説明

空気圧制御装置

【課題】空気袋の空気圧を精度良く短時間で調整可能な空気圧制御装置を提供する。
【解決手段】空気圧制御装置は、シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を検出する圧力センサと、吸排気装置の動作に伴い、空気袋の空気圧が変化しているときの圧力センサから得られる第1圧力信号及び、その後の吸排気装置の動作の停止に伴い、空気袋の空気圧の変化が停止しているときの圧力センサから得られる第2圧力信号の相関と、第1圧力信号とに基づいて、空気袋の空気圧が変化しているときの空気袋の空気圧の値を算出する第1演算部を有する制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用シートには、シート内部に設けられた空気袋の空気圧を変化させることによりシートの硬さを調整できるものがある(例えば、特許文献1参照)。空気袋の空気圧の調整は、空気袋のバルブの開閉や空気袋に空気を供給するポンプの動作を制御する空気圧制御装置等により行われる。また、空気圧制御装置には、一般的に空気袋の空気圧を検出する圧力センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−95969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気袋が吸排気されている間の圧力センサの出力は、吸排気されている間に変化する空気袋の空気圧に応じて定まる。空気袋の空気圧の変化は、例えば、ポンプやバルブの特性等に応じて定まるが、ポンプやバルブの特性は製造バラツキ等の影響を受ける。一方、空気袋の吸排気が停止された状態での圧力センサの値は、一般にポンプやバルブの特性等の影響を受けない。このため、一般に、空気袋の空気圧の調整は、空気袋の吸排気が停止された状態で検出された圧力センサの出力に基づいて行われる。しかしながら、空気袋の空気圧を調整する度に吸排気を停止させ、その後空気圧制御装置が圧力センサの出力を取得する場合、空気袋の空気圧の調整回数が増加すると、それに応じて調整に要する時間も長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、空気袋の空気圧を精度良く短時間で調整可能な空気圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る空気圧制御装置は、シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を検出する圧力センサと、吸排気装置の動作に伴い、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記圧力センサから得られる第1圧力信号及び、その後の前記吸排気装置の動作の停止に伴い、前記空気袋の空気圧の変化が停止しているときの前記圧力センサから得られる第2圧力信号の相関と、前記第1圧力信号とに基づいて、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記空気袋の空気圧の値を算出する第1演算部を有する制御回路と、を備えることとする。
【発明の効果】
【0007】
空気袋の空気圧を精度良く短時間で調整可能な空気圧制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態では車両用シート10の構成を示す斜視図である。
【図2】車両用シート10に搭載される空気袋や各種装置等を示すブロック図である。
【図3】マイコン71の一実施形態を示す図である。
【図4】マイコンコア102が実現する機能ブロックを示す図である。
【図5】パラメータ取得の際の処理部120が実行する処理を示すフローチャートである。
【図6】空気袋32が排気されている状態を示す図である。
【図7】空気袋32が吸気されている状態を示す図である。
【図8】空気袋32の吸排気が停止されている状態を示す図である。
【図9】ポンプ42停止直前の圧力センサ70の値とポンプ42停止後の圧力センサ70の値との関係を示す図である。
【図10】パラメータテーブル記憶部113に記憶された空気袋32に対するパラメータの一例を示す図である。
【図11】マイコンコア102が実現する機能ブロックを示す図である。
【図12】空気袋30〜33の吸排気が停止されている場合に空気圧を測定する処理を示すフローチャートである。
【図13】空気袋32の空気圧を目標値にする際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の車両用シート10の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用シート10(乗用シート)は、シートクッション部20、シートバック部21、及びヘッドレスト部22を含んで構成され、例えば車両の運転席に設けられる。シートクッション部20の内部には、着座面の硬さを調整するための空気袋30が設けられている。シートバック部21の内部には、シートバック部21の幅方向の中心に対して対称に配置された空気袋31a,31b,32a,32b、シートバック部21の幅方向の中心に配置された空気袋33a,33bが設けられている。
【0011】
空気袋31は、運転手の脇を支えるために設けられた空気袋であり、シートバック部21の中心から紙面左側に設けられた空気袋31aと、紙面右側に設けられた空気袋31bとで構成される。空気袋32は、運転手の肩を支えるために設けられた空気袋であり、シートバック部21の中心から紙面左側に設けられた空気袋32aと、紙面右側に設けられた空気袋32bとで構成される。空気袋33は、運転手の腰を支えるために設けられた空気袋であり、シートバック部21の上側に設けられた空気袋33aと、下側に設けられた空気袋33bとで構成される。なお、本実施形態では空気袋33の空気圧が調整されることにより、いわゆるランバーサポートの機能が実現される。
【0012】
また、本実施形態では、シートクッション30の紙面左側面には、肩や腰等の各部位の空気袋30〜33の空気圧を調整するためのコントローラ40が設けられ、シートクッション30の下側には、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)41、ポンプ42、及びバルブユニット43が設けられている。なお、ポンプ42、バルブユニット43が本発明の吸排気装置に相当する。
【0013】
図2は、図1に示す車両用シート10に搭載される空気袋や各種装置等のブロック図である。
【0014】
コントローラ40は、車両用シート10の形状を変化させるために利用者が操作する装置であり、操作結果に応じたデータがECU41のマイコン71に送信される。コントローラ40は、操作スイッチ60〜63、設定スイッチ64、及びポジションスイッチ65,66を含んで構成される。
