説明

空気入りタイヤ及びその製造方法

【課題】生産性の低下やユニフォミティの悪化を抑えるとともに、皮被り状態になることを防いで通電性能を良好に発揮できる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】トレッドゴム10に設けた一対の導電部が、接地面からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間を左側に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道Cから左側に接地幅CWの10%以上の距離を隔てた第1の導電部13と、接地面からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間を右側に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道Cから右側に接地幅CWの10%以上の距離を隔てた第2の導電部14とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出することができる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の低燃費化と関係が深い転がり抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能(ウェット制動性能)の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合とした空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるトレッドゴムは、カーボンブラック高配合としたものに比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズなどの不具合を生じ易いという問題があった。
【0003】
そこで、シリカ等を配合した非導電性ゴムからなるトレッドゴムに、カーボンブラック等を配合した導電性ゴムからなる導電部を設けて、通電性能を発揮できるようにした空気入りタイヤが開発されている。例えば、特許文献1に記載のタイヤでは、非導電性ゴムで形成したトレッドゴムに、接地面からタイヤ径方向に延びてベルト層に至る導電部を設けて、静電気を放出するための導電経路を形成している。しかし、当該タイヤでは、導電経路がベルト層を介して形成されるため、ベルト層のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成した場合には対応できない。
【0004】
一方、特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、非導電性ゴムで形成したトレッドゴムに、接地面からタイヤ径方向内側に延びるとともに、キャップ部とベース部との間をタイヤ幅方向の一方側にのみ延びて、サイドウォールゴム又はカーカス層のトッピングゴムに接続された導電部を設けている。しかしながら、このような断面L字状に形成された導電部では、タイヤ幅方向の一方側に片寄った形状になるため、生産性の低下やユニフォミティの悪化の原因になることが判明した。
【0005】
即ち、上記の導電部を有するタイヤにおいて、トレッドゴムのプロファイルを左右対称とするためには、導電部の厚さを考慮してキャップ部の厚みを左右で異ならせる必要が生じ、製造工程の複雑化、延いては生産性の低下を引き起こすことになる。また、トレッドゴムの剛性が、導電部が設けられている側と設けられていない側とで異なるため、タイヤの横方向のユニフォミティが悪化しやすく、とりわけLFV(ラテラルフォースバリエーション)が大きくなる傾向にある。特許文献2と同じ出願人による特許文献3でも、同様の指摘がなされている。
【0006】
加えて、上述したタイヤでは、接地面における導電部の露出箇所がタイヤ赤道の近辺にあるため、接地面に露出すべき導電部の上端が非導電性ゴムの薄皮により被覆された皮被り状態になりやすい。これは、加硫成形時のタイヤの径拡張によるベルト層のコード角度の変化に応じて、トレッドゴムが中央部へ寄り集まることが要因と考えられる。皮被り状態のまま製品化されたタイヤは、摩耗の初期段階において通電性能を発揮できないため問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−115935号公報
【特許文献2】特開2009−126291号公報
【特許文献3】特開2010−264920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性の低下やユニフォミティの悪化を抑えるとともに、皮被り状態になることを防いで通電性能を良好に発揮できる空気入りタイヤと、その空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に設けられたサイドウォールゴムと、前記トレッド部で前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性ゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられたベース部と、導電性ゴムで形成され且つ接地面で露出する一対の導電部とを有し、前記一対の導電部が、接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側に接地幅の10%以上の距離を隔てている第1の導電部と、接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の他方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の他方側に接地幅の10%以上の距離を隔てている第2の導電部とで構成されているものである。
【0010】
本発明の空気入りタイヤでは、トレッドゴムに設けられた一対の導電部が、上記の如き第1の導電部と第2の導電部とで構成され、タイヤ幅方向の一方側と他方側のそれぞれに導電部が形成される。このため、キャップ部の厚みやトレッドゴムの剛性が左右で大きく異なることがなくなり、生産性の低下やユニフォミティの悪化を抑えることができる。それでいて、第1及び第2の導電部の接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道から接地幅の10%以上の距離を隔てていることから、皮被り状態になることを防いで通電性能を良好に発揮することができる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤでは、前記第1の導電部及び前記第2の導電部が接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達するまでの区間を避けて、前記トレッドゴムの表面に周方向主溝が形成されているものが好ましい。かかる構成によれば、導電部が周方向主溝によって分断される懸念がなく、通電性能を安定して発揮することができる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤ赤道を基準として、接地面のタイヤ幅方向の一方側となる領域の溝面積が、そのタイヤ幅方向の他方側となる領域の溝面積よりも大きく、前記第1の導電部の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道までの距離が、前記第2の導電部の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道までの距離よりも長いものでもよい。かかる構成によれば、左右で溝面積が異なる非対称パターンが形成されたトレッドゴムにおいて、左右の剛性バランスを改善できるため、タイヤの横方向のユニフォミティを向上するうえで有益となる。
【0013】
