積層電子部品の製造方法
【課題】セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制する積層電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】積層コンデンサの製造方法は、シート形成工程、凹凸形成工程、及び積層工程を含む。シート積層工程では、セラミックグリーンシート10と、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12と、を有する単位積層シート13を形成する。凹凸形成工程では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出する第1の領域10bのみに、溶剤Sを付着させて凹凸を形成する。積層工程では、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する。セラミックグリーンシート10には凹凸が形成されているので、積層ずれを抑制できる。
【解決手段】積層コンデンサの製造方法は、シート形成工程、凹凸形成工程、及び積層工程を含む。シート積層工程では、セラミックグリーンシート10と、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12と、を有する単位積層シート13を形成する。凹凸形成工程では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出する第1の領域10bのみに、溶剤Sを付着させて凹凸を形成する。積層工程では、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する。セラミックグリーンシート10には凹凸が形成されているので、積層ずれを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートを積層して製造する積層電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミック素体とセラミック素体の内部に形成された内部電極とを備える積層電子部品がある。この積層電子部品を製造する方法として、電極パターンが形成された複数のセラミックグリーンシートを積層して製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−72121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の積層電子部品を製造する際には、数十枚、数百枚以上のセラミックグリーンシートを積層するので、製造工程において積層したセラミックグリーンシートがずれ易い。製造工程中にセラミックグリーンシートがずれると、その積層電子部品は、特性が低下したりばらつくので問題がある。
【0004】
そこで本発明は、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制する積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に対向する第2の領域であって、第1の主面に対向する第2の主面上の第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域、及び、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、セラミックグリーンシートの第1の領域と第2の領域との少なくとも一方の領域に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシートがずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、凹凸形成工程は、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を第1の領域又は第2の領域に付着させることにより、凹凸を形成する。この場合、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤をセラミックグリーンシートの第1の領域又は第2の領域に付着させることにより、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分が溶剤に溶けてセラミックグリーンシートの第1の領域、又は、第2の領域、又は、第1の領域及び第2の領域に凹凸が形成される。溶剤を付着することで凹凸を形成するので、凹凸を容易に形成することができる。また、溶剤の成分又は量を調整することにより、凹凸度合いを容易に調整することができる。
【0010】
好ましくは、溶剤は、電極パターンに含まれる樹脂成分と非相溶である。この場合、溶剤をセラミックグリーンシートの第1の領域に付着させる際に、溶剤が電極パターンに付着したとしても、電極パターンの変形を防止できる。電極パターンは積層電子部品において内部電極として機能するので、電極パターンの変形を防止することにより、積層電子部品において内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【0011】
好ましくは、シート形成工程は、セラミックグリーンシートの第1の主面上に電極ペーストを塗布することにより電極パターンを形成し、電極ペーストに含まれる溶剤とセラミックグリーンシートの樹脂成分とは、非相溶である。この場合、電極パターンをセラミックグリーンシートの第1の主面上に形成する際に、電極ペーストに含まれる溶剤によって、セラミックグリーンシートの第1の主面に凹凸が形成されるのを防止できる。セラミックグリーンシートにおいて電極ペーストが塗布される領域は、積層電子部品において誘電体層として機能する。よって、電極と接する誘電体層の変形によって積層電子部品の特性が低下することを防止できる。
【0012】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域、及び、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、セラミックグリーンシートの第2の領域と補助層の表面との少なくとも一方の領域に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシートがずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【0016】
本発明の積層電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出した第1の領域に、セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の積層電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出した第1の領域に、セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、補助層の表面、及び、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、補助層の表面に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合う単位積層シートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合う単位積層シートがずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。また、ラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層をセラミックグリーンシートの第1の領域に形成することにより、溶剤がセラミックグリーンシートの樹脂成分を溶かして、補助層の表面に凹凸が形成される。よって、補助層を形成すると同時に凹凸を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0019】
好ましくは、補助層に含まれる溶剤と電極パターンの樹脂成分とは、非相溶である。この場合、補助層をセラミックグリーンシートの第1の主面上に形成する際に、溶剤が電極パターンに付着したとしても、電極パターンの変形を防止できる。電極パターンは積層電子部品において内部電極として機能するので、電極パターンの変形を防止することにより、積層電子部品において内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、積層電子部品の製造工程において、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係る積層コンデンサ(積層電子部品)の構成について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の積層コンデンサ1は、略直方体形状の素子2と、素子2に形成された一対の第1の端子電極3及び第2の端子電極4と、を備える。
【0023】
第1端子電極3と第2の端子電極4とは、素子2の長手方向に対向する一対の端面にそれぞれ形成されている。積層コンデンサ1が基板に実装される際には、素子2の一対の端面と垂直な1つの側面が、基板に対向するように配置される。
【0024】
図2に示すように、素子2は、略直方体形状の誘電体層5と、誘電体層5の内部に互いに平行に配置された第1の内部電極6及び第2の内部電極7とを有している。本実施形態では、素子2は、それぞれ二つの第1の内部電極6と第2の内部電極7とを有している。
【0025】
略四角形状に形成された第1の内部電極6は、一辺が第1の端子電極3の形成された素子2の端面に露出して、第1の端子電極3と機械的かつ電気的に接続されている。略四角形状に形成された第2の内部電極7は、一辺が第2の端子電極4の形成された素子2の端面に露出して、第2の端子電極4と機械的かつ電気的に接続されている。
【0026】
第1の内部電極6と第2の内部電極7とは、誘電体層5の一部を介して交互に積層されている。積層コンデンサ1では、第1の内部電極6と第2の内部電極7とにおいて両者が互いに対向する領域と、誘電体層5において第1と第2の内部電極6,7とが対向する領域に挟まれた領域と、によって主に電気容量特性が発揮される。
【0027】
このような積層コンデンサ1は、以下に説明する第1〜第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法によって製造することができる。
【0028】
(第1の実施形態)
