説明

積載荷重変化に対応した小柱及び仕切付き樹脂棚板付組立棚

【課題】曲げ剛性の小さい樹脂製の棚板であってもたわむことなく使用でき、しかも釘等を使わずに容易かつ安全に組み立てることのできる組立棚を提供することを課題とする。
【解決手段】支柱2と、該支柱2を連結するビーム3及び上下の奥行桟4、5と、棚板9の長手方向の両端部を支持する第一の棚受6と、を備え、棚板9の長手方向の中間部を支持する不図示の第二の棚受を取付け可能に配設された、1対または複数組の小柱7aを備えることを特徴とし、さらに、支柱及びビーム等に母材の一部を突出させて構成された不図示のスリットを設けることを特徴とする。これにより、長尺の樹脂製棚板のたわみ防止を可能として樹脂製棚板の使用を可能とし、組立棚の軽量化と容易かつ安全な組立てを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の備品等を保管する組立式の棚に関し、特に、積載荷重変化に対応した小柱及び仕切付き樹脂棚板付組立棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組立棚は重量物を載せる部分である棚板の強度の関係から、棚板の材質がほぼ決まってしまっていた。すなわち、棚全体の重量が問題とならない場合は、棚全体が金属、主として鉄鋼板で製作されるのが通常であり、当然棚板も鉄鋼板で製作されていた。これに対して、棚全体の重量が問題となる場合、例えば、棚の設置場所が事務所内であるとか、組み立てが屋外で行われる等の理由でクレーン等の運搬機械がない場合は、個々の部材、特に重量物である棚板の運搬が困難となるため、アルミ製の棚板が用いられることさえもあった。
【0003】
上記のような場合に限らず、一般的に同程度の棚板の強度が確保されれば、棚の全重量は軽いほうが望ましい。これは床面に与える負担から考えても当然のことである。そこで、従来から組立棚の重量軽減策として、上記の棚板の軽量化と、強度部材である支柱やビームの軽量化が行われてきた。
【0004】
棚板については、上記アルミ製の棚板の替わりにさらに軽量の樹脂製の棚板を用いるものもある(特許文献1)。樹脂製棚板には、上記鉄鋼製棚板で大きな問題となっていた、特に船での移送時の塗装の剥げ及び劣化や、錆の発生が防止できるという利点がある。また、組立て時に鋭利な部位で怪我をするようなことがなく、軽量で容易に組立てることができ、上記のように表面状態が劣化することもないため、商品等にもやさしい棚板であるといえる。
また、支柱やビームについては、強度部材であり、軽量化のために材質を変更して大幅に強度を落とすことはできないため、SPCC等の普通鉄鋼を用い、支柱にはビームの取付け用孔を兼ねた孔を数多く加工し、ビームにはこの取付け用孔に係合する突起を設けるといった対策が行われていた。
【特許文献1】特開平10−313954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記樹脂製の棚板には、曲げ剛性が小さいため、重量物を載置すると棚の中央が大きくたわんでしまう欠点がある。また、支柱やビームについては、十分な軽量化が困難であることに加えて、ボルト、ナットや釘等を使用する組み立て作業が容易でな
く、また、孔部や突起部で怪我をするおそれや、突起部が打撃により変形する問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決し、曲げ剛性の小さい樹脂製の棚板であってもたわむことなく使用でき、しかもボルトナットや釘等を使わずに容易かつ安全に組み立てることのできる組立棚を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、支柱と、該支柱を連結するビーム及び上下の奥行桟と、棚板の長手方向の両端部を支持する第一の棚受とを備え、棚板の長手方向の中間部を支持する第二の棚受を取付け可能に配設された、1対または複数組の小柱を備えることを特徴とする。これにより、上記小柱を用いて上記棚板の中央部に棚受けを配設することにより、長尺の樹脂製棚板のたわみ防止を可能とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、さらに、上記棚板は樹脂製であることを特徴とする。これにより、上述した多くの利点を持つ樹脂性棚板を重量物に対しても使用することが可能となり、同時に組立棚の軽量化を図ることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、さらに、上記小柱は、上記ビームに設けられた等間隔に配備された専用の取付け用孔に挿入されることにより、上記ビームに取付けられることを特徴とする。