説明

空気入りタイヤ及びその製造方法

【課題】面ファスナーをタイヤ内面に備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を従来レベル以上に向上するようにした空気入りタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材部11の一方の面11aに複数本の係合素子12を設けた面ファスナー10を有し、該面ファスナー10の基材部11を前記係合素子12がタイヤ内腔側に位置するようにタイヤ内面Sに接着した空気入りタイヤにおいて、前記基材部11とタイヤ内面Sとの間にラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなる加硫接着層9を介在させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関し、更に詳しくは、面ファスナーをタイヤ内面に備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を向上するようにした空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤに、その空洞部内で生じる共鳴音を低減するために、空洞部内に吸音材を設置することが行われている。このような吸音材等の付属物の取り付けを容易にするために、タイヤ内面に面ファスナーを備え付けた空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この面ファスナー付き空気入りタイヤによれば、吸音材等の付属物を必要に応じて簡単に着脱することができる。
【0003】
しかし、面ファスナーをタイヤ内面に強固に接着しないと、空気入りタイヤの使用中に吸音材等の付属物が脱落するなどの不具合が起きる。面ファスナーをタイヤ内面に接着する方法としては、面ファスナーとタイヤ内面との間に加硫接着性のゴム組成物の層を挟み込んでタイヤ加硫時の加熱により加硫接着することが知られている。しかしながら、従来の加硫接着では、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性が必ずしも十分ではなく、その接着強度を従来レベル以上に向上することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、面ファスナーをタイヤ内面に備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を従来レベル以上に向上するようにした空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、基材部の一方の面に複数本の係合素子を設けた面ファスナーを有し、該面ファスナーの基材部を前記係合素子がタイヤ内腔側に位置するようにタイヤ内面に接着した空気入りタイヤにおいて、前記基材部とタイヤ内面との間にラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなる加硫接着層を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、基材部の一方の面に複数本の係合素子を設けた面ファスナーを、その係合素子がタイヤ内腔側に位置するように、加硫接着層を介在させてタイヤ内面に接着しており、この加硫接着層がラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物から構成されるので、接着ゴム組成物がラジカル開始剤(x)で架橋すると共に、タイヤ内面及び面ファスナーに加硫接着するため、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を従来レベル以上に向上することができる。
【0008】
前記接着ゴム組成物としては、前記ラジカル開始剤(x)及び変性ゴム組成物を含み、該変性ゴム組成物の数平均分子量が70000〜110000であることが好ましい。変性ゴム組成物の数平均分子量をこのような範囲内にすることにより、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を長期間に亘り向上することができる。
【0009】
前記接着ゴム組成物としては、前記ラジカル開始剤(x)及び変性ゴム組成物(A)又は(B)を含んでなり、前記変性ゴム組成物(A)が、酸素の存在下の常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)、ラジカル開始剤(b)及び共架橋剤(c)をブチルゴムに反応させた変性ブチルゴム(1)からなり、前記変性ゴム組成物(B)が、前記化合物(a)及びラジカル開始剤(b)をブチルゴムに反応させた変性ブチルゴム(2)に前記共架橋剤(c)を配合してなるとよい。
【0010】
前記変性ゴム組成物としては、JIS K6300に基づくムーニー粘度(ML1+4/100℃)で30〜55であることが好ましい。変性ゴム組成物のムーニー粘度をこのような範囲内にすることにより、良好な加工性を確保すると共に、面ファスナーへの濡れ性を改良し、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を長期間に亘り向上することができる。
【0011】
前記ラジカル開始剤(x)としては、有機過酸化物又はアゾ化合物がよい。また前記接着ゴム組成物は、接着ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、補強性充填剤を30〜80重量部含有することが好ましい。前記加硫接着層の厚さとしては0.3mm以上4.0mm以下にするとよい。
【0012】
前記面ファスナーは、前記タイヤ内面に対向する側の基材部の面に複数本のアンカー素子を有し、このアンカー素子の高さを前記加硫接着層の厚さよりも小さくするとよい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、未加硫タイヤの内面に、前記ラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなる未加硫接着層、そのタイヤ径方向内側に前記係合素子がタイヤ内腔側に位置するように面ファスナーの基材部を配置し、この未加硫タイヤを加硫することにより上述した面ファスナー付き空気入りタイヤを製造する。
【0014】
ここで前記未加硫接着層を予め前記面ファスナーの係合素子とは反対側の基材面に貼り合わせ、これを前記未加硫タイヤの内面に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを例示する子午線半断面図である 。
【図2】本発明で使用される面ファスナーの一例を示す斜視図である。
【図3】図2の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態を示す要部断面図であ る。
【図4】本発明で使用される面ファスナーの他の例を示す斜視図である。
【図5】図4の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態を示す要部断面図であ る。
【図6】本発明で使用される面ファスナーの更に他の例を示す斜視図である。
