説明

空気ばね及び空気ばねの封止方法

【課題】 常に空気ばねの最適な動作が保証されるように、一定のばね特性を有するように構成されている空気ばねを提供する。
【解決手段】 本発明の空気ばねは、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュを含む空気ばねであって、スプリングブッシュ(2)及び/又はダンパブッシュ(3)がそれぞれ、サスペンションとして機能しかつガス充填チャンバ(4)の境界を画定する少なくとも1つのエレメント(2a、3a)を含むものにおいて、封止材(5、6)がエレメント(2a、3a)に取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気ばねに関する。より詳細には、本発明は、スプリングブッシュ(ばね軸受)及び/又はダンパブッシュ(ダンパ軸受)を含み、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュがそれぞれ、懸架装置又はサスペンションとして機能し、かつガス充填チャンバの境界をなす少なくとも1つのエレメントを含む空気ばねに関する。さらに本発明は、空気ばねを封止する方法に関し、スプリングブッシュ(ばね軸受)及び/又はダンパブッシュ(ダンパ軸受)の少なくとも1つのエレメントの表面を粗面化し、封止材をフッ素化又はプラズマ活性化によって活性化し、その封止材を少なくとも1つのエレメントに接着することからなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先に記載した形式の空気ばねは、従来技術において既に公知である。ダンパブッシュ及びスプリングブッシュは、通常、スプリングベローズ中に封入されている空気容積に対して、付加的な振動緩衝、振動減衰をもたらすように機能する。スプリングブッシュは、しばしば空気ばねの継ぎ目に配置され、スプリングブッシュは一方でガス充填チャンバに対向し、もう一方で外部、周囲空間と対向している。ダンパブッシュもスプリングブッシュと同様に配置されている。さらにダンパブッシュは、しばしば加圧充填されたチャンバに完全に封入され、この構成においては、ダンパブッシュの剛性がそのチャンバ内の圧力の影響を受ける。
【0003】
従来技術の空気ばねにおける欠点は、ダンパブッシュ及びスプリングブッシュが、製造時の条件に基づき、製造に条件付けられて、ガスを吸収又は透過する材料から製造されていることにある。ダンパブッシュ及びスプリングブッシュのこのような構造上の性質によって、先に記載した形式の空気ばねを一定のばね特性をもって動作させることは不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、先に記載した形式の空気ばねを、常に空気ばねの最適な動作が保証されるように、一定のばね特性を有するように形成しかつ発展させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明によれば、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュを含む空気ばねであって、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュがそれぞれ、サスペンションとして機能しかつガス充填チャンバの境界を画定する少なくとも1つのエレメントを含むものにおいて、封止材が、エレメントに取り付けられていることを特徴とする空気ばねによって解決される。または空気ばねに関する先の課題は、請求項1の特徴部を有する空気ばねによって解決される。この構成によれば、空気ばねは、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュのエレメントに封止材が取付られていることによって特徴づけられる。
【0006】
本発明によれば、スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュが、ガスの吸収によってその機能について不利な影響を及ぼされるエレメントを含むことが分かった。さらに、これらエレメントがガスを漏出させ、かつそれによって、空気ばね内部の圧力を一定に保つことを保証できないことができないことが分かっている。封止材をエレメントに直接取り付けるという対策を講じることによって、上記問題を解決することができた。本発明によれば、エレメントに取り付けられている封止材が、先に記載した形式の上位概念をなす空気ばねの欠点を選択的に取り除くことが特に分かった。本発明によれば、封止材によって、ガスがエレメント中に侵入し、そのガスがエレメントの剛性に影響を及ぼすことを防止可能であることが分かった。最終的に、封止材によって、ガスが、エレメントを通り抜け、拡散することがあるのを防止できることが分かった。この点で、スプリングブッシュ及びダンパブッシュが空気ばねの動作に不利な影響を及ぼさないということが保証される。したがって空気ばねの申し分のない動作が実現可能であり、先に記載した解決しようとする課題が請求項1に記載の特徴部によって解決される。