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、接地面を構成するキャップ部のタイヤ径方向内側にベース部を設けたトレッドゴムの成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、前記トレッドゴムの成形工程が、非導電性ゴムで前記ベース部を形成する段階と、前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の外周面に、非導電性ゴムよりなる第1のゴムリボンをタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けて、前記キャップ部のタイヤ幅方向の一方側部分となる第1のキャップ部を形成する段階と、前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の外周面に、非導電性ゴムよりなる第2のゴムリボンをタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けて、前記キャップ部のタイヤ幅方向の他方側部分となる第2のキャップ部を形成する段階とを含み、前記第1のキャップ部を形成する段階では、巻き付け最中の前記第1のゴムリボンに導電性ゴムを部分的に設け、その導電性ゴムによって、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びる第1の導電部を形成し、前記第2のキャップ部を形成する段階では、巻き付け最中の前記第2のゴムリボンに導電性ゴムを部分的に設け、その導電性ゴムによって、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の他方側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の他方側に延びる第2の導電部を形成するものである。
【0014】
本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、トレッドゴムの成形工程のうち、ゴムリボンの巻き付けによりキャップ部を形成する段階において、上記の如き第1の導電部と第2の導電部とが簡便に形成される。そして、製造した空気入りタイヤにおいては、生産性の低下やユニフォミティの悪化が抑えられるとともに、皮被り状態になることを防いで通電性能を良好に発揮することができる。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法の好ましい態様として、前記第1のキャップ部を形成する段階では、前記第1のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の一方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の他方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の一方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の他方側に折り返して終点に至り、タイヤ幅方向の一方側への折り返し後であって前記始点の通過前となる箇所から、前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第1の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第1のゴムリボンに設けられ、或いは、前記第2のキャップ部を形成する段階では、前記第2のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の他方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の一方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の他方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の一方側に折り返して終点に至り、タイヤ幅方向の他方側への折り返し後であって前記始点の通過前となる箇所から、前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第2の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第2のゴムリボンに設けられるものが挙げられる。
【0016】
これにより、ゴムリボンを巻き付けてキャップ部を形成するに際して、第1の導電部或いは第2の導電部を効率良く且つ的確に設けることができる。また、ゴムリボンを巻き付ける始点と終点が、タイヤ赤道から少なくとも接地幅の10%以上の距離を隔てて設定されるため、RRO(ラジアルランアウト)の増大を防いでユニフォミティを向上できる。RROは、タイヤを回転させたときの回転軸の縦方向への変化量である。
【0017】
上記の態様において、前記第1のキャップ部を形成する段階で、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を先細りに形成し、前記第2のキャップ部を形成する段階で、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねて形成するものが好ましい。これによって、第1のキャップ部に第2のキャップ部を連ねやすくなるとともに、ゴムリボンの二回の巻き付け(第1のゴムリボンの巻き付けと、第2のゴムリボンの巻き付け)によってキャップ部を形成しうるため、生産性が向上する。
【0018】
或いは、上記の態様において、前記トレッドゴムの成形工程が、前記キャップ部のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部を非導電性ゴムで形成する段階を含み、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部に重ねて、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねることが考えられる。この場合、第1及び第2のゴムリボンを巻き付ける範囲が抑えられるとともに、その始点と終点をタイヤ赤道から適度に離し、RROの増大を効果的に防いでユニフォミティを良好に向上できる。
【0019】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法の好ましい態様として、前記トレッドゴムの成形工程が、前記キャップ部のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部を非導電性ゴムで形成する段階を含み、前記第1のキャップ部を形成する段階では、前記第1のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の一方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の他方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の一方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の他方側に折り返して終点に至り、前記始点からタイヤ幅方向の一方側へ折り返す箇所までの区間、及び、前記始点の通過直後から前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第1の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第1のゴムリボンに設けられ、或いは、前記第2のキャップ部を形成する段階では、前記第2のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の他方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の一方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の他方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の一方側に折り返して終点に至り、前記始点からタイヤ幅方向の他方側へ折り返す箇所までの区間、及び、前記始点の通過直後から前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第2の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第2のゴムリボンに設けられるものが挙げられる。
【0020】
これにより、ゴムリボンを巻き付けてキャップ部を形成するに際して、第1の導電部或いは第2の導電部を効率良く且つ的確に設けることができる。また、中央部分に第3のキャップ部を形成することにより、第1及び第2のゴムリボンを巻き付ける範囲を抑えることができる。しかも、ゴムリボンを巻き付ける始点と終点をタイヤ赤道から大きく離して設定できるため、RROの増大を効果的に防いでユニフォミティを良好に向上できる。
【0021】
