説明

空気ばね装置

【課題】省スペース化を図りつつ、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限すること。
【解決手段】支持体および被支持体のいずれか一方に連結される上面板部材2、およびいずれか他方に連結される下面板部材3と、これらの両面板部材2、3に両開口端部4a、4bが各別に連結されて封止された筒状膜部材4と、を備え、両面板部材2、3にはそれぞれ、該両面板部材2、3が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両面板部材2、3のこれ以上の変位を規制する第1係合部18、19が各別に設けられ、これらの第1係合部18、19は、両面板部材2、3および筒状膜部材4の間に形成される気体室部S1に配置されている空気ばね装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気ばね装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持体と被支持体との間に配設される空気ばね装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、支持体および被支持体のいずれか一方に連結される上面板部材、およびいずれか他方に連結される下面板部材と、これらの両面板部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材と、を備える構成が知られている。
この空気ばね装置では、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位しようとすると、支持体および被支持体の変位に伴って、両面板部材が水平方向に相対的に変位しようとする。このとき、筒状膜部材が水平方向に変形して該筒状膜部材の水平方向のばね特性が発揮され、両面板部材の水平方向への相対的な変位が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−115959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の空気ばね装置では、支持体と被支持体との水平方向への相対的な変位を制限することができないため、当該空気ばね装置を支持体と被支持体との間に配設する場合、支持体と被支持体との水平方向への相対的な変位を制限するストッパ装置やリンク装置などを、当該空気ばね装置とは別に設ける必要があり、多くのスペースが必要であった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、省スペース化を図りつつ、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することができる空気ばね装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る空気ばね装置は、支持体および被支持体のいずれか一方に連結される上面板部材、およびいずれか他方に連結される下面板部材と、これらの両面板部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材と、を備える空気ばね装置であって、前記両面板部材にはそれぞれ、該両面板部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両面板部材のこれ以上の変位を規制する第1係合部が各別に設けられ、これらの第1係合部は、前記両面板部材および前記筒状膜部材の間に形成される気体室部に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、両面板部材に第1係合部が各別に設けられているので、支持体と被支持体との水平方向への相対的な変位に伴って、筒状膜部材が水平方向に変形しながら両面板部材が水平方向に相対的に変位し、第1係合部が互いに係合し合うと、両面板部材のこれ以上の変位が規制される。これにより、筒状膜部材の水平方向への変形を規制して、当該空気ばね装置の水平方向への変形を規制することが可能になり、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することができる。
また第1係合部が、前記気体室部に配置されているので、省スペース化を図ることができる。
【0008】
また、前記下面板部材は、支持体および被支持体のいずれか他方に連結部材を介して連結され、前記下面板部材と前記連結部材とは、補助弾性体により連結され、前記下面板部材および前記連結部材にはそれぞれ、これらの両部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両部材のこれ以上の変位を規制する第2係合部が各別に設けられ、前記上面板部材と前記連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、前記第1係合部同士は、前記第2係合部同士と異なるタイミングで互いに係合し合ってもよい。
【0009】
この場合、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位すると、これらの支持体および被支持体に上面板部材および連結部材が各別に追従して水平方向に変位することに伴って、筒状膜部材が水平方向に変形しながら上面板部材と下面板部材とが水平方向に相対的に変位するとともに、補助弾性体が水平方向に変形しながら下面板部材と連結部材とが水平方向に相対的に変位する。なおこのとき、当該空気ばね装置の水平方向のばね特性として、筒状膜部材および補助弾性体の両方の水平方向のばね特性が発揮される。
