説明

空気予熱器

【課題】ガスタービン、高温型燃料電池等のエネルギーシステムの起動時に器体内に発生する熱応力を低減することにより、器体の破損等を回避できる空気予熱器を提供する。
【解決手段】加熱用の排ガスを流通させる排ガス通路と、前記排ガス通路と直交する方向から供給される空気を入側ディストリビュータで分配して前記排ガスと平行流となる熱交換流路を形成し、熱交換された前記空気を出側ディストリビュータで分配して前記排ガス通路と直交する方向に排出する空気通路とが積層配置された構成からなる空気予熱器において、前記入側ディストリビュータ、または出側ディストリビュータを前記排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置する。これにより、剛構造であるコーナー部、排ガス通路の入口端および出側ヘッダータンクに大きな温度勾配が生じることを回避し、熱応力を低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン、高温型燃料電池等のエネルギーシステムに用いられる空気予熱器に関し、さらに詳しくは、エネルギーシステムの起動時に器体内に発生する熱応力を低減することにより、器体の破損および変形を防止し、優れた熱交換効率を維持できる空気予熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーの有効利用という観点から分散型エネルギーシステムは、大型発電システムに代わるエネルギーシステムとして有望視されている。分散型エネルギーシステムにはガスエンジン、太陽電池、風力タービンなどの多様な分散型エネルギー変換技術があるが、その中でも、ガスタービン等の熱機関や、化学プロセスを経て燃料から直接発電を行う高温型燃料電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
高温型燃料電池としては、例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下、「SOFC」という)や溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell、以下、「MCFC」という)が挙げられる。また、ガスタービンと高温型燃料電池とを複合化したハイブリッドシステムは、分散電源としての利用を目的とし、その実現に向けて検討が行われている。
【0004】
ガスタービンや高温型燃料電池は、排気ガスの温度が高いことが特徴であることから、熱効率を向上させるために、排ガスの排熱を利用して空気を加熱する再生サイクルを採用することが多い。これらの分散型エネルギーシステムにおいては、排熱回収性能がガスタービンや高温型燃料電池の性能に大きく影響することから、ガスタービンや高温型燃料電池の設計に際し、熱回収効率に優れた高性能の再生熱交換器の使用が必須となる。
【0005】
SOFCやMCFCのような作動温度の高い高温形燃料電池や、ガスタービンでは、再生熱交換器として空気予熱器が使用される。空気予熱器とは、熱効率を高めることを目的として、その排ガスから排熱を回収して、例えば、燃焼用の空気を予熱する熱交換装置であり、管型(チュブラー型)、板型(プレート型)、回転再生式等の形式がある。
【0006】
板型の空気予熱器としては、コルゲートフィンを用いたプレートフィン熱交換器が主流となっている。プレートフィン熱交換器は内部が非常に密な部品で構成されており、これにより単位体積当たりの伝熱面積が高いことを特徴とする。
【0007】
また、ガスタービンや高温型燃料電池では、始動・停止が反復されることから、温度サイクルに対する高い耐久性を備えた空気予熱器の採用が要請されている。
【0008】
熱応力に対する空気予熱器の製品寿命を延ばす手段として、特許文献1には、予熱用熱交換器の保護装置が開示されている。この予熱用熱交換器の保護装置は、高温側流体の一部を、空気予熱器をバイパスさせて、二重管式熱交換器に導き熱交換させることにより、空気予熱器の高温側と低温側の温度差を縮小して、熱疲労を軽減するものである。しかし、特許文献1に記載された発明は、空気予熱器の他に二重管式熱交換器、バイパス管等の設備を設置しなければならず、設備費用を要するという問題がある。
【0009】
また、特許文献2には、プレートフィン型熱交換器において、高温側通路内のフィン全体をろう付することなく、これを低温側通路毎に独立させることにより、例えば、高温の燃焼ガスが流入した際の流体通路内および全体の不均一な温度分布による熱応力を緩和できる構成、いわゆる柔構造を特徴とする構成が提案されている。特許文献2で提案される構成を採用すれば、熱交換器内の拘束箇所を減らすことにより、流体通路内および全体の熱応力を緩和することができる。
【0010】