図3〜図6を参照して第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明する。図3は、第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。図4は、第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。図5は、図4(d)に示される単位積層シートの平面模式図である。図6は、図4に続く第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【0029】
第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、最初に、図4(a)に示すように、セラミックグリーンシート10を形成し(ステップS1)、乾燥させる(ステップS2)。セラミックグリーンシート10は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を加えて混合分散することにより得たセラミックスラリーを支持体11上に塗布して形成する。本実施形態では、バインダ樹脂としてOH基を有するものを用いる。例えば、OH基を有するバインダ樹脂として、ブチラールを用いる。なお、乾燥後のセラミックグリーンシート10の厚さは、1〜7μm程度である。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに矩形状の内部電極パターン(電極パターン)12を形成し(ステップS3)、乾燥させる(ステップS4)。内部電極パターン12は、電極ペーストをセラミックグリーンシート10上にスクリーン印刷することにより形成される。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末に樹脂と溶剤等を混合したペースト状の組成物である。電極ペーストに含まれる溶剤は、内部電極パターン形成時にセラミックグリーンシート10の樹脂を溶かさないように、セラミックグリーンシート10の樹脂と非相溶な溶剤である。例えば、電極ペーストに含まれる溶剤として、メンタノールプロピオネート、ターピニルアセテート等を用いる。乾燥後の内部電極パターンの厚さは、1〜2μm程度である。
【0031】
以上のステップS1〜S4によって、セラミックグリーンシート10と、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12と、を有する単位積層シート13が形成される(シート形成工程)。
【0032】
次に、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bのみに凹凸を形成する(ステップS5;凹凸形成工程)。第1の領域10bとは、すなわち、電極ペーストが印刷されていない電極非形成領域である。凹凸を形成するためには、まず、図4(c)に示すように、内部電極パターン12の上面をマスクプレート14で覆い、その上側から溶剤Sをスプレーする。これにより、単位積層シートにおいて第1の領域10bのみに溶剤Sを付着させる。
【0033】
溶剤Sとして、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂と相溶なものを用いる。溶剤Sがセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着すると、シートアタックが起こる。すなわち、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を溶剤Sが溶かすので、図4(d)及び図5に示すように、第1の領域10bが荒れて凹凸が形成される。
【0034】
溶剤Sは、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を構成するOH基と水素結合を起こし、バインダ樹脂を溶かす。溶けたバインダ樹脂が下方に移動することによって、グリーンシート10の第1の領域10bに凹凸が形成される。溶剤Sとして、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、IPA(イソプロピルアルコール)等を用いることができる。
【0035】
溶剤Sの種類を選択したり、その濃度及び量を調整することにより、形成する凹凸の度合いを調整することができる。好ましい凹凸の度合いとしては、JISB0601に基づく、10点平均粗さであるRzが0.3μmから2.5μm程度である。
【0036】
続いて、図6に示すように、凹凸が形成された単位積層シート13から支持体11を剥離し、複数の単位積層シート13を積層する(ステップS6;積層工程)。本実施形態では、4つの単位積層シート13A〜13Dと1つのセラミックグリーンシート10Eを積層している。
【0037】
単位積層シート13Aに含まれるセラミックグリーンシート10Aの第1の主面10aと単位積層シート13Bに含まれるセラミックグリーンシート10Bの第1の主面10aに対向する第2の主面10cが接触して、積層されている。セラミックグリーンシート10Aの第1の主面10aにおける第1の領域10bには凹凸が形成されているので、セラミックグリーンシート10Aとセラミックグリーンシート10Bとの接触面において、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。従って、単位積層シート13Aに含まれる内部電極パターン12Aと単位積層シート13Bに含まれる内部電極パターン12Bとの相対的な位置関係もずれないように積層することができる。
【0038】
同様に、セラミックグリーンシート10Bと単位積層シート13Cに含まれるセラミックグリーンシート10Cとの接触面において、セラミックグリーンシート10Bの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。同様に、セラミックグリーンシート10Cと単位積層シート13Dに含まれるセラミックグリーンシート10Dとの接触面において、セラミックグリーンシート10Cの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。
【0039】
同様に、セラミックグリーンシート10Dとその上に積層されたセラミックグリーンシート10Eとの接触面において、セラミックグリーンシート10Dの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。このように、セラミックグリーンシート10には、積層される際に他のセラミックグリーンシート10と接触する部分に凹凸が形成されているので、積層ずれを防止することができる。従って、内部電極パターン12Aと、内部電極パターン12Bと、単位積層シート13Cに含まれる内部電極パターン12Cと、単位積層シート13Dに含まれる内部電極パターン12Dとの相対的な位置関係もずれないように積層することができる。
【0040】
以上のように単位積層シート13を積層して積層体15を得た後に、図6に示す切断線Lに沿って切断することにより、積層チップ体を形成する。その後、積層チップ体を加熱して、乾燥、脱バインダ、及び焼成を行う。焼成後、積層チップ体の外表面に第1及び第2の端子電極3,4を形成する。
【0041】
内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第1の端子電極3に電気的に接続された内部電極が第1の内部電極6となる。内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第2の端子電極4に電気的に接続された内部電極が第2の内部電極7となる。積層されたセラミックグリーンシート10は焼成されることにより、素体2となり、誘電体としての機能を発揮する。このようにして積層コンデンサ1が製造される。
【0042】
以上説明した本実施形態の積層コンデンサの製造方法によれば、積層工程において、セラミックグリーンシート10の第1の領域10bに凹凸が形成された単位積層シート13を積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10の一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0043】
本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシート10に含まれるバインダ樹脂と相溶な溶剤Sをセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着させることにより、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂が溶剤Sに溶けて、セラミックグリーンシートの表面に凹凸が形成される。このように、溶剤Sを付着することで凹凸を形成するので、凹凸を形成する領域を精度よく設定できる。また、溶剤Sの成分又は量を調整することにより、凹凸度合いを容易に調整することができる。
【0044】
ところで、セラミックグリーンシート10の積層ずれを防止するために、セラミックグリーンシート10の第1の主面10a全体に凹凸を形成することも考えられる。この場合、積層時に内部電極パターンと接する領域全体に凹凸が形成されることとなる。すると、内部電極パターンに挟まれた領域に凹凸が形成されることとなり、製造された積層コンデンサにおいては、第1と第2の内部電極に挟まれた誘電体層が変形することとなる。誘電体層において内部電極に挟まれた領域は、積層コンデンサとしての特性を主に発揮する領域であるので、この領域が変形すると、特性の低下、ショートの発生、耐電圧の低下等の問題が生じる。
【0045】
それに対して、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出する第1の領域10bのみに凹凸を形成する。よって、図6に示すように、単位積層シート13を積層した際に、内部電極パターン12に挟まれた領域Fには凹凸は形成されない。よって、積層コンデンサ1においても、第1と第2の内部電極6,7に挟まれた誘電体層5の領域Fは変形せず、積層コンデンサとしての特性を低下させることはない。
【0046】
更に、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、電極ペーストに含まれる溶剤とセラミックグリーンシート10の樹脂とは、非相溶である。この場合、内部電極パターン12をセラミックグリーンシート10の第1の主面10a上に形成する際に、電極ペーストに含まれる溶剤によって、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに凹凸が形成されるのを防止できる。セラミックグリーンシート10において電極ペーストが印刷される領域は、積層コンデンサ1において内部電極と挟まれた領域を含む。よって、誘電体層5において第1と第2の内部電極6,7に挟まれた領域の変形を防止して、積層コンデンサ1の特性が低下することを防止できる。