【0010】
そして、上面板部材と連結部材とが水平方向に相対的に変位して、第1係合部同士および第2係合部同士がそれぞれ互いに係合し合ったときに、上面板部材と下面板部材とのこれ以上の変位が規制されるとともに、下面板部材と連結部材とのこれ以上の変位が規制され、筒状膜部材および補助弾性体の水平方向への変形が規制される。これにより、当該空気ばね装置全体での水平方向への変形が規制されて、上面板部材と連結部材との水平方向への相対的な変位が規制され、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位が制限される。
【0011】
以上のように、下面板部材および連結部材にそれぞれ、前記第2係合部が各別に設けられているので、第2係合部が互いに係合し合い、補助弾性体の水平方向の変形が規制された状態で、第1係合部が互いに係合し合い、筒状膜部材の水平方向への変形を規制することにより、当該空気ばね装置全体の水平方向への変形が規制され、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することができる。
【0012】
ここで、上面板部材と連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、第1係合部同士が、第2係合部同士と異なるタイミングで互いに係合し合うので、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、第1係合部同士および第2係合部同士のうち、いずれか一方が係合し合いながら、いずれか他方が係合し合わない状態が生じる。この状態では、筒状膜部材および補助弾性体のうちの片方のみが水平方向に変形し、その水平方向のばね特性が発揮されることとなる。
【0013】
以上より、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置の水平方向のばね特性として、筒状膜部材および補助弾性体の両方の水平方向のばね特性が発揮された後、片方の水平方向のばね特性が発揮されることとなり、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位が制限されることとなる。
【0014】
このように、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位が制限されるので、支持体と被支持体との間で当該空気ばね装置を介して水平荷重が伝達されるのを抑制することができる。
【0015】
なお被支持体が、乗員が乗車する車両で、支持体が、車両を支持する台車である場合、前述のように、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することにより、乗員の乗り心地性を向上させることができる。
【0016】
また、前記補助弾性体は、前記筒状膜部材よりも水平方向のばね定数が高い構成とされ、前記上面板部材と前記連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、前記第1係合部同士は、前記第2係合部同士よりも先に互いに係合し合ってもよい。
【0017】
この場合、上面板部材と連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、第1係合部同士が、第2係合部同士よりも先に互いに係合し合うので、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、第1係合部同士が係合し合いながら、第2係合部同士が係合し合わない状態が生じる。この状態では、筒状膜部材および補助弾性体のうち、補助弾性体のみが水平方向に変形し、その水平方向のばね特性が発揮されることとなる。
【0018】
以上より、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置の水平方向のばね特性として、筒状膜部材および補助弾性体の両方の水平方向のばね特性が発揮された後、筒状膜部材および補助弾性体のうち、補助弾性体の水平方向のばね特性のみが発揮されることとなる。ここで補助弾性体が、筒状膜部材よりも水平方向のばね定数が高い構成となっているので、このとき、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位が制限されることとなる。
【0019】
このように、支持体と被支持体とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位が制限されるので、支持体と被支持体との間で当該空気ばね装置を介して水平荷重が伝達されるのを確実に抑制することができる。
【0020】
なお被支持体が、乗員が乗車する車両で、支持体が、車両を支持する台車である場合、前述のように、当該空気ばね装置の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することにより、乗員の乗り心地性を確実に向上させることができる。
【0021】
