣化を最小限に抑制し、1又は1に近い良好な変換効率が得られる。従って、広帯域で入射光の波長が変動しても、安定して光の利用効率が非常に高い積層波長板を実現することができる。
【0041】
本発明の別の側面によれば、光源と、該光源から出射される光を記録媒体上に集光する対物レンズと、記録媒体により反射された光を検出する検出器とを備え、上述した本発明の積層波長板を光源と対物レンズ間の光路中に配置した光ピックアップ装置が提供される。上述したように広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制した積層波長板を用いることによって、使用時に発振レーザーの温度ドリフト等による波長変動の影響を受け難く、従来よりも広帯域の波長範囲で安定して良好な性能を発揮し得る光ピックアップ装置を実現される。特に、ブルーレイディスク、DVD、CD等の複数の異なるディスク規格について使用可能な光ピックアップ装置を得ることができる。
【0042】
また、本発明の別の側面によれば、第1の主面を光入斜面としかつ第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材と、該基材中に設けられた第1及び第2の光学薄膜と、基材の第2の主面に設けられた波長板とを備え、第1及び第2の光学薄膜が、第1及び第2の主面に対して傾斜させて、交互にかつ互いに間隔をおいて平行に配置され、第1の光学薄膜が、第1の主面側から入射した光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離して、第1の直線偏光を透過させかつ第2の直線偏光を反射し、第2の光学薄膜が、第1の光学薄膜により反射された第2の直線偏光を反射して第2の主面から出射させ、波長板が上述した本発明の積層波長板であり、第1の光学薄膜を透過した第1の直線偏光を出射させる第2の主面の部分、又は第2の光学薄膜により反射された第2の直線偏光を出射させる第2の主面の部分に配置された偏光変換素子が提供される。
【0043】
更に本発明によれば、第1の主面を光入斜面としかつ第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材と、該基材中に設けられた第1及び第2の光学薄膜と波長板とを備え、第1及び第2の光学薄膜が、第1及び第2の主面に対して傾斜させて、交互にかつ互いに間隔をおいて平行に配置され、第1の光学薄膜が第1の主面側から入射した光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離して、第1の直線偏光を透過させかつ第2の直線偏光を反射し、第2の光学薄膜が、第1の光学薄膜により反射された第2の直線偏光を反射して第2の主面から出射させ、波長板が上述した本発明の積層波長板であり、第1の光学薄膜の第1の直線偏光の出射面に積層して配置された偏光変換素子が提供される。
【0044】
このように、本発明の広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制した積層波長板を用いることによって、従来よりも広帯域で光の利用効率が非常に高い偏光変換素子を実現することができる。これにより、例えば400〜700nmの広波長域で使用可能な、液晶プロジェクターに適した偏光変換素子が得られる。
【0045】
また、本発明の別の側面によれば、光源と、該光源からの光を第2の直線偏光に変換して出射する上述した本発明の偏光変換素子と、偏光変換素子からの出射光を、投写しようとする画像情報に応じて変調する、例えば液晶パネルである変調手段と、該変調手段により変調された光を投写する投写光学系とを有する投写型表示装置が提供される。同様に、上述したように従来よりも広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制した積層波長板を用いることによって、同じ出力の光源でより明るい映像を得ることができ、又は光源を低出力化しても同程度に明るい映像が得られるので、消費電力を低減することができる。特に、400〜700nmの広波長域全体に亘って明るい映像の液晶プロジェクターが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(A)図は本発明による積層1/2波長板の実施例を光の出射方向から見た斜視図、(B)図は同じく出射方向から見た正面図。
【図2】(A)図は図1の積層1/4波長板の偏光状態を示すポアンカレ球、(B)図はこれをS2軸方向から見た図、(C)図はS3軸方向から見た図。
【図3】異なる光学軸調整量aについて積層1/2波長板の周波数に対する変換効率を示す線図。
【図4】積層1/2波長板の設計波長に対する変換効率を示す線図。
【図5】積層1/2波長板の光学軸調整量aに対する変換比率を示す線図。
【図6】積層1/2波長板の波長に対する透過光量を示す線図。