【0007】
少なくとも1つのエレメントをエラストマーから形成することが有利である。この具体的な形態は、弾性的な性質を有するエレメントの使用を可能にする。この構成によって、空気ばねの緩衝特性が、使用するエラストマーの弾性的な性質に依存し、その性質を介して調整可能となる。
【0008】
少なくとも1つのエレメントをポリウレタンフォームとして形成することができる。ポリウレタンフォームは、その製品特性に関してよく研究されており、かつ簡単に入手可能である。この点で、ポリウレタンフォームを使用した空気ばねの生産は特に安く実現することができる。
【0009】
封止材をエラストマーから形成することができる。この具体的な形態は、封止材がエレメントと一緒になって、共働して、サスペンションとして機能することを可能にする。この実施形態では、エラストマーと弾性的なエレメントとからなる複合材が、ばね剛性を問題なく調整可能な、組み合わされた複合ばねとして機能し、有利である。
【0010】
封止材を熱可塑性ポリウレタンから形成することができる。熱可塑性ポリウレタンを使用することによって、射出成形又はカートリッジ適用による封止材の施与を可能にする。熱可塑性ポリウレタンはその粘性特性のために特に良好な溶融性を備えているために、封止材のこの施与方法により、突起部及び突出構造に問題なく接合することが可能である。
【0011】
エレメントと封止材の特に固い結合は、接着プロセスによって達成することができる。この実施形態では、一液性ポリウレタン接着剤によって、封止材をエレメントに接着することが特に考えられる。より具体的には、微細な孔を有する微孔性ウレタン(MCU)フォーム又はポリウレタンフォームからなるスプリングブッシュを接着プロセスを介してエラストマーと接合することが考えられる。この構成では、エラストマーは封止材として機能し、かつMCUフォーム又はポリウレタンフォームはダンパブッシュの弾性エレメントとして機能する。さらに、MCUフォーム又はポリウレタンフォームからなるダンパブッシュをエラストマーに接着することが考えられる。
【0012】
封止材を収縮包装フィルムとして形成することができる。この具体的な形態は、封止材によって、わずかな力を適用することにより、エレメントを封入することができる。封止材として収縮包装フィルムを使用するという対策により、フィルムの収縮付着又はフィルムの溶融付着による気密な封止が可能となる。この実施例では、フィルムを熱可塑性ポリウレタンから製造することができる。収縮付着は、ドライヤ、炉、加熱炉又はヒータにより、熱可塑性ポリウレタンの融点を上回る温度まで、フィルムを加熱することによって行うことができる。
【0013】
封止材を吹き付け、適用することができる。この構成では、きわめて具体的に、封止材を射出成形又はカートリッジ適用によって、エレメントに吹き付け、適用することが考えられる。封止材を吹き付け、適用することによって、封止材を細かい割れ目や隙間に入り込ませることが可能となる。この点で、特に確実な封止が実現可能である。
【0014】
封止材の壁厚を2mmとすることができる。この構成では、特に、壁厚2.0 mmのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)エラストマーを封止材として使用することが考えられる。この場合、EPDMは、エチレン、プロピレン及びわずかな割合のジエンからなる重合体を表わす。このエラストマーを、一液性ポリウレタン接着剤を利用して、ポリウレタンからなるエレメントに接着することができる。空気ばねを封止するための、この接合方法を、複数のステップで実施することができる。先ずポリウレタン-エラストマーの表面を、機械を利用して粗面化することができる。さらにこのエラストマーを、フッ素化又はプラズマ活性化によって活性化することができる。最後にエラストマー及びポリウレタン-エレメント、ならびに場合によっては、例えば金属からなるその他の構成部品、の接着を行うことができる。壁厚が2mmであることにより、封止材の十分な密度を封止材の十分な安定性において保証することができるために、壁厚が2.0 mmであるエラストマーを使用することは、特に有利であることが判明している。つまりスプリングブッシュ又はダンパブッシュを封止する場合には、封止材に不利な影響を及ぼすことのある力が、作動中に、これらのスプリングブッシュ又はダンパブッシュに加えられることが問題となる。この観点から、封止材は、この力に耐えるための最小壁厚を有することが必要である。
【0015】
