説明

空気入りタイヤ

【課題】混合及び押出加工性に優れスタッド保持性の高い並びに氷雪性能に優れ、耐摩耗性及び耐サイプクラック性及び改善されたゴム組成物を用いた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】(A)(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒を前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム5〜70重量部を含むジエン系ゴム100重量部並びに(B)窒素比表面積(N2SA)が100〜250m2/gのカーボンブラック20〜69重量部を含んでなるゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性を低下させることなく、硬度及び貯蔵弾性率E’を向上させることができ、例えばラリー用スタッドレスタイヤにおけるスタッド保持性を向上させることができる空気入りタイヤに関し、また耐摩耗性及び耐サイプクラック性を改良することができ、氷雪性能を向上させることができるスタッドレスタイヤなどの空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
冬季ラリー用スタッドレスタイヤ用のトレッドは、−20℃以下の極低温で使用し、かつ高い硬度と貯蔵弾性率E’を必要とするため、ゴム成分としては天然ゴム(NR)/ポリブタジエンゴム(BR)系を用いることが多いが、スタッド保持性を更に向上させる目的で、カーボンを増量したり、軟化剤を減量したりすると、混合加工性及び押出し加工性を著しく悪化させたりするという問題があった。BRの代わりに市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴム(VCR)(例えば特許文献1,2参照)を使用しても、押出し加工性や貯蔵弾性率E’向上効果が不十分であった。
【0003】
一方、スタッドレス用キャップトレッドにおいては、氷上性能向上のため、熱膨張カプセルや発泡剤を配合してゴム中に中空部位を作ることで吸水効果を狙う手法があるが、中空部位を有するがゆえに、耐摩耗性が悪化したり、あるいはスタッドレスに特有のサイプが多いブロックパターンに起因してサイプ欠損が発生するなどの問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−238994号公報
【特許文献2】特開2000−26657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、スタッド(スパイク)の保持性が高く、混合及び押出加工性に優れた冬季ラリー用の空気入りタイヤのトレッドに用いるのに適したゴム組成物を開発することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、氷雪性能に優れ、耐摩耗性及び耐サイプクラック性が改良されたスタッドレスタイヤのキャップトレッドに使用するのに適したゴム組成物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、(A)(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒を前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム(以下、新規VCRということがある)5〜70重量部を含むジエン系ゴム100重量部並びに(B)窒素比表面積(N2SA)が100〜250m2/gのカーボンブラック20〜69重量部を含んでなるゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤが提供される。
【0008】
本発明に従えば、また、(A)(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒を前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム(以下、新規VCRということがある)5〜70重量部を含むジエン系ゴム100重量部並びに(C)熱膨張性材料2〜20重量部を含んでなるゴム組成物をキャップトレッドに用いたスタッドレスタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、NRと新規VCRとを含むゴム成分に、特定のカーボンブラックを配合することにより、混合及び押出し加工性を犠牲にすることなく、硬度及び貯蔵弾性率E’を向上させたゴム組成物を得ることができ、このゴム組成物をトレッド部に用いることにより、例えばラリー用スタッドレスタイヤにおけるスタッド保持性を向上させることができる。