上記の態様において、前記第3のキャップ部を形成する段階で、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の両端部を先細りに形成し、前記第1のキャップ部を形成する段階で、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部に重ねて形成し、前記第2のキャップ部を形成する段階で、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねて形成するものが好ましい。これによって、第3のキャップ部に第1のキャップ部や第2のキャップ部を連ねやすくなるため、生産性が向上する。
【0022】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法では、前記トレッドゴムの成形工程が、前記ベース部の外周面のタイヤ幅方向の中央部に、前記ベース部よりも幅狭となるインナーキャップを非導電性ゴムで形成する段階を含み、前記インナーキャップを覆うようにして前記キャップ部を形成することが好ましい。これにより、トレッドゴムの中央部の厚みを容易に確保でき、トレッドゴムを所望の形状で成形しやすくなる。また、インナーキャップを形成する段階とキャップ部を形成する段階とを別の製造ラインで行うようにすれば、サイクルタイムの短縮化もできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【図2】加硫成形前のトレッドゴムを概略的に示す断面図
【図3】非対称パターンを有するトレッドゴムを概略的に示す断面図
【図4】トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図
【図5】ゴムリボンの断面図
【図6】ゴムリボンの巻き付けを行うための製造設備を示す図
【図7】ゴムリボンの巻き付け位置の移動経路を示す概念図
【図8】第1のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図9】第2のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図10】トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図
【図11】ゴムリボンの巻き付け位置の移動経路を示す概念図
【図12】第1のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図13】第2のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図14】トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図
【図15】第1のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図16】第2のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図17】トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図
【図18】ゴムリボンの巻き付け位置の移動経路を示す概念図
【図19】第1のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【図20】第2のゴムリボンを巻き付ける過程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
[空気入りタイヤの構成]
図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3と、一対のビード部1の間に設けられたトロイド状のカーカス層7とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0026】
カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成されており、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカスプライは、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が設けられている。
【0027】
また、このタイヤTは、サイドウォール部2でカーカス層7の外側に設けられたサイドウォールゴム9と、トレッド部3でカーカス層7の外側に設けられたトレッドゴム10とを備える。リム装着時にリム(不図示)と接するリムストリップゴム4は、ビード部1でカーカス層7の外側に設けられている。本実施形態では、カーカス層7のトッピングゴム(カーカスプライのトッピングゴム)及びリムストリップゴム4が、それぞれ導電性ゴムで形成され、サイドウォールゴム9が非導電性ゴムで形成されている。
【0028】
トレッドゴム10のタイヤ径方向内側には、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6と、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8とが設けられている。各ベルトプライは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト補強層8は、必要に応じて省略しても構わない。
【0029】
トレッドゴム10は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部12と、非導電性ゴムで形成され且つキャップ部12のタイヤ径方向内側に設けられベース部11と、導電性ゴムで形成され且つ接地面で露出する一対の導電部とを有する。この一対の導電部は、第1の導電部13(以下、単に「導電部13」と称する。)と第2の導電部14(以下、単に「導電部14」と称する。)とで構成される。図面上での区別を容易にするため、図1などでは導電部を薄黒く着色している。
【0030】
トレッドゴム10のゴム硬度は特に限られないが、キャップ部12のゴム硬度をベース部11のゴム硬度よりも高くすることにより、例えばその硬度差を1〜20°に設定することで、早期の摩耗を抑制できる。ゴム硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて25℃で測定される。また、ベース部11のゴム硬度をキャップ部12のゴム硬度よりも高くしても構わない。図2は、加硫成形前のトレッドゴム10を概略的に示している。
【0031】
導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm未満であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。該カーボンブラックは、例えばゴム成分100重量部に対して30〜100重量部で配合される。導電性ゴムは、カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。
【0032】
非導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であるゴムを指し、例えば原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合することにより作製される。該シリカは、例えばゴム成分100重量部に対して30〜100重量部で配合される。シリカとしては、湿式シリカを好ましく用いうるが、補強材として汎用されているものは制限なく使用できる。非導電性ゴムは、沈降シリカや無水ケイ酸などのシリカ類以外にも、焼成クレーやハードクレー、炭酸カルシウムなどを配合して作製してもよい。
【0033】
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
【0034】
導電部13は、接地面からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間をタイヤ幅方向の一方側(以下、「左側」と記述する場合がある。)に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに接続されている。導電部13の接地面上の露出箇所は、タイヤ赤道Cから左側に距離D13を隔てており、この距離D13は接地幅CWの10%以上である。
【0035】