【図7】使用波長405,660nm帯について積層1/2波長板の設計波長に対する変換効率を示す線図。
【図8】設計波長λ=405,500,550について積層1/2波長板の波長に対する透過光量を示す線図。
【図9】使用波長405,660nm帯について設計波長λ=500の積層1/2波長板の光学軸調整量aに対する変換効率を示す線図。
【図10】(A)〜(C)図は、使用波長405,660,785nm帯の場合に、それぞれ異なる設計波長について積層1/2波長板の光学軸調整量aに対する変換比率を示す線図。
【図11】(A)(B)図は、それぞれ使用波長405,660,785nm帯について積層1/2波長板の設計波長に対する光学軸調整量aの最大値amaxを示す線図であり、(A)図は405,660nm帯で良好な変換効率が得られる光学軸調整量aの範囲を、(B)図は405,785nm帯で良好な変換効率が得られる光学軸調整量aの範囲を示している。
【図12】本発明の積層1/2波長板を用いた光ピックアップ装置の実施例の構成を示す概略図。
【図13】(A)図及び(B)図は本発明の積層1/2波長板を用いた偏光変換素子の異なる構成をそれぞれ示す概略図。
【図14】本発明の積層1/2波長板を用いた投写型表示装置の実施例の構成を示す概略図。
【図15】(A)図は従来の積層1/2波長板の実施例を光の出射方向から見た斜視図、(B)図は同じく出射方向から見た正面図。
【図16】(A)図は図15の積層1/4波長板の偏光状態を示すポアンカレ球、(B)図はこれをS2軸方向から見た図、(C)図はS3軸方向から見た図。
【図17】図15の積層1/4波長板の5つの異なる設計波長のそれぞれについて波長に関する変換効率の変化を示す線図。
【図18】図15の積層1/4波長板の3つの異なる波長帯域のそれぞれについて設計波長に関する平均透過率の変化を示す線図。
【図19】図15の積層1/4波長板の波長に関する変換効率の変化を、光学軸調整量aを変化させた場合と比較して示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1(A)(B)は、本発明による積層1/2波長板の実施例を示している。本実施例の積層1/2波長板11は、光の入射方向Liから出射方向Loに向けて配置した水晶板からなる第1及び第2の波長板12,13を備える。これら第1及び第2の波長板は、それらの結晶光学軸14,15を互いに所定の角度で交差するように貼り合わせる。前記水晶板には、特に波長の入射角依存性に優れたYカット板又はXカット板を使用するのが好ましい。
【0048】
第1の波長板12の位相差はΓ=180°に、第2の波長板13の位相差はΓ=180°に設定する。第1の波長板12の光学軸方位角θは、結晶光学軸14と積層1/2波長板11に入射する光の直線偏光16の偏光面とのなす角度である。第2の波長板13の光学軸方位角θは、結晶光学軸15と前記入射光の直線偏光16の偏光面とのなす角度である。ψは、入射する直線偏光16の偏光方向と出射する直線偏光17の偏光方向とのなす角度である。
【0049】
光学軸調整量をa、その最大値をamaxとしたとき、光学軸方位角θ,θは、
θ=ψ/4+a、
θ=3ψ/4−a、
0<a≦amax
を満足するように設定する。光学軸調整量最大値amaxは、後述するように前記第1及び第2の波長板の設計波長に応じて決定される。本実施例では、図15の従来例との比較を容易にするために、ψ=90°とする。この場合、第1及び第2の波長板12,13の光学軸方位角θ,θは、22.5°<θ<45.0°、45.0°<θ<67.5°となる。
【0050】
積層1/2波長板11の偏光状態を図2(A)〜(C)のポアンカレ球を用いて説明する。図2(A)は、積層1/2波長板11に入射した直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。直線偏光が入射する赤道上の位置をS1軸上の点P0に設定した。図2(B)は、図2(A)のポアンカレ球において、積層1/2波長板11に入射した偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図、即ちS1S3平面への投影図を示す。図2(C)は、図2(A)のポアンカレ球において、積層1/2波長板11に入射した偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図、即ちS1S2平面への投影図を示す。
【0051】
入射光の基準点をP=(1,0,0)として、第1の波長板12の回転軸R11をS1軸から2θ回転した位置に設定する。本実施例では、光学軸方位角θを上述したように設定したので、回転軸R11は、図16のθ=22.5°の場合の回転軸Rよりも更に角度2aだけ回転させた位置にくる。第2の波長板13の回転軸R22を、同様にS1軸から2θ回転した位置に設定する。光学軸方位角θを上述したように設定したことにより、回転軸R22は、図16のθ=67.5°の場合の回転軸Rよりも角度2aだけ戻した位置にくる。