【0047】
また、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、溶剤Sは、内部電極パターン12に含まれる樹脂と非相溶であるので、溶剤Sによる内部電極パターン12の変形を防止できる。内部電極パターン12は積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極6,7となる。すなわち、内部電極パターン12の変形を防止することにより、第1及び第2の内部電極6,7の変形によって積層コンデンサ1の特性が低下することを防止できる。
【0048】
第1の実施形態は、種々の変形が可能である。
【0049】
上記の第1の実施形態では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aの第1の領域10bのみに凹凸を形成するとしたが、図7に示すように、第2の主面10cにおいて第1の領域10bに対向する第2の領域10dにも凹凸を形成してもよい。すなわち、第1の領域10b及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0050】
この場合、第1の領域10bのみに溶剤Sを付着させ、第1の領域10bのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート10の樹脂を多く溶かす。溶剤Sが第2の領域10dまで浸透して第2の領域10dを溶かすことにより、第2の領域10dにも凹凸が形成される。
【0051】
この場合も上記第1の実施形態と同様に、積層工程において、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10の双方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0052】
上記の第1の実施形態では、セラミックグリーンシート10に凹凸を形成する際に溶剤Sを用いたが、セラミックグリーンシート10の第1の領域10bのみ又は第1の領域10b及び第2の領域10dのみ又は第2の領域10dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
図8を参照して第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明する。図8は、第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、凹凸形成工程が、第1の実施形態に係る積層コンデンサ1の製造方法と異なる。
【0054】
第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、第1の実施形態の場合のステップS1〜S4と同様にして、セラミックグリーンシート10とセラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート13を形成する(シート形成工程)。
【0055】
次に、第2の実施形態における凹凸形成工程では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bに、補助層16を形成する。補助層16は、第1の主面10aと内部電極パターン12との段差を解消するために形成するものである。補助層16を形成するためのセラミックスラリーは、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を含む。補助層16に含まれるバインダ樹脂は、例えば、セルロース系樹脂である。
【0056】
補助層16に含まれる溶剤は、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂と相溶なものを用いる。補助層16を第1の領域10bに形成する際に、補助層16に含まれる溶剤がセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着すると、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を補助層16に含まれる溶剤が溶かす。第1領域10b上のバインダ樹脂が溶けて下方に落ち込むことにより、図8(c)に示すように、補助層16の表面16aのみに凹凸が形成される。
【0057】
補助層16に含まれる溶剤は、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を構成するOH基と水素結合を起こす。また、補助層16に含まれる溶剤は、補助層16形成時に内部電極パターン12を溶かさないように、内部電極パターン12に含まれる樹脂と非相溶なものを用いる。例えば、補助層16の溶剤として、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等を用いることができる。補助層16の溶剤の種類を選択したり、その濃度及び量を調整することにより、形成する凹凸の度合いを調整することができる。好ましい凹凸の度合いとしては、JISB0601に基づく、10点平均粗さであるRzが0.3μmから2.5μm程度である。
【0058】
その後、積層工程では、補助層16及び凹凸が形成された複数の単位積層シート13を積層して積層体15を形成する。
【0059】
第2の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、積層工程において、補助層16の表面16aに凹凸が形成された単位積層シート13を積層する。よって、互いに接触し合う単位積層シート13の一方に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合う単位積層シート13がずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0060】
また、セラミックグリーンシート10に含まれるバインダ樹脂と相溶な溶剤を用いて補助層16をセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに形成することにより、溶剤がセラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を溶かして、補助層16の表面16aに凹凸が形成される。よって、補助層16を形成すると共に凹凸を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0061】
本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、補助層16に含まれる溶剤と内部電極パターン12の樹脂成分とは、非相溶である。この場合、補助層16をセラミックグリーンシート10の第1の主面10a上に形成する際に、補助層16に含まれる溶剤が内部電極パターン12に付着したとしても、内部電極パターン12の変形を防止できる。内部電極パターン12は積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極として機能するので、内部電極パターン12の変形を防止することにより、積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【0062】
第2の実施形態は、種々の変形が可能である。
【0063】
上記の第2の実施形態では、補助層16の表面16aのみに凹凸を形成するとしたが、図9に示すように、第2の主面10cにおいて第1の領域10bに対向する第2の領域10dにも凹凸を形成してもよい。すなわち、補助層16の表面16a及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0064】
この場合、補助層16を形成するセラミックスラリーに含ませる溶剤として、補助層16の表面16aのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂をより多く溶かす。これにより、補助層16を形成するセラミックスラリーに含まれた溶剤が第2の領域10dまで浸透して第2の領域10dを溶かすことにより、第2の領域10dにも凹凸が形成される。
【0065】
この場合、積層工程において、互いに接触し合う単位積層シート13のセラミックグリーンシート10の一部又は補助層16の表面16aに凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0066】
上記の第2の実施形態では、セラミックグリーンシート10に凹凸を形成するために、補助層16に含まれる溶剤を用いたが、補助層16の表面16aのみ又は補助層16の表面16a及び第2の領域10dのみ、又は第2の領域10dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0067】
この場合、図10に示す手順で積層コンデンサ1を製造する。まず、第1の実施形態の場合のステップS1〜S4と同様にして、セラミックグリーンシート10とセラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート13が形成される(ステップS11〜14;シート形成工程)。
【0068】
次に、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bに、補助層16を形成する(ステップS15;補助層形成工程)。その後、第2の領域10bのみ、又は、補助層16の表面16aのみ、又は、第2の領域10b及び補助層16の表面16aのみに、金型を用いて凹凸を形成する(ステップS16;凹凸形成工程)。続いて、積層工程では、補助層16及び凹凸が形成された複数の単位積層シート13を積層して積層体を形成する(ステップS17)。
【0069】
(第3の実施形態):
図11及び図12を参照して第3の実施形態に係る積層コンデンサ1の製造方法を説明する。図11は、第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。図12は、第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。上記第1及び第2の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、単位積層シート13を形成する際に、セラミックグリーンシート10を形成し、その第1の主面10aに内部電極パターン12を形成した。第3の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、単位積層シート13を形成する際に、内部電極パターン12を形成した上に、セラミックグリーンシート10を形成する。