【0015】
操作スイッチ60は、肩の空気袋32の空気圧を調整するためのスイッチである。操作スイッチ61〜63の夫々は、脇の空気袋31、クッションの空気袋30、腰の空気袋33の空気圧を調整するためのスイッチである。
【0016】
設定スイッチ64は、車両用シート10の形状、すなわち、各部位の空気袋30〜33の空気圧を記憶させるためのスイッチである。本実施形態では、設定スイッチ64が押された後に、ポジションスイッチ65,66の何れか一方が押されることにより、車両用シート10の形状が後述するマイコン71のメモリに記憶される。
【0017】
ポジションスイッチ65,66は、記憶された車両用シート10の形状を再生するためのスイッチである。詳細は後述するが、本実施形態では、ポジションスイッチ65が押されると、ポジションスイッチ65に対応して記憶された車両用シート10の形状が再生され、ポジションスイッチ66が押されると、ポジションスイッチ66に対応して記憶された車両用シート10の形状が再生される。
【0018】
ECU41は、コントローラ40の操作結果や空気袋30〜33の空気圧に応じて、ポンプ42及びバルブユニット43の動作の制御をする装置であり、圧力センサ70、マイコン71、駆動回路72、及び電源回路73を含んで構成される。なお、ECU41が本発明の空気圧制御装置に相当し、マイコン71が本発明の制御回路に相当する。
【0019】
圧力センサ70は、空気袋30〜33の夫々の空気圧を検出するための単一の圧力センサであり、圧力を検出するための受圧部(不図示)がチューブ80に接続されている。なお、本実施形態の圧力センサ70からの出力の精度は、測定対象となる空気袋の空気圧が高くなるにつれて上昇する。
【0020】
マイコン71は、コントローラ40の操作結果や、圧力センサ70からの出力に応じてECU41を統括制御する。具体的には、例えばマイコン71は、コントローラ40の操作結果に応じて、ポンプ42をオン、オフする。なお、本実施形態のマイコン71の詳細については後述する。
【0021】
駆動回路72は、マイコン71からの指示に基づいて、制御バルブ90〜94、排気バルブ95〜97を駆動して、各バルブの開閉を制御する回路である。
【0022】
電源回路73は、例えば、車両のバッテリー50から、圧力センサ70、マイコン71、及び駆動回路72を動作させるための電源を生成する回路である。なお、バッテリー50は、例えば、車両のエンジンルーム(不図示)等に設けられているが、ここでは便宜上、図2に記載している。
【0023】
ポンプ42は、マイコン71からの指示に基づいて、空気袋30〜33に空気を供給するための装置である。なお、本実施形態のポンプ42の空気供給口は、チューブ80に接続される。このため、ポンプ42が動作すると、チューブ80には空気が供給されることとなる。また、本実施形態のポンプ42の電源は、バッテリー50から供給されていることとする。
【0024】
バルブユニット43は、空気袋30〜33の吸排気を制御するための制御バルブ90〜94、排気バルブ95〜97を含んで構成される。なお、本実施形態の各バルブにはソレノイドバルブ等の電磁弁が用いられる。また、各バルブの電源はバッテリー50から供給される。
【0025】
制御バルブ90は、チューブ80と、肩の空気袋32とを接続させるためのバルブである。本実施形態では、制御バルブ90が開かれた場合のみ、チューブ80と空気袋32とは接続される。
【0026】
制御バルブ91〜94は、制御バルブ90と同様に、チューブ80と、脇の空気袋31、腰の空気袋33a、33b、クッションの空気袋30とを夫々接続させるためのバルブである。前述の制御バルブ90と同様に、制御バルブ91〜94の夫々が開かれた場合のみ、チューブ80と空気袋31、空気袋33a、33b、空気袋30とは接続される。
【0027】
排気バルブ95は、チューブ80と、空気を排気するための排気ポート81とを接続させるためのバルブである。本実施形態では、排気バルブ95が開かれた場合のみ、チューブ80と排気ポート81とは接続される。このため、例えば、チューブ80と空気袋32とが接続された状態で排気バルブ95が開かれると、空気袋32の空気は排気ポート81から排気されることとなる。
【0028】
排気バルブ96,97は、排気バルブ95と同様に、空気袋33a,33bの夫々と、排気ポート82とを接続させるためのバルブである。排気バルブ96,97の夫々が開かれた場合のみ、空気袋33a,33bと排気ポート82とは接続される。このように、空気袋33a,33bに対しては、排気バルブ96,97が専用に設けられている。したがって、本実施形態では、例えば、空気袋33aを吸気しつつ、空気袋33bを排気することが可能である。このため、本実施形態では、ランバーの調整をスムーズに行うことができ、調整の際の利用者の違和感を軽減させることが可能である。
【0029】
<<マイコン71の詳細>>
本実施形態におけるマイコン71の詳細を図3に示したブロック図を参照しつつ説明する。マイコン71は、ADコンバータ100、メモリ101、及びマイコンコア102を含んで構成される。
【0030】
ADコンバータ100は、圧力センサ70から出力されるアナログ信号を、所定の間隔毎にデジタルデータに変換して出力する回路である。なお、ADコンバータ100からのデジタルデータは、メモリ101のRAM(Random Access Memory)110に記憶される。また、RAM110に記憶されたADコンバータ100のデジタルデータは、ADコンバータ100がデジタルデータを出力する度に更新されることとする。
【0031】
メモリ101は、RAM110、ROM(Read Only Memory)111を含んで構成される。なお、パラメータテーブル記憶部113が本発明の記憶部及び圧力値記憶部に相当する。
【0032】
RAM110は、例えば、マイコンコア102が実行するプログラムや、ECU41を制御するために必要となる各種データを格納する。
【0033】
ROM111の記憶領域には、例えば、マイコン102が実行するプログラムを記憶するプログラム記憶部112、パラメータテーブル記憶部113が設けられている。
【0034】
パラメータテーブル記憶部113は、空気袋30〜33が吸排気されている間の圧力センサ70の出力から、空気袋30〜33の吸排気が停止された後の空気袋30〜33の空気圧の値を算出するための第1パラメータを記憶する。または、パラメータテーブル記憶部113は、後述するRAM110に記憶された過去の空気袋30〜33の空気圧に基づいて、現在の空気袋30〜33の空気圧の値を算出するための第2パラメータを記憶する。なお、詳細は後述するが、第1パラメータは、空気袋が吸排気されている際の空気袋の空気圧が所定の圧力値より高い場合に使用されるパラメータである。また、第1パラメータは、吸排気時夫々に対する圧力センサ70の値から、停止後の空気袋の空気圧を算出するための計算式の係数等である。一方、第2パラメータは、空気袋が吸排気されている際の空気袋の空気圧が所定の圧力値より低い場合に使用されるパラメータである。また、第2パラメータは、空気袋が吸排気された際の圧力変化量である。本実施形態におけるパラメータは、車両用シート10が製造されたときに、例えば工場等で実験的に取得される。パラメータの取得方法や詳細に関しては後述する。