本発明によれば、また、氷雪性能が向上したスタッドレスキャップ用ゴム組成物の耐摩耗性、耐サイプクラック性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、前記第一の課題を解決すべく研究を進めた結果、特定の新規ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(VCR)5〜70重量部、好ましくは10〜40重量部と、ジエン系ゴム(例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)など)を95〜30重量部、好ましくは90〜60重量部を含むゴム成分100重量部に対し、JIS K6217に準拠して測定した窒素比表面積(N2SA)が100〜250m2/g、好ましくは110〜180m2/gのカーボンブラック20〜69重量部、好ましくは25〜60重量部を配合してなる、ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤは、混合及び押出加工性を犠牲にすることなく、硬度及び貯蔵弾性率E’を向上させることができ、タイヤにおけるスタッド保持性を向上させることができることを見出した。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤに使用するゴム組成物は、特定の新規ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(VCR)5〜70重量部(好ましくは10〜40重量部)を含む、空気入りタイヤ用として使用できる任意のジエン系ゴム100重量部をゴム成分として使用する。このブレンドゴム中の新規VCRの割合が少ないと硬度及び貯蔵弾性率E’の向上効果が小さいので好ましくなく、逆に多いと混合加工性が悪化したり、耐疲労性が低下するので好ましくない。
【0012】
本発明の空気入りタイヤに使用するゴム成分を構成する新規VCRは、特開2005−247899号公報(宇部興産株式会社)に記載の方法によって製造することができる。具体的には(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒(例えばn−ブタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、ブテン−1)との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒として、一般式AlRn3-n(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物(例えばコバルトのβ−ジケトン錯体、コバルトのβ−ケト酸エステル錯体、C6以上の有機カルボン酸のコバルト塩、ハロゲン化コバルト錯体)とを前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR3(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物と二硫化炭素とから得られる1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させることによって得ることができる。更に詳しくは特開2005−247899号公報に記載の通りである。
【0013】
本発明の空気入りタイヤに使用するゴム組成物には、前記ゴム成分100重量部に対し、N2SAが100〜250m2/g、好ましくは110〜180m2/gのカーボンブラックを20〜69重量部(好ましくは25〜60重量部)配合する。
【0014】
本発明に使用するカーボンブラックのN2SAが100〜250m2/gのカーボンブラックは、例えばISAFグレード、SAFグレードなどのカーボンブラックとして市販されており、本発明においてもかかるカーボンブラックを使用することができる。N2SAが100〜250m2/gのカーボンブラックの使用割合が少ないとトレッド剛性が不十分となるので好ましくなく、逆に多いと混合加工性が悪化したり、発熱が大きくなりころがり抵抗の悪化につながるので好ましくない。
【0015】
本発明の第一の好ましい態様では新規VCR10〜40重量部並びにNR及び/又はIR90〜60重量部を含むジエン系ゴム100重量部に対しナイロン短繊維(D)を1〜10重量部(好ましくは1〜5重量部)を配合する。かかるナイロン短繊維は市販されており、例えば大丸産業(株)製のSHP−HA1060などを使用することができる。このナイロン短繊維(D)の配合量が少ないと貯蔵弾性率E’の向上効果が必ずしも十分でないので好ましくなく、逆に多いと破断物性が低下するおそれがあるので好ましくない。ナイロン短繊維の寸法には特に限定はないが、平均径が0.05〜0.8μmであるのが好ましい。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、前記新規VCR5〜70重量部(好ましくは10〜40重量部)を配合したジエン系ゴム100重量部に、氷上性能を大幅に向上させることができる熱膨張性材料2〜20重量部(好ましくは3〜15重量部)を配合することによって、ゴム組成物の氷上摩擦力と貯蔵弾性率E’と耐クラック成長性が向上するので、例えばスタッドレスタイヤにおける氷上グリップ性能とトレッドブロック剛性とサイプの耐クラック性を高次にバランス化させることができることを見出した。
【0017】
本発明の第二の態様の空気入りタイヤの、例えばキャップトレッドに使用するゴム組成物に熱膨張性材料を配合することにより、耐摩耗性に関しても、熱膨張性材料を使用しないレベルにまで改善することができる。熱膨張性材料としては熱膨張性マイクロカプセル(例えば松本油脂製薬(株)より市販のマイクロスフェアーF100Dなど)及び/又は熱膨張性黒鉛(例えば巴工業(株)より市販のグラフガード160−80Nなど)などの公知材料を用いることができる。熱膨張性材料の配合量が少ないと氷上摩擦力が低下するおそれがあるので好ましくなく、逆に多いとサイプ欠損が発生しやすくなるおそれがあるので好ましくない。