【図7】図6の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態を示す要部断面図であ る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの一例、図2は本発明で使用される面ファスナーの一例、図3は図2の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態をそれぞれ示すものである。
【0017】
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。また、カーカス層4よりもタイヤ内腔側の部位にはインナーライナー層6が配置されている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。
【0018】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面Sのトレッド部1に対応する領域には面ファスナー10が設置されている。この面ファスナー10は係合素子12がタイヤ内腔側に位置するようにして、基材部11とタイヤ内面Sとの間に加硫接着層9を介在させて、図3に示すように、タイヤ内面Sに加硫接着されている。面ファスナー10は、図2に示すように、シート状をなす基材部11のタイヤ内腔側の面11aに複数本の係合素子12を設けた構造を有している。係合素子12はタイヤ周方向Cに沿って列をなし、複数の列がタイヤ幅方向Wに沿って並ぶように配置されている。係合素子12の形状は特に限定されるものではないが、例えば、図示のように先端部が枝分かれして面ファスナー10の面方向に向かって延びるT字形状や鏃形状(2段鏃形状を含む)であると良い。
【0019】
一方、面ファスナー10には、必要に応じて吸音材20等の付属物が取り付けられる。例えば、吸音材20がポリウレタンフォームからなる場合、そのポリウレタンフォームの網目構造を利用することで吸音材20をそのまま面ファスナー10に対して係合させることができる。勿論、付属物には面ファスナー10に対して係合可能な他の面ファスナーを取り付けるようにしても良い。付属物としては、吸音材20の他に、温度センサやトランスポンダ等を挙げることができる。また、面ファスナー10のタイヤ内面Sにおける設置場所は付属物の種類に応じて任意に選択することができる。
【0020】
また、上記空気入りタイヤにおいて、係合素子12の基材表面からの高さは特に限定されるものではないが、例えば、0.5mm〜5.0mmにすると良い。係合素子12の高さをこのような範囲に設定することにより、面ファスナー10に対する吸音材20等の付属物の取り付け強度を十分に確保することができる。
【0021】
本発明において、加硫接着層9の厚さは特に制限されるものではないが、好ましくは0.3mm以上4.0mm以下であるとよい。加硫接着層9の厚さが0.3mm未満であると加硫接着作用が十分に得られない。また加硫接着層9の厚さが4.0mmを超えると、加工性が悪化すると共に、加硫時に熱が伝わりにくくなる。
【0022】
図4は本発明で使用される面ファスナーの他の例、図5は図4の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態をそれぞれ示すものである。図4,5において、図2,3と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0023】
図4において、面ファスナー10は、基材部11のタイヤ内腔側の面11aに複数本の係合素子12を設ける一方で基材部11の他方の面11bに複数本のアンカー素子13を設けた構造を有している。アンカー素子13はタイヤ周方向Cに沿って列をなし、複数の列がタイヤ幅方向Wに沿って並ぶように配置されている。アンカー素子13の形状は特に限定されるものではないが、例えば、図示のように先端部が枝分かれして面ファスナー10の面方向に向かって延びるT字形状であると良い。これらアンカー素子13は加硫接着層9に埋設させてタイヤ内面Sのインナーライナー層6に接着されるため、面ファスナー10の加硫接着層9及びタイヤ内面Sに対する接着力を向上することができる。
【0024】
本発明において、アンカー素子13の高さは、上述した加硫接着層9の厚さより小さくすることが好ましい。アンカー素子13の高さを加硫接着層9の厚さより小さくすることにより、アンカー素子がインナーライナー層に食い込むことを防ぐことができる。
【0025】
図6は本発明で使用される面ファスナーの更に他の例、図7は図5の面ファスナーをタイヤ内面に加硫接着した状態をそれぞれ示すものである。図6,7において、図2,3と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0026】
本発明の空気入りタイヤに使用する面ファスナー10は、図6に示すように、基材部11を貫通する複数の小孔14が形成されているとよい。小孔14の形状は特に限定されるものではないが、例えば、円形、楕円形、多角形とすることができる。このように面ファスナー10の基材部11に小孔14を設けることにより、面ファスナー10をタイヤ内面Sに加硫接着するにあたって、これら小孔14がタイヤ加硫時において通気路として機能するため、面ファスナー10とタイヤ内面Sとの間に空気溜まりができるのを抑制し、面ファスナー10の接着性を高めることができる。しかも、面ファスナー10の基材部11に小孔14を設けた場合、面ファスナー10の接着面積が増大すると共に、図7に示すように、加硫接着層9の一部が小孔14を通って基材部11の反対側の面へ流れ出した状態で加硫されてアンカー状の突起部15を形成するため、面ファスナー10の接着性を更に向上することができる。
【0027】
小孔14の直径は0.1mm〜1.5mmであり、基材部11の単位面積1cm2当たりの小孔14の個数は4〜100個であると良い。このような寸法及び密度を選択することにより、空気溜まりの抑制効果と接着面積の増大効果とを十分に確保することができる。小孔14の直径が0.1mm未満であると加硫接着層9のゴムが小孔14に入り難くなるため接着面積の増大効果及びアンカー効果を十分に得ることができず、逆に1.5mmを超えると加硫接着層9のゴムが小孔14から多量に流れ出すため係合素子12による係合効果の妨げになる。また、小孔14の個数が4個/cm2未満であると接着面積の増大効果及びアンカー効果を十分に得ることができず、逆に100個/cm2を超えると基材部11の剛性が低下し、タイヤ加硫時に基材部11に歪みを生じる恐れがある。
【0028】
なお、図6,7では、面ファスナー10の基材部11に複数の係合素子12と小孔14を形成した例を示したが、これと同様に面ファスナー10の基材部11に複数の係合素子12及びアンカー素子13と小孔14を形成することができる。
【0029】
本発明において、加硫接着層9はタイヤ内面Sと面ファスナー10との間に介在し、面ファスナー10をタイヤ内面Sに強固に接着させる。加硫接着層9は、ラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなるゴム成形体を成形し、このゴム成形体をタイヤ内面と面ファスナーとの間に介在させた未加硫タイヤをグリーン形成しこれを加硫することにより形成される。
【0030】
加硫接着層9を構成する接着ゴム組成物は、ラジカル開始剤(x)及び変性ゴム組成物(A)又は(B)を含む。変性ゴム組成物(A)及び(B)は、いずれもラジカル開始剤(x)の存在下で加熱することにより架橋するため、未加硫タイヤの加硫時に架橋すると共に、タイヤ内面及び面ファスナーに加硫接着するため、面ファスナーをタイヤ内面に従来レベル以上の接着強度で接着することができる。