【0035】
マイコンコア102は、RAM110またはROM111に格納されるプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。
【0036】
<<第1パラメータについて>>
ここで、まず、前述のパラメータテーブル記憶部113に格納されるパラメータのうち、第1パラメータの取得方法等について説明する。第1パラメータの取得は、空気袋30〜33の夫々に対して実施されるが、本実施形態では、肩の部位の空気袋32を例に挙げて説明する。また、本実施形態のマイコンコア102は、例えばROM111に格納された第1パラメータ取得用のプログラムを実行することにより、図4に示す処理部120を実現する。また、本実施形態の処理部120は、図5に示されたフローチャートに沿った処理を実行する。なお、第1パラメータ取得の際のポンプ42及びバルブユニット43には、バッテリー50からの電源でなく、例えば電源回路(不図示)の生成する所定レベルの電圧の電源が供給されることとする。
【0037】
まず、処理部120は、後述する所定の処理(S102〜S106)が実行された回数を示し、RAM110に記憶されたカウント値をリセットする(S100)。そして、処理部120は、空気袋32を排気すべく、駆動回路72を制御する(S101)。この結果、駆動回路72は制御バルブ90及び排気バルブ95を開くため図6に示すように、空気袋32の空気は、チューブ80及び排気ポート81を介して排気される。なお、図6においては、2つの空気袋32a、32bを1つの空気袋32として図示している。また、ここでは、制御バルブ91〜94は閉じられていることとする。そして、例えば、制御バルブ90及び排気バルブ95が開かれて十分時間が経過した後、処理部120は、空気袋32に吸気させるよう駆動回路72、ポンプ42を制御する(S102)。この結果、図7に示すように、制御バルブ90、排気バルブ95のうち排気バルブ95のみが閉じられる。そして、排気バルブ95が閉じた後、ポンプ42の動作が開始され、吸気が開始されることとなる。処理部120は、吸気が開始された後に、所定時間経過するまで待機し(S103:NO)、所定時間経過すると(S103:YES)、圧力センサ70からの出力に応じたデジタルデータを取得する(S104)。なお、前述の処理S103の所定時間は、ADコンバータ100がアナログ信号をデジタルデータに変換して出力する期間よりも十分長いこととする。このため、本実施形態では、処理S103で規定された所定時間が経過する直前にRAM110に記憶されたデジタルデータが、処理部120に取得されることとなる。なお、ここでは前述のカウント値がリセットされて“0”のときの処理S104にて取得されたデジタルデータを“X0”とする。そして、処理部120は、図8に示すように空気袋32の吸気を停止すべくポンプ42を停止させる(S105)。処理部120は、ポンプ42の動作が停止された後、空気袋32の空気の流れが安定化するまでの所定時間が経過すると、圧力センサ70からの出力に応じたデジタルデータを取得する(S106)。このため、処理106で取得されたデジタルデータは、空気袋32の空気圧が安定している際の圧力値を示すこととなる。なお、本実施形態においては、前述のデジタルデータ“X0”と同様に、カウント値がゼロの際に処理S106で取得されたデジタルデータを“Y0”とする。そして、処理部120は、RAM110に記憶されたカウント値をインクリメントする(S107)。また、処理部120は、カウント値が“Cn”未満の場合(S108:YES)、上述した処理102〜S107を繰り返し実行する。なお、本実施形態において、カウント値“Cn”は、例えば、2以上の自然数であることとする。一方、処理部120は、カウント値が“Cn”より大きい場合(S108:NO)、すなわち、Cn組のデジタルデータである(X1、Y1)〜(XCn、YCn)を処理部120が取得すると、処理部120は、取得したデジタルデータに基づいて、第1パラメータを算出する(S109)。
【0038】
図9は、例えば“Cn”=4の場合に、処理部120が取得した4組のデジタルデータ(X1、Y1)〜(X4、Y4)の関係を示す図である。図9から明らかなように、空気袋32を所定期間吸気した際のデジタルデータXnの値が高くなると、空気袋32の吸気が停止した後のデジタルデータYnの値もそれに応じて高くなる。このような結果に基づいて、処理部120は取得したデータ(X1、Y1)〜(X4、Y4)を、例えば最小二乗法を用いて1次関数で近似する。この結果、デジタルデータXn、Ynとの相関は、式(1)で近似されることとなる。
Yn=a・Xn+b・・・(1)
また、ポンプ42が停止している際に取得されるデジタルデータYnの値は、実際の空気袋32の空気圧の値に一意的に対応している。本実施形態では、式(2)に示すように、停止している際に取得されるデジタルデータYnに、圧力センサ70の特性に応じた所定の定数Cを乗ずることにより空気袋32の圧力値Pを算出する。
P=C×Yn・・・(2)
このため、ポンプ42が停止している際の空気袋の空気圧Pと、ポンプ42が動作している間の圧力センサ70の出力を示すデジタルデータXnとの間には、式(3)に示す関係が成立する。
P=C×(a・Xn+b)=A1・Xn+B1・・・(3)
ここではA1=C×aであり、B1=C×bである。
【0039】
このように、処理部120は、取得したデジタルデータに基づいて、パラメータであるA1、B1を算出する(S109)。なお、本実施形態では、第1パラメータ取得の際のポンプ42及びバルブユニット43には、バッテリー50からの電源でなく、例えば電源回路(不図示)の生成する所定レベルの電圧の電源が供給されることとして、A1、B1を算出した。しかしながら、実際の車両用シート10に組み込まれたポンプ42等の特性は、バッテリー電圧のレベルにより変化する。このため、本実施形態では、第1パラメータをバッテリー電圧のレベルの変化に対応させるべく、11.5V、13.5V、15.3Vの3つの異なる電圧がポンプ42、バルブユニット43に印加された場合の夫々に対して、A1、B1を算出する。
【0040】
