説明

空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの更生方法

【課題】タイヤを更生する際に、有機繊維コードを傷つけることなくトレッドゴムの研削量を決定し得る空気入りタイヤを提供する。また、ベルト補強層の有機繊維コードを傷つけることなくタイヤを更生する方法を提供する。
【解決手段】カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配設されたベルトと、ベルトのタイヤ径方向外側に配設されたベルト補強層とを備える空気入りタイヤであって、ベルトは、金属製のコードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層からなり、ベルト補強層は、タイヤ幅方向に互いに離隔した第1ベルト補強層および第2ベルト補強層からなり、第1および第2ベルト補強層は、有機繊維製のコードをゴム被覆してなり、第1および第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端は、タイヤ赤道面からベルト層のタイヤ幅方向寸法の5%以内の範囲内に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。また、その空気入りタイヤの更生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの更生方法に関し、特に、ベルトのタイヤ径方向外側に、有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層を有する空気入りタイヤ、および、その空気入りタイヤを、ベルト補強層を傷つけることなく更生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド表面が摩耗した使用済みタイヤを再利用したタイヤとして、摩耗したトレッドゴムを除去して台タイヤとし、該台タイヤの外周面に新しいトレッド部を形成した更生(リトレッド)タイヤが知られている。
【0003】
ここで、通常、摩耗したトレッドゴムの除去は、研削手段等を用いて半自動的または全自動的に行われている。そのため、摩耗したトレッドゴムを使用済みタイヤから半自動的または全自動的に除去する際には、トレッドゴムを除去(研削)する量を予め決定する必要がある。
【0004】
そこで、従来、使用済みタイヤのトレッド表面からタイヤ径方向最外側に位置するスチールベルトまでの距離(即ち、摩耗したトレッドゴムの厚み)を測定し、トレッドゴムの研削量を決定する方法として、使用済みタイヤのトレッド部にスチールベルトまで達する孔を穿設し、ノギス等を用いて孔の深さを手作業で測定する方法が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の研削量決定方法は、スチールベルトのタイヤ径方向外側に有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層(例えば、キャップ層)を有する空気入りタイヤのトレッドゴムの研削量の決定方法としては適していなかった。即ち、有機繊維コードの硬度はスチールコードよりも低いので、トレッド部に孔を穿設する上記従来の方法では、孔を穿つ際にドリル等の工具がベルト補強層を貫通してしまい、有機繊維コードが傷ついて更生後のタイヤの性能が低下してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ベルトのタイヤ径方向外側に有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層を有する空気入りタイヤであって、タイヤを更生する際に、有機繊維コードを傷つけることなくトレッドゴムの研削量を決定し得る空気入りタイヤを提供することを目的とする。また、本発明は、ベルトのタイヤ径方向外側に有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層を有する空気入りタイヤを、ベルト補強層の有機繊維コードを傷つけることなく更生する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、金属製のコードをゴム被覆してなるベルト層を用いてベルトを構成したタイヤのタイヤ幅方向中央部では、ベルト補強層を配設しなくてもベルト層により張力を十分に負担し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配設されたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に配設されたベルト補強層と、前記ベルト補強層のタイヤ径方向外側に配設されたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、前記ベルトは、金属製のコードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層からなり、前記ベルト補強層は、タイヤ幅方向に互いに離隔した第1ベルト補強層および第2ベルト補強層からなり、前記第1ベルト補強層および前記第2ベルト補強層は、有機繊維製のコードをゴム被覆してなり、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端および前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端は、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外方に前記ベルト層のタイヤ幅方向寸法の5%以内の範囲内に位置し、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向外端は、前記ベルト層の、第1ベルト補強層のタイヤ幅方向外端側に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置し、且つ、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向外端は、前記ベルト層の、第2ベルト補強層のタイヤ幅方向外端側に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置することを特徴とする。