また、前記連結部材は、前記下面板部材よりも下方に配設され、前記補助弾性体は、上下両側に開口する筒状に形成され、前記第2係合部は、前記下面板部材、前記連結部材および前記補助弾性体の間に形成される弾性体室部に配置されていてもよい。
【0022】
この場合、第2係合部が、前記弾性体室部に配置されているので、省スペース化を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る空気ばね装置によれば、省スペース化を図りつつ、支持体と被支持体との水平方向の相対的な変位を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気ばね装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す空気ばね装置の作用を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る空気ばね装置を説明する。
図1に示すように、空気ばね装置1は、例えば鉄道車両等に採用され、乗員が乗車する図示しない車両(被支持体)と、該車両を支持する図示しない台車(支持体)と、の間に配設される。該空気ばね装置1は、前記台車および前記車両のいずれか一方に連結される上面板部材2、およびいずれか他方に連結される下面板部材3と、これらの両面板部材2、3に両開口端部4a、4bが各別に連結されて封止された筒状膜部材4と、を備えている。
なお上面板部材2、下面板部材3および筒状膜部材4の各中心軸線は、上下方向に沿って延在する共通軸上に配置されている。以下では、この共通軸を軸線Oという。
【0026】
上面板部材2は、例えば金属材料などの剛性材料で形成されている。該上面板部材2は、軸線O上に配設された有頂筒状の大径筒部5と、大径筒部5の外周縁部に立設された立設筒部6と、内周縁部が大径筒部5の外周面に連結された外環部7と、を備えている。これらの大径筒部5、立設筒部6および外環部7は、いずれも軸線Oと同軸に配設されている。また、大径筒部5の頂面には、軸線O上に配設された貫通孔8が形成されている。
【0027】
下面板部材3は、例えば金属材料などの剛性材料で形成されている。該下面板部材3は、軸線O上に位置する中央盤体9と、該中央盤体9の外周縁部に連結された外周環体10と、を備えており、これらの中央盤体9および外周環体10は、いずれも軸線Oと同軸に配設されている。
【0028】
中央盤体9は、軸線O上に配設された有頂筒状の小径筒部12と、該小径筒部12の下端部から水平方向の外側に向けて突設された内連結環部11と、を備えており、これらの小径筒部12および内連結環部11は、軸線Oと同軸に配設されている。
小径筒部12の上端部は、大径筒部5の下端部内に位置し、大径筒部5の下端部により水平方向の外側から、軸線O回りの全周にわたって囲繞されており、小径筒部12の上端部と、大径筒部5の下端部と、の間には、軸線O回りの全周にわたって水平方向の隙間があいている。
【0029】
外周環体10は、内周縁部が中央盤体9の内連結環部11の外周縁部に下方から当接する外連結環部13と、該外連結環部13に立設され内連結環部11に外嵌する外嵌筒部14と、内周縁部が外連結環部13の外周縁部に下方から連結され、内周縁部から外周縁部に向かうに従い漸次、下方に傾斜する上傾斜環部15と、を備えている。これらの外連結環部13、外嵌筒部14および上傾斜環部15は、いずれも軸線Oと同軸に配置されている。
【0030】
また外連結環部13の内周縁部、および中央盤体9の内連結環部11の外周縁部には、いずれもねじ孔16が形成されており、外連結環部13の内周縁部、および内連結環部11の外周縁部は、これらのねじ孔16に上方から差し込まれた固定ボルト17により互いに連結されている。
【0031】
筒状膜部材4は、可撓性を具備しており、例えばゴム材料などの弾性体材料で形成されている。筒状膜部材4の両開口端部4a、4bのうち、上側の上開口端部4aは、上面板部材2の大径筒部5に気密に外嵌されるとともに、上面板部材2の外環部7に下方から当接している。また筒状膜部材4の両開口端部4a、4bのうち、下側の下開口端部4bは、下面板部材3の内連結環部11に外嵌筒部14を介して気密に外嵌されるとともに、下面板部材3の外連結環部13に上方から当接している。
【0032】
また、筒状膜部材4において両開口端部4a、4bの間に位置する中間部分4cは、水平方向の外側に向けて膨出しており、上面板部材2の外環部7に下方から当接するとともに、下面板部材3の外連結環部13に上側、および水平方向の外側から当接している。
ここで、両面板部材2、3および筒状膜部材4の間には、上面板部材2の貫通孔8を通して外部と連通する気体室部S1が形成されている。該気体室部S1内には貫通孔8を通して例えば空気などの気体が給排され、これにより、気体室部S1内の圧力が調整される。
【0033】
そして本実施形態では、両面板部材2、3にはそれぞれ、該両面板部材2、3が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両面板部材2、3のこれ以上の変位を規制する第1係合部18、19が各別に設けられている。これらの第1係合部18、19は、前記気体室部S1に配置されており、本実施形態では、上面板部材2側の第1係合部18は、上面板部材2の大径筒部5により構成され、下面板部材3側の第1係合部19は、下面板部材3の小径筒部12により構成されている。
【0034】