【0070】
第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、最初に、図12(a)に示すように、支持体11上に矩形状の内部電極パターン12を形成し(ステップS21)、乾燥させる(ステップS22)。内部電極パターン12は、電極ペーストを支持体11上にスクリーン印刷することにより形成される。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末に樹脂と溶剤等を混合したペースト状の組成物である。
【0071】
次に、図12(b)に示すように、内部電極パターン12を覆うようにセラミックグリーンシート17を形成し(ステップS23)、乾燥させる(ステップS24)。セラミックグリーンシート17は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を加えて混合分散することにより得たセラミックスラリーを支持体11上に塗布して形成する。セラミックグリーンシート17に含まれるバインダ樹脂として、第1の実施形態と同様な樹脂を用いることができる。
【0072】
以上のステップS21〜ステップS24によって、セラミックグリーンシート17とセラミックグリーンシート17の第1の主面17aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート18が形成される(シート形成工程)。
【0073】
次に、セラミックグリーンシート17の第1の主面17aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域17bと対向する領域であって、第1の主面17aと対向する第2の主面17c上の第2の領域17dのみに凹凸を形成する(ステップS25;凹凸形成工程)。凹凸を形成するためには、まず、図12(c)に示すように、第1の主面17aにおいて、内部電極パターン12が形成された領域に対向する領域をマスクプレート19で覆い、その上側から溶剤Sをスプレーする。これにより、単位積層シート18において第2の領域17dのみに溶剤Sを付着させる。
【0074】
溶剤Sとして、セラミックグリーンシート17の樹脂と相溶なものを用いる。溶剤Sがセラミックグリーンシート17の第2の領域17dに付着すると、セラミックグリーンシート17の樹脂を溶剤Sが溶かすので、図12(d)に示すように、第2の領域17dが荒れて凹凸が形成される。溶剤Sは、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10の樹脂を構成するOH基と水素結合を起こす。例えば、溶剤Sとして、エタノール、メタノール、n−プロパノール、IPA(イソプロピルアルコール)等を用いることができる。続いて、凹凸が形成された単位積層シート18から支持体11を剥離し、複数の単位積層シート18を積層し、積層体15を形成する(ステップS26;積層工程)。
【0075】
以上説明した本実施形態の積層コンデンサの製造方法によれば、積層工程において、セラミックグリーンシート17の第2の領域17dに凹凸が形成された単位積層シート18を積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17の一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート17の積層ずれを抑制することができる。
【0076】
上記の第3の実施形態では、セラミックグリーンシート17の第2の主面17cの第2の領域17dのみに凹凸を形成するとしたが、図13に示すように、第1の主面17aの第1の領域10bにも凹凸を形成してもよい。すなわち、第1の領域10b及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0077】
この場合、第2の領域17dのみに溶剤Sを付着させて、第2の領域17dのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート17のバインダ樹脂を多く溶かす。溶剤Sが第1の領域17bまで浸透して第1の領域17bを溶かすことにより、第1の領域17bにも凹凸が形成される。
【0078】
この場合、積層工程において、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17の双方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート17の積層ずれを抑制することができる。
【0079】
上記の第3の実施形態では、セラミックグリーンシート17に凹凸を形成する際に溶剤Sを用いたが、セラミックグリーンシート17の第2の領域17dのみ又は第1の領域17b及び第2の領域17dのみ、又は第2の領域17dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0080】
上記第1〜第3の実施形態では、本発明の積層電子部品の製造方法として積層コンデンサ1の製造方法を説明したが、本発明の積層電子部品の製造方法の対象は積層コンデンサに限られない。本発明の積層電子部品の製造方法の対象は複数のセラミックグリーンシートを積層して製造する積層電子部品であればよく、バリスタ、インダクタ、又はそれらを含む複合電子部品でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】図1の積層コンデンサの断面模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図4】第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図5】図4(d)に示される単位積層シートの平面模式図である。
【図6】図4に続く第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図7】第1の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図9】第2の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図10】第2の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図11】第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図12】第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図13】第3の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1…積層コンデンサ(積層電子部品)、10,10A〜10E,17…セラミックグリーンシート、10a,17a…第1の主面、10b,17b…第1の領域、10c,17c…第2の主面、10d,17d…第2の領域、12,12A〜12D…内部電極パターン(電極パターン)、13,13A〜13D,18…単位積層シート、16…補助層、16a…表面、S…溶剤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートを積層して製造する積層電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミック素体とセラミック素体の内部に形成された内部電極とを備える積層電子部品がある。この積層電子部品を製造する方法として、電極パターンが形成された複数のセラミックグリーンシートを積層して製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−72121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の積層電子部品を製造する際には、数十枚、数百枚以上のセラミックグリーンシートを積層するので、製造工程において積層したセラミックグリーンシートがずれ易い。製造工程中にセラミックグリーンシートがずれると、その積層電子部品は、特性が低下したりばらつくので問題がある。
【0004】
そこで本発明は、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制する積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に対向する第2の領域であって、第1の主面に対向する第2の主面上の第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域、及び、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、セラミックグリーンシートの第1の領域と第2の領域との少なくとも一方の領域に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシートがずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、凹凸形成工程は、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を第1の領域又は第2の領域に付着させることにより、凹凸を形成する。この場合、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤をセラミックグリーンシートの第1の領域又は第2の領域に付着させることにより、セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分が溶剤に溶けてセラミックグリーンシートの第1の領域、又は、第2の領域、又は、第1の領域及び第2の領域に凹凸が形成される。溶剤を付着することで凹凸を形成するので、凹凸を容易に形成することができる。また、溶剤の成分又は量を調整することにより、凹凸度合いを容易に調整することができる。
【0010】