空気ばねのスプリングブッシュ及びダンパブッシュを、片側から封止材で封止することも、また両側から封止材で封止することもできる。まったくダンパブッシュ及び/又はスプリングブッシュの剛性に対する要求次第で、片側からの封止が有利である場合も、また両側からの封止が有利である場合も生じる。
【0016】
懸架装置又はサスペンションとして機能するエレメント又は封止材のための使用材料に関連して行なわれる全ての実施形態において、材料が先に記載したものに限定されるということではない。むしろそれとは反対に、種々の材料からなる封止材が取り付けられている種々の材料からなる複数のエレメントを、空気ばねに設けることが考えられる。その場合、エレメントに使用される全ての材料を封止材として使用することもできる。その限りでは、あらゆる材料の組合せが考えられ、可能である。
【0017】
さらに空気ばねを封止する方法に関連した先に記載した課題は、特許請求項11に記載の特徴部によって解決される。すなわち、この構成によれば、空気ばねを封止する方法は、スプリングブッシュ(ばね軸受)及び/又はダンパブッシュ(ダンパ軸受)の少なくとも1つのエレメントの表面を粗面化し、封止材をフッ素化又はプラズマ活性化によって活性化し、その封止材を少なくとも1つのエレメントに接着することからなる。繰り返しを避けるため、この方法の進歩性に関しては空気ばね自体についての実施形態を参照されたい。
【0018】
本発明の教示を有利に構成しかつ発展させるのに、いまや種々の可能性が存在する。これについては一方では特許請求の範囲に記載の下位の請求項の記載を、もう一方では図面に基づく本発明による装置の有利な実施例の以下の説明を参照することができる。図面に基づく有利な実施例の説明に関連して、本教示の一般的に有利な形態及び発展についても説明する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、空気ばね(1)に関し、この空気ばねは、スプリングブッシュ(2)及び/又はダンパブッシュ(3)を含み、スプリングブッシュ(2)及び/又はダンパブッシュ(3)がそれぞれ、サスペンションとして機能するとともにガス充填チャンバ(4)の境界を画定する少なくとも1つのエレメント(2a、3a)を含む。本発明の空気ばねは、最適な動作を保証するという課題を実現するために、封止材(5、6)がエレメント(2a、3a)に取り付けられていることよって特徴づけられる。さらに本発明は、空気ばね(1)を封止する方法に関し、この方法は、スプリングブッシュ(2)及び/又はダンパブッシュ(3)の少なくとも1つのエレメント(2a、3a)の表面を粗面化し、封止材(5、6)をフッ素化又はプラズマ活性化によって活性化し、封止材(5、6)を少なくとも1つのエレメント(2a、3a)に接着することを含む。このような構成の空気ばねは、一定のばね特性を有し、したがって常に最適な動作が保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
各図面は、本発明の構成を概略的に示すものである。
【0021】
図1は、スプリングブッシュ(ばね軸受)2及びダンパブッシュ(ダンパ軸受)3を備えてなる空気ばね1を示す。スプリングブッシュは、懸架装置又はサスペンションとして機能するエレメント2aを含む。ダンパブッシュ3は、懸架装置又はサスペンションとして機能するエレメント3aを含む。これら2つのエレメント2a、3aは、ガス充填チャンバ4の境界を形成している。エレメント2a及びエレメント3aに封止材5、6が取り付けられ、接着されている。
【0022】
エレメント2a及び3aは、ポリウレタンから製造されている。封止材5、6は、エラストマーとして形成されている。封止材5、6は、ポリウレタンからなるエレメント2a、3aに接着されている。
【0023】
図2は、エレメント3aを有するダンパブッシュ3を示す。エレメント3aに封止材6としてエラストマーが接着されている。エレメント3aはMCU-フォーム又はポリウレタンフォームから製造されている。この図に示す実施形態では、ダンパブッシュの左側では、封止材6が、ダンパブッシュの対向面をどちらも封止するようにエレメント3aに取り付けられている。一方ダンパブッシュ3の右側では、封止材6が、ダンパブッシュの片側から封止するようにエレメント3aに取り付けられている。
【0024】
図3は、封止材6として収縮包装フィルムが施与されているエレメント3aを有するダンパブッシュ3を示す。図中、ダンパブッシュ3の左側は、両側で収縮包装フィルムによって封止され、右側は片側だけ封止されている。
【0025】
図4は、ポリウレタンからなるエレメント2aを含むスプリングブッシュ2を示す。エレメント2aに封止材6としてエラストマーが取り付けられ、接着されている。
【0026】