このように、排ガスと空気の熱交換に使用される空気予熱器には、急激な入熱によって流体通路内に生じる不均一な温度分布、および激しい熱負荷の変動に耐えることができる耐久性を保有しながら熱交換効率を維持することが要求される。
【0011】
【特許文献1】特開平05−105402号公報
【特許文献2】WO01/48432 A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のとおり、空気予熱器には優れた熱交換効率を実現することが要求される。
【0013】
図1は、従来の空気予熱器の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。図1に示す空気予熱器において、高温の排ガスは黒抜き矢印1が示す方向から、排ガス通路の入口端5を通過して、排ガス通路9へ流入する。一方、低温の空気は白抜き矢印3が示す方向から、入側ヘッダータンク7を通過し、入側ディストリビュータ11を介して、前記排ガスと向流する方向に分配されて、空気通路10へ流入する。高温の排ガスと低温の空気とは、互いに熱交換を行い、冷却された排ガスは排ガス通路の出口端6を通過して白抜き矢印2が示す方向へ流出し、加熱された空気は出側ディストリビュータ12を介し、出側ヘッダータンク8を通過して黒抜き矢印4が示す方向へ流出する。
【0014】
従来の空気予熱器では、図1に示すように、熱交換効率を最大限に高めることを目的として、高温流体と低温流体との接触面積を大きくするために、同じ寸法の排ガス通路9と空気通路10を積層配置し、高温の排ガスが流入する排ガス通路の入口端5に、出側ディストリビュータ12が位置するように配置する装置構成を採用するのが一般的である。
【0015】
さらに、構造的な強度を確保するとともに、熱交換面積を増加して、交換効率の向上を図るために、ろう付による積層構造を採用することから、通常の空気予熱器は、いわゆる剛構造を特徴とする構成を採用している。
【0016】
空気予熱器を上記のような装置構成とすることにより、低温流体に高温流体の熱を効率良く伝導することができる。しかし、最も温度が高い状態の排ガスと低温の空気がプレートを介して接触することにより、剛構造であるコーナー部13、排ガス通路の入口端5および出側ヘッダータンク8に大きな温度勾配が生じるという問題がある。
【0017】
このように、器体が拘束されて温度変化が生じた場合や、熱膨張係数の異なる部材を組み合わせた器体に温度変化が生じた場合には、器体の膨張と収縮が不均一となるので、器体内に熱応力が生じ、その結果、空気予熱器に変形や破損が発生する場合がある。
【0018】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ガスタービン、高温型燃料電池等のエネルギーシステムの起動時に器体内に発生する熱応力を低減することにより、器体の破損および変形を防止し、優れた熱交換効率を維持できる空気予熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、空気予熱器において、高温の排ガスが流入した際の排ガス通路内の不均一な温度分布による熱応力の緩和が可能となる構造について種々検討した。
【0020】
まず、本発明者らは、エネルギーシステム起動時における空気予熱器の内部の温度分布を把握するため、供試する熱交換器を試験体として用いた加熱試験を行い、急激な加熱による空気予熱器への影響を調査した。前記試験体としては、コルゲートフィンを配した空気通路と排ガス通路とを積層配置した構成からなる熱交換器を使用した。以下、排ガス通路の入口端から出口端までの長さ(以下、「熱交換器の長さ」ともいう)をLと表記して、加熱試験について説明する。
【0021】
加熱試験には電気炉を使用し、準備した試験体に対し炉内ヒーターおよび排ガス入口方向からのガス加熱を施し、800℃までの急加熱を行った。加熱試験にともなう、試験体の長さ方向の温度分布を調査するために、排ガス通路の入口端、入口端から長さL/4の位置、および入口端から長さL/2の位置(中央部)の3箇所における温度を熱電対により計測した。
【0022】
図2は、熱交換器の排ガス通路の入口端からの距離と、入口端の温度を基準とする温度比率との関係を示す図である。図2に示すように、排ガス通路の入口端の温度上昇にともなって、試験体全体の温度がほぼ一定になることが、すなわち、入口端の温度を基準とする試験体の中心部の温度比率が100%に近づくことが確認できた。また、排ガス通路の入口端の温度が500℃や700℃といった昇温段階においては、中心部では入口端と比較して20〜30%の温度低下が生じていることが判明した。
【0023】
しかも、排ガス通路の入口端に近いほど温度勾配は大きく、昇温段階において、排ガス通路の入口端からL/6離れた部分では、10%前後の温度低下が発生していることが確認された。