このように、金属製のコードを用いてベルトを構成し、ベルト補強層を第1ベルト補強層と第2ベルト補強層とで構成すれば、ベルト補強層が配設されていない、第1ベルト補強層と第2ベルト補強層との間の領域(ベルト補強層未配設領域)に孔を穿設して、ベルト補強層に用いた有機繊維コードを傷つけることなく、トレッドゴムの厚みを測定することができる。従って、タイヤを更生する際に、有機繊維コードを傷つけることなくトレッドゴムの研削量を決定することができる。また、第1ベルト補強層および第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外方にベルト層のタイヤ幅方向寸法の5%以内の範囲内に位置させれば、ベルト層により張力を十分に負担することができるので、所望のタイヤの性能を得ることができる。更に、第1ベルト補強層のタイヤ幅方向外端および第2ベルト補強層のタイヤ幅方向外端をベルト層のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置させれば、ベルト補強層による補強効果を十分に確保することができる。
因みに、本発明において、「ベルト層のタイヤ幅方向寸法」とは、ベルト層が2層以上ある場合には、タイヤ幅方向寸法が最も小さいベルト層のタイヤ幅方向寸法を指す。また、本発明において、「ベルト層のタイヤ幅方向外端」とは、ベルト層が2層以上ある場合には、タイヤ幅方向寸法が最も小さいベルト層のタイヤ幅方向外端を指す。
【0009】
ここで、本発明の空気入りタイヤは、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端との間のタイヤ幅方向に沿う距離が、6mm以下であることが好ましい。第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端と、第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端との間のタイヤ幅方向に沿う距離を6mm以下とすれば、ベルト補強層による補強効果を十分に得ることができるからである。
【0010】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端との間にタイヤ赤道面が位置することが好ましい。ベルト補強層未配設領域内にタイヤ赤道面が位置する場合、位置の特定が容易なタイヤ赤道上に孔を穿ってトレッドゴムの研削量を決定することができるからである。
【0011】
そして、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部踏面に、タイヤ周方向に延び、且つ、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面との間に位置する主溝を1本以上形成することが好ましい。ベルト補強層未配設領域のタイヤ径方向外方に主溝を形成すれば、位置の特定が容易な主溝の溝底に孔を穿ってトレッドゴムの研削量を決定することができるからである。また、孔を穿つ距離を短くしてトレッドゴムの研削量の決定に要する労力を低減することができるからである。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の空気入りタイヤの更生方法は、上述した空気入りタイヤの何れかの更生に用いられ、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面との間で、トレッドゴムの表面から前記ベルトまで達する孔を穿設し、前記孔の深さを測定して前記トレッドゴムの厚さを求める工程と、トレッドゴムを除去して台タイヤを形成する工程と、前記台タイヤの外周面に新しいトレッド部を形成する工程とを含むことを特徴とする。このように、ベルト補強層が配設されていない、第1ベルト補強層と第2ベルト補強層との間の領域(ベルト補強層未配設領域)に孔を穿設し、トレッドゴムの厚みを測定すれば、ベルト補強層に用いた有機繊維コードを傷つけることなく、空気入りタイヤを更生することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気入りタイヤによれば、タイヤを更生する際に、有機繊維コードを傷つけることなくトレッドゴムの研削量を決定することができる。また、本発明の空気入りタイヤの更生方法によれば、ベルトのタイヤ径方向外側に有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層を有する空気入りタイヤを、ベルト補強層の有機繊維コードを傷つけることなく更生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う代表的な空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【図2】(a),(b)は、本発明に従う代表的な空気入りタイヤの更生方法を用いて図1に示す構造のタイヤを更生する過程の一部を示すタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の空気入りタイヤは、特に限定されることなくライトトラックタイヤなどとして好適に用いることができる。そして、本発明の空気入りタイヤは、摩耗したトレッドゴムを除去して台タイヤとし、該台タイヤの外周面に新しいトレッド部を形成(リトレッド)することで繰り返し使用される。
【0016】
<空気入りタイヤ>
ここで、図1に、本発明に従う空気入りタイヤの一例について、適用リムRに装着し、所定内圧を適用した無負荷状態におけるタイヤ幅方向断面を示す。なお、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.) YEAR BOOK等に規定されたリムを指す。更に、「所定内圧を適用した無負荷状態」とは、適用サイズのタイヤにおけるJATMA等の規格のタイヤ最大負荷能力に対応する内圧(最高空気圧)を適用した無負荷(荷重を加えない)状態を指す。
【0017】