図5は、ポリウレタンから製造されているエレメント2aを含むスプリングブッシュ2を示す。図5の左側は、エレメント2aに接着されているエラストマーが封止材6として機能する様子を示し、図5の右側には、収縮包装フィルムとして形成され、かつエレメント2aに接している封止材6を示す。
【0027】
本発明による教示のさらなる有利な形態及び発展に関して、一方では明細書の全般的な部分、もう一方では添付の特許請求の範囲の記載が参照される。
【0028】
最後に、先に純粋に任意に選択された実施例を、もっぱら本発明による教示を詳論するために利用したが、本発明による教示が、それらの実施例に限定されるものではないことを特に強調しておくこととする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】封止材が取り付けられているダンパブッシュ及びスプリングブッシュを備えてなる空気ばねの断面図である。
【図2】エラストマーが接着されているダンパブッシュの断面図である。
【図3】収縮包装フィルムで封止されているダンパブッシュの断面図である。
【図4】エラストマーが接着されているスプリングブッシュの断面図である。
【図5】収縮包装フィルムによって封止されているスプリングブッシュの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 空気ばね
2 スプリングブッシュ
2a エレメント
3 ダンパブッシュ
3a エレメント
4 ガス充填チャンバ
5 封止材
6 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングブッシュ及び/又はダンパブッシュを含む空気ばねであって、該スプリングブッシュ(2)及び/又は該ダンパブッシュ(3)がそれぞれ、サスペンションとして機能しかつガス充填チャンバ(4)の境界を画定する少なくとも1つのエレメント(2a、3a)を含むものにおいて、
封止材(5、6)が、前記エレメント(2a、3a)に取り付けられていることを特徴とする空気ばね。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエレメント(2a、3a)がエラストマーから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気ばね。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエレメント(2a、3a)がポリウレタンフォームから形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気ばね。
【請求項4】
前記封止材(5、6)がエラストマーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項5】
前記封止材(5、6)が熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項6】
前記封止材(5、6)が前記エレメントに接着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項7】
前記封止材(5、6)が一液性ポリウレタン接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項6に記載の空気ばね。
【請求項8】
前記封止材(5、6)が収縮包装フィルムとして形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項9】
前記封止材(5、6)が吹き付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項10】
前記封止材(5、6)の壁厚が2mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気ばね。
【請求項11】
特に請求項1〜10のいずれか1項に記載の空気ばね(1)を封止する方法であって、
前記スプリングブッシュ(2)及び/又はダンパブッシュ(3)の少なくとも1つのエレメント(2a、3a)の表面を粗面化し、
封止材(5、6)をフッ素化又はプラズマ活性化によって活性化し、
前記封止材(5、6)を少なくとも1つのエレメント(2a、3a)に接着する
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−170450(P2006−170450A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364425(P2005−364425)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(505467708)バイブラコスティック ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】