【0052】
第1の波長板12の出射光の位置は、回転軸R11を中心に基準点Pを位相差Γだけ右方向に回転させたときにポアンカレ球に描かれる軌跡の円弧C1上の点である。円弧C1は、S2軸とS3軸とを含むS2−S3平面と2点で交差している。位相差Γが上述した設定値の180°である場合、ポアンカレ球上の点(0,1,0)から基準点Pとは逆方向に少しずれた赤道上の点P11が、前記第1の波長板の出射光の位置となる。
【0053】
第2の波長板13の出射光の位置は、回転軸R22を中心に点P11を位相差Γだけ右方向に回転させたポアンカレ球上の点である。位相差Γが上述した設定値の180°である場合、ポアンカレ球上の点P(−1,0,0)から基準点P側に少し戻った赤道上の点P21が、前記第2の波長板の出射光の位置、即ち積層1/2波長板11の出射光の位置となる。その結果、出射光は、偏光面の回転が所望の角度ψ=90°からずれることになる。
【0054】
出射光の偏光面の回転角度が90°となるためには、ポアンカレ球上で出射光の位置が点P(−1,0,0)に到達する必要がある。その場合、第1の波長板12の出射光の位置は、回転軸R22を中心に点Pを位相差Γだけ逆方向即ち左方向に回転させたポアンカレ球上の点でなければならない。このとき、回転軸R22を中心に点Pを回転させることによりポアンカレ球上に描かれる軌跡の円弧C2は、S2−S3平面に関して円弧C1と対称即ち鏡像関係になる。
【0055】
円弧C1と円弧C2とは、S2−S3平面上に2つの交点P12,P13を有する。第1の波長板12と第2の波長板13とは、位相差Γ,Γを等しく設定したので、入射光の波長のずれによる位相差のずれ量ΔΓ,ΔΓも等しくなる。従って、ポアンカレ球上において、第1の波長板12の出射光の位置が、位相差Γのずれにより円弧C1と円弧C2との一方の交点P12又はP13となる場合、第2の波長板13の出射光の位置は、点P(−1,0,0)に到達する。
【0056】
その結果、積層1/2波長板11の出射光は、偏光面の回転角度が所望のψ=90°となる波長が、目標波長λを中心としてその正負両側に各1点存在することになる。目標波長λにおいて積層1/2波長板11が1/2波長板として要求される十分な機能を発揮する場合、設計された位相差Γ,Γに対して、少なくともポアンカレ球上の2点P12、P13における位相差のずれ量ΔΓ,ΔΓを許容されるずれの最大値とする位相差の範囲に対応する波長の範囲が、目標波長λを中心とする積層1/2波長板11の使用可能な波長範囲と解される。
【0057】
この1/2波長板として要求される機能を発揮し得る使用可能な波長範囲は、ポアンカレ球上における回転軸R11,R22の設定位置によって、即ち光学軸調整量aの設定値によって決定される。そこで、光学軸調整量aに対する積層1/2波長板11の変換効率を、従来技術に関連して上述した計算手法を用いてシミュレーションした。尚、以下の説明において、本発明の積層1/2波長板の変換効率は同じ計算手法を用いてシミュレーションしたものである。
【0058】
図3は、ブルーレイディスク規格の波長帯である405nmとDVD規格の波長帯である660nmとのほぼ中間値である536nmを設計波長とする図1の積層1/2波長板11において、380nm≦λ≦820nmの波長範囲で光学軸調整量aを0°から3°まで1°毎に変換効率をシミュレーションした結果を示している。同図から、光学軸調整量aを大きくするほど、変換効率が1となる波長位置が中心波長λ=536nmの正負両側に大きく移動するのに対し、中心波長付近では変換効率が劣化することが分かる。実際の使用時には、積層1/2波長板の用途、仕様に応じて、中心波長、変換効率の許容最小値、使用帯域等を決定し、それを実現し得る光学軸調整量aを決定すればよい。
【0059】
変換効率の評価値として、変換効率の最小値Tminを変換効率の最大値と最小値との差ΔTで除した値である変換比率RTを使用し、その設計波長に対する変化をシミュレーションした。その結果を図4に示す。同図から、設計波長λ=510nm付近で変換比率RTが最良となることが分かる。
【0060】
そこで、光学軸調整量aの最適範囲を決定するために、設計波長λ=510nmの積層1/2波長板11について、光学軸調整量aに対する変換比率RTの変化をシミュレーションした。その結果を図5に示す。同図から、0<a<2.2°の範囲において、a=0°よりも変換比率が良くなる、即ち変換効率が良いことが分かる。更に、この積層1/2波長板の波長に対する透過光量の変化を図6に示す。同図から、400〜700nmの広帯域全体に亘って高い透過光量、即ち変換効率を得られることが確認された。
【0061】