好ましくは、溶剤は、電極パターンに含まれる樹脂成分と非相溶である。この場合、溶剤をセラミックグリーンシートの第1の領域に付着させる際に、溶剤が電極パターンに付着したとしても、電極パターンの変形を防止できる。電極パターンは積層電子部品において内部電極として機能するので、電極パターンの変形を防止することにより、積層電子部品において内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【0011】
好ましくは、シート形成工程は、セラミックグリーンシートの第1の主面上に電極ペーストを塗布することにより電極パターンを形成し、電極ペーストに含まれる溶剤とセラミックグリーンシートの樹脂成分とは、非相溶である。この場合、電極パターンをセラミックグリーンシートの第1の主面上に形成する際に、電極ペーストに含まれる溶剤によって、セラミックグリーンシートの第1の主面に凹凸が形成されるのを防止できる。セラミックグリーンシートにおいて電極ペーストが塗布される領域は、積層電子部品において誘電体層として機能する。よって、電極と接する誘電体層の変形によって積層電子部品の特性が低下することを防止できる。
【0012】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の積層電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域、及び、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、補助層形成工程において補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、セラミックグリーンシートの第2の領域と補助層の表面との少なくとも一方の領域に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシートがずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【0016】
本発明の積層電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出した第1の領域に、セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の積層電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、セラミックグリーンシートの第1の主面において電極パターンから露出した第1の領域に、セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、補助層の表面、及び、第1の主面に対向する第2の主面において第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の積層電子部品の製造方法では、積層工程において、補助層の表面に凹凸が形成された単位積層シートを積層する。よって、互いに接触し合う単位積層シートの少なくとも一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合う単位積層シートがずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。また、ラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層をセラミックグリーンシートの第1の領域に形成することにより、溶剤がセラミックグリーンシートの樹脂成分を溶かして、補助層の表面に凹凸が形成される。よって、補助層を形成すると同時に凹凸を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0019】
好ましくは、補助層に含まれる溶剤と電極パターンの樹脂成分とは、非相溶である。この場合、補助層をセラミックグリーンシートの第1の主面上に形成する際に、溶剤が電極パターンに付着したとしても、電極パターンの変形を防止できる。電極パターンは積層電子部品において内部電極として機能するので、電極パターンの変形を防止することにより、積層電子部品において内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、積層電子部品の製造工程において、セラミックグリーンシートの積層ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係る積層コンデンサ(積層電子部品)の構成について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の積層コンデンサ1は、略直方体形状の素子2と、素子2に形成された一対の第1の端子電極3及び第2の端子電極4と、を備える。
【0023】
第1端子電極3と第2の端子電極4とは、素子2の長手方向に対向する一対の端面にそれぞれ形成されている。積層コンデンサ1が基板に実装される際には、素子2の一対の端面と垂直な1つの側面が、基板に対向するように配置される。
【0024】
図2に示すように、素子2は、略直方体形状の誘電体層5と、誘電体層5の内部に互いに平行に配置された第1の内部電極6及び第2の内部電極7とを有している。本実施形態では、素子2は、それぞれ二つの第1の内部電極6と第2の内部電極7とを有している。
【0025】
略四角形状に形成された第1の内部電極6は、一辺が第1の端子電極3の形成された素子2の端面に露出して、第1の端子電極3と機械的かつ電気的に接続されている。略四角形状に形成された第2の内部電極7は、一辺が第2の端子電極4の形成された素子2の端面に露出して、第2の端子電極4と機械的かつ電気的に接続されている。
【0026】
第1の内部電極6と第2の内部電極7とは、誘電体層5の一部を介して交互に積層されている。積層コンデンサ1では、第1の内部電極6と第2の内部電極7とにおいて両者が互いに対向する領域と、誘電体層5において第1と第2の内部電極6,7とが対向する領域に挟まれた領域と、によって主に電気容量特性が発揮される。
【0027】
このような積層コンデンサ1は、以下に説明する第1〜第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法によって製造することができる。
【0028】
(第1の実施形態)
図3〜図6を参照して第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明する。図3は、第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。図4は、第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。図5は、図4(d)に示される単位積層シートの平面模式図である。図6は、図4に続く第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【0029】
第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、最初に、図4(a)に示すように、セラミックグリーンシート10を形成し(ステップS1)、乾燥させる(ステップS2)。セラミックグリーンシート10は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を加えて混合分散することにより得たセラミックスラリーを支持体11上に塗布して形成する。本実施形態では、バインダ樹脂としてOH基を有するものを用いる。例えば、OH基を有するバインダ樹脂として、ブチラールを用いる。なお、乾燥後のセラミックグリーンシート10の厚さは、1〜7μm程度である。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに矩形状の内部電極パターン(電極パターン)12を形成し(ステップS3)、乾燥させる(ステップS4)。内部電極パターン12は、電極ペーストをセラミックグリーンシート10上にスクリーン印刷することにより形成される。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末に樹脂と溶剤等を混合したペースト状の組成物である。電極ペーストに含まれる溶剤は、内部電極パターン形成時にセラミックグリーンシート10の樹脂を溶かさないように、セラミックグリーンシート10の樹脂と非相溶な溶剤である。例えば、電極ペーストに含まれる溶剤として、メンタノールプロピオネート、ターピニルアセテート等を用いる。乾燥後の内部電極パターンの厚さは、1〜2μm程度である。
【0031】
以上のステップS1〜S4によって、セラミックグリーンシート10と、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12と、を有する単位積層シート13が形成される(シート形成工程)。
【0032】
次に、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bのみに凹凸を形成する(ステップS5;凹凸形成工程)。第1の領域10bとは、すなわち、電極ペーストが印刷されていない電極非形成領域である。凹凸を形成するためには、まず、図4(c)に示すように、内部電極パターン12の上面をマスクプレート14で覆い、その上側から溶剤Sをスプレーする。これにより、単位積層シートにおいて第1の領域10bのみに溶剤Sを付着させる。
【0033】
溶剤Sとして、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂と相溶なものを用いる。溶剤Sがセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着すると、シートアタックが起こる。すなわち、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を溶剤Sが溶かすので、図4(d)及び図5に示すように、第1の領域10bが荒れて凹凸が形成される。
【0034】
溶剤Sは、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を構成するOH基と水素結合を起こし、バインダ樹脂を溶かす。溶けたバインダ樹脂が下方に移動することによって、グリーンシート10の第1の領域10bに凹凸が形成される。溶剤Sとして、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、IPA(イソプロピルアルコール)等を用いることができる。
【0035】
溶剤Sの種類を選択したり、その濃度及び量を調整することにより、形成する凹凸の度合いを調整することができる。好ましい凹凸の度合いとしては、JISB0601に基づく、10点平均粗さであるRzが0.3μmから2.5μm程度である。
【0036】