ここで下面板部材3は、該下面板部材3よりも下方に配設された連結部材20を介して、前記台車および前記車両のいずれか他方に連結されている。
連結部材20は、例えば金属材料などの剛性材料で形成されている。該連結部材20は、軸線O上に配設された中央板部21と、内周縁部が中央板部21の外周縁部に連結され、内周縁部から外周縁部に向かうに従い漸次、下方に傾斜する下傾斜環部22と、中央板部21の外周縁部から下方に向けて延設された垂下筒部23と、軸線O上に配設され中央板部21に立設された柱状部27と、を備えている。これらの中央板部21、下傾斜環部22、垂下筒部23および柱状部27は、いずれも軸線Oと同軸に配設されている。
【0035】
下傾斜環部22の内径は、上傾斜環部15の内径より小さくなっているとともに、下傾斜環部22の外径は、上傾斜環部15の内径よりも大きく、かつ上傾斜環部15の外径よりも小さくなっている。
柱状部27の外径は、下面板部材3の内連結環部11の内径よりも小さくなっているとともに、柱状部27の上端部は、内連結環部11内に位置しており、内連結環部11により水平方向の外側から、軸線O回りの全周にわたって囲繞されている。柱状部27の上端部と、内連結環部11の内周縁部と、の間には、軸線O回りの全周にわたって水平方向の隙間があいている。
【0036】
下面板部材3と連結部材20とは、気体室部S1内に気体が充填された状態における筒状膜部材4よりも水平方向および上下方向の各ばね定数が高い補助弾性体24により連結されている。補助弾性体24は、弾性体材料で上下両側に開口する筒状に形成され、下面板部材3により上方から閉塞されるとともに、連結部材20により下方から閉塞されており、本実施形態では、下面板部材3の上傾斜環部15と連結部材20の下傾斜環部22とを連結し、下面板部材3の柱状部27を水平方向の外側から、軸線O回りの全周にわたって囲繞している。さらに補助弾性体24は、軸線Oと同軸に配設されるとともに、上方から下方に向かうに従い漸次、縮径している。
【0037】
また下面板部材3および連結部材20にはそれぞれ、これらの両部材3、20が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両部材3、20のこれ以上の変位を規制する第2係合部25、26が各別に設けられている。これらの第2係合部25、26は、下面板部材3、連結部材20および補助弾性体24の間に形成される弾性体室部S2に配置されており、上面板部材2側の第2係合部25は、下面板部材3の内連結環部11により構成されるとともに、連結部材20側の第2係合部26は、連結部材20の柱状部27により構成されている。
【0038】
次に、以上のように構成された空気ばね装置1の作用について説明する。
前記空気ばね装置1では、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位すると、これらの台車および車両に上面板部材2および連結部材20が各別に追従して水平方向に変位することに伴って、筒状膜部材4が水平方向に変形しながら上面板部材2と下面板部材3とが水平方向に相対的に変位するとともに、補助弾性体24が水平方向に変形しながら下面板部材3および連結部材20が水平方向に相対的に変位する。なおこのとき、当該空気ばね装置1の水平方向のばね特性として、筒状膜部材4および補助弾性体24の両方の水平方向のばね特性が発揮される。
【0039】
そして、上面板部材2と連結部材20とが水平方向に相対的に変位して、図2に示すように、第1係合部18、19同士および第2係合部25、26同士がそれぞれ互いに係合し合う。本実施形態では、上面板部材2の大径筒部5の下端部と、下面板部材3の小径筒部12の上端部と、が、水平方向に互いに当接することにより、第1係合部18、19同士が互いに係合し合う。また、下面板部材3の内連結環部11の内周縁部と、連結部材20の柱状部27の上端部と、が、水平方向に互いに当接することにより、第2係合部25、26同士が互いに係合し合う。
【0040】
すると、上面板部材2と下面板部材3とのこれ以上の変位が規制されるとともに、下面板部材3と連結部材20とのこれ以上の変位が規制され、筒状膜部材4および補助弾性体24の水平方向への変形が規制される。これにより、当該空気ばね装置1全体での水平方向への変形が規制されて、上面板部材2と連結部材20との水平方向への相対的な変位が規制され、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位が制限される。
【0041】
ここで本実施形態では、上面板部材2と連結部材20とが水平方向に相対的に変位したときに、第1係合部18、19同士は、第2係合部25、26同士よりも先に互いに係合し合うように構成されている。なおこのような構成は、例えば、筒状膜部材4や補助弾性体24の水平方向の各ばね定数を調整したり、上面板部材2の大径筒部5の内径と下面板部材3の小径筒部12の外径とを調整したり、下面板部材3の小径筒部12の内径と連結部材20の柱状部27の外径とを調整したり等により実施することができる。
【0042】
そして本実施形態では、このように、上面板部材2と連結部材20とが水平方向に相対的に変位したときに、第1係合部18、19同士が、第2係合部25、26同士よりも先に互いに係合し合うように構成されているので、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、第1係合部18、19同士が係合し合いながら、第2係合部25、26同士が係合し合わない状態が生じる。この状態では、筒状膜部材4および補助弾性体24のうち、補助弾性体24のみが水平方向に変形し、その水平方向のばね特性が発揮されることとなる。