【0024】
本発明者らは、上記の試験結果から、低温流体通路の出側ディストリビュータを排ガス流れ方向に移動させることにより、空気予熱器の高温側と低温側の温度差が小さくなり、大きな温度勾配が生じることを防止できるので、剛構造であるコーナー部、排ガス入口端および出側ヘッダータンクに発生する熱応力を有効に低減できることを知見した。さらに、剛構造であるコーナー部および出側ヘッダータンクに大きな温度勾配を生じさせないため、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に移動させることにより、すなわち、コーナー部および出側ヘッダータンクに高温流体が流れない構造を採用することにより、熱応力を低減できることを知見した。
【0025】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(6)の空気予熱器を要旨としている。
(1)加熱用の排ガスを入口端から出口端に流通させる排ガス通路と、前記排ガス通路と直交する方向から供給される空気を入側ディストリビュータで分配して前記排ガスと平行流となる熱交換流路を形成し、熱交換された前記空気を出側ディストリビュータで分配して前記排ガス通路と直交する方向に排出する空気通路とが積層配置された構成からなる空気予熱器において、前記空気通路の入側ディストリビュータ、または出側ディストリビュータが前記排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置されていることを特徴とする空気予熱器。
(2)上記(1)に記載の空気予熱器では、器体内を流れる排ガスと空気との平行流を向流にすることにより、前記排ガス通路の入口端に生じる排ガスと空気との温度差が小さくなるので、望ましい。
(3)上記(1)または(2)に記載の空気予熱器では、前記排ガス通路の入口端から出口端までの長さLに対し、前記離隔距離を約L/6とすることにより、空気予熱器の高温側と低温側の温度差を低減できるので、望ましい。
(4)加熱用の排ガスを入口端から出口端に流通させる排ガス通路と、前記排ガス通路と直交する方向から供給される空気を入側ディストリビュータで分配して前記排ガスと平行流となる熱交換流路を形成し、熱交換された前記空気を出側ディストリビュータで分配して前記排ガス通路と直交する方向に排出する空気通路とが積層配置された構成からなる空気予熱器において、前記入側ディストリビュータを配した空気通路の端部が、前記排ガス通路の端部から空気の供給とは反対方向に所定の距離を設けて離隔された位置、または前記出側ディストリビュータを配した空気通路の端部が、前記排ガス通路の端部から空気の排出方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置されていることを特徴とする空気予熱器。
(5)上記(4)に記載の空気予熱器では、器体内を流れる排ガスと空気との平行流を向流にすることにより、前記排ガス通路の入口端に生じる排ガスと空気との温度差が小さくなるので、望ましい。
(6)上記(4)または(5)に記載の空気予熱器では、前記排ガス通路の入口端から出口端までの長さLに対し、L/6以下の離隔距離を設けることにより、発生する熱応力を低減できるとともに、高温流体と低温流体との非接触面積を小さくできるので、望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の空気予熱器は、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置することにより、または、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置することにより、空気予熱器に発生する熱応力を低減し、器体の破損および変形を防止できることから、理想的な排ガスの熱回収を行うことができる。
【0027】
また、本発明の空気予熱器は、出側ディストリビュータ等の配置を変更し、大きな温度勾配の発生を防止することにより、器体内に発生する熱応力を低減するものであり、高級な耐熱材料や複雑な構造等を要することなく、熱負荷の変動下における高熱交換効率と高耐久性を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る空気予熱器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図3は、本発明の向流形空気予熱器であって、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。図3に示す空気予熱器において、高温の排ガスは黒抜き矢印1が示す方向から、排ガス通路の入口端5を通過して、排ガス通路9へ流入する。一方、低温の空気は白抜き矢印3が示す方向から、入側ヘッダータンク7を通過し、入側ディストリビュータ11を介して、前記排ガスと向流する方向に分配されて、空気通路10へ流入する。高温の排ガスと低温の空気とは、互いに熱交換を行い、冷却された排ガスは排ガス通路の出口端6を通過して白抜き矢印2が示す方向へ流出し、加熱された空気は出側ディストリビュータ12を介し、出側ヘッダータンク8を通過して黒抜き矢印4が示す方向へ流出する。