これにより、小柱を容易にビームに固定し、また容易にビーム上で移動させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、さらに、上記支柱には母材の一部を凹ませて構成された第一のスリットが設けられ、該スリットに上記ビーム、上下の奥行桟及び第一の棚受に各々設けられた母材の一部を突出させて構成された第二のスリットを挿入することにより、上記支柱と上記ビーム、上下の奥行桟及び第一の棚受とが各々結合されることを特徴とする。これにより、釘等を一切使わずに容易かつ安全に組立棚を組立てることができ、運搬時の打撃等によるビーム等の突出部の変形も防止できる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、さらに、上記第一のスリットは、板材に描かれた羽子板形状の、幅広の上辺と幅狭の下辺とを除く両側の部分が板材と切り離され、中央部分が上記板材と平行な台形の縦断面形状となるように、板材から羽子板形状部が突出して構成され、これに係合する上記第二のスリットは、上記第一のスリットと同様に構成され、上記第一のスリットよりも羽子板形状の上辺、及び上下辺間の距離を短く構成することにより、上記第二のスリットの縦断面が台形形状の凸部を、上記第一のスリットの縦断面が台形形状の凹部に挿入し、その後下辺方向に移動させることで上記2つのスリットの係合により部材の結合を可能としたことを特徴とする。これにより、組立棚を容易かつ安全に、しかも強固に組立てることができ、さらに支柱の曲げ剛性を保つことができるため、支柱を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組立棚は、実用上支障のない小柱を設置することにより、大幅な軽量化を実現し、しかも、上述のようなスリットを用いることにより、ネジ等を用いずに短時間で容易かつ安全に、しかも強固に組立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、本組立棚の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す組立棚の斜視図である。組立棚1は、四隅に配置された支柱2と、各支柱2の間を連結するビーム3、上側奥行桟4、下側奥行桟5及び棚受6とを用いて組立てられる。組立棚1の段数は本実施例では5段であるが、段数や、各段の高さは任意であり、後述するように、最上段、最下段以外は棚板の種類によってはビーム3も不要となる。
【0014】
組立棚1には、ビーム3が最下段、第3、4段及び最上段に、棚受6が第2段に配設され、最下段、第3、4段及び最上段には金属製棚板10が、第2段には樹脂製棚板9が配置されている。
【0015】
組立棚1の中央部には、縦に一対の小柱7aが配設され、第3段には短尺の小柱7bが縦に2対配設されている。図示していないが、樹脂製棚板9は中間部で、2本の小柱7a間に渡された後述する小柱棚受(図5)によって支持されている。また、最下段、第1、2段には、小柱7a間あるいは小柱7b間に支持された仕切板11が設置されている。
【0016】
支柱2は、SPCC等の材質の金属板を曲げ加工して作製され、図2に示すように、その前面に縦に2列に支柱スリット12(第一のスリット)が設けられており、縦方向に並んだ支柱スリット12の間には支柱係合孔14が設けられている。支柱2は横断面がコの字形状であり、両側面にも各々支柱スリット12及び支柱係合孔14が縦に1列同様に配設されている。
【0017】
ビーム3もSPCC等の材質で作製され、図2に示すように、その両端部に縦に2つビームスリット13(第二のスリット)が設けられ、その間にビーム係合孔15が設けられている。ビーム3の上端部には金属性棚板10を載置するための棚受片が設けられている。
【0018】
支柱スリット12は、図2及び図3(a)に示すように、支柱2の表面に設けられた羽子板形状の凹部である。プレス加工により、板材に描かれた羽子板形状の、幅広の上辺と幅狭の下辺とを除く両側の部分だけが板材と切り離され、図3のC−C断面に示すような中央部分が上記板材と平行な台形の縦断面形状となるように、板材から羽子板形状部を突出させて形成される。この突出部は、上記羽子板形状の上辺と下辺の部分で板材と繋がっている。図2及び図3(b)に示すビームスリット13についても同様の形成方法であるが、羽子板形状の上辺と縦寸法を支柱スリット12よりも短くすることで、図2(b)、図4に示すようにビームスリット13の凸部を支柱スリット12の凹部に挿入して係合させることが可能となる。
【0019】
図1に示す上側奥行桟4、下側奥行桟5及び棚受6の場合においても、各部材に設けられたビームスリット13を、支柱2の支柱スリット12に上記と同様にして係合させることで支柱2と結合される。
【0020】