【0031】
本発明では、ラジカル開始剤(x)として、有機過酸化物又はアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどを例示することができる。
【0032】
アゾ化合物としては、例えばアゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2′−アゾビス(イソブチレート)、アゾビス−シアン吉草酸、1,1′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ系ラジカル開始剤を例示することができる。
【0033】
ラジカル開始剤(x)の配合量は、接着ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部にするとよい。
【0034】
本発明において、変性ゴム組成物(A)及び(B)は、いずれも数平均分子量が好ましくは70000〜110000、より好ましくは80000〜110000であるとよい。変性ゴム組成物の数平均分子量をこのような範囲内にすることにより、加硫中のゴム分子の運動性が上昇するため、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性が一層向上する。このため接着性を長期間に亘り向上することができる。変性ゴム組成物の数平均分子量が70000未満であると剥離強度が低下することがある。また変性ゴム組成物の数平均分子量が110000を超えるとゴム付きが悪化する。すなわち接着したタイヤ内面と面ファスナーとを引き剥がしたときの破壊形態が、接着層が材料破壊する接着面の比率が低くなる。これにより長期間に亘る接着性が低下する虞がある。なお、変性ゴム組成物(B)の数平均分子量は、相当する変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を配合し加熱処理して反応させた変性ゴムの数平均分子量とする。変性ゴム組成物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0035】
本発明において、変性ゴム組成物(A)及び(B)のムーニー粘度(ML1+4/100℃)は好ましくは30〜55、より好ましくは32〜52であるとよい。変性ゴム組成物のムーニー粘度をそれぞれこのような範囲内にすることにより、良好な加工性を確保すると共に、面ファスナーへの濡れ性を改良し、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を長期間に亘り向上することができる。変性ゴム組成物のムーニー粘度が30未満であると加工性が悪化する虞がある。また変性ゴム組成物のムーニー粘度が55を超えると面ファスナーへの濡れ性が低下しゴム付きが悪化する。このため接着したタイヤ内面と面ファスナーとを引き剥がしたときの破壊形態が、接着層が材料破壊する接着面の比率が低くなり、長期間に亘る接着性が低下する虞がある。なお、変性ゴム組成物(B)のムーニー粘度は、相当する変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を配合し加熱処理して反応させた変性ゴムのムーニー粘度とする。変性ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/100℃)は、JIS K6300に基づき100℃で測定するものとする。
【0036】
変性ゴム組成物(A)は、ブチルゴムに、酸素の存在下の常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)(以下、「化合物(a)」という。)、ラジカル開始剤(b)及び共架橋剤(c)を反応させた変性ブチルゴム(1)からなる。変性ブチルゴム(1)の製造方法は、特に制限させるものではないが、例えば以下の方法が好ましい。先ずブチルゴムに化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を反応させることにより、ブチルゴムに化合物(a)をグラフトした変性ブチルゴム(2)を調整する。この変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を反応させることにより、過酸化物架橋可能な変性ブチルゴム(1)を調整する。
【0037】
また、変性ゴム組成物(B)は、ブチルゴムに、化合物(a)及びラジカル開始剤(b)を反応させた変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を配合した組成物からなる。この変性ゴム組成物(B)は、加熱処理することにより変性ブチルゴム(2)と共架橋剤(c)との反応が過酸化物架橋と同時に進行する。
【0038】
本発明で使用する酸素の存在下の常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)としては、例えば下記式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(以下、「TEMPO」ということがある。)や下記式(2)で表される4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシなどが例示される。また、化合物(a)として下記式(3)〜(8)で表されるTEMPOの4位に置換基を有する化合物が挙げられる。
【化1】

【化2】

【化3】

(上記式(3)〜(8)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリル基、ビニル基、カルボキシル基、カルボニル基含有基、エステル基、エポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、チオール基、チイラン基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、ニトリル基、チオシアン基、シリル基、アルコキシシリル基、及びこれらの官能基を含む有機基から選ばれるいずれかを表す。)
【0039】
ここでカルボニル基含有基としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸などの環状酸無水物の残基が例示される。また、上記式(3)において、Rは塩素、臭素などのハロゲンであってもよい。
【0040】
上記式(3)で表される化合物(a)としては、4−メチルTEMPO、4−エチルTEMPO、4−フェニルTEMPO、4−クロロTEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−アミノTEMPO、4−カルボキシルTEMPO、4−イソシアナートTEMPO等が例示される。上記式(4)で表される化合物(a)としては、4−メトキシTEMPO、4−エトキシTEMPO、4−フェノキシTEMPO、4−TEMPO−グリシジルエーテル、4−TEMPO−チオグリシジルエーテル等が例示される。
【0041】
上記式(5)で表される化合物(a)としては、4−メチルカルボニルTEMPO、4−エチルカルボニルTEMPO、4−ベンゾイルTEMPO等が例示される。上記式(6)で表される化合物(a)としては、4−アセトキシTEMPO、4−エトキシカルボニルTEMPO、4−メタクリレートTEMPO、4−ベンゾイルオキシTEMPO等が例示される。
【0042】