導電部14は、接地面からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間をタイヤ幅方向の他方側(以下、「右側」と記述する場合がある。)に延びて、カーカス層7のトッピングゴムに接続されている。導電部14の接地面上の露出箇所は、タイヤ赤道Cから右側に距離D14を隔てており、この距離D14は接地幅CWの10%以上である。
【0036】
タイヤTには、静電気を路面に放出するための導電経路が設けられている。この導電経路には二通りがあり、一つは、リムから、左側のリムストリップゴム4、カーカス層7のトッピングゴム及び導電部13を経由して接地面に至る経路であり、もう一つは、リムから、右側のリムストリップゴム4、カーカス層7のトッピングゴム及び導電部14を経由して接地面に至る経路である。したがって、ベルト層6やベルト補強層8のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成することが可能である。
【0037】
この空気入りタイヤTでは、トレッドゴム10の左右のそれぞれ、即ちタイヤ幅方向の一方側と他方側のそれぞれにL字状の導電部が形成されている。このため、導電部を片側にのみ設けた場合に比べて、キャップ部12の厚みやトレッドゴム10の剛性が左右で大きく異なることがなくなり、生産性の低下やユニフォミティの悪化が抑えられる。しかも、導電部13,14の接地面上の露出箇所がタイヤ赤道Cから所定の距離を隔てているため、皮被り状態になることを防いで通電性能を良好に発揮できる。
【0038】
上述のように、導電部13,14は、タイヤ赤道Cの近傍では露出せず、タイヤ赤道Cから距離D13,D14を隔てた所謂メディエイト部で露出し、それによって皮被り状態になることを防いでいる。摩耗の初期段階における通電性能を確保する観点から、距離D13,D14は、それぞれ接地幅CWの20%以上が好ましく、接地幅CWの30%以上がより好ましく、接地幅CWの30%超えが更に好ましく、接地幅CWの40%以上が尚一層に好ましい。導電部13,14の露出幅EW(図2参照)は、例えば0.1〜1.0mmである。
【0039】
導電部13と導電部14とはタイヤ赤道Cに関して対称に配置されるものに限られず、後で例示するような非対称な配置であっても構わない。導電部13,14の配置が非対称であっても、タイヤ幅方向の一方側と他方側のそれぞれに導電部を設けることで改善効果が得られ、導電部を片側にのみ設けた場合よりも生産性の低下やユニフォミティの悪化が抑えられる。但し、タイヤの横方向のユニフォミティを高めるうえでは、トレッドパターンにも依るが、距離D13と距離D14との差を小さくすることが好ましい。
【0040】
導電部13,14が露出する接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部の表面を指す。接地幅CWは、接地面のタイヤ幅方向における幅を指す。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"となる。
【0041】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" であるが、タイヤが乗用車用である場合には200kPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用である場合には最大負荷能力の80%とする。
【0042】
導電部13,14は、接地面からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達するまでの区間において、それぞれタイヤ径方向に対して傾斜して延びている。このように導電部13,14が傾斜する構造では、後述するような工程によりトレッドゴム10を成形するに際して、導電部13,14を形成しやすくなるため有益である。また、導電部13と導電部14とが互いに逆向きに傾斜することで、左右の剛性バランスが良好となり、タイヤの横方向のユニフォミティが高められる。
【0043】
トレッドゴム10の表面には、導電部13及び導電部14が接地面からベース部11の外周面に到達するまでの区間を避けて、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の周方向主溝15が形成されている。このため、グリーンタイヤを加硫する工程では、図2のトレッドゴム10の表面に突起を押し付けて周方向主溝15を形成したときに、導電部13,14が分断される懸念がなく、通電性能を安定して発揮できる。傾斜幅W13,W14は、それぞれ導電部13,14が傾斜する部分の幅であり、接地面からベース部11の外周面に至るまでの区間で計測される。
【0044】
導電部13,14と周方向主溝15との干渉を避けるうえで、傾斜幅W13,W14は、それぞれ20mm以下が好ましく、接地幅CWに対する比率では10%以下が好適である。また、それによってトレッドゴム10の摩耗に伴う導電部13,14の露出箇所の変動が少なくなるため、パターン設計の制約を受けにくくなるという利点もある。導電部13,14は、接地面からベース部11の外周面に向けてタイヤ径方向と略平行に延びるものでも構わない。
【0045】
本実施形態では、カーカス層7のトッピングゴムに導電部13,14を接続した例を示すが、これに限られず、導電性ゴムで形成したサイドウォールゴム9に導電部13,14を接続してもよい。その場合には、リムから、リムストリップゴム4、サイドウォールゴム9、導電部13,14を経由して接地面に至る導電経路が設けられるため、カーカス層7のトッピングゴムを非導電性ゴムで形成することが可能である。このように、導電部13,14は、リム装着時にリムから通電可能なカーカス層7のトッピングゴム又はサイドウォールゴム9に接続される。
【0046】
本実施形態では、サイドウォールゴム9の端部をトレッドゴム10の端部に載せてなるサイドオントレッド構造を採用しているが、これに代えて、トレッドゴム10の端部をサイドウォールゴム9の端部に載せてなるトレッドオンサイド構造を採用することも可能である。この場合、導電性ゴムで形成したサイドウォールゴム9に導電部13,14を接続することで、所要の導電経路を設けることができる。
【0047】
図3に示すトレッドゴム10には、左右で溝面積が異なる非対称パターンが形成されており、タイヤ赤道Cを基準として、接地面の左側となる領域の溝面積が右側となる領域の溝面積よりも大きい。接地面における溝面積の算出には、周方向主溝15のほか、不図示の横溝や細溝なども勘案される。かかる非対称パターンは、例えば、溝面積が相対的に小さい領域を車両外側に配置し、それにより操縦安定性を高める目的で用いられる。装着方向指定型のタイヤでは、車両への装着の向きがサイドウォール部2に表示される。
【0048】
図3の例では、導電部13の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道Cまでの距離D13が、導電部14の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道Cまでの距離D14よりも長い。これにより、非対称パターンが形成されたトレッドゴムにおいて、左右の剛性バランスを改善できるため、タイヤの横方向のユニフォミティを向上するうえで有益となる。接地面において右側の領域の溝面積が相対的に大きい場合には、距離D14を距離D13よりも長くすることが有効である。
【0049】
本発明のタイヤが備えるトレッドゴムは、押出成形法によって成形できるものの、ユニフォミティを向上する観点からリボン巻き工法で成形することが好ましく、それらの併用も可能である。押出成形法は、所望の断面形状を有する未加硫の帯状ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法である。リボン巻き工法は、小幅で未加硫のゴムリボンをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けて、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。
【0050】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。空気入りタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来のタイヤ製造工程と同様にして製造できるため、トレッドゴムの成形工程を中心に説明する。
【0051】
[トレッドゴムの成形工程に関する第1の態様]