小柱7a及び7bは、ビーム3に設けられた専用の貫通孔(図示せず)に挿入されることで、ビーム3に固定される。さらに、組立棚1の中央部に立設される長尺の小柱7aには、図5に示すように、第2段の9樹脂性棚板の長手中央部を支持する小柱棚受8が取付けられる。小柱棚受8は、両端部に設けられた係合孔17を、小柱7aに設けられた係合孔16に合わせてストッパを挿入することで、小柱7aと結合される。
【0021】
さらに組立棚1には、図1の最下段、第2、3段に示すように、上記小柱7aあるいは7bを利用して仕切板11を取付けることができる。
【0022】
次に、上記構成の組立棚1の機能について以下に説明する。まず、小柱7aの機能について説明する。
上記構成の小柱7aは、通常、物品を棚に載置する際の邪魔にしかならないため、この設置が考慮されることはなかったが、本発明の小柱7aは、元々サイズの小さなものに対象を限った棚について取り付ければよく、特に不利益はない。小柱7bについても同様である。以下に、この小柱7aの設置に関し、改めて従来の組立棚との相違について詳しく説明する。
【0023】
本発明の目的の一つは棚の各段に水平に設置される棚板の軽量化である。棚板は通常金属製であって、棚板の重量は通常のサイズの組立棚の総重量の約6割を占めており、棚全体の軽量化に際して最も影響度の大きい部分である。それにもかかわらず、従来、棚板は大幅な軽量化ができなかった。これは、棚板の全長がかなり長くなるため、重量物を載せた場合の曲げ剛性を確保する必要から、どうしても棚板重量を大幅に軽くできなかったことによる。
【0024】
具体的には、棚板を軽くするには、まず材料変更を行う方法が考えられる。そこで、軽量の樹脂等を用いて棚板を作る事が考えられるが、実際に製作してみるとアルミ等の金属と比べて同等の曲げ剛性を得るのは困難であり、その結果、かなり分厚い棚板(補強材のサイズを大きくしたもので、中実の板ではない)としても金属製の棚板と比べて重量物に対する中央部のたわみが大きくなってしまう。
【0025】
従来の組立棚は、以上説明したような事情から、材質変更による大幅な軽量化を実現できずにいた。本発明は、この状況を棚の用途を改めて見直すことで打破したといえる。すなわち、実際の棚の用途としては、長尺の物品を保管することはまれであって、大部分が横幅数10センチ以下の物品であり、多くの場合、効率的な整理を行うために、棚板には上記の数10センチ間隔の仕切り板が設けられていた。これは、大多数の組立棚においては、上記本発明の小柱7aは実用上なんら障害にならないことを意味する。
【0026】
つまり、本発明の小柱7aを備えた組立棚1は、軽量の樹脂製棚板9の中間部を小柱7aに取付けた小柱棚板8で支持できるため、上述した多くの利点を持つ樹脂製棚板9を重量物に対しても使用することを可能にし、棚板、ひいては組立棚1全体の重量を大幅に軽減でき、しかも上述のように、実用上なんら問題がない。それどころか、上記小柱7aを上述の整理用仕切板11の支持用としても利用できるため、使い勝手もよいものとなる。
【0027】
さらに、どうしても長尺物を保管したい場合は、小柱7aを設置せずに従来の形式の棚として用いるという対策の他に、本発明の組立て式棚の最上段の棚板を用いるか、小柱7aを短くして長尺物を載置する段のビーム3までの長さとしてもよい。
【0028】
次に、上記羽子板形状のスリットの機能について説明する。
発明者らは本実施例に示すように、図3において、支柱スリット12の羽子板形状の両側の辺の開き角度A1、A2が各4°、台形形状の斜辺の開き角度A3が90°であって、ビームスリット13の上記に対応するB1、B2が各4°、B3が90°の場合、最もスムーズかつ堅固な係合が実現することを見出した。この場合、図2、図3に示すように、ビームスリット13を一端支柱スリット12に差し入れた後、下方に移動させることで、ビームスリット13の両側の中央下の部分13aが、支柱スリット12の両側中央部12aに強固に係合することにより、支柱2とビーム3がしっかりと結合される。
【0029】
なお、この結合状態を保ち、下方からビーム3に衝撃力が加わっても上記スリットによる係合が外れてしまわないように、ビーム3を支柱2に係合させた後、ビーム係合孔15とこれに当接している支柱係合孔14を貫通するストッパー(図示せず)を挿入する。
【0030】
上記構成のスリット12,13は従来の組立棚において、支柱に対してのビーム等の取付け位置の自由度を増し、軽量化の目的もあって支柱に多数空けられていた貫通孔に対応するものである。しかし、本実施形態においては、従来と異なり、軽量化のメカニズムは、単に穴を空けた分の材料の軽量化というものではない。
【0031】