続いて、図6に示すように、凹凸が形成された単位積層シート13から支持体11を剥離し、複数の単位積層シート13を積層する(ステップS6;積層工程)。本実施形態では、4つの単位積層シート13A〜13Dと1つのセラミックグリーンシート10Eを積層している。
【0037】
単位積層シート13Aに含まれるセラミックグリーンシート10Aの第1の主面10aと単位積層シート13Bに含まれるセラミックグリーンシート10Bの第1の主面10aに対向する第2の主面10cが接触して、積層されている。セラミックグリーンシート10Aの第1の主面10aにおける第1の領域10bには凹凸が形成されているので、セラミックグリーンシート10Aとセラミックグリーンシート10Bとの接触面において、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。従って、単位積層シート13Aに含まれる内部電極パターン12Aと単位積層シート13Bに含まれる内部電極パターン12Bとの相対的な位置関係もずれないように積層することができる。
【0038】
同様に、セラミックグリーンシート10Bと単位積層シート13Cに含まれるセラミックグリーンシート10Cとの接触面において、セラミックグリーンシート10Bの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。同様に、セラミックグリーンシート10Cと単位積層シート13Dに含まれるセラミックグリーンシート10Dとの接触面において、セラミックグリーンシート10Cの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。
【0039】
同様に、セラミックグリーンシート10Dとその上に積層されたセラミックグリーンシート10Eとの接触面において、セラミックグリーンシート10Dの第1の領域10bに形成された凹凸により、積層方向と垂直方向へのずれが防止される。このように、セラミックグリーンシート10には、積層される際に他のセラミックグリーンシート10と接触する部分に凹凸が形成されているので、積層ずれを防止することができる。従って、内部電極パターン12Aと、内部電極パターン12Bと、単位積層シート13Cに含まれる内部電極パターン12Cと、単位積層シート13Dに含まれる内部電極パターン12Dとの相対的な位置関係もずれないように積層することができる。
【0040】
以上のように単位積層シート13を積層して積層体15を得た後に、図6に示す切断線Lに沿って切断することにより、積層チップ体を形成する。その後、積層チップ体を加熱して、乾燥、脱バインダ、及び焼成を行う。焼成後、積層チップ体の外表面に第1及び第2の端子電極3,4を形成する。
【0041】
内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第1の端子電極3に電気的に接続された内部電極が第1の内部電極6となる。内部電極パターンが焼成されて形成された内部電極のうち、第2の端子電極4に電気的に接続された内部電極が第2の内部電極7となる。積層されたセラミックグリーンシート10は焼成されることにより、素体2となり、誘電体としての機能を発揮する。このようにして積層コンデンサ1が製造される。
【0042】
以上説明した本実施形態の積層コンデンサの製造方法によれば、積層工程において、セラミックグリーンシート10の第1の領域10bに凹凸が形成された単位積層シート13を積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10の一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0043】
本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシート10に含まれるバインダ樹脂と相溶な溶剤Sをセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着させることにより、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂が溶剤Sに溶けて、セラミックグリーンシートの表面に凹凸が形成される。このように、溶剤Sを付着することで凹凸を形成するので、凹凸を形成する領域を精度よく設定できる。また、溶剤Sの成分又は量を調整することにより、凹凸度合いを容易に調整することができる。
【0044】
ところで、セラミックグリーンシート10の積層ずれを防止するために、セラミックグリーンシート10の第1の主面10a全体に凹凸を形成することも考えられる。この場合、積層時に内部電極パターンと接する領域全体に凹凸が形成されることとなる。すると、内部電極パターンに挟まれた領域に凹凸が形成されることとなり、製造された積層コンデンサにおいては、第1と第2の内部電極に挟まれた誘電体層が変形することとなる。誘電体層において内部電極に挟まれた領域は、積層コンデンサとしての特性を主に発揮する領域であるので、この領域が変形すると、特性の低下、ショートの発生、耐電圧の低下等の問題が生じる。
【0045】
それに対して、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出する第1の領域10bのみに凹凸を形成する。よって、図6に示すように、単位積層シート13を積層した際に、内部電極パターン12に挟まれた領域Fには凹凸は形成されない。よって、積層コンデンサ1においても、第1と第2の内部電極6,7に挟まれた誘電体層5の領域Fは変形せず、積層コンデンサとしての特性を低下させることはない。
【0046】
更に、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、電極ペーストに含まれる溶剤とセラミックグリーンシート10の樹脂とは、非相溶である。この場合、内部電極パターン12をセラミックグリーンシート10の第1の主面10a上に形成する際に、電極ペーストに含まれる溶剤によって、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aに凹凸が形成されるのを防止できる。セラミックグリーンシート10において電極ペーストが印刷される領域は、積層コンデンサ1において内部電極と挟まれた領域を含む。よって、誘電体層5において第1と第2の内部電極6,7に挟まれた領域の変形を防止して、積層コンデンサ1の特性が低下することを防止できる。
【0047】
また、本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、溶剤Sは、内部電極パターン12に含まれる樹脂と非相溶であるので、溶剤Sによる内部電極パターン12の変形を防止できる。内部電極パターン12は積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極6,7となる。すなわち、内部電極パターン12の変形を防止することにより、第1及び第2の内部電極6,7の変形によって積層コンデンサ1の特性が低下することを防止できる。
【0048】
第1の実施形態は、種々の変形が可能である。
【0049】
上記の第1の実施形態では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aの第1の領域10bのみに凹凸を形成するとしたが、図7に示すように、第2の主面10cにおいて第1の領域10bに対向する第2の領域10dにも凹凸を形成してもよい。すなわち、第1の領域10b及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0050】
この場合、第1の領域10bのみに溶剤Sを付着させ、第1の領域10bのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート10の樹脂を多く溶かす。溶剤Sが第2の領域10dまで浸透して第2の領域10dを溶かすことにより、第2の領域10dにも凹凸が形成される。
【0051】
この場合も上記第1の実施形態と同様に、積層工程において、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10の双方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0052】
上記の第1の実施形態では、セラミックグリーンシート10に凹凸を形成する際に溶剤Sを用いたが、セラミックグリーンシート10の第1の領域10bのみ又は第1の領域10b及び第2の領域10dのみ又は第2の領域10dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
図8を参照して第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明する。図8は、第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、凹凸形成工程が、第1の実施形態に係る積層コンデンサ1の製造方法と異なる。
【0054】
第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、第1の実施形態の場合のステップS1〜S4と同様にして、セラミックグリーンシート10とセラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート13を形成する(シート形成工程)。
【0055】
次に、第2の実施形態における凹凸形成工程では、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bに、補助層16を形成する。補助層16は、第1の主面10aと内部電極パターン12との段差を解消するために形成するものである。補助層16を形成するためのセラミックスラリーは、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を含む。補助層16に含まれるバインダ樹脂は、例えば、セルロース系樹脂である。
【0056】
補助層16に含まれる溶剤は、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂と相溶なものを用いる。補助層16を第1の領域10bに形成する際に、補助層16に含まれる溶剤がセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに付着すると、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を補助層16に含まれる溶剤が溶かす。第1領域10b上のバインダ樹脂が溶けて下方に落ち込むことにより、図8(c)に示すように、補助層16の表面16aのみに凹凸が形成される。