【0018】
本発明に係る空気入りタイヤに使用するゴム組成物には、前記した成分に加えて、その他のカーボンブラック、シリカなどの補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合することができる各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0020】
実施例1〜3及び比較例1〜4
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、160℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0021】
次に得られたゴム組成物を用いて以下のようにして試験用タイヤを作製した。
試験用タイヤの作製
表Iの各ゴム組成物をトレッドに用いて110/650R15サイズのタイヤを作製した。トレッド以外の構成パーツはすべて同一にした。
【0022】
得られたゴム組成物及びタイヤの物性を以下の方法で試験し、結果を表Iに示した。
ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):JIS K6300に準拠して測定した。
比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほどムーニー粘度が高く混合加工性が悪いことを示す。
【0023】
押出し加工性:トレッド押出し物のエッヂ部の状態を官能評価した。
5 : 幅が安定しておりゴム表面が滑らかである状態
4 : 幅は安定しているがゴム表面にやや凹凸が見られる状態
3 : 幅が部分的に不安定であり、ゴム表面に凹凸が目立つ状態
2 : 幅が全体的に不安定である状態
【0024】
スタッド保持性:110/650R15タイヤにてラリー競技車両で約5kmの凍結路面を限界走行したときのスタッド保持率で評価した。
◎ : スタッドの脱落が1%未満
○ : スタッドの脱落が1〜3%
△ : スタッドの脱落が4〜10%
× : スタッドの脱落が11%以上
【0025】
【表1】

【0026】
表I脚注
*1:天然ゴム(SIR20)
*2:日本ゼオン(株)製ポリブタジエンゴム(NIPOL BR1220)
【0027】
*3:宇部興産(株)製VCR412
【0028】
*4:試作品VCR(1,2ポリブタジエン=12%)
以下の方法で製造した。所定の水分を溶解した1,3−ブタジエンを32重量%濃度でシス−2−ブテンを主成分として含有するC4留分(68重量%)混合媒体(水分;2.09ミリモル/L)を毎時12.5リットル(二硫化炭素20mg/Lを含有する)を20℃に保持された容量2リットルの攪拌機付きステンレス製熟成槽に供給すると共にジエチルアルミニウムクロライド(10重量%のn−ヘキサン溶液、3.13mmol/L)を供給し、この反応槽溶液におけるジエチルアルミニウムクロライド/水モル比を1.5に調製する。得られた熟成液を40℃に保持された容量5リットルの攪拌機付きステンレス製シス重合槽に供給する。このシス重合槽にはコバルトオクトエート(コバルトオクトエート0.0117mmol/L,n−ヘキサン溶液)と分子量調節剤1,2−ブタジエン(1,2−ブタジエン8.2mmol/L;1.535mol/Lのn−ヘキサン溶液)が供給される。得られたシス重合液を内容5リットルのリボン型攪拌機付きステンレス製1,2重合槽に供給し、35℃で10時間連続重合した。この1,2重合槽にはトリエチルアルミニウム(10重量%のn−ヘキサン溶液、4.09mmol/L)を連続的に供給した。得られた重合液を攪拌機付混合槽に供給し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴムに対して1PHR加え、更にメタノールを少量加え重合を停止した後、未反応1,3−ブタジエン及びC4留分を蒸発除去し、常温で真空乾燥してVCR8.3kgを得た。このVCRのML=57,H.l=11.1%,H.lの融点=204.1℃,H.lのηsp/c=1.84、沸騰n−ヘキサン可溶分のML=30、沸騰n−ヘキサン可溶分のT−cp=62、沸騰n−ヘキサン可溶分のシス−1,4構造=98.5%,Mw=465,000、Mn=188,000、Mw/Mn=2.47であった。透過型電子顕微鏡観察写真から得られた短繊維結晶の長軸長さの分布は繊維長さの98%以上が0.6μm未満であり、且つ繊維長さの70%以上が0.2μm未満であった。
【0029】
*5:大丸産業(株)製ナイロン短繊維大和SHP−HA1060(NR=38%)
*6:三菱化学(株)製カーボンブラック(N2SA=142m2/g)
*7:三菱化学(株)製カーボンブラック(N2SA=96m2/g)
*8:昭和シェル石油(株)製デソレックス3号
*9:住友化学工業(株)製老化防止剤アンチゲン6C
*10:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*11:日本油脂(株)製ステアリン酸(ビーズステアリン酸YR)
*12:大内新興化学工業(株)製加硫促進剤(ノクセラーCZ−G)