本実施形態においては、図2、3に示すように、スリット12は、支柱2の板材に貫通孔を設けるのではなく、板材の一部をプレス加工にて台形の窪みをつけて形成される。台形状の断面は、元の板材から分離した部分である。このように、材料が完全に元の板材から分離していないため、この加工による断面2次モーメント(断面係数)は貫通孔の場合と比べて減少幅が小さい。したがって、取付け穴の加工による曲げ剛性の減少についても低く抑えることができるため、元の材料の板圧、板幅を小さくできるため、結果として従来の支柱よりも軽い材料で同等の曲げ剛性を得ることが可能となる。
【0032】
上記構成により、棚板の長手中間部を横棒で支持することができるため、従来は中央が大きくたわんでしまうため重量物を載せることができなかった樹脂製の長尺の棚板を取り付けて、重量物を載せることができる。これにより、組立て式棚の総重量を大幅に軽量化することができる。
【0033】
上記構成のスリットは、従来の取付用孔と異なり、板材の一部をプレス機で窪ませて、切り離さずに残す構成としたものである。これにより、従来の完全に切り離して通常の孔明き部としたものに比較して部材の曲げ剛性の低下を抑制することができ、従来使用されていた部材より板圧、板幅とも小さな部材を使用することを可能にし、組立棚の更なる軽量化を実現できる。
【0034】
さらに上記構成の組立て棚は、従来のように運搬時等にビーム等の突起部が変形することがなく、組立てに際し、釘やビス等のネジ類を一切使用しないため、容易かつ安全に、しかも強固に組立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の組立棚の一実施例を示す全体斜視図である。
【図2】支柱とビームの係合部を示す斜視図であり、(a)は支柱とビームの正面図であり、(b)はこれらのA−A断面及びB−B断面における組立て断面図である。
【図3】(a)は支柱スリットの正面図及びC−C断面図であり、(b)はビームスリットの正面図及びD−D断面図である。
【図4】支柱スリットとビームスリットの係合部を示す正面図及びE−E断面図である。
【図5】小柱と小柱棚受けの係合部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 組立棚
2 支柱
3 ビーム
4 上側奥行桟
5 下側奥行桟
6 棚受
7 小柱
8 小柱棚受
9 樹脂製棚板
10 金属製棚板
11 仕切板
12 支柱スリット
13 ビームスリット
14 支柱係合孔
15 ビーム係合孔
16 小柱係合孔
17 小柱棚受け係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、該支柱を連結するビーム及び上下の奥行桟と、
棚板の長手方向の両端部を支持する第一の棚受と、を備え、
棚板の長手方向の中間部を支持する第二の棚受を取付け可能に配設された、1対または複数組の小柱を備える
ことを特徴とする組立棚。
【請求項2】
上記棚板は樹脂製であることを特徴とする、請求項1に記載の組立棚。
【請求項3】
上記小柱は、上記ビームに設けられた専用の取付用孔に挿入されることにより、上記ビームに取付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の組立棚。
【請求項4】
上記支柱には母材の一部を凹ませて構成された第一のスリットが設けられ、該スリットに上記ビーム、上下の奥行桟及び第一の棚受に各々設けられた母材の一部を突出させて構成された第二のスリットを挿入することにより、上記支柱と上記ビーム、上下の奥行桟及び第一の棚受とが各々結合されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組立棚。
【請求項5】
上記第一のスリットは、板材に描かれた羽子板形状の、幅広の上辺と幅狭の下辺とを除く両側の部分が板材と切り離され、中央部分が上記板材と平行な台形の縦断面形状となるように、板材から羽子板形状部が突出して構成され、これに係合する上記第二のスリットは、上記第一のスリットと同様に構成され、上記第一のスリットよりも羽子板形状の上辺、及び上下辺間の距離を短く構成することにより、上記第二のスリットの縦断面が台形形状の凸部を、上記第一のスリットの縦断面が台形形状の凹部に挿入し、その後下辺方向に移動させることで上記2つのスリットの係合により部材の結合を可能としたことを特徴とする、請求項4に記載の組立棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212414(P2008−212414A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54557(P2007−54557)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(507152877)株式会社アール・エス・ケー (3)
【Fターム(参考)】