本発明によれば、ブルーレイディスク規格の波長帯である405nmとDVD規格の波長帯である660nmとの双方において、光ピックアップ装置に使用可能な高い変換効率を発揮する積層1/2波長板が実現される。図7は、使用波長λ=405nm帯及び660nm帯について、設計波長に対する変換効率の変化を示している。同図から、設計波長設計波長λ=500nmとすると、405nm帯及び660nm帯の双方において、0.97以上の高い変換効率を得られることが分かる。
【0062】
次に、設計波長をλ=405,500,550nmとした場合に、光学軸調整量をa=0として積層1/2波長板11の波長依存性即ち波長に対する変換効率の変化を検証した。その結果を図8に示す。同図から、設計波長λ=405nmでは、660nm帯で変換効率の劣化が大きくなり過ぎ、設計波長λ=550nmでは、405nm帯で変換効率の劣化が大きくなり過ぎるのに対し、設計波長λ=500nmでは、660nm帯で変換効率の劣化が比較的小さいことが分かる。
【0063】
そこで、設計波長をλ=500nmとして、使用波長405nm及び660nmについて光学軸調整量aに対する変換効率をシミュレーションした。それらの結果を図9に示す。同図から、光学軸調整量aを2.8°≦a≦3°に設定すると、405nm帯及び660nm帯の双方において積層1/2波長板の変換効率がほぼ1になることが分かる。従って、この積層1/2波長板は、ブルーレイディスク及びDVD双方の規格について光学ディスクの記録・再生を可能にする光ピックアップ装置に使用することができる。
【0064】
また、本発明によれば、特に液晶プロジェクター等の投写型表示装置に適した、400〜700nmの広帯域全体で使用可能な積層1/2波長板が実現される。この広帯域で良好な変換効率を得るのに最適な光学軸調整量aの範囲を決定するために、先ず、使用波長が405(±30),660(±30),785(±30)nm帯域の場合に、設計波長λ=400,500,600,700,800nmについてそれぞれ積層1/2波長板の光学軸調整量aに対する変換比率をシミュレーションした。405nm帯域のシミュレーション結果を図10(A)に、660nm帯域のシミュレーション結果を図10(B)に、785nm帯域のシミュレーション結果を図10(C)にそれぞれ示す。
【0065】
図10(A)から、405nm帯域の場合、設計波長λ=700,800nmでは、光学軸調整量aを大きくしても変換比率が変化せず、変換効率が改善されないことが分かる。図10(B)から、660nm帯域の場合、全ての設計波長について、光学軸調整量aと共に変換比率が大きくなり、良好な変換効率を得られることが分かる。図10(C)から、785nm帯域の場合、設計波長λ=800nmでは、変換比率が逆に減少し、変換効率が改善されないことが分かる。しかしながら、図10(A)〜(C)を綜合すると、いずれの波長帯域の場合も、光学軸調整量aが大きくなると変換比率が大きくなり、良好な変換効率を得られる設計波長が存在することが分かる。
【0066】
そこで、図10(A)〜(C)から、各波長帯域(405,660,785nm)について設計波長λと光学軸調整量最大値amaxとの相関関係を抽出し、図11に表した。図11(A)(B)において、各波長帯域のλとamaxとの相関関係を表す特性曲線は同じものである。図11(A)は、405nm帯域の曲線及び660nm帯域の曲線の下側の陰影を付した領域が、これら両帯域について良好な変換効率が得られる光学軸調整量aの範囲であることを示している。
【0067】
図11(B)は、405nm帯域の曲線及び785nm帯域の曲線の下側の陰影を付した領域が、良好な変換効率が得られる光学軸調整量aの範囲を示している。同図から、光学軸調整量の最大値amaxは、λ=520nmの場合に、0<amax≦10.0に設定すると好ましいことが分かる。
【0068】
これらをまとめると、図1の積層1/2波長板において、従来技術即ち光学軸調整量a=0の場合よりも良好な変換効率が得られる光学軸調整量の最大値amaxは、設計波長を400≦λ≦490nm、490≦λ≦520nm、520≦λ≦800nmの3つの場合に分けて設定することができる。設計波長400≦λ≦490nmの範囲では、405nm帯域の曲線によって、設計波長490≦λ≦520nmの範囲では、660nm帯域の曲線によって、設計波長520≦λ≦800nmの範囲では、785nm帯域の曲線によって、最大値amaxが決定される。
【0069】
これら波長帯域の相関関係を示す各曲線を近似式で表すと、以下のようになる。即ち、設計波長400≦λ≦490nmの場合、光学軸調整量最大値amaxは次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00001548
=0.0427887
=−0.000385
=1.723×10−6
=−4.19×10−9
=4.086×10−12
を満足するように設定する。
【0070】
設計波長490≦λ≦520nmの場合、光学軸調整量最大値amaxは次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00006705