また、前述した処理S100〜S109は、空気袋32の吸気時のパラメータを取得するための処理であるため、排気時も処理S100〜S109と同様の処理が実行される。但し、排気時には、処理S101のステップで十分長い時間だけ吸気を行い、処理S102のステップで排気を開始し、処理105のステップで排気を停止することとする。この結果、排気時も式(3)と同様の式(4)が得られ、A2、B2がパラメータをして算出されることとなる。
P=A2・Xn+B2・・・(4)
このように、本実施形態においては、第1パラメータ取得のプログラムが実行されることにより異なる電圧に対するA1、B1、A2、B2が算出される。そして、A1、B1、A2、B2は、処理部120によりパラメータテーブル120に格納される。なお、図10は、パラメータテーブル120に記憶されているパラメータを説明するための図である。図10に示すように、11.5V、13.5V、15.3Vの3つの異なる電圧パターンの夫々に対してA1、B1、A2、B2が格納されている。また、図10は肩の空気袋32に対する第1パラメータであるが、本実施形態のパラメータテーブル記憶部113には、腰や脇等の空気袋31,32に対する同様のパラメータも格納されていることとする。なお、本実施形態において、空気袋が吸排気されている間の圧力センサ70の出力を示すデジタルデータXnが本発明の第1圧力信号に相当し、空気袋の吸排気が停止されている間の圧力センサ70の出力を示すデジタルデータYnが本発明の第2圧力信号に相当する。
【0041】
<<第2パラメータについて>>
つぎに、パラメータテーブル記憶部113に格納されるパラメータのうち、空気袋の空気圧が所定の圧力値より低い場合に使用される第2パラメータの取得方法等について説明する。前述の様に、空気袋の空気圧が所定の圧力値より低い場合には、圧力センサ70から出力される信号の精度も低くなる。このため、本実施形態では、空気袋の空気圧が所定の圧力値より低い場合は、空気袋が吸排気された際の単位時間あたりの圧力変化量を、例えばポンプ42や排気バルブ95等の特性から予測し、パラメータテーブル記憶部113に格納している。なお、例えば、空気袋を排気している場合の圧力変化量は、空気袋の圧力が大気圧に近くなると少なくなる。また、例えば、ポンプ42の電源電圧が変化するとポンプ42の特性は変化するため、圧力変化量も変化する。本実施形態では前述のような圧力変化量の特性を加味し、例えば肩の空気袋32の場合、図10に示すような異なる電源電圧と空気袋の空気圧ごとに予測した圧力変化量をパラメータテーブル記憶部113に格納する。なお、図10における2〜4kPa等の表記は、大気圧からの差圧である。つまり、2〜4kPaとの表記は、空気袋の空気圧が大気圧より2〜4kPa大きい領域であることを示す。また、予測される圧力変化量は、対象となる空気袋によって異なるため、本実施形態では各部位の空気袋に対して、同様のパラメータが格納されていることとする。
【0042】
<<車両用シート10が実際に使用される際のマイコン102について>>
ここで、車両用シート10が実際に車両に設置されて使用される場合のマイコンコア102について説明する。本実施形態のマイコンコア102は、ROM111に格納されたプログラムを実行することにより、図11に示す機能ブロックを実現する。具体的には、マイコンコア102は、制御部150、比較部151、演算部152、演算部153、及ぶ演算部154を実現する。
【0043】
制御部150は、コントローラ40の操作結果やRAM110に記憶される空気袋30〜33の空気圧の値に応じて、駆動回路72やポンプ42の動作を制御する。また、制御部150は、バッテリー50の電圧を検出し、RAM110にバッテリー50の電圧値を格納する。
【0044】
比較部151は、RAM110に記憶された空気袋30〜33の空気圧の値と、所定のしきい値とを比較する。本実施形態における所定のしきい値は、例えば、大気圧に10kPaが加算された大気圧+10kPaであることとする。なお、RAM110に記憶された空気袋の空気圧の値は、後述する演算部152、演算部153、演算部154の何れかが算出した値である。また、本実施形態では、空気袋の空気圧の値は算出される度に更新されることとする。
【0045】
演算部152は、空気袋30〜33が吸排気されている際に空気袋30〜33の空気圧の値がしきい値以上の場合、圧力センサ70からの出力とバッテリー50の電圧値とに基づいて、空気袋30〜33の空気圧の値を算出する。具体的には、演算部152は、空気袋30〜33が吸気されている場合、図10に示すようなパラメータテーブル記憶部113に記憶されたパラメータのうちA1、B1と式(3)とを用いて空気袋30〜33の空気圧Pを算出する。一方、演算部152は、空気袋30〜33が排気されている場合、パラメータテーブル記憶部113に記憶されたパラメータのうちA2、B2と式(4)とを用いて空気袋30〜33の空気圧Pを算出する。また、演算部152は、前述のA1、B1、A2、B2を選択する際に、バッテリー50の電圧値が、10.5V以上〜12.5V未満の場合はパターン“イ”のパラメータを選択し、12.5V以上〜14.5V未満の場合はパターン“ア”のパラメータを選択し、14.5V以上〜16V未満の場合はパターン“ウ”のパラメータを選択する。なお、演算部152が算出した空気圧Pは、RAM110に格納される。
【0046】
演算部153は、空気袋30〜33が吸排気されている際に空気袋30〜33の空気圧の値がしきい値未満の場合、RAM110に記憶された空気袋30〜33の空気圧とバッテリー50の電圧値とに基づいて、空気袋30〜33の空気圧の値を算出する。具体的には、演算部153は、図10に示すようなパラメータテーブル記憶部113に記憶されたパラメータのうち、RAM110に記憶された空気袋30〜33の空気圧とバッテリー50の電圧とに基づいて選択される圧力変化量を、RAM110に格納された空気圧の値に加算して空気圧を算出する。ここで、RAM110に記憶された空気袋30〜33の空気圧をPm、単位時間あたりの圧力変化量をΔP、圧力値が算出される際の既定された期間Δt、算出される圧力値をPとすると、演算部153が実行する計算式は、式(5)で表現される。
P=Pm+ΔP×Δt・・・(5)