まず、図4(A)に示すように、後述する回転支持体31の外周面に非導電性ゴムでベース部11を形成する。図示を省略しているが、回転支持体31の外周面には予めベルト層6とベルト補強層8とが設けられており、それらの上にベース部11が形成される。ベース部11の形成は、押出成形法とリボン巻き工法のどちらを利用しても構わない。
【0052】
次に、図4(B)に示すように、ベース部11の左側の外周面に、キャップ部12の左側部分となる第1のキャップ部12Lを形成する。第1のキャップ部12Lは、リボン巻き工法を利用して、図5に示した非導電性ゴム21よりなる第1のゴムリボン20をタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けることによって形成される。
【0053】
ゴムリボン20は、図5(A)のように非導電性ゴム21で形成されているが、必要に応じて、図5(B)のような導電性ゴム22が部分的に設けられる。巻き付け時には、図5の下側が、回転支持体31に対向する内周側となる。したがって、図5(B)のゴムリボン20では、非導電性ゴム21の内周側面が導電性ゴム22によって被覆されている。ゴムリボン20の断面は、三角形に限られず、楕円形や四角形など他の形状でも構わない。
【0054】
ゴムリボン20の成形及び巻き付けは、図6に例示したような設備を用いて行うことができる。この設備は、二種のゴムを共押出して複層のゴムリボン20を成形可能なゴムリボン供給装置30と、ゴムリボン供給装置30より供給されたゴムリボン20が巻き付けられる回転支持体31と、ゴムリボン供給装置30及び回転支持体31の作動制御を行う制御装置32とを備える。回転支持体31は、軸31aを中心としたR方向の回転と、軸方向への移動とが可能に構成されている。
【0055】
押出機33は、ホッパー33a、スクリュー33b、バレル33c、スクリュー33bの駆動装置33d、及び、ギアポンプを内蔵するヘッド部33eを備えている。これと同様に、押出機34もホッパー34a、スクリュー34b、バレル34c、駆動装置34d及びヘッド部34eを備える。一対の押出機33、34の先端には、口金36が付設されたゴム合体部35が設けられている。
【0056】
ホッパー33aにゴム材料である非導電性ゴムを投入し、ホッパー34aにゴム材料である導電性ゴムを投入すると、各ゴムはスクリュー33b、34bで混練されながら前方に送り出され、ヘッド部33e、34eを経由し、ゴム合体部35にて所定の形状で合体され、複層のゴムリボン20として吐出口36aから押出成形される。成形されたゴムリボン20は、ロール37によって前方に送り出され、ローラ38によって押さえ付けられながら回転支持体31に巻き付けられる。
【0057】
ゴムリボン20を成形する際に、ヘッド部34e内のギアポンプの回転を制止し、必要であればスクリュー34bの回転も制止して、導電性ゴムの押出を停止すれば、図5(A)のように非導電性ゴム21の単層としたゴムリボン20が得られる。このようなヘッド部34e内のギアポンプ及びスクリュー34bの作動は制御装置32により制御され、ゴムリボンにおける単層と複層とを自在に切り換えられる。
【0058】
図4(B)の第1のキャップ部12Lを形成する段階では、巻き付け最中のゴムリボン20に導電性ゴム22を部分的に設け、その導電性ゴム22によって導電部13を形成する。上述のように、導電部13は、タイヤ赤道Cから左側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間を左側に延びる。
【0059】
次に、図4(C)に示すように、ベース部11の右側の外周面に、キャップ部12の右側部分となる第2のキャップ部12Rを形成する。これによりキャップ部12が完成し、図2に示したトレッドゴム10が成形される。第2のキャップ部12Rは、リボン巻き工法を利用して、非導電性ゴムよりなる第2のゴムリボンをタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けることにより形成される。
【0060】
第2のゴムリボンは、非導電性ゴムにより形成され、第1のゴムリボン20と同様に、必要に応じて導電性ゴムが部分的に設けられる。本実施形態では、第1のキャップ部12Lを形成した後、ゴムリボン供給装置30から供給されるゴムリボン20を第2のゴムリボンとして使用し、それによって第2のキャップ部12Rを形成する例を示す。
【0061】
図4(C)の第2のキャップ部12Rを形成する段階では、巻き付け最中のゴムリボン20に導電性ゴム22を部分的に設け、その導電性ゴム22によって導電部14を形成する。上述のように、導電部14は、タイヤ赤道Cから右側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達し、キャップ部12とベース部11との間を右側に延びる。
【0062】
図7は、図4に示したトレッドゴムの成形工程において、ゴムリボン20の巻き付け位置の移動経路の一例を概念的に示している。第1のキャップ部12Lを形成する段階では、横向き8の字状の経路Xに沿って第1のゴムリボンが巻き付けられ、第2のキャップ部12Rを形成する段階では、経路Xとは逆向きとなる横向き8の字状の経路Yに沿って第2のゴムリボンが巻き付けられる。
【0063】
具体的には、第1のキャップ部12Lを形成する段階において、第1のゴムリボン20を図8に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより左側に隔てた始点SL1から右側に移動し、次いで左側に折り返して始点SL1を通過し、次いでベース部11の左側の端部を通過し、その後に右側に折り返して終点FL1に至る。
【0064】
このとき、左側への折り返し後であって始点SL1の通過前となる箇所P1から、ベース部11の左側の端部を通過した箇所P2までの区間で、図5(B)のように導電性ゴム22がゴムリボン20に設けられる。この導電性ゴム22は、タイヤ赤道Cから左側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達するとともに、キャップ部12とベース部11との間を左側に延びる導電部13を構成する。
【0065】
また、第2のキャップ部12Rを形成する段階においては、第2のゴムリボン20を図9に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより右側に隔てた始点SR1から左側に移動し、次いで右側に折り返して始点SR1を通過し、次いでベース部11の右側の端部を通過し、その後に左側に折り返して終点FR1に至る。
【0066】
このとき、右側への折り返し後であって始点SR1の通過前となる箇所P3から、ベース部11の右側の端部を通過した箇所P4までの区間で、図5(B)のように導電性ゴム22がゴムリボン20に設けられる。この導電性ゴム22は、タイヤ赤道Cから右側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達するとともに、キャップ部12とベース部11との間を右側に延びる導電部14を構成する。
【0067】
図8,9のように、導電性ゴム22が設けられたゴムリボン20は、その導電性ゴム22の端部が、隣り合うゴムリボン20の導電性ゴム22の腹部に接触するように巻き付けられる。よって、導電部13,14は、図4に示された部分だけでなく、その部分から接地面側に分岐して途中で終端する複数の枝状部分を有するが、図示は省略している。尚、導電部13,14は、そのような枝状部分を具備するものに限られない。
【0068】
本実施形態では、第1のキャップ部12Lを形成する段階において、第1のキャップ部12Lの右側の端部を先細りにして斜面を形成している。次いで、第2のキャップ部12Rを形成する段階では、図9(B)のようにゴムリボン20を斜面に巻き付け、第2のキャップ部12Rの左側の端部を、第1のキャップ部12Lの右側の端部に重ねて形成している。このため、第1のキャップ部12Lに第2のキャップ部12Rを連ねやすい。
【0069】
図4,7の例では、キャップ部12が第1のキャップ部12Lと第2のキャップ部12Rとで構成されることから、ゴムリボン20の二回の巻き付けによってキャップ部12を形成でき、生産性を向上するうえで有益である。また、ゴムリボンを巻き付ける始点SL1,SR1と終点FL1,FR1が、タイヤ赤道Cから少なくとも接地幅の10%以上の距離を隔てて設定されることになるため、RROの増大を防いでユニフォミティを向上できる。
【0070】