上記式(7)で表される化合物(a)としては、4−(N−メチルカルバモイルオキシ)TEMPO、4−(N−エチルカルバモイルオキシ)TEMPO、4−(N−フェニルカルバモイルオキシ)TEMPO等が例示される。上記式(8)で表される化合物(a)としては、メチル(4−TEMPO)サルフェイト、エチル(4−TEMPO)サルフェイト、フェニル(4−TEMPO)サルフェイト等が例示される。
【0043】
更に、化合物(a)として、下記式(9)で表される2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ(以下、「PROXYL」ということがある。)の3位に置換基を有する化合物、下記式(10)で表される2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリン−1−オキシ(以下、「PRYXYL」ということがある。)の3位に置換基を有する化合物が挙げられる。
【化4】

(上記式(9)(10)において、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アリル基、ビニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基含有基、エステル基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、チオール基、チイラン基、チオグリシジル基、アミノ基、アミド基、イミド基、カルバモイル基、ニトロ基、ニトリル基、チオシアン基、シリル基、アルコキシシリル基、及びこれらの官能基を含む有機基から選ばれるいずれかを表す。)
【0044】
上記式(9)で表される化合物(a)としては、3−アミノ−PROXYL、3−ヒドロキシ−PROXYL、3−イソシアナート−PROXYL、3−カルボキシル−PROXYL、3−PROXYL−グリシジルエーテル、3−PROXYL−チオグリシジルエーテル、3―カルバモイル―PROXYL等が例示される。上記式(10)で表される化合物(a)としては、3−アミノ−PRYXYL、3−ヒドロキシ−PRYXYL、3−イソシアナート−PRYXYL、3−カルボキシル−PRYXYL、3−PRYXYL−グリシジルエーテル、3−PRYXYL−チオグリシジルエーテル、3―カルバモイル―PRYXYL等が例示される。またその他の化合物(a)の例を挙げれば以下の通りである。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0045】
本発明において使用する化合物(a)の添加量は、特に制限されるものではないが、ブチルゴム100gに対し、好ましくは0.001〜0.5モル、より好ましくは0.005〜0.1モルにするとよい。化合物(a)の添加量が少ないとブチルゴムの変性量が低くなるおそれがあり、逆に多いと過酸化物架橋が進行しなくなるおそれがある。
【0046】
本発明において、ラジカル開始剤(b)を添加することにより、上述した化合物(a)をブチルゴムの分子鎖に導入することができる。ラジカル開始剤(b)としては、任意のラジカル開始剤を用いることができ、具体的にはベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピパレート、t−ブチルパーオキシピパレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジサクシン酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジベンゾイルパーオキサイドの混合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレートなどを例示することができる。
【0047】
また、レドックス触媒の作用により低温で分解が可能なものを使用してもよい。代表的なものとしては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどを例示することができる。
【0048】
更にアゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2′−アゾビス(イソブチレート)、アゾビス−シアン吉草酸、1,1′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ系ラジカル開始剤を例示することができる。
【0049】
これらのラジカル開始剤(b)を反応系(混合系、接触系)に添加することによってブチルゴムに炭素ラジカルを発生させることができ、安定なフリーラジカルを有する化合物(a)がその炭素ラジカルと反応することにより、変性ブチルゴムが得られる。なお前述したラジカル開始剤(x)及びラジカル開始剤(b)は、互いに独立しており、化合物の種類が同じでも異なっていてもよい。
【0050】
本発明において使用するラジカル開始剤(b)の添加量には特に制限はないが、ブチルゴム100gに対し、好ましくは0.001〜0.5モル、より好ましくは0.005〜0.2モルにするとよい。ラジカル開始剤(b)の添加量が少な過ぎるとブチルゴム鎖からの水素原子引抜き量が低くなるおそれがあり、逆に多過ぎるとブチルゴムの主鎖が分解し、分子量が大きく低下するおそれがある。
【0051】
本発明において、共架橋剤(c)を添加することにより、上述した変性ブチルゴムと反応し、過酸化物架橋時に架橋反応を行なう。共架橋剤(c)は特に制限されるものはないが、二官能性以上のラジカル重合性モノマー及び/又はアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーを使用することができる。特に二官能性以上のラジカル重合性モノマーとアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーとを、同時に反応又は配合して変性ゴム組成物(A)又は(B)を構成することにより、得られる加硫接着層のモジュラス及び破断強度を向上することができ、耐久性が向上する。
【0052】
二官能性以上のラジカル重合性モノマーとしては、例えばエチレンジ(メタ)アクリレート(ここでエチレンジ(メタ)アクリレートという表記はエチレンジメタアクリレート及びエチレンジアクリレートの両方を意味する。以下、同じ)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリル(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリシロキサンジ(メタ)アクリレート、各種ウレタン(メタ)アクリレート、各種金属(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N′−フェニレンジマレイミド、ビスマレイミドジフェニルメタン、N,N′−フェニレンジアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートなどを挙げることができる。これらのうち分子中に電子吸引基(例えばカルボニル基(ケトン、アルデヒド、エステル、カルボン酸、カルボン酸塩、アミド)、ニトロ基、シアノ基などを含むアクリレートが変性率を高めるという観点から好ましい。
【0053】
二官能性以上のラジカル重合性モノマーの添加量は、特に制限はされるものではないが、例えばブチルゴム100gに対して、好ましくは0.001〜0.5モル、より好ましくは0.005〜0.2モルにするとよい。二官能性以上のラジカル重合性モノマーの添加量が少な過ぎると、変性ブチルゴムの架橋が進行しないおそれがあり、逆に多過ぎると架橋物の物性が悪化するおそれがある。