【0030】
このとき、排ガス通路の入口端5は最も温度が高くなるが、空気通路の出側ディストリビュータ12は、排ガス通路の入口端5から所定の距離lだけ離隔された位置で積層配置されていることから、排ガス通路の入口端5、コーナー部13および出側ヘッダータンク8に大きな温度勾配が生じることを抑制できる。これにより、剛構造である排ガス通路の入口端5、コーナー部13および出側ヘッダータンク8に生じる熱応力が低減され、空気予熱器の破損および変形を防止することができる。
【0031】
一方、並流形空気予熱器の場合には、向流形の場合とは異なり、入側ヘッダータンクおよび入側ディストリビュータは排ガス通路の入口側に配置される構成となる。
【0032】
図4は、本発明の並流形空気予熱器であって、空気通路の入側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。図4に示す空気予熱器において、白抜き矢印3が示す方向から供給される低温の空気は、入側ヘッダータンク7を通過し、入側ディストリビュータ11を介して、排ガスの流れと同じ方向に分配されて、空気通路10へ流入する。高温の排ガスと低温の空気とは、排ガス通路の出口端に向かって流れるにともない、互いに熱交換を行う。
【0033】
このようにして、冷却された排ガスは排ガス通路の出口端6を通過して白抜き矢印2が示す方向へ流出し、加熱された空気は出側ディストリビュータ12を介し、出側ヘッダータンク8を通過して黒抜き矢印4が示す方向へ流出する。
【0034】
このとき、排ガス通路の入口端5は最も温度が高くなるが、空気通路の入側ディストリビュータ11は、排ガス通路の入口端5から所定の距離lだけ離隔された位置で積層配置されていることから、排ガス通路の入口端5、コーナー部13および入側ヘッダータンク7に大きな温度勾配が生じることを抑制できるので、向流形の場合と同様に、剛構造に発生する熱応力が低減される。
【0035】
また、前記図2に示したように、長さLの空気予熱器を用いて、800℃までの急加熱を行った場合には、昇温段階において、排ガス通路の入口端からL/6離れた部分では、10%前後の温度低下が発生することが確認された。さらに、空気予熱器の長さLが極端に長い場合には、所定の距離lをL/6以下に設定しても、熱応力を有効に緩和することが可能であり、また、空気予熱器の長さLが極端に短い場合には、熱交換効率を維持できる範囲で、所定の距離lをL/6以上に設定することも可能である。
【0036】
したがって、空気予熱器の寸法や排ガスの温度等の加熱条件によっては、図3に示す長さLの空気予熱器において、空気通路の出側ディストリビュータ12を排ガス通路の入口端5から約L/6離れた位置に積層配置することにより、不均一な温度分布による熱応力を大幅に緩和することが可能となる。
【0037】
さらに、本発明の空気予熱器では、器体内を流れる排ガスと空気との平行流が、向流であることが望ましい。以下に、その理由を説明する。
【0038】
図5は、高温流体と低温流体が熱交換器の内部を平行に流れる場合の温度変化の様子を模式的に示す図であり、同図(a)は向流形熱交換器を示す図であり、同図(b)は並流形熱交換器を示す図である。図5(a)におけるΔT1は熱交換前の高温流体の温度T1と、熱交換によって加熱された低温流体の温度t2との差であり、図5(b)におけるΔT1’は熱交換前の高温流体の温度T1と、熱交換前の低温流体の温度t1との差である。したがって、高温流体の入口では、向流形熱交換器の温度差ΔT1の方が、並流形熱交換器の温度差ΔT1’よりも小さくなる。
【0039】
すなわち、器体内を流れる排ガスと空気との平行流を向流で構成することにより、大きな温度勾配の発生を防止することができ、空気予熱器に発生する熱応力を低減することが可能になるからである。
【0040】
図6は、本発明の向流形空気予熱器であって、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。図6に示すように、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向に、所定の距離bだけ離隔された位置で積層配置する装置構成とすることにより、高温の排ガスは流体通路コーナー部13および出側ヘッダータンク8の近傍を流れず、大きな温度勾配が生じないことから、剛構造であるコーナー部13および出側ヘッダータンク8に生じる熱応力を有効に低減できる。