演算部153が選択するパラメータについて、例えば空気袋32を例に図10を参照しつつ説明する。例えば、空気袋32が排気される際に、RAM110に記憶された空気袋32の空気圧Pmが大気圧値+5kPaであり、バッテリー50の電圧値が12Vである場合、圧力変化量としては、−0.2kPa/sが選択される。このように、バッテリー50の電圧値が、10.5V以上〜12.5V未満の場合はパターン“イ”のパラメータのうち、空気圧Pmの値に応じた圧力変化量が選択される。また、バッテリー50の電圧値が、12.5V以上〜14.5V未満の場合はパターン“ア”のパラメータのうち、空気圧Pmの値に応じた圧力変化量が選択され、バッテリー50の電圧値が、14.5V以上〜16V未満の場合はパターン“ウ”のパラメータのうち、空気圧Pmの値に応じた圧力変化量が選択される。また、本実施形態では式(5)で圧力値Pが算出されると、算出された空気圧Pは空気圧PmとしてRAM110に記憶される。なお、詳細は、後述するが、本実施形態においては、演算部153が、式(5)に基づいて空気圧Pの算出を開始する前にRAM110に記憶された空気圧Pmは、圧力センサ70からの出力に基づいて算出される。具体的には、例えば、空気圧Pmは、空気袋の吸排気が停止されている際の圧力センサ70の出力と、式(2)とに基づいて算出されるか、空気袋が吸排気されている際の圧力センサ70の出力と、式(3)または式(4)の何れかに一方とに基づいて算出される。
【0047】
演算部154は、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の圧力センサ70からの出力に基づいて、空気袋30〜33の空気圧の値を算出する。具体的には、前述の式(2)の計算を実行し、空気圧Pを算出する。なお、算出された空気圧PはRAM110に記憶される。
【0048】
<<車両用シート10の設定された形状を再生する際のECU41等の動作>>
ここで、車両用シート10の設定された形状を再生する際のECU41等の動作について説明する。なお、本実施形態においては、ポジションスイッチ65,66の夫々に対応した車両用シート10の形状、すなわち、空気袋30〜33の空気圧が予めRAM110に記憶されていることする。また、ポジションスイッチ65に対応する車両用シート10の形状は、例えば、通常の運転時の車両用シート10の形状であり、ポジションスイッチ66に対応する車両用シート10の形状は、例えば、運転中に疲労感を感じた際の車両用シート10の形状であることとする。また、本実施形態では、通常の運転時の空気袋30〜33夫々の空気圧の値としては、例えば大気圧+5kPaが設定され、疲労感を感じた際の空気袋30〜33夫々の空気圧の値としては、例えば、大気圧+15kPaが設定されていることとする。つまり、本実施形態では、疲労感を感じた際の車両用シート10は、通常の運転時の車両用シート10よりも硬い設定となっている。
【0049】
利用者が運転中に疲労感を感じると、利用者は車両用シート10の形状を、疲労感を感じた際の形状へと変化させるために、ポジションスイッチ66を押す。この結果、コントローラ40からは、ポジションスイッチ66の操作結果に応じたデータがマイコンコア102へ送信される。
【0050】
まず、マイコンコア102は、受信したデータに基づいて、空気袋30〜33の空気圧の測定を順次開始すべく所定の処理を実行する。具体的には、制御部150及び演算部154は、空気袋30〜33の順に、図12に示されたフローチャートの処理に沿って夫々の空気袋の空気圧を算出する。制御部150は、まずクッションの空気袋30の空気圧を測定すべく、制御バルブ94が開くよう駆動回路72を制御する。この結果、制御バルブ94は開かれ、空気袋30とチューブ80とが接続される(S200)。なお、この際には、他の制御バルブ90〜93、排気バルブ95〜97は閉じられ、ポンプ42は停止された状態となっている。そして、制御部150は、制御バルブ94が開かれた後、空気の流れが安定化するために必要な所定時間が経過するまで待機する(S201)。そして、前述の所定時間が経過すると(S201:YES)、演算部154は、圧力センサ70からの出力に応じたデジタルデータと、式(2)とを用いて空気袋30の空気圧を計算する(S202)。そして、演算部154は、計算した圧力値をRAM110に格納する(S203)。このように、クッションの空気袋30に対して処理S200〜S203が実行されると、制御部150及び演算部154は、空気袋31〜33の空気圧を順次測定すべく同様の処理を実行する。この結果、空気袋30〜33の空気圧の値がRAM110に格納されることとなる。
【0051】
つぎに、マイコンコア102は、測定された空気袋30〜33の空気圧の値が、目標値である大気圧+15kPaとなるよう、図13に示された処理を実行する。図13に示された処理は、図12に示された処理と同様に、空気袋30〜33の夫々に対して実行される。このため、ここでは、例えば肩の空気袋32を例に説明する。また、本実施形態では、RAM110に記憶された空気袋32の空気圧Pmは、大気圧+5kPaであることとする。まず、制御部150は、空気袋32を吸気させるべく、制御バルブ90が開き、他のバルブが閉じるよう駆動回路72を制御する。この結果、制御バルブ90は開かれ、空気袋32とチューブ80とが接続される(S300)。そして、制御部150は、バッテリー50の電圧を取得し、RAM110に格納する(S301)。なお、ここでは、バッテリー50の電圧は例えば12Vであることとする。前述の様に、RAM110に記憶された空気袋32の空気圧Pmは、目標となる空気圧より低いため、制御部150はポンプ42を動作させる(S302)。ここで、現在の空気圧Pmは、しきい値である大気圧+10kPaよりも低い(S303:NO)。このため、空気袋32が吸気されている間の空気圧Pは、前述の式(5)に基づいて算出されることとなる(S304)。なお、前述のように、式(5)で示した圧力変化量ΔPは、単位時間あたりの変化量であるため、ここでは、バッテリー電圧が12Vであり、空気圧Pmが大気圧+5kPaであるため、図10に示されているように圧力変化量ΔPは、0.1kPa/sとなる。したがって、下記の式(6)に基づいて空気圧Pが算出されることとなる。
P=Pm+ΔP×Δt=(大気圧+5kPa)+(0.1kPa/s×Δt)・・・(6)
そして、既定の期間Δtが経過後、演算部153は、算出した空気圧Pを空気圧PmとしてRAM110に記憶する(S306)。そして、制御部150は、処理S306にて記憶された空気圧Pmが目標値と一致するか否かを判定する(S307)。本実施形態では、前述の既定の期間Δtは単位時間よりも十分短いこととするため、空気圧Pmは目標値と一致せず(S307:NO)、処理S303,S304,S306,S307が繰り返されることとなる。なお、前述の処理S303,S304,S306,S307は、空気圧Pmが、大気圧+10kPaとなるまで繰り返される。そして、空気圧Pmが、しきい値と同じ大気圧+10kPaとなると、空気圧Pは、演算部152により、前述の式(3)に基づいて算出されることとなる(S305)。ここで、パラメータA1、B1は夫々、α1、β1であるため、式(3)は、式(7)となる。
P=A1・X+B1=α1・X+β1・・・(7)