【0054】
アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーは、好ましくは下記式(11)で表される。
Si(OR74-n(R6−A)n (11)
(式(11)中、R6及びR7はそれぞれ独立に炭化水素基、Aはラジカル重合性基、nは1〜3の整数を示す。)
【0055】
ここで、nが2又は3のときのR6はそれぞれ異なっていてもよい。そのようなR6としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ドデシル、オクタデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、フェニル、ベンジル等のアリール基などを好ましく挙げることができる。
【0056】
また、nが1又は2のときのR7はそれぞれ異なっていてもよい。そのようなR7としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ドデシル、オクタデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、フェニル、ベンジル等のアリール基、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン基などを好ましく挙げることができる。
【0057】
更に、nが2又は3のときのラジカル重合性基Aはそれぞれ異なっていてもよい。そのようなラジカル重合性基Aとしては、例えばビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ハロゲン化ビニル基、アクリロニトリル基などを好ましく挙げることができるが、その中でも電子吸引基(カルボニル基、ハロゲン、シアノ基など)を含むものがより好ましい。その中でも(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
【0058】
アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えばビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−(プロピルトリエトキシシラン)マレイミドなどを好ましく例示することができる。
【0059】
また、共架橋剤(c)として、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーを加水分解縮合したものを用いてもよい。例えばシロキサン結合の繰り返し単位を2個以上有し、かつアルコキシシリル基を有するシリコーンオイル型カップリング剤でラジカル重合性基を有するオリゴマーなどを用いてもよい。
【0060】
本発明において、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーの添加量は、特に制限されるものではないが、ブチルゴム100gに対し、好ましくは0.0001〜0.5モル、より好ましくは0.0003〜0.2モルにするとよい。アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーの添加量が少ないと架橋ゴム成形体のモジュラス、破断強度の向上効果が得られない。逆にアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーの添加量が多いと過剰のアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマーがその架橋ゴム成形体の圧縮永久歪に悪影響を及ぼすおそれがあるので好ましくない。
【0061】
本発明において、変性ブチルゴムは、例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、予備混合したブチルゴム、化合物(a)及びラジカル開始剤(b)の混合物を、窒素置換した密閉式混練機中で、150〜220℃の温度に加熱して反応させることにより変性ブチルゴム(2)を調製する。一旦温度を下げた後、変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を加えて、再度窒素置換を行い、好ましくは120〜220℃に加熱して反応させることにより変性ブチルゴム(1)を調製する。このような逐次反応を行なうことによって、共架橋剤(c)のブチルゴムへのグラフト量を高くすることができる。上述した反応は、窒素置換して行なうことが好ましいが、酸素が希薄な条件下でも行なうこともできる。
【0062】
また、変性ブチルゴム(2)に共架橋剤(c)を配合することにより、未反応の共架橋剤(c)を含む変性ゴム組成物(B)を調製してもよい。
【0063】
本発明において、共架橋剤(c)の配合及び反応は、一般的な方法で行なうことができ、各種添加剤、補強充填剤、架橋剤と同時に配合して行なってもよい。上述した、変性反応及び配合混合は、密閉式混練機、二軸押出型混練機、一軸押出型混練機、ロール、バンバリー、ニーダーなどを用いて行なうことができる。
【0064】
本発明において、変性ゴム組成物(A)及び(B)には、変性ブチルゴム(1)及び(2)以外の他のゴム成分を含むことができる。他のゴム成分として例えば天然ゴム、イソプレンゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン、ポリブテン、スチレン−p−メチルスチレン共重合体、ハロゲン化スチレン−p−メチルスチレン共重合体などを例示することができる。変性ブチルゴム(1)及び(2)の含有量は、ゴム成分中に好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは30〜100重量%であるとよい。
【0065】
本発明において、接着ゴム組成物は、補強性充填剤を配合することができる。補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、タルク、各種クレーなどを例示することができる。補強性充填剤の配合量は、接着ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部にするとよい。補強性充填剤をこのような範囲で配合することにより、接着ゴム組成物の加工性を確保しながら、加硫接着層の接着ゴム強度を高くすることができる。
【0066】
接着ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0067】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、上述した接着ゴム組成物からなるゴム組成物を用いてゴム成形体を成形し、このゴム成形体を未加硫接着層として、タイヤ内面と面ファスナーとの間に介在させた未加硫空気入りタイヤをグリーン成形する。面ファスナー及び未加硫接着層をタイヤ内面に配置する手順は、特に制限されるものではない。例えば未加硫タイヤ内面の面ファスナーを配置すべき部分に、接着ゴム組成物からなる未加硫接着層を積層しその径方向内側に面ファスナーを重ね合わせることができる。タイヤ成形ドラムの所定の位置に、面ファスナーを配置しその上に未加硫接着層を積層してから、タイヤ内面を構成するインナーライナー層を巻き付けてから通常の方法で未加硫タイヤをグリーン成形することができる。また面ファスナーの係合素子とは反対側の基材面に予め未加硫接着層を貼り合わせ、これを使用して上述した手順で未加硫タイヤの内面に配置することができる。得られた未加硫空気入りタイヤを加硫成形するとき、その加熱処理により、未加硫接着層の過酸化物架橋と、タイヤ内面及び面ファスナーに対する加硫接着とが同時に進行するので、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性を従来レベル以上に向上することができる。