=17.699248
=−0.16963
=0.0006754
=−1.4×10−6
=1.68×10−9
=−1.1×10−12
=2.72×10−16
を満足するように設定する。
【0071】
設計波長520≦λ≦800nmの場合、光学軸調整量最大値amaxは次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00003014
=5.4681617
=−0.038557
=0.0001094
=−1.56×10−7
=1.106×10−10
=−3.13×10−14
を満足するように設定する。
【0072】
これらの関係式を用いることによって、本発明の積層1/2波長板は、設計波長を決定し、かつそれに基づいて光学軸調整量の最大値amaxを簡単に決定することができる。これにより、400〜800nmの波長帯全体に亘って変換効率の劣化を最小限に抑制し、良好な変換効率を得ることができる。
【0073】
図12は、本発明の積層1/2波長板を使用した光ピックアップ装置の実施例を示している。この光ピックアップ装置20は、例えばブルーレイディスク等の光学ディスクの記録再生に使用するためのもので、例えば波長405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオードからなる光源21を有する。光ピックアップ装置20は、光源21からのレーザー光を回折する回折格子22と、該回折格子を透過したレーザー光をP偏光成分とS偏光成分とに分離して透過又は反射する偏光ビームスプリッタ23と、該偏光ビームスプリッタに反射されたレーザー光を平行光にするコリメートレンズ24と、該コリメートレンズを透過したレーザー光を光ディスク25に向けて反射するミラー26と、該ミラーにより反射された直線偏光のレーザー光を円偏光に変換する1/4波長板27と、該1/4波長板を透過したレーザー光を集光する対物レンズ28と、光ディスク25から反射したレーザー光を検出する光検出器29とを備える。更に光ピックアップ装置20は、光源21から出射して偏光ビームスプリッタ23を透過したレーザー光を検出するモニタ用光検出器30を有する。
【0074】
光ピックアップ装置20の動作を以下に説明する。光源21から出射した直線偏光のレーザー光は、3ビーム法によるトラッキング制御のために回折格子22により3ビームに分離された後、S偏光成分が偏光ビームスプリッタ23で反射され、コリメートレンズ24により平行光となる。平行光のレーザー光はミラー26で全反射され、1/4波長板27により直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズ28で集光されて、光ディスク25に形成した信号記録層のピットに照射される。該ピットで反射されたレーザー光は前記対物レンズを透過し、1/4波長板27により円偏光から直線偏光に変換され、ミラー26で全反射されてコリメートレンズ24及び偏光ビームスプリッタ23を透過し、光検出器29に入射して検出される。これにより、前記光ディスクに記録されている信号の読み取り動作が行われる。また、光源21から出射したレーザー光のP偏光成分は、偏光ビームスプリッタ23を透過してモニタ用光検出器30に入射して検出される。この検出出力によって、前記レーザーダイオードから出射するレーザー光の出力を制御する。
【0075】
回折格子22は、レーザー光を上述したように分離する回折格子部22aと、入射するレーザー光をS偏光の直線偏光に変換する1/2波長板22bとから構成される。1/2波長板22bには、本発明の積層1/2波長板を使用する。これによって、光ピックアップ装置20の使用時に発振レーザーの温度ドリフトによりレーザー光の波長が変動しても、1/2波長板22bの変換効率が劣化せず又はその劣化を最小限に抑制し、常に十分な光量を確保することができる。その結果、使用するレーザー光の短波長化及び高出力化に対応して、従来よりも広帯域の波長範囲で安定して良好な性能を発揮し得る光ピックアップ装置を実現できる。
【0076】
本発明の積層1/2波長板は、光の利用効率が非常に高いことから、例えば液晶プロジェクターのように、液晶パネルを備えた投写型表示装置等に使用するのに適している。特に、特定の偏光方向の光束(s偏光光またはp偏光光)を変調するタイプの液晶パネルを用いた投写型表示装置では、直線偏光をP偏光又はS偏光のいずれかに一方に統一して液晶パネルに入射させるように、光学系を設定するのが一般的である。そのために、投写型表示装置は、光源からのランダム偏光光をP偏光又はS偏光の光束に変換して光の利用効率を高める役目の偏光変換素子(PS変換素子)を搭載する。
【0077】