そして、式(7)に基づいて算出された空気圧Pが、目標値である大気圧+15kPaとなると、制御部150は、ポンプ42の動作を停止させる(S308)。前述のように、式(7)の空気圧Pは、ポンプ42の停止直前の圧力センサ70からの出力に基づいて算出されている。このため、算出された空気圧Pが目標値となると同時にポンプ42を停止することにより、ポンプ42の停止後の空気袋32の空気圧を、目標値である大気圧+15kPaに正確に調整することが可能である。なお、ここでは、空気袋32が吸気される際の動作を説明したが、排気される場合も同様である。また、他の空気袋30,31,33に関しても、空気袋32と同様に調整可能である。
【0052】
以上に説明した構成からなる本実施形態のマイコン71は、例えば図9に示されるような空気袋30〜33が吸排気されている状態の圧力センサ70からの出力及び吸排気が停止された状態の圧力センサ70からの出力の相関と、空気袋30〜33が吸排気されている間の圧力センサ70からの出力とに基づいて、空気袋30〜33の空気圧Pを算出する。前述の図9に示す様な相関は、車両用シート10が製造された際に工場で実際に取得されるため、ポンプ42やバルブ等の製造バラツキの影響等も含んでいる。このため、空気袋30〜33が吸排気されている間の圧力センサ70の出力を用いた場合であっても、吸排気が停止後の空気袋30〜33の空気圧Pを精度良く算出することが可能となる。さらに、本実施形態では、空気袋30〜33の実際の空気圧Pが随時算出される。このため、マイコン71は、空気袋30〜33が吸排気されている間であっても、算出された空気圧Pを用いることにより、空気袋30〜33の空気圧を随時調整できる。したがって、本実施形態では、例えば、空気袋30〜33の空気圧の調整回数等が多くなる場合であっても、空気袋30〜33の吸排気を停止させる必要はないため、調整時間を短くすることが可能である。
【0053】
また、前述のように本実施形態では、例えば空気袋30〜33の実際の空気圧Pが随時算出される。このため、例えば、空気袋30〜33の空気圧Pを、吸排気中の圧力センサ70からの出力に基づいて目標値に制御することが可能である。
【0054】
また、本実施形態の演算部154は、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の圧力センサ70の出力と、式(2)とを用いて、空気袋30〜33の空気圧を算出する。このため、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の空気圧も精度良く算出することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図9に示すように、空気袋30〜33が吸排気されている状態の圧力センサ70からの出力の値が高くなると、吸排気が停止された状態の圧力センサ70からの出力の値もそれに応じて高くなる。そこで、本実施形態では、図9に示す相関を1次関数の計算式としている。このため、本実施形態では、実際には取得されていない圧力センサ70の出力値に対しても、その出力値に対応する空気圧を算出することができる。
【0056】
また、本実施形態の演算部152は、空気袋30〜33が吸気されている際には式(3)に基づいて空気圧Pを算出し、空気袋30〜33が排気されている際には式(4)に基づいて空気圧Pを算出している。このように、本実施形態では、吸気、排気夫々に応じた計算式が用いられることにから、より精度の良い空気圧を算出することが可能となる。
【0057】
また、式(3)のA1、B1は、データ(X1、Y1)〜(XCn、YCn)を、最小二乗法を用いて1次関数で近似した際の係数と、切片とに応じた値である。このため、吸気時の空気圧の算出の際に用いられる計算式(3)は、実験的に取得されたデータを精度良く1次関数で近似していることとなる。
【0058】
また、式(4)のA2、B2は、排気時のデータを、最小二乗法を用いて1次関数で近似した際の係数と、切片とに応じた値である。このため、排気時の空気圧の算出の際に用いられる計算式(4)は、実験的に取得されたデータを精度良く1次関数で近似していることとなる。
【0059】
また、本実施形態では、式(3)のA1、B1と、式(4)のA2、B2のみがパラメータテーブル記憶部113に記憶され、演算部152が適宜パラメータを読み出して圧力値Pを算出している。このため、例えば式(3)の計算結果全てをテーブル等に記憶する場合と比較すると、メモリの使用量を少なくすることができる。
【0060】
また、一般に、ポンプ42やバルブユニット43の電源であるバッテリー50の電圧は、車内のエアコンやカーナビ等が用いられると低下する。また、ポンプ42やバルブの特性は、バッテリー電圧によって変化する。本実施形態のパラメータテーブル記憶部113には、例えば図10に示すように、バッテリー50のバッテリー電圧に応じて値が異なるA1、B1、A2、B2が記憶されている。このため、本実施形態では、バッテリー電圧の変化によりポンプ42やバルブ等の特性が変化した場合であっても、精度良く空気袋30〜33の空気圧を算出することが可能である。なお、本実施形態では、例えばバッテリー50が経年変化により劣化した場合であっても、同様の効果を得ることが可能である。
【0061】
また、本実施形態のマイコン71は、前述のように、ポンプ42やバルブユニット43の電源であるバッテリー50の電圧に基づいて、空気袋の空気圧を算出する。このため、バッテリー電圧が変動した場合であっても、精度よく空気袋の空気圧を算出できる。
【0062】
また、本実施形態のマイコン71の演算部153は、空気圧Pを算出する。圧力センサ70からの出力の精度は、対象となる空気袋の空気圧が低くなるにつれて低下する。本実施形態では、空気袋30〜33が吸排気されている際には、所定の圧力変化量ΔPを用いることにより空気袋30〜33の空気圧を算出している。このため、本実施形態では、吸排気中の空気袋の空気圧が低い場合であっても、精度良く空気圧を算出することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、式(5)の圧力変化量ΔPが、空気袋30〜33の空気圧に対応してパラメータテーブル記憶部113に記憶され、演算部153が適宜パラメータを読み出して圧力値Pを算出している。このため、例えば式(5)の計算結果全てをテーブル等に記憶する場合と比較すると、メモリの使用量を少なくすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、図10に示すように、バッテリー電圧に対応させた圧力変化量ΔPがパラメータテーブル記憶部113に記憶されている。このため、本実施形態では、バッテリー電圧の変化によりポンプ42やバルブ等の特性が変化した場合であっても、精度良く空気袋30〜33の空気圧を算出することが可能である。
【0065】