図1に示す空気入りタイヤ10は、トレッド部1と、トレッド部1の側部からタイヤ径方向内方に延びる一対のサイドウォール部2と、各サイドウォール部2のタイヤ径方向内方に連なるビード部3とを備えている。
【0018】
また、空気入りタイヤ10は、一対のビード部3間に延在する1プライからなるラジアルカーカス4を備えている。ここで、ラジアルカーカス4は、トレッド部1から一対のサイドウォール部2を介して一対のビード部3にわたってトロイド状に延び、ビード部3内に埋設された断面四角形のビードコア31の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって折り返されてなる。なお、ビード部3のビードコア31のタイヤ径方向外側には、ラジアルカーカス4に沿ってタイヤ径方向外方に向けて厚みが漸減する断面略三角形のビードフィラー32が配設されている。
ここで、図1ではカーカスプライのプライ数を1プライとした場合を示しているが、本発明の空気入りタイヤでは、プライ数は必要に応じて2プライ以上とすることができる。また、本発明の空気入りタイヤでは、カーカスはバイアスカーカスであっても良い。更に、本発明の空気入りタイヤでは、カーカスの折り返し形式は特に限定されることはなく、カーカスは例えばビードコアの周りに巻き付けられていても良い。
【0019】
更に、トレッド部1のラジアルカーカス4のタイヤ径方向外側(クラウン部外周側)には、2層のベルト層51,52よりなるベルト5が設置されている。そして、ベルト5のタイヤ径方向外側には、ベルト5の略全幅を覆うベルト補強層(キャップ層)6が、ベルト5に隣接して配置されている。また、ベルト補強層6のタイヤ幅方向両端部のタイヤ径方向外側には、ベルト5およびベルト補強層6の両端部のみを覆うレイヤー層71,72がそれぞれ設けられている。
なお、本発明の空気入りタイヤでは、ベルト層の数は任意の層数とすることができる。また、図1ではレイヤー層71,72を配設した場合を示しているが、本発明の空気入りタイヤでは、レイヤー層を配設しなくても良い。
【0020】
そして、ベルト補強層6のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム8がベルト補強層6に隣接して配置されている。更に、トレッドゴム8の表層部(トレッド部踏面側)には、タイヤ周方向に延びる複数本(図1では3本)の主溝81,82が形成されている。
【0021】
ここで、空気入りタイヤ10のベルト5を構成するベルト層51,52は、互いに平行に配列した複数本の金属製のコード(図示せず)をゴム被覆してなる。そして、各ベルト層51,52のコードは、タイヤ周方向に対して傾斜して配列され、且つ、ベルト層51のコードとベルト層52のコードとがタイヤ赤道面Cを挟んで相互に交差するように配置されている。即ち、2層のベルト層51,52は、交差ベルトを形成している。なお、ベルト層51,52に用いる金属製のコードとしては、特に限定されることなくスチールコードを挙げることができる。
【0022】
また、空気入りタイヤ10のベルト補強層6は、タイヤ幅方向に互いに離隔した第1ベルト補強層61および第2ベルト補強層62からなる。即ち、空気入りタイヤ10には、ベルト補強層6が配設されておらず、ベルト5のタイヤ径方向外側にトレッドゴム8が隣接して配置されているベルト補強層未配設領域9が形成されている。
【0023】
そして、空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61、第2ベルト補強層62およびレイヤー層71,72は、タイヤの軽量化やコスト削減等の観点から、有機繊維製のコード(図示せず)をゴム被覆してなる。なお、第1ベルト補強層61、第2ベルト補強層62およびレイヤー層71,72に用いる有機繊維製のコード(以下、単に「有機繊維コード」と称する。)としては、特に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレートコードや、ポリエチレンナフタレートコード等を挙げることができる。また、第1ベルト補強層61、第2ベルト補強層62およびレイヤー層71,72は、特に限定されることなく、有機繊維コードをゴム被覆してなる帯状のストリップをベルト5の外周面側に螺旋状に巻き回して形成することができる。
【0024】
ここで、この空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aおよび第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aが、タイヤ赤道面Cを中心とした幅Wの範囲内に位置している。なお、幅Wは、ベルト5(交差ベルト)を構成する2層のベルト層51,52のうちタイヤ幅方向の寸法が短いベルト層52のタイヤ幅方向寸法Wの10%以下である必要があり、6%以下であることが好ましい。即ち、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aおよび第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aは、タイヤ赤道面Cからタイヤ幅方向外方に、ベルト層52のタイヤ幅方向寸法Wの5%以下の範囲内に位置する必要があり、3%以下の範囲内に位置することが好ましい。
【0025】
また、この空気入りタイヤ10では、ベルト補強層6のタイヤ幅方向外端61B,62Bが、ベルト層51のコードとベルト層52のコードとが互いに交差している領域よりもタイヤ幅方向外方に位置している。即ち、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向外端61Bは、タイヤ幅方向の寸法が短いベルト層52のタイヤ幅方向外端のうち、タイヤ幅方向外端61B側(図1では右側)に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置している。また、第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向外端62Bは、ベルト層52のタイヤ幅方向外端のうち、タイヤ幅方向外端62B側(図1では左側)に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置している。