【0041】
また、並流形空気予熱器を採用する場合には、入側ディストリビュータを配した空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の供給とは反対方向に、所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置する装置構成とすることにより、向流形の場合と同様に、剛構造であるコーナー部および入側ヘッダータンクに生じる熱応力を有効に低減できる。
【0042】
図7は、空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置した本発明の空気予熱器であって、排ガス入口と排ガス出口との幅が異なる場合の一例を模式的に示す図である。本発明は、剛構造であるコーナー部13および出側ヘッダータンク8に大きな温度勾配を生じさせないため、空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離bを設けて積層配置することにより、熱応力を有効に低減することができる。
【0043】
したがって、排ガス入口14の幅を排ガス通路9の幅と一致させるのであれば、排ガス出口15の幅については、図7に示すように、空気通路の幅と一致させる構造を採用することも、また、排ガス入口14と同様に、排ガス通路9の幅と一致させる構造を採用することも可能である。このように、排ガス出口15の幅は、施行条件や設備条件等に合わせて適宜選択することができる。
【0044】
また、前記図3に示す空気予熱器では、排ガス通路の入口端からの距離と温度分布との関係に基づき、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から約L/6離れた位置に積層配置することにより、熱応力を有効に低減することができる。これに対し、図6および図7に示す空気予熱器は、高温の排ガスが流体通路コーナー部13および出側ヘッダータンク8の近傍を流れない構造を採用することにより、熱応力を低減するものである。
【0045】
このことから、空気通路の端部と、排ガス通路の端部との空気の排出方向の離隔距離は、前記図3に示す空気予熱器の望ましい離隔距離L/6より小さい値でも、十分な熱応力の低減効果を発揮すると考えられる。したがって、図6および図7に示す長さLの空気予熱器では、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向にL/6以下の離隔距離を設けた位置で積層配置すれば、コーナー部および出側ヘッダータンクに発生する熱応力を有効に低減することができるとともに、高温流体と低温流体との非接触面積を小さくすることが可能となる。
【0046】
図8は、本発明の空気予熱器であって、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に所定の距離を設けて離隔するとともに、空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置した場合の一例を模式的に示す平面図である。図8に示すように、出側ディストリビュータ12の排ガス流れ方向への移動と、空気通路の端部の空気の排出方向への移動とを組合せれば、空気予熱器のコーナー部13、排ガス入口端5および出側ヘッダータンク8に発生する熱応力をさらに低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の空気予熱器は、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置することにより、または、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置することにより、空気予熱器に発生する熱応力を低減し、器体の破損および変形を防止できることから、理想的な排ガスの熱回収を行うことができる。
【0048】
また、本発明の空気予熱器は、出側ディストリビュータ等の配置を変更し、大きな温度勾配の発生を防止することにより、器体内に発生する熱応力を低減するものであり、高級な耐熱材料や複雑な構造等を要することなく、熱負荷の変動下における高熱交換効率と高耐久性を実現できる。
【0049】
これにより、優れた熱交換効率を維持することができるとともに、熱負荷の変動に耐えることができる空気予熱器として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の空気予熱器の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。
【図2】熱交換器の排ガス通路の入口端からの距離と、入口端の温度を基準とする温度比率との関係を示す図である。