また、本実施形態のマイコン71は、前述のように、ポンプ42やバルブユニット43の電源であるバッテリー50の電圧に基づいて、空気袋の空気圧を算出する。このため、バッテリー電圧が変動した場合であっても、精度よく空気袋の空気圧を算出できる。
【0066】
また、本実施形態のマイコン71は、演算部153により算出される空気圧Pに基づいて目標値に制御することが可能である。
【0067】
また、本実施形態のマイコン71の演算部152は、吸排気時の空気袋30〜33の空気圧がしきい値以上の場合に、空気圧Pを算出し、演算部153は、吸排気時の空気袋30〜33の空気圧がしきい値未満の場合に、空気圧Pを算出する。圧力センサ70からの出力の精度は、対象となる空気袋の空気圧が低くなるにつれて低下する。本実施形態では、空気袋の空気圧が低い場合、圧力センサ70からの出力を用いず、所定の圧力変化量ΔPを用いることにより空気袋30〜33の空気圧を算出している。このため、本実施形態では、吸排気中の空気袋の空気圧が低い場合であっても、精度良く空気圧を算出することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の制御部150は、空気袋30〜33が吸排気中に算出された空気圧Pが目標値となるまで、ポンプ42等を制御する。前述のように、空気圧Pは演算部152、または演算部153により随時算出される。このため、制御部150は、精度良く、短時間で空気袋30〜33の空気圧を目標値に一致させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の演算部154は、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の圧力センサ70の出力と、式(2)とを用いて、空気袋30〜33の空気圧を算出する。このため、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の空気圧も精度良く算出することができる。
【0070】
また、本実施形態の演算部154は、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の圧力センサ70の出力と、式(2)とを用いて、空気袋30〜33の空気圧を算出する。このため、空気袋30〜33の吸排気が停止されている際の空気圧も精度良く算出することができる。
【0071】
また、本実施形態のマイコン71は、前述のように、ポンプ42やバルブユニット43の電源であるバッテリー50の電圧に基づいて、空気袋の空気圧を算出する。このため、バッテリー電圧が変動した場合であっても、精度よく空気袋の空気圧を算出できる。
【0072】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0073】
例えば、本実施形態では、車両用シート10であることとしたが、例えば、船舶用のシートや、航空機用のシートであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 車両用シート
20 シートクッション部
21 シートバック部
22 ヘッドレスト部
30〜33 空気袋
40 コントローラ
41 ECU
42 ポンプ
43 バルブユニット
50 バッテリー
60〜66 スイッチ
70 圧力センサ
71 マイコン
72 駆動回路
73 電源回路
80 チューブ
81,82 排気ポート
90〜94 制御バルブ
95〜97 排気バルブ
100 ADコンバータ
101 メモリ
102 マイコンコア
110 RAM
111 ROM
112 プログラム記憶部
113 パラメータテーブル記憶部
120 処理部
150 制御部
151 比較部
152〜154 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を検出する圧力センサと、
吸排気装置の動作に伴い、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記圧力センサから得られる第1圧力信号及び、その後の前記吸排気装置の動作の停止に伴い、前記空気袋の空気圧の変化が停止しているときの前記圧力センサから得られる第2圧力信号の相関と、前記第1圧力信号とに基づいて、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記空気袋の空気圧の値を算出する第1演算部を有する制御回路と、
を備えることを特徴とする空気圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記空気袋の空気圧の値の算出結果に基づいて、前記空気袋の空気圧の値が目標値となるよう前記吸排気装置を制御すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記第2圧力信号の値に対し、所定の値の係数を乗算することにより前記空気袋の空気圧の値を算出する第2演算部を更に含むこと、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の空気圧制御装置であって、
前記相関は、
複数の異なる前記第1圧力信号の値と、前記複数の異なる前記第1圧力信号の夫々に対応する前記第2圧力信号の値とに基づいて算出される係数を有し、前記第1圧力信号の値から前記空気袋の空気圧の値を算出するための計算式であること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の空気圧制御装置であって、
前記計算式は、
前記吸排気装置が前記空気袋に空気を吸気しているときの複数の異なる前記第1圧力信号の値と、その後の前記吸排気装置の停止に伴い得られ、前記吸排気装置が前記空気袋に空気を吸気しているときの前記複数の異なる前記第1圧力信号の夫々に対応する前記第2圧力信号の値とに基づいて算出される係数を有する第1計算式と、
前記吸排気装置が前記空気袋の空気を排気しているときの複数の異なる前記第1圧力信号の値と、その後の前記吸排気装置の停止に伴い得られ、前記吸排気装置が前記空気袋の空気を排気しているときの前記複数の異なる前記第1圧力信号の夫々に対応する前記第2圧力信号の値とに基づいて算出される係数を有する第2計算式と、
を含むことを特徴とする空気圧制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空気圧制御装置であって、
前記第1計算式は、
P=P1×A1+B1であり、
Pは前記空気袋の空気圧の値であり、P1は前記吸排気装置が前記空気袋に空気を吸気しているときの前記第1圧力信号の値であり、A1及びB1は複数の前記第1及び第2圧力信号の値を基に最小二乗法により算出される値であること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の空気圧制御装置であって、
前記第2計算式は、