【0057】
補助層16に含まれる溶剤は、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を構成するOH基と水素結合を起こす。また、補助層16に含まれる溶剤は、補助層16形成時に内部電極パターン12を溶かさないように、内部電極パターン12に含まれる樹脂と非相溶なものを用いる。例えば、補助層16の溶剤として、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等を用いることができる。補助層16の溶剤の種類を選択したり、その濃度及び量を調整することにより、形成する凹凸の度合いを調整することができる。好ましい凹凸の度合いとしては、JISB0601に基づく、10点平均粗さであるRzが0.3μmから2.5μm程度である。
【0058】
その後、積層工程では、補助層16及び凹凸が形成された複数の単位積層シート13を積層して積層体15を形成する。
【0059】
第2の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、積層工程において、補助層16の表面16aに凹凸が形成された単位積層シート13を積層する。よって、互いに接触し合う単位積層シート13の一方に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合う単位積層シート13がずれるのを抑制することができる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0060】
また、セラミックグリーンシート10に含まれるバインダ樹脂と相溶な溶剤を用いて補助層16をセラミックグリーンシート10の第1の領域10bに形成することにより、溶剤がセラミックグリーンシート10のバインダ樹脂を溶かして、補助層16の表面16aに凹凸が形成される。よって、補助層16を形成すると共に凹凸を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0061】
本実施形態の積層コンデンサの製造方法では、補助層16に含まれる溶剤と内部電極パターン12の樹脂成分とは、非相溶である。この場合、補助層16をセラミックグリーンシート10の第1の主面10a上に形成する際に、補助層16に含まれる溶剤が内部電極パターン12に付着したとしても、内部電極パターン12の変形を防止できる。内部電極パターン12は積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極として機能するので、内部電極パターン12の変形を防止することにより、積層コンデンサ1において第1及び第2の内部電極の変形による特性の低下を防止できる。
【0062】
第2の実施形態は、種々の変形が可能である。
【0063】
上記の第2の実施形態では、補助層16の表面16aのみに凹凸を形成するとしたが、図9に示すように、第2の主面10cにおいて第1の領域10bに対向する第2の領域10dにも凹凸を形成してもよい。すなわち、補助層16の表面16a及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0064】
この場合、補助層16を形成するセラミックスラリーに含ませる溶剤として、補助層16の表面16aのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート10のバインダ樹脂をより多く溶かす。これにより、補助層16を形成するセラミックスラリーに含まれた溶剤が第2の領域10dまで浸透して第2の領域10dを溶かすことにより、第2の領域10dにも凹凸が形成される。
【0065】
この場合、積層工程において、互いに接触し合う単位積層シート13のセラミックグリーンシート10の一部又は補助層16の表面16aに凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート10の積層ずれを抑制することができる。
【0066】
上記の第2の実施形態では、セラミックグリーンシート10に凹凸を形成するために、補助層16に含まれる溶剤を用いたが、補助層16の表面16aのみ又は補助層16の表面16a及び第2の領域10dのみ、又は第2の領域10dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0067】
この場合、図10に示す手順で積層コンデンサ1を製造する。まず、第1の実施形態の場合のステップS1〜S4と同様にして、セラミックグリーンシート10とセラミックグリーンシート10の第1の主面10aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート13が形成される(ステップS11〜14;シート形成工程)。
【0068】
次に、セラミックグリーンシート10の第1の主面10aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域10bに、補助層16を形成する(ステップS15;補助層形成工程)。その後、第2の領域10bのみ、又は、補助層16の表面16aのみ、又は、第2の領域10b及び補助層16の表面16aのみに、金型を用いて凹凸を形成する(ステップS16;凹凸形成工程)。続いて、積層工程では、補助層16及び凹凸が形成された複数の単位積層シート13を積層して積層体を形成する(ステップS17)。
【0069】
(第3の実施形態):
図11及び図12を参照して第3の実施形態に係る積層コンデンサ1の製造方法を説明する。図11は、第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。図12は、第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。上記第1及び第2の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、単位積層シート13を形成する際に、セラミックグリーンシート10を形成し、その第1の主面10aに内部電極パターン12を形成した。第3の実施形態の積層コンデンサの製造方法では、単位積層シート13を形成する際に、内部電極パターン12を形成した上に、セラミックグリーンシート10を形成する。
【0070】
第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法では、最初に、図12(a)に示すように、支持体11上に矩形状の内部電極パターン12を形成し(ステップS21)、乾燥させる(ステップS22)。内部電極パターン12は、電極ペーストを支持体11上にスクリーン印刷することにより形成される。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末に樹脂と溶剤等を混合したペースト状の組成物である。
【0071】
次に、図12(b)に示すように、内部電極パターン12を覆うようにセラミックグリーンシート17を形成し(ステップS23)、乾燥させる(ステップS24)。セラミックグリーンシート17は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂、溶剤、及び可塑剤等を加えて混合分散することにより得たセラミックスラリーを支持体11上に塗布して形成する。セラミックグリーンシート17に含まれるバインダ樹脂として、第1の実施形態と同様な樹脂を用いることができる。
【0072】
以上のステップS21〜ステップS24によって、セラミックグリーンシート17とセラミックグリーンシート17の第1の主面17aに位置する内部電極パターン12とを有する単位積層シート18が形成される(シート形成工程)。
【0073】
次に、セラミックグリーンシート17の第1の主面17aにおいて内部電極パターン12から露出した第1の領域17bと対向する領域であって、第1の主面17aと対向する第2の主面17c上の第2の領域17dのみに凹凸を形成する(ステップS25;凹凸形成工程)。凹凸を形成するためには、まず、図12(c)に示すように、第1の主面17aにおいて、内部電極パターン12が形成された領域に対向する領域をマスクプレート19で覆い、その上側から溶剤Sをスプレーする。これにより、単位積層シート18において第2の領域17dのみに溶剤Sを付着させる。
【0074】
溶剤Sとして、セラミックグリーンシート17の樹脂と相溶なものを用いる。溶剤Sがセラミックグリーンシート17の第2の領域17dに付着すると、セラミックグリーンシート17の樹脂を溶剤Sが溶かすので、図12(d)に示すように、第2の領域17dが荒れて凹凸が形成される。溶剤Sは、OH基を含んで構成され、セラミックグリーンシート10の樹脂を構成するOH基と水素結合を起こす。例えば、溶剤Sとして、エタノール、メタノール、n−プロパノール、IPA(イソプロピルアルコール)等を用いることができる。続いて、凹凸が形成された単位積層シート18から支持体11を剥離し、複数の単位積層シート18を積層し、積層体15を形成する(ステップS26;積層工程)。
【0075】
以上説明した本実施形態の積層コンデンサの製造方法によれば、積層工程において、セラミックグリーンシート17の第2の領域17dに凹凸が形成された単位積層シート18を積層する。よって、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17の一方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート10がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート17の積層ずれを抑制することができる。
【0076】
上記の第3の実施形態では、セラミックグリーンシート17の第2の主面17cの第2の領域17dのみに凹凸を形成するとしたが、図13に示すように、第1の主面17aの第1の領域10bにも凹凸を形成してもよい。すなわち、第1の領域10b及び第2の領域10dのみに凹凸を形成してもよい。
【0077】
この場合、第2の領域17dのみに溶剤Sを付着させて、第2の領域17dのみに凹凸を形成する場合より、セラミックグリーンシート17のバインダ樹脂を多く溶かす。溶剤Sが第1の領域17bまで浸透して第1の領域17bを溶かすことにより、第1の領域17bにも凹凸が形成される。
【0078】