図13(A)〜(C)は、液晶プロジェクター等の投写型表示装置に使用するのに適した、3つの異なる構成の偏光変換素子40、40’、40”をそれぞれ示しており、そのいずれにも本発明の積層1/2波長板を使用することができる。これによって、各偏光変換素子40、40’、40”は、従来よりも広帯域で変換効率の劣化を最小限に抑制できるので、光エネルギーをより効率良く利用することができる。
【0078】
図13(A)の偏光変換素子40は、第1の主面41aを光入斜面としかつ第2の主面41bを光出射面とする平板状の透光性基材からなるプリズムアレイ41を備える。前記透光性基材中には、前記第1及び第2の主面に対して傾斜させた偏光分離膜42と反射膜43とが、交互にかつ所定の間隔をおいて平行に配置されている。
【0079】
偏光分離膜42は、第1の主面41aからプリズムアレイ41に入射したランダム光をS偏光成分とP偏光成分とに分離し、P偏光成分を透過させかつS偏光成分を反射する。偏光分離膜42を透過したP偏光成分は、そのまま第2の主面41bを介してプリズムアレイ41から出射する。
【0080】
前記偏光分離膜に反射されたS偏光成分は、反射膜43により反射され、第2の主面41bを介してプリズムアレイ41から出射する。第2の主面41bには、前記反射膜に反射されたS偏光成分が出射する部分に1/2波長板44が配置されている。1/2波長板44は、入射するS偏光の直線偏光をP偏光に変換して出射する。このように偏光変換素子40は、入射した光がP偏光に揃えて出射され、P偏光光学系の投写型表示装置に搭載するのに適している。
【0081】
図13(B)は、S偏光光学系の投写型表示装置に搭載するのに適した偏光変換素子40’の構成を示している。この偏光変換素子40’は、1/2波長板44が、偏光分離膜42を透過したP偏光成分が出射する第2の主面41bの部分に配置されている。これにより、偏光分離膜42を透過したP偏光の直線偏光はS偏光に変換して出射される。他方、前記偏光分離膜に反射されたS偏光成分は、反射膜43により反射されて、S偏光のままプリズムアレイ41から出射する。従って、偏光変換素子40’に入射した光は、S偏光に揃えて出射される。
【0082】
図13(C)は、1/2波長板44をプリズムアレイ41の前記透光性基材中に配置した構造の偏光変換素子40”を示している。1/2波長板44は偏光分離膜42の出射面に積層され、反射膜43とは所定の間隔をおいてかつ交互に平行に配置されている。
【0083】
偏光分離膜42は、第1の主面41aから入射したランダム光をS偏光成分とP偏光成分とに分離し、P偏光成分を透過させかつS偏光成分を反射する。偏光分離膜42に反射されたS偏光成分は、反射膜43により反射され、第2の主面41bを介してプリズムアレイ41から出射する。前記偏光分離膜を透過したP偏光成分は、直接1/2波長板44に入射してS偏光に変換され、前記第2の主面を介してプリズムアレイ41から出射する。このように、偏光変換素子40''に入射した光はS偏光に揃えて出射される。
【0084】
偏光変換素子40”の1/2波長板44に本発明の積層1/2波長板を用いる場合、それを構成する前記第1及び第2の波長板は、透過光の進行方向即ち第1及び第2の主面41a,41bに対して45°の方向において、それらの位相差Γ1,Γ2が、
Γ1=180°、
Γ2=180°
を満足するように、それぞれ板厚を設定すればよい。
【0085】
更に、前記第1及び第2の波長板の光学軸方位角は、それら光学軸の第1の主面41aへの投影角度θ1,θ2が、次の関係を満足するように設定すればよい。
θ1=ψ/4+a
θ2=3ψ/4−a
22.5°<θ1<45.0°
45.0°<θ2<67.5°
このとき、前記第1及び第2の波長板における光学軸の面内方位角は、前記第1及び第2の主面への投影角度よりも小さくなる。
【0086】
図14は、本発明の積層1/2波長板を使用した投写型表示装置の実施例を概略的に示している。この投写型表示装置50は、照明光学系51、ダイクロイックミラー52,53、反射ミラー54〜56、λ/2位相差板57〜61、液晶ライトバルブ62〜64、クロスダイクロイックプリズム65、及び投写レンズ系66を備える。照明光学系50は、液晶ライトバルブ62〜64を照明するために光源、偏光変換素子67、集光レンズ等を備える。偏光変換素子67は、図13(B)の偏光変換素子を用いることができ、前記光源からのランダム光をS偏光に変換して出射する。
【0087】
照明光学系51から出射されたS偏光の白色光は、赤色光成分がダイクロイックミラー52を透過し、青色光成分と緑色光成分とが反射される。ダイクロイックミラー52を透過した赤色光は反射ミラー54で反射され、λ/2位相差板57を通ってP偏光光に変換され、赤色光用の液晶ライトバルブ62に入射する。ダイクロイックミラー52で反射された緑色光は更にダイクロイックミラー53により反射され、λ/2位相差板58を通ってP偏光光に変換され、緑色光用の液晶ライトバルブ63に入射する。ダイクロイックミラー52で反射された青色光は、ダイクロイックミラー53を透過して反射ミラー55,56に反射され、λ/2位相差板59を通ってP偏光光に変換され、青色光用の液晶ライトバルブ64に入射する。