P=P1×A2+B2であり、
Pは前記空気袋の空気圧の値であり、P1は前記吸排気装置が前記空気袋に空気を排気しているときの前記第1圧力信号の値であり、A2及びB2は複数の前記第1及び第2圧力信号の値を基に最小二乗法により算出される値であること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記第1計算式のA1、B1と前記第2計算式のA2、B2との値を記憶する記憶部を更に含み、
前記第1演算部は、
前記記憶部に記憶された値を用いて前記空気袋の空気圧の値を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の空気圧制御装置であって、
前記第1計算式のA1、B1と前記第2計算式のA2、B2との値は、前記吸排気装置の電源電圧のレベルに応じて変化する値であり、
前記記憶部は、
前記電源電圧のレベルに対応させて、前記第1計算式のA1、B1と、前記第2計算式のA2、B2との値を記憶し、
前記第1演算部は、
前記記憶部に記憶された値のうち、前記電源電圧のレベルに応じた値を用いて前記空気袋の空気圧の値を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記吸排気装置の電圧レベルに基づいて前記空気袋の空気圧を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項11】
シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を検出する圧力センサと、
吸排気装置の動作に伴い、前記圧力センサの圧力信号に基づいて算出される前記空気袋の空気圧の値に対して前記空気袋の空気圧に応じて定まる所定の圧力値を加算または減算して前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記空気袋の空気圧の値を算出する演算部を有する制御回路と、
を備えることを特徴とする空気圧制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記演算部が加算または減算する前記所定の圧力値を記憶する圧力値記憶部を更に含むこと、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の空気圧制御装置であって、
前記演算部が加算または減算する前記所定の圧力値は、前記吸排気装置の電源電圧のレベルに応じて変化する値であり、
前記圧力値記憶部は、
前記演算部が加算または減算する前記所定の圧力値を、前記空気袋の空気圧と前記電源電圧とに対応させて記憶し、
前記演算部は、
前記圧力値記憶部に記憶された値のうち、前記空気袋の空気圧と前記電源電圧のレベルに応じた値を用いて前記空気袋の空気圧の値を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか一項に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記吸排気装置の電圧レベルに基づいて前記空気袋の空気圧を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項15】
請求項11〜14の何れか一項に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記空気袋の空気圧の値の算出結果に基づいて、前記空気袋の空気圧の値が目標値となるよう前記吸排気装置を制御すること、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項16】
シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を検出する圧力センサと、
前記空気袋の空気圧を算出する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記圧力センサの圧力信号に基づいて算出される前記空気袋の空気圧の値と所定のしきい値との大小関係を比較する比較部と、
前記空気袋の空気圧の値が前記しきい値以上の場合、吸排気装置の動作に伴い、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記圧力センサから得られる第1圧力信号及び、その後の前記吸排気装置の動作の停止に伴い、前記空気袋の空気圧の変化が停止しているときの前記圧力センサから得られる第2圧力信号の相関と、前記第1圧力信号とに基づいて、前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記空気袋の空気圧の値を算出する第1演算部と、
前記空気袋の空気圧の値が前記しきい値未満の場合、吸排気装置の動作に伴い、前記圧力センサの圧力信号に基づいて算出される前記空気袋の空気圧の値に対して前記空気袋の空気圧に応じて定まる所定の圧力値を加算または減算して前記空気袋の空気圧が変化しているときの前記空気袋の空気圧の値を算出する第2演算部と、
を含むこと、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項17】
請求項16に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記空気袋の空気圧の値が前記しきい値以上の場合、第1演算部の算出結果に基づいて、前記空気袋の空気圧の値が目標値となるよう前記吸排気装置を制御し、前記空気袋の空気圧の値が前記しきい値未満の場合、第2演算部の算出結果に基づいて、前記空気袋の空気圧の値が目標値となるよう前記吸排気装置を制御する制御部を更に含むこと、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記第2圧力信号の値に対し、所定の値の係数を乗算することにより前記空気袋の空気圧の値を算出する第3演算部を更に含むこと、
を特徴とする空気圧制御装置。
【請求項19】
請求項16〜18の何れか一項に記載の空気圧制御装置であって、
前記制御回路は、
前記吸排気装置の電圧レベルに基づいて前記空気袋の空気圧を算出すること、
を特徴とする空気圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−233897(P2010−233897A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86801(P2009−86801)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000222934)東洋電装株式会社 (69)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】