図示を省略しているが、成形したトレッドゴム10の内周にはベルト層6とベルト補強層8が配設されている。トレッドゴムの成形工程後は、グリーンタイヤの成形工程へと移行し、トロイド状に成形したカーカス層7の外周面にトレッドゴム10を貼り合わせるとともに、他のタイヤ構成部材と組み合わせてグリーンタイヤを成形する。その後、グリーンタイヤの加硫工程へと移行し、グリーンタイヤに加硫処理を施して、図1に示した空気入りタイヤTが製造される。
【0071】
[トレッドゴムの成形工程に関する第2の態様]
図10に示すトレッドゴム10の成形工程は、以下に説明する事柄の他は、図4で説明した工程と同様であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。図10の工程では、(A)に示すように、ベース部11を形成する段階の後に、キャップ部12のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部12Cを形成する段階を含む。第3のキャップ部12Cは非導電性ゴムで形成され、押出成形法とリボン巻き工法のどちらを利用しても構わない。
【0072】
図10(B)は、キャップ部12の左側部分となる第1のキャップ部12Lを形成する段階を示す。導電部13は、巻き付け最中のゴムリボン20に設けられた導電性ゴム22によって形成される。図10(C)は、キャップ部12の右側部分となる第2のキャップ部12Rを形成する段階を示す。導電部14は、巻き付け最中のゴムリボン20に設けられた導電性ゴム22によって形成される。
【0073】
図11は、図10に示したトレッドゴムの成形工程において、ゴムリボン20の巻き付け位置の移動経路の一例を概念的に示している。第1のキャップ部12Lを形成する段階では、横向き8の字状の経路X´に沿って第1のゴムリボンが巻き付けられ、第2のキャップ部12Rを形成する段階では、経路X´とは逆向きとなる横向き8の字状の経路Y´に沿って第2のゴムリボンが巻き付けられる。
【0074】
具体的には、第1のキャップ部12Lを形成する段階において、第1のゴムリボン20を図12に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより左側に隔てた始点SL2から右側に移動し、次いで左側に折り返して始点SL2を通過し、次いでベース部11の左側の端部を通過し、その後に右側に折り返して終点FL2に至る。
【0075】
このとき、始点SL2から左側へ折り返す箇所P5までの区間、及び、始点SL2の通過直後となる箇所P6からベース部11の左側の端部を通過した箇所P7までの区間で、導電性ゴム22がゴムリボン20に設けられる。この導電性ゴム22は、タイヤ赤道Cから左側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達するとともに、キャップ部12とベース部11との間を左側に延びる導電部13を構成する。
【0076】
また、第2のキャップ部12Rを形成する段階においては、第2のゴムリボン20を図13に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより右側に隔てた始点SR2から左側に移動し、次いで右側に折り返して始点SR2を通過し、次いでベース部11の右側の端部を通過し、その後に左側に折り返して終点FR2に至る。
【0077】
このとき、始点SR2から右側へ折り返す箇所P8までの区間、及び、始点SR2の通過直後となる箇所P9からベース部11の右側の端部を通過した箇所P10までの区間で、導電性ゴム22がゴムリボン20に設けられる。この導電性ゴム22は、タイヤ赤道Cから右側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びてベース部11の外周面に到達するとともに、キャップ部12とベース部11との間を右側に延びる導電部14を構成する。
【0078】
本実施形態では、第3のキャップ部12Cを形成する段階において、第3のキャップ部12Cのタイヤ幅方向の両端部を先細りに形成して斜面を形成している。そして、第1のキャップ部12Lを形成する段階では、図12(A)のようにゴムリボン20を斜面に巻き付け、第1のキャップ部12Lの右側の端部を、第3のキャップ部12Cの左側の端部に重ねて形成している。更に、第2のキャップ部12Rを形成する段階では、図13(A)のようにゴムリボン20を斜面に巻き付け、第2のキャップ部12Rの左側の端部を、第3のキャップ部12Cの右側の端部に重ねて形成している。
【0079】
これにより、第3のキャップ部12Cに第1のキャップ部12Lと第2のキャップ部12Rを的確に連ねて、キャップ部12を均一に形成しやすくできる。それでいて、斜面に沿って巻き付けたゴムリボン20の導電性ゴム22により、接地面からベース部11の外周面に至る導電部13,14の傾斜部分を容易に形成することができる。
【0080】
図10,11の例によれば、中央部分に第3のキャップ部を具備しない図4,7の例に比べて、導電部の形成に関わる第1及び第2のゴムリボンを巻き付ける範囲を抑えることができる。そのうえ、ゴムリボンを巻き付ける始点SL2,SR2と終点FL2,FR2をタイヤ赤道Cから的確に離して設定できるため、RROの増大を防いでユニフォミティを良好に向上できる。
【0081】
[トレッドゴムの成形工程に関する第3の態様]
図14に示すトレッドゴム10の成形工程は、以下に説明する事柄の他は、既に説明した工程と同様であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。図14の工程では、図10の工程と同様に、ベース部11を形成する段階の後に、キャップ部12のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部12Cを形成する段階を含む。それでいて、図4の工程と同様の手順によりゴムリボン20を巻き付ける。
【0082】
図14において、(A)は第3のキャップ部12Cを形成する段階を示し、(B)は第1のキャップ部12Lを形成する段階を示し、(C)は第2のキャップ部12Rを形成する段階を示す。導電部13,14は、それぞれ巻き付け最中のゴムリボン20に設けられた導電性ゴム22によって形成される。ゴムリボン20の巻き付け位置の移動経路は、図11に例示される。
【0083】
第1のキャップ部12Lを形成する段階では、第1のゴムリボン20を図15に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより左側に隔てた始点SL3から右側に移動し、次いで左側に折り返して始点SL3を通過し、次いでベース部11の左側の端部を通過し、その後に右側に折り返して終点FL3に至る。このとき、左側への折り返し後であって始点SL3の通過前となる箇所P11から、ベース部11の左側の端部を通過した箇所P12までの区間でゴムリボン20に導電性ゴム22が設けられ、それにより導電部13を構成する。
【0084】
第2のキャップ部12Rを形成する段階では、第2のゴムリボン20を図16に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより右側に隔てた始点SR3から左側に移動し、次いで右側に折り返して始点SR3を通過し、次いでベース部11の右側の端部を通過し、その後に左側に折り返して終点FR3に至る。このとき、右側への折り返し後であって始点SR3の通過前となる箇所P13から、ベース部11の右側の端部を通過した箇所P14までの区間でゴムリボン20に導電性ゴム22が設けられ、それにより導電部14を構成する。
【0085】
本実施形態では、第3のキャップ部12Cのタイヤ幅方向の両端部が先細りに形成されている。それでいて、第1のキャップ部12Lの右側の端部を、第3のキャップ部12Cの左側の端部に重ねて、第2のキャップ部12Rの左側の端部を、第3のキャップ部12Cの右側の端部に重ねている。このため、第3のキャップ部12Cに第1のキャップ部12Lと第2のキャップ部12Rを的確に連ねて、キャップ部12を均一に形成しやすくできる。
【0086】
[トレッドゴムの成形工程に関する第4の態様]
図17に示すトレッドゴム10の成形工程は、以下に説明する事柄の他は、既に説明した工程と同様であるので、共通点を省略して主に相違点について説明する。図17の工程では、(A)に示すように、ベース部11を形成する段階の後に、ベース部11の外周面のタイヤ幅方向の中央部に、ベース部11よりも幅狭となるインナーキャップ12iを非導電性ゴムで形成する段階を含む。
【0087】