【0088】
液晶ライトバルブ62〜64は、それぞれ与えられた画像情報(画像信号)に従って各色の色光を変調して画像を形成する光変調手段である。クロスダイクロイックプリズム65は、液晶ライトバルブ62,64から出射されたS偏光の赤色光及び青色光、液晶ライトバルブ63から出射された後にP偏光に変換された緑色光の色光を合成してカラー画像を形成する色合成手段である。この合成光は、λ/2位相差板61を通して投写レンズ系66に出射される。投写レンズ系66は、この合成光を投写スクリーン上に投写してカラー画像を表示する投写光学系である。
【0089】
λ/2位相差板61は、S偏光光(赤色光及び青色光)とP偏光光(緑色光)の偏光方向をそれぞれ約45°変更するように、その光学軸の方向を決定すると、3色の光のS偏光光成分とP偏光光成分とが約1/2ずつになるので、偏光スクリーン上にカラー映像をきれいに投写することができる。また、λ/2位相差板61に代えてλ/4位相差板を用いることができる。この場合には、赤、緑、青の3色の光をそれぞれ楕円偏光、好ましくは円偏光に変換することによって、投写スクリーンに偏光スクリーンを用いた場合にも、カラー映像をきれいに投写することができる。
【0090】
λ/2位相差板57〜61には、本発明の積層1/2波長板を使用することができる。これによって、投写型表示装置50は、各λ/2位相差板において従来よりも広帯域の波長範囲で変換効率の劣化を最小限に抑制できるので、光の利用効率をより高めることができる。その結果、同じ出力の光源でより明るいカラー映像を得ることができ、又は光源を低出力なものにしても同程度に明るいカラー映像が得られるので、消費電力を低減することができる。
【0091】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、第1及び第2の波長板は、水晶板以外の光学的一軸性結晶材料により形成することができる。また、上記実施例とは異なる構成の光ピックアップ装置、偏光変換素子、投写型表示装置についても、または他の光学装置についても、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,11…積層1/2波長板、2,12…第1の波長板、3,13…第2の波長板、4,5,14,15…結晶光学軸、6,7,16,17…直線偏光、20…光ピックアップ装置、21,41…光源、22…回折格子、22a…回折格子部、22b…1/2波長板、23…偏光ビームスプリッタ、24…コリメートレンズ、25…光ディスク、26…ミラー、27,44…1/4波長板、28…対物レンズ、29…光検出器、30…モニタ用光検出器、40,40’,67…偏光変換素子、41…プリズムアレイ、41a…第1の主面、41b…第2の主面、42…偏光分離膜、43…反射膜、50…投写型表示装置、51…照明光学系、52,53…ダイクロイックミラー、54〜56…反射ミラー、57〜61…λ/2位相差板、62〜64…液晶ライトバルブ、65…クロスダイクロイックプリズム、66…投写レンズ系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置して積層し、入射する直線偏光の偏光面を所定の角度ψ回転させた直線偏光に変換して出射する積層波長板であって、
前記入射する直線偏光の偏光面と前記第1及び第2の波長板の光学軸とがそれぞれなす面内方位角をθ,θとし、光学軸調整量をaとしたとき、
θ=ψ/4+a、
θ=3ψ/4−a
を満足することを特徴とする積層波長板。
【請求項2】
設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置して積層した積層波長板であって、
第1及び第2の波長板の光学軸の面内方位角をθ,θ、前記積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と出射する直線偏光の偏光方向とがなす角度をψ、光学軸調整量をaとしたとき、
θ=θ+ψ/2、
θ=ψ/4+a、
θ=3ψ/4−a、
0<a<amaxであり、
光学軸調整量最大値amaxが、設計波長400≦λ≦490の場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00001548
=0.0427887
=−0.000385
=1.723×10−6
=−4.19×10−9
=4.086×10−12
を満足し、
設計波長490≦λ≦520の場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00006705
=17.699248
=−0.16963
=0.0006754
=−1.4×10−6
=1.68×10−9
=−1.1×10−12
=2.72×10−16
を満足し、