【図3】本発明の向流形空気予熱器であって、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。
【図4】本発明の並流形空気予熱器であって、空気通路の入側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。
【図5】高温流体と低温流体が熱交換器の内部を平行に流れる場合の温度変化の様子を模式的に示す図であり、同図(a)は向流形熱交換器を示す図であり、同図(b)は並流形熱交換器を示す図である。
【図6】本発明の向流形空気予熱器であって、出側ディストリビュータを配した空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置した場合の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は排ガス通路を示す平面図であり、同図(b)は空気通路を示す平面図である。
【図7】空気通路の端部を、排ガス通路の端部から空気の排出方向に離隔距離を設けて積層配置した本発明の空気予熱器であって、排ガス入口と排ガス出口との幅が異なる場合の一例を模式的に示す図である。
【図8】本発明の空気予熱器であって、空気通路の出側ディストリビュータを排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に所定の距離を設けて離隔するとともに、空気通路の端部を排ガス通路の端部から空気の排出方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置した場合の一例を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1.排ガスの流入方向 2.排ガスの流出方向
3.空気の流入方向 4.空気の流出方向
5.排ガス通路の入口端 6.排ガス通路の出口端
7.入側ヘッダータンク 8.出側ヘッダータンク
9.排ガス通路 10.空気通路
11.入側ディストリビュータ 12.出側ディストリビュータ
13.流体通路コーナー部 14.排ガス入口
15.排ガス出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用の排ガスを入口端から出口端に流通させる排ガス通路と、前記排ガス通路と直交する方向から供給される空気を入側ディストリビュータで分配して前記排ガスと平行流となる熱交換流路を形成し、熱交換された前記空気を出側ディストリビュータで分配して前記排ガス通路と直交する方向に排出する空気通路とが積層配置された構成からなる空気予熱器において、
前記空気通路の入側ディストリビュータ、または出側ディストリビュータが前記排ガス通路の入口端から排ガス流れ方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置されていることを特徴とする空気予熱器。
【請求項2】
前記排ガスと空気との平行流が向流であることを特徴とする請求項1に記載の空気予熱器。
【請求項3】
前記排ガス通路の入口端から出口端までの長さLに対し、前記離隔距離が約L/6であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気予熱器。
【請求項4】
加熱用の排ガスを入口端から出口端に流通させる排ガス通路と、前記排ガス通路と直交する方向から供給される空気を入側ディストリビュータで分配して前記排ガスと平行流となる熱交換流路を形成し、熱交換された前記空気を出側ディストリビュータで分配して前記排ガス通路と直交する方向に排出する空気通路とが積層配置された構成からなる空気予熱器において、
前記入側ディストリビュータを配した空気通路の端部が、前記排ガス通路の端部から空気の供給とは反対方向に所定の距離を設けて離隔された位置、または前記出側ディストリビュータを配した空気通路の端部が、前記排ガス通路の端部から空気の排出方向に所定の距離を設けて離隔された位置で積層配置されていることを特徴とする空気予熱器。
【請求項5】
前記排ガスと空気との平行流が向流であることを特徴とする請求項4に記載の空気予熱器。
【請求項6】
前記排ガス通路の入口端から出口端までの長さLに対し、前記離隔距離がL/6以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の空気予熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−39227(P2008−39227A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211547(P2006−211547)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】