【0068】
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、面ファスナーの係合素子を保護するため、面ファスナーに保護ゴム層を積層したものを未加硫タイヤの内面に配置することができる。これにより加硫時のブラダーによる押圧を緩和することができ、加硫後この保護ゴム層を取り除くことにより、係合素子の変形及び/又は破損を抑制することができる。
【0069】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
表1,2に示す配合からなる10種類の接着ゴム組成物(組成物1〜10)を、150ccのニーダーで6分間混練し、更に8インチのオープンロールにて混練し調製した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1,2において使用した原材料を下記に示す。
・IIR:ブチルゴム、ランクセス社製BUTYL301
・変性IIR−1:数平均分子量が115000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が58である変性ブチルゴム(1)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−2:数平均分子量が115000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が58である変性ブチルゴム(2)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−3:数平均分子量が60000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が
28である変性ブチルゴム(1)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−4:数平均分子量が90000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が29である変性ブチルゴム(1)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−5:数平均分子量が78000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が29である変性ブチルゴム(2)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−6:数平均分子量が90000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が45である変性ブチルゴム(1)、以下の方法により調製したもの。
・変性IIR−7:数平均分子量が78000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が43である変性ブチルゴム(2)、以下の方法により調製したもの。
・ラジカル開始剤(x):有機過酸化物、ジクミルパーオキサイド、日油社製パークミルD−40
・カーボンブラック:東海カーボン社製SRF級カーボンブラック
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・亜鉛華:正同化学工業社製亜鉛華3号
・硫黄:軽井沢製作所社製フンマツイオウ
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDM
・共架橋剤(c):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、サートマー社製SR−355
【0074】
変性ブチルゴム−1の調製
ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)を350.0g、OH−TEMPO(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル、旭電化工業社製LA7RD、化合物(a))を32.2g、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製パーカドックス14−G、ラジカル開始剤(b))を24.2g秤量し、60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れ10分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリー中で混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を165℃まで上昇させ20分間混練した。得られたポリマーの一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.360mol%であった。
【0075】
一旦反応系を150℃にし、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製SR−355、共架橋剤(c))を11.2g、およびメタクリルシラン(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製KBM503、共架橋剤(c)を5.8g秤量し、添加して混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を185℃まで上昇させ15分間混練し、変性ブチルゴム−1を得た。
【0076】
得られた変性ブチルゴム−1の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いてIR分析ならびに1H−NMR分析を行った。1720cm-1付近にエステルのカルボニル由来の吸収が観測され、1H−NMRからは、6.39、6.10、5.96、4.12ならびに3.30ppm付近にジトリメチロールプロパン由来のシグナルが観測され、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートが3個のオレフィンを残す構造で導入されていることが確認された。その導入率は0.084mol%であった。また、3.55ppm付近にメタクリルシラン由来のシグナルが観測され、その導入率は0.015mol%であった。
【0077】
得られた変性ブチルゴム−1の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を以下の方法で測定した。変性ブチルゴム−1の数平均分子量は115000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は58であった。
【0078】
数平均分子量
変性ブチルゴムの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定した。
【0079】
ムーニー粘度(ML1+4/100℃)