*13:鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄
【0030】
実施例4〜7及び比較例5〜10
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄と熱膨張性材料を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、160℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄と熱膨張性材料をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0031】
得られたゴム組成物の物性を以下の方法で評価した。結果は表IIに示す。尚、氷上摩擦、ランボーン摩擦及びクラック成長試験の試料は金型中で160℃で20分間加硫して得た。
加硫比重:各ゴム組成物を直径3cm、高さ1.5cmの円柱形のモールド内で170℃で15分間加硫し、充分冷却後にサンプルの中心部を切り抜き、JIS K6268に準拠して測定した。
【0032】
氷上摩擦:各ゴム組成物を加硫したシート状ゴム片を扁平円柱状の台ゴムに貼りつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定条件は、測定温度−3℃、荷重550kPa、ドラム回転速度25km/hであった。比較例5の氷上摩擦係数を100として指数表示した。数値が大きい程良好である。
【0033】
ランボーン摩擦:岩本製ランボーン試験機を用いて、スリップ率50%、荷重15N、砥石の粒度80、試験時間10分間にて実施し、摩耗減量(m1)を求めた。結果は下式により指数で示した。数値が大きい程良好である。
式:(比較例5の摩耗減量/求めたいゴム組成物の摩耗減量)×100
【0034】
クラック成長:JIS K6260に準拠してデマチア屈曲試験機にて繰り返し屈曲による亀裂成長を測定した。ストローク57mm、速度300±10rpm、屈曲回数10万回後の亀裂成長を比較例5を100とする指数で示した。数値が大きい程良好である。
【0035】
【表2】

表II脚注
*1:表I脚注参照
*2:キャボットジャパン(株)製ショウブラックN234(N2SA:123m2/g)
*3:松本油脂製薬(株)製マイクロスフェアーF100D
*4:巴工業(株)製グラフカード160−80N
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、特定のビニル・シス−ポリブタジエンゴム及びジエン系ゴムを含むゴム成分に、特定のカーボンブラックを配合したゴム組成物を用いることにより混合及び押出加工性を犠牲にすることなく、硬度及び貯蔵弾性率E’を向上させることができ、これを空気入りタイヤのトレッドに用いることにより、スタッド保持性を高めることができ、更に特定のビニル・シス−ポリブタジエンゴム及びジエン系ゴムを含むゴム成分に熱膨張性材料を配合することにより、氷雪性能、耐摩耗性及び耐サイプクラック性が改善されたスタッドレスキャップ用のゴム組成物を得ることができる。またかかるゴム組成物を用いることによりカーカスプライレス化が可能となり、空気入りタイヤの軽量化も達成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒を前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム5〜70重量部を含むジエン系ゴム100重量部並びに(B)窒素比表面積(N2SA)が100〜250m2/gのカーボンブラック20〜69重量部を含んでなるゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100重量部が前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴム10〜40重量部並びに天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)90〜60重量部を含み、そして、(D)ナイロン短繊維1〜10重量部を更に含む請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
(A)(1)1,3−ブタジエンとC4留分を主成分とする不活性有機溶媒との混合物の水分の濃度を調節し、(2)次いで、シス−1,4重合の触媒を前記混合物に添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、(3)次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム5〜70重量部を含むジエン系ゴム100重量部並びに(C)熱膨張性材料2〜20重量部を含んでなるゴム組成物をキャップトレッドに用いたスタッドレスタイヤ。
【請求項4】
熱膨張性材料(C)が熱膨張性マイクロカプセル及び/又は熱膨張性黒鉛である請求項3に記載のスタッドレスタイヤ。

【公開番号】特開2007−326969(P2007−326969A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159660(P2006−159660)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】