この場合、積層工程において、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17の双方の面の一部に凹凸が形成されることとなる。この凹凸により、互いに接触し合うセラミックグリーンシート17がずれるのを抑制できる。従って、セラミックグリーンシート17の積層ずれを抑制することができる。
【0079】
上記の第3の実施形態では、セラミックグリーンシート17に凹凸を形成する際に溶剤Sを用いたが、セラミックグリーンシート17の第2の領域17dのみ又は第1の領域17b及び第2の領域17dのみ、又は第2の領域17dのみに凹凸を形成すればよく、その方法は上記に限られない。例えば、金型を用いて凹凸を形成してもよい。
【0080】
上記第1〜第3の実施形態では、本発明の積層電子部品の製造方法として積層コンデンサ1の製造方法を説明したが、本発明の積層電子部品の製造方法の対象は積層コンデンサに限られない。本発明の積層電子部品の製造方法の対象は複数のセラミックグリーンシートを積層して製造する積層電子部品であればよく、バリスタ、インダクタ、又はそれらを含む複合電子部品でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】図1の積層コンデンサの断面模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図4】第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図5】図4(d)に示される単位積層シートの平面模式図である。
【図6】図4に続く第1の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図7】第1の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図9】第2の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図10】第2の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図11】第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を示すフロー図である。
【図12】第3の実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【図13】第3の実施形態の変形例に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための断面模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1…積層コンデンサ(積層電子部品)、10,10A〜10E,17…セラミックグリーンシート、10a,17a…第1の主面、10b,17b…第1の領域、10c,17c…第2の主面、10d,17d…第2の領域、12,12A〜12D…内部電極パターン(電極パターン)、13,13A〜13D,18…単位積層シート、16…補助層、16a…表面、S…溶剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項2】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に対向する第2の領域であって、前記第1の主面に対向する第2の主面上の前記第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項3】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域、及び、前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記凹凸形成工程は、前記セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を前記第1の領域又は前記第2の領域に付着させることにより、凹凸を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤は、前記電極パターンに含まれる樹脂成分と非相溶であることを特徴とする請求項4記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記シート形成工程は、前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面上に電極ペーストを塗布することにより前記電極パターンを形成し、
前記電極ペーストに含まれる溶剤と前記セラミックグリーンシートの樹脂成分とは、非相溶であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項7】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項8】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項9】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域、及び、前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項10】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出した第1の領域に、前記セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項11】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出した第1の領域に、前記セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、前記補助層の表面、及び、前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記溶剤と前記電極パターンの樹脂成分とは、非相溶であることを特徴とする請求項10又は11に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項1】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項2】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に対向する第2の領域であって、前記第1の主面に対向する第2の主面上の前記第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項3】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域、及び、前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記凹凸形成工程は、前記セラミックグリーンシートに含まれる樹脂成分と相溶な溶剤を前記第1の領域又は前記第2の領域に付着させることにより、凹凸を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤は、前記電極パターンに含まれる樹脂成分と非相溶であることを特徴とする請求項4記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記シート形成工程は、前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面上に電極ペーストを塗布することにより前記電極パターンを形成し、
前記電極ペーストに含まれる溶剤と前記セラミックグリーンシートの樹脂成分とは、非相溶であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項7】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項8】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項9】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出する第1の領域に補助層を形成する補助層形成工程と、
前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域、及び、前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において凹凸が形成され、且つ、前記補助層形成工程において前記補助層が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項10】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出した第1の領域に、前記セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、前記補助層の表面のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項11】
セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの第1の主面に位置する電極パターンと、を有する単位積層シートを形成するシート形成工程と、
前記セラミックグリーンシートの前記第1の主面において前記電極パターンから露出した第1の領域に、前記セラミックグリーンシートの樹脂成分と相溶な溶剤を用いて補助層を形成することにより、前記補助層の表面、及び、前記第1の主面に対向する第2の主面において前記第1の領域に対向する第2の領域のみに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記補助層及び凹凸が形成された複数の単位積層シートを積層する積層工程と、
を備えることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記溶剤と前記電極パターンの樹脂成分とは、非相溶であることを特徴とする請求項10又は11に記載の積層電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−244153(P2008−244153A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82659(P2007−82659)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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