変性ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+4/100℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。
【0080】
変性ブチルゴム−2の調製
ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)を350.0g、OH−TEMPO(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル、旭電化工業社製LA7RD、化合物(a))を32.2g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日油社製パーブチルD、ラジカル開始剤(b))を30.4g秤量し、60℃に温度を設定した密閉型バンバリーに入れ10分間混合した。得られた混合物を、100℃に温度設定した密閉型バンバリー中で混練しながら5分間窒素置換した。混練しながら温度を186℃まで上昇させ20分間混練し、変性ブチルゴム−2を得た。
【0081】
得られた変性ブチルゴム−2の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.348mol%であった。
【0082】
得られた変性ブチルゴム−2の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−2の数平均分子量は115000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は58であった。
【0083】
変性ブチルゴム−3の調製
上述した変性ブチルゴム−1の調製において、ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)350.0gを、ブチルゴム(JSR社製ブチル065)350.0gに置き換えた以外は、変性ブチルゴム−1の調製と同様にして、変性ブチルゴム−3を調製した。
【0084】
得られた変性ブチルゴム−3の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.410mol%であった。
【0085】
得られた変性ブチルゴム−3の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−3の数平均分子量は60000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は28であった。
【0086】
変性ブチルゴム−4の調製
上述した変性ブチルゴム−1の調製において、ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)350.0gのうち、半量の175.0gをブチルゴム(ランクセス社製BUTYL402)に置き換えた以外は、変性ブチルゴム−1の調製と同様にして、変性ブチルゴム−4を調製した。
【0087】
得られた変性ブチルゴム−4の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.485mol%であった。
【0088】
得られた変性ブチルゴム−4の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−4の数平均分子量は90000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は29であった。
【0089】
変性ブチルゴム−5の調製
上述した変性ブチルゴム−2の調製において、ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)350.0gのうち、半量の175.0gをブチルゴム(ランクセス社製BUTYL402)に置き換えた以外は、変性ブチルゴム−2の調製と同様にして、変性ブチルゴム−5を調製した。
【0090】
得られた変性ブチルゴム−5の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.482mol%であった。
【0091】
得られた変性ブチルゴム−5の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−5の数平均分子量は78000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は29であった。
【0092】
変性ブチルゴム−6の調製
上述した変性ブチルゴム−1の調製において、ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)350.0gのうち、半量の175.0gをブチルゴム(ランクセス社製BUTYL402)に置き換え、カーボンをSAFグレードへ変更した以外は、変性ブチルゴム−1の調製と同様にして、変性ブチルゴム−6を調製した。
【0093】
得られた変性ブチルゴム−6の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.483mol%であった。
【0094】
得られた変性ブチルゴム−6の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−6の数平均分子量は90000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は45であった。
【0095】
変性ブチルゴム−7の調製
上述した変性ブチルゴム−2の調製において、ブチルゴム(ランクセス社製BUTYL301)350.0gのうち、半量の175.0gをブチルゴム(ランクセス社製BUTYL402)に置き換、カーボンをSAFグレードへ変更した以外は、変性ブチルゴム−2の調製と同様にして、変性ブチルゴム−7を調製した。
【0096】
得られた変性ブチルゴム−7の一部をトルエンに溶解し、再沈殿操作によりポリマーを単離精製した。精製品を用いて1H−NMRにて分析を行なうことにより、TEMPO部位の導入(アルコキシアミノ基)を確認した。その導入率は0.480mol%であった。
【0097】
得られた変性ブチルゴム−7の数平均分子量及びムーニー粘度(ML1+4/100℃)を上述した方法で測定したところ、変性ブチルゴム−7の数平均分子量は78000、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は43であった。
【0098】
得られた接着ゴム組成物からなるゴム成形体を未加硫接着層として介在させて、表3〜5に示すように、タイヤ内面に面ファスナーA又はBを配置した未加硫タイヤ(実施例1〜11、比較例1,3)をグリーン成形した。タイヤサイズ215/60R16で図1のタイヤ構造及びタイヤ構成材を共通にし、面ファスナーの種類及び加硫接着層の種類及び厚さを異ならせた。面ファスナーA及びBは共にナイロン製の幅20mmの面ファスナーであり、面ファスナーAは、基材部の一方の面に係合素子(高さ0.8mm)及び他方の面にアンカー素子(高さ0.8mm)を有し、面ファスナーBは、基材部の一方の面に係合素子(高さ0.8mm)を有するものとした。タイヤ内面は表6に示したゴム組成物からなるインナーライナー層で形成した。このインナーライナー用ゴム組成物は、硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、密閉型バンバリーで混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを、密閉型バンバリーで硫黄及び加硫促進剤を加え混合することにより調製した。