【0026】
なお、この空気入りタイヤ10では、ベルト5を構成するベルト層51,52によりタイヤ幅方向中央部の張力を十分に負担することができる。従って、空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61および第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端61A,62Aを、タイヤ赤道面Cからベルト層52のタイヤ幅方向寸法Wの5%以下の範囲内に位置させ、タイヤ幅方向中央部にベルト補強層未配設領域9を形成しても、所望のタイヤ性能を得ることができる。因みに、空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61および第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向外端61B,62Bをベルト層52のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置させているので、中央部にベルト補強層未配設領域9を形成しても、ベルト補強層6による補強効果を十分に確保することができる。
【0027】
<空気入りタイヤの更生方法>
そして、この空気入りタイヤ10は、使用に伴いトレッドゴムが摩耗した際には、例えば以下のようにしてトレッドゴムを張り替えることにより、更生タイヤとして使用することができる。
【0028】
具体的には、まず、図2(a)に示すように、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aを通ってタイヤ赤道面Cに平行な平面P1と、第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aを通ってタイヤ赤道面Cに平行な平面P2との間に、孔91を穿設する。より具体的には、ベルト補強層未配設領域9に対応する位置のトレッドゴム8の表面(図1では主溝81の溝底)から、ベルト5のベルト層52の外表面にまで達する孔91をタイヤ径方向内方に向かって形成する。なお、孔91は、ベルト補強層6の有機繊維コードを傷つけることがないように、ドリル等を用いてベルト補強層未配設領域9内に形成される。
【0029】
次に、形成した孔91の深さ(図1では主溝81の溝底からベルト層52までの距離)をノギス等のスケールを用いて測定し、残存しているトレッドゴム8の厚さを求める。そして、孔91を利用して求めた摩耗後のトレッドゴム8の厚さに基づき、除去するトレッドゴム8の量を決定する。
【0030】
その後、バフ研磨等の既知の手法を用いて摩耗後のトレッドゴム8を除去し、図2(b)に示すような台タイヤ10Aを形成する。そして、得られた台タイヤ10Aの外周面(タイヤ径方向外側)に新しいトレッド部を形成して、更生タイヤとする。
なお、台タイヤ10Aの外周面に新しいトレッド部を形成する方法としては、台タイヤの外周面に生ゴムを配設した後、該生ゴムを加硫してトレッド部を形成するリモールド方式や、予め加硫した帯状のトレッドゴム体(プレキュアトレッド)を台タイヤの外周面に巻回した後、該プレキュアトレッドを台タイヤに加硫接合して一体化することにより新しいトレッド部を形成するプレキュア方式を用いることができる。因みに、プレキュア方式を採用する場合には、図2(b)に示すように、形成した孔91をゴムで埋めて台タイヤ10Aの外周面を平滑にしてから、プレキュアトレッドを台タイヤの外周面に巻回す。
【0031】
そして、上述のようにして更生した更生タイヤでは、ベルト補強層6に用いた有機繊維コードを傷つけることがないので、更生後のタイヤの性能の低下を抑制することができる。因みに、空気入りタイヤ10のベルト5は、硬度の高い金属製のコードをゴム被覆して構成されているので、孔91を形成する際にドリル等の工具が貫通することはなく、ベルト5のコードが大きく損傷することは無い。
【0032】
ここで、上述した通り、空気入りタイヤ10では、更生時にベルト補強層未配設領域9内に孔91を形成してトレッドゴム8の厚さが測定される。そのため、空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aと、第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aとの間にタイヤ赤道面Cが位置することが好ましい。摩耗後のトレッド部踏面形状からではベルト補強層未配設領域9の位置を特定することが困難な場合があるが、上記のような構成を有し、ベルト補強層未配設領域9がタイヤ赤道面を跨いで延在している場合、タイヤ赤道上の任意の場所に孔91を穿設すれば良いので、孔91を穿設する位置を容易に特定することができるからである。また、空気入りタイヤ10では、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aを通る平面P1と、第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aを通る平面P2との間に位置するトレッド部踏面に、主溝81が形成されていることが好ましい。ベルト補強層未配設領域9のタイヤ径方向外方に主溝81を形成すれば、位置の特定が容易な主溝81の溝底に孔91を穿ってトレッドゴム8の研削量を決定することができるからである。また、孔91を穿つ距離を短くして、孔91の穿設に必要な労力を低減することができるからである。
従って、空気入りタイヤ10では、図1に示すように、ベルト補強層未配設領域9が主溝81のタイヤ径方向内方に位置し、且つ、主溝81がタイヤ赤道面C上に形成されていることが特に好ましい。
【0033】
なお、上述した空気入りタイヤ10では、ベルト補強層未配設領域9の幅W、即ち、第1ベルト補強層61のタイヤ幅方向内端61Aと、第2ベルト補強層62のタイヤ幅方向内端62Aとの間のタイヤ幅方向に沿う距離が、6mm以下であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましい。ベルト補強層未配設領域9の幅Wが6mm以下であれば、ベルト補強層未配設領域9を形成しても、ベルト補強層6による補強効果を十分に確保することができるからである。また、幅Wが3mm以上であれば、孔91の形成およびトレッドゴム8の厚みの測定を容易に行うことができるからである。