インナーキャップ12iの形成は、押出成形法とリボン巻き工法のどちらを利用しても構わない。インナーキャップ12iは、タイヤ赤道を含む中央域に配置され、トレッド幅に対するインナーキャップ12iの幅の比率は、例えば20〜80%であり、好ましくは30〜70%である。インナーキャップ12iは、第1のキャップ部12Lや第2のキャップ部12Rよりも薄く形成され、端部の厚みが漸減する形状をしている。
【0088】
図17において、(A)はインナーキャップ12iを形成する段階を示し、(B)は第1のキャップ部12Lを形成する段階を示し、(C)は第2のキャップ部12Rを形成する段階を示す。導電部13,14は、それぞれ巻き付け最中のゴムリボン20に設けられた導電性ゴム22によって形成される。ゴムリボン20の巻き付け位置の移動経路は、図18に例示される。横向き8の字状の経路X´´に沿って第1のゴムリボンが巻き付けられ、それとは逆向きとなる横向き8の字状の経路Y´´に沿って第2のゴムリボンが巻き付けられる。
【0089】
具体的には、第1のキャップ部12Lを形成する段階において、第1のゴムリボン20を図19に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより左側に隔てた始点SL4から右側に移動し、次いで左側に折り返して始点SL4を通過し、次いでベース部11の左側の端部を通過し、その後に右側に折り返して終点FL4に至る。このとき、左側への折り返し後であって始点SL4の通過前となる箇所P15から、ベース部11の左側の端部を通過した箇所P16までの区間でゴムリボン20に導電性ゴム22が設けられ、それにより導電部13を構成する。
【0090】
第2のキャップ部12Rを形成する段階では、第2のゴムリボン20を図20に示したように巻き付ける。即ち、(A)〜(C)に順次に示すように、ゴムリボン20の巻き付け位置は、タイヤ赤道Cより右側に隔てた始点SR4から左側に移動し、次いで右側に折り返して始点SR4を通過し、次いでベース部11の右側の端部を通過し、その後に左側に折り返して終点FR4に至る。このとき、右側への折り返し後であって始点SR4の通過前となる箇所P17から、ベース部11の右側の端部を通過した箇所P18までの区間でゴムリボン20に導電性ゴム22が設けられ、それにより導電部14を構成する。
【0091】
このように、キャップ部12を形成するに際して、インナーキャップ12iを事前に形成することにより、トレッドゴム10の中央部の厚みを容易に確保でき、トレッドゴム10を所望の形状で成形しやすくなる。また、図17において、(A)で形成した部材を別の製造ラインに移し、それ以降の工程を実行するようにすれば、(B)や(C)の段階を実行する間に、次の製品に対する(A)の段階を実行できるため、サイクルタイムが短縮化されて好都合である。
【0092】
図17,18では、第1のキャップ部12Lの端部に第2のキャップ部12Rの端部を重ねて形成する例を示したが、インナーキャップ12iを形成した後に、上述したような第3のキャップ部を形成しても構わない。第3のキャップ部を形成した後は、図12,13で示した手順により、或いは図15,16で示した手順により、導電部13,14を形成することができる。
【0093】
第1〜第4の態様に関し、前述の実施形態では、第1のキャップ部と第2のキャップ部とを同じ手順で形成する例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。したがって、例えば、図12の手順により第1のキャップ部を形成するとともに、図16の手順により第2のキャップ部を形成することも可能である。
【0094】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
【0096】
(1)通電性能(電気抵抗値)
リムに装着したタイヤに所定の荷重を負荷し、リムを支持する軸からタイヤが接地する金属板に印加電圧(500V)をかけて電気抵抗値を測定した。
【0097】
(2)ユニフォミティ
JISD4233に規定する試験方法に基づいて、LFV(ラテラルフォースバリエーション)を測定した。具体的には、タイヤを回転ドラムに押し付けながら回転させたときに発生するタイヤ横方向の力の変動量を測定し、その測定値の逆数によって評価した。比較例1の結果を100として指数化し、数値が大きいほどユニフォミティに優れていることを示す。
【0098】
(3)転がり抵抗
転がり抵抗試験機により転がり抵抗を測定し、その測定値の逆数によって評価した。比較例1の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど転がり抵抗が小さくて良好であることを示す。
【0099】
図1に示す構造を有するタイヤ(タイヤサイズ:245/55R19)において、距離D13,D14を表1の如く設定し、比較例1〜3及び実施例1〜5とした。但し、比較例1と比較例3には、第1の導電部を設けていない。また、各例のトレッドパターンは左右対称のブロックパターンであるが、実施例4に限っては、第2の導電部を設けた側の領域をリブパターンとしている。よって、実施例4では、周方向主溝の位置が左右で同一であるものの、第1の導電部を設けた側の領域の溝面積が、第2の導電部を設けた側の領域の溝面積よりも大きい。実施例5は、上述した第3の態様により成形したものである。
【0100】
【表1】

【0101】
比較例1,2では、皮被りの状態になったことにより導電部の露出が阻害され、通電性能が適切に発現されていない。比較例3では、導電部がタイヤ幅方向の片側にのみ設けられているため、ユニフォミティが相対的に悪い。これらに対して、実施例1〜5では、ユニフォミティの悪化を抑えながら、通電性能を適切に発揮できている。
【符号の説明】
【0102】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 リムストリップゴム
7 カーカス層
9 サイドウォールゴム
10 トレッドゴム
11 ベース部
12 キャップ部
12C 第3のキャップ部
12L 第1のキャップ部
12R 第2のキャップ部
12i インナーキャップ
13 第1の導電部
14 第2の導電部
15 周方向主溝
20 ゴムリボン
21 非導電性ゴム
22 導電性ゴム
C タイヤ赤道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、前記サイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部と、一対の前記ビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に設けられたサイドウォールゴムと、前記トレッド部で前記カーカス層の外側に設けられたトレッドゴムとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムが、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップ部と、非導電性ゴムで形成され且つ前記キャップ部のタイヤ径方向内側に設けられたベース部と、導電性ゴムで形成され且つ接地面で露出する一対の導電部とを有し、
前記一対の導電部が、
接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側に接地幅の10%以上の距離を隔てている第1の導電部と、
接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の他方側に延びて、前記カーカス層のトッピングゴム又は前記サイドウォールゴムに接続され、その接地面上の露出箇所が、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の他方側に接地幅の10%以上の距離を隔てている第2の導電部とで構成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1の導電部及び前記第2の導電部が接地面からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達するまでの区間を避けて、前記トレッドゴムの表面に周方向主溝が形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ赤道を基準として、接地面のタイヤ幅方向の一方側となる領域の溝面積が、そのタイヤ幅方向の他方側となる領域の溝面積よりも大きく、前記第1の導電部の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道までの距離が、前記第2の導電部の接地面上の露出箇所からタイヤ赤道までの距離よりも長い請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