【0099】
上記により成形された未加硫タイヤを金型に挿入しブラダーを使用して加硫し(スチーム温度180℃、加硫時間10分)、面ファスナー付き空気入りタイヤを製作した(実施例1〜6、比較例1,3)。なお比較例2の面ファスナー付き空気入りタイヤは、予め加硫成形した空気入りタイヤの内面に接着剤(セメダイン社製スーパーX)を使用して面ファスナーAを貼り付けた。
【0100】
得られた空気入りタイヤ(実施例1〜11、比較例1〜3)を切り出して、タイヤ内面と面ファスナー間の剥離強度を、JIS K6256−1に準拠して測定した。得られた結果は、比較例1の剥離強度を100とする指数として表3〜5に示した。この指数が大きいほど剥離強度が大きいことを意味する。
【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
表6において使用した原材料の種類を下記に示す。
・IIR:ブチルゴム、ランクセス社製BUTYL301
・カーボンブラック:東海カーボン社製GPF級カーボンブラック
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・オイル:エア・ウォーターINC製アロマオイルFR−120
・亜鉛華:正同化学工業社製亜鉛華3号
・酸化マグネシウム:共和化学工業社製キョーマグ150
・石油樹脂:三井化学社製ハイレッツG100X
・硫黄:軽井沢製作所社製フンマツイオウ
・加硫促進剤:MBTS、大内新興化学工業社製ノクセラーDM
【0106】
表3〜5の結果から明らかなように、実施例1〜10の空気入りタイヤは、タイヤ内面に対する面ファスナーの剥離強度を従来レベル以上に向上することができる。
【0107】
また表3の結果から明らかなように、比較例2では面ファスナーを既存の接着剤を使用して貼り付けたため剥離強度を十分に大きくすることができない。比較例3は接着ゴム組成物がラジカル開始剤(x)を含まないため剥離強度を改良することができない。
【0108】
次に、面ファスナーBを配置した実施例6〜10の空気入りタイヤについて、耐久性試験後の剥離強度を以下の方法で評価した。
【0109】
耐久性試験後の剥離強度
実施例6〜10空気入りタイヤをそれぞれ標準リムに組み付け、空気圧210kPaの空気を充填して、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に取り付け、試験荷重4.82kN、速度80km/時で80時間走行させる耐久性試験を実施した。試験後の空気入りタイヤを切り出して、タイヤ内面と面ファスナー間の剥離強度を、JIS K6256−1に準拠して測定した。得られた結果は、実施例6の剥離強度を100とする指数として表7に示した。この指数が大きいほど耐久性試験後の剥離強度が大きく、タイヤ内面と面ファスナー間の接着性が長期間に亘り優れることを意味する。
【0110】
【表7】

【0111】
表7より、変性ゴム組成物の数平均分子量を70000〜110000にすることにより、タイヤ耐久試験後におけるタイヤ内面に対する面ファスナーの剥離強度を一層改良することが確認された。
【符号の説明】
【0112】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 インナーライナー層
7 ベルト層
10 面ファスナー
11 基材部
12 係合素子
13 アンカー素子
14 小孔
S タイヤ内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材部の一方の面に複数本の係合素子を設けた面ファスナーを有し、該面ファスナーの基材部を前記係合素子がタイヤ内腔側に位置するようにタイヤ内面に接着した空気入りタイヤにおいて、前記基材部とタイヤ内面との間にラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなる加硫接着層を介在させたことを特徴とする面ファスナー付き空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記接着ゴム組成物が前記ラジカル開始剤(x)及び変性ゴム組成物を含み、該変性ゴム組成物の数平均分子量が、70000〜110000であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記接着ゴム組成物が、前記ラジカル開始剤(x)及び変性ゴム組成物(A)又は(B)を含み、前記変性ゴム組成物(A)が、酸素の存在下の常温で安定なニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物(a)、ラジカル開始剤(b)及び共架橋剤(c)をブチルゴムに反応させた変性ブチルゴム(1)からなり、前記変性ゴム組成物(B)が、前記化合物(a)及びラジカル開始剤(b)をブチルゴムに反応させた変性ブチルゴム(2)に前記共架橋剤(c)を配合したことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記変性ゴム組成物が、JIS K6300に基づくムーニー粘度(ML1+4/100℃)で30〜55であることを特徴とする請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ラジカル開始剤(x)が有機過酸化物又はアゾ化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記接着ゴム組成物が、該接着ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、補強性充填剤を30〜80重量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記加硫接着層の厚さが0.3mm以上4.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記面ファスナーが、前記タイヤ内面に対向する側の基材部の面に複数本のアンカー素子を有し、該アンカー素子の高さが、前記加硫接着層の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
未加硫タイヤの内面に、前記ラジカル開始剤(x)を含む接着ゴム組成物からなる未加硫接着層、そのタイヤ径方向内側に面ファスナーを前記係合素子がタイヤ内腔側に位置するように配置し、この未加硫タイヤを加硫するようにした請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記未加硫接着層を予め前記面ファスナーの係合素子とは反対側の基材面に貼り合わせ、これを前記未加硫タイヤの内面に配置することを特徴とする請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126380(P2012−126380A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159420(P2011−159420)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(591017939)クラレファスニング株式会社 (43)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】