【0034】
また、上述した空気入りタイヤ10では、ベルト補強層未配設領域9の幅Wは、第1ベルト補強層61および第2ベルト補強層62の形成に用いる帯状のストリップの幅の整数倍の長さであることが好ましい。ベルト補強層未配設領域9の幅Wが帯状のストリップの幅の整数倍である場合、ストリップの巻き付け回数を調整することでベルト補強層未配設領域9を形成することができるので、ベルト補強層6をタイヤ幅補方向に連続して設けたタイヤを製造する装置と同じ装置を用いてタイヤを製造することができるからである。
【0035】
以上、図面を参照して本発明の空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの更生方法について説明したが、本発明の空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの更生方法は、上記一例に限定されることは無く、本発明の空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの更生方法には、適宜変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の空気入りタイヤによれば、タイヤを更生する際に、有機繊維コードを傷つけることなくトレッドゴムの研削量を決定することができる。また、本発明の空気入りタイヤの更生方法によれば、ベルトのタイヤ径方向外側に有機繊維コードをゴム被覆してなるベルト補強層を有する空気入りタイヤを、ベルト補強層の有機繊維コードを傷つけることなく更生することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 ラジアルカーカス
5 ベルト
6 ベルト補強層
8 トレッドゴム
9 ベルト補強層未配設領域
10 空気入りタイヤ
10A 台タイヤ
31 ビードコア
32 ビードフィラー
51,52 ベルト層
61 第1ベルト補強層
62 第2ベルト補強層
61A,62A タイヤ幅方向内端
61B,62B タイヤ幅方向外端
71,72 レイヤー層
81,82 主溝
91 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配設されたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に配設されたベルト補強層と、前記ベルト補強層のタイヤ径方向外側に配設されたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、
前記ベルトは、金属製のコードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層からなり、
前記ベルト補強層は、タイヤ幅方向に互いに離隔した第1ベルト補強層および第2ベルト補強層からなり、
前記第1ベルト補強層および前記第2ベルト補強層は、有機繊維製のコードをゴム被覆してなり、
前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端および前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端は、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外方に前記ベルト層のタイヤ幅方向寸法の5%以内の範囲内に位置し、
前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向外端は、前記ベルト層の、第1ベルト補強層のタイヤ幅方向外端側に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置し、且つ、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向外端は、前記ベルト層の、第2ベルト補強層のタイヤ幅方向外端側に位置するタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向外方に位置することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端との間のタイヤ幅方向に沿う距離が、6mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端との間にタイヤ赤道面が位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
トレッド部踏面に、タイヤ周方向に延び、且つ、前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面との間に位置する主溝を1本以上形成したことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の空気入りタイヤの更生に用いられ、
前記第1ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面と、前記第2ベルト補強層のタイヤ幅方向内端を通ってタイヤ赤道面に平行な平面との間で、トレッドゴムの表面から前記ベルトまで達する孔を穿設し、前記孔の深さを測定して前記トレッドゴムの厚さを求める工程と、
トレッドゴムを除去して台タイヤを形成する工程と、
前記台タイヤの外周面に新しいトレッド部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、空気入りタイヤの更生方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71556(P2013−71556A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211255(P2011−211255)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】