【0043】
以上より、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置1の水平方向のばね特性として、筒状膜部材4および補助弾性体24の両方の水平方向のばね特性が発揮された後、筒状膜部材4および補助弾性体24のうち、補助弾性体24の水平方向のばね特性のみが発揮されることとなる。ここで補助弾性体24が、筒状膜部材4よりも水平方向のばね定数が高い構成となっているので、このとき、当該空気ばね装置1の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位が制限されることとなる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る空気ばね装置1によれば、両面板部材2、3に第1係合部18、19が各別に設けられているので、前記台車と前記車両との水平方向への相対的な変位に伴って、筒状膜部材4が水平方向に変形しながら両面板部材2、3が水平方向に相対的に変位し、第1係合部18、19が互いに係合し合うと、両面板部材2、3のこれ以上の変位が規制される。これにより、筒状膜部材4の水平方向への変形を規制することができる。
【0045】
そして本実施形態では、下面板部材3および連結部材20にそれぞれ、前記第2係合部25、26が各別に設けられているので、第2係合部25、26が互いに係合し合い、補助弾性体24の水平方向の変形が規制された状態で、第1係合部18、19が互いに係合し合い、筒状膜部材4の水平方向への変形を規制することにより、当該空気ばね装置1全体の水平方向への変形を規制することができる。これにより、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位を制限することができる。
【0046】
また第1係合部18、19が、前記気体室部S1に配置されるとともに、第2係合部25、26が、前記弾性体室部S2に配置されているので、省スペース化を確実に図ることができる。
【0047】
また、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置1の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位が制限されるので、前記台車と前記車両との間で当該空気ばね装置1を介して水平荷重が伝達されるのを確実に抑制することができる。
【0048】
さらに本実施形態のように、空気ばね装置1が、車両と台車との間に配設される場合、前述のように、当該空気ばね装置1の水平方向のばね定数を緩やかに段階的に高めた後、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位を制限することにより、乗員の乗り心地性を確実に向上させることができる。
【0049】
また本実施形態では、小径筒部12の上端部が、大径筒部5の下端部により水平方向の外側から、軸線O回りの全周にわたって囲繞されているので、両面板部材2、3が、水平方向のうち、いずれの方向に相対的に変位したときにも、第1係合部18、19同士が互いに係合し合うこととなり、その変位を規制することができる。
【0050】
さらに本実施形態では、柱状部27の上端部が、内連結環部11により水平方向の外側から、軸線O回りの全周にわたって囲繞されているので、下面板部材3と連結部材20とが、水平方向のうち、いずれの方向に相対的に変位したときにも、第2係合部25、26同士が互いに係合し合うこととなり、その変位を規制することができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、上面板部材2と連結部材20とが水平方向に相対的に変位したときに、第1係合部18、19同士が、第2係合部25、26同士よりも先に互いに係合し合うものとしたが、第2係合部25、26同士と異なるタイミングで互いに係合し合うものであれば、これに限られるものではなく、第2係合部25、26同士よりも後に互いに係合し合う構成であってもよい。
【0052】
この場合、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、第2係合部25、26同士が係合し合いながら、第1係合部18、19同士が係合し合わない状態が生じる。この状態では、筒状膜部材4および補助弾性体24のうち、筒状膜部材4のみが水平方向に変形し、その水平方向のばね特性が発揮されることとなる。
【0053】
以上より、前記台車と前記車両とが水平方向に相対的に変位を開始してから、この変位が制限されるまでの間に、当該空気ばね装置1の水平方向のばね特性として、筒状膜部材4および補助弾性体24の両方の水平方向のばね特性が発揮された後、筒状膜部材4および補助弾性体24のうち、筒状膜部材4の水平方向のばね特性のみが発揮されることとなり、当該空気ばね装置1の水平方向のばね定数を段階的に高めた後、前記台車と前記車両との水平方向の相対的な変位が制限されることとなる。
【0054】
また第1係合部18、19は、前記実施形態に示したものに限られず、両面板部材にそれぞれ設けられ、両面板部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両面板部材のこれ以上の変位を規制し、かつ、両面板部材および筒状膜部材の間に形成される気体室部に配置される構成であれば、適宜変更することが可能である。