接地面を構成するキャップ部のタイヤ径方向内側にベース部を設けたトレッドゴムの成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、
前記トレッドゴムの成形工程が、
非導電性ゴムで前記ベース部を形成する段階と、
前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の外周面に、非導電性ゴムよりなる第1のゴムリボンをタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けて、前記キャップ部のタイヤ幅方向の一方側部分となる第1のキャップ部を形成する段階と、
前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の外周面に、非導電性ゴムよりなる第2のゴムリボンをタイヤ周方向に沿った螺旋状に巻き付けて、前記キャップ部のタイヤ幅方向の他方側部分となる第2のキャップ部を形成する段階とを含み、
前記第1のキャップ部を形成する段階では、巻き付け最中の前記第1のゴムリボンに導電性ゴムを部分的に設け、その導電性ゴムによって、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の一方側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の一方側に延びる第1の導電部を形成し、
前記第2のキャップ部を形成する段階では、巻き付け最中の前記第2のゴムリボンに導電性ゴムを部分的に設け、その導電性ゴムによって、タイヤ赤道からタイヤ幅方向の他方側に接地幅の10%以上の距離を隔てた接地面上の箇所からタイヤ径方向内側に延びて前記ベース部の外周面に到達し、前記キャップ部と前記ベース部との間をタイヤ幅方向の他方側に延びる第2の導電部を形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記第1のキャップ部を形成する段階では、
前記第1のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の一方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の他方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の一方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の他方側に折り返して終点に至り、
タイヤ幅方向の一方側への折り返し後であって前記始点の通過前となる箇所から、前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第1の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第1のゴムリボンに設けられ、
或いは、
前記第2のキャップ部を形成する段階では、
前記第2のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の他方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の一方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の他方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の一方側に折り返して終点に至り、
タイヤ幅方向の他方側への折り返し後であって前記始点の通過前となる箇所から、前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第2の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第2のゴムリボンに設けられる請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1のキャップ部を形成する段階で、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を先細りに形成し、
前記第2のキャップ部を形成する段階で、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねて形成する請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記トレッドゴムの成形工程が、前記キャップ部のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部を非導電性ゴムで形成する段階を含み、
前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部に重ねて、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねる請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記トレッドゴムの成形工程が、前記キャップ部のタイヤ幅方向の中央部分となる第3のキャップ部を非導電性ゴムで形成する段階を含み、
前記第1のキャップ部を形成する段階では、
前記第1のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の一方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の他方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の一方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の他方側に折り返して終点に至り、
前記始点からタイヤ幅方向の一方側へ折り返す箇所までの区間、及び、前記始点の通過直後から前記ベース部のタイヤ幅方向の一方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第1の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第1のゴムリボンに設けられ、
或いは、
前記第2のキャップ部を形成する段階では、
前記第2のゴムリボンの巻き付け位置が、タイヤ赤道よりタイヤ幅方向の他方側に隔てた始点からタイヤ幅方向の一方側に移動し、次いでタイヤ幅方向の他方側に折り返して前記始点を通過し、次いで前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過し、その後にタイヤ幅方向の一方側に折り返して終点に至り、
前記始点からタイヤ幅方向の他方側へ折り返す箇所までの区間、及び、前記始点の通過直後から前記ベース部のタイヤ幅方向の他方側の端部を通過した箇所までの区間で、前記第2の導電部を形成するための導電性ゴムが前記第2のゴムリボンに設けられる請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記第3のキャップ部を形成する段階で、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の両端部を先細りに形成し、
前記第1のキャップ部を形成する段階で、前記第1のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部に重ねて形成し、
前記第2のキャップ部を形成する段階で、前記第2のキャップ部のタイヤ幅方向の一方側の端部を、前記第3のキャップ部のタイヤ幅方向の他方側の端部に重ねて形成する請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記トレッドゴムの成形工程が、前記ベース部の外周面のタイヤ幅方向の中央部に、前記ベース部よりも幅狭となるインナーキャップを非導電性ゴムで形成する段階を含み、
前記インナーキャップを覆うようにして前記キャップ部を形成する請求項4〜9いずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−79049(P2013−79049A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6361(P2012−6361)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】