設計波長520≦λ≦800の場合に次の式
max=A+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ+A・ψ
=0.00003014
=5.4681617
=−0.038557
=0.0001094
=−1.56×10−7
=1.106×10−10
=−3.13×10−14
を満足することを特徴とする積層波長板。
【請求項3】
前記設計波長をλ=500nmとし、かつ前記光学軸調整量を2.8°≦a≦3°に設定したことを特徴とする請求項2記載の積層波長板。
【請求項4】
前記設計波長をλ=510nmとし、かつ前記光学軸調整量を0°<a≦2.2°に設定したことを特徴とする請求項2記載の積層波長板。
【請求項5】
前記第1及び第2の波長板が水晶板からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の積層波長板。
【請求項6】
設計波長λに対して位相差Γ=180°の第1の波長板と位相差Γ=180°の第2の波長板とからなり、かつこれら第1及び第2の波長板をそれらの光学軸が互いに交差するように配置して積層し、入射する直線偏光の偏光面を所定の角度90°回転させた直線偏光に変換して出射する積層波長板であって、
前記入射する直線偏光の偏光面と前記第1及び第2の波長板の光学軸とがそれぞれなす面内方位角をθ,θとしたとき、
22.5°<θ<45.0°、
45.0°<θ<67.5°
を満足することを特徴とする積層波長板。
【請求項7】
光源と、前記光源から出射される光を記録媒体上に集光する対物レンズと、前記記録媒体により反射された光を検出する検出器と、前記光源と前記対物レンズ間の光路中に配置した請求項1乃至6のいずれか記載の積層波長板とを備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
第1の主面を光入斜面としかつ第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材と、前記基材中に設けられた第1及び第2の光学薄膜と、前記基材の前記第2の主面に設けられた波長板とを備え、
前記第1及び第2の光学薄膜が、前記第1及び第2の主面に対して傾斜させて、交互にかつ互いに間隔をおいて平行に配置され、
前記第1の光学薄膜が、前記第1の主面側から入射した光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離し、前記第1の直線偏光を透過させて前記第2の主面から出射させ、かつ第2の直線偏光を反射し、
前記第2の光学薄膜が、前記第1の光学薄膜により反射された第2の直線偏光を反射して前記第2の主面から出射させ、
前記波長板が、前記第1の光学薄膜を透過した前記第1の直線偏光を出射させる前記第2の主面の部分又は前記第2の光学薄膜により反射された前記第2の直線偏光を出射させる前記第2の主面の部分に配置された請求項1乃至6のいずれか記載の積層波長板であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項9】
第1の主面を光入斜面としかつ第2の主面を光出射面とする平板状の透光性基材と、前記基材中に設けられた第1及び第2の光学薄膜と波長板とを備え、
前記第1及び第2の光学薄膜が、前記第1及び第2の主面に対して傾斜させて、交互にかつ互いに間隔をおいて平行に配置され、
前記第1の光学薄膜が、前記第1の主面側から入射した光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離して、前記第1の直線偏光を透過させかつ第2の直線偏光を反射し、
前記第2の光学薄膜が、前記第1の光学薄膜により反射された第2の直線偏光を反射して前記第2の主面から出射させ、
前記波長板が、前記第1の光学薄膜の前記第1の直線偏光の出射面に積層して配置された請求項1乃至6のいずれか記載の積層波長板であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項10】
光源と、前記光源からの光を前記第2の直線偏光に変換して出射する請求項8又は9記載の偏光変換素子と、前記偏光変換素子からの出射光を、投写しようとする画像情報に応じて変調する変調手段と、前記変調手段により変調された光を投写する投写光学系とを有することを特徴とする投写型表示装置。
【請求項11】
前記変調手段が液晶パネルであることを特徴とする請求項10記載の投写型表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−231136(P2010−231136A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81231(P2009−81231)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】