【0055】
また第2係合部25、26は、前記実施形態に示したものに限られず、下面板部材および連結部材にそれぞれ設けられ、これらの両部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両部材のこれ以上の変位を規制する構成であれば、適宜変更することが可能である。
【0056】
また前記実施形態では、補助弾性体24は、弾性体材料で形成されるものとしたが、これに限られず、例えば積層ゴムにより形成されていてもよい。
さらに前記実施形態では、補助弾性体24は、筒状膜部材4よりも水平方向および上下方向の各ばね定数が高いものとしたが、これに限られない。例えば、補助弾性体24の水平方向のばね定数が、筒状膜部材4の水平方向のばね定数と同等であったり、低かったりしてもよい。また、補助弾性体24の上下方向のばね定数が、筒状膜部材4の上下方向のばね定数と同等であったり、低かったりしてもよい。
【0057】
また前記実施形態では、連結部材20は、補助弾性体24を閉塞しているものとしたが、閉塞していなくても良い。
さらに前記実施形態では、補助弾性体24は、上下両側に開口する筒状に形成されるものとしたが、これに限られない。
さらにまた、前記実施形態では、連結部材20は、下面板部材3よりも下方に配設されているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、連結部材20と下面板部材3とが水平方向にずらされていてもよい。
【0058】
また、下面板部材3には、外嵌筒部14がなくてもよい。
さらに前記実施形態では、空気ばね装置1は、連結部材20、補助弾性体24、および第2係合部25、26を備えているものとしたが、これらはなくてもよい。この場合、下面板部材3は、上傾斜環部15がなくてもよく、また下面板部材3は、中央盤体9および外周環体10のうち、中央盤体9のみにより構成されていてもよい。
【0059】
また前記実施形態では、空気ばね装置1が、被支持体としての前記台車と、支持体として前記車両と、の間に配設されるものとしたが、本発明に係る空気ばね装置は、車両と台車との間に配設されるものに限られない。
【0060】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 空気ばね装置
2 上面板部材
3 下面板部材
4 筒状膜部材
4a、4b 開口端部
18、19 第1係合部
20 連結部材
24 補助弾性体
25、26 第2係合部
S1 気体室部
S2 弾性体室部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および被支持体のいずれか一方に連結される上面板部材、およびいずれか他方に連結される下面板部材と、
これらの両面板部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材と、を備える空気ばね装置であって、
前記両面板部材にはそれぞれ、該両面板部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両面板部材のこれ以上の変位を規制する第1係合部が各別に設けられ、
これらの第1係合部は、前記両面板部材および前記筒状膜部材の間に形成される気体室部に配置されていることを特徴とする空気ばね装置。
【請求項2】
請求項1記載の空気ばね装置であって、
前記下面板部材は、支持体および被支持体のいずれか他方に連結部材を介して連結され、
前記下面板部材と前記連結部材とは、補助弾性体により連結され、
前記下面板部材および前記連結部材にはそれぞれ、これらの両部材が水平方向に相対的に変位したときに互いに係合し合うことにより、該両部材のこれ以上の変位を規制する第2係合部が各別に設けられ、
前記上面板部材と前記連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、前記第1係合部同士は、前記第2係合部同士と異なるタイミングで互いに係合し合うことを特徴とする空気ばね装置。
【請求項3】
請求項2記載の空気ばね装置であって、
前記補助弾性体は、前記筒状膜部材よりも水平方向のばね定数が高い構成とされ、
前記上面板部材と前記連結部材とが水平方向に相対的に変位したときに、前記第1係合部同士は、前記第2係合部同士よりも先に互いに係合し合うことを特徴とする空気ばね装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の空気ばね装置であって、
前記連結部材は、前記下面板部材よりも下方に配設され、
前記補助弾性体は、上下両側に開口する筒状に形成され、
前記第2係合部は、前記下面板部材、前記連結部材および前記補助弾性体の間に形成される弾性体室部に配置されていることを特徴とする空気ばね装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−180913(P2012−180913A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45